【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 製品プレゼンテーションによる公開 平成26年7月23日 秋田県平鹿地域振興局使用による公開 平成26年10月22日 横手市役所本庁舎周囲の道路
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下の各図における各部の寸法比は必ずしも正確なものではない。
【0027】
図1(a)は、本実施形態に係る面状発熱装置1の概略平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のA−A線断面図である。また、
図2(a)〜(c)は、発熱部材10の周辺を拡大して示した概略断面図である。
【0028】
本実施形態の面状発熱装置1は、住宅や各種建造物の屋根等に設置されて融雪を行う融雪装置として使用される、または融雪装置の一部として使用されるものである。これらの図に示されるように、面状発熱装置1は、通電により熱を発する発熱部材10と、発熱部材10からの熱を受けて放熱する受放熱部材20と、発熱部材10と受放熱部材20の間を電気的に絶縁する絶縁部材30と、発熱部材10、受放熱部材20および絶縁部材30を覆う保護部材40と、を備えている。
【0029】
発熱部材10は、電熱線から構成され、通電により発した熱を受放熱部材20に伝えるものである。発熱部材10は、受放熱部材20の受熱面20a(図中の底面)側に蛇行配置されており、2つの端部10a、10bは導線12を介して図示を省略した電源に接続されている。本実施形態では、発熱部材10をニクロム線から構成しているが、例えばカンタル線等、その他の電熱線から発熱部材10を構成するようにしてもよい。
【0030】
受放熱部材20は、略矩形平板状(シート状)の部材であり、発熱部材10からの熱を受熱面20aで受熱し、融雪のための熱を放熱面(図中の上面)20bから放熱するものである。本実施形態では、受放熱部材20を、膨張黒鉛シートから構成している。この膨張黒鉛シートとは、硫酸または硝酸等の強酸によって層間化合物を生成した黒鉛の粉末を急熱して膨張させた膨張黒鉛の粉末を、シート状に圧縮成形することによって得られるものである。
【0031】
膨張黒鉛シートは、厚さ方向の熱伝導率が低いもの、面方向の熱伝導率が非常に高いという特性を有している。また、黒鉛は、熱の放射率および吸収率が高いという特性を有している。詳細は後述するが、本実施形態では、このような膨張黒鉛シートの特性を有効活用することで、放熱面20bからの略均一な放熱を可能としている。また、受放熱部材20を膨張黒鉛シートから構成することにより、受放熱部材20を軽量に構成すると共に、適度な可撓性を持たせることができる。これにより、面状発熱装置1の取り扱い、すなわち保管、運搬および設置等を容易にすることが可能となる。
【0032】
受放熱部材20を構成する膨張黒鉛シートは、
図2(a)に示されるように、受熱面20aと放熱面20bの間に膨張黒鉛層21のみを有するものであってもよいし、
図2(b)に示されるように、例えば2つの膨張黒鉛層21の間に補強としての金属層22を有するものであってもよい。受放熱部材20に膨張黒鉛層21と共に金属層22を設ける場合、例えば金属シートと膨張黒鉛単体のシートを重ねてプレス等により圧着すればよい。
【0033】
なお、膨張黒鉛層21は、膨張黒鉛以外に各種バインダー等を含むものであってもよいことはいうまでもなく、さらに例えば厚さ方向の熱伝導率を調整するための各種金属等を混合したものであってもよい。また、金属層22を構成する金属の種類は、特に限定されるものではないが、アルミや銅等の熱伝導率の高い金属または合金であることが好ましく、重量およびコストの観点からは、アルミまたはアルミ合金であることが好ましい。
【0034】
絶縁部材30は、発熱部材10を被覆して発熱部材10と受放熱部材20との間を電気的に絶縁するものである。すなわち、本実施形態では、発熱部材10と受放熱部材20の間を電気的に絶縁し、発熱部材10のみに電流が流れるようにすることで、消費電力を低減するようにしている。また、受放熱部材20に電流を流さないようにすることで、受放熱部材20内の抵抗値の分布に起因する局部的な過熱が発生しないようにしている。
【0035】
