特許第5956095号(P5956095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5956095
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
   B62M 25/08 20060101AFI20160707BHJP
   B62J 25/00 20060101ALI20160707BHJP
   B60K 17/06 20060101ALI20160707BHJP
   B62K 19/40 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   B62M25/08
   B62J25/00 C
   B60K17/06 A
   B62K19/40
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-54810(P2016-54810)
(22)【出願日】2016年3月18日
【審査請求日】2016年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-254164(P2015-254164)
(32)【優先日】2015年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】宮地 一好
(72)【発明者】
【氏名】牧田 昇司
(72)【発明者】
【氏名】千葉 良平
(72)【発明者】
【氏名】飯田 薫
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−283903(JP,A)
【文献】 特開2006−117174(JP,A)
【文献】 特開2006−143177(JP,A)
【文献】 特開2010−195319(JP,A)
【文献】 特開2008−174109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 25/00−25/08
B62J 25/00
B60K 17/00−17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪と後輪との間に設けられて燃料の燃焼によって駆動力を発生させるエンジンと、
前記エンジンの駆動力を互いに変速比の異なる複数の変速段を構成する複数のギア列によって回転速度を変速するトランスミッションと、
前記トランスミッションにおける前記ギア列を変更するためのシフトドラムを回転駆動させるためのシフトアクチュエータと、
前記エンジンの後方の上方に設けられて運転者が跨った状態で着座する着座シートとを備えた鞍乗り型車両であって、
前記着座シートの真下位置または同真下位置より後方に設けられるとともにこれらの位置に前記着座シートに跨った前記運転者の足を載せるための足置きステップを支持するステップブラケットとを備え、
前記シフトアクチュエータは、
駆動力を伝達するシフト駆動力伝達体を介して前記シフトドラムに連結された状態で前記ステップブラケットに支持されていることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
請求項1に記載した鞍乗り型車両において、
前記ステップブラケットは、
鋳物であることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した鞍乗り型車両において、さらに、
少なくとも前記エンジンを支持するフレームを備え、
前記ステップブラケットは、
前記フレームに取り付けられていることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項4】
請求項3に記載した鞍乗り型車両において、
前記ステップブラケットは、
前記フレームに対して片持ち梁状に延びる張出支持部を有しており、
前記張出支持部は、
前記シフトアクチュエータを支持することを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した鞍乗り型車両において、
前記シフトアクチュエータは、
前記ステップブラケットに対して上方側に支持されていることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した鞍乗り型車両において、
前記シフトアクチュエータは、
前記ステップブラケットに対して下方側に支持されていることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載した鞍乗り型車両において、
前記ステップブラケットに対して回転自在な状態で着脱自在に取り付けられる取付部、同取付部から延びて前記運転者の足による操作力を受けるペダル部および前記取付部から延びて前記シフト駆動力伝達体に着脱自在に連結される連結部がそれぞれ形成された足操作時用シフトペダルを有し、
前記シフトアクチュエータは、
前記シフト駆動力伝達体に対して着脱自在に構成されており、
前記シフト駆動力伝達体は、
前記足操作時用シフトペダルおよび前記シフトアクチュエータのうちの一方が選択的に取り付けられていることを特徴とする鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスミッションのギア列を変更するためのシフトアクチュエータを備えた自動二輪車である鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シートに跨った状態で着座して運転する自動二輪車に代表される鞍乗り型車両においては、エンジン(原動機)で発生した駆動力を駆動輪に伝達するために動力伝達装置が設けられている。動力伝達装置は、エンジンのクランクシャフトに対して接続および遮断しながらこのクランクシャフトの回転数を変速しつつ駆動輪に伝達する機械装置であり、主としてクラッチとトランスミッションによって構成されている。
【0003】
ここで、クラッチとは、エンジンのクランクシャフトに対して接続および遮断しながら同クランクシャフトの回転駆動力をトランスミッション側に伝達する機械装置である。また、トランスミッションとは、エンジンのクランクシャフトの回転数を複数の歯車の組合せによって構成される複数の変速段で変速させて駆動輪側に伝達する機械装置である。
【0004】
この場合、トランスミッションは、カム溝が形成されたシフトドラムを回転駆動することにより前記複数の変速段を変更するように構成されている。例えば、下記特許文献1には、シフトドラムを回転駆動するためのシフトアクチュエータが減速機構を介してクランクケースに取り付けられた構成の鞍乗り型車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−208766号公報
