(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5955999
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】カバー取付構造及び天井埋込型機器
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20160707BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20160707BHJP
【FI】
H04R1/02 102A
H04R1/02 104A
F21S2/00 423
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-28201(P2015-28201)
(22)【出願日】2015年2月17日
【審査請求日】2015年12月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000119830
【氏名又は名称】因幡電機産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康智
【審査官】
千本 潤介
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第07824083(US,B1)
【文献】
特開2014−007015(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3069136(JP,U)
【文献】
実公平04−019912(JP,Y2)
【文献】
特開2006−060726(JP,A)
【文献】
特開2006−041991(JP,A)
【文献】
実開平07−033091(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0177088(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0044053(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0028463(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー取付面部に対してカバーが磁気吸引力により取り付けられるカバー取付構造であって、
前記カバー取付面部が下向きの面部であり、
前記カバーが円盤状に形成されていると共に、前記カバー取付面部に当該円盤状のカバーが軸心周りで回転自在に内嵌する被内嵌部が設けられ、
前記カバーを、前記被内嵌部に内嵌された状態で、前記カバー取付面部の面内方向に沿って回転することで、前記磁気吸引力で前記カバー取付面部に取り付けられる取付用姿勢と、当該取付用姿勢よりも前記磁気吸引力が小さくなる取外用姿勢との間で、姿勢変更可能に構成され、
前記カバーと前記カバー取付面部との内、前記カバー取付面部側に磁石部が設けられていると共に、前記カバー側に前記取付用姿勢で前記磁石部に対向する磁性体部と前記取外用姿勢で前記磁石部と対向する非磁性体部とが設けられ、
前記磁石部は、前記カバー取付面部において前記カバーが当接する表面側とは反対側の裏面側となる上部側に固定され、
前記磁気吸引力が、前記カバー取付面部に添わせたカバーを前記取付用姿勢の近傍から前記取付用姿勢に移動させる強さに設定されているカバー取付構造。
【請求項2】
前記磁石部は、前記カバー取付面部の上部側に設けられたボス部に嵌め込まれて固定されている請求項1に記載のカバー取付構造。
【請求項3】
前記カバーは、円環状のリング部材と、そのリング部材の表面側の開口部を覆う保護用ネットとを備え、
前記保護用ネットは、その外周縁部が前記リング部材の裏面側端部に固定された状態で、前記リング部材の外周面及び表面側全体を覆うように設けられている請求項1又は2に記載のカバー取付構造。
【請求項4】
前記被内嵌部は、その直径が円盤状の前記カバーの直径よりも大きく形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載のカバー取付構造。
【請求項5】
