(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955959
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】調整可能な切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 29/00 20060101AFI20160707BHJP
B23B 27/16 20060101ALI20160707BHJP
B23G 5/18 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
B23B29/00 E
B23B27/16 A
B23G5/18
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-522211(P2014-522211)
(86)(22)【出願日】2012年7月9日
(65)【公表番号】特表2014-521525(P2014-521525A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】IL2012050239
(87)【国際公開番号】WO2013014666
(87)【国際公開日】20130131
【審査請求日】2015年6月23日
(31)【優先権主張番号】61/511,836
(32)【優先日】2011年7月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】306037920
【氏名又は名称】イスカーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギル ヘクト
【審査官】
長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−57018(JP,U)
【文献】
米国特許第2903781(US,A)
【文献】
米国特許第5967705(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第1935538(EP,A1)
【文献】
実開平1−148206(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 29/00
B23B 27/16
B23G 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削インサート(22)と、工具ホルダ(24)と、調整部材(26、126)と、を備え、
前記切削インサート(22)は少なくとも1つの切削部分(28)を有し、
前記工具ホルダ(24)はインサートホルダ部分(30、130)およびシャンク部分(32)を有し、前記インサートホルダ部分(30、130)は前記シャンク部分(32)に強固に固定され、
前記調整部材(26、126)は、前記インサートホルダ部分(30、130)に非ねじ込み式で保持され、前記切削インサート(22)に動作可能に接続され、
前記動作可能な切削部分(28)がインサート切削角(α)でワークピース(36)に接触する切削位置において、前記切削インサート(22)は留め具(34)によって前記インサートホルダ部分(30、130)に着脱自在に固定され、
前記調整部材(26、126)を動かすことによって、前記インサート切削角(α)が増大または減少されることを特徴とする切削工具(20、120)。
【請求項2】
単一の調整部材(26、126)を備えることを特徴とする請求項1に記載の切削工具(20、120)。
【請求項3】
前記調整部材(26、126)は前記切削インサート(22)に直接係合することを特徴とする請求項1に記載の切削工具(20、120)。
【請求項4】
前記調整部材(26、126)を動かすことは、前記切削工具(20、120)からいずれの構成要素も取り外すことなく実施されることを特徴とする請求項1に記載の切削工具(20、120)。
【請求項5】
前記調整部材(26、126)は第1の軸(A1)を有し、
前記調整部材(26、126)を動かすことは、前記調整部材(26、126)をその第1の軸(A1)を中心として回転させることによって実施されることを特徴とする請求項1に記載の切削工具(20、120)。
【請求項6】
前記インサート切削角(α)は、前記調整部材(26、126)をその第1の軸(A1)を中心として一方向に回転させることによって増大され、また、前記調整部材(26、126)をその第1の軸(A1)を中心として反対方向に回転させることによって減少されることを特徴とする請求項5に記載の切削工具(20、120)。
【請求項7】
前記調整部材(26、126)は前記第1の軸(A1)に対して垂直である平面的な底面(42、142)を有し、
前記平面的な底面(42、142)は前記インサートホルダ部分(30、130)上の対応する座面(44、144)に接触することを特徴とする請求項5に記載の切削工具(20、120)。
【請求項8】
前記インサート切削角(α)は、前記調整部材(26、126)のその第1の軸(A1)を中心とした1回転未満の範囲内で得られる調整範囲(R)を有することを特徴とする請求項5に記載の切削工具(20、120)。
