特許第5956060号(P5956060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956060
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサンゲル
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/50 20060101AFI20160707BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20160707BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   C08G77/50
   A61K8/89
   A61Q1/02
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-506187(P2015-506187)
(86)(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公表番号】特表2015-519426(P2015-519426A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】EP2013057602
(87)【国際公開番号】WO2013156390
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2014年12月11日
(31)【優先権主張番号】102012206209.2
(32)【優先日】2012年4月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クノール,セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,アループ・クマール
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−355521(JP,A)
【文献】 特開2001−261835(JP,A)
【文献】 特開2005−314651(JP,A)
【文献】 特開2005−314371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノポリシロキサンゲルの製造方法であって、
(1)式
SiO(Q単位)ならびに
SiO1/2およびRR’SiO1/2(M単位)
(式中、Rは、同一であっても異なっていてもよく、基ごとに、1から18個の炭素原子を有する、場合により置換されている一価の炭化水素基を表し、
R’は、2から18個の炭素原子を有し、末端に脂肪族C−C多重結合を有する、一価の炭化水素基を表し、
ただし、MQ樹脂は、少なくとも2個の基R’を含有しており、Q単位に対するM単位のモル比は、0.5から4.0の範囲であるものとする。)
の単位による不飽和MQ樹脂を、
(2)一般式
3−cSiO(RSiO)(RHSiO)SiR3−c(I)
(式中
cは、0または1であり、
Rは、同一であっても異なっていてもよく、基ごとに、1から18個の炭素原子を有する、場合により置換されている一価の炭化水素基を表し、
aおよびbは、整数であり、ただし、
a+bの和は、66から248であり、
オルガノポリシロキサン(2)は、Si結合水素を0.011から0.044wt%の量で含むものであり、
分子1つあたりのSi−H基の数は、平均して2個より多いものとする。)
のSi−H官能性オルガノポリシロキサン
または(2)Si−H官能性オルガノポリシロキサンと
(2’)一般式
3−cSiO(RSiO)(RHSiO)SiR3−c(I’)
(式中
cは、0または1であり、
Rは、これについて上記に示した意味を有し、
aおよびbは、整数であり、ただし、
a+bの和は、8から248であり、
オルガノポリシロキサン(2’)は、Si結合水素を0.045から0.35wt%の量で含むものであるものとする。)
のSi−H官能性オルガノポリシロキサンの混合物と
(ただし、(2)と(2’)の混合物を使用する場合、(2’)に対する(2)の重量比は0.2より大きいものとする。)
(3)脂肪族多重結合へのSi結合水素の付加を促進させる触媒
の存在下で反応させ、
(1)および(2)または(2)と(2’)の混合物は、
(4)2から200個のSi原子を有するオルガノポリシロキサンおよび有機系希釈剤から選択される希釈剤中に分散される、
前記方法。
【請求項2】
反応後に得られたオルガノポリシロキサンゲルがホモジナイズされて、保存安定性でクリーム状のオルガノポリシロキサンゲルが得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
得られたオルガノポリシロキサンゲルをさらなる希釈剤(4)および/またはボディケアもしくはヘルスケアのための活性物質で希釈し、場合により続いてホモジナイズする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
2から50個のSi原子を有するポリジメチルシロキサン、4から30個の炭素原子を有する脂肪族もしくは脂環式の炭化水素、または2から30個の炭素原子を有するカルボン酸のエステルが、希釈剤(4)として使用される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
化粧料組成物の製造のための、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法によって製造されるオルガノポリシロキサンゲルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサンゲル、この製造方法、およびこの化粧料配合物における用途に関する。
【0002】
本発明のオルガノポリシロキサンゲルは、不飽和オルガノポリシロキサン樹脂を、特別なSi−H含有オルガノポリシロキサン(以下、本明細書においてSi−H官能性架橋剤とも称する。)で希釈剤の存在下にて架橋させることにより製造される。
【背景技術】
【0003】
架橋物質は、3次元網目に一体に連結されたポリマー鎖である。該物質は長鎖分枝体とみなすことができ、分枝の数が非常に多いため連続的で不溶性の網目またはゲルが形成される。
【0004】
オルガノポリシロキサン網目は、多くの場合、白金触媒型ヒドロシリル化反応において製造される。多くの場合、Si−H含有オルガノポリシロキサンとビニル官能性オルガノポリシロキサンを一緒に反応させる。3次元網目の形成のための必須の前提条件は、2つの成分のうちの少なくとも一方、Si−H含有オルガノポリシロキサンまたはビニル官能性オルガノポリシロキサンが、この平均的な組成において1分子あたり2つより多くの官能部を有していることである。
【0005】
白金触媒型ヒドロシリル化反応は、オルガノポリシロキサン網目の形成において、副生成物が形成されない、ならびに結合点および網目構造が狭く規定されるという利点をもたらす。