天井面に埋め込まれる機器本体と、当該機器本体の下面に形成されたカバー取付面部と、当該カバー取付面部に取り付けられるカバーとを備え、前記カバー取付面部に対して前記カバーが磁気吸引力により取り付けられる天井埋込型機器であって、
前記カバー取付面部への前記カバーの取り付けに、請求項1〜4の何れか1項に記載のカバー取付構造が用いられている天井埋込型機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー取付面部に対してカバーが磁気吸引力により取り付けられるカバー取付構造及びそれを備えた天井埋込型機器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような磁気吸引力を利用した従来のカバー取付構造として、スピーカユニットの前面に形成されたカバー取付面部としてのスピーカ配置部に対してカバーとしてのスピーカグリルが取り付けられるスピーカ装置や、照明装置の前面に形成された照明配置部に対してカバーとしての透光カバーが取り付けられる照明装置などに採用されたものがある(例えば特許文献1〜3を参照。)。
そして、これらの従来のカバー取付構造は、カバーを上記磁気吸着力に抗してカバー取付面部から離間方向に引き剥がすことで、カバーをカバー取付面部から取り外すように構成されている。
【0003】
即ち、特許文献1に記載のスピーカ装置のカバー取付構造では、当該文献の
図1及び
図2等に示されているとおり、機器本体のスピーカ配置部(2)に設けられた凸部(5)が、スピーカグリル(4)に設けられた凹部(6)に内挿されることで、スピーカ配置部(2)の面内方向に沿ったスピーカグリル(4)の移動が阻止された状態となる。この状態で、凹部(6)の底側に設けられた磁石部(7)とそれに対向する磁性体からなる凸部(5)との間に磁気吸引力が発生することにより、スピーカグリル(4)がスピーカ配置部(2)に固定されることになる。したがって、この従来のカバー取付構造において、スピーカ配置部(2)からスピーカグリル(4)を取り外す場合には、スピーカグリル(4)に設けられた凹部(6)からスピーカ配置部(2)の凸部(5)を引き抜くために、スピーカグリル(4)を上記磁気吸着力に抗してスピーカ配置部(2)から離間方向に引き剥がす必要がある。
【0004】
また、特許文献2に記載のスピーカユニットのカバー取付構造では、当該文献の
図1等に示されているとおり、スピーカグリル(17)が円盤状に形成され、一方、スピーカ配置部に当該円盤状のスピーカグリル(17)が内嵌する環状の被内嵌部(18)が設けられている。更には、そのスピーカグリル(17)自体が磁性体で構成されていると共に、被内嵌部(18)自体が磁石で構成されている。そして、スピーカグリル(17)の外周側縁部が被内嵌部(18)に内嵌された状態で、磁石からなる被内嵌部(18)とそれに対向するスピーカグリル(17)の外周側縁部との間に磁気吸引力が発生することにより、スピーカグリル(17)がスピーカ配置部に固定されることになる。したがって、この従来のカバー取付構造においても、スピーカ配置部からスピーカグリル(17)を取り外す場合には、スピーカグリル(17)を上記磁気吸着力に抗してスピーカ配置部から離間方向に引き剥がす必要がある。
【0005】
また、特許文献3に記載の照明装置のカバー取付構造では、
図2、
図8A及び
図8B等に示されているとおり、矩形の透光カバー(40)の外周側縁部に設けられた比較的長尺の磁石部(43a,43b)と、矩形の照明配置部(20)の外周縁に設けられた比較的長尺の磁石部(31a,31b)との間で磁気吸引力が発生することにより、透光カバー(40)が照明配置部(20)に固定されることになる。更に、この磁気吸引力が維持された状態のまま、透光カバー(20)が照明配置部(20)の面内方向に沿ってスライドされることで、照明配置部(20)側に設けられた突起部(33)が透光カバー(40)側に設けられた被係止部(44)に係止され、このことで、照明配置部(20)に対する透光カバー(40)の意図しない脱落が防止されている。したがって、この従来のカバー取付構造においても、照明配置部(20)から透光カバー(40)を取り外す場合には、透光カバー(40)を一旦照明配置部(20)の面内方向に沿ってスライドさせて突起部(33)の被係止部(44)に対する係合を解除した上で、透光カバー(40)を上記磁気吸着力に抗して照明配置部(20)から離間方向に引き剥がす必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−041991号公報