絶縁部材30の材質は、特に限定されるものではないが、適宜の電気絶縁性および耐熱性を有するものであればよく、発熱部材10から受放熱部材20へ効率的に熱を伝達させるためには、例えばガラスクロス等の比較的高い熱伝導率を有するものであることが好ましい。また、絶縁部材30は、発熱部材10を構成する電熱線等を被覆するように予め設けられたものであってもよいし、電熱線等を例えばガラスクロステープ等で被覆し、これを絶縁部材30とするようにしてもよい。また、発熱部材10を被覆するのではなく、発熱部材10と受放熱部材20の間に絶縁部材30からなる絶縁層を設けるようにしてもよい。
【0036】
発熱部材10は、絶縁部材30を介して受放熱部材20の受熱面20aに固定される。絶縁部材30の受放熱部材20への固定は、適宜の接着剤や粘着テープ等、既知の各種固定方法を利用すればよい。また、
図2(c)に示されるように、絶縁部材30に被覆された発熱部材10をプレス等によって受放熱部材20の受熱面20aに圧着するようにしてもよい。この場合、発熱部材10および絶縁部材30の受放熱部材20への固定をより確実にすることが可能となる。また、
図2(c)に示されるように、発熱部材10および絶縁部材30を膨張黒鉛層21に埋め込むようにすることで、より効率的に発熱部材10から受放熱部材20へ熱を伝達させることが可能となる。
【0037】
保護部材40は、発熱部材10、受放熱部材20および絶縁部材30を外側から覆うことにより、保護するものである。特に、受放熱部材20を構成する膨張黒鉛シートは比較的脆い材料であり、外部からの衝撃等で容易に破損する可能性があるが、本実施形態のように保護部材40で覆うことにより適切に保護することができる。
【0038】
保護部材40は、略矩形の袋状に構成されており、その内部に発熱部材10、受放熱部材20、絶縁部材30および導線12の一部が略密封状態で収容されるようになっている。保護部材40の材質は、特に限定されるものではないが、短絡や漏電等の事故防止の観点からは、例えば各種ゴムまたは樹脂等、適宜の電気絶縁性および耐熱性を備えると共に、防水性を備える材質であることが好ましい。また、保護部材40の材質は、適宜の可撓性を有する材質であることが好ましく、この場合、面状発熱装置1の取り扱いを容易にすると共に、保護部材40を受放熱部材20等に適宜に密着させてこれらを適切に保護することができる。
【0039】
図3(a)〜(f)は、保護部材40の密封手順の一例を示した概略図である。まず、保護部材40は、
図3(a)および(b)に示されるように、矩形状の2枚のシート状部材41、42の3辺を接着または溶着等することで、一端が開口した袋状の部材として構成される。次に、予め発熱部材10および絶縁部材30が固定された受放熱部材20を、
図3(c)に示されるように、袋状の保護部材40の内部に挿入する。
【0040】
受放熱部材20を保護部材40の内部に収容したならば、
図3(d)に示されるように、ノズルNを保護部材40の開口に挿入する。次に、保護部材40の開口の一部を接着等によって適宜に塞いだ後に、
図3(e)に示されるように、図示を省略した真空ポンプ等をノズルNに接続し、保護部材40内部の空気を吸引して保護部材40内部を負圧状態とする。これにより、保護部材40は、負圧によって受放熱部材20等に適宜に密着されることとなる。
【0041】
最後に、
図3(f)に示されるように、ノズルNを保護部材40から取り外した後に残りの開口を接着等により完全に塞ぎ、保護部材40を密封する。以上の手順により、保護部材40の密封が完了する。なお、ノズルNの挿入部分には、逆止弁等を設けておくようにしてもよい。また、導線12は、接着等する部分の間から外部に引き出すようにしてもよいし、導線12を引き出すために別途設けた孔から引き出すようにしてもよい。
【0042】
本実施形態では、保護部材40内部を負圧状態とすることで、保護部材40を受放熱部材20等に適宜に密着させ、保護部材40と内部の受放熱部材20等の相対的な移動を防止するようにしている。このようにすることで、保護部材40を受放熱部材20等に適宜に固定し、受放熱部材20等を適切に保護することが可能となる。また、保護部材40に撓み等が発生するのを防止することができるため、撓み部分に何かが引っ掛かることによる保護部材40の破損等を防止することが可能となる。
【0043】