【請求項9】
前記調整範囲(R)は少なくとも6°の角度を有することを特徴とする請求項8に記載の切削工具(20、120)。
【請求項10】
前記切削工具(20、120)はねじ切り作業で使用され、
前記切削インサート(22)は複数の切削部分(28)を有し、各切削部分(28)は2つの切刃(38、40)を有し、
前記インサート切削角(α)は、回転するワークピース(36)の中心軸(C)を基準とした前記動作可能な切削部分(28)の前記2つの切刃(38、40)の傾斜角であることを特徴とする請求項1に記載の切削工具(20、120)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの切削部分(28)の各々はインサート傾斜軸(A3)を有し、
前記インサートホルダ部分(30、130)は第1の平面(P1)を有し、
前記動作可能な切削部分(28)の前記インサート傾斜軸(A3)は、前記インサート切削角(α)の各値において、前記第1の平面(P1)に対して垂直であることを特徴とする請求項1に記載の切削工具(20、120)。
【請求項12】
前記調整部材(26、126)は前記インサートホルダ部分(30、130)上の一定の並進位置にあることを特徴とする請求項1に記載の切削工具(20、120)。
【請求項13】
前記調整部材(26、126)は第1の軸(A1)を有し、
前記調整部材(26、126)を動かすことは、単に、前記調整部材(26、126)をその第1の軸(A1)を中心として回転させることによって実施されることを特徴とする請求項1に記載の切削工具(20、120)。
【請求項14】
前記調整部材(26、126)はオペレータによって直接動かされることが可能であることを特徴とする請求項1に記載の切削工具(20、120)。
【請求項15】
ワークピース(36)に対する切削工具(20、120)のインサート切削角(α)を増大または減少させる方法であって、前記切削工具(20、120)は、
切削インサート(22)と、工具ホルダ(24)と、調整部材(26、126)と、
を備え、
前記切削インサート(22)は少なくとも1つの切削部分(28)を有し、
前記工具ホルダ(24)はインサートホルダ部分(30、130)およびシャンク部分(32)を有し、前記インサートホルダ部分(30、130)は前記シャンク部分(32)に強固に固定され、
前記調整部材(26、126)は、前記インサートホルダ部分(30、130)に非ねじ込み式で保持され、前記切削インサート(22)に動作可能に接続され、
前記切削インサート(22)は留め具(34)によって前記インサートホルダ部分(30、130)に着脱自在に固定され、
前記方法は、
前記留め具(34)を緩めるステップと、
前記切削工具(20、120)からいずれの構成要素も取り外すことなく前記調整部材(26、126)を動かすステップと、
前記留め具(34)を再び締めるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記調整部材(26、126)は前記インサートホルダ部分(30、130)上の一定の並進位置にあることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記調整部材(26、126)は第1の軸(A1)を有し、
前記調整部材(26、126)を動かすことは、単に、前記調整部材(26、126)をその第1の軸(A1)を中心として回転させることによって実施されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記調整部材(26、126)は前記切削インサート(22)に直接係合し、
前記調整部材(26、126)はオペレータによって直接動かされることが可能であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
インサートホルダ部分(30、130)を有する工具ホルダ(24)と、
前記インサートホルダ部分(30、130)に着脱自在に固定される切削インサート(22)であって、関連するインサート傾斜軸(A3)を備える動作可能な切削部分(28)と、前記インサート傾斜軸(A3)から離れて位置する能動的支持領域(66)と、を有する切削インサート(22)と、
前記インサートホルダ部分(30、130)に非ねじ込み式で保持される調整部材(26、126)であって、第1の軸(A1)と、前記能動的支持領域(66)にて前記切削インサート(22)に少なくとも第1の部分が対向する支持面(50、150)と、を有する調整部材(26、126)と、
を備え、