【特許文献2】特開2006−060726号公報
【特許文献3】特開2014−007015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような磁気吸引力を利用した従来のカバー取付構造では、カバーをカバー取付面部から取り外すために、当該カバーを上記磁気吸着力に抗してカバー取付面部から離間方向に引き剥がす必要があるので、カバーを強固に固定するために強力な磁石を利用した場合等においては、カバーを引き剥がすために非常に大きな力が必要となる上に、その大きな引き剥がし力に耐え得る構造を採用するべく構造が煩雑化し製造コストが嵩むという問題が生じる。また、カバーをカバー取付面部から離間方向に大きな力で引き剥がすために、カバー取付面部に取り付けられたカバーに対し同離間方向に力を加えるための摘み部や指掛け部等を設けた場合には、美観を損ねるという問題が生じる。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、カバー取付面部に対してカバーが磁気吸引力により取り付けられるカバー取付構造において、カバーをカバー取付面部から省力且つ容易に取り外すことができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は、カバー取付面部に対してカバーが磁気吸引力により取り付けられるカバー取付構造であって、
前記カバー取付面部が下向きの面部であり、
前記カバーが円盤状に形成されていると共に、前記カバー取付面部に当該円盤状のカバーが軸心周りで回転自在に内嵌する被内嵌部が設けられ、
前記カバーを、
前記被内嵌部に内嵌された状態で、前記カバー取付面部の面内方向に沿って
回転することで、前記磁気吸引力で前記カバー取付面部に取り付けられる取付用姿勢と、当該取付用姿勢よりも前記磁気吸引力が小さくなる取外用姿勢との間で、姿勢変更可能に構成され
、
前記カバーと前記カバー取付面部との内、前記カバー取付面部側に磁石部が設けられていると共に、前記カバー側に前記取付用姿勢で前記磁石部に対向する磁性体部と前記取外用姿勢で前記磁石部と対向する非磁性体部とが設けられ、
前記磁石部は、前記カバー取付面部において前記カバーが当接する表面側とは反対側の裏面側となる上部側に固定され、
前記磁気吸引力が、前記カバー取付面部に添わせたカバーを前記取付用姿勢の近傍から前記取付用姿勢に移動させる強さに設定されている点にある。
【0010】
本特徴構成を有するカバー取付構造によれば、カバーを上記取付用姿勢でカバー取付面部に添わせることで、カバーとカバー取付面部との間にカバーの固定に必要な磁気吸引力を発生させて、カバーをカバー取付面部に固定することができる。また、このように固定されたカバーをカバー取付面部から取り外す場合には、カバーをカバー取付面部の面内方向に沿って移動させて、カバーの姿勢を上記取付用姿勢から上記取外用姿勢に変更するという簡単な操作により、カバーを固定していた磁気吸引力を小さくすることができるので、省力且つ容易にカバーをカバー取付面部から取り外すことができる。
尚、本願において、磁気吸引力が小さくなるとは、磁気吸引力が弱くなっても残存している場合のみならず、磁気吸引力が解消(消滅)されている場合も含む。
【0012】
本特徴構成を有するカバー取付構造によれば、カバーを上記取付用姿勢でカバー取付面部に添わせることで、一方側の磁石部が他方側の磁性体部に対向する位置に配置されるので、それらの間にカバーの固定に必要な磁気吸引力を発生させることができる。また、このように固定されたカバーをカバー取付面部から取り外す場合には、カバーの姿勢を上記取付用姿勢から上記取外用姿勢に変更することで、一方側の磁石部が他方側の磁性体部から乖離して非磁性体部に対向する位置に配置されるので、カバーを固定していた磁気吸引力を極めて小さく又は解消することになる。このことにより、カバーのカバー取付面部からの取り外しが一層省力且つ容易なものとなる。
【0014】
本特徴構成を有するカバー取付構造によれば、カバー取付面部側に磁石部を設けると共に、カバー側に磁性体部及び非磁性体部を設けるにあたり、磁石部がカバー取付面部の裏面側に配置されているので、カバーが当接するカバー取付面部の表面側を凹凸のない平面状に形成することができる。このことで、カバー取付面部に当接したカバーを、姿勢変更のために、当該カバー取付面部の面内方向に沿って一層省力で且つスムーズに移動させることができる。
