特許第5955989号(P5955989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955989
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】電線接続用スリーブの矯正装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20160707BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   H02G1/02
   H02G1/06
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-3331(P2015-3331)
(22)【出願日】2015年1月9日
(65)【公開番号】特開2016-129455(P2016-129455A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 孝明
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆治
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−134758(JP,A)
【文献】 特開2015−035845(JP,A)
【文献】 特開2006−129609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
H02G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部に一組の高圧引下線を圧縮した後の屈曲したスリーブを真直状態に矯正する電線接続用スリーブの矯正装置であって、
固定ジョーと可動ジョーで前記スリーブの一端部側を保持するチャック装置を有する第1の工具と、
前記スリーブの他端部側外周方向から当該スリーブの他端部側の互いに異なる位置当接自在な、離隔した一対の矯正棒を柄部の先端部に有する第2の工具と、を備え、
前記第1の工具は、
前記チャック装置を支持する基板と、
一方の前記矯正棒を挿入自在に前記基板に開口し、前記スリーブの他端部側が延びる方向に形成された一対の嵌合穴と、を有し、
いずれか一方の前記嵌合穴に一方の前記矯正棒を挿入した状態で、他方の前記矯正棒を回動して、前記スリーブの他端部側を矯正する、電線接続用スリーブの矯正装置。
【請求項2】
前記チャック装置は、
前記可動ジョーと回転自在に連結する先端部を有する送りねじと、
前記基板の下端部に形成し、前記送りねじとねじ結合するナット部材と、
前記送りねじの基端部に形成し、異なる用途の先端工具を共用できる共用操作棒の先端部に着脱自在な円筒状の接続具と、を備える請求項1記載の電線接続用スリーブの矯正装置。
【請求項3】
前記第2の工具は、異なる用途の先端工具を共用できる共用操作棒の先端部に固定された菊座アダプタに着脱自在な円板状の菊座部を前記柄部の基端部に有する、請求項1又は2記載の電線接続用スリーブの矯正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線接続用スリーブの矯正装置に関する。特に、無停電状態の高圧配電線を間接的に活線作業できる間接活線作業用の矯正装置であって、一組の電線の芯線をスリーブの両端部から挿入して、スリーブを圧着することよって、一組の電線を接続する電線接続用スリーブにおいて、電線接続用スリーブの曲りを矯正する矯正装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧配電線を無停電で配電工事を行う活線作業には、直接活線工法と間接活線工法の二通りがある。直接活線工法は、作業者が高圧ゴム手袋などの保護具を着用して、通電中の高圧配電線に直接触れて配電工事を行う。一方、間接活線工法は、作業者が絶縁操作棒(ホットスティック)などを用いて、通電中の高圧配電線に直接触れることなく配電工事を行うことができる。
【0003】