【0006】
オルガノポリシロキサンゲルが化粧料用途に使用される最も重要な理由は、得られる感覚上の利点、特に、皮膚に対する化粧料配合物の感触の改善である。さらに、オルガノポリシロキサンゲルは、化粧料配合物において増粘剤として使用される。
【0007】
US6,423,322B1には、特別なビニル官能性MQ樹脂と約0.5wt%のケイ素結合水素原子を有する高Si−H含有オルガノポリシロキサンとの、希釈剤としてのデカメチルシクロペンタシロキサンおよび少量の白金ヒドロシリル化触媒の存在下でのヒドロシリル化反応によって容易に製造され得るオルガノポリシロキサンゲルが開示されている。得られるゲルは非繊維質であり、安定なクリームまたはペーストに容易にホモジナイズされ得る。しかしながら、このオルガノポリシロキサンゲルの大きな欠点は、特に、皮膚に対してもたらされる感触が化粧料用途には理想的でないことである。
【0008】
さらに、化粧料用途に多くの場合で使用される多くの有機系希釈剤では、比較的高含有量のケイ素結合水素原子を有するSi−H含有オルガノポリシロキサンがSi−H官能性架橋剤として使用されている場合、好適なゲルが生成され得ないことがわかっている。従って、該ゲルが、有機化合物および希釈剤との適合性が低い場合があることは、化粧料配合物の製造において不都合である。また、ビニル官能性MQ樹脂の割合が相対的に高いため、かかるゲルは、製造するのが比較的高価である。
【0009】
US2004/0105828A1およびUS2003/0095935A1には、幾つかの異なるシリコーンゲル、例えば、希釈剤中でのSi−H含有ポリシロキサンと不飽和MQ樹脂のヒドロシリル化反応によって得られるゲルが記載されている。耐移り性の改善が重要な利点として記載されている。しかしながら、このようなオルガノポリシロキサンゲルの製造および作用を示す実施例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,423,322号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0105828号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0095935号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
課題は、改善された特性を有する、特に、皮膚に対する改善された感触を有し、前述の不都合がない新しいオルガノポリシロキサンゲルを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
(1)不飽和オルガノポリシロキサン樹脂と、
(2)一般式
3−cSiO(RSiO)(RHSiO)SiR3−c(I)
(式中
cは0または1、好ましくは0であり、
Rは同一であっても異なっていてもよく、基ごとに、1から18個の炭素原子を有する、場合により置換されている一価の炭化水素基を表し、
aおよびbは整数であり、ただし、
a+bの和は66から248、好ましくは98から248、好ましくは118から168であり、
該オルガノポリシロキサン(2)はSi結合水素を0.011から0.044wt%、好ましくは0.019から0.044wt%、好ましくは0.022から0.032wt%の量で含むものであり、
平均的な組成における分子1つあたりのSi−H基の数は2個より多いものとする。)
のSi−H官能性オルガノポリシロキサン
または(2)のSi−H官能性オルガノポリシロキサンと
(2’)一般式
3−cSiO(RSiO)(RHSiO)SiR3−c(I’)
(式中
cは0または1、好ましくは0であり、
Rは、これについて上記に示した意味を有し、
aおよびbは整数であり、ただし、
a+bの和は8から248、好ましくは38から248であり、
該オルガノポリシロキサン(2’)はSi結合水素を0.045から0.35wt%、好ましくは0.045から0.156wt%の量で含むものであるものとする。)
のSi−H官能性オルガノポリシロキサンの混合物
で行われる
(ただし、(2)と(2’)の混合物を使用する場合、(2’)に対する(2)の重量比は好ましくは0.2より大きく、特に好ましくは0.3より大きいものとする。)
(3)脂肪族多重結合へのSi結合水素の付加を促進させる触媒
の存在下での反応によって製造され
(1)および(2)または(2)と(2’)の混合物は、
(4)希釈剤、好ましくは、2から200個のSi原子を有するオルガノポリシロキサン、好ましくは2から50個のSi原子を有するオルガノポリシロキサン、または有機系希釈剤中
に分散される、
オルガノポリシロキサンゲルに関する。
【0013】
さらに、本発明は、
(1)不飽和オルガノポリシロキサン樹脂と、
(2)一般式
3−cSiO(RSiO)(RHSiO)SiR3−c(I)
(式中
cは0または1、好ましくは0であり、
Rは同一であっても異なっていてもよく、基ごとに、1から18個の炭素原子を有する、場合により置換されている一価の炭化水素基を表し、
aおよびbは整数であり、ただし、
a+bの和は66から248、好ましくは98から248、好ましくは118から168であり、
該オルガノポリシロキサン(2)はSi結合水素を0.011から0.044wt%、好ましくは0.019から0.044wt%、好ましくは0.022から0.032wt%の量で含むものであり、
平均的な組成における分子1つあたりのSi−H基の数は2個より多いものとする。)
のSi−H官能性オルガノポリシロキサン
または(2)のSi−H官能性オルガノポリシロキサンと
(2’)一般式
3−cSiO(RSiO)(RHSiO)SiR3−c(I’)
(式中
cは0または1、好ましくは0であり、
Rは、これについて上記に示した意味を有し、
aおよびbは整数であり、ただし、
a+bの和は8から248、好ましくは38から248であり、
該オルガノポリシロキサン(2’)はSi結合水素を0.045から0.35wt%、好ましくは0.045から0.156wt%の量で含むものであるものとする。)
のSi−H官能性オルガノポリシロキサンの混合物
で行われる
(ただし、(2)と(2’)の混合物を使用する場合、(2’)に対する(2)の重量比は好ましくは0.2より大きく、特に好ましくは0.3より大きいものとする。)
(3)脂肪族多重結合へのSi結合水素の付加を促進させる触媒
の存在下で反応させることにより、
(1)および(2)または(2)と(2’)の混合物は、
(4)希釈剤、好ましくは、2から200個のSi原子を有するオルガノポリシロキサン、好ましくは2から50個のSi原子を有するオルガノポリシロキサン、または有機系希釈剤中
に分散される、
本発明によるオルガノポリシロキサンゲルの製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明との関連において、式(I)および(I’)は、a単位−(RSiO)−とb単位−(RHSiO)−がオルガノポリシロキサン分子中に自由裁量で分配され得るようなものであると理解されたい。
