特許第5955954号(P5955954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許59559542−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955954
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 253/30 20060101AFI20160707BHJP
   C07C 255/58 20060101ALI20160707BHJP
   C07C 253/14 20060101ALN20160707BHJP
   C07C 227/16 20060101ALN20160707BHJP
   C07C 229/56 20060101ALN20160707BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160707BHJP
【FI】
   C07C253/30CSP
   C07C255/58
   !C07C253/14
   !C07C227/16
   !C07C229/56
   !C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-517809(P2014-517809)
(86)(22)【出願日】2012年7月5日
(65)【公表番号】特表2014-527032(P2014-527032A)
(43)【公表日】2014年10月9日
(86)【国際出願番号】EP2012063167
(87)【国際公開番号】WO2013007603
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年7月2日
(31)【優先権主張番号】11173323.4
(32)【優先日】2011年7月8日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/506,263
(32)【優先日】2011年7月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512137348
【氏名又は名称】バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】230105223
【弁護士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】フオルツ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヒムラー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ミユラー,トーマス・ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】リーマン,サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】フオン,モルゲンシユターン,サシヤ
(72)【発明者】
【氏名】モラデイ,バヘト・アーメト
(72)【発明者】
【氏名】パツエノク,セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】ルイ,ノルベルト
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−523069(JP,A)
【文献】 特表2011−513422(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/103436(WO,A1)
【文献】 特表2003−502329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
CAPLUS/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
で表される2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドを調製する方法であって、
(A) 式(II)
【化2】
〔式中、Rは、アルキル、アルコキシアルキル、アリールアルキル、チオアルキル、アルキルチオアルキル、アルキルスルホニルアルキル、シアノアルキル、ニトロアルキル、ハロアルキル又はアリールを表す〕
で表される2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸エステル(ここで、式(II)で表される2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸エステルは、式(IV)
【化4】
〔式中、XはBr又はIを表し、Rは上記で定義されているとおりである〕
で表される化合物をCuCNと反応させることによって得られ、そして、式(IV)で表される該化合物が、式(VI)
【化5】
〔式中、Rは、上記で定義されているとおりである〕
で表される該化合物をHBr/Hの混合物と反応させることによって得られる)をMeNHと反応させること;
又は、
(B) 式(III)
【化3】
〔式中、Aは、アルキレン又はアルキルオキシアルキレンを表す〕
で表される2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸ジエステルをMeNHと反応させること;
を特徴とする、前記調製方法。
【請求項2】
式(II)で表される2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸エステル又は式(III)で表される2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸ジエステルを少なくとも1種類の塩基を用いてMeNHと反応させることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
式(I)で表される化合物が式(II)で表される2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸エステルを反応させることによって得られることを特徴とする、請求項1又は2に記載の調製方法。
【請求項4】
式(I)で表される化合物が式(III)で表される2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸ジエステルを反応させることによって得られることを特徴とする、請求項1又は2に記載の調製方法。
【請求項5】
前記塩基がナトリウムアミド、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、ナトリウムメトキシド及びトリエチルアミンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項2、3及び4の何れか一項に記載の調製方法。
