(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5956029
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】調理用鍋
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
A47J27/00 101A
A47J27/00 101B
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-138348(P2015-138348)
(22)【出願日】2015年7月10日
【審査請求日】2016年1月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514222662
【氏名又は名称】馬場 直弘
(74)【代理人】
【識別番号】100130476
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 昭穂
(72)【発明者】
【氏名】馬場 直弘
【審査官】
長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3131714(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0217497(US,A1)
【文献】
実公平05−003163(JP,Y2)
【文献】
実公昭56−054212(JP,Y2)
【文献】
実公昭54−024878(JP,Y2)
【文献】
特開2016−013407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と壁面からなる鍋本体と、
前記壁面に設けられ、横置きされた棒状の麺素材が収容可能な麺収容部と、から成り、
前記麺素材は、前記鍋本体及び前記麺収容部に連通して張られた調理用水に全体が浸されて茹で上げられ、前記鍋本体又は前記麺収容部の内面側には、横置きされた前記麺素材の分量を示す印が付され、前記鍋本体の内面側には、前記麺素材の茹で加減を判断する印が付されることを特徴とする調理用鍋。
【請求項2】
請求項1に記載の調理用鍋であって、前記麺収容部は、前記鍋本体の前記壁面のうち相対する両側の壁面にそれぞれ設けられ、前記鍋本体と前記双方の麺収容部とに亘る直線的な長さは、横置きされた前記棒状の麺素材が収容可能な長さであることを特徴とする調理用鍋。
【請求項3】
請求項1に記載の調理用鍋であって、前記麺収容部は、前記鍋本体の前記壁面及び取手部の上部にそれぞれ設けられ、前記鍋本体と前記麺収容部とに亘る直線的な長さは、横置きされた前記棒状の麺素材が収容可能な長さであることを特徴とする調理用鍋。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の調理用鍋であって、前記麺収容部は、前記鍋本体から突出するU字状の断面を有することを特徴とする調理用鍋。
【請求項5】
請求項1に記載の調理用鍋であって、前記麺収容部は、前記鍋本体の前記壁面に設けられる取手の一部であり、前記鍋本体と前記麺収容部とに亘る直線的な長さは、横置きされた前記棒状の麺素材が収容可能な長さであることを特徴とする調理用鍋。
【請求項6】
請求項5に記載の調理用鍋であって、前記麺収容部は、前記麺素材が収容可能なU字状の空洞部と、前記空洞部を開閉する蓋部とから成ることを特徴とする調理用鍋。
【請求項7】
請求項1に記載の調理用鍋であって、前記麺収容部は、前記鍋本体に差し込まれる円環を構成する帯状の中央麺収納部と、U字状の底面を有して横置きされた棒状の麺素材が収容可能な左麺収容部及び右麺収容部と、から成り、前記麺素材は、前記鍋本体、前記中央麺収納部、前記左麺収容部、及び前記右麺収容部に連通して張られた調理用水に全体が浸されて茹で上げられることを特徴とする調理用鍋。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の調理用鍋であって、鍋本体及び麺収容部は、アルミニウム、ステンレス、又は紙のいずれかからなることを特徴とする調理用鍋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理用鍋に係り、特に、麺素材を茹で上げる調理用鍋に関する。