図6は、高圧配電線の装柱例を示す斜視図である。図6を参照すると、電柱Pは、第1腕金A1を上部に取り付けている。第1腕金A1には、碍子を介して、複数の高圧配電線Whを架設している。又、電柱Pは、第2腕金A2を中間部に取り付けている。第2腕金A2には、高圧カットアウトFを取り付けている。柱上変圧器Tは、支持金具を介して、電柱Pに装柱している。高圧配電線Whからは、高圧引下線Weを分岐している。高圧引下線Weは、高圧カットアウトFを介して、柱上変圧器Tに接続している。
【0004】
図7は、電線接続用スリーブの一例を示す斜視図であり、図7(A)は、一方の電線の芯線をスリーブの一方の端部に圧着した状態図、図7(B)は、他方の電線の芯線をスリーブに圧着する前の状態図である。
【0005】
図6又は図7を参照して、高圧引下線Weは、芯線Wcと芯線Wcを被覆する絶縁被覆Wbで構成している。又、高圧引下線Weは、絶縁被覆Wbを剥離して芯線Wcが露出された端末を有している。
【0006】
図6又は図7を参照して、切り離された一組の高圧引下線We・Weを接続する場合には、一方の電線と他方の電線の各芯線を円筒状のスリーブSvの両端部からそれぞれ挿入し、スリーブSvを外周方向から圧縮することで、一組の芯線Wc・Wcを圧着接続できる。
【0007】
図6又は図7を参照して、上述したような接続工事は、停電状態において、切断された一方の高圧引下線Weの芯線WcをスリーブSvの一方の端部に圧着している。次に、把持工具を先端部に有する絶縁操作棒(いわゆる、絶縁ヤットコ)を用いて、一方の高圧引下線Weの芯線Wcが圧着されたスリーブSvを一方の作業員が把持し、絶縁ヤットコを用いて、他方の作業員が切断された他方の高圧引下線Weの芯線WcをスリーブSvの他方の端部に挿入していた。次に、圧着工具を先端部に有する絶縁操作棒を用いて、スリーブSvの他方の端部を圧着することで、一組の高圧引下線We・Weを接続していた。
【0008】
上述した圧着工具として、操作ハンドルの先端部に小さい力を加えることで、可動ダイスに大きな力を作用できる倍力装置からなる手動式の圧縮装置が知られている。
【0009】
図8は、従来技術による手動式の圧縮装置の構成を示す正面図である。図8を参照すると、従来技術による手動式の圧縮装置(以下、圧縮ペンチという)8は、複数のリンクを回転可能に連結した4節回転連鎖のリンク装置であり、固定アーム81、可動アーム82、及び揺動アーム83を備えている。又、圧縮ペンチ8は、第1リンク84とベルクランク85を備えている。
【0010】
図8を参照すると、可動アーム82は、可動ダイス82dを一方の端部に固定している。固定ダイス81dと可動ダイス82dの間にスリーブSv(図7参照)を配置し、固定ダイス81dに対して可動ダイス82dが向かうように、可動アーム82を一方の方向に回動することで、スリーブSvを圧縮できる。
【0011】
図8を参照すると、可動アーム82は、正面視が二等辺三角形状の部材であり、鈍角に形成された隅部82cが固定ダイス81dの上壁に当接している。可動アーム82は、隅部82cを回動中心として両端部を揺動できる。そして、可動アーム82の他方の端部を持ち上げるように一方の方向に回動すると、可動ダイス82dを固定ダイス81dに向かわせることができ、可動アーム82の他方の端部を押し下げるように他方の方向に回動すると、可動ダイス82dを固定ダイス81dから離間できる。
【0012】
図8を参照すると、揺動アーム83は、その一方の端部が可動アーム82の他方の端部と回動自在に連結している。又、揺動アーム83は、その他方の端部がベルクランク85の屈折部と回動自在に連結している。
【0013】
図8を参照すると、揺動アーム83は、固定アーム81から突出したラチェットギア81gに係止可能な係止爪83nを中間部に備えている。後述する操作ハンドル851を一方の方向に回動すると、ラチェットギア81gに係止爪83nが係止して、固定ダイス81dと可動ダイス82dが閉じる状態を維持できる。揺動アーム83の中間部に設けた解除レバー83rを操作すると、ラチェットギア81gから係止爪83nを解放できる。
【0014】
図8を参照すると、ベルクランク85は、長いアームで形成された操作ハンドル851と短いアームで形成された第2リンク852で構成している。操作ハンドル851は、その端部に操作リング85rを取り付けている。第2リンク852は、その端部が第1リンク84の他方の端部と回転可能に連結している。
【0015】