前記第1の軸(A1)を中心として前記インサートホルダ部分(30、130)に対して前記調整部材(26、126)が回転することにより、前記支持面(50、150)の第2の部分が前記能動的支持領域(66)に対向するようになり、前記インサートホルダ部分(30、130)に対する、前記能動的支持領域(66)における固定される切削インサート(22)の高さおよび前記インサート傾斜軸(A3)を中心とした固定される切削インサート(22)の傾きの両方が変化することを特徴とする切削工具(20、120)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には金属切削プロセスで使用するための、詳細にはねじ切り作業で使用するための、調整可能な切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ねじ切り作業で使用される切削工具の分野では、固定可能なねじ切りインサートを着脱自在に直接支持する交換可能なアンビルまたはシムが、ねじ切りインサートの傾斜角を調整し、切削されるねじのねじれ角を等しくし、それによって切刃のためのクリアランスを等しくする方法が、長い間提供されている。
【0003】
特許文献1には、交換可能なアンビルまたはシムの必要性をなくす、ねじ切削インサート(thread cutting insert)のための調整可能なホルダが開示されている。この調整可能なホルダは、部分的に円錐状の形態の凹部を備えるシャンクと、凹部内に配置される嵌合部分円錐ブロックと、を備える。ねじ切削インサートは止めねじによって円錐ブロック上に配置され、円錐ブロックは凹部内で角度調整されることができ、それにより、切削インサートの対応面と切削されるねじのねじれ角とが位置合わせされる。シャンク内のスロットは、円錐ブロック内の半径方向のねじ切り孔に角度的に位置合わせされる。スロット内に位置するボルトは、ねじ切り孔に係合し、その調整位置で凹部内の円錐ブロックをクランプする。
【0004】
特許文献2には、切削インサートに接触しない切刃調整部材を組み込む工具ホルダアセンブリが開示されている。この工具ホルダアセンブリは工具ホルダおよびインサートホルダも含む。ここでは、ねじおよびクランプによってインサートホルダ内に切削インサートが配置され、工具ホルダのインサート受け端部(insert receiving end)の弓形曲面に合うようにインサートホルダの外側曲面が構成される。切刃調整部材は、角度が付けられた上面を有する精密なグラウンド調整ワッシャ(ground adjustment washer)の形態である。調整ワッシャの角度が付けられた上面で静止するヘッドを有する調整ボルトは、インサート受け端部のスロットを通るように突出しており、インサートホルダのねじ孔に係合する。上面の角度は、ねじ孔にボルトが係合するスロット内の回転位置を決定し、それによって固有の切込み角を画成する。調整ワッシャは、上面の異なる切込み角を有する他の調整ワッシャのために、再方向づけされるか交換されることができ、異なる切込み角を画成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3520042号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0253847号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、改良された調整可能な切削工具を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、交換可能なアンビルまたはシムを用いない調整可能な切削工具を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、分離したシャンク部品およびインサートホルダ部品を用いない調整可能な切削工具を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、容易に使用でき且つオペレータが扱いやすい調整手段を有する調整可能な切削工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従って切削工具が提供される。この切削工具は、
切削インサートと、工具ホルダと、調整部材と、を備え、
切削インサートは少なくとも1つの切削部分を有し、
工具ホルダはインサートホルダ部分およびシャンク部分を有し、インサートホルダ部分はシャンク部分に強固に固定され、
調整部材は、インサートホルダ部分に非ねじ込み式で保持され、切削インサートに動作可能に接続され、
動作可能な切削部分がインサート切削角でワークピースに接触する切削位置において、切削インサートは留め具によってインサートホルダ部分に着脱自在に固定され、
調整部材を動かすことによって、インサート切削角が増大または減少される。
【0011】
また、本発明に従って、ワークピースに対する切削工具のインサート切削角を増大または減少させる方法が提供される。この切削工具は、
切削インサートと、工具ホルダと、調整部材と、を備え、
切削インサートは少なくとも1つの切削部分を有し、
工具ホルダはインサートホルダ部分およびシャンク部分を有し、インサートホルダ部分はシャンク部分に強固に固定され、
インサート調整部材は、インサートホルダ部分に非ねじ込み式で保持され、切削インサートに動作可能に接続され、
切削インサートは留め具によってインサートホルダ部分に着脱自在に固定される。
この方法は、
留め具を緩めるステップと、
切削工具からいずれの構成要素も取り外すことなく調整部材を動かすステップと、
留め具を再び締めるステップと、
を含む。