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された鞍乗り型車両においては、シフトアクチュエータがエンジンを有するクランクケースに取り付けられているため、エンジンおよびトランスミッションを他のモデル(車種)の鞍乗り型車両にも搭載しようとするとデザインや構造(例えば、フレームなど)上の相違から搭載できない場合があるという問題がある。また、シフトアクチュエータがエンジンを有するクランクケースに取り付けられているため熱や振動による影響を受け易いとともに、クランクケースの外側に張り出して設けられているため車両のコンパクト化が困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、エンジンやトランスミッションのレイアウトが異なる幅広いモデルにシフトアクチュエータを搭載することを可能にするとともに、エンジンからの熱や振動の影響を受け難くしてかつ車両をコンパクト化することができる鞍乗り型車両を提供することにある。
【発明の概要】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、前輪と後輪との間に設けられて燃料の燃焼によって駆動力を発生させるエンジンと、エンジンの駆動力を互いに変速比の異なる複数の変速段を構成する複数のギア列によって回転速度を変速するトランスミッションと、トランスミッションにおけるギア列を変更するためのシフトドラムを回転駆動させるためのシフトアクチュエータと、エンジンの後方の上方に設けられて運転者が跨った状態で着座する着座シートとを備えた鞍乗り型車両であって、着座シートの真下位置または同真下位置より後方に設けられるとともにこれらの位置に着座シートに跨った運転者の足を載せるための足置きステップを支持するステップブラケットとを備え、シフトアクチュエータは、駆動力を伝達するシフト駆動力伝達体を介してシフトドラムに連結された状態でステップブラケットに支持されていることにある。この場合、シフトアクチュエータには、シフトアクチュエータ自体が直接ステップブラケットに支持されている場合と、シフトアクチュエータの回転駆動力を減速する減速機を介してステップブラケットに支持されている場合とを含むものである。
【0009】
このように構成した本発明の特徴によれば、鞍乗り型車両は、シフトアクチュエータが足置きステップを支持するステップブラケットに支持された状態でシフト駆動力伝達体を介してシフトドラムに連結されるため、エンジンおよびトランスミッションの物理的構成上の制限が減少してモデル間での搭載の自由度が向上する。また、本発明に係る鞍乗り型車両は、シフトアクチュエータが着座シートの真下位置または同真下位置より後方に設けられるとともにこれらの位置に運転者の足を載せるための足置きステップを支持するステップブラケットによって支持されている。すなわち、本発明に係る鞍乗り型車両は、シフトアクチュエータが熱や振動の発生源となるエンジンから離れた位置に設けられるとともに比較的スペースに余裕があるエンジンの後方のステップブラケットの周辺に配置されるため、エンジンからの熱や振動の影響が受け難くなるとともに車両の構成をコンパクト化することができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記鞍乗り型車両において、ステップブラケットは、鋳物であることにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、鞍乗り型車両は、ステップブラケットが鋳物で構成されているため、シフトアクチュエータに伝達される熱や振動を効果的に減衰させることができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記鞍乗り型車両において、さらに、少なくともエンジンを支持するフレームを備え、ステップブラケットは、フレームに取り付けられていることにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、鞍乗り型車両は、少なくともエンジンを支持するフレームにステップブラケットが取り付けられているため、ステップブラケット、延いてはシフトアクチュエータを安定的に支持することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記鞍乗り型車両において、ステップブラケットは、フレームに対して片持ち梁状に延びる張出支持部を有しており、張出支持部は、シフトアクチュエータを支持することにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、鞍乗り型車両は、ステップブラケットが、フレームに対して片持ち梁状に延びる張出支持部を有するとともに、この張出支持部にシフトアクチュエータが支持されているため、エンジンを支持するフレームから伝わる熱量を抑えることができシフトアクチュエータの熱影響を抑えることができる。また、本発明によれば、張出支持部にシフトアクチュエータが設けられることによってエンジンから離隔した位置にシフトアクチュエータが設けられるため、エンジンからの直接の伝熱影響を抑えることができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記鞍乗り型車両において、シフトアクチュエータは、ステップブラケットに対して上方側に支持されていることにある。
【0017】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、鞍乗り型車両は、シフトアクチュエータがステップブラケットに対して上方側に設けられているため、路面上に存在する障害物との接触や着水などによる汚損を受け難くすることができる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記鞍乗り型車両において、シフトアクチュエータは、ステップブラケットに対して下方側に支持されていることにある。
【0019】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、鞍乗り型車両は、シフトアクチュエータがステップブラケットに対して下方側に設けられているため、鞍乗り型車両の重心を下げて安定化させることができる。
【0020】