なお、受放熱部材20、絶縁部材30および保護部材40の厚みは、特に限定されるものではなく、伝熱性と強度または絶縁性とのバランス等に応じて適宜に設定すればよい。また、発熱部材10の断面積は、必要な発熱量と長さから適宜に設定すればよい。
【0044】
また、発熱部材10の配置構成は、蛇行配置に限定されるものではなく、例えば渦巻き状の配置等、その他の任意の配置構成を採用することができる。また、複数の発熱部材10を適宜の間隔で配置するようにしてもよいし、1つの発熱部材10を適宜の間隔で分岐させるようにしてもよい。
【0045】
次に、面状発熱装置1における伝熱の態様について説明する。
図4は、面状発熱装置1における伝熱の態様を示した概略断面図である。同図に示されるように、通電により発熱部材10の発する熱は、絶縁部材30を介した熱伝導および熱伝達、ならびに発熱部材10からの熱放射により受放熱部材20の受熱面20aに伝わることとなる。なお、膨張黒鉛は、熱の放射率および吸収率に優れるため、絶縁部材30の材質として、例えばガラスクロス等の適宜に電磁波を透過させる材質を採用することで、熱放射によっても十分な熱を受放熱部材20に移動させることが可能となる。
【0046】
受放熱部材20の受熱面20aに移動した熱は、受放熱部材20の膨張黒鉛層21における面方向と厚さ方向の熱伝導率の差により、主に面方向に拡散移動することとなる。これにより、受放熱部材20の受熱面20a側には、面方向の所定の範囲にわたって高温領域20cが形成され、この高温領域20cから放熱面20bに向けて厚さ方向に熱が移動することとなる。また、厚さ方向に移動する熱は、移動中さらに面方向に拡散するため、放熱面20bでは所定の範囲にわたって面方向に略均一な放熱がなされることとなる。
【0047】
受放熱部材20の放熱面20bからの放熱は、熱伝導および熱伝達ならびに熱放射によって保護部材40の内側面40aに伝わることとなる。その後、熱は保護部材40の内部を移動し、保護部材40の外側面40bから熱伝導および熱伝達ならびに熱放射によって雪100に伝わり、この結果、融雪が行われる。
【0048】
上述のように、保護部材40は負圧により受放熱部材20と適宜に密着しているため、放熱面20bから保護部材40bの内側面40aに効率的に伝達されることとなる。また、膨張黒鉛は熱の放射率が高いことから、保護部材40を熱の吸収率の高いゴム等から構成することにより、放熱面20bからの熱放射を保護部材40に効率的に吸収させることが可能となる。すなわち、放熱面20bからの放熱をより確実に雪に伝達し、融雪をより効率的に行うことが可能となる。
【0049】
このように本実施形態では、発熱部材10の発した局所的な熱を、受放熱部材20によって効率的に拡散させた上で放熱することができるため、ニクロム線等からなる細い発熱部材10を受熱面20a側に適宜の間隔で配置することで、放熱面20bから略均一な放熱を行うことが可能となっている。すなわち、本実施形態では、少ない消費電力で効率的な融雪を行うことが可能となっている。
【0050】
なお、受放熱部材20が金属層22を有する場合にも、同様の効果を奏することが可能であることはいうまでもない。また、この場合、
図2(b)に示した例のように、2つの膨張黒鉛層21の間に金属層22を設け、受熱面20aおよび放熱面20bを両方とも膨張黒鉛層21から構成することで、受放熱部材20を適宜に補強しながらも、熱放射を活用した効率的な熱の移動を維持することが可能となる。
【0051】
但し、受放熱部材20に金属層22を設ける場合、膨張黒鉛層21および金属層22の配置構成は、
図2(b)に示した例に限定されるものではなく、少なくとも1つの膨張黒鉛層21を有するものであれば、その他の任意の配置構成を採用することができる。また、金属層22は、メッシュ状(網状)や格子状の金属シートから構成されるものであってもよい。
【0052】
次に、面状発熱装置1のその他の形態の例について説明する。
図5は、面状発熱装置1に発熱モジュール50を設けるようにした場合の一例を示した概略平面図である。また、
図6(a)は、発熱モジュール50の構造を示した概略分解斜視図であり、
図6(b)は、発熱モジュール50の受放熱部材20への固定を示した概略分解斜視図である。
【0053】
発熱モジュール50は、絶縁部材30によって被覆された発熱部材10を所定の範囲にわたって平面的に配置し、平板状の支持部材51に固定して支持したものである。この例では、