【0015】
本発明に従って使用されるSi−H含有オルガノポリシロキサン(2)は、好ましくは、50から2000mm/秒、好ましくは100から1000mm/秒、特に好ましくは150から600mm/秒、(各場合において25℃で)の粘度、およびa:(b+c)が好ましくは30:1から150:1、好ましくは30:1から80:1、特に好ましくは40:1から70:1のモル比を有するものである。(2)との混合物に使用されるSi−H含有オルガノポリシロキサン(2’)は、好ましくは3から2000mm/秒、特に好ましくは20から1200mm/秒(各場合において25℃で)の粘度、およびa:(b+c)が好ましくは4:1から30:1、特に好ましくは8:1から30:1のモル比を有するものである。
【0016】
驚くべきことに、Si−H含有オルガノポリシロキサン(2)を主体とする、または(2)と(2’)の混合物を主体とする本発明によるオルガノポリシロキサンゲルは、US6,423,322B1に開示されているものなどの相対的に高含有量のケイ素結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンを主体とするゲルよりも、ずっと良好な感覚特性、特に、より良好な皮膚に対する感触を有することがわかった。本ゲルは、極めてすべすべしており、望ましくないオイリーな感触はない。皮膚上に分配された後、本ゲルは、なんら望ましくない膜をはったような、またはくすんだ感触はなく、皮膚の感触をよりしなやかにする。
【0017】
基Rの例は、アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、1−n−ブチル、2−n−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、ネオ−ペンチル、tert−ペンチル基、ヘキシル基、例えば、n−ヘキシル基、ヘプチル基、例えば、n−ヘプチル基、オクチル基、例えば、n−オクチル基およびイソ−オクチル基、例えば、2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えば、n−ノニル基、デシル基、例えば、n−デシル基、ドデシル基、例えば、n−ドデシル基、ならびにオクタデシル基、例えば、n−オクタデシル基;シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびメチルシクロヘキシル基;アリール基、例えば、フェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリル基;アルカリル基、例えば、o−、m−、p−トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基;ならびにアラルキル基、例えば、ベンジル基、α−およびβ−フェニルエチル基である。
【0018】
置換型基Rの例は、ハロアルキル基、例えば、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基およびハロアリール基、例えば、o−、m−およびp−クロロフェニル基である。
【0019】
好ましくは、基Rは、1から6個の炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、メチル基が特に好ましい。
【0020】
本発明によるオルガノポリシロキサンゲルに使用される不飽和オルガノポリシロキサン樹脂(1)は、好ましくは、一般式(II)
R’SiO(4−x−y)/2 (II)
(式中
Rは、これについて上記に示した意味を有し、
R’は、ヒドロシリル化反応でSi−H基が付加され得る一価の炭化水素基を表し、好ましくは、2から18個の炭素原子を有し、末端に脂肪族C−C多重結合を有する一価の炭化水素基、好ましくは、2から12個の炭素原子を有するω−アルケニル基、特に好ましくはビニル基を表し、
xは0、1、2または3であり、
yは0、1または2、好ましくは0または1である、
ただし、x+yの和は3以下であり、1分子あたりに少なくとも2個の基R’、好ましくは少なくとも3個の基R’、少なくとも20mol%のTおよび/またはQ単位(T単位:x+yの和=1;Q単位:x+yの和=0)、好ましくは少なくとも20mol%のQ単位、が存在していなければならず、加えてD単位(x+yの和=2)が存在していてもよいものとする。)
の単位で構成された不飽和オルガノポリシロキサン樹脂である。
【0021】
好ましくは、式(II)の不飽和オルガノポリシロキサン樹脂は、式
SiO(Q単位)ならびに
SiO1/2およびRR’SiO1/2(M単位)
(式中、RおよびR’は、これらについて上記に示した意味を有する。)
の単位によるMQ樹脂である。
【0022】
Q単位に対するM単位のモル比は、この場合、好ましくは0.5から4.0の範囲、より好ましくは0.5から2.0の範囲、特に好ましくは0.6から1.5の範囲である。このようなシリコーン樹脂は、さらに、10wt%までの遊離ヒドロキシルまたはアルコキシ基を含有していてもよい。
【0023】
好ましくは、不飽和オルガノポリシロキサン樹脂(1)は、25℃で0.7mm/秒より大きい粘度を有するものである。25℃で1000mm/秒より大きい粘度を有するか、または固形物である樹脂が特に好ましい。このような樹脂のゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される重量平均分子量M(ポリスチレン標準に相対)は好ましくは334から200000g/mol、より好ましくは1000から20000g/molである。
【0024】
本発明によるオルガノポリシロキサンゲルの不飽和オルガノポリシロキサン樹脂(1)は、好ましくは254より低いヨウ素価を有するものであり、76より低いヨウ素価を有するオルガノポリシロキサン樹脂が好ましい。不飽和の炭化水素基は、好ましくは、M単位(=MVi)またはD単位(=DVi)、好ましくはM単位に結合されており、ここで、モル比M:(MVi+DVi)、好ましくはM:MViは、好ましくは0から50の範囲、より好ましくは0から20の範囲、特に好ましくは2.5から13の範囲である。
【0025】
基R’の例は、アルケニル基、例えば、ビニル、5−ヘキセニル、シクロヘキセニル、1−プロペニル、アリル、3−ブテニルおよび4−ペンテニル基、ならびにアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギルおよび1−プロピニル基である。好ましくは、基R’はアルケニル基、特に好ましくはω−アルケニル基、特にビニル基を表す。
【0026】
本発明によるオルガノポリシロキサンゲルには、不飽和オルガノポリシロキサン樹脂(1)は、Si−H官能性オルガノポリシロキサン(2)および(2’)のSi結合水素1molあたり脂肪族C−C多重結合を有する炭化水素基が好ましくは4.5から0.1mol、好ましくは2から0.8mol、特に好ましくは1.8から1.1molの量で使用される。