また、本発明の他の特徴は、前記鞍乗り型車両において、ステップブラケットに対して回転自在な状態で着脱自在に取り付けられる取付部、同取付部から延びて運転者の足による操作力を受けるペダル部および取付部から延びてシフト駆動力伝達体に着脱自在に連結される連結部がそれぞれ形成された足操作時用シフトペダルを有し、シフトアクチュエータは、シフト駆動力伝達体に対して着脱自在に構成されており、シフト駆動力伝達体は、足操作時用シフトペダルおよびシフトアクチュエータのうちの一方が選択的に取り付けられていることにある。
【0021】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、鞍乗り型車両は、シフトドラムに連結されているシフト駆動力伝達体がシフトアクチュエータおよび足操作時用シフトペダルのうちの一方に連結されるため、万一、シフトアクチュエータが故障した場合であっても運転者は足操作時用シフトペダルをステップブラケットに取り付けることで自力でギア変更を行って走行させることができる。すなわち、本発明に係る鞍乗り型車両においては、ステップブラケットにシフトアクチュエータを取り付けることで足操作時用シフトペダルも操作性を確保しながら簡単にシフトドラムに連結させることができ、装置構成を大型化および複雑化させることなく両者を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る鞍乗り型車両の全体構成の概略を示す側面図である。
図2図1に示す鞍乗り型車両の全体構成の概略を示す一部破断平面図である。
図3図1に示す鞍乗り型車両における動力伝達装置の全体構成の概略を模式的に示す断面図である。
図4図1に示す鞍乗り型車両におけるシフト駆動力伝達体、シフトドラム駆動ユニットおよびステップブラケットの構成の概略を示す部分側面拡大図である。
図5図2に示す鞍乗り型車両におけるシフト駆動力伝達体、シフトドラム駆動ユニットおよびステップブラケットの構成の概略を示す部分切欠き平面拡大図である。
図6図1に示す鞍乗り型車両におけるステップブラケットの全体構成の概略を示す平面図である。
図7】(A),(B)はトランスミッションがニュートラル状態においてエンジンを空吹かしした場合における振動の大きさをそれぞれ示しており、(A)はシフトドラム駆動ユニットをステップブラケットに取り付けた場合の振動の大きさを示しており、(B)はシフトドラム駆動ユニットをメインフレーム105に取り付けた場合の振動の大きさを示している。
図8】(A),(B)は鞍乗り型車両の発進時における振動の大きさをそれぞれ示しており、(A)はシフトドラム駆動ユニットをステップブラケット160に取り付けた場合の振動の大きさを示しており、(B)はシフトドラム駆動ユニットをメインフレーム105に取り付けた場合の振動の大きさを示している。
図9】(A),(B)はトランスミッションの変速段を1速から2速に変速させた場合における振動の大きさをそれぞれ示しており、(A)はシフトドラム駆動ユニットをステップブラケット160に取り付けた場合の振動の大きさを示しており、(B)はシフトドラム駆動ユニットをメインフレームに取り付けた場合の振動の大きさを示している。
図10】本発明の変形例に係る鞍乗り型車両におけるシフト駆動力伝達体、シフトドラム駆動ユニットおよびステップブラケットの構成の概略を示す部分側面拡大図である。
図11図10に示す本発明の変形例に係る鞍乗り型車両におけるステップブラケットの全体構成の概略を示す平面図である。
図12】本発明の他の変形例に係る鞍乗り型車両におけるシフト駆動力伝達体、シフトドラム駆動ユニットおよびステップブラケットの構成の概略を示す部分拡大図である。
図13】本発明の他の変形例に係る鞍乗り型車両におけるシフト駆動力伝達体、シフトドラム駆動ユニットおよびステップブラケットの構成の概略を示す部分側面拡大図である。
図14図13に示した本発明の他の変形例に係る鞍乗り型車両におけるシフト駆動力伝達体、シフトドラム駆動ユニットおよびステップブラケットの構成の概略を示す部分切欠き平面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る鞍乗り型車両の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る鞍乗り型車両100の全体構成の概略を模式的に示す側面図である。また、図2は、図1に示す鞍乗り型車両100の全体構成の概略を模式的に示す一部破断平面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この鞍乗り型車両100は、ユーザが跨った状態で乗車する所謂鞍乗り型の二輪自動車両(所謂オートバイ)である。
【0024】
(鞍乗り型車両100の構成)
鞍乗り型車両100は、フレーム101を備えている。フレーム101は、鞍乗り型車両100の骨格を構成する部品であり、複数の鉄製のパイプや板材を組み合わせて形成されている。このフレーム101は、主として、ヘッドパイプ(図示せず)、メインフレーム105およびシートレール109をそれぞれ備えて構成されている。ヘッドパイプは、鞍乗り型車両100の前輪102をフロントフォーク103を介して支持する筒状の部分である。フロントフォーク103は、ヘッドパイプに対して鞍乗り型車両100の左右方向に回転可能に形成されるとともに、上端部には鞍乗り型車両100の進行方向を操舵するためのハンドル104が設けられている。
【0025】
メインフレーム105は、エンジン120の上方を通ってフレーム101の強度を決定づけるフレーム101の中枢部分であり、鞍乗り型車両100の前方から後方に向かって延びた後、車両中央部で下方に屈曲した形状に形成されている。このメインフレーム105は、前側部分の上方に燃料タンク106を支持するとともに、メインフレーム105の後端部105aにスイングアーム107およびステップブラケット160をそれぞれ支持している。スイングアーム107は、鞍乗り型車両100の後輪108を後端部105aを基点として上下動自在な状態で支持している。また、メインフレーム105は、エンジン120および動力伝達装置124を下垂した状態で支持している。
【0026】
シートレール109は、主として、着座シート110、荷台(符号省略)およびテールランプ(符号省略)をそれぞれ支持する部分であり、メインフレーム105の後方に延びて形成されている。着座シート110は、鞍乗り型車両100の運転者が跨った状態で着座するための部品であり、クッション部材で構成されている。
【0027】