図6(a)に示されるように、適宜の蛇行状に曲折した発熱部材10および絶縁部材30を2つの樹脂フィルム51a、51bの間に挟み、ラミネート加工することによって発熱モジュール50を構成している。
【0054】
このように、発熱部材10を予め適宜の間隔で平面的に固定配置した発熱モジュール50を設けることで、発熱部材10の受放熱部材20への固定を容易にすることが可能となる。すなわち、
図6(b)に示されるように、発熱モジュール50を適宜の間隔で並べて平板状の支持部材51を受放熱部材20の受熱面20aに固定するだけで、発熱部材10を適切な間隔で容易に固定配置することが可能であり、これにより、面状発熱装置1の製造コストを削減することができる。
【0055】
なお、発熱モジュール50の受放熱部材20への固定方法は、特に限定されるものではなく、例えば支持部材51の四隅等、複数箇所を接着剤や粘着テープ等によって固定するようにしてもよいし、受放熱部材20と発熱モジュール50を重ねた状態でプレス等により圧着するようにしてもよい。また、発熱モジュール50は、ラミネート加工以外の方法で発熱部材10を支持部材51に固定したものであってもよい。また、支持部材51を絶縁部材30として兼用するようにしてもよい。
【0056】
また、
図5に示す例では、2つの発熱モジュール50を設けるようにした場合を示しているが、発熱モジュール50の数はこれに限定されるものではなく、1つまたは3つ以上の発熱モジュール50を設けるようにしてもよいことはいうまでもない。また、複数の発熱モジュール50を設ける場合、
図5に示されるように、各発熱モジュール50が備える発熱部材10を導線12を介して互いに直列に接続するようにしてもよいし、互いに並列に接続するようにしてもよい。
【0057】
図7は、面状発熱装置1を積雪を検出して発熱部材10に通電するように構成した場合の一例を示した概略平面図である。この例の面状発熱装置1は、積雪を検出する積雪検出センサ60と、積雪検出センサ60が積雪を検出したことに基づいて発熱部材10に通電する発熱制御装置62と、を備えている。
【0058】
積雪検出センサ60は、この例では光センサから構成されている。すなわち、積雪検出センサ60は、受光部の受ける光が所定量の積雪により遮られることに基づいて積雪を検出するものである。なお、受光部の受ける光は、積雪検出センサ60の備える発光部の発する光であってもよいし、街灯や太陽光等の外部からの光であってもよい。例えば、夜間に街灯の光が当たる位置に積雪検出センサ60を配置することで、夜間にも積雪を検出することが可能となる。
【0059】
発熱制御装置62は、適宜のマイコンおよびスイッチ等を備えて構成され、積雪検出センサ60が積雪を検出した場合に、電源の電力を発熱部材10に供給して発熱させる。発熱制御装置62はまた、発熱部材10の発熱により積雪が融け、積雪検出センサ60が積雪を検出しなくなった場合に、発熱部材10への電力の供給を停止する。
【0060】
このように、面状発熱装置1に積雪検出センサ60および発熱制御装置62を設けることで、例えば一定量の積雪のあるときにだけ発熱部材10に通電することができるため、面状発熱装置1の消費電力をより一層低減することが可能となる。なお、積雪検出センサ60は、例えば荷重センサ等、光センサ以外から構成されるものであってもよいが、積雪検出センサ60を光センサから構成することで、簡便に積雪を検出することが可能となる。
【0061】
図8は、面状発熱装置1の放熱量を面方向に変化させるように構成した場合の一例を示した概略平面図である。この例では、発熱部材10を密に配置することで、保護部材40の外側面40bにおいて他の領域よりも放熱量(発熱量)を増加させた高放熱領域70を、面状発熱装置1に設けるようにしている。本実施形態では発熱部材10を電熱線から構成しているため、その間隔を適宜に調整することで、容易に放熱量を変化させることが可能となっている。また、受放熱部材20によって熱が面方向に速やかに拡散されるため、放熱量をなだらかに分布させることが可能となっている。
【0062】
このように、高放熱領域70を設けることで、融雪の状態を適宜に調整することができるため、より効率的な融雪を行うことが可能となる。例えば、屋根の軒先側に高放熱領域70を配置することで、つららの発生を防止することが可能となる。すなわち、屋根の軒先側に供給する熱量を増加させることで、融雪により生じた水が屋根の軒先で再度冷却されて氷となるのを防止することができるため、より確実な融雪および除雪を行うことが可能となる。