【0016】
本特徴構成を有するカバー取付構造によれば、円盤状のカバーをカバー取付面部に設けられた被内嵌部に内嵌させてカバー取付面部に添わせた状態(本件においてこの状態を「嵌め込み状態」と呼ぶ。)において、カバーの位置を変更することなく当該カバーを軸心周りで回転させる形態で、カバーの姿勢を上記取付用姿勢と上記取外用姿勢との間で変更することができる。よって、カバー取付面部の被内嵌部とカバーの外周面との間の隙間において、カバーの姿勢変更のための隙間を余分に設ける必要がなくなる。このことで、円盤状のカバーが内嵌する被内嵌部を、当該カバーの外周面との間の隙間が均一且つできるだけ狭い円筒状に形成して、美観を向上することができる。
【0018】
本特徴構成を有するカバー取付構造によれば、カバー取付面部が下向きの面部であるので、当該カバー取付面部に取り付けられたカバーの自重は、当該カバーをカバー取付面部から取り外す方向(鉛直下向き)に加わることになる。このことで、カバーの姿勢を上記取外用姿勢に変更してカバーを固定していた磁気吸引力が小さくなった際において、カバーのカバー取付面部からの取り外しが一層省力且つ容易なものとなる。更に、カバーの姿勢を取外用姿勢とした場合にカバーを固定していた磁気吸引力が極めて小さく又は解消されるように構成すれば、自重のみを利用してカバーをカバー取付面部から取り外すこともできる。
【0020】
本特徴構成を有するカバー取付構造によれば、カバー取付面部に添わせたカバーの姿勢が取付用姿勢に対して若干ずれている場合であっても、上記適切に設定された磁気吸引力により自動的に、そのカバーの姿勢を正規の取付用姿勢に移動させることができる。即ち、カバーをカバー取付面部に固定させるにあたり、カバーをカバー取付面部に添わせてその面内方向に移動させる際に、カバーの姿勢が、取付用姿勢の近傍の姿勢になった時点で、上記適切に設定された磁気吸引力により自動的に取付用姿勢に変更されることになる。そして、このようなカバーの自動的な姿勢変更により、カバーの固定が完了したことを認識させることができる。また、カバー取付用面部に固定されたカバーの姿勢が、上記適切に設定された磁気吸引力により正規の取付用姿勢に移動されることから、カバーが正規の取付用姿勢に対してずれて固定されることを抑制することができるので、カバーのずれによる意図しない脱落や、カバーのずれによる美観の悪化を回避することができる。
尚、本願において、カバー取付面部に添わせたカバーを取付用姿勢近傍から取付用姿勢に移動させる磁気吸引力の強さとは、その取付用姿勢近傍のカバーについて、カバー取付用面部との間に働く磁気吸引力がカバー取付面部との間に働く摺動摩擦抵抗を上回ることにより自動的に、取付用姿勢に姿勢変更される程度の磁気吸引力の強さを示す。
【0021】
本発明の第2特徴構成は、前記磁石部は、前記カバー取付面部の上部側に設けられたボス部に嵌め込まれて固定されている点にある。
本発明の第3特徴構成は、前記カバーは、円環状のリング部材と、そのリング部材の表面側の開口部を覆う保護用ネットとを備え、
前記保護用ネットは、その外周縁部が前記リング部材の裏面側端部に固定された状態で、前記 リング部材の外周面及び表面側全体を覆うように設けられている点にある。
本発明の第4特徴構成は、前記被内嵌部は、その直径が円盤状の前記カバーの直径よりも大きく形成されている点にある。
本発明の第
5特徴構成は、天井面に埋め込まれる機器本体と、当該機器本体の下面に形成されたカバー取付面部と、当該カバー取付面部に取り付けられるカバーとを備え、前記カバー取付面部に対して前記カバーが磁気吸引力により取り付けられる天井埋込型機器であって、
前記カバー取付面部への前記カバーの取り付けに、上記第1乃至第
4特徴構成の何れかを有するカバー取付構造が用いられている点にある。
【0022】
本特徴構成を有する天井埋込型機器によれば、上述した何れかの特徴構成を有するカバー取付構造を採用して、カバー取付面部に対してカバーが磁気吸引力により取り付けられているので、上述した何れかの特徴構成を有するカバー取付構造と同様に、容易且つ省力でカバーをカバー取付面部から取り外すことができる。更に、かかる天井埋込型機器では、カバー取付面部が鉛直下向きの面部であることから、上述した第