図8を参照すると、第2リンク852は、その端部にねじりコイルばね85sを取り付けている。ねじりコイルばね85sの一端部は、第1リンク84に係合している。ねじりコイルばね85sの他端部は、第2リンク852に係合している。
【0016】
図8を参照して、操作ハンドル851を一方の方向Lに回動すると、第1リンク84と第2リンク852を閉じるように変位できる。具体的には、先端部にフック金具を有する絶縁操作棒(図示せず)を用いて、フック金具を操作リング85rに係止し、操作ハンドル851を一方の方向Lに回動すると、第1リンク84と第2リンク852を閉じるように変位できる。又、解除レバー83rを操作すると、ねじりコイルばね85sに付勢されて、第1リンク84と第2リンク852を開くように、復帰できる。
【0017】
図8を参照して、操作ハンドル851を一方の方向Lに回動すると、これらのリンクが連動して、操作ハンドル851の先端部に加えた小さい力で、可動ダイス82dに大きな力を作用できる。解除レバー83rを操作すると、これらのリンクが連動して、操作ハンドル851を他方の方向Rに復帰できる。
【0018】
図8を参照すると、圧縮ペンチ8は、連結アーム86を備えている。連結アーム86は、その基端部を固定アーム81に固定している。連結アーム86は、固定アーム81と略平行に延びて、その先端部に菊座部86kを設けている。
【0019】
次に、圧縮ペンチを操作するための共用操作棒及び菊座アダプタの構成を説明する。図9は、圧縮ペンチを操作するための共用操作棒の正面図である。図10は、共用操作棒の先端部に設けた工具部を拡大した斜視図である。図11は、共用操作棒の工具部に装着可能な菊座アダプタの一例による構成を示す正面図である。
【0020】
図9を参照すると、共用操作棒7は、工具部71と柄部72と把持部73を備えている。工具部71は、後述する菊座アダプタ6(図11参照)を着脱可能となっている。把持部73は、作業員が把持し易いように滑り止めが施されている。柄部72は、工具部71と把持部73とを連結し、絶縁性を有する長尺の管体からなっている。
【0021】
図9を参照すると、柄部72の中間部には、円錐体状の安全カバー7aを取り付けている。安全カバー7aは、工具部71から進出する水を堰き止めることができる。又、柄部72と把持部73との接続部には、円錐体状の安全カバー7bを取り付けている。安全カバー7bの取付け位置は、絶縁性を考慮して安全に作業できる限界を示している。
【0022】
図10を参照すると、工具部71は、軸部71a、一対のピン71b・71b、プッシュロッド71c、及びプッシュリング71dを有している。軸部71aは、柄部72の軸方向に突出している。一対のピン71b・71bは、相反する向きに軸部71aの外周から突出している。プッシュロッド71cは、軸部71aの先端面から突出するように、工具部71に内蔵された圧縮コイルばね(図示せず)によって、力を付勢されている。プッシュリング71dは、軸部71aの下方に配置されている。プッシュリング71dは、図示しない圧縮コイルばねによって、軸部71aに向かう力を付勢されている。
【0023】
図11を参照すると、菊座アダプタ6は、共用操作棒7の工具部71に着脱自在に取り付けできる。菊座アダプタ6は、円筒状の接続部61と菊座部62で構成している。接続部61は、菊座アダプタ6の基端部側に設けられている。一方、菊座部62は、菊座アダプタ6の先端部側に設けられている。
【0024】
図11を参照すると、接続部61は、底面が開口された円筒状に形成している。接続部61には、軸部71a(図10参照)が嵌合する軸穴61aを有している。又、接続部61には、一対のT字状の係合溝61b・61bを有している。一対のピン71b・71b(図10参照)を軸穴61aの軸方向に挿入した後に、これらのピン71b・71bを軸穴61aの周方向に回動することで、これらのピン71b・71bを係合溝61b・61bに係合できる。
【0025】
上述したような係合手段は、ツイストロックと呼ばれている。そして、図9から図11を参照して、工具部71と接続部61が嵌合した状態では、プッシュロッド71cが軸穴61aの上壁を弾圧すると共に、プッシュリング71dが接続部61の底面に当接して、菊座アダプタ6を工具部71に確実に固定できる。
【0026】