【0063】
なお、発熱部材10の材質や構造、または発熱部材10への供給電力等を異ならせることによって高放熱領域70を設けるようにしてもよい。また、発熱モジュール50を設けるようにした場合、発熱モジュール50の種類を異ならせることによって高放熱領域70を設けるようにしてもよい。積雪検出センサ60および発熱制御装置62を設けるようにした場合、例えば積雪検出センサ60が積雪を検出しなくなった後も、高放熱領域70への電力供給は一定時間継続するようにしてもよい。また、高放熱領域70の位置、範囲および個数が、特に限定されないことはいうまでもない。
【0064】
図9(a)および(b)は、保護部材40を屋根材から構成するようにした場合の一例を示した概略分解斜視図である。保護部材40は、必ずしも上述の例のように発熱部材10、受放熱部材20および絶縁部材30を全体的に覆うものである必要はなく、積雪の生じる側、すなわち受放熱部材20の少なくとも放熱面20bを覆うものであればよい。特に、屋根材は建物を雨水等から保護するためのものであることから、保護部材40を屋根材から構成し、屋根材の裏面40c側(下側)に受放熱部材20を配置することで、受放熱部材20等を雨水その他から適切に保護することが可能となる。さらに、適切な防水性を有する絶縁部材30によって発熱部材10を被覆することで、水濡れに起因する漏電等をより確実に防止することができる。
【0065】
また、受放熱部材20を屋根材に適宜に固定することで、面状発熱装置1を、融雪機能を有する屋根材として使用することが可能となる。上述のように本実施形態では、ニクロム線等からなる細い発熱部材10と薄手のシート状の受放熱部材20の組合せによって効率的な融雪が可能であるため、保護部材40を屋根材から構成することにより、通常の屋根材と同様に取り扱うことが可能な面状発熱装置1を実現することができる。これにより、面状発熱装置1の設置がきわめて容易になるだけでなく、建物の外観を損なうことなく面状発熱装置1を設置することが可能となる。
【0066】
保護部材40を構成する屋根材は、
図9(a)に示す略平板状の瓦棒以外にも、
図9(b)に示す折板や波板等であってもよい。上述のように黒鉛は熱の放射率が高いため、受放熱部材20の放熱面20bを膨張黒鉛層21から構成することで、放熱面20bと保護部材40を構成する屋根材の間に空間があったとしても、熱放射によって十分な熱を保護部材40を構成する屋根材に伝えることができる。
【0067】
従って、本実施形態では、保護部材40を構成する屋根材に受放熱部材20を全体的に密着させる必要は必ずしもなく、
図9(b)に示されるように、折板や波板等から構成した保護部材40と略平板状の受放熱部材20を組み合わせた場合においても、十分に効率的な融雪が可能となっている。すなわち、本実施形態では、受放熱部材20の配置の自由度が高いため、既存の各種形状の屋根材をそのまま保護部材40として使用することが可能であり、屋根材として使用可能な面状発熱装置1を安価に構成することが可能となっている。
【0068】
また、
図9(b)に示されるように、適宜に高放熱領域70を設けることで、より効率的な融雪を行うことが可能となる。この場合、高放熱領域70は、
図9(b)に示されるように例えば軒先側等、面状発熱装置1の設置場所に応じて設けるようにしてもよいし、例えば放熱面20bと保護部材40との間隔が広くなる位置に設ける等、保護部材40を構成する屋根材の形状に応じて高放熱領域70を設けるようにしてもよい。
【0069】
なお、保護部材40を構成する屋根材の材質は、例えば屋根材の材質として一般的なメッキ鋼板等、熱伝導率の高い金属製であることが好ましいが、その他の材質であってもよい。また、保護部材40を構成する屋根材への受放熱部材20の固定方法は、特に限定されるものではなく、例えば接着やねじ締結等、既知の各種方法を採用することができる。また、屋根材と膨張黒鉛シートを重ねてプレス等により圧着し、受放熱部材20と保護部材40を一体的に形成するようにしてもよい。また、受放熱部材20は、例えば下葺き材等、保護部材40を構成する屋根材以外の部材に固定されるものであってもよい。また、折板等から保護部材40を構成した場合においても、受放熱部材20を折板等の裏面40cに沿う形状に構成し、折板等と受放熱部材20を全体的に略密着させるようにしてもよいことはいうまでもない。