本明細書では「麺素材」には、例えば、スパゲッティに代表されるイタリア料理のロングパスタ、日本料理のそば、うどんなどが含まれるが、これらの麺素材に限らず、細長い棒状の素材を茹でて食する食物は全て含まれる。また、「麺素材」とは、茹でる前であって素材の状態での麺をいう。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばパスタを家庭で茹でるには、細長い棒状の乾燥パスタ素材が束になって包装された商品を購入し、大きな鍋に調理用水を張り、包装から取り出したパスタ素材の束を鍋に立てかけていた。そして、鍋に張った調理用水が沸騰して熱湯になるとパスタ素材の束は次第に熱湯に浸された部分から軟化し、パスタ素材は次第に崩れて全てが鍋の中に浸される。そして、このパスタを茹で上げるには、全てのパスタ素材が軟化して熱湯の中に浸された後、茹で上がるまで箸などで裁いて全てのパスタ素材が均一に茹で上がるようにするのが一般的である。
【0003】
このパスタ、そば、うどんなどの麺素材を茹で上げる調理用鍋については、下記に示すように数々の調理用鍋が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、一般家庭で、パスタなどの長い棒状の折り曲げられない調理素材を茹でる際、従来の鍋よりも少ない液体の量で調理できる鍋が開示されている。ここでは、折り曲げられない棒状の調理素材を円筒形の鍋に入れると、自重により鍋の側面部に斜めに倒れ、側面から見ればX状の形をとるが、このとき、鍋の側面部を従来の鍋にないほど細くして、調理素材に近づけて、調理用水の量を大幅に減らす。そして、鍋の側面部を細くした部分に取手を付けることによって、手にかかる負荷であるトルクを小さくすることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、細長い棒状のパスタなどをそのまま入れて茹であげ、さらに茹でたパスタ等を簡単に湯切りすることのできる調理用鍋が開示されている。ここでは、平面視略四角形の開口部を有する所定幅の鍋本体と、この鍋本体の開口を閉じる蓋体とから成り、上記鍋本体の開口部の一辺に注ぎ口部を形成すると共に、これと対応する蓋体の一辺部付近に孔を穿設して成る湯切り孔を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−212227号公報
【特許文献2】特開2007−135975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、パスタ、そば、うどんなどの麺素材を茹で上げるには家庭内で使用される通常の調理用鍋を用いるのが一般的である。この場合、調理用鍋は、パスタ素材などの麺素材の束を鍋に立て掛けるため内径が大きいか又は深さの深い調理用鍋が好ましい。しかし、こういった内径が大きいか又は深さの深い調理用鍋を使用すると、調理用鍋に大量の調理用水を張る必要が生じる。これにより、調理用水、及びガス、電気などの燃料を無駄に使用してしまうという問題があった。
【0008】
また、麺素材の束は調理用鍋に立て掛けて茹で上げるため、調理用鍋に張った調理用水が沸騰して熱湯になると次第に熱湯に浸された部分から軟化していく。つまり、麺素材は、その部位により熱湯に浸かる時間に差が生じ、均一な茹で上がりとはならないという問題があった。
【0009】
さらに、調理用鍋に大量の調理用水を張るため、調理用水が沸騰するまで時間がかかる。加えて、従来は調理用鍋に立て掛けた麺素材が次第に崩れていき、全ての麺素材が熱湯に浸るまで暫く待つ必要があった。このように、迅速に麺素材を茹で上げることができないという問題があった。
【0010】
本願の目的は、かかる課題を解決し、使用する調理用水及びガスなどの燃料を節約でき、麺素材を均一に茹で上げられ、かつ迅速に茹で麺を調理できる調理用鍋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る調理用鍋は、底面と壁面からなる鍋本体と、
前記壁面に設けられ、横置きされた棒状の麺素材が収容可能な麺収容部と、から成り、前記麺素材は、前記鍋本体及び前記麺収容部に連通して張られた調理用水に全体が浸されて茹で上げられ
、前記鍋本体又は前記麺収容部の内面側には、横置きされた前記麺素材の分量を示す印が付され、前記鍋本体の内面側には、前記麺素材の茹で加減を判断する印が付されることを特徴とする。
【0012】
