(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る情報提供システムは、ユーザーのコンテンツに対する集中度を測定し、これを利用する。
情報提供システムを説明する前に、集中度、コンテンツそしてユーザーについて説明する。
【0011】
テレビジョン放送(以下「TV放送」)において放送される映像コンテンツが、どれだけ視聴者に視聴されているのかを示す指標として、従来から「世帯視聴率」が用いられている。TV放送における世帯視聴率の計測は、サンプルとなる家庭に視聴率を測定するための機器を設置し、その機器が、テレビジョン受像機(以下「TV」)がオン状態で表示しているチャンネルに関する情報をほぼリアルタイムで集計拠点へ送信する。すなわち世帯視聴率とは、視聴時間と視聴チャンネルに関する情報を集計した結果であり、世帯視聴率という情報から視聴者がどのような状態で番組(映像コンテンツ)を視聴したのかはわからない。
例えば、視聴者がTV番組に対し、画面を注視せずラジオのように聞き流すような視聴形態である場合には、当該番組は視聴者にとって集中した状態で視聴されていないこととなる。このような視聴形態では、TV番組に挟まれるコマーシャル(以下「CM」)の宣伝効果はあまり期待できない。
【0012】
視聴者がTV番組をどの程度集中して視聴しているのかを知るための技術が、幾つか検討されている。先に示した特許文献1には、TV番組に対し、視聴者がどの程度集中しているのかを「集中度」と定義し、その集中度を習得し、利用する技術内容が開示されている。
【0013】
視聴者の集中度について、対象となるコンテンツは必ずしもTV番組に限らない。あらゆるコンテンツが対象となる。ここで、オンライン若しくはオフラインにて、コンピューターや電子機器を介して提供される文字列、音声、静止画像、映像(動画)、またこれらが組み合わされたプレゼンテーションやゲーム等の、対象者が理解可能な内容にて享受する情報を、コンテンツ(contents)と総称する。またこれ以降、本明細書では、コンテンツを享受及び/または利用する者を、視聴者ではなくユーザーと総称する。
【0014】
情報提供システムは、ユーザーの顔をカメラで撮影し、ユーザーの顔と視線の向きを検出し、それらの向きがコンテンツを表示するディスプレイにどの程度向いているかを測定することで、ユーザーのコンテンツに対する集中度を算出する。
【0015】
[全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係る情報提供システム101の全体像を示す概略図である。
ユーザー102は書籍103を読んでいる。この書籍103は、見開きの状態を容易に維持可能な、リングバインダー104で綴じられた書籍103である。そして、書籍103のページには肉眼では視認が不可能な2次元コード(
図8にて後述)が赤外線反射インクにて印刷されている。なお、書籍103について、見開きの状態を容易に維持可能な綴じ方であれば、綴じる手段は必ずしもリングバインダー104に限らない。
書籍103の傍にはタブレット型のパソコン(以下「タブレット105」と略す。)が立てかけられている。タブレット105にはインカメラ106が内蔵されており、インカメラ106はユーザー102の顔と書籍103のページを撮影することが可能である。
タブレット105は図示しない無線LANや無線公衆回線等を通じてインターネット107に接続されている。
【0016】
タブレット105は、インカメラ106を通じて書籍103の見開きページに印刷されている2次元コードの存在を認識すると、これをデコードする。デコードされた2次元コードには、webサイトのURLが記述されているので、タブレット105はこのURLにアクセスする。すると、タブレット105はURLに記されたwebサーバー108に接続し、コンテンツをダウンロードして、表示部109に表示する。コンテンツは例えば動画データであり、書籍103の見開きページに書かれている内容に対応した情報で構成されている。
タブレット105はコンテンツを再生すると共に、インカメラ106を通じてユーザー102の、表示部109に表示されているコンテンツに対する集中度を算出し、集中度が所定の第一の閾値を超えているか否かを検証する。もし、集中度が所定の第一の閾値を超えていれば、タブレット105はコンテンツの再生を継続する。もし、集中度が所定の第一の閾値を超えていなければ、タブレット105はコンテンツの再生を一時停止する。
すなわち、ユーザー102が書籍103を読んでいる間は、タブレット105はコンテンツの再生を一時停止し、ユーザー102がタブレット105の表示部109を注目した瞬間、タブレット105はコンテンツの再生を再開する。
【0017】
[集中度について]
図2A及び
図2Bは、本発明の実施形態に係る情報提供システム101における、ユーザー102の集中度の仕組みを説明する概略図である。