【0012】
さらに、本発明に従って切削工具が提供される。この切削工具は、
インサートホルダ部分を有する工具ホルダと、
インサートホルダ部分に着脱自在に固定される切削インサートであって、関連するインサート傾斜軸(insert tilt axis)を備える動作可能な切削部分と、インサート傾斜軸から離れて位置する能動的支持領域(active support zone)と、を有する切削インサートと、
インサートホルダ部分に非ねじ込み式で保持される調整部材であって、第1の軸と、能動的支持領域にて切削インサートに少なくとも第1の部分が対向する支持面と、を有する調整部材と、
を備え、
第1の軸を中心としてインサートホルダ部分に対して調整部材が回転することにより、支持面の第2の部分が能動的支持領域に対向するようになり、インサートホルダ部分に対する、能動的支持領域における固定される切削インサートの高さおよびインサート傾斜軸を中心とした固定される切削インサートの傾きの両方が変化する。
【0013】
より良い理解のために、単に例示の目的で添付の図面を参照して本発明を以下に説明する。図中の鎖線は、部材の部分図のための切断境界を表す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に従った切削工具を示す斜視図である。
【
図1a】
図1に示される切削工具を示す詳細な斜視図である。
【
図2】
図1に示される切削工具を示す上面図である。
【
図3】
図1に示される切削工具を示す分解斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に従った調整部材を示す上面図である。
【
図5】
図4に示される調整部材を示す正面図である。
【
図6】本発明のいくつかの実施形態に従った切削インサートを示す上面図である。
【
図7】
図6に示される切削インサートを示す底面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に従った切削工具を示す斜視図である。
【
図9】
図8に示される切削工具を示す分解斜視図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に従った調整部材を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
最初に、本発明のいくつかの実施形態に従った切削工具20、120を示す
図1から
図3、
図8および
図9に注目する。切削工具20、120は、切削インサート22、工具ホルダ24、および調整部材26、126を含む。
【0016】
切削インサート22は少なくとも1つの切削部分28を有する。切削インサート22は、炭化タングステンなどの焼結炭化物を加圧成形(form pressing)して焼結させることによって製造されることができ、コーティングされていてもコーティングされていなくてもよい。
【0017】
硬化鋼から製造され得る工具ホルダ24は、インサートホルダ部分30、130およびシャンク部分32を有する。インサートホルダ部分30、130はシャンク部分32に強固に固定される。
【0018】
第1の軸A1を有する調整部材26、126は、インサートホルダ部分30、130に非ねじ込み式で保持され、切削インサート22に動作可能に接続される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態において、調整部材26、126はねじ切りされない構成要素であってもよい。
【0020】
切削インサート22は、動作可能な切削部分28がインサート切削角αにてワークピース36に接触する切削位置において、留め具34によってインサートホルダ部分30、130に着脱自在に固定される。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、切削インサート22は複数の切削部分28を備える割り出し可能なねじ切りインサートであってもよく、各切削部分28は2つの切刃38、40を有し、切削工具20、120はねじ切り作業で使用され得る。
【0022】
図1aおよび
図8で示されるように、ねじ切り作業では、インサート切削角αは、回転するワークピース36の中心軸Cを基準とした動作可能な切削部分28の2つの切刃38、40の傾斜角である。ねじ切りインサートの傾斜角はねじ切り作業の分野で使用される良く知られる用語であり、通常、両方の切刃のクリアランスを等しくすることを目的として切削されるねじのねじれ角を等しくするように調整される。
【0023】
調整部材26、126を動かすことによって、インサート切削角αが増大または減少される。
【0024】
本発明の説明および特許請求の範囲を通して、「動かす」という用語は、所定の方向にすなわち所定の経路に沿う調整部材26、126の動きを開始する動作を意味することを理解されたい。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態において、切削工具20、120は単一の調整部材26、126を有することができる。
【0026】