図9又は図10に示した共用操作棒7は、間接活線工事に好適な絶縁操作棒の一種であるが、異なる用途の先端工具を共用できることから、特に、「共用操作棒」と呼ばれている。
【0027】
図11を参照すると、菊座部62は、略円形の菊座62aと雄ねじ62bを備えている。菊座62aは、その表面から僅かに突出する複数の凸条621を円周上に配列している。雄ねじ62bは、菊座62aの略中心から立設している。又、雄ねじ62bには、蝶ナット63が螺合している。
【0028】
一方、図8を参照すると、圧縮ペンチ8の菊座部86kは、略円形の菊座86aと切り欠き溝86bを有している。菊座86aは、その表面から僅かに突出する複数の凸条861を円周上に配列している。切り欠き溝86bは、菊座部86kの底面から中心部に向かって切り欠かれている。
【0029】
図8から図11を参照して、菊座アダプタ6を共用操作棒7の工具部71に固定し、菊座62aと菊座86aが当接するように、切り欠き溝86bに雄ねじ62bを挿通し、蝶ナット63を雄ねじ62bに締結することで、共用操作棒7に対して圧縮ペンチ8を任意の傾き角度に設定できる。
【0030】
例えば、熟練性を要することなく、高圧引下線の端末を電線接続用スリーブに迅速、かつ、確実に、しかも簡便に能率よく挿入できる高圧引下線における電線接続用スリーブの挿入器が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開2000−134758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
図6を参照して、スリーブSvを露出させた状態では、感電の心配があるので、通常、引下線絶縁ケースでスリーブSvを覆っている。図12は、一般的な引下線絶縁ケースの構成を示す図であり、図12(A)は、引下線絶縁ケースの正面図であり、引下線絶縁ケースを開いた状態図、図12(B)は、12(A)の右側面図、図12(C)は、12(A)のX−X矢視断面図、図12(D)は、12(A)のX−X矢視断面図であり、引下線絶縁ケースを閉じた状態図である。
【0033】
図12を参照すると、一実施形態による引下線絶縁ケース(以下、絶縁ケースと略称する)9は、半円弧状態に形成された一対の絶縁性を有する筒状の分割ケース91・91で構成している。一対の分割ケース91・91は、一端部側をヒンジ部91hで屈曲自在に連結し、他端部側を開閉自在に構成している。一対の分割ケース91・91の他端部側を閉じることで、一組の高圧引下線We・Weを電気的に接続するスリーブSvを一対の分割ケース91・91で覆うことができる。
【0034】
図12を参照すると、一対の分割ケース91・91は、円筒状の外形を有するカバー本体部90と一対の円錐体状のコーン部91c・91cを備えている。カバー本体部90は、スリーブSvを覆うことができる(図6参照)。又、カバー本体部90は、絶縁シールパテ9pを内部に充填している(図9(A)参照)。
【0035】
図12を参照すると、一対のコーン部91c・91cは、カバー本体部90の両端部に形成している。コーン部91cは、カバー本体部90から連続すると共に、外側に向かって縮径している。又、コーン部91cは、高圧引下線Weを導入できる仮想の穴90hを側面に開口している(図12(B)参照)。
【0036】
図12を参照すると、一方の分割ケース91は、複数の槍状の係止片9rを他端部から突出している。他方の分割ケース91は、係止片9rに係脱自在な係合穴9hを他端部に開口している。又、一方の分割ケース91は、把持片92を他端部から延出している。
【0037】
図12を参照して、一対の開閉する把持腕を先端部に有する絶縁操作棒(図示せず)を用いて、一対の分割ケース91・91の他端部の対向面が当接するように、一対の分割ケース91・91の外周を把持することで、一対の分割ケース91・91の他端部側を閉じることができる(図12(D)参照)。又、一対の開閉する把持腕を先端部に有する絶縁操作棒(図示せず)を用いて、把持片92を把持することで、絶縁ケース9を高所に移動できる。
【0038】
図8から図11を参照して、菊座アダプタ6を介して、圧縮ペンチ8を共用操作棒7の先端部に取り付け、固定ダイス81dと可動ダイス82dの間にスリーブSv(図7参照)を配置し、先端部にフック金具を有する絶縁操作棒(図示せず)を用いて、操作ハンドル851を一方の方向Lに回動すると(図8参照)、スリーブSvの端部を圧縮できる。