【0070】
また、保護部材40を構成する屋根材の反対側に別の保護部材40を配置するようにしてもよく、袋状の保護部材40の上にさらに屋根材から構成される保護部材40を配置するようにしてもよい。また、保護部材40を構成する1つの屋根材に対して複数の受放熱部材20を配置するようにしてもよい。また、保護部材40を屋根材から構成した場合においても、発熱モジュール50や、積雪検出センサ60および発熱制御装置62を設けるようにしてもよいことはいうまでもない。
【0071】
また、保護部材40を構成する屋根材の裏面40cに膨張黒鉛シートを接着または圧着等することにより、受放熱部材20とは別の膨張黒鉛層を屋根材に設け、屋根材における熱の吸収率および面方向の熱伝導率を向上させるようにしてもよい。このようにすることで、保護部材40を構成する屋根材の形状によらず、より効率的な融雪を行うことが可能となる。
【0072】
その他、図示は省略するが、面状発熱装置1は、融雪装置以外にも例えば暖房装置、温熱装置、保温装置または乾燥装置等、面状の発熱を利用する各種装置として、または各種装置の一部として使用されるものであってもよい。例えば保護部材40を袋状に構成した面状発熱装置1を屋内の床面に敷くことで、ホットカーペットとして使用することができる。また、
図9(a)および(b)に示した例における屋根材に代えて、各種床材や壁材等から保護部材40を構成することで、面状発熱装置1を床暖房装置や壁暖房装置等として使用することができる。また、恒温槽や乾燥室等の周囲に面状発熱装置1を設けるようにしてもよい。
【0073】
本実施形態の面状発熱装置1では、膨張黒鉛層21を有する受放熱部材20によって熱を速やかに面方向に拡散させることができるため、融雪以外の用途においても少ない消費電力で効率的な加熱が可能となっている。また、発熱部材10の配置間隔の調整で高放熱領域70を容易に設定することができるため、各種装置の用途や特性、使用条件等に合わせた発熱態様を容易に実現することが可能となっている。
【0074】
次に、本実施形態に係る照明装置2について説明する。
図10(a)は、本実施形態に係る照明装置2の概略底面図であり、
図10(b)は、
図10(a)のB−B線断面図である。照明装置2は、屋外で街灯として使用されるものであり、面状発熱装置1を備えることによって自身の上部の積雪を自動的に融かして除去可能に構成されたものである。
【0075】
図10(a)および(b)に示されるように、照明装置2は、筐体80内に各部を収容して適宜に保護するように構成されており、この筐体80は、ブラケット81を介して電柱や照明柱等に取り付けられるようになっている。筐体80の下部80aの4箇所には、光を透過する下部レンズ82が配置され、各下部レンズ82の奥には光を発する光源であるLEDモジュール83が配置されている。そして、積雪の生じる筐体80の上部80bの内側面には、受放熱部材20が配置され、LEDモジュール83と受放熱部材20の間には、両者を接続する略柱状の伝熱部材90が配置されている。
【0076】
すなわち、照明装置2の備える面状発熱装置1は、光源であるLEDモジュール83が発熱部材10として機能し、伝熱部材90を介してLEDモジュール83の発する熱を受放熱部材20に伝えるように構成されている。また、筐体80は、保護部材40として機能し、受放熱部材20は、LEDモジュール83の備える適宜の絶縁部材30によってLEDモジュール83から電気的に絶縁されている。上述のように面状発熱装置1は、受放熱部材20によって熱を速やかに面方向に拡散させることができるため、LEDモジュール83のようなスポット的に発熱する発熱部材10によっても筐体80の上部80bに略均一に熱を伝え、効率的な融雪を行うことが可能となっている。
【0077】
また、LEDモジュール83を発熱部材10とすることで、LEDモジュール83の発する熱を有効活用して少ない消費電力で融雪を行うことが可能になるだけでなく、LEDモジュール83の発する熱を外部に放出する放熱装置として面状発熱装置1を兼用することができるため、照明装置2を安価且つコンパクトに構成することが可能となっている。さらに、本実施形態では、発熱部材10であるLEDモジュール83と受放熱部材20を伝熱部材90で接続することで、LEDモジュール83の配置の自由度および筐体80の形状の自由度を高めるようにしている。これにより、照明装置2の効率的な設計が可能になると共に、照明装置2のデザイン性を高めることも可能となっている。