【請求項6】
式(III)で表される2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸ジエステルが、式(V)
【化6】
〔式中、XはBr又はIを表し、は上記で定義されているとおりである〕
で表される化合物をCuCNと反応させることによって得られ、そして、式(V)で表される該化合物が、式(VII)
【化7】
〔式中、Aは、上記で定義されているとおりである〕
で表される該化合物をHBr/Hの混合物と反応させることによって得られることを特徴とする、請求項1、2、4及び5の何れか一項に記載の調製方法。
【請求項7】
式(IV)又は式(V)で表される化合物の1mol当たり、0.8mol〜1.4molのシアン化銅(I)を用いることを特徴とする、請求項又はに記載の調製方法。
【請求項8】
シアン化銅(I)を溶媒としてのN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド又はジメチルスルホキシドの中で使用することを特徴とする、請求項及びの何れか一項に記載の調製方法。
【請求項9】
一般式(III)
【化9】
〔式中、Aは、エチレン又はヘキシレンを表す〕
で表される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸エステル又はジエステルをメチルアミンと反応させることによって、式(I)
【化1】
【0002】
で表される2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドを調製する方法に関し、ここで、該2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸エステル又はジエステルは、シアン化銅(I)を用いてシアン化することによって対応する臭素化合物から得ることができる。その臭素化合物は、臭化水素/過酸化水素の混合物を用いて臭素化することにより容易に調製される。
【背景技術】
【0003】
式(I)で表される化合物も包含している調製方法は、種々の純度及び収率をもたらすものとして、文献中に既に記載されている(例えば、WO 2008/08252、WO 2009/085816、WO 2009/006061、WO 2009/061991、WO 2009/111553、WO 2008/070158、WO 2008/082502を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許出願公開第2008/08252号
【特許文献2】国際特許出願公開第2009/085816号
【特許文献3】国際特許出願公開第2009/006061号
【特許文献4】国際特許出願公開第2009/061991号
【特許文献5】国際特許出願公開第2009/111553号
【特許文献6】国際特許出願公開第2008/070158号
【特許文献7】国際特許出願公開第2008/082502号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、式(I)で表される2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドを高い純度、高い収率及び良好な品質で調製するための経済的な新規調製方法、特に、そのために必要とされる2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸エステル又はジエステルの精製を最前面に出すことによる新規調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明に従って、一般式(I)
【化2】
【0007】
で表される2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドを調製する方法によって達成され、ここで、該方法は、式(II)
【化3】
【0008】
〔式中、
は、アルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキル、アリールアルキル、チオアルキル、アルキルチオアルキル、アルキルスルホニルアルキル、シアノアルキル、ハロアルキル、ニトロアルキル又はアリールを表し;
は、好ましくは、メチル、エチル、(C−C12)アルキル又はアリールを表し;
は、さらに好ましくは、メチル、エチル、ペンチル、ヘキシル又は2−エチルヘキシルを表し;
は、最も好ましくは、ペンチル、ヘキシル又は2−エチルヘキシルを表す〕
で表される2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸エステル、又は、式(III)
【化4】
【0009】
〔式中、
Aは、アルキレン及びアルコキシアルキレンを表し;
Aは、好ましくは、メチレン、エチレン又はヘキシレンを表し;
Aは、さらに好ましくは、エチレン又はヘキシレンを表す〕
で表される2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸ジエステルを、MeNHと、それ以上混合させることなく又は少なくとも1種類の塩基(例えば、ナトリウムアミド、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、ナトリウムメトキシド、及び、トリエチルアミン)用いて、反応させることによる。
【0010】
式(II)及び式(III)で表される2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸エステル又はジエステルは、それぞれ、式(IV)又は式(V)
【化5】
【0011】
〔式中、いずれの場合にも、XはBr又はIを表し、及び、Aは上記で定義されているとおりである〕
で表される化合物をシアン化銅(I)と反応させることによって得ることができる。
【0012】
一般式(IV)及び一般式(V)で表されるハロゲン化エステル及びハロゲン化ジエステルは、一般式(VI)及び一般式(VII)
【化6】
【0013】
〔式中、R及びAは、上記で定義されているとおりである〕
で表される化合物を臭化水素と過酸化水素の混合物と反応させることによって得ることができる。
【0014】
本発明の調製方法は、下記スキーム(I)を用いて例証することができる:
【化7】
【0015】
ここで、R、X及びAは、上記で定義されている一般的な意味を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一般的な定義
本発明に関連して、用語「ハロゲン」(X)は、特に異なって定義されていない限り、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択されるハロゲン元素を包含し、ここで、フッ素、塩素及び臭素を使用するのが好ましく、フッ素及び塩素を使用するのが特に好ましい。置換される基は、1以上の置換基で置換されることができ、それら置換基のうちの2つ以上が存在している場合、それら置換基は同一であっても又は異なっていてもよい。