1特徴構成を有するカバー取付構造と同様に、カバーの自重を利用して、カバーのカバー取付面部からの取り外しを一層容易且つ省力なものとすることができる。特に、機器本体が天井面に埋め込まれる天井面埋込型機器に本発明に係るカバー取付構造を採用することで、従来のように比較的高所の天井面に略面一に配置されたカバー取付面部からカバーを下向きに引き剥がすというような無理な体勢を取るような操作は必要とせず、カバーに手指を添えてカバー取付面部の面内方向に沿って移動させて取外用姿勢とした後にその手指を下げるというような非常に簡単で省力な操作により、カバーをカバー取付面部から取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】実施形態のスピーカユニットの部分断面斜視図
【
図3】実施形態のスピーカユニットにおいて、ピーカ配置部に対してスピーカグリルを嵌め込んだ状態(a)とスピーカ配置部からスピーカグリルを取り外した状態(b)とを示す斜視図
【
図6】実施形態のスピーカユニットにおいて、スピーカ配置部に対するスピーカグリルの取付用姿勢(a)と取外用姿勢(b)とを示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るスピーカユニット1は、天井面50に埋め込まれる機器本体2と、当該機器本体2の下面に形成されたカバー取付面部Aと、当該カバー取付面部Aに取り付けられるカバーBとを備えた天井埋込型機器として構成されている。
【0025】
具体的に、スピーカユニット1には、上記カバー取付面部Aとして、スピーカ3が配置された円形のスピーカ配置部2aが設けられており、一方、上記カバーBとして、スピーカ配置部2aの防塵等の保護用の円盤状のスピーカグリル20が設けられている。そして、スピーカグリル20は、スピーカ配置部2aの表面側(
図1及び
図2において下側)の面に当接し、当該スピーカ配置部2aの表面側を覆う状態で、スピーカ配置部2aに取り付けられる。
【0026】
このスピーカユニット1では、スピーカ配置部2aへのスピーカグリル20の取り付けに、当該スピーカ配置部2aに対してスピーカグリル20が磁気吸引力により取り付けられるカバー取付構造が用いられている。更に、このカバー取付構造は、詳細については後述するが、スピーカグリル20をスピーカ配置部2aの面内方向に沿って移動させるという簡単な操作により、磁気吸引力でスピーカ配置部2aに取り付けられる取付用姿勢(
図6(a)参照)と、当該取付用姿勢よりも磁気吸引力が小さくなる取外用姿勢(
図6(b)参照)との間で、姿勢変更可能に構成されている。そして、このようなカバー取付構造を適用することで、取外用姿勢とされたスピーカグリル20をスピーカ配置部2aから省力且つ容易に取り外すことができる。
以下、機器本体2及びスピーカグリル20の夫々の基本構成と、これらを備えるスピーカユニット1に適用されたカバー取付構造の詳細構成について、順に説明する。
【0027】
〔機器本体2〕
機器本体2は、
図1に示すように、円筒状の側筒部2dを天井面50に形成された円形開口に挿入させて、当該側筒部2dの下端から外方に広がるフランジ部2cの上面を天井面50に当接させた埋込状態で、居室や浴室等の室内の天井面50に設置される。更に、この機器本体2の内部には、端子部6を介して給電され、外部の音源機器(図示省略)との間で通信を行う制御回路部5が設けられており、この制御回路部5が、所定の処理プログラムを実行して、後述するスピーカ配置部2aに設けられたスピーカ3へ音声出力用の信号を出力することで、スピーカ3から室内へ音楽などの音声が出力される。
【0028】
図1及び
図3(b)に示すように、側筒部2dの内面の下端部より少し上方に引退した位置には、天井面50に沿った円形のスピーカ配置部2aが設けられており、このスピーカ配置部2aには、音声を出力するスピーカ3、スピーカ3背後の音を利用して低音を増強するためのスピーカポート4、後述する制御回路部5のリセット(再起動)用の操作ボタン7などが配置されている。そして、このスピーカ配置部2aがカバー取付面部Aとされて、後述するカバーBとしてのスピーカグリル20が着脱自在に取り付けられる。
【0029】