【0039】
ところで、図8を参照すると、操作ハンドル851を手前側に引きながら、スリーブSvを圧縮するので、圧縮ペンチ8全体が手前側に傾動することがあった。これに起因して、スリーブSvを屈曲させることがあった。このため、両端部に一組の高圧引下線We・Weを圧縮したスリーブSvが屈曲した状態では、絶縁ケース9の内部にスリーブSvを収容できないことがあった(図12参照)。つまり、一対の分割ケース91・91を閉じることが困難であった(図12参照)。
【0040】
特許文献1による電線接続用スリーブの挿入器は、共用操作棒の先端部に配置され、離隔した一対の突出ピンで、スリーブに挿入する前の電線の曲げくせを矯正する曲げくせ矯正部を備えている。
【0041】
しかし、特許文献1による電線接続用スリーブの挿入器は、スリーブに挿入する前の電線の曲げくせを矯正できるが、高圧引下線を圧縮したスリーブの屈曲を矯正することが困難であった。両端部に一組の高圧引下線を圧縮した後の屈曲したスリーブを真直状態に矯正する電線接続用スリーブの矯正装置が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0042】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、両端部に一組の高圧引下線を圧縮した後の屈曲したスリーブを真直状態に矯正する電線接続用スリーブの矯正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0043】
本発明者らは、固定ジョーと可動ジョーでスリーブの一端部側を保持するチャック装置を備える第1の工具と、離隔した一対の矯正棒を柄部の先端部に有する第2の工具で矯正装置を構成し、一方の矯正棒を第1の工具に回転自在に連結し、柄部を操作することで、他方の矯正棒でスリーブの他端部側を矯正できると考え、これに基づいて、以下のような新たな電線接続用スリーブの矯正装置を発明するに至った。
【0044】
(1)本発明による電線接続用スリーブの矯正装置は、両端部に一組の高圧引下線を圧縮した後の屈曲したスリーブを真直状態に矯正する電線接続用スリーブの矯正装置であって、固定ジョーと可動ジョーで前記スリーブの一端部側を保持するチャック装置を有する第1の工具と、前記スリーブの他端部側を外周方向から異なる位置で当接自在な、離隔した一対の矯正棒を柄部の先端部に有する第2の工具と、を備え、前記第1の工具は、前記チャック装置を支持する基板と、一方の前記矯正棒を挿入自在に前記基板に開口し、前記スリーブの他端部側が延びる方向に形成された一対の嵌合穴と、を有し、いずれか一方の前記嵌合穴に一方の前記矯正棒を挿入した状態で、他方の前記矯正棒を回動して、前記スリーブの他端部側を矯正する。
【0045】
(2)前記チャック装置は、前記可動ジョーと回転自在に連結する先端部を有する送りねじと、前記基板の下端部に形成し、前記送りねじとねじ結合するナット部材と、前記送りねじの基端部に形成し、異なる用途の先端工具を共用できる共用操作棒の先端部に着脱自在な円筒状の接続具と、を備えることが好ましい。
【0046】
(3)前記第2の工具は、異なる用途の先端工具を共用できる共用操作棒の先端部に固定された菊座アダプタに着脱自在な円板状の菊座部を前記柄部の基端部に有することが好ましい。
【発明の効果】
【0047】
本発明による電線接続用スリーブの矯正装置は、第1の工具に設けたいずれか一方の嵌合穴に、第2の工具に設けた一方の矯正棒を挿入して、スリーブの外周に一方の矯正棒を当接し、一方の矯正棒がスリーブに当接する方向と反対方向から他方の矯正棒をスリーブの外周に当接し、一方の矯正棒を支点に他方の矯正棒をスリーブの外周に当接する方向に回動することで、「てこ」の原理でスリーブを矯正できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の一実施形態による電線接続用スリーブの矯正装置の構成を示す斜視図である。
図2】前記実施形態による電線接続用スリーブの矯正装置の構成を示す図であり、図2(A)は、第1の工具の構成を示す正面図、図2(B)は、第2の工具の構成を示す正面図である。