【0017】
1個以上のハロゲン原子(−X)で置換されているアルキル基、即ち、ハロアルキル基は、例えば、トリフルオロメチル(CF)、ジフルオロメチル(CHF)、CCl、CFCl、CFCH、ClCH、CFCClから選択される。
【0018】
本発明に関連して、アルキル基は、特に異なって定義されていない限り、直鎖又は分枝鎖の炭化水素基である。本発明に関連して、例えば、シアノアルキル基はシアノメチル、シアノエチルなどから選択されることができ、ニトロアルキル基はニトロメチル、ニトロエチルなどから選択されることができるという点において、アルキル基は、さらなる基で1回以上置換されることができる。アルコキシアルキル基は、アルコキシで置換されているアルキル基であり、その具体的な意味には、例えば、メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチルなどが包含される。
【0019】
アルキル及びC−C12−アルキルの定義には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、1,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、n−ヘプチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシルなどの意味が包含される。
【0020】
本発明に関連して、アリールラジカルは、特に異なって定義されていない限り、O、N、P及びSから選択される1個又は2個以上のヘテロ原子を有していて、さらなる基で置換されていてもよい芳香族炭化水素ラジカルである。
【0021】
本発明に関連して、シクロアルキル基は、特に異なって定義されていない限り、環の形状にある飽和炭化水素基である。
【0022】
本発明に関連して、アリールアルキル基及びアリールアルコキシ基は、特に異なって定義されていない限り、それぞれ、アリールで置換されているアルキル基及びアリールで置換されているアルコキシ基(ここで、該アルコキシ基は、アルキレン鎖を含み得る)である。アリールアルキルの定義には、具体的には、例えば、ベンジル及びフェニルエチルの意味が包含され、アリールアルコキシの定義には、例えば、ベンジルオキシの意味が包含される。
【0023】
本発明に関連して、アルキレン基は、特に異なって定義されていない限り、直鎖又分枝鎖のC−C10アルキレン鎖である。
【0024】
段階1
式(IV)及び式(V)で表されるブロモアントラニル酸エステル(X=Br)は、以下のようにして得ることができる:
【化8】
【0025】
5位が臭素化されているアントラニル酸誘導体は、通常、液体又は気体の形態にある元素臭素を用いて調製される(Helv. Chim. Acta 2004, 87, 1333−1356;WO 2008/065508;WO 2006/062978;WO 2008/070158;WO 2010/149359)。HBrを配合することによりアントラニル酸エステルが対応する臭化アンモニウムの形態で得られ且つアントラニル酸エステルを放出させるための付加的な精製段階が必要であるので、臭化水素と過酸化水素の組合せを使用することは有利であると考えられる。この変法の下で変換されたエステルは、驚くべきことに、困難な加水分解及び予期されるエステルの切断を行うことなく、極めて高い純度及び高い化学的収率で得られた。この変換は、さらに、溶媒として水のみを必要とし、上記文献に記載されているような酢酸などと混合させることは全く必要ではない。
【0026】
本発明の調製方法のこの段階は、好ましくは、40℃〜+120℃の温度範囲内で、さらに好ましくは、40℃〜+80℃の温度で、実施する。
【0027】
本発明の調製方法の段階(1)は、一般に、大気圧下で実施する。しかしながら、代替的に、大気圧より低い圧力又は大気圧より高い圧力を使用することも可能である。
【0028】
反応時間は、重要ではなく、そして、バッチの大きさ及び温度の関数として1時間未満から2時間以上の範囲の間で選択することができる。
【0029】
本発明の調製方法のこの段階は、式(VI)又は式(VII)で表されるエステルの1mol当たり、0.8mol〜1.4mol(好ましくは0.9mol〜1.2mol、さらに好ましくは1.05mol)の臭化水素及び0.8mol〜1.4mol(好ましくは0.9mol〜1.2mol、さらに好ましくは1.1mol)の過酸化水素を用いて実施する。
【0030】
適切な溶媒の例は、脂肪族、脂環式又は芳香族のハロゲン化炭化水素(例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン又はトリクロロエタン)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、n−ブチロニトリル、イソブチロニトリル又はベンゾニトリル)、並びに、水、脂肪族カルボン酸又は脂環式カルボン酸である。特に好ましくは、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、アセトニトリル、ブチロニトリル及び水を使用する。
【0031】
臭素化された生成物は、予め後処理に付すことなく、水相から濾過することによって二相系から除去することができるか、又は、得られた生成物の融点に応じて、溶融物の形態で二相系から除去することができる。得られた生成物は、それ以上精製することなく、シアノ化を行う次の段階(2)において使用することができる。
【0032】
段階2
式(IV)及び式(V)で表されるシアノアントラニル酸エステルは、以下のようにして得ることができる:
【化9】
【0033】