スピーカ配置部2aには、円盤状のスピーカグリル20が軸心周りに回転自在に内嵌する円筒状の被内嵌部2bが形成されている。具体的に、この被内嵌部2bは、その直径が円盤状のスピーカグリル20の直径よりも僅かに大きめに形成されており、更に、その深さ(高さ)がスピーカグリル20の高さと略同じとされている。したがって、スピーカグリル20を被内嵌部2bに内嵌させてスピーカ配置部2aに添わせた嵌め込み状態(
図3(a)参照)では、スピーカグリル20の周囲に形成される隙間が均一且つ僅かなものとなり、更に、スピーカグリル20の下面とフランジ部2cの下面とが略面一となって、美観が優れたものとなる。
【0030】
〔スピーカグリル20〕
スピーカグリル20は、
図1及び
図3(a)に示すように、機器本体2のスピーカ配置部2aに取り付けられて当該スピーカ配置部2aの表面側を覆って防塵等の保護を行うためのカバーBとして構成されており、当該スピーカ配置部2aに形成された円筒状の被内嵌部2bに対して内嵌する円盤状に形成されている。
【0031】
スピーカグリル20は、
図2、
図4に示すように、円環状でプラスチック製のリング部材21と、そのリング部材21の表面側(
図1及び
図2において下側、
図4において奥側)の開口部を覆う保護用ネット22とを備えて構成されている。
【0032】
スピーカグリル20のリング部材21は、スピーカグリル20の外周側面を形成する円筒状の外周筒部21bと、その外周筒部21bの内周面に沿って等間隔で4箇所に配置されて当該外周筒部21bと同じ高さのボス部21cと、それらボス部21cの表面側を連接する平板円環状のリング部21aとで構成されている。
【0033】
一方、保護用ネット22は、その外周縁部が外周筒部21bの裏面側端部(スピーカ配置部2aに当接する側の端部)に接着固定された状態で、リング部21aの外周面及び表面側全体を覆うように敷設されている。これにより、機器本体2の被内嵌部2bに内嵌させた嵌め込み状態(
図3(a)参照)では、保護用ネット22のみが機器本体2側に当接することになり、リング部材21や後述する皿ネジ23などの硬質の部材が当接することがないので、嵌め込み状態のスピーカグリル20を軸心周りに回転させた場合において、低い摺動抵抗でスムーズな回転が実現されると共に、摺擦による磨耗や損傷が防止される。
【0034】
更に、
図2及び
図5に示すように、リング部材21の表面側には、複数の凸部21dが周方向に分散配置されている。これにより、嵌め込み状態(
図3(a)参照)のスピーカグリル20の表面に手指を押し当てて当該スピーカグリル20を軸心周りに回転させるにあたり、押し当てた手指が上記凸部21dに好適に引っ掛かるので、スピーカグリル20の回転が容易に行える。尚、この凸部21dの代わりに凹部(図示省略)を設けても構わず、また、これら凸部や凹部を組み合わせて配置することもできる。
【0035】
〔カバー取付構造〕
本実施形態のスピーカユニット1では、
図1に示すように、機器本体2のスピーカ配置部2a側に、磁石部Xが設けられており、一方、スピーカグリル20側に、当該磁石部Xとの間でスピーカ配置部2aへのスピーカグリル20の固定に必要な磁気吸引力が発生する磁性体部Y1と、当該磁石部Xとの間でこのような磁気吸引力が発生しない非磁性体部Y2とが設けられている。
以下、機器本体2のスピーカ配置部2a側における磁石部Xの詳細な配置構成、並びに、スピーカグリル20側の磁性体部Y1及び非磁性体部Y2の詳細な配置構成について説明する。
【0036】
機器本体2のスピーカ配置部2aには、
図1,
図2及び
図3(b)に示すように、上記磁石部Xとして、永久磁石10が、スピーカ配置部2aの外周側縁部に沿って等間隔で4箇所に配設されている。これら永久磁石10は、スピーカ配置部2aにおいてスピーカグリル20が当接する表面側とは反対側の裏面側(
図1において上部側)に配置されている。具体的に、永久磁石10は、円柱状に形成されており、スピーカ配置部2aの裏面側から上方に立設する円筒状のボス部11に嵌め込まれて固定されている。
【0037】
このように、磁石部Xとしての永久磁石10がスピーカ配置部2aの裏面側に配置されているので、嵌め込み状態のスピーカグリル20が当接するスピーカ配置部2aの表面側の外周縁部が、凹凸のない平面状に形成されている。このことで、嵌め込み状態のスピーカグリル20を軸心周りに回転させた場合において、低い摺動抵抗でスムーズな回転が実現されている。また、この永久磁石10としては、スピーカグリル20の磁性体部Y1との間で発生する磁気吸引力を強化させてスピーカグリル20を強固に固定するために、磁束密度が高く非常に強い磁力を持つネオジム磁石が用いられている。