上記構成により、麺素材は鍋本体及び麺収容部に横置きの状態で浸されて茹で上げられる。従来は、麺素材を立て掛けて収容するために大きな調理用鍋に浸されて茹で上げられていた。しかし、本発明では、無駄なスペースがなくよりコンパクトな鍋本体と、棒状の麺素材に適応した麺収容部とにより茹でられるため、調理用鍋の容量が減少し、調理用水の使用量が激減する。また、より少ない調理用水で麺素材を茹で上げられるため、ガス、電気などの燃料の使用量が節約できる。さらに、より短時間で麺素材を茹で上げることができる。
【0013】
さらに、連通する鍋本体及び麺収容部に張られた熱湯により麺素材全体が茹でられるため、全ての麺素材の束について熱湯に浸かる時間に差が生じない。従って、麺素材全体が均一な茹で上がりとなる。また、麺素材全体を一斉に茹で上げることができるため、麺を茹で上げる時間を節約できる。
また、鍋に投入する麺素材の分量を麺素材の種類ごとにそれぞれ印字された麺素材の分量を示す印により目視で確認できる。さらに、茹でられた麺素材は、中央の鍋本体の部分が垂れ込むため、この垂れ込み具合を示す印から麺の茹で加減を目視で確認することもできる。
【0014】
また、調理用鍋は、麺収容部が鍋本体の壁面のうち相対する両側の壁面にそれぞれ設けられ、鍋本体と双方の麺収容部とに亘る直線的な長さは、横置きされた棒状の麺素材が収容可能な長さであることが好ましい。これにより、鍋本体の両側に麺収容部を設け、調理用鍋を無駄のないコンパクトな形状とし、調理用水の容量をより削減することができる。また、麺素材全体を均一に茹で上げることができる。さらに、茹でられた麺素材は、中央の鍋本体の部分が垂れ込むため、この垂れ込み具合により麺の茹で加減が判断できる。
【0015】
また、調理用鍋は、麺収容部が鍋本体の壁面及び取手部の上部にそれぞれ設けられ、鍋本体と麺収容部とに亘る直線的な長さは、横置きされた棒状の麺素材が収容可能な長さであることが好ましい。これにより、鍋の取手部と一方の麺収容部とを上下に重ねて配置でき、麺収容部が嵩張らない調理用鍋にすることができる。
【0016】
また、調理用鍋は、麺収容部が鍋本体から突出するU字状の断面を有することが好ましい。これにより、使用する調理用水は、麺素材の両端部においてU字状の断面を浸す分量で足りることになり、使用する調理用水の容量を節約することができる。
【0017】
また、調理用鍋は、麺収容部が鍋本体の壁面に設けられる取手の一部であり、鍋本体と麺収容部とに亘る直線的な長さは、横置きされた棒状の麺素材が収容可能な長さであることが好ましい。これにより、調理用鍋を特殊な形状にすることなく一般的な調理用鍋の直径よりも長い形状の麺素材を収納して茹でることができる。
【0018】
また、調理用鍋は、麺収容部が麺素材が収容可能なU字状の空洞部と、空洞部を開閉する蓋部とから成ることが好ましい。これにより、麺素材が茹で上がった後、取手を掴んで調理用鍋を持ち上げたり、麺の水切りや茹で上がった麺を取り出したりする等の作業が容易になる。
【0019】
また、
麺収容部は、鍋本体に差し込まれる円環を構成する帯状の中央麺収納部と、U字状の底面を有して横置きされた棒状の麺素材が収容可能な左麺収容部及び右麺収容部とから成り、麺素材は、鍋本体、中央麺収納部、左麺収容部、及び右麺収容部に連通して張られた調理用水に全体が浸されて茹で上げられることが好ましい。これにより、
中央麺収納部を外した麺収容部を鍋本体に外側又は内側から差し込むことで調理用鍋とすることができ、中央麺収容部を外した鍋本体は一般的な鍋として使用できる。
【0020】
さらに、調理用鍋は、鍋本体及び麺収容部が、アルミニウム、ステンレス、又は紙のいずれかからなることが好ましい。これにより、調理用器具としての耐久性や耐熱性などの性能を保証するための素材を選択することができる。また、調理用鍋を紙により製作し、麺素材を茹で上げた後に捨てる使い捨ての調理用器具とすることができる。さらに、紙製で折り畳み式の調理用鍋とすることで、麺素材と調理用鍋とを一緒に包装して販売することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明に係る調理用鍋によれば、使用する調理用水及び電気、ガスなどの燃料を節約でき、麺素材を均一に茹で上げられ、かつ迅速に茹で麺を調理できる調理用鍋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る調理用鍋の第1の実施形態の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1の調理用鍋を示す立面図及び側面図である。