図2Aにおいて、ユーザー102はコンテンツ201を表示しているディスプレイ202を注視している。ディスプレイ202のすぐ上にはカメラ203が装着されている。カメラ203はディスプレイ202の前に存在するユーザー102の顔を撮影可能な方向に向けられている。カメラ203には、図示しないタブレット105等の情報処理装置が接続されている。情報処理装置は、カメラ203から得られる画像データから、ユーザー102の顔の向き及び/又は視線がディスプレイ202の方向に向いているか否かを検出し、ユーザー102がコンテンツ201に注視しているか否かを、0から1まで、あるいは0から255まで、または0から1023まで等、所定の範囲を有する値のデータで出力する。この値が集中度である。
【0018】
図2Bにおいて、ユーザー102はコンテンツ201を表示しているディスプレイ202を注視していない。カメラ203に接続されている情報処理装置は、カメラ203から得られる画像データから、
図2Aにおける集中度よりも低い値の集中度を出力する。
このように、本実施形態に係る情報提供システム101は、ユーザー102の顔の向き及び/又は視線がコンテンツ201を表示しているディスプレイ202に向かっているか否かを、カメラ203から得られる画像データから算出する。
【0019】
図3A、
図3B及び
図3Cは、ディスプレイ202の種類とカメラ203のバリエーションを示す図である。
図3Aは、据え置き型のLCDディスプレイ301に、外付けのUSBタイプwebカメラ302が装着されている例である。
図3Bは、ノートパソコン303のLCDディスプレイ304の枠に、webカメラ305が埋設されている例である。
図3Cは、スマートフォン等の携帯型無線端末306のLCDディスプレイ307の枠に、自分撮り用インカメラ308が埋設されている例である。タブレット105もこの例に含まれる。
これら
図3A、
図3B及び
図3Cの何れの場合でも、カメラ203はディスプレイ202の枠近傍に設けられている。但し、カメラ203がユーザー102と書籍103を同時に撮影することが可能な位置であれば、カメラ203の位置は特に問わない。ユーザー102の顔と視線がディスプレイ202に正しく向かっているか否かをカメラ203が検出できるようにするために、予めユーザー102の顔と視線がディスプレイ202に正しく向かっている時の、カメラ203から見たユーザー102の顔と視線の向きの情報を検出して、不揮発性ストレージ406(
図4参照)等に記憶しておくとよい。
【0020】
[情報提供システム101:ハードウェア構成]
図4は、本発明の実施形態に係る情報提供システム101のハードウェア構成を示すブロック図である。
クライアント402は一般的なコンピューターであり、CPU403、ROM404、RAM405、不揮発性ストレージ406、現在日時情報を出力するリアルタイムクロック(以下「RTC」)407、操作部408がバス409に接続されている。そして、情報提供システム101において重要な役割を持つ表示部109(ディスプレイ202)と撮像装置411(カメラ203)もバス409に接続されている。クライアント402は、
図1におけるタブレット105が該当する。勿論、タブレット105に限らず、ノートパソコンやデスクトップパソコン、あるいはスマートフォン等もクライアント402として適用可能である。
クライアント402はバス409に接続されたNIC(Network Interface Card)412を通じて、インターネット107を介してwebサーバー108と通信を行う。
webサーバー108もまた一般的なコンピューターであり、CPU415、ROM416、RAM417、不揮発性ストレージ418、NIC419がバス420に接続されている。
【0021】
なお、
図4のブロック図は、デスクトップパソコン、ノートパソコン、そしてスマートフォンやタブレット105を包含する上位概念で記載されている。例えばスマートフォンやタブレット105の場合、表示部109は液晶ディスプレイであり、操作部408は静電式位置検出装置である。そして、表示部109と操作部408はタッチパネルディスプレイを構成する。また、スマートフォンやタブレット105の場合、NIC412はLTE(Long Term Evolution)等の無線通信機能や無線LANインターフェースが該当する。更に、シリアルポートを用いたPPP(Point to Point Protocol)接続も、本明細書におけるNIC412が指し示す概念として含まれる。つまり、
図4におけるNIC412は、インターネット107に接続するための、広義の物理的及び/又は論理的なインターフェースを指す。
【0022】
[ソフトウェア機能の概要:集中度の低下を検出してコンテンツ201の一時停止]
図5は、本発明の実施形態に係る情報提供システム101のソフトウェア機能を示すブロック図である。