エンジン120は、燃料タンク106から供給される燃料の燃焼によって回転駆動力を発生させる原動機である。具体的には、エンジン120は、筒状に形成されたシリンダ(図示せず)内に燃料と空気とからなる混合気を導入するとともに、この混合気を点火プラグ(図示せず)によって点火して爆発させることによりピストン(図示せず)をシリンダ内で往復運動させてピストンに連結されるクランクシャフト(図示せず)に回転駆動力を発生させる所謂レシプロエンジンである。クランクシャフトの回転駆動力は、クランクシャフトの端部に取り付けられたプライマリードライブギア121を介して動力伝達装置124におけるクラッチ125に伝達される。
【0028】
なお、本実施形態においては、エンジン120は、所謂4ストロークエンジンを想定しているが、所謂2ストロークエンジンであってもよいことは当然である。また、本実施形態においては、エンジン120は、シリンダが1つ設けられた単気筒エンジンを想定しているが、2気筒以上のエンジンであってもよいことは当然である。
【0029】
クランクシャフトは、クランクケース122内に収容されている。クランクケース122は、クランクシャフトのほかに動力伝達装置124を構成するトランスミッション132やシフトドラム136などの一部の部品を保持して収容するエンジン120の一部を構成する外筐である。このクランクケース122は、アルミニウム合金のダイキャスト成形加工によって成形されており、エンジン120のピストンを収容するシリンダブロック123と別体で構成されている。
【0030】
動力伝達装置124は、図3に示すように、エンジン120により発生された回転駆動力を複数の変速段で変速して伝達する機械装置であり、主として、クラッチ125およびトランスミッション132によって構成されている。
【0031】
クラッチ125は、エンジン120で発生させた回転駆動力の伝達経路上におけるエンジン120とトランスミッション132との間に配置されてエンジン120が発生させた回転駆動力をトランスミッション132に対して伝達および遮断を行なう機械装置である。このクラッチ125は、詳しくは、図3に示すように、トランスミッション132から軸状に延びるメインシャフト126の一方(図示右側)の端部側に設けられている。なお、図3においては、ハッチングを省略している。
【0032】
クラッチ125は、アルミニウム合金材を有底円筒状に成形したクラッチハウジング127内に互いに押し付け合いまたは離間する複数のフリクションプレート128およびクラッチプレート129をそれぞれ備えている。この場合、フリクションプレート128はエンジン120の回転駆動とともに回転駆動するクラッチハウジング127に保持されており、クラッチプレート129はメインシャフト126に連結されたクラッチハブ130に保持されている。
【0033】
このクラッチ125は、メインシャフト126内を貫通するプッシュロッド131が図示しないクラッチアクチュエータによって図示右側に押圧されることによりフリクションプレート128とクラッチプレート129とが離隔してエンジン120の駆動力をトランスミッション132に伝達しない遮断状態となる。また、クラッチ125は、プッシュロッド131がクラッチアクチュエータによって図示左側に引き込まれることによりフリクションプレート128とクラッチプレート129とが押し合ってエンジン120の駆動力をトランスミッション132に伝達する接続状態となる。なお、クラッチアクチュエータは、電動モータで構成されており、図示しないTCU(Transmission Control Unit)によって作動が制御される。
【0034】
ここで、TCUは、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、ROMなどに予め記憶された図示しない制御プログラムに従って動力伝達装置124の作動を総合的に制御する。より具体的には、TCUは、クラッチ125の接続および切断の制御、およびトランスミッション132におけるシフトアップおよびシフトダウンの各変速動作の制御をそれぞれ実行する。この場合、TCUは、クラッチアクチュエータをPWM制御によって作動を制御する。
【0035】
トランスミッション132は、エンジン120から発生した回転駆動力を複数の変速段(例えば、5段変速)で変速して後輪108に伝達するための機械装置である。このトランスミッション132は、クラッチ125を介してエンジン120のクランクシャフトに繋がるメインシャフト126とこのメインシャフト126と平行に延びて後輪108に繋がる図示しないカウンターシャフトとの間で互いに変速比の異なる複数の変速段を構成する複数のギア列133が設けられて構成されている。
【0036】
ギア列133は、それぞれメインシャフト126に設けられた複数の駆動側ギア134とカウンターシャフトに設けられた複数の従動側ギア(図示せず)とでそれぞれ構成されており、これらの駆動側ギア134と従動側ギアとは、互いに対向するギア同士が対を構成して常に噛み合っている。この場合、これらの駆動側ギア134および従動側ギアのうちの一部の駆動側ギア134および従動側ギアにはシフトフォーク135が挿し込まれており、このシフトフォーク135によってメインシャフト126上およびカウンターシャフト上をそれぞれスライド変位して駆動側ギア134同士および従動側ギア同士が互いにドッグクラッチ方式で連結および分離して変速段が形成される。
【0037】
シフトフォーク135は、スライド変位可能な駆動側ギア134および従動側ギアを軸線方向に押圧してスライドさせて変速段を形成させるためのフォーク状の部品であり、シフトドラム136に支持されている。シフトドラム136は、シフトフォーク135をメインシャフト126およびカウンターシャフトに沿って往復変位させるための円柱状の部品である。より具体的には、シフトドラム136は、図4に示すように、円柱体の外周面上にシフトフォーク135の端部が嵌り込むカム溝136aが形成されており、シフトドラム136の回転駆動によってカム溝136aに倣ってシフトフォーク135を軸線方向に沿ってスライド変位させる。
【0038】
このシフトドラム136は、シフトシャフト137が連結された状態でクランクケース122に回転自在に支持されるとともに、一方の端部に角度センサ136bが設けられている。角度センサ136bは、シフトドラム136の回転角を検出するための検出器であり、前記TCUに接続されている。
【0039】
シフトシャフト137は、後述するシフトドラム駆動ユニット150によって回転駆動することによりシフトドラム136を所定の回転角度位置に回転駆動させるための部品であり、鋼材を棒状に形成して構成されている。このシフトシャフト137は、シフトドラム136に対して平行な向きでクランクケース122に回転自在な状態で支持されている。この場合、シフトシャフト137は、一方(図示右側)の端部がリターンスプリング137aを介してシフトドラム136に連結されるとともに、他方(図示左側)の端部がクランクケース122を貫通してクランクケース122の外部に突出している。