【
図4】本発明に係る調理用鍋の第2の実施形態の概略構成を示す平面図である。
【
図5】
図4の調理用鍋を示す立面図及び側面図である。
【
図6】本発明に係る調理用鍋の第3の実施形態の概略構成を示す平面図及び断面図である。
【
図7】本発明に係る調理用鍋の第4の実施形態の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(調理用鍋の第1実施形態)
以下に、図面を用いて本発明に係る調理用鍋1aの第1実施形態につき、詳細に説明する。
図1に調理用鍋1aの第1実施形態の概略構成を斜視図で示す。また、
図2に、
図1の調理用鍋1aの平面図を示す。さらに、
図3(a)に
図1の調理用鍋1aの立面図を示し、
図3(b)に
図1の調理用鍋1aの側面図を示す。
【0024】
図1に示すように、調理用鍋1aは、鍋本体2と麺収容部3a,3bとから構成される。鍋本体2は、底面4と壁面5とから構成され、一般的な調理用鍋に見られる形状の容器である。麺収容部3a,3bは、それぞれ鍋本体2の壁面5に設けられる突出部であり、横置きされた棒状の麺素材7が収容可能な形状を有している。すなわち、
図2に示すように、麺収容部3a,3bは、鍋本体2の壁面5のうち相対する両側の壁面5にそれぞれ設けられる。そして、鍋本体2と麺収容部3a,3bとに亘る直線的な長さが、横置きされた棒状の麺素材7が収容可能な長さになっている。例えば、パスタの場合には、麺素材7の全体の長さは一定値に定められており、その長さに適応するように麺収容部3a,3bの長さが決定されても良い。さらに、調理用鍋1aには一般的な調理用鍋用の取手6が設けられる。
【0025】
図3(b)に示すように、麺収容部3a,3bは、鍋本体2からU字状の断面を有して突出している。従って、このU字状の断面内に麺素材7が収容される。また、
図3(a)に示すように、麺収容部3a,3bは、それぞれ底面4a,4bを有している。従って、横置きされた棒状の麺素材7は、麺収容部3aの底面4a及び麺収容部3bの底面4bに設置される。このように、麺素材7は鍋本体2及び麺収容部3a,3bに連通して張られた調理用水に浸されて茹で上げられる。
【0026】
麺素材7を茹でるために必要な調理用水8の容量は、鍋本体2を満たす調理用水8の容量と、U字状の麺収容部3a,3bを満たす調理用水8の容量との総和となる。これは、麺素材7を立て掛けて茹でる従来のやり方の場合に用いる鍋の容量と比較して大幅に減少する。その結果、麺素材7を茹でるために必要な調理用水8の使用量が激減する。また、より少ない調理用水8で麺素材7を茹で上げることができるため、ガス、電気などの燃料の使用量も節約できる。さらに、少量の調理用水8により、より短時間で麺素材7を茹で上げることができる。
【0027】
また、
図1、
図2に示すように、麺素材7は、連通する鍋本体2及び麺収容部3a,3bに張られた熱湯により麺素材7全体が一斉に茹でられる。その結果、全ての麺素材7の束について熱湯に浸かる時間に差が生じず、麺素材7全体が均一な茹で上がりとなる。また、麺素材7全体を一斉に茹で上げることができるため、麺を茹で上げる時間を節約できる。
【0028】
なお、調理用鍋1aの第1実施形態は、
図1に全体の斜視図が示され、
図2に平面図が示され、
図3に、立面図及び側面図が示される。この側面図は左右対称であり、底面図は平面図に対して鍋本体2と麺収容部3a,3bを底面で表した形状である。また、背面図は立面図から取手6を除いた形状である。従って、本発明に係る調理用鍋1aは、その全体形状が図面により示されている。
【0029】
(調理用鍋の第2実施形態)
以下に、図面を用いて本発明に係る調理用鍋1bの第2実施形態につき、詳細に説明する。
図4に調理用鍋1bの第2実施形態の概略構成を平面図で示し、
図5(a)に、
図4の調理用鍋1bの立面図を示し、
図5(b)に、
図4の調理用鍋1bの側面図を示す。
【0030】
図4に示す第2実施形態の調理用鍋1bが、第1実施形態の調理用鍋1aと異なる点は、麺収容部3a,3bの位置が回転し、取手6と反対側の位置になる鍋側麺収容部3cと、取手6と重なる位置になる取手側麺収容部3dとなる点である。すなわち、第2実施形態の調理用鍋1bは、取手側麺収容部3dと取手6が重なった位置に配置される。この調理用鍋1bは、鍋本体2と麺収容部3c,3dとから構成される。鍋本体2は、底面4と壁面5とから構成され、一般的な調理用鍋に見られる形状の容器である。麺収容部3c,3dは、それぞれ鍋本体2の壁面5に設けられる突出部であり、横置きされた棒状の麺素材7が収容可能な形状を有する。すなわち、麺収容部3c,3dは、鍋本体2の壁面5のうち相対する両側の壁面5にそれぞれ設けられ、鍋本体2と麺収容部3c,3dとに亘る直線的な長さが、横置きされた棒状の麺素材7が収容可能な長さとなっている。