撮像装置411から出力される画像データは、エンジン部501に供給される。エンジン部501は、撮像装置411から出力される画像データから、ユーザー102の顔の向き、ユーザー102の視線の向き、そしてそれらの動きを算出する。先ず、エンジン部501は撮像装置411から出力される画像データを静止画として捉え、周知のポリゴン処理等の三次元的解析処理を経て、ユーザー102の顔の存在を認識し、顔の向き、視線の向きをベクトルデータとして算出する。次に、静止画が時間軸上で連続することで動画データとして捉え、顔の向き及び視線の向きのベクトルデータが時間軸上でどのように変動したかを算出する。このような演算処理を経て、最終的にエンジン部501は、直交座標系または3次元極座標系等の3次元空間における、ユーザー102の顔の向きを示すベクトル、ユーザー102の視線の向きを示すベクトル、そしてこれらベクトルの時間軸上の揺らぎ、すなわち変動量を出力する。
【0023】
エンジン部501の内部には、エンジンコア部507が備わっている。このエンジンコア部507は、エンジン部501が出力するベクトルデータ等の算出根拠として最低限必要な機能を担う。具体的には、例えば画像データ中にユーザー102の顔が存在するか否かを検出する機能と、ユーザー102の顔にポリゴン処理を施してそのベクトルデータを生成する機能である。
【0024】
エンジン部501から出力されるデータは、インターフェース部502に供給される。入出力制御部ともいえるインターフェース部502は、集中度算出部508とデータの入出力を行い、また集中度判定処理部503に対してもデータの入出力を行う。
集中度算出部508は、ユーザー102のコンテンツに対する集中度を算出する機能であり、ソフトウェアコンポーネントあるいはライブラリモジュールである。集中度算出部508は、予めROM404または不揮発性ストレージ406に保持されている、表示部109(ディスプレイ202)の大きさ、また撮像装置411(カメラ203)の設置位置等の情報を基に、エンジン部501から出力され、インターフェース部502を通じて得られるユーザー102の顔の向きを示すベクトルとユーザー102の視線の向きを示すベクトルが、ユーザー102と表示部109とを結ぶベクトルに対してどれだけ角度がずれているかを算出する。この角度が、集中度を算出する基礎となるデータになる。そして、ベクトルの変動量を所定の閾値と比較して、集中度の基礎データに対する加減算を施し、最終的に0から1まで等、所定の範囲を有する値の集中度を算出する。
【0025】
図5中、2次元コードデコード部504は、撮像装置411から出力される画像データに含まれる2次元コードをデコードする。デコードされた2次元コードにはwebサーバー108のコンテンツを指し示すURLが含まれている。このURLはコンテンツ再生処理部512に引き渡される。
コンテンツ再生処理部512は、2次元コードデコード部504から引き渡されたURLに基づき、webサーバー108からインターネット107を通じて動画等のコンテンツ201をダウンロードして再生し、表示部109に表示する。
インターフェース部502は、エンジン部501から出力された、ユーザー102の顔の向きを示すベクトルとユーザー102と表示部109とを結ぶベクトルとの角度のずれ、ユーザー102の視線の向きを示すベクトルとユーザー102と表示部109とを結ぶベクトルとの角度のずれ、そしてそれら角度のずれの変動量を集中度算出部508に引き渡すと共に、集中度算出部508から出力されるユーザー102の集中度を、集中度判定処理部503に出力する。
集中度判定処理部503は、所定の単位時間毎に集中度の変動量を検出し、集中度の変動量が所定の第一の閾値を下回ったか否かを検出する。そして、集中度の変動量が所定の閾値を下回った時点で、コンテンツ再生処理部512にコンテンツ再生の一時停止指示を出力する。
更に集中度判定処理部503は、コンテンツ再生処理部512にコンテンツ再生の一時停止指示を出力した後、集中度の変動量が所定の第二の閾値を上回ったか否かを検出する。そして、集中度の変動量が所定の第二の閾値を上回った時点で、コンテンツ再生処理部512にコンテンツ再生指示を出力する。
なお、集中度判定処理部503は、コンテンツ再生処理部512にコンテンツ再生の一時停止指示を出力した後、コンテンツ再生処理部512からユーザー102が操作部408を通じて再生指示が来たことを検出したら、コンテンツ再生処理部512にコンテンツ再生指示を出力してもよい。
【0026】
図6は、情報提供システム101にて動画コンテンツを再生するユーザー102の、時間経過に伴う集中度の変動を示すグラフと、情報提供システム101が動画コンテンツの再生を一時停止して再度再生を行う過程を示すタイムチャートである。
時点T601において、ユーザー102は再生中のコンテンツ201に対して高い集中度を示している。しかし、時点T602で書籍103を読み始めたことにより、ユーザー102の集中度は時点T603にて急激に低下する。集中度判定処理部503は、時点T603における集中度から時点T602における集中度を減算して、集中度変動量を得る。そして、集中度判定処理部503はこの集中度変動量が所定の第一の閾値を下回ったことを検出すると、コンテンツ再生処理部512に対し、コンテンツ201の再生を一時停止する命令を発する。