また、本発明のいくつかの実施形態において、調整部材26、126を動かすことは、切削工具20、120からいずれの構成要素も取り外すことなく実施され得る。
【0027】
インサート切削角αを変化させるために、最初に切削インサート22を部分的にアンクランプし、調整部材26、126を回転させ、切削インサート22を再びクランプすることができる。切削工具20、120のインサート切削角αを増大または減少させる方法は、
留め具34を緩めるステップと、
調整部材26、126を動かすステップと、
留め具34を再び締めるステップと
を含む。
【0028】
留め具34を緩めた後における調整部材26、126の作動は、その第1の軸A1を中心として調整部材26、126を回転させることによって実施され得る。
【0029】
インサート切削角αは、第1の軸A1を中心として一方の方向に調整部材26、126を回転させることによって増大され、また、第1の軸A1を中心として反対方向に調整部材26、126を回転させることによって減少されてもよい。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態において、インサートホルダ部30、130は第2の軸A2を有することができ、第1の軸A1は第2の軸A2と同軸であってもよい。第1の軸A1および第2の軸A2は、調整部材26、126の各回転位置において同軸となることができ、また、インサート切削角度αの各値において同軸となることができることも理解されたい。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、調整部材26、126はインサートホルダ部分30、130上の一定の並進位置(fixed translational position)にあってもよい。調整部材26、126動かすことは、単に、調整部材26、126をその第1の軸A1を中心に回転させることによって実施され得る。
【0032】
図3、5、9および
図11に示されるように、調整部材26、126は第1の軸A1に対して垂直である平面的な底面42、142を有することができ、平面的な底面42、142はインサートホルダ部分30、130上の対応する座面44、144に接触することができる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、調整部材26、126は切削インサート22に直接係合し得る。
【0034】
図4、5、10および
図11に示されるように、調整部材26、126は、底面42、142の反対側にある上面46、146、およびそれらの間に延在する側面48、148を有することができる。上面46または側面148は調整支持面50、150を含む。
【0035】
図6および
図7に示されるように、切削インサート22は横向きに置かれる(lay-down)ねじ切りインサートであってもよい。このインサートは、互いに反対側にある上面52および下面54、ならびにそれらの間を延在する周囲面56を有する。各切削部分28の2つの切刃38、40は、上面52または下面54上に、付随するレーキ面(rake surface)58を有する。
【0036】
図2、3および
図9に示されるように、留め具34は締め付けねじ60の形態であってよい。
【0037】
図3、6、7および
図9に示されるように、本発明のいくつかの実施形態において、上面52および下面54は、それらの間に延在する貫通孔62を有することができる。締め付けねじ60は、貫通孔62内に位置することができ、インサートホルダ部分30、130内のスクリュボア(screw bore)64にねじ込まれ得る。
【0038】
本発明の別の実施形態(図示せず)において、留め具34は、クランプ部材の形態であってもよく、貫通孔62、および/または上面52および下面54のうちの1つ、に係合される。
【0039】
また、本発明のいくつかの実施形態において、切削インサート22は、3つの切削部分28および等しい数の支持領域66を有する略三角形の形状であってもよい。調整支持面50、150は、動作可能な切削部分28から離れて1つの支持領域66に正確に接触することができる。
【0040】
動作可能な切削部分28のレーキ面58は上面52上にあってよく、単一の動作可能な支持領域66は下面54上にあってよい。
【0041】
図7に示されるように、本発明のいくつかの実施形態において、切削インサート22は、切削部分28の数と等しい数の複数のV字形係合隆起68をさらに含むことができる。各V字形係合隆起68は、関連する切削部分28に隣接して下面54上に位置する。各V字形係合隆起68は、2つのフランク面70、およびインサート傾斜軸A3を有することができる。2つのフランク面70はインサート傾斜軸A3の方向に平行に延在する。各V字形係合隆起68は2つ以上の別個の係合部分に分割されてもよく、また、V字形係合隆起68のうちの1つがインサートホルダ部30、130内の対応するV字形係合溝72と正確に係合されてもよい。
【0042】
各支持領域66は、2つのフランク面70を分離する表面上において、各V字形係合隆起68の単一の係合部分上に位置していてもよい。
【0043】
また、