【0038】
一方、スピーカグリル20には、
図2及び
図4に示すように、上記磁性体部Y1として、強磁性を有するステンレスや鉄等の強磁性体材料製の皿ネジ23が、スピーカグリル20の外周側縁部に沿って等間隔で4箇所に配設されている。これら皿ネジ23は、リング部材21のボス部21cに裏面側から捩じ込まれた状態で固定されている。更に、スピーカグリル20において、リング部材21において上記皿ネジ23が固定されたボス部21cの表面側を連接する平板円環状のリング部21aが、非磁性体材料であるプラスチック製で構成されていることで、上記磁石部Xとの間で磁気吸引力が発生しない非磁性体部Y2として機能することになる。
【0039】
以上のように、スピーカ配置部2aに磁石部Xを配置すると共に、スピーカグリル20に磁性体部Y1及び非磁性体部Y2を配置することにより、
図3(a)に示すように、スピーカグリル20を機器本体2の被内嵌部2bに内嵌させた嵌め込み状態で軸心周りに回転させれば、当該スピーカグリル20を、磁気吸引力でスピーカ配置部2aに取り付けられる取付用姿勢(
図6(a)参照)と、当該取付用姿勢よりも前記磁気吸引力が小さくなる取外用姿勢(
図6(b)参照)との間で、姿勢変更可能となる。
【0040】
即ち、
図6(a)に示すように、スピーカ配置部2aに対するスピーカグリル20の姿勢を取付用姿勢とすれば、スピーカグリル20側の磁性体部Y1がスピーカ配置部2a側の磁石部Xと対向する位置に配置されて、当該磁石部Xと当該磁性体部Y1との間に適度の磁気吸引力が発生するので、その磁気吸引力によりスピーカグリル20がスピーカ配置部2aに固定される。
【0041】
更に、スピーカ配置部2aとそれに添わせたスピーカグリル20との間に働く磁気吸引力が、スピーカ取付部2aに添わせたスピーカグリル20を上記取付用姿勢の近傍から上記取付用姿勢に移動させる強さに設定されている。よって、スピーカグリル20をスピーカ配置部2aに固定するにあたり、利用者がスピーカグリル20に手指を添えて嵌め込み状態のスピーカグリル20を軸心周りに回転させる際に、スピーカグリル20の姿勢が、取付用姿勢となる直前の時点(上記取付用姿勢の近傍となる時点)で、上記適切に設定された磁気吸引力により自動的に、取付用姿勢に変更されることになる。よって、スピーカグリル20に手指を添えていた利用者は、スピーカグリル20が自動的に姿勢変更されたことを手指などを通じて感じることにより、スピーカグリル20がスピーカ配置部2aに固定されたことを認識することができる。また、スピーカ配置部2aにおいて取付用姿勢の近傍にずれた姿勢で固定されたスピーカグリル20は、上記適切に設定された磁気吸引力により、常に正規の取付用姿勢に移動されることになり、当該取付用姿勢からずれた状態のまま固定されることが抑制される。よって、被内嵌部2bとそれに対して嵌め込み状態で固定されたスピーカグリル20との間の隙間は、常に周方向において均一なものとなり、美観が維持されることになる。
尚、上記のようなスピーカ20とスピーカ配置部2aとの間に発生する磁気吸引力の設定は、磁石部Xの磁力や大きさや配置箇所、磁性体部Y1の材質や大きさや配置箇所、それらの相対配置関係、スピーカ配置部2aとそれに添わせたスピーカグリル20との間の摩擦抵抗などを調整することにより行うことができる。
【0042】
一方、このように固定されたスピーカグリル20を軸心周りに回転させることで、
図6(b)に示すように、スピーカグリル20側の磁性体部Y1がスピーカ配置部2a側の磁石部Xと乖離する位置に配置されると共に、スピーカグリル20側の非磁性体部Y2がスピーカ配置部2a側の磁石部Xと対向する位置に配置されて、上記取付用姿勢においてスピーカグリル20を固定していた磁気吸引力が極めて小さく又は解消されるので、容易且つ省力でスピーカグリル20をスピーカ配置部2aから取り外すことができる。
【0043】