【0040】
リターンスプリング137aは、シフトシャフト137を中立位置に戻すためのコイルスプリングである。また、クランクケース122の外部に突出したシフトシャフト137の先端部側には、シフト駆動力伝達体140を介してシフトドラム駆動ユニット150が連結されている。
【0041】
シフト駆動力伝達体140は、図4および図5にそれぞれ示すように、シフトドラム駆動ユニット150が発生させる回転駆動力を伝達してシフトシャフト137を回転駆動させるための部品であり、主として、駆動側アーム141、駆動側連結具142、従動側アーム143、従動側連結具144および伝達体145をそれぞれ備えて構成されている。
【0042】
駆動側アーム141は、シフトドラム駆動ユニット150の出力軸に連結されてこの出力軸から径方向外側に延びる金属製の部品である。駆動側連結具142は、駆動側アーム141の先端部に回動自在な状態で連結されてこの回動中心から径方向外側に延びる金属製の部品である。従動側アーム143は、シフトシャフト137に連結されてこのシフトシャフト137から径方向外側に延びる金属製の部品である。従動側連結具144は、従動側アーム143の先端部に回動自在な状態で連結されてこの回動中心から径方向外側に延びる金属製の部品である。伝達体145は、駆動側連結具142と従動側連結具144とを互いに連結する金属製の棒体であり、両端部がそれぞれ駆動側連結具142および従動側連結具144に対してネジ嵌合している。すなわち、シフト駆動力伝達体140は、リンク機構で構成されている。
【0043】
シフトドラム駆動ユニット150は、シフトドラム136を回転駆動させて所定の回転角度位置に位置決めするための機械装置である。このシフトドラム駆動ユニット150は、主として、シフトアクチュエータ151および減速機152をそれぞれ備えて構成されている。
【0044】
シフトアクチュエータ151は、シフトドラム136を回転駆動させることによって回転角度に応じたギア列133からなる変速段の組替えを行うための原動機であり、前記TCUによって作動が制御される電動モータで構成されている。この場合、シフトアクチュエータ151は、ブラシレスモータでもよいが、本実施形態においてはブラシ付きDCモータで構成されている。このシフトアクチュエータ151は、減速機152を収めるユニットケース155に取り付けられている。なお、TCUは、シフトアクチュエータ151をPWM制御によって作動をそれぞれ制御する。
【0045】
減速機152は、シフトアクチュエータ151の回転駆動力を減速して出力するための機械装置であり、シフトアクチュエータ151の回転駆動力を減速するギア列(図示せず)およびこのギア列によって回転駆動する出力軸153がそれぞれユニットケース155内に収容されて構成されている。この場合、出力軸153は、両端部がユニットケース155から露出して収容されており、一方の端部に駆動側アーム141が連結されるとともに、他方の端部に角度センサ154が取り付けられている。角度センサ154は、出力軸153の回転角度位置を検出するための検出器であり、前記TCUに接続されている。なお、角度センサ154は、出力軸153に代えてシフトシャフト137に取り付けることもできる。
【0046】
ユニットケース155は、前記ギア列および出力軸153をそれぞれ収容するとともにシフトアクチュエータ151および角度センサ154をそれぞれ支持する外筐であり、アルミニウム合金のダイキャスト加工によって成形されている。このシフトドラム駆動ユニット150は、ステップブラケット160に支持されている。
【0047】
ステップブラケット160は、図6に示すように、足置きステップ170およびシフトドラム駆動ユニット150をそれぞれ支持するための部品であり、鞍乗り型車両100の前後方向に延びる板状に形成されている。このステップブラケット160は、主として、ステップ支持部161およびシフトアクチュエータ支持部164を備えている。
【0048】
ステップ支持部161は、足置きステップ170を支持する部分であり、メインフレーム105の後端部105aから後方に延びる板状に形成されている。このステップ支持部161には、メインフレーム105側が二股に分岐した各先端部に本体取付部162が形成されるとともに、本体取付部162の反対側にステップ取付部163が形成されている。
【0049】
本体取付部162は、ステップブラケット160をフレーム101に取り付けるための部分であり、メインフレーム105の後端部105aにボルトによって取り付けるための2つの貫通孔を備えて構成されている。この本体取付部162は、ステップ支持部161の端部のほかに、シフトアクチュエータ支持部164の端部にも形成されている。ステップ取付部163は、足置きステップ170を取り付けるための部分であり、足置きステップ170の取付部が貫通する貫通孔を備えて構成されている。
【0050】
シフトアクチュエータ支持部164は、シフトドラム駆動ユニット150を支持する部分であり、ステップブラケット160の上方にシフトドラム駆動ユニット150を取り付けるためにステップ支持部161における本体取付部162側から上方に延びる板状に形成されている。このシフトアクチュエータ支持部164は、ステップ支持部161側とは反対側の先端部に前記本体取付部162が形成されているとともに、シフトアクチュエータ支持部164の中央部に2つのシフトアクチュエータ取付部165がそれぞれ形成されている。シフトアクチュエータ取付部165は、シフトドラム駆動ユニット150を取り付けるための部分であり、ユニットケース155をボルトによって取り付けるための2つの貫通孔を備えて構成されている。
【0051】
このステップブラケット160は、ステップ支持部161とシフトアクチュエータ支持部164とがアルミニウム合金のダイキャスト加工によって一体的に成形されている。そして、ステップブラケット160は、着座シート110に着座する運転者の両足に対応して鞍乗り型車両100の左右の側面において着座シート110の真下位置にそれぞれ設けられている。本実施形態においては、ステップブラケット160は、フレーム101におけるメインフレーム105の後端部105aに後方に延びる状態で取り付けられている。これにより、シフトドラム駆動ユニット150は、メインフレーム105の後方であってかつステップブラケット160の上方に設けられる。この場合、シフト駆動力伝達体140は、メインフレーム105を跨って配置されることになる。