種々のジアミン、ピリジン及びホスフィンリガンドの存在下で触媒量のパラジウム触媒、ニッケル触媒及び銅触媒を用いて5−ハロゲン化アントラニル酸誘導体を変換することによってシアノアントラニル酸エステルを得ることができるということは、文献から知られている(WO 2008/070158A1、WO 2008/082502A2、WO 2009/006061A2、WO 2009/061991A1、WO 2009/085816A1、WO 2009/111553A1)。しかしながら、これらの調製方法は、以下の不利点を有している: パラジウム、ニッケル及び銅に基づく均一系触媒は、通常、単離しようとする生成物から除去するのが困難であり、従って、再利用するのも極めて困難である。同様のことは、使用するリガンドにも当てはまる。ニッケル触媒は、さらに、最終的に生成物の不純物となる場合、毒物学的に重大である。その結果、多くの場合、費用のかかる面倒な精製が必要である。パラジウム触媒及びニッケル触媒は、さらに重要なことには、通常、多少の脱ハロゲン化を進行させ、芳香族化学種は期待されるシアン化物の代わりにプロトンを有する。さらに、上記文献中には、化学量論的量のシアン化銅(I)を用いた2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸アルキルのシアン化についての例も存在していない。2−アミノ−5−ブロモ−3−エチル安息香酸エチルの実験的に検証されたシアン化は1つだけ存在している:V.A.Sniekus et al. J. Org. Chem. 1972, 37, 2845−2848。精製には、多くの場合、費用がかかる面倒な操作が必要である(G.P.Ellis et al., Chem. Rev. 1987, 87, 779−794;Friedman, Schechter, J. Org. Chem. 1961, 26, 2522−2524)。R=C−Cアルキルである場合の式(II)における置換パターンは、以下の参照文献に既に記載されている:WO 2008/070158A1、WO 2008/082502A2、WO 2009/006061A2、WO 2009/061991A1、WO 2009/085816A1、WO 2009/111553A1。しかしながら、これらの未審査の出願には、式(IV)又は式(V)で表されるアントラニル酸エステルにおける臭素−シアノ交換に関する実験的に検証された例は全く記載されていない。本発明者らは、驚くべきことに、上記調製方法とは対照的に、溶媒としてのN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド及びジメチルスルホキシドの中で化学量論的なシアン化銅(I)を使用することで選択的な反応が起こるということを見いだした。この選択的な反応は、アンモニア水を用いた銅塩の除去による単離後、式(II)及び式(III)で表されるシアン化エステルを適切な純度で良好な収率で生じさせる。
【0034】
本発明の調製方法のこの段階は、好ましくは、100℃〜+200℃の温度範囲内で、さらに好ましくは、140℃〜+180℃の温度で、実施する。
【0035】
本発明の調製方法の段階(2)は、一般に、大気圧下で実施する。しかしながら、代替的に、大気圧より低い圧力又は大気圧より高い圧力を使用することも可能である。
【0036】
反応時間は、重要ではなく、そして、バッチの大きさ及び温度の関数として1時間未満から2時間以上の範囲の間で選択することができる。
【0037】
本発明の調製方法のこの段階は、式(IV)又は式(V)で表されるエステルの1mol当たり、0.8mol〜1.4mol(好ましくは0.9mol〜1.2mol、さらに好ましくは1.00mol)のシアン化銅(I)を用いて実施する。
【0038】
適切な溶媒の例は、脂肪族、脂環式又は芳香族のハロゲン化炭化水素(例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン又はリクロロエタン)、エーテル類(例えば、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン又はアニソール)、ニトリル類(例えば、ベンゾニトリル)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドン又はヘキサメチルホスホルアミド)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)、スルホン類(例えば、スルホラン)、ピリジン誘導体(例えば、ピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン)であり、特に好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドン、ピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、2−ピコリン、3−ピコリンを使用する。
【0039】
式(II)及び式(III)で表されるシアン化生成物は、最初は銅錯体として得られ、そして、アンモニア水、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、水性塩化鉄(III)で洗浄することによって脱錯体化することが可能であり、及び、得られた水性固体から単離することが可能であるか又は適切な溶媒を用いた抽出により単離することが可能である。得られた式(II)及び式(III)で表される生成物は、それ以上精製することなく、その後のアミノ分解を行わせる段階(3)で使用することが可能である。
【0040】
段階3
式(I)で表される2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドは、以下のようにして得ることができる:
【化10】
【0041】
式(I)で表される2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドは、式(II)で表される適切な2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸エステル又は式(III)で表される適切な2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸ジエステルを、触媒としての塩基と混合させて又は混合させることなく、メチルアミンと反応させることによって、高い収率且つ高い純度で得ることができる。文献には、塩基としてのナトリウムメトキシドと混合させることによるアミノ分解(「R.L.Betts et al., J. Am. Chem. Soc. 1937, 59, 1568−1572」、「R.J.de Feoand et al., J. Org. Chem. 1963, 28, 2915−2917」)、塩基としてのナトリウムアミド、水素化ナトリウム、グリニャール試薬及びブチルリチウムと混合させることによるアミノ分解(「T.Hogberg, J. Org. Chem. 1987, 52, 2033−2036」の4−8参照)が記載されている。シアン化ナトリウムもアミノ分解用の塩基として文献に記載されている(T.Hogberg, J. Org. Chem. 1987, 52, 2033−2036)。シアノアントラニル酸誘導体のアミノ分解は、WO 2006/062978の中に既に記載されているが、実験による検証は成されていない。ナトリウムメトキシドを混合させることによるメタノール中でのシアノアントラニル酸エステルとメチルアミンの反応は、高い収率及び高い純度で完全に変換されるまで進行することが観察された。該反応は、ナトリウムメトキシドを混合させることなく実施することも可能である。さらに、ニトリル官能基に対して作用して望ましくない副産物を形成させることもない。
【0042】