【0078】
照明装置2はまた、街灯として使用されるものであるため、筐体80の上部80bに配置された上部レンズ84の奥に配置された照度センサ(光センサ)85と、既知の構造の点灯制御装置86を備え、照度センサ85の検出した光量(明るさ)に応じて点灯制御装置86がLEDモジュール83の点灯および消灯を制御するように構成されている。すなわち、照明装置2は、日の入りと共に周囲が暗くなった場合に自動的に点灯し、日の出と共に周囲が明るくなった場合に自動的に消灯するように構成されている。
【0079】
点灯制御装置86は、日の入りだけでなく、積雪によって照度センサ85の受ける外光が遮られた場合にもLEDモジュール83を点灯させる。すると、LEDモジュール83の発する熱により、筐体80の上部80bにおいて自動的に融雪が行われることとなる。そして、融雪の結果、照度センサ85が外光を受けるようになったならば、点灯制御装置86はLEDモジュール83を消灯させ、これにより融雪は停止される。すなわち、照明装置2では、照度センサ85および点灯制御装置86が、
図7に示した例の積雪検出センサ60および発熱制御装置62としても機能するようになっている。従って、照明装置2は、特別な装置を設けることなく、融雪の開始および停止を自動的に行うことが可能であり、安価且つ簡素な構成でありながらも、消費電力の少ない効率的な融雪を行うことが可能となっている。
【0080】
なお、伝熱部材90の材質は、特に限定されるものではないが、例えばアルミや銅等の熱伝導率の高い金属または合金であることが好ましい。また、膨張黒鉛シートをコイル状または筒状に巻き回したものから伝熱部材90を構成するようにしてもよい。また、専用の発熱部材10を備える面状発熱装置1を別途設け、例えばLEDモジュール83から離れた部位における融雪を可能とするようにしてもよい。また、照明装置2の備える光源はLEDモジュール83以外のものであってもよく、また、光源の配置構成が特に限定されないことはいうまでもない。
【0081】
以上説明したように、本実施形態に係る面状発熱装置1は、受熱面20aおよび放熱面20bを有する略平板状の受放熱部材20と、受放熱部材20の受熱面20a側に配置され、通電により熱を発する発熱部材10と、受放熱部材20と発熱部材10の間を電気的に絶縁する絶縁部材30と、を備え、受放熱部材20は、膨張黒鉛を含む膨張黒鉛層21を受熱面20aと放熱面20bの間に有している。
【0082】
このような構成とすることで、面状の発熱をより簡便且つ安価に行うことが可能となる。すなわち、発熱部材10の発した熱を適宜に拡散し、放熱面20bから略均一な状態で放熱することが可能となるため、簡素且つ安価な構成でありながらも、効率的な面状の発熱を実現することができる。また、通電が発熱部材10のみに限定されるため、消費電力を低減すると共に、局所的な過熱等の発生を防止して安全性を高めることができる。
【0083】
また、面状発熱装置1は、受放熱部材20の少なくとも放熱面20bを覆う保護部材40を備えている。このようにすることで、比較的脆い材料である膨張黒鉛を含む受放熱部材20を適切に保護することが可能となるため、面状発熱装置1の耐久性および汎用性を高めることができる。
【0084】
また、保護部材40は、袋状に構成され、受放熱部材20、発熱部材10および絶縁部材30は、負圧状態とした保護部材40内に収容されている。このようにすることで、保護部材40を受放熱部材20等に適宜に密着させて、これらを適切に保護すると共に、保護部材40破損を防止することができる。
【0085】
また、保護部材40は、屋根材、床材または壁材であってもよい。このようにすることで、受放熱部材20を適切に保護しつつ、面状発熱装置1を屋根材、床材または壁材と同様に取り扱うことが可能となるため、面状発熱装置1の利用および設置を効率化することができる。
【0086】
また、発熱部材10は、受熱面20aに沿って配置される電熱線から構成されている。このようにすることで、受放熱部材20の大きさに応じて適宜に電熱線の材質、寸法および配置を調整することが可能となるため、消費電力を低減することができる。