【0052】
足置きステップ170は、着座シート110上に着座する運転者の両足をそれぞれ支持するための部品であり、金属製の棒体によって構成されている。この足置きステップ170は、鞍乗り型車両100における幅方向両側に張り出した状態で設けられる。すなわち、ステップブラケット160は、鞍乗り型車両100の左右の両側面にそれぞれ設けられる。この場合、シフトアクチュエータ支持部164は、シフトドラム駆動ユニット150が取り付けられる側のステップブラケット160にのみ形成される。
【0053】
(鞍乗り型車両100の作動)
次に、上記のように構成した鞍乗り型車両100の作動について説明する。この鞍乗り型車両100は、運転者のスイッチ操作によるシフト操作やTCUの判断によってトランスミッション132における変速段の変更、すなわち、シフトアップまたはシフトダウンを行いながら走行する。
【0054】
このトランスミッション132における変速段の変更処理においては、TCUは現状の変速段に対する目的とする変速段に応じてシフトアクチュエータ151を所定量だけ正転または逆転させる。これにより、シフトドラム駆動ユニット150は、シフト駆動力伝達体140を介してシフトシャフト137を回転駆動させる。この結果、トランスミッション132は、シフトシャフト137の回転駆動によってシフトドラム136が回転駆動してギア列133の組替えが実行されて変速段の変更が行なわれる。この場合、TCUは、角度センサ136b,154からの検出信号を用いてシフトドラム136およびシフトシャフト137の回転角度を検出しながらシフトアクチュエータ151の回転駆動量を制御する。
【0055】
このような鞍乗り型車両100の走行状態において、シフトドラム駆動ユニット150は、メインフレーム105の後方にステップブラケット160を介して設けられているため、エンジン120からの熱および振動の影響を受け難いとともに走行時における前輪102および後輪108からの各振動の影響も抑えることができる。
【0056】
ここで、本発明者らによる実験結果について説明する。図7(A),(B)〜図9(A),(B)は、シフトドラム駆動ユニット150をステップブラケット160に取り付けた場合とメインフレーム105に取り付けた場合とにおけるシフトドラム駆動ユニット150の振動の大きさをそれぞれ計測したものである。図7(A),(B)〜図9(A),(B)において、横軸は時間であり、縦軸は振動の大きさである。
【0057】
図7(A),(B)はトランスミッション132がニュートラル状態においてエンジン120を空吹かしした場合における振動の大きさをそれぞれ示しており、(A)はシフトドラム駆動ユニット150をステップブラケット160に取り付けた場合であり、(B)はシフトドラム駆動ユニット150をメインフレーム105に取り付けた場合である。
【0058】
図8(A),(B)は鞍乗り型車両100の発進時における振動の大きさをそれぞれ示しており、(A)はシフトドラム駆動ユニット150をステップブラケット160に取り付けた場合であり、(B)はシフトドラム駆動ユニット150をメインフレーム105に取り付けた場合である。
【0059】
図9(A),(B)はトランスミッション132の変速段を1速から2速に変速させた場合における振動の大きさをそれぞれ示しており、(A)はシフトドラム駆動ユニット150をステップブラケット160に取り付けた場合であり、(B)はシフトドラム駆動ユニット150をメインフレーム105に取り付けた場合である。
【0060】
図7(A),(B)〜図9(A),(B)から明らかなように、シフトドラム駆動ユニット150は、ステップブラケット160に取り付けられることによりフレーム101に取り付けた場合に比べて振動の影響を抑えることができる。この場合、シフトアクチュエータ151は、ブラシ付きDCモータで構成されているが振動が減少することにより、正確な駆動制御を行い易くなるとともにブラシの摩耗を抑えることができる。
【0061】
なお、フレーム101にシフトドラム駆動ユニット150を取り付ける場合、フレーム101が鞍乗り型車両100における基本骨格となるため取付位置や取付方法などについて十分な検討や検証を行った専用設計しなければならず極めて煩雑である。しかし、本発明に係る鞍乗り型車両100においては、シフトドラム駆動ユニット150がステップブラケット160に取り付けられるため、容易に取り付けることができるとともに設計変更にも柔軟に対応することができる。
【0062】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、鞍乗り型車両100は、シフトアクチュエータ151が足置きステップ170を支持するステップブラケット160に支持された状態でシフト駆動力伝達体140を介してシフトドラム136に連結されるため、エンジン120および動力伝達装置124の物理的構成上の制限が減少してモデル(車種)間での搭載の自由度が向上する。また、鞍乗り型車両100は、シフトアクチュエータ151が着座シート110の真下位置に設けられるとともにこの位置に運転者の足を載せるための足置きステップ170を支持するステップブラケット160によって支持されている。すなわち、本発明に係る鞍乗り型車両100は、シフトアクチュエータ151が熱や振動の発生源となるエンジン120から離れた位置に設けられるとともに比較的スペースに余裕があるエンジン120の後方のステップブラケット160の周辺に配置されるため、エンジン120からの熱や振動の影響が受け難くなるとともに車両の構成をコンパクト化することができる。
【0063】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記各変形例の説明で参照する図においては、上記実施形態と同様の構成部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0064】
例えば、上記実施形態においては、ステップブラケット160は、着座シート110の真下の位置に設けた。しかし、ステップブラケット160は、着座シート110に着座する運転者の足が載せられる位置、すなわち、着座シート110の真下または同真下位置よりも後方に設けられてこれらの位置に足置きステップ170を位置させるように設けられていればよい。
【0065】
また、上記実施形態においては、ステップブラケット160は、ダイキャスト加工により中実の鋳物で構成した。これにより、ステップブラケット160は、エンジン120やフレーム101を介して伝達される熱や振動を吸収して低減することができる。しかし、ステップブラケット160は、中空の鋳物のほか、中実または中空の板金成形品で構成することもできる。これらによれば、ステップブラケット160は、軽量化することができる。