【0027】
US6,423,322B1に開示されたオルガノポリシロキサンゲルにおけるSi−H含有オルガノポリシロキサンに対するMQ樹脂の重量比は7から4の範囲である。比較的高価な樹脂の割合が高いと、このようなゲルは比較的高価になる。本発明によるオルガノポリシロキサンゲルでは、Si−H含有オルガノポリシロキサン(2)に対する不飽和オルガノポリシロキサン樹脂(1)の重量比は、好ましくは3から0.1の範囲、より好ましくは2.0から0.1の範囲、特に好ましくは1から0.1の範囲である。本発明によるオルガノポリシロキサンゲルでは、Si−H含有オルガノポリシロキサン(2)と(2’)の混合物に対する不飽和オルガノポリシロキサン樹脂(1)の重量比は、好ましくは3から0.1の範囲、より好ましくは2.5から0.1の範囲、特に好ましくは2.2から0.1の範囲である。
【0028】
触媒(3)として、本発明による方法では、これまで脂肪族多重結合へのSi結合水素の付加を促進させるために同様に使用されてきたものと同じ触媒が使用され得る。該触媒は、好ましくは、白金族金属の金属または白金族金属の化合物もしくは錯体である。前記触媒の例は、金属の、および微粉化された白金(これは、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたは活性炭などの支持体に担持され得る。)、白金の化合物または錯体、例えば、白金ハロゲン化物、例えば、PtCl、HPtCl・6HO、NaPtCl・4HO、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、白金−アルコーラート錯体、白金−エーテル錯体、白金−アルデヒド錯体、白金−ケトン錯体、例えば、HPtCl・6HOとシクロヘキサノンの反応生成物、白金−ビニル−シロキサン錯体、例えば、検出可能な無機結合ハロゲンを含有している、または含有していない白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチル−ジシロキサン錯体、ビス(γ−ピコリン)−二塩化白金、トリメチレンジピリジン二塩化白金、ジシクロペンタジエン二塩化白金、ジメチルスルホキシドエチレン−白金−(II)−ジクロリド、シクロオクタジエン−二塩化白金、ノルボルナジエン−二塩化白金、γ−ピコリン−二塩化白金、シクロペンタジエン−二塩化白金、ならびに四塩化白金とオレフィンおよび第1級アミンまたは第2級アミンまたは第1級と第2級アミンとの反応生成物、例えば、1−オクテンに溶解させた四塩化白金とsec−ブチルアミンまたはアンモニウム−白金錯体との反応生成物である。好ましいヒドロシリル化触媒は、化粧料配合物における使用に適した溶媒中に含めた白金化合物である。
【0029】
触媒(3)は、好ましくは、1から50wt−ppm(100万重量部に対する重量部)、特に好ましくは2から20wt−ppm(各場合において、白金元素として、不飽和オルガノポリシロキサン樹脂(1)、Si−H官能性オルガノポリシロキサン(2)またはSi−H官能性オルガノポリシロキサン(2)と(2’)の混合物および希釈剤(4)の総重量に対して計算)の量で使用される。
【0030】
本発明によるオルガノポリシロキサンゲルは、オルガノポリシロキサンゲルの総重量に対して好ましくは1から98wt%の希釈剤、より好ましくは、50から95wt%の希釈剤を含有する。
【0031】
非反応性または相対的に非反応性の希釈剤が好ましい。本発明との関連において、用語「非反応性の」は、対象の架橋反応および本明細書において使用されている反応体に関して用いている。相対的に非反応性の希釈剤とは、架橋反応の反応体との反応性が、該架橋反応における該反応体の互いとの反応性と比べて10分の1より小さいものである。
【0032】
希釈剤の好適な例には、環状および線状のオルガノポリシロキサン、有機系希釈剤、またはオルガノポリシロキサンと有機系希釈剤の混合物が包含される。
【0033】
オルガノポリシロキサンは、単独のオルガノポリシロキサンであってもオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。オルガノポリシロキサンは、アルキル、アリール、アルカリルおよびアラルキル基を有するものであり得る。前記オルガノポリシロキサンとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシラン、ポリメチルエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンおよびポリジフェニルシロキサンが代表的であり得るが、これらに限定されない。
【0034】
また、官能性オルガノポリシロキサン、例えば、アクリルアミド官能性液状シロキサン、アクリル系官能性液状シロキサン、アミド官能性液状シロキサン、アミノ官能性液状シロキサン、カルビノール官能性液状シロキサン、カルボキシ官能性液状シロキサン、クロロアルキル官能性液状シロキサン、エポキシ官能性液状シロキサン、グリコール官能性液状シロキサン、ケタール官能性液状シロキサン、メルカプト官能性液状シロキサン、メチルエステル官能性液状シロキサン、パーフルオロ官能性液状シロキサンおよびシラノ官能性シロキサンを使用することも可能である。
【0035】
環状ポリジメチルシロキサンとしては、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンが代表的であり得るが、これらに限定されない。
【0036】
好ましくは、オルガノポリシロキサンは、2から200個のSi原子、好ましくは2から50個のSi原子を有するポリジメチルシロキサンであり、25℃で1.5から50mm/秒の粘度を有する線状ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
【0037】
芳香族炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、アミン、エステル、エーテル、アルキルハライドまたは芳香族ハライドが有機系希釈剤として使用され得る。