図3】前記実施形態による電線接続用スリーブの矯正装置の構成を示す図であり、図3(A)は、第1の工具の構成を示す右側面図、図3(B)は、第2の工具の構成を示す右側面図である。
図4】前記実施形態による電線接続用スリーブの矯正装置の使用状態を示す斜視図であり、第1の工具に開口された下側の嵌合穴に第2の工具に設けた一方の矯正棒を挿入して、電線接続用スリーブを矯正している状態図である。
図5】前記実施形態による電線接続用スリーブの矯正装置の使用状態を示す斜視図であり、第1の工具に開口された上側の嵌合穴に第2の工具に設けた一方の矯正棒を挿入して、電線接続用スリーブを矯正している状態図である。
図6】高圧配電線の装柱例を示す斜視図である。
図7】電線接続用スリーブの一例を示す斜視図であり、図7(A)は、一方の電線の芯線をスリーブの一方の端部に圧着した状態図、図7(B)は、他方の電線の芯線をスリーブに圧着する前の状態図である。
図8】従来技術による手動式の圧縮装置の構成を示す正面図である。
図9】圧縮ペンチを操作するための共用操作棒の正面図である。
図10】共用操作棒の先端部に設けた工具部を拡大した斜視図である。
図11】共用操作棒の工具部に装着可能な菊座アダプタの一例による構成を示す正面図である。
図12】一般的な引下線絶縁ケースの構成を示す図であり、図12(A)は引下線絶縁ケースの正面図であり、引下線絶縁ケースを開いた状態図、図12(B)は、12(A)の右側面図、図12(C)は、12(A)のX−X矢視断面図、図12(D)は、12(A)のX−X矢視断面図であり、引下線絶縁ケースを閉じた状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[電線接続用スリーブの矯正装置の構成]
最初に、本発明の一実施形態による電線接続用スリーブの矯正装置の構成を説明する。
【0050】
図1は、本発明の一実施形態による電線接続用スリーブの矯正装置の構成を示す斜視図である。
【0051】
図2は、前記実施形態による電線接続用スリーブの矯正装置の構成を示す図であり、図2(A)は、第1の工具の構成を示す正面図、図2(B)は、第2の工具の構成を示す正面図である。
【0052】
図3は、前記実施形態による電線接続用スリーブの矯正装置の構成を示す図であり、図3(A)は、第1の工具の構成を示す右側面図、図3(B)は、第2の工具の構成を示す右側面図である。
【0053】
(全体構成)
図1から図3を参照すると、本発明の一実施形態による電線接続用スリーブの矯正装置(以下、矯正装置と略称する)100は、第1の工具10と第2の工具20で構成している。第1の工具10は、チャック装置1を備えている。チャック装置1は、固定ジョー11と可動ジョー12でスリーブSvの一端部側を保持できる。
【0054】
図1から図3を参照すると、第2の工具20は、一対の矯正棒2a・2a、連結板2b、及び、柄部2cを備えている。一対の矯正棒2a・2aは、所定の間隔で離隔している。又、一対の矯正棒2a・2aは、柄部2cの外周方向に略平行に突出している。連結板2bは、その一方の面に矯正棒2aの基端部を固定している。柄部2cは、その先端部を連結板2bの中央部に固定している。
【0055】
図1から図3を参照すると、第1の工具10は、基板13と一対の嵌合穴13h・13hを有している。基板13は、チャック装置1を支持している。一対の嵌合穴13h・13hは、基板13に開口されている。嵌合穴13hには、一方の矯正棒2aを挿入できる。一対の嵌合穴13h・13hは、チャック装置1で把持されたスリーブSvの他端部側が延びる方向に形成されている。
【0056】
図1を参照して、矯正装置100は、いずれか一方の嵌合穴13hに一方の矯正棒2aを挿入した状態で、他方の矯正棒2aを回動することで、スリーブSvの他端部側を矯正できる(図4又は図5参照)。
【0057】
(第1の工具の構成)
次に、実施形態による第1の工具10の構成を説明する。図1又は図2(A)及び図3(A)を参照すると、チャック装置1は、第1の工具10に構成されている。チャック装置1は、送りねじ14、ナット部材15、及び、円筒状の接続具16を更に備えている。
【0058】