【0066】
また、上記実施形態においては、ステップブラケット160は、フレーム101に取り付けた。しかし、ステップブラケット160は、フレーム101以外の物品、例えば、クランクケース122に取り付けることもできる。
【0067】
また、上記実施形態においては、ステップブラケット160は、ステップ支持部161およびシフトアクチュエータ支持部164を備えて構成した。これにより、ステップブラケット160は、ステップ支持部161の厚さを薄く形成できるなど外形をコンパクトに形成することができる。しかし、ステップブラケット160は、少なくともシフトアクチュエータ151および足置きステップ170を支持する構成であれば必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。
【0068】
したがって、ステップブラケット160は、例えば、ステップ支持部161がシフトアクチュエータ支持部164を兼ねる構成とすることもできる。具体的には、ステップブラケット160は、図10および図11にそれぞれに示すように、メインフレーム105に対して後方に片持ち梁状に延びる張出支持部166を備えて構成することができる。
【0069】
張出支持部166は、足置きステップ170およびシフトドラム駆動ユニット150をそれぞれ支持するための部分であり、メインフレーム105の後端部105aから後方に延びる板状に形成されている。この張出支持部166には、メインフレーム105側が二股に分岐した各先端部に本体取付部162が形成されるとともに、本体取付部162の反対側にステップ取付部163が形成されている。この場合、ステップ取付部163は、本変形例においては、足置きステップ170をステップブラケット160の外側面側に折り畳み自在に支持するための部分であり、互いに平行な2つの板状体がステップブラケット160の外側面からそれぞれ張り出して形成されている。そして、張出支持部166における図示上辺部には、シフトアクチュエータ取付部165が形成されている。
【0070】
このように構成したステップブラケット160によれば、フレーム101に対して片持ち梁状に延びた張出支持部166にシフトアクチュエータ151が支持されているため、フレーム101を介して伝わるエンジン120の熱量を抑えてシフトアクチュエータ151の熱影響を抑えることができる。また、このステップブラケット160によれば、エンジン120から離隔した位置にシフトアクチュエータ151を設けることができるため、エンジン120からの直接の伝熱影響も抑えることができる。
【0071】
また、上記実施形態においては、シフトドラム駆動ユニット150は、ステップブラケット160に対して上方に取り付けられている。これにより、鞍乗り型車両100は、シフトドラム駆動ユニット150がステップブラケット160に対して上方側に設けられているため、路面上に存在する障害物との接触や着水などによる汚損を受け難くすることができる。
【0072】
しかし、シフトドラム駆動ユニット150は、図12に示すように、ステップブラケット160に対して下方に取り付けることもできる。この場合、ステップブラケット160は、図示下方に向かって片持ち梁状の張出支持部166における図示左辺に2つの本体取付部162が形成されるとともに、張出支持部166の中央部に1つのステップ取付部163が形成されている。そして、張出支持部166における図示下辺には、2つのシフトアクチュエータ取付部165がそれぞれ形成されている。すなわち、シフトドラム駆動ユニット150は、ステップブラケット160から下垂した状態で支持されている。また、シフトドラム駆動ユニット150から延びるシフト駆動力伝達体140は、クランクケース122の下部部分に露出するシフトシャフト137に連結されている。
【0073】
このように構成した鞍乗り型車両100は、シフトドラム駆動ユニット150がステップブラケット160に対して下方側に設けられているため、鞍乗り型車両100の重心位置を下げて安定化させることができる。なお、図12に示す鞍乗り型車両100においては、フレーム101はダウンチューブ111を備えている。
【0074】
ダウンチューブ111は、メインフレーム105の下方に配置されるエンジン120および動力伝達装置124をそれぞれ下方から支持する部分であり、メインフレーム105の前側部分から下方に下垂した後、エンジン120および動力伝達装置124を各下面に沿って後方に延びてメインフレーム105の後端部105aに連結されている。
【0075】
また、上記実施形態においては、シフトアクチュエータ151は、減速機152を介してステップブラケット160に取り付けた。すなわち、シフトアクチュエータ151は、減速機152を含むシフトドラム駆動ユニット150としてステップブラケット160に取り付けた。しかし、シフトアクチュエータ151は、減速機152を省略して構成した場合には、直接ステップブラケット160に取り付けることができる。
【0076】
また、上記実施形態においては、シフト駆動力伝達体140は、シフトシャフト137を介してシフトドラム136に連結した。しかし、シフト駆動力伝達体140は、直接シフトドラム136に連結することもできる。
【0077】
また、上記実施形態においては、シフトドラム136は、シフト駆動力伝達体140を介してシフトドラム駆動ユニット150のみが連結されている。しかし、シフトドラム136は、図13および図14にそれぞれ示すように、シフト駆動力伝達体140を介して足操作時用シフトペダル180を連結するように構成することができる。
【0078】
ここで、足操作時用シフトペダル180は、シフトドラム駆動ユニット150に代えて運転者の足による操作によってシフトドラム136を回転駆動させるための金属製の部品であり、主として、取付部181、ペダル部182および連結部183によって構成されている。
【0079】
取付部181は、足操作時用シフトペダル180をステップブラケット160に取り付けるための部分でありステップブラケット160に形成されるペダル支持部167に摺動可能な状態で嵌合するリング状に形成されている。この取付部181は、ステップブラケット160に形成されるペダル支持部167に対して着脱可能に嵌合するように形成されている。なお、取付部181は、ステップブラケット160に直接取り付ける場合のほか、足置きステップ170を介して取り付ける場合も含むものである。
【0080】