【0027】
時点T604においてユーザー102が書籍103の読書を終了し、再びコンテンツ201の再生に注目し始めると、時点T605においてユーザー102の集中度は急激に上昇する。集中度判定処理部503は、時点T605における集中度から時点T604における集中度を減算して、集中度変動量を得る。そして、集中度判定処理部503はこの集中度変動量が所定の第二の閾値を上回ったことを検出すると、コンテンツ再生処理部512に対し、一時停止されていたコンテンツ201の再生を再開する命令を発する。
【0028】
集中度判定処理部503がコンテンツ再生処理部512に対し、コンテンツ201の再生を一時停止している状態から再生を再開する際に、ユーザー102がコンテンツ201を理解し易くするために、コンテンツ201の再生位置を一時停止した位置から少し巻き戻して、再生してもよい。そのためには、一時停止を行った際のコンテンツ201の再生位置を集中度判定処理部503が保持しているとよい。
図6において、時点T602のコンテンツ再生時間は、10分23秒である。この時点において、集中度判定処理部503は時点T602のコンテンツ再生時間をRAM405に保持する。そして、時点T605では、コンテンツ再生時間が時点T602のコンテンツ再生時間であった10分23秒より少し前の位置である、10分20秒から再生を再開している。
【0029】
集中度判定処理部503が一時停止を行った際のコンテンツ201の再生位置を保持するためには、コンテンツ再生処理部512が出力するコンテンツ201の再生位置情報を取得する必要がある。この、コンテンツ201の再生位置情報を取得するルートは、二通りが考えられる。
一つは、コンテンツ再生処理部512が出力するコンテンツ201の再生位置情報を、コンテンツ情報処理部509を介し、インターフェース部502を通じて、集中度の情報と共に取得するルートである。コンテンツ情報処理部509は、コンテンツ再生処理部512からコンテンツ201の再生位置情報をインターフェース部502に引き渡すための処理を行う。この場合、集中度判定処理部503はインターフェース部502から集中度を取得すると同時にコンテンツ201の再生位置情報も取得できるので、集中度判定処理部503における集中度の比較判定処理にコンテンツ201の再生位置情報を容易に対応付けることができる。
もう一つは、コンテンツ再生処理部512が出力するコンテンツ201の再生位置情報を、インターフェース部502を介することなく集中度判定処理部503が直接取得するルートである。この場合、集中度判定処理部503はインターフェース部502から集中度を取得する作業とは別に、コンテンツ再生処理部512からコンテンツ201の再生位置情報を取得する必要が生じるので、集中度判定処理部503の処理内容は若干増える。
すなわち、コンテンツ情報処理部509の存在は必ずしも必須ではないため、
図5では破線で示している。
【0030】
図7は、情報提供システム101の、コンテンツ201をwebサーバー108からダウンロードして再生する処理の流れを示すフローチャートである。
処理を開始すると(S701)、2次元コードデコード部504は撮像装置411から取得した静止画像データに含まれている2次元コードのデコードを試みる(S702)。もし、静止画像データに2次元コードが含まれていない等で、デコードに失敗した場合は(S703のNO)、2次元コードデコード部504は再度ステップS702に戻り、撮像装置411から取得した新たな静止画像データにて、2次元コードのデコードを試みることを繰り返す。
ステップS703において、2次元コードデコード部504が2次元コードのデコードを成功したら(S703のYES)、2次元コードデコード部504は2次元コードからデコードしたURL文字列をコンテンツ再生処理部512に引き渡す。
【0031】
コンテンツ再生処理部512は、2次元コードデコード部504から引き渡されたURL文字列が、書籍103に関係するURL文字列であるか否かを検証する(S704)。例えば、予め不揮発性ストレージ406にwebサーバー108のURLの一部(FQDN:Full Qualified Domain Name)をリストとして保持しておき、2次元コードデコード部504から引き渡されたURL文字列にそれらリストに記されたURLを含んでいるか否かを検証する。もし、URL文字列が書籍103に関係ない文字列である場合(S704のNO)は、書籍103以外の物品に印刷されている2次元コードであるので、コンテンツ再生処理部512は2次元コードデコード部504にエラーメッセージ等でその旨を通知する。処理はステップS702に戻り、2次元コードデコード部504は撮像装置411から取得した新たな静止画像データにて、2次元コードのデコードを試みることを繰り返す。