代表例は、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、i−プロパノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、2−オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセロール;脂肪族炭化水素、例えば、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、ホワイトスピリット;アルキルハライド、例えば、クロロホルム、四塩化炭素、パークロロエチレン、塩化エチルおよびクロロベンゼン;芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンおよびキシレン;2から30個の炭素原子を有するカルボン酸のエステル、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセト酢酸エチル、酢酸アミル、イソ酪酸イソブチル、酢酸ベンジル、パルミチン酸イソプロピルおよびミリスチン酸イソプロピル(=ミリスチン酸イソプロピルエステル);エーテル、例えば、エチルエーテル、n−ブチルエーテル、テトラヒドロフランおよび1,4−ジオキサン;ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、メチルアミルケトンおよびジイソブチルケトン;脂肪油、例えば、多価不飽和ω−3およびω−6脂肪酸ならびにこのエステル;植物油、例えば、ピーナッツ油、オリーブ油、ヤシ油、ナタネ油、コーン油、ダイズ油、ヒマワリ油など;ならびに天然および合成油または油溶性固形物、例えば、種々のモノ−、ジ−およびトリグリセリド、ポリアルコキシル化植物油、ラノリン、レシチンなど;ならびに石油系炭化水素、例えば、ワセリン、鉱油、ガソリン、石油エーテルである。これらの例は、説明のために示したものであり、なんら限定するものとして理解されるべきでない。
【0038】
また、他の混合有機系希釈剤、例えば、アセトニトリル、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、プロピレンオキシド、リン酸トリオクチル、ブチロラクトン、フルフラール、松根油、テレビン油およびm−クレゾールも使用され得る。
【0039】
また、揮発性の芳香族物質、例えば、ペパーミント油、グリーンミント油、メントール、バニラ、桂皮油、丁子油、月桂樹油、アニス油、ユーカリ油、タイム油、セダー油、ナツメグ油、セージ油、カッシア油、ココア、カンゾウ、異性化糖、柑橘油、例えば、レモン、オレンジ、ライムおよびグレープフルーツ、果実エッセンス、例えば、リンゴ、ナシ、モモ、フドウ、イチゴ、ラズベリー、チェリー、プラム、パイナップルおよびアプリコットも好適な有機系希釈剤であり;他の有用な芳香族物質としては、アルデヒドおよびエステル、例えば、桂皮酸 酢酸エチル、シンナムアルデヒド、ギ酸オイゲニル、p−メチルアニソール、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、アニスアルデヒド、シトラール、ネラール、デカナール、バニリン、トリルアルデヒド、2,6−ジメチルオクタナールおよび2−エチルブチルアルデヒドが挙げられる。
【0040】
有機系希釈剤の一部または全体に1種類以上の揮発性の着臭剤、例えば、天然産物および香油を含めてもよい。代表的な天然産物および香油の一例は、アンバー、ベンゾイン、シベット、クローブ、セダー油、ジャスミン、マテ、ミモザ、ムスク、ミルラ、アイリス、ビャクダン油およびベチベル油;芳香性化学物質、例えば、サリチル酸アミル、アミルシンナムアルデヒド、酢酸ベンジル、シトロネロール、クマリン、ゲラニオール、酢酸イソボルニル、アンブレットおよび酢酸テルピニル、ならびに種々の古典的な香油系統、例えば、フローラルブーケ系統、オリエンタル系統、シプレー系統、ウッド系統、シトラス系統、カヌー(Canoe)系統、レザー系統、スパイス系統およびハーブ系統である。
【0041】
また、有機系希釈剤には、4から30個の炭素原子を有する脂肪族もしくは脂環式の炭化水素、好ましくは飽和炭化水素も包含され得る。脂肪族炭化水素は線状であっても分枝状であってもよく、脂環式炭化水素としては、非置換の環状炭化水素または脂肪族炭化水素置換炭化水素が代表的であり得る。好適な炭化水素の例はn−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−デカン、イソデカン、n−ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ノニルシクロヘキサンなどである。この列挙も説明のために示したものであり、なんら限定するものとして理解されるべきでない。
【0042】
他の好適な有機系希釈剤は、油様ポリエーテル、例えば、低分子量グリコールのビス(アルキル)エーテル、ならびに液状オリゴマー型およびポリマー型ポリオキシアルキレングリコール、ならびにこのアルキルモノ−およびジエーテルおよびモノ−およびジアルキルエステルである。好ましくは、該ポリオキシアルキレングリコールの大部分は、大部分(>50mol%)の2個より多くの炭素原子を有するアルキレンオキシド、即ち、プロピレンオキシド、1,2−および2,3−ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、オキセタン、シクロヘキセンオキシドなどで製造されている。
【0043】
好ましい有機系希釈剤は0.5から200mm/秒(25℃)の範囲の粘度を有するものであり、50℃から300℃の範囲の沸点を有する前記希釈剤が特に好ましい。
【0044】
希釈剤の数多くの混合物が使用され得るが、本発明によるオルガノポリシロキサンゲルの生成後、相分離を起こさない組成物のみに限られる。
【0045】
全く予期しないこととして、Si−H含有オルガノポリシロキサン(2)または(2)と(2’)のSi−H含有オルガノポリシロキサン混合物を用いて製造される本発明によるゲルは、有機系希釈剤との改善された適合性を有することがわかった。保存安定性であり、化粧料用途に著しく好適なクリーム状のゲルが得られる。対照的に、US6,423,322B1に開示されているような比較的高含有量のケイ素結合水素を有するSi−H含有オルガノポリシロキサンを使用した場合では、保存安定性である適当なゲルを有機系希釈剤中で製造することができなかった。
【0046】
該ゲルの製造は容易に行うことができる。一般に、触媒以外の成分をすべて添加し、均質な混合物が得られるまでゆっくり撹拌し、次いで、連続的に撹拌しながら触媒を添加する。この組成物を、ゲルが形成されるまで室温で放置してもよく、加熱してもよい。好ましくは、該組成物を、混合物がゲル化するか、または固形になるまで50℃から130℃、より好ましくは70℃から120℃の温度に加熱する。ゲル化は、好ましくは10時間以内、より好ましくは3時間以内に起こる。化粧料配合物における使用に適したオルガノポリシロキサンゲルが得られる。
【0047】
場合により行う第2工程では、第1工程で得られた本発明によるオルガノポリシロキサンゲルを、標準的な高剪断混合手法を用いてホモジナイズし、クリーム状の粘稠度にする。これは、ローター−ステーター撹拌器、コロイドミル、高圧ホモジナイザー、マイクロチャネル、膜、ジェットノズルおよび同様のものでの激しい混合および分散によって、または超音波によって行われ得る。ホモジナイズ装置および方法は、例えば,Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,CD−ROM Edition 2003,Wiley−VCH Verlagの見出し「Emulsions」に記載されている。