更に、機器本体2が天井面50に埋め込まれて、スピーカ配置部2aが下向きの面部とされているので、スピーカ配置部2aに取り付けられたスピーカグリル20の自重は、当該スピーカグリル20をスピーカ配置部2aから取り外す方向(鉛直下向き)に加わることになる。そして、嵌め込み状態の上記スピーカグリル20の姿勢を上記取外用姿勢に変更して、スピーカグリル20を固定していた磁気吸引力が極めて小さく又は解消されると、
図3(b)に示すように、スピーカグリル20を支持していた手指を下げるという非常に簡単且つ省力な操作により、スピーカグリル20の自重を利用して、一層容易且つ省力でスピーカ配置部2aから取り外すことができる。
【0044】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、本発明に係るカバー取付構造を、天井埋込型機器として構成されたスピーカユニット1のスピーカ配置部2a(カバー取付面部A)へのスピーカグリル20(カバーB)の取り付けに適用した例を説明したが、天井埋込型機器やスピーカユニットに限ることなく、天井以外の壁に埋め込まれる又は独立して設置される機器や家具などにおけるカバー取付構造として適用することもできる。
例えば、本発明に係るカバー取り付け構造を、レンジフードなどの換気扇装置におけるカバー取付面部としての換気用ダクト口に対するフィルタパネル、ダクト口用グリル、整流板などのカバーの取り付けや、空調装置におけるカバー取付面部としての給気又は排気ダクト口に対するダクト用グリルなどのカバーの取り付けや、照明装置におけるカバー取付面部としての照明配置部に対する透光カバーなどのカバーの取り付け等に適用することができる。また、これら機器以外にも、電気機器における放熱カバーの取付構造などのように、各種機器のカバー取付構造としても採用することができる。
【0045】
(2)上記実施形態では、カバー取付面部A(スピーカ配置部2a)側に磁石部Xを設け、カバーB(スピーカグリル20)側に磁性体部Y1及び非磁性体部Y2を設けたが、逆に、カバー取付面部A側に磁性体部Y1及び非磁性体部Y2を設け、カバーB側に磁石部Xを設けても構わない。
【0046】
(3)上記実施形態では、カバー取付面部A(スピーカ配置部2a)及びカバーB(スピーカグリル20)における磁石部X、磁性体部Y1及び非磁性体部Y2の具体的な配置により、カバー取付面部Aに対するカバーBの上記取付用姿勢と上記取外用姿勢との姿勢変更に伴う磁気吸引力の変化を実現したが、カバー取付面部A及びカバーBにおける磁石部X、磁性体部Y1及び非磁性体部Y2の配置については同磁気吸引力の変化を実現可能な範囲内で改変可能であり、また、別の方法でカバーBの姿勢変更に伴う磁気吸引力の変化を実現するように構成しても構わない。
【0047】
(4)上記実施形態では、カバー取付面部A(スピーカ配置部2a)に対するカバーB(スピーカグリル20)の姿勢を取外用姿勢とした際に、カバーBを固定していた磁気吸引力が極めて小さく又は解消されるように構成したが、別に、取外用姿勢の際の磁気吸引力は、取付用姿勢の際の磁気吸引力よりも小さいものであればよく、このことで、カバーBをカバー取付面部Aから省力且つ容易に取り外すことができる。
【0048】
(5)上記実施形態では、カバーBを取付用姿勢と取外用姿勢との間で姿勢変更するために、カバーBのカバー取付面部Aの面内方向に沿って移動させるにあたり、円盤状のカバーB(スピーカグリル20)をカバー取付面部A(スピーカ配置部2a)に形成された円筒状の被内嵌部2bに内嵌させた状態で回転させるように構成したが、カバーBをカバー取付面部Aの面内方向に沿って側方にスライドさせるように構成しても構わない。
【符号の説明】
【0049】
1 スピーカユニット(天井埋込型機器)
2 機器本体
2a スピーカ配置部(カバー取付面部)
2b 被内嵌部
10 永久磁石(磁石部)
20 スピーカグリル(カバー)
21a リング部(非磁性体部)
23 皿ネジ(磁性体部)
50 天井面
A カバー取付面部
B カバー
X 磁石部
Y1 磁性体部
Y2 非磁性体部
【要約】
【課題】カバー取付面部に対してカバーが磁気吸引力により取り付けられるカバー取付構造において、カバーをカバー取付面部から省力且つ容易に取り外すことができる技術を提供する。
【解決手段】カバーBを、カバー取付面部Aの面内方向に沿って移動させることで、磁気吸引力でカバー取付面部に取り付けられる取付用姿勢と、当該取付用姿勢よりも磁気吸引力が小さくなる取外用姿勢との間で、姿勢変更可能に構成されている。
【選択図】
図6