【0087】
また、面状発熱装置1は、平面的に配置した発熱部材10を支持する支持部材51を有し、受放熱部材20の受熱面20a側に配置される発熱モジュール50を備えるものであってもよい。このようにすることで、発熱部材10の配置を容易にすることができるため、製造コストを削減することができる。
【0088】
また、発熱部材10は、絶縁部材30と共に受放熱部材20に圧着されるものであってもよい。このようにすることで、発熱部材10および絶縁部材30の受放熱部材20への固定をより確実にすると共に、より効率的に発熱部材10から受放熱部材20へ熱を伝達させることができる。
【0089】
また、受放熱部材20は、膨張黒鉛層21に隣接する金属層22を有するものであってもよい。このようにすることで、破損しやすい受放熱部材20を適宜に補強することが可能となるため、面状発熱装置1の耐久性および汎用性を高めることができる。また、この場合、金属層22は、2つの膨張黒鉛層21の間に設けられることが好ましい。このようにすることで、効率的な熱の伝達と、受放熱部材20の適切な補強を両立させることができる。
【0090】
また、面状発熱装置1は、他の領域よりも放熱量を増加させた高放熱領域70を備えるものであってもよい。このようにすることで、例えば融雪装置において軒先側の発熱量を増やしてつららの発生を防止する等、各種装置の用途や特性、使用条件等に合わせた発熱態様を容易に実現することができる。
【0091】
また、面状発熱装置1は、融雪装置として使用される、または融雪装置の一部として使用されるのに特に好適である。融雪装置に面状発熱装置1を備えることで、簡素且つ安価な構成でありながらも、効率的な面状の発熱が得られるため、融雪を効率的に行うことができる。
【0092】
また、面状発熱装置1を備える融雪装置は、積雪を検出する積雪検出センサ60と、積雪検出センサ60が積雪を検出したことに基づいて発熱部材10に通電する発熱制御装置62と、を備えるものであってもよい。このようにすることで、発熱部材10への通電を融雪が必要な場合だけに限定することが可能となるため、面状発熱装置1の消費電力をより一層低減することが可能となる。
【0093】
また、本実施形態に係る照明装置2は、面状発熱装置1を備え、受放熱部材20は、筐体80の内側に配置されている。このような構成とすることで、簡素且つ安価な構成でありながらも、照明装置2上の積雪を効率的に融雪することが可能となるため、豪雪地帯においても安全に使用することが可能な街灯を実現することができる。
【0094】
また、照明装置2の発熱部材10は、通電により光を発する光源(LEDモジュール83)となっている。このようにすることで、光源の発する熱を有効活用し、少ない消費電力で効率的な融雪を行うことができる。
【0095】
また、照明装置2の備える面状発熱装置1は、光源の発する熱を放出する放熱装置として兼用されている。このようにすることで、効率的な融雪を可能としながらも、照明装置2を安価且つコンパクトに構成することができる。
【0096】
また、照明装置2の備える面状発熱装置1は、発熱部材10の発した熱を受放熱部材20に伝える伝熱部材90を備えている。このようにすることで、発熱部材10である光源の配置および筐体80の形状の自由度を高め、照明装置2の効率的な設計が可能となるため、照明装置2の機能やデザイン性を高めることができる。
【0097】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の面状発熱装置、融雪装置および照明装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、発熱部材10、受放熱部材20、絶縁部材30、保護部材40および伝熱部材90等の各部の形状は、上記実施形態において示した形状に限定されるものではなく、各種条件に応じてその他の任意の形状を採用することができる。また、発熱部材10、金属層22、絶縁部材30、保護部材40および伝熱部材90等の材質は、上記実施形態において示したものに限定されず、その他の適宜の材質を採用することができる。
【0098】
また、上記実施形態において示した作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したものに過ぎず、本発明による作用および効果は、これらに限定されるものではない。