【0032】
ステップS704において、2次元コードデコード部504から引き渡されたURL文字列が書籍103に関係する文字列である場合(S704のYES)、コンテンツ再生処理部512は次に、当該URL文字列が既にRAM405に記憶済みのURL文字列と一致しているか否かを確認する(S705)。もし、書籍103から初めてデコードしたURL文字列である場合は、記憶しているURL文字列が存在しないので、RAM405に記憶済みのURL文字列と一致しないことになる。また、ユーザー102が書籍103のページをめくって新たにデコードしたURL文字列である場合も、RAM405に記憶済みのURL文字列と一致しない。このような場合は(S705のNO)、コンテンツ再生処理部512は、2次元コードデコード部504から引き渡されたURL文字列に記されているwebサーバー108にアクセスして、コンテンツ201をダウンロードして、コンテンツ201の再生を行う(S706)。そして、ステップS704の時点で2次元コードデコード部504から引き渡されたURL文字列を、新たにRAM405に記憶して(S707)、一連の処理を終了する(S708)。
ステップS705において、2次元コードデコード部504から引き渡されたURL文字列が、既にRAM405に記憶済みのURL文字列と一致していれば(S705のYES)、コンテンツ再生処理部512はwebサーバー108に対するアクセスに関しては何もせず、一連の処理を終了する(S708)。
この処理はステップS708で終了すると、再度ステップS701から繰り返される。
【0033】
図8Aは、書籍103の見開き状態の一例を示す概略図である。リングバインダー104で綴じられた書籍103は、容易に見開き状態を維持できる。
図8Bは、書籍103の見開き状態を赤外線で撮影した状態を示す概略図である。見開き状態の左側のページには、透明な赤外線反射インクでQRコード(登録商標)等の2次元コード801が印刷されている。
図8Cは、2次元コード801の一部拡大図である。白く見える領域A802は透明な赤外線反射インクが塗布されている。通常、2次元コードを印刷する際は、黒等の濃い色のインクで暗く見える領域A803を塗り潰すが、
図8Bに示す2次元コード801は、逆に領域A802を赤外線反射インクで塗り潰す。
【0034】
周知のように、市場に流通するデジタルカメラを構成するCMOS撮像素子の殆どは、赤外線光を検出可能である。そこで、通常の文字や画像等を表示する可視光のためのインクで印刷された上に、透明な赤外線反射インクで2次元コード801を印刷する。そして、タブレット105に赤外線LED(以下「IRLED」)によるストロボを設けて、ストロボを発光させて撮影した画像データと、ストロボを発光させずに撮影した画像データとの差分を得ることで、透明な赤外線反射インクで印刷された2次元コード801のみを明瞭に画像データとして取り出すことができる(中里祐介、神原誠之、横矢直和「不可視マーカを用いたウェアラブルARシステムの現実環境における実証実験」画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2005)2005年7月http://yokoya.naist.jp/paper/datas/841/IS4-154.pdf)。
【0035】
クライアント402を構成する、既に市場に流通するタブレット105、スマートフォンあるいはノートパソコンやデスクトップパソコンには、IRLEDのストロボが装備されていないものが殆どである。そこで、USBやBlueTooth(登録商標)で接続されるIRLEDのストロボを外付けでそのようなクライアント402に設けることで、透明な2次元コードのデコードを実現することができる。
【0036】
上述の2次元コード801は、透明な赤外線反射インクを用いて、2次元コード801の白い部分を形成した。これに加え、透明な赤外線吸収インクを用いて、2次元コード801の黒い部分を形成させると、赤外光の撮影画像データと可視光の撮影画像データとの差分を得る必要がなくなり、IRLEDのストロボを不要にすることが期待できる。
【0037】
書籍103のページ毎に印刷される2次元コード801は、そのページに印刷されている内容に関連するコンテンツ201へのURLがエンコードされる。このコンテンツ201は、ページ毎に個別に作成してもよいし、単一又は複数の動画コンテンツの再生開始位置をページ毎に異ならせてもよい。
例えば、「https://utuoy.eb/vmUoC10X_A0」という動画コンテンツのURLがあるとする。書籍103の10ページには、「https://utuoy.eb/vmUoC10X_A0?t=3m」という、動画コンテンツの先頭から3分後を指し示すURLを示す2次元コード801を印刷する。書籍103の11ページには、「https://utuoy.eb/vmUoC10X_A0?t=4m30s」という、動画コンテンツの先頭から4分30秒後を指し示すURLを示す2次元コード801を印刷する。