図1又は図2(A)及び図3(A)を参照すると、送りねじ14は、その先端部が可動ジョー12と回転自在に連結している。実施形態では、可動ジョー12には、一対の止めねじ12s・12sを取り付けている(図2(A)参照)。一対の止めねじ12s・12sは、それらの軸部が送りねじ14の先端部に形成した輪帯溝(図示せず)に係合している。そして、一対の止めねじ12s・12sは、送りねじ14の先端部と回転自在に連結すると共に、送りねじ14の軸方向に分離困難に送りねじ14と連結している。
【0059】
図1又は図2(A)及び図3(A)を参照すると、ナット部材15は、基板13の下端部に基板13と一体で成形されている。又、ナット部材15は、雌ねじ部(図示せず)を設けている。つまり、ナット部材15は、送りねじ14とねじ結合している。
【0060】
図1又は図2(A)及び図3(A)を参照して、送りねじ14を一方の方向に回転すると、可動ジョー12を固定ジョー11に向かって移動できる。一方、送りねじ14を他方の方向に回転すると、可動ジョー12を固定ジョー11から後退できる。なお、可動ジョー12は、基板13の一方の面にスライドして、回り止めされながら、移動できる。
【0061】
図1又は図3(A)を参照すると、固定ジョー11は、スリーブSvをその外周方向から導入自在な円弧状の第1凹部11aを有している。同様に、可動ジョー12は、スリーブSvをその外周方向から導入自在な円弧状の第2凹部12aを有している。第1凹部11aと第2凹部12aは、対向配置されている。可動ジョー12を固定ジョー11に向かって移動すると、第1凹部11aと第2凹部12aの間に、スリーブSvの一端部側を把持できる。
【0062】
図1又は図2(A)及び図3(A)を参照すると、接続具16は、送りねじ14の基端部に固定している。接続具16は、底面が開口された円筒状に形成している。接続具16には、軸部71a(図10参照)が嵌合する軸穴16aを有している。又、接続具16には、一対のT字状の係合溝16b・16bを有している。一対のピン71b・71b(図10参照)を軸穴16aの軸方向に挿入した後に、これらのピン71b・71bを軸穴16aの周方向に回動することで、これらのピン71b・71bを係合溝16b・16bに係合できる。
【0063】
このように、図1又は図2(A)及び図3(A)を参照すると、接続具16は、共用操作棒7の先端部に着脱できる(図9又は図10参照)。共用操作棒7の先端部に接続具16を固定した状態で、第1の工具10を高所に移動できる。又、共用操作棒7をその軸回りに一方の方向に回転することで、固定ジョー11と可動ジョー12の間に、スリーブSvの一端部側を把持できる。
【0064】
(第2の工具の構成)
次に、実施形態による第2の工具20の構成を説明する。図1又は図2(B)及び図3(B)を参照すると、第2の工具20は、円板状の菊座部2kを柄部2cの基端部に更に備えている。菊座部2kは、共用操作棒7の先端部に固定された菊座アダプタ6に着脱できる(図9から図11参照)。
【0065】
図1又は図2(B)を参照すると、菊座部2kは、略円形の菊座21aと切り欠き溝21bを有している。菊座21aは、その表面から僅かに突出する複数の凸条211を円周上に配列している。切り欠き溝21bは、菊座部21kの底面から中心部に向かって切り欠かれている。
【0066】
図1又は図9から図11を参照して、菊座アダプタ6を共用操作棒7の工具部71に固定し、菊座アダプタ6の菊座62aと第2の工具20の菊座21aが当接するように、切り欠き溝21bに雄ねじ62bを挿通し、蝶ナット63を雄ねじ62bに締結することで、共用操作棒7に対して第2の工具20を任意の傾き角度に設定できる。
【0067】
図1又は図9から図11を参照して、菊座アダプタ6を介して、共用操作棒7の先端部に菊座部2kを固定した状態で、第2の工具20を高所に移動できる。そして、一方の矯正棒2aをいずれか一方の嵌合穴13hに挿入し、共用操作棒7を操作することで、スリーブSvを矯正できる。
【0068】
[電線接続用スリーブの矯正装置の作用]
次に、実施形態による矯正装置100の動作を説明しながら、矯正装置100の作用及び効果を説明する。
【0069】
図4は、前記実施形態による電線接続用スリーブの矯正装置の使用状態を示す斜視図であり、第1の工具に開口された下側の嵌合穴に第2の工具に設けた一方の矯正棒を挿入して、電線接続用スリーブを矯正している状態図である。