【0048】
場合により行う第3工程では、さらなる量の希釈剤を、第1工程または場合により行う第2工程後に得られたオルガノポリシロキサンゲルに添加する。このようにして、第1工程で得られた「ベースゲル」から始めて、粘稠度および性能プロフィールが広く異なるたくさんの種々のゲルを製造することが可能になる。第1工程で使用したものと同じ希釈剤、または本明細書において希釈剤として前述したものを含む第2の希釈剤を使用することが可能である。または、本明細書において既に記載した希釈剤の任意の混合物および/またはボディケアもしくはヘルスケアのための活性物質またはボディケアもしくはヘルスケアのための活性物質と本明細書に記載した希釈剤のうちの1以上との混合物を添加してもよいが、相分離を起こさないものであるものとする。
【0049】
本明細書で用いる場合、「パーソナルケアまたはヘルスケア用活性成分」は、当該技術分野でパーソナルケア配合物における添加剤として知られており、化粧上および/または美容上の有益性を得るための毛髪または皮膚のトリートメントの目的で典型的に添加される任意の化合物または化合物の混合物、医薬上または医学上の有益性がもたらされることが当該技術分野で知られている任意の化合物または化合物の混合物;疾患の診断、治癒、緩和、処置もしくは予防において薬理活性または他の直接的な効果を付与すること、またはヒトもしくは他の動物の身体の構造もしくはいずれかの機能に影響を及ぼすことが意図された任意の化合物;ならびに特定の活性または効果を付与されるように、薬物製剤品の製造において化学変化が起こり得るか、薬物製剤品中に意図された修飾形態で存在し得る任意の化合物を意味する。従って、「パーソナルケアおよびヘルスケア用活性成分」としては、限定されないが、一般的に使用されており、米国保健福祉省の食品医薬品局によって規定されたCode of Federal Regulations,Parts 200−299およびParts 300−499のTitle 21,Chapter Iに示された活性成分または活性薬物成分が挙げられる。
【0050】
ボディケアもしくはヘルスケアのための活性物質は、好ましくは、脂溶性または油溶性のビタミン類、油溶性医薬品(ここで、抗ニキビ剤、抗菌剤、殺真菌剤、抗炎症剤、抗乾癬剤、麻酔薬、止痒剤、抗皮膚炎剤および一般的にバリア膜とみなされている薬剤が特に好ましい。)、ならびに油溶性UV吸収剤の群から選択される。
【0051】
本発明による方法の工程3における使用のための有用な活性成分には脂溶性および油溶性ビタミン類が包含される。有用な油溶性ビタミン類には、限定されないが、ビタミンA、レチノール、レチノールのCからCl8エステル、ビタミンE、トコフェロール、ビタミンEのエステルおよびこの混合物が包含される。レチノールには、トランス−レチノール、13−シス−レチノール、11−シス−レチノール、9−シス−レチノールおよび3,4−ジデヒドロ−レチノールが包含される。油溶性ビタミンは、本発明による組成物中に0.01から50wt%の量で使用され得る。
【0052】
レチノールは、ビタミンAの米トイレ化粧品香料工業協会(CTFA)(ワシントンDC)によって指定された化粧品原料国際命名法の(INCI)名であることに注意されたい。本明細書において包含される他の好適なビタミン類および対象のビタミン類のINCI名は、レチニルアセテート、レチニルパルミテート、レチニルプロピオネート、a−トコフェロール、トコフェルソラン、トコフェリルアセテート、トコフェリルリノレエート、トコフェリルニコチネートおよびトコフェリルスクシネートである。
【0053】
本明細書において使用に適した市販品の一例は、ビタミンAアセテート,Fluka Chemie AG(ブーフス,スイス);CIOVI−OX T−50(Henkel Corporation,La Grange(イリノイ州)製のビタミンE製剤品;COVI−OX T−70(Henkel Corporation,La Grange(イリノイ州)製の別のビタミンE製剤品)およびビタミンEアセテート(Roche Vitamins & Fine Chemicals(ナットレー,ニュージャージー州)製の製剤品)である。
【0054】
本発明による第3工程で活性成分として添加され得る一部の好適な油溶性医薬品の代表例は、クロニジン、スコポラミン、プロプラノロール、エストラジオール、塩酸フェニルプロパノールアミン、ウアバイン、アトロピン、ハロペリドール、イソソルビド、ニトログリセリン、イブプロフェン、ユビキノン、インドメタシン、プロスタグランジン、ナプロキセン、サルブタモール、グアナベンズ、ラベタロール、フェニラミン、メトリホナートおよびステロイドである。
【0055】
また、以下のもの:抗ニキビ剤、例えば、過酸化ベンゾイル、トリクロサンおよびトレチノイン;抗菌剤、例えば、グルコン酸クロルヘキシジン;殺真菌剤、例えば、硝酸ミコナゾール;抗炎症剤、例えば、サリチル酸;副腎皮質ホルモン薬;非ステロイド系抗炎症剤、例えば、ジクロフェナク;抗乾癬剤、例えば、プロピオン酸クロベタゾールおよびレチノイド、麻酔薬、例えば、リドカイン;止痒剤、例えば、ポリドカノール;抗皮膚炎剤、例えば、プレドニゾロンならびに一般的にバリア膜とみなされている薬剤も本発明の解釈上の医薬品として本明細書に包含される。
【0056】
本発明による第3工程で活性成分として添加され得る油溶性UV吸収剤の代表例は、1−(4−メトキシフェニル)−3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパン−1,3−ジオン(INCI:ブチルメトキシジベンゾイルメタン)、2−エチルヘキシル−(2E)−3−(4−メトキシフェニル)プロプ−2−エノエート(INCI:オクチルメトキシシンナメート)、4−ヒドロキシ−2−メトキシ−5−(オキソ−フェニルメチル)ベンゼンスルホン酸(INCI:ベンゾフェノン−4)、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム塩(INCI:ベンゾフェノン−5)および2−エチルヘキシル−2−ヒドロキシベンゾエート(INCI:エチルヘキシルサリチレート)である。
【0057】
好ましくは、第4工程において、第1工程または場合により行う第2工程または場合により行う第3工程後に得られた本発明によるオルガノポリシロキサンゲルを、標準的な高剪断混合手法を用いてホモジナイズし、クリーム状の粘稠度にする。これに好適な技術は上記に記載している。場合により行う第3工程でさらなる量の希釈剤を添加した場合、これは第4工程のゲル中に均質に分配される。このゲルは膨潤し、この柔軟性が変化する。
【0058】
ゲルに言及した「クリーム状の」とは、開始時のゲルがクリーム状の粘稠度に剪断されたことを意味する。得られたクリーム状のゲルは、状況に応じて注入可能なもの、または相対的に堅いものであり得る。「クリーム状の」属性により、このような剪断ゲル(これは透明であっても不透明であってもよい。)は、反応性成分のゲル化の結果、即座に生成されるゲルと区別される。