【0031】
図5(b)に示すように、麺収容部3c,3dは、鍋本体2からU字状の断面を有して突出している。従って、このU字状の断面内に麺素材7が収容される。また、
図5(a)に示すように、麺収容部3c,3dは、それぞれ底面4c,4dを有している。従って、横置きされた棒状の麺素材7は、麺収容部3cの底面4c及び麺収容部3dの底面4dに係止される。
【0032】
麺素材7を茹でるために必要な調理用水8の容量は、鍋本体2を満たす調理用水8の容量と、U字状の麺収容部3c,3dを満たす調理用水8の容量との総和となる。これは、麺素材7を立て掛けて茹でる場合に用いる鍋の容量と比較して大幅に減少する。
【0033】
(調理用鍋の第3実施形態)
図6に、本発明に係る調理用鍋1cの第3実施形態を示す。
図6(a)は調理用鍋1cの平面図であり、
図6(b)は調理用鍋1cの断面図である。本実施形態は、麺収容部3と取手6とを一体化し、麺素材7を収納する部分を取手6の内部に設けている。
【0034】
図6(a)に示すように、調理用鍋1cは、底面4と壁面5とからなる鍋本体2、及び取手6と一体化された麺収容部3から構成される。そして、麺収容部3は、鍋本体2の壁面5に設けられる取手6の一部であり、鍋本体2と麺収容部3とに亘る直線的な長さは、横置きされた棒状の麺素材7が収容可能な長さとなる。この鍋本体2及び麺収容部3に麺素材7が置かれ調理用水8が満たされる。鍋本体2と麺収容部3とは連通しているが、鍋本体2の一箇所にしか麺収容部3が設けられない。このため、
図6(b)に示すように、麺素材7は、麺収容部3と鍋本体2の底面4とに亘って置かれる。
【0035】
本実施形態の調理用鍋1cは、麺収容部3は、麺素材7が収容可能なU字状の空洞部12と、空洞部12を開閉する蓋11とから成る。すなわち、取手6に設けられた空洞部12に熱湯が張られるため、取手6の上部に開閉可能な蓋11が設けられる。この蓋11は、取手6に対して開閉するように蝶番により取り付けられるが、それ以外の連結方法であっても良い。この蓋11又は取手6は、防水処理を施した材料を使用しても良く、防温効果或いは耐熱効果のある素材を使用しても良い。また、この蓋11又は取手6は、温度を遮る緩衝機能を有する材料を素材の表面にコーティングしても良い。
【0036】
この蓋11及び取手6を設けるという構成により、調理用鍋1を特殊な形状にすることなく一般的な調理用鍋1の直径よりも長い形状の麺素材7を収納して茹でることができる。また、麺素材7が茹で上がった後、取手6を掴んで調理用鍋1cを持ち上げたり、水切りや茹で上がった麺を取り出したりする等の作業を容易にすることができる。
【0037】
(調理用鍋の第4実施形態)
図7に、調理用鍋1dの第4実施形態を示す。本実施形態では、調理用鍋1dは、鍋本体20及び麺収容部30から構成され、鍋本体20に麺収容部30を差し込むことで調理用鍋1dとなり、麺素材7の茹で上げに使用される。
【0038】
鍋本体20は、一般的に用いられる取手6付きの鍋であり、底面4と壁面5とから構成される。一方、麺収容部30は、中央麺収容部30c,左側麺収容部30a,及び右側麺収容部30bから構成される。
【0039】
中央麺収容部30cは円環を形成する帯状の部材である。そして、中央麺収容部30cの内径が鍋本体20の外径よりも大きくなるように設定し、麺収容部30を鍋本体20に外側から差し込むか、又は中央麺収容部30cの外径が鍋本体20の内径よりも大きくなるように設定し、麺収容部30を鍋本体20に外側から差し込むようにする。また、鍋本体20の内周面又は外周面の何れかには、中央麺収容部30cを係止するための係止部10が設けられる。この係止部10は、鍋本体20の側面に設けられた段差であるか、又は突起部であり、中央麺収容部30cの帯状の板に対してストッパーの役割を果たす機構であれば良い。また、左側麺収容部30a及び右側麺収容部30bは、共に底面4a及び4bを有するU字状の部材である。
【0040】