【0038】
以上に説明した情報提供システム101を使用すると、先ず、ユーザー102が書籍103の所望のページを開くと、クライアント402はページに印刷されている2次元コード801を読み取り、webサーバー108からコンテンツ201を取得する。クライアント402の画面には直ちにページに関連するコンテンツ201が表示され、一時停止状態となる。
ユーザー102が書籍103に注目している間は、クライアント402に表示されているコンテンツ201は一時停止状態のままである。
ユーザー102がクライアント402に注目すると、クライアント402は直ちに表示されているコンテンツ201の再生を開始する。
すなわち、パソコンやスマートフォン等の操作に不慣れなユーザー102にとって、webブラウザ等の操作をすることなく、ユーザー102が見たいと思って、クライアント402の表示部109を注目した瞬間に、所望のコンテンツ201を再生することができる。また、ユーザー102がもう見たくないと思って、クライアント402の表示部109から視線を逸らした瞬間に、所望のコンテンツ201の再生を一時停止することができる。
【0039】
以上に説明した本発明の実施形態は、以下のような応用例が考えられる。
(1)
図3に例示したwebカメラ302及び305、インカメラ308等は、ユーザー102の顔を撮影することを目的として設置されている。これらのカメラから書籍103の見開きページを撮影すると、2次元コード801は斜めの状態で撮影することとなり、デコード処理に支障が生じることが考えられる。そこで、書籍103に透明な赤外線反射インクで印刷される2次元コードは、カメラから正しく視認できるように、元々の正方形形状から台形に伸長変形させて印刷してもよい。
(2)A4サイズ等の大型の書籍であれば、2次元コードの印刷を、透明な赤外線反射インクを使わず、ページの余白部分に通常のインクで印刷させてもよい。
【0040】
本実施形態においては、情報提供システム101を開示した。
情報提供システム101は、ユーザー102の顔を撮影可能なカメラ203を有する。クライアント402は、カメラ203を通じて書籍103の見開きページに印刷されている2次元コード801をデコードして、webサーバー108からコンテンツ201をダウンロードする。またクライアント402は、ユーザー102がクライアント402の表示部109を見ているか否かを検出し、集中度を算出する。情報提供システム101は、カメラ203を通じてユーザー102がコンテンツ201に対する集中度が急激に下降したこと、または急激に上昇したことを検出して、コンテンツ201の再生または一時停止を制御する。
ここで、コンテンツの再生と一時停止は、ユーザー102がクライアント402の表示部109を注目しているか否かを、クライアント402が集中度を算出することで実現する。
すなわち、ユーザー102は、クライアント402に対してキーボードやタッチパネルディスプレイに対する操作を行うことなく、ユーザー102が見たいと思って、クライアント402の表示部109を注目した瞬間に、所望のコンテンツ201を再生することができる。また、ユーザー102がもう見たくないと思って、クライアント402の表示部109から視線を逸らした瞬間に、所望のコンテンツ201の再生を一時停止することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
例えば、上記した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることは可能であり、更にはある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0042】
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行するためのソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の揮発性あるいは不揮発性のストレージ、または、ICカード、光ディスク等の記録媒体に保持することができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【解決手段】情報提供システムは、ユーザーの顔を撮影可能なカメラを有する。クライアントは、カメラを通じて書籍の見開きページに印刷されている2次元コードをデコードして、webサーバーからコンテンツをダウンロードする。またクライアントは、ユーザーがクライアントの表示部を見ているか否かを検出し、集中度を算出する。情報提供システムは、カメラを通じてユーザーがコンテンツに対する集中度が急激に下降したこと、または急激に上昇したことを検出して、コンテンツの再生または一時停止を制御する。