本発明の調製方法のこの段階は、好ましくは、20℃〜+100℃の温度範囲内で、好ましくは、20℃〜80℃の温度で、さらに好ましくは、20℃〜60℃の温度で実施する。
【0043】
本発明の調製方法の段階(3)は、一般に、大気圧下で実施する。しかしながら、代替的に、大気圧より高い圧力を使用することも可能である。
【0044】
反応時間は、重要ではなく、そして、バッチの大きさ及び温度の関数として1時間未満から2時間以上の範囲の間で選択することができる。
【0045】
該反応は、好ましくは、回分式で実施する。しかしながら、連続反応法も同様に可能である。
【0046】
本発明の調製方法のこの段階は、式(IV)又は式(V)で表されるエステルの1mol当たり、2mol〜20mol(好ましくは、5mol〜15mol、さらに好ましくは、10mol)のメチルアミンを用いて実施する。
【0047】
該反応は、塩基を混合させることなく実施することができる。塩基を使用する場合は、以下のものが適している: 例えば、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムアミド、グリニャール試薬、ブチルリチウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン又は水素化ナトリウム。特に好ましいのは、アルコキシド塩基(ROM、R=アルキル、M=Na、K)、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムである。
【0048】
反応条件下で実質的に不活性である全ての溶媒を使用することが可能であり、そのような溶媒の例は、脂肪族、脂環式又は芳香族のハロゲン化炭化水素(例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン又はトリクロロエタン)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、メチルtert−アミルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン又はアニソール)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、n−ブチルニトリル、イソブチルニトリル又はベンゾニトリル)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドン又はヘキサメチルホスホルアミド)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド、スルホン類(例えば、スルホラン)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、及び、さらに、溶媒混合物である。特に好ましくは、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブチロニトリルを使用する。
【0049】
当該2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドは、反応の終わりに沈澱物として沈澱し、そして、濾過することにより、純度約93〜95重量%(HPLC)、収率約82〜90%で、得ることができる。
【実施例】
【0050】
調製実施例
以下の調製実施例によって本発明について例証するが、該調製実施例は本発明を限定するものではない。
【0051】
実施例1
2−アミノ−3−メチル安息香酸メチル
H NMR(600MHz,(d−DMSO):δ=7.64(dd,1H),7.19(d,1H),6.50(pq,3H,Ar−H,NH2),3.79(s,3H),2.12(s,3H))。
【0052】
2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸メチル
2−アミノ−3−メチル安息香酸メチル(142.1g、0.843mol、純度:98% 定量的NMR)を240mLのHOに溶解させた溶液に、30℃で臭化水素(HO中48%、149.2g、0.885mol)を滴下して加え、徐々に混合させる。得られた懸濁液に2時間かけて過酸化水素(HO中30%、105.1g、0.927mol)を滴下して加え、混合させ、温度を70℃未満に維持する。その後1時間撹拌した後、NaHSO(HO中39%、33.7g、0.126mol)を少量ずつ添加する(過酸化物試験は陰性であった)。得られた懸濁液を、NaCO(0.1eq.、9.0g、0.084mol)を少量ずつ添加して、pH7−8に調節する。濾過して真空乾燥キャビネット内で乾燥させた後、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸メチルが薄茶色の固体として単離される。収量:204.2g、理論値の97.7%、純度:98.5%(定量的NMR)。
【0053】
H NMR(600MHz,(d−DMSO):δ=7.70(d,1H),7.36(pt,1H),6.63(br s,2H),3.80(s,3H),2.12(s,3H))。
【0054】
上記で記載した方法(実施例1)を繰り返して、2−アミノ−3−メチル安息香酸ペンチル(2.28g、10mmol)を臭化水素(2.21g、13.1mmol、水中48%)及び過酸化水素(1.72g、15.0mmol、水中30%)と反応させた。実施例1と同様の後処理及び付加的なカラムクロマトグラフィーに付した後、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸ペンチル(2.7g、理論値の88.3%、>99面積% LC)が、黄色の固体として得られた。
【0055】
H NMR(600MHz,(CDCN):δ=7.81(d,1H),7.32(pt,1H),6.10(br s,2H),4.23(t,2 H),2.12(s,3H),1.74(m,2H),1.45(m,4H),0.93(m,3H))。
【0056】
上記で記載した方法(実施例1)を繰り返して、2−アミノ−3−メチル安息香酸ヘキシル(2.50g、10mmol)を臭化水素(2.21g、13.1mmol、水中48%)及び過酸化水素(1.72g、15.0mmol、水中30%)と反応させた。実施例1と同様の後処理及び付加的なカラムクロマトグラフィーに付した後、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸ヘキシル(2.5g、理論値の78.8%、>99面積% LC)が、褐色の油状物として得られた。
【0057】
H NMR(600MHz,(CDCN):δ=7.80(d,1H),7.31(d,1H),6.10(br s,2H),4.23(t,2 H),2.12(s,3H),1.73(m,2H),1.46(m,6H),0.91(m,3H))。
【0058】