【0070】
図5は、前記実施形態による電線接続用スリーブの矯正装置の使用状態を示す斜視図であり、第1の工具に開口された上側の嵌合穴に第2の工具に設けた一方の矯正棒を挿入して、電線接続用スリーブを矯正している状態図である。
【0071】
図1又は図9及び図10を参照して、予め、共用操作棒7の先端部に第1の工具10を固定しておく。同様に、図1又は図9から図11を参照して、予め、菊座アダプタ6を介して、別の共用操作棒7の先端部に第2の工具20を固定しておく。
【0072】
最初に、図1を参照して、両端部に一組の高圧引下線We・Weを圧縮したスリーブSvの一端部側を固定ジョー11と可動ジョー12の間に導入する。次に、共用操作棒7をその軸回りに一方の方向に回転し(図9参照)、固定ジョー11と可動ジョー12の間に、スリーブSvの一端部側を把持する。
【0073】
次に、図4に示すように、スリーブSvの他端部側が上側に屈曲している場合には、別の共用操作棒7を操作して(図9参照)、一方の矯正棒2aを下側の嵌合穴13hに挿入する(図1参照)。そして、一方の矯正棒2aをスリーブSvの他端部側の下側に配置する。この場合、図4に示すように、他方の矯正棒2aは、スリーブSvの他端部側の上側に当接しておく。次に、別の共用操作棒7を操作して(図9参照)、図4に示すように、第2の工具20を時計方向に回動することで、スリーブSvを真直状態に矯正できる。
【0074】
一方、図5に示すように、スリーブSvの他端部側が下側に屈曲している場合には、別の共用操作棒7を操作して(図9参照)、一方の矯正棒2aを上側の嵌合穴13hに挿入する(図1参照)。そして、一方の矯正棒2aをスリーブSvの他端部側の上側に配置する。この場合、図5に示すように、他方の矯正棒2aは、スリーブSvの他端部側の下側に当接しておく。次に、別の共用操作棒7を操作して(図9参照)、図5に示すように、第2の工具20を反時計方向に回動することで、スリーブSvを真直状態に矯正できる。
【0075】
図5に示すように、スリーブSvの他端部側が下側に屈曲している場合には、柄部2cが延びる方向と別の共用操作棒7(図9参照)が延びる方向が鋭角に交差するように、菊座アダプタ6の菊座62aと第2の工具20の菊座21aを予め連結しておくことが好ましく(図1又は図9から図11参照)、第2の工具20を反時計方向に容易に回動できる(図5参照)。
【0076】
実施形態による矯正装置100は、第1の工具10に設けたいずれか一方の嵌合穴13hに、第2の工具20に設けた一方の矯正棒2aを挿入して、スリーブSvの外周に一方の矯正棒2aを当接し、一方の矯正棒2aがスリーブSvに当接する方向と反対方向から他方の矯正棒2aをスリーブSvの外周に当接し、一方の矯正棒2aを支点に他方の矯正棒2aをスリーブSvの外周に当接する方向に回動することで、「てこ」の原理でスリーブSvを矯正できる。
【0077】
又、実施形態による矯正装置100は、一組の共用操作棒7・7を用いて、間接活線工法によりスリーブSvを矯正できるというメリットがある。
【0078】
本発明による電線接続用スリーブの矯正装置は、以下の効果を期待できる。
(1)圧縮作業時に曲がったスリーブを容易に矯正できるため、高圧引下線にスリーブを再接続することなく、矯正後のスリーブを引下線絶縁ケースの内部に収容できる。
(2)スリーブを引下線絶縁ケースの内部に正確に収容できる。
(3)停電時間を短縮できる。
(4)高圧引下線にスリーブを再接続するための労力を削減できる。
【0079】
本発明による電線接続用スリーブの矯正装置は、間接活線工法によりスリーブを矯正できる一組の工具を開示したが、間接活線工法に限定されることなく、一般的な工具として応用することが期待される。
【符号の説明】
【0080】
1 チャック装置
2a・2a 一対の矯正棒
2c 柄部
10 第1の工具
11 固定ジョー
12 可動ジョー
13 基板
13h・13h 一対の嵌合穴
20 第2の工具
100 矯正装置(電線接続用スリーブの矯正装置)
Sv スリーブ
We 高圧引下線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12