【0059】
「保存安定性の」とは、本発明との関連において、形成されたオルガノポリシロキサンゲルが、室温で6ヶ月間の保存期間内に2つ以上の相に分離せず、該ゲルの柔軟性がこの期間中、実質的に変化しないことを意味する。
【0060】
好ましくは、ヒドロシリル化触媒毒またはSiHクエンチャーを本発明によるオルガノポリシロキサンゲルに添加し、シリコーンエラストマー中で起こる残留架橋性ヒドロシリル化反応によって引き起こされる後硬化を停止させる。後硬化の停止のために好適なヒドロシリル化触媒毒またはSiHクエンチャーの例は有機イオウ化合物である。他の好適な化合物はUS6,200,581に記載されている。好ましいヒドロシリル化触媒毒はメルカプトアルキルオルガノポリシロキサンであり、メルカプトプロピル官能性シルセスキシロキサンまたはメルカプトプロピル官能性ポリオルガノシロキサンが特に好ましく、これらは、好ましくは、1molの白金原子に対してメルカプト基が200から1.0mol、より好ましくは50から1.5mol、特に好ましくは20から2.0molの量で使用される。ヒドロシリル化触媒毒またはSiHクエンチャーの添加は前述の工程の任意の1つ以上で行ってよい。
【0061】
本発明によるオルガノポリシロキサンゲルは、特に好ましくは化粧料用途に適しており、従って、化粧料組成物に好ましく使用される。しかしながら、本ゲルは他の用途、例えば医学的用途および技術的用途にも適している。
【0062】
該オルガノポリシロキサンゲルはボディケア製品において特に有益である。該ゲルは皮膚上で軽くのばすことができ、従って単独で使用してもよく、他のボディケア製品用成分と混合してもよく、たくさんのボディケア製品が構成され得る。
【0063】
ボディケア製品の成分の例は、エステル、ワックス、動物または植物起源の油脂、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪酸のアルキルエステル、炭化水素および炭化水素ワックス、水、有機溶媒、香料、界面活性剤、油溶性ビタミン類、水溶性ビタミン類、油溶性医薬品、水溶性医薬品、UV吸収剤、活性医薬化合物などである。
【0064】
特に、本発明によるオルガノポリシロキサンゲルは、ドライな感触のままであり、消散中、皮膚を冷却させないため、制汗剤および消臭制汗剤に適している。該ゲルは、すべすべしており、スキンクリーム、スキンケアローション、保湿剤、フェイシャルトリートメント剤、例えば、ニキビ除去剤またはしわ取り剤、身体および顔用洗浄剤、バスオイル、香料、オーデコロン、におい袋、日焼け止め剤、プレシェイブローションおよびアフターシェイブローション、リキッドソープ、シェイビングソープおよびシェイビングフォームの特性を改善する。該ゲルは、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアスプレー、ムース、毛髪用パーマ剤、除毛剤およびキューティクル被覆剤にも使用され得、つやおよび乾燥時のすべすべ感が改善され、コンディショニングの利点がもたらされる。
【0065】
化粧料中では、該ゲルは、メイキャップ、着色化粧料、ファンデーション、ルージュ、李p口紅、リップバルサム、アイライナー、マスカラ、油分リムーバーおよび着色化粧料リムーバー中への顔料の分布剤としての機能を果たす。該ゲルは、本明細書において例として記載した油溶性活性成分、例えば、ビタミン類、医薬品およびUV吸収剤の送達系として好適である。該ゲルをスティック、ゲル、ローションおよびロールオンに使用と、該エラストマーによりドライでシルキーでソフトな感触が付与される。化粧料および他のスキンケア製品に組み込むと、該エラストマーによりマットな効果が付与される。
【0066】
また、オルガノポリシロキサンゲルはたくさんの好都合な特性、例えば、透明性、保存安定性および製造の簡単性を示す。従って、該ゲルは、広範な分野、特に、制汗剤、デオドラント剤、スキンケア製品における用途、香料における担体しての用途およびヘアコンディショニングのための用途を有する。
【0067】
該オルガノポリシロキサンゲルは、ボディケアの分野以外の使途、例えば、電気ケーブル用のフィラーもしくは絶縁材、土質安定化のための土もしくは水防壁剤、またはエレクトロニクス産業における部材に使用されるエポキシ材料の代用品としての用途を有する。また、該ゲルは、架橋シリコーンゴム粒子用の担体としても適している。このような用途において、該ゲルにより(i)粒子をシリコーンまたは有機相、例えば、シーリング材、塗料、コーティング、グリース、接着剤、消泡剤および樹脂成型性化合物に簡単に組み込むこと、ならびに(ii)純粋状態または最終状態のいずれかの前記相のレオロジー的、物理的またはエネルギー吸収性の特性の改良をもたらすことが可能になる。
【0068】
また、該オルガノポリシロキサンゲルは、調合薬、殺生物剤、除草剤、殺虫剤および他の生物学的活性物質用の担体としても供することができる。
【0069】
さらに、該組成物には、身体衛生および家庭内清掃の目的で一般に市販されているセルロース系担体基材または不織合成担体基材(これは、清浄用ウェットクロス、例えば、ウェットクロス、ウェットティッシュおよびウェットタオルに使用される。)のための添加剤としての用途も見出される。
【0070】
ゲルの調製,一般仕様(AおよびB)
方法Aによれば、まず、「ベースゲル」を調製し、これを、ゲル化後に、さらなる量の希釈剤の添加によって希釈する。方法Bは、基本的に全量の希釈剤を最初から添加するという点で方法Aと異なる。その後、得られたゲルの希釈は行わない。
【0071】
仕様A:
2000ml容ガラス反応器に、窒素供給管を備えた冷却器、加熱ジャケット、アンカー型撹拌器および温度制御システムを取り付ける。反応器に窒素を5分間フラッシングした後、反応を開始する。対応する量の希釈剤、Si−H含有架橋剤または薬剤および不飽和オルガノポリシロキサン樹脂を添加し、樹脂が完全に溶解するまで撹拌する。ヒドロシリル化触媒を添加し、反応混合物を95℃まで、約200rev/分の撹拌速度で加熱する。これをこの温度で2.5時間撹拌する。次いで、加熱ジャケットを除き、混合物を室温まで、低撹拌速度(およそ50rev/分)で冷却し、触媒毒を添加する。得られたゲルを、ULTRA−TURRAX(登録商標)T 50を6000rev/分で用いて振動により1分間ホモジナイズする。「ベースゲル」が得られ、これはクリーム状から固形またはもろい粘稠度を有するものであり得、化粧料製品における使用に適している。
【0072】
希釈のため、所望の量の希釈剤を添加し、これをアンカー型撹拌器を用いて50rev/分で、希釈剤がゲルに完全に溶解するまで(およそ10分間)撹拌する。次いで、これを、再度、ULTRA−TURRAX(登録商標)T 50を6000rev/分で用いて振動により1分間ホモジナイズする。このようにして、非常に滑らかな粘稠度を有し、保存安定性であり、化粧料製品における使用に適したクリーム状で透明または半透明のゲルが得られる。