以上の構成により、麺収容部30を鍋本体20に外側又は内側から差し込むことで調理用鍋1dとなり、麺素材7の茹で上げに使用される。すなわち、中央麺収容部30c,左側麺収容部30a,及び右側麺収容部30bに亘る直線的な長さは、横置きされた棒状の麺素材7が収容可能な長さとなっている。そして、麺素材7は、連通する鍋本体20及び麺収容部30a,30b,30cに張られた熱湯により麺素材7全体が一斉に茹でられる。
【0041】
茹で上げられた麺素材7は、軟化して中央麺収容部30cの下方にある鍋本体20に貯まる。そして、この調理用鍋1dから中央麺収容部30cを外して鍋本体20に麺素材7を集めた状態で湯切りを行い調理しても良い。すなわち、中央麺収容部30cを外した鍋本体20は、一般的な鍋として使用できる。
【0042】
ここで、麺収容部30が鍋本体20に差し込まれた状態で調理用水8が満たされるため、麺収容部30と鍋本体20との間の漏水を防止するために、中央麺収容部30cの内壁又は外壁に止水用のパッキンを設けても良い。
【0043】
調理用鍋1dの中央麺収容部30cは、円環を形成する帯状の部材としたが、底面を有する部材であっても良い。その場合には、調理用水8の容量は、連通する麺収容部30a,30b,30cの容量の総和となり、調理用水、ガス、電気などの燃料はより節約できる。
【0044】
(目盛)
図1(a),
図3(b),
図5(b)に示すように、鍋本体2又は麺収容部3の内面側には、横置きされた麺素材7の分量を示す印である麺分量目盛9aが付される。この麺分量目盛9aには、例えば、
図1(b)に示す麺分量目盛9aのように、茹で上げられた麺の分量の目安となる「1人前、2人前・・・」を示す数字と「パスタ」、「うどん」という麺の種類を示す文字が印字されていても良い。また、この麺分量目盛9aは、
図1(a)に示す麺分量目盛9aのように、少なくとも4箇所に表示できる。従って、スパゲッティ、そば、うどん、そうめんなどの麺素材の種類ごとに壁面5の異なる位置に印字されても良い。更には、スパゲッティ、そば、うどんなどの麺の種類ごとに異なる色彩で表示されても良い。
【0045】
図3(b),
図5(b)に示すように、鍋本体2又は麺収容部3の内面側には、麺素材7の茹で具合を示す印である麺茹で具合目盛9bが付される。これは、第1〜第3実施形態の全てにおいて、横置きされた麺素材7の両端は、麺収容部3a,30a、鍋側麺収容部3cと、麺収容部3b,30b,取手側麺収容部3dとに跨って配置され、茹で始めると中央部で垂れてくる。そこで、鍋本体2又は鍋本体20において麺素材7の中央での垂れ具合から茹で上がりの程度を計るために麺茹で具合目盛9bを付しても良い。
【0046】
(鍋本体及び麺収容部の素材)
鍋本体2及び麺収容部3a,3b,3c,3dは、一般的な鍋に用いられる素材である、例えばアルミニウム、ステンレスなどにより製作されるが、これに限らず、例えば紙により製作されても良い。
【0047】
特に、第3実施形態において麺収容部30は、防水処理された紙素材により製作しても良い。そして、麺収容部30を使い捨てとし、一般的な鍋本体20の形状に合わせて製作することができる。使い捨てとすることで使用後に洗う必要がなくなる。また、屋外でのピクニックやハイキングに持参して使用し、食事が終了した後にはそのまま捨てても良い。
【0048】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ、及び配置関係については、本発明が理解、実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 調理用鍋,1a 調理用鍋(第1実施形態),1b 調理用鍋(第2実施形態),1c 調理用鍋(第3実施形態),1d 調理用鍋(第4実施形態)、2,20 鍋本体、3,3a,3b,30 麺収容部,30a 左側麺収容部,30b 右側麺収容部、30c (鍋側)麺収容部,3d (取手側)麺収容部、30c 中央麺収容部、4,4a,4b,4c,4d 底面、5 壁面、6 取手、7 麺素材、8 調理用水、9a 麺分量目盛,9b 麺茹で具合目盛、10 係止部、11 蓋、12 空洞部。
【要約】
【課題】使用する調理用水及びガスなどの燃料を節約でき、麺素材を均一に茹で上げられ、かつ迅速に茹で麺を調理できる調理用鍋を提供する。
【解決手段】調理用鍋1aは、底面4と壁面5からなる鍋本体2と、鍋本体2の壁面5に設けられ、横置きされた棒状の麺素材が収容可能な麺収容部3a,3bとからなり、麺素材は、連通する鍋本体2及び麺収容部3a,3bに張られて沸騰した調理用水により麺素材全体が茹でられる。
【選択図】
図1