上記で記載した方法(実施例1)を繰り返して、2−アミノ−3−メチル安息香酸2−エチルヘキシル(3.00g、10.6mmol)を臭化水素(2.33g、13.8mmol、水中48%)及び過酸化水素(1.81g、15.9mmol、水中30%)と反応させた。実施例1と同様の後処理及び付加的なカラムクロマトグラフィーに付した後、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸2−エチルヘキシル(2.7g、理論値の74.0%、>99面積% LC)が、褐色の油状物として得られた。
【0059】
H NMR(600MHz,(CDCN):δ=7.79(d,1H),7.32(d,1H),6.11(br s,2H),4.17(d,2H),2.13(s,3H),1.70(m,7H),0.94(m,7H))。
【0060】
上記で記載した方法(実施例1)を繰り返して、2−アミノ−3−メチル安息香酸2−エチル(16.29g、90.0mmol)を臭化水素(15.93g、94.5mmol、水中48%)及び過酸化水素(11.25g、99.0mmol、水中30%)と反応させ、実施例1と同様の後処理に付した後、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸エチル(20.7g、理論値の89.1%、>99面積% LC)が、褐色の油状物として得られた。
【0061】
H NMR(600MHz,(CDCN):δ=7.81(d,1H),7.32(pq,1H),6.10(br s,2H),4.28(q,2H),1.34(t,3H))。
【0062】
上記で記載した方法(実施例1)を繰り返して、2−アミノ−3−メチル安息香酸エタン−1,2−ジイル(2.0g、5.89mmol)を臭化水素(2.09g、12.3mmol、水中48%)及び過酸化水素(1.47g、12.9mmol、水中30%)と反応させ、実施例1と同様の後処理に付した後、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸エタン−1,2−ジイル(2.4g、理論値の80.0%、95.5面積% LC)が、淡黄色の固体として得られた。
【0063】
H NMR(600MHz,(d−DMSO):δ=7.71(d,1H),7.36(d,1H),6.63(br s,2H),4.56(s,2H),2.11(s,3H))。
【0064】
上記で記載した方法(実施例1)を繰り返して、2−アミノ−3−メチル安息香酸ヘキサン−1,6−ジイル(4.0g、10.4mmol)を臭化水素(3.57g、21.1mmol、水中48%)及び過酸化水素(2.52g、22.1mmol、水中30%)と反応させ、実施例1と同様の後処理に付した後、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸ヘキサン−1,6−ジイル(5.36g、理論値の90.9%、92.6面積% LC)が、褐色の固体として得られた。
【0065】
H NMR(600MHz,(d−DMSO):δ=7.69(d,1H),7.35(d,1H),6.63(br s,2H),4.22(t,2H),2.11(s,3H),1.73(m,2H),1.45(m,2H))。
【0066】
上記で記載した方法(実施例1)を繰り返して、2−アミノ−3−メチル安息香酸2−メトキシエチル(7.00g、33.4mmol)を臭化水素(5.92g、35.1mmol、水中48%)及び過酸化水素(4.17g、36.7mmol、水中30%)と反応させ、実施例1と同様の後処理に付した後、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸2−メトキシエチル(8.50g、理論値の80.7%、91.5面積% LC)が、褐色の固体として得られた。
【0067】
H NMR(600MHz,(d−DMSO):δ=7.70(d,1H),7.37(d,1H),6.63(br s,2H),4.34(t,2H),3.65(t,2H),3.31(s,3H),2.10(s,3H))。
【0068】
2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸メチル(5g、20.4mmol)をベンジルアルコール(4.43g、40.9mmol)とナトリウムメトキシド(0.37g、2.04mmol、メタノール中30%)に溶解させた溶液をキシレン(10mL)中で5時間還流した。次いで、水を添加し、相を分離させ、有機溶媒を合して減圧下で除去した。その残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸ベンジル(3.40g、理論値の43.3%、83.6面積% GC)を薄茶色の固体として得た。
【0069】
H NMR(600MHz,(CDCl):δ=7.92(s,1H),7.44−7.28(m,6H),5.86(s,2H),5.33(s,2H),2.14(s,3H))。
【0070】
実施例2
2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸メチル(100g、0.393mol、96% 定量的NMR)、シアン化銅(I)(36.3g、0.401mol)及びN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)(206g、200mL、2.084mol)を撹拌しながら4時間170℃に加熱する。その反応バッチを120℃まで冷却し、350mLのHO(90℃)を30分間かけて滴下して加え、得られた懸濁液を濾過する。得られた固体をアンモニア(200g、HO中12%)で2回洗浄し、及び、100mLの水で2回洗浄する。真空乾燥キャビネット内で50℃で乾燥させた後、2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸メチルが灰色の固体として得られる。収量:69.0g、理論値の88.2%、純度:95.6% 定量的NMR、1500ppm Cu)。
【0071】
H NMR(600MHz,(MeOD):δ=8.04(d,1H),7.40(m,1H),4.85(s,3H),2.18(s,3H))。
【0072】
上記で記載した方法(実施例2)を繰り返して、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸ペンチル(2.3g、7.59mmol)をN,N−ジメチルアセトアミドの中で170℃でシアン化銅(0.69g、7.74mmol)と6時間反応させた。実施例2と同様の後処理並びに付加的な酢酸エチルを用いた抽出及び5%エチレンジアミン水溶液での洗浄に付した後、2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸ペンチル(1.78g、理論値の89.2%、93.6面積% LC)が、褐色の油状物として得られた。
【0073】