【0073】
仕様B:
2000ml容ガラス反応器に、窒素供給管を備えた冷却器、加熱ジャケット、アンカー型撹拌器および温度制御システムを取り付ける。反応器に窒素を5分間フラッシングした後、反応を開始する。希釈剤、Si−H官能性架橋剤および不飽和オルガノポリシロキサン樹脂を添加し、これを、樹脂が完全に溶解するまで撹拌する。ヒドロシリル化触媒を添加し、反応混合物を95℃まで、約200rev/分の撹拌速度で加熱する。これをこの温度で2.5時間撹拌する。次いで、加熱ジャケットを除き、混合物を室温まで、低撹拌速度(およそ50rev/分)で冷却し、触媒毒を添加する。得られたゲルを、ULTRA−TURRAX(登録商標)T 50を6000rev/分で用いて振動により2分間ホモジナイズする。このようにして、非常に滑らかな粘稠度を有し、保存安定性であり、化粧料製品における使用に適したクリーム状で透明または半透明のゲルが得られる。
【実施例】
【0074】
[実施例1から11および比較例V1からV5]
幾つかのゲルを、仕様AおよびBに従って製造した。使用した物質、その量および製造されたゲルの特性を以下の表1から3に示す。実施例および比較例で使用したSi−H官能性架橋剤の特性を表4に示す。
【0075】
実施例1から5は、非常に少ない含有量のSi−H基を有する架橋剤が単独の架橋剤として、または別の架橋剤との組合せで使用されたゲルの実施例である。不揮発性のポリジメチルシロキサン(25℃で5mm/秒)を希釈剤として選択した。保存安定性でクリーム状のゲルが得られ、これは化粧料配合物における使用に適している。実施例3は高粘度の「ベースゲル」を示す。実施例4および5のゲルは同等の組成物を有するが、異なる方法AまたはBによって製造した。これらのゲルは非常に類似した特性、外観および粘度を示す。実施例4は仕様Aに従って、実施例3の「ベースゲル」から続いて希釈することによって調製した。対照的に、実施例5は希釈工程なしの仕様Bに従って調製した。比較例V1およびV2は、実施例1から5で使用したものと同じ希釈剤でのゲルを示す。しかしながら、比較例V1は、US6,423,322B1に開示されているような非常に高い含有量のSi−H基を有する架橋を含むものである。ゲルV1は、化粧料用途には望ましくない油状で流れやすい粘稠度を有する。比較例V2は、排他的に中程度の含有量のSi−H基を有する架橋剤を含むものである。このゲルは保存中、2相に分離する。これは保存安定性ではなく、従って、化粧料用途には不適切である。実施例6は、揮発性の線状ポリジメチルシロキサン(25℃で2.3mm/秒)を希釈剤として用いて製造したオルガノポリシロキサンゲルを示す。このゲルはクリーム状、保存安定性および透明であり、化粧料用途における使用に非常に適している。
【0076】
実施例7から9は、非常に少ない含有量のSi−H基を有する架橋剤が単独の架橋剤として、または別の架橋剤との組合せで使用されたゲルを示す。ミリスチン酸イソプロピル(=ミリスチン酸プロピルエステル)を希釈剤として選択した。クリーム状で透明で保存安定性のゲルが得られ、これは、化粧料配合物における使用に適している。比較例V3およびV4は、排他的に比較的高含有量のSi−H基を有する架橋剤を含む、同じ希釈剤でのゲルを示す。このゲルは液状であり、化粧料用途には適さない。さらに、V3は2相に分離する。
【0077】
実施例10および11は、非常に少ない含有量のSi−H基を有する架橋剤が単独の架橋剤として、または別の架橋剤との組合せで使用されたゲルを示す。これらの実施例では希釈剤としてイソドデカンを使用している。保存安定性でクリーム状のゲルが得られ、これは化粧料配合物における使用に適している。比較例V5は、US6,423,322B1に開示されているような非常に高い含有量のSi−H基を有する架橋剤が使用された、同じ希釈剤でのゲルを示す。流れやすい油状の化粧料用途には望ましくないゲルが得られ、これは保存中、2相に分離する。
【0078】
オルガノポリシロキサンゲルの粘度をDIN EN ISO 3219に従って、1/秒の剪断速度で25℃にて測定した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
[実施例12]
実施例1、実施例2、実施例4および比較例V1のオルガノポリシロキサンゲルの感覚特性を、訓練を受けた試験者の一団が評価した。このため、オルガノポリシロキサンゲルを、必要に応じて、ポリジメチルシロキサン(5mm/秒)を添加することにより同等の粘度(90000mPas(+/−10%))に希釈した。これにより、オルガノポリシロキサンゲルの感覚的印象がゲルの粘度の違いによって変わることがないことを確実にする。皮膚への適用後、残存物の感覚特性を、互いに対して相対的に評価した。表5は試験者の平均評価を示す。ここで、スコア5は、皮膚に対する好ましいビロードのようなシルキーな感触に相当し、スコア0は、皮膚に対する望ましくない脂っぽいオイリーな感触に相当する。
【0084】
【表5】
【0085】
[実施例13から14、比較例6]
透明な液状ファンデーションを、実施例2、実施例4および比較例V1で製造したオルガノポリシロキサンゲルならびに表6に示すその他の成分を用いて配合した。このため、実施例2および4のオルガノポリシロキサンゲルを、希釈剤の添加によって同じ粘度(90000mPas(+/−10%))に希釈し、実施例12に記載のようなより良好な比較可能性を確実にした。感覚特性は、訓練を受けた試験者の一団が評価した。試験者は、皮膚上でののばしやすさ、ならびにのばした後の残存物のすべすべ感およびべたつき感を評価した。表7は試験者の平均評価を示す。
【0086】
液状ファンデーションの製造のため、まず、A相の油をパドルミキサー内で混合する。次いでA相の樹脂を、撹拌および穏やかな加熱を伴って、均一な混合物が形成されるまで添加する。オルガノポリシロキサンゲルをA相に添加し、均質になるまで撹拌する(実施例2または実施例4のゲルは、記載量のWACKER−BELSIL(登録商標)DM 5で事前に希釈しておく)。B相の成分を一緒に合わせ、均一になるまで混合する。B相をA相に添加し、75℃まで加熱する。D相の成分を均質になるまで撹拌することにより混合し、75℃まで加熱する。C相の成分を合わせ、D相に添加する。次いで、混合物CDをホモジナイズする。混合物ABを混合物CDに添加する。この混合物をホモジナイズし、室温までゆっくり冷却し、均質に撹拌したE相の成分の混合物を40℃の温度で添加する。
【0087】
極めて驚くべきことに、記載量の希釈剤で比較例V1と同等の粘度に事前に希釈した実施例2および実施例4の本発明によるオルガノポリシロキサンゲルは、液状ファンデーションの構成成分として、感覚特性の相当な改善をもたらすだけでなく、さらに、この改善のためには少量のシリコーンエラストマーで充分であることがわかる。以下に、エラストマーの含有量の重量パーセンテージ(表1)を考慮に入れた
ファンデーション中の比率(表6)を示す。
【0088】
【表6】
【0089】
【表7】