ペダル部182は、運転者が足で操作する部分であり、取付部181から鞍乗り型車両100の前方に向かって下り傾斜で延びた後、足置きステップ170と平行な鞍乗り型車両100の車幅方向外側に屈曲して張り出した棒状に形成されている。
【0081】
連結部183は、シフト駆動力伝達体140に連結される部分であり、取付部181からシフト駆動力伝達体140の伝達体145側に延びて同駆動側連結具142に連結される棒状に形成されている。具体的には、連結部183は、取付部181から伝達体145側に延びる第1棒体とこの第1棒体から伝達体145側に延びて同伝達体145にネジ嵌合する第2棒体とがピンを介して互いに相対回転可能に連結されている。
【0082】
すなわち、この連結部183は、シフト駆動力伝達体140における駆動側連結具142を伝達体145から取り外すことによって伝達体145に対して着脱可能にネジ嵌合するように形成されている。なお、連結部183は、シフト駆動力伝達体140に連結される構成であればよいため、伝達体145以外の部分、例えば、駆動側連結具142に連結される構成でもよい。
【0083】
また、ステップブラケット160は、ペダル支持部167を備えている。ペダル支持部167は、足操作時用シフトペダル180の取付部181が回転摺動自在な状態で嵌合する部分であり、ステップブラケット160の内側面から円柱状に張り出して形成されている。また、ステップ取付部163は、前記図10および図11にそれぞれ示したステップ取付部と同様に、互いに平行な2つの板状体がステップブラケット160の外側面からそれぞれ張り出して形成されている。
【0084】
このように構成された足操作時用シフトペダル180は、シフトドラム駆動ユニット150に代えて使用される。すなわち、運転者は、シフトドラム駆動ユニット150に代えて足操作時用シフトペダル180を使用したいとき、例えば、シフトドラム駆動ユニット150の故障時や変速段の変更を自身の足操作によって行って運転を行いたいときには、シフトドラム駆動ユニット150とシフト駆動力伝達体140との連結状態を解消した後、ステップブラケット160およびシフト駆動力伝達体140に対してそれぞれ足操作時用シフトペダル180を装着する。
【0085】
具体的には、作業者(例えば、運転者)は、シフト駆動力伝達体140における駆動側連結具142を伝達体145から取り外しした後、足操作時用シフトペダル180の取付部181をステップブラケット160のペダル支持部167に取り付ける。次いで、作業者は、足操作時用シフトペダル180における連結部183をシフト駆動力伝達体140における伝達体145に取り付ける。この場合、作業者は、伝達体145から取り外された駆動側連結具142が駆動側アーム141を介してシフトアクチュエータ151に連結されているため、駆動側アーム141をシフトアクチュエータ151から取り外すとよい。
【0086】
これにより、運転者は、自身の足によるペダル部182の操作によってシフト駆動力伝達体140を介してシフトシャフト137、すなわち、シフトドラム136を回転駆動させることができる。すなわち、本発明に係る鞍乗り型車両100においては、ステップブラケット160の周辺にシフトアクチュエータ151を取り付けることで足操作時用シフトペダル180も操作性を確保しながら簡単にシフトドラム136に連結させることができ、装置構成を大型化および複雑化させることなく両者を設けることができる。
【0087】
なお、運転者は、足操作時用シフトペダル180を使用後は、再びシフト駆動力伝達体140に対してシフトアクチュエータ151を連結しなおすこともできる。また、シフト駆動力伝達体140に連結させていない場合の足操作時用シフトペダル180は、鞍乗り型車両100内(例えば、着座シート110下の収納ボックス内)に収納しておくことができる。また、図11においては、駆動側アーム141を二点鎖線で示している。また、図12においては、駆動側アーム141の図示を省略するとともに出力軸153を二点鎖線で示している。
【符号の説明】
【0088】
100…鞍乗り型車両、101…フレーム、102…前輪、103…フロントフォーク、104…ハンドル、105…メインフレーム、105a…後端部、106…燃料タンク、107…スイングアーム、108…後輪、109…シートレール、110…着座シート、111…ダウンチューブ、
120…エンジン、121…プライマリドリブンギア、122…クランクケース、123…シリンダブロック、124…動力伝達装置、125…クラッチ、126…メインシャフト、127…クラッチハウジング、128…フリクションプレート、129…クラッチプレート、130…クラッチハブ、131…プッシュロッド、132…トランスミッション、133…ギア列、134…駆動側ギア、135…シフトフォーク、136…シフトドラム、136a…カム溝、136b…角度センサ、137…シフトシャフト、137a…リターンスプリング、
140…シフト駆動力伝達体、141…駆動側アーム、142…駆動側連結具、143…従動側アーム、144…従動側連結具、145…伝達体、
150…シフトドラム駆動ユニット、151…シフトアクチュエータ、152…減速機、153…出力軸、154…角度センサ、155…ユニットケース、
160…ステップブラケット、161…ステップ支持部、162…本体取付部、163…ステップ取付部、164…シフトアクチュエータ支持部、165…シフトアクチュエータ取付部、166…張出支持部、167…ペダル支持部、
170…足置きステップ、
180…足操作時用シフトペダル、181…取付部、182…ペダル部、183…連結部。
【要約】
【課題】エンジンやトランスミッションのレイアウトが異なる幅広いモデルにシフトアクチュエータを搭載することを可能にするとともに、エンジンからの熱や振動の影響を受け難くしてかつ車両をコンパクト化することができる鞍乗り型車両を提供する。
【解決手段】鞍乗り型車両100は、フレーム101を備えている。フレーム101は、エンジン120およびトランスミッション132を支持するとともに運転者が着座する着座シート110を支持する。トランスミッション132は、変速段を構成するギア列を変更するシフトドラム136を備えており、このシフトドラム136にシフトシャフト137およびシフト駆動力伝達体140を介してシフトアクチュエータ151を備えたシフトドラム駆動ユニット150が連結されている。シフトドラム駆動ユニット150は、着座シート110の下方位置で足置きステップ170を支持するステップブラケット160に支持されている。
【選択図】 図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図10
図11
図12
図13
図14
図7
図8
図9