H NMR(600MHz,(CDCN):δ=8.08(d,1H),7.43(s,1H),6.67(br s,2H),4.24(t,2H),2.15(s,3H),1.75(m,2H),1.40(m,4H),1.05(m,3H))。
【0074】
上記で記載した方法(実施例2)を繰り返して、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸ヘキシル(2.2g、6.79mmol)をN,N−ジメチルアセトアミドの中で170℃でシアン化銅(0.62g、6.93mmol)と6時間反応させた。実施例2と同様の後処理並びに付加的な酢酸エチルを用いた抽出及び5%エチレンジアミン水溶液での洗浄に付した後、2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸ヘキシル(1.66g、理論値の85.5%、91.1面積% LC)が、褐色の油状物として得られた。
【0075】
H NMR(600MHz,(CDCN):δ=8.08(d,1H),7.43(s,1H),6.67(br s,2H),4.24(t,2H),2.14(s,3H),1.74(m,2H),1.39(m,6H),0.92(m,3H))。
【0076】
上記で記載した方法(実施例2)を繰り返して、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸2−エチルヘキシル(2.00g、5.84mmol)をN,N−ジメチルアセトアミドの中で160℃でシアン化銅(0.53g、5.96mmol)と8時間反応させた。実施例2と同様の後処理及び付加的な5%エチレンジアミン水溶液での洗浄に付した後、2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸2−エチルヘキシル(1.45g、理論値の76.7%、89.1面積% LC)が、褐色の油状物として得られた。
【0077】
H NMR(400MHz,CDCN):δ=8.06(d,1H),7.43(s,1H),6.70(br. s,2H),4.19(d,2H),2.15(s,3H),1.71(m,1H),1.39(m,8 H),0.90(m,6H)。
【0078】
上記で記載した方法(実施例2)を繰り返して、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸エチル(2.00g、7.65mmol)をN,N−ジメチルアセトアミドの中で160℃でシアン化銅(0.70g、7.80mmol)と8時間反応させた。実施例2と同様の後処理に付した後、2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸エチル(1.30g、理論値の80.2%、96.3面積% LC)が、褐色の固体として得られた。
【0079】
H NMR(400MHz,CDCN):δ=8.09(d,1H),7.43(s,1H),6.68(br s,2H),4.30(q,2H),2.13(s,3H),1.35(t,3H)。
【0080】
上記で記載した方法(実施例2)を繰り返して、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸エタン−1,2−ジイル(2.00g、3.94mmol)をN−メチルピロリドンの中で170℃でシアン化銅(0.72g、8.07mmol)と4時間反応させた。実施例2と同様の後処理及び付加的な5%エチレンジアミン水溶液での洗浄に付した後、2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸エタン−1,2−ジイル(1.54g、理論値の81.9%、79.2面積% LC)が、褐色の固体として得られた。
【0081】
H NMR(600MHz,d−DMSO):δ=8.00(d,1H),7.54(s,1H),7.27(br s,2H),4.60(s,2H),2.12(s,3H)。
【0082】
上記で記載した方法(実施例2)を繰り返して、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸ヘキサン−1,6−ジイル(4.00g、6.86mmol)をN−メチルピロリドンの中で170℃でシアン化銅(1.29g、14.06mmol)と4時間反応させた。実施例2と同様の後処理及び付加的な5%エチレンジアミン水溶液での洗浄に付した後、2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸ヘキサン−1,2−ジイル(3.20g、理論値の82.7%、77.0面積% LC)が、褐色の固体として得られた。
【0083】
H NMR(600MHz,(d−DMSO):δ=7.98(d,1H),7.53(s,1H),7.28(br s,2H),4.25(t,2H),2.14(s,3H),1.74(m,2H),1.46(m,2H)。
【0084】
上記で記載した方法(実施例2)を繰り返して、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸2−メトキシエチル(5.00g、15.88mmol)をN−メチルピロリドンの中で170℃でシアン化銅(1.49g、16.67mmol)と6時間反応させた。実施例2と同様の後処理並びに付加的な酢酸エチルを用いた抽出及び5%エチレンジアミン水溶液での洗浄に付した後、2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸2−メトキシエチル(0.45g、理論値の11.6%、95.6面積% LC)が、褐色の固体として得られた。
【0085】
H NMR(600MHz,(CDCN):δ=8.08(d,1H),7.45(s,1H),6.67(br s,2H),4.38(t,2H),3.68(t,2H),3.36(s,3H),2.15(s,3H)。
【0086】
上記で記載した方法(実施例2)を繰り返して、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸ベンジル(3.00g、7.38mmol)をN−メチルピロリドンの中で170℃でシアン化銅(0.772g、7.98mmol)と6時間反応させた。実施例2と同様の後処理並びに付加的な酢酸エチルを用いた抽出及び5%エチレンジアミン水溶液での洗浄及びカラムクロマトグラフィーに付した後、2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸ベンジル(1.00g、理論値の47.9%、97.0面積% LC)が、薄茶色の固体として得られた。
【0087】
H NMR(600MHz,(CDCl3):δ=8.16(s,1H),7.44−7.35(m,6H),6.40(s,2H),5.33(s,2H),2.17(s,3H)。
【0088】
実施例3