図2に示されるように、本発明のいくつかの実施形態において、インサートホルダ部分30、130は第1の平面P1を有することができる。動作可能なV字形係合隆起68のインサート傾斜軸A3は、インサート切削角度αの各値において第1の平面P1に対して垂直になることができる。動作可能なV字形係合隆起68のインサート傾斜軸A3が、調整部材26、126の各回転位置において、第1の平面P1に対して垂直になることができることも理解されたい。
【0044】
第1の平面P1は、回転するワークピース36の中心軸Cに対して平行であってもよい。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態において、インサート切削角αは調整範囲Rを有することができる。調整範囲Rは、第1の軸A1を中心とした調整部材26、126の1回転未満の範囲内で得られる。調整範囲Rは、少なくとも6°の角度を有していてもよく、−1.5°から+4.5°の範囲の傾斜角の形態であってよい。
【0046】
図4および
図5に示されるように、本発明の第1の実施形態において、調整支持面50は調整部材26の上面46上に形成され得る。調整支持面50は、螺旋階段形状(helically step shaped)であってもよく、第1の軸A1と同軸の支持面軸A4を有し、支持面軸A4に関して増大または減少する底面42からの調整高さHを有する。螺旋階段形状の調整支持面50は複数の段セグメント74を備えることができる。各段セグメント74は、第1の軸A1に対して垂直であり、個別のインサート切削角αの値を有する。
【0047】
本発明の第1の実施形態において、上面46は、動作可能な切削部分28のレーキ面58と概して同じ方向に向いていてもよい。側面48は円筒形であってもよい。
【0048】
図10および
図11に示されるように、本発明の第2の実施形態において、調整部材126の側面148は非円筒形であってもよい。調整支持面150は、側面148上に形成されていてもよく、第1の軸A1を基準として連続的に増大または減少する第1の軸A1からの半径方向調整距離Dを有する。
【0049】
本発明の第2の実施形態において、上面146は、動作可能な切削部分28のレーキ面58に対して概して横向きの方向に向いていてもよい。
【0050】
いずれの実施形態においても、調整部材支持面50、150の第1の部分は、能動的支持領域66にて切削インサート22と対向する。能動的支持領域66は、動作可能な切削部分28に関連するインサート傾斜軸A3から離れて位置する。調整部材26、126がインサートホルダ部分30、130に対してその第1の軸A1を中心に回転することにより、支持面50、150の第2の部分が切削インサート22に対向するようになる。これにより、インサートホルダ部分30、130に対する、固定される切削インサート22の能動的支持領域66における高さおよび固定される切削インサート22のインサート傾斜軸A3を中心とした傾きの両方が変化する。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態において、調整部材26、126は、例えばソケットレンチ(図示せず)などの補助工具を用いて、オペレータによって手動で直接動かされてもよい。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態において、調整部材26、126はその第1の軸A1を中心として段階的に回転され得るが、インサート切削角αを増大または減少させる明確な段を画成するために、調整部材126上において視覚的表示器または機械的戻り止めを用いることができる。これによって、オペレータを補助することができる。
【0053】
図2に示されるように、本発明の第1の実施形態において、切削工具20は、留め具34を緩めるなどして切削インサート22がアンクランプされて部分的に回転させられるようになるまではオペレータが調整部材26を動かすことを物理的に防止するように構成され得る。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態において、調整部材26、126はねじ切りされていない保持部分82を含んでいてもよい。ねじ切りされていない保持部分82は、オペレータが調整部材26、126を動かすことを可能にしながら、調整部材26、126をインサートホルダ部分30、130上に配置された状態で維持する。さらに、ねじ切りされていない保持部分82は、底面42、142をインサートホルダ部分30、130の座面44、144に接触させた状態で維持することができる。
【0055】
図3、5、9および
図11に示されるように、ねじ切りされていない保持部分82は、インサートホルダ部分30、130内に挿入可能であり、複数の弾性脚部76を含むことができる。複数の弾性脚部76は、底面42、142から離れるように延在し、座面44、144において保持空洞80の円筒壁78に接触する。第2の軸A2は保持空洞80の円筒壁78と同軸であってもよい。
【0056】
ある程度具体的に本発明を説明したが、以下の特許請求の範囲に記載されるように、本発明の精神および範囲を逸脱せずに、種々の変更および修正を行うことができることは理解されよう。