2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミド
2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸エチル(50g、0.251mol)をメタノール(175mL)に溶解させた溶液にメチルアミン(117g、3.77mol)を入れ、ナトリウムメトキシド(1.13g、メタノール中30%強度、6.28mmol)を添加し、その反応混合物を室温で一晩撹拌する。その後、100mLの22%強度NaOHを添加し、バッチを10℃まで冷却する。得られた懸濁液を濾過し、得られた固体をメタノール:水(1:1)で1回洗浄し、次いで、50mLの水で洗浄する。固体を真空乾燥キャビネット内で50℃で乾燥させる。2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドが僅かにベージュ色の固体として単離される。収率:理論値の80.3%、純度:94.9% 定量的LC、73ppm Cu)。
【0089】
H NMR(600MHz,(CDCN):δ=7.65(d,1H),7.38(s,1H),6.91(br s,1H),6.52(br s,2 H),2.82(d,3H),2.12(s,3H)。
【0090】
上記で記載した方法(実施例3)を繰り返して、2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸ペンチル(1.50g)をメチルアミン(10.8g、メタノール中40%)及びナトリウムメトキシド(441mg、0.12mmol、メタノール中30%)と一緒に室温で18時間撹拌した。その反応バッチ全体を減圧蒸留し、ジイソプロピルエーテルと一緒に撹拌した。2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミド(0.79g、理論値の70.6%、96.4面積% LC)が、褐色の固体として得られた。
【0091】
上記で記載した方法(実施例3)を繰り返して、2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸ヘキシル(1.40g、4.89mmol)をメチルアミン(10.8g、139mmol、メタノール中40%)及びナトリウムメトキシド(441mg、0.12mmol、メタノール中30%)と一緒に室温で18時間撹拌した。その反応バッチ全体を減圧蒸留し、ジイソプロピルエーテルと一緒に撹拌した。2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミド(0.75g、理論値の75.8%、93.6面積% LC)が、褐色の固体として得られた。
【0092】
上記で記載した方法(実施例3)を繰り返して、2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸2−エチルヘキシル(1.00g、3.09mmol)をメチルアミン(3.60g、46.3mmol、メタノール中40%)及び1滴のナトリウムメトキシド(メタノール中30%)と一緒に室温で18時間撹拌した。その反応バッチ全体を減圧蒸留し、2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミド(730mg、理論値の91.4%、73.1面積% LC)が、褐色の固体として得られた。
【0093】
上記で記載した方法(実施例3)を繰り返して、2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸エチル(0.50g、2.40mmol)をメチルアミン(3.73g、48mmol、メタノール中40%)及びナトリウムメトキシド(22mg、メタノール中30%)と一緒に室温で18時間撹拌した。その反応バッチ全体を減圧蒸留し、2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミド(0.44g、理論値の95.9%、99.0面積% LC)が、薄茶色の固体として得られた。
【0094】
上記で記載した方法(実施例3)を繰り返して、2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸エタン−1,2−ジイル(20mg、0.04mmol)をメチルアミン(5.40g、69.5mmol、メタノール中40%)及び1滴のナトリウムメトキシド(メタノール中30%)と一緒に室温で18時間撹拌した。その反応バッチ全体を減圧蒸留し、カラムクロマトグラフィーによる精製に付した後、2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミド(8mg、理論値の47.2%、93.1面積% LC)が、薄茶色の固体として得られた。
【0095】
上記で記載した方法(実施例3)を繰り返して、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸ヘキサン−1,6−ジイル(220mg、0.4mmol)をメチルアミン(2g、25.7mmol、メタノール中40%)及び1滴のナトリウムメトキシド(メタノール中30%)と一緒に室温で18時間撹拌した。その反応バッチ全体を減圧蒸留し、カラムクロマトグラフィーによる精製に付した後、2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミド(61mg、理論値の50.5%、94.6面積% LC)が、褐色の固体として得られた。
【0096】
上記で記載した方法(実施例3)を繰り返して、2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸2−メトキシエチル(200mg、0.81mmol)をメチルアミン(5.40g、69.5mmol、メタノール中40%)及び1滴のナトリウムメトキシド(メタノール中30%)と一緒に室温で18時間撹拌した。その反応バッチ全体を減圧蒸留し、カラムクロマトグラフィーによる精製に付した後、2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミド(150mg、理論値の95.0%、97.8面積% LC)が、薄茶色の固体として得られた。
【0097】
上記で記載した方法(実施例3)を繰り返して、2−アミノ−5−シアノ−3−メチル安息香酸2−ベンジル(1.00g、3.75mmol)をメチルアミン(4.78g、61.6mmol、メタノール中40%)及び1滴のナトリウムメトキシド(メタノール中30%)と一緒に室温で18時間撹拌した。その反応バッチ全体を減圧蒸留し、カラムクロマトグラフィーによる精製に付した後、2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミド(616mg、理論値の85.4%、98.4面積% LC)が、無色の固体として得られた。