(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5956097
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】電子機器の冷却装置
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20160707BHJP
F25D 9/00 20060101ALI20160707BHJP
H01L 23/44 20060101ALI20160707BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 A
F25D9/00 F
H01L23/44
H05K7/20 W
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-507716(P2016-507716)
(86)(22)【出願日】2014年12月5日
(86)【国際出願番号】JP2014082342
【審査請求日】2016年2月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514215055
【氏名又は名称】株式会社ExaScaler
(74)【代理人】
【識別番号】100102406
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100100240
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 孝
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 元章
【審査官】
宮下 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開平5−145208(JP,A)
【文献】
実開平3−63993(JP,U)
【文献】
実開昭62−126844(JP,U)
【文献】
特表2002−505033(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0070601(US,A1)
【文献】
特表2015−534164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
F25D 9/00
H01L 23/44
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子機器を冷却液中に浸漬して直接冷却する冷却装置であって、
底壁及び側壁によって形成される開放空間を有する冷却槽と、
前記冷却槽内に複数の内部隔壁を設けることにより前記開放空間を分割して形成される、配列された複数の収納部であって、各収納部に少なくとも1つの電子機器を収納するための収納部と、
前記複数の収納部の各々に形成される、冷却液の流入開口及び流出開口と、
を有し、
前記流入開口は、各収納部の底部又は側面に形成され、前記流出開口は、各収納部を流通する前記冷却液の液面近傍に形成されている、
冷却装置。
【請求項2】
前記流出開口及び/又は前記流入開口は、各収納部を形成している前記複数の内部隔壁が互いに交差する位置もしくはその近傍に形成されている、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記底壁を貫通し前記液面近傍まで延びる流出管をさらに有し、該流出管の一端に前記流出開口が形成されている、請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記流出管の長手方向に1つ以上の小孔が形成されている、請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記底壁を貫通し前記液面近傍まで延びる流入管をさらに有し、
前記流入管は、該流入管の長手方向に複数のノズルを有し、該複数のノズルの各々に前記流入開口が形成されている、請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記底壁を貫通し前記液面近傍まで延びる流入管及び流出管をさらに有し、
前記流入管は、該流入管の長手方向に複数のノズルを有し、該複数のノズルの各々に前記流入開口が形成され、
前記流出管の上端に前記流出開口が形成され、
前記流入管及び前記流出管が、各収納部を形成している前記複数の内部隔壁が互いに交差する位置もしくはその近傍に、交互に配置されている、
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記底壁を貫通し前記液面近傍まで延びる流入管及び流出管をさらに有し、
前記流入管は、該流入管の長手方向に複数のノズルを有し、該複数のノズルの各々に前記流入開口が形成され、
前記流出管の上端に前記流出開口が形成され、
前記流入管及び前記流出管が、該流入管内に該流出管を内包する二重管を構成している、
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記二重管が、各収納部を形成している前記複数の内部隔壁が互いに交差する位置もしくはその近傍に配置されている、請求項7に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記冷却液が、主成分として完全フッ素化物を含む、請求項1から8のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項10】
前記冷却槽は、各収納部の前記流入開口に向けて前記冷却液を分配するための入口と、
各収納部の前記流出開口を通った前記冷却液を集めるための出口とを有し、
前記出口と前記入口が、前記冷却槽の外部にある流通路により連結されており、
前記流通路中に、前記冷却液を移動させる少なくとも1つのポンプと、前記冷却液を冷やす熱交換器が設けられている、請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項11】
各収納部内の温度変化に応じた入力信号を受けて、各収納部の前記流入開口を通る前記冷却液の流量、又は前記流入管に設けられた各ノズルを通る前記冷却液の流量を調整する機構をさらに有している、請求項10に記載の冷却装置。
【請求項12】
各収納部内に液体用の第1の温度センサーを設けるとともに、予め設定された以上の温度が前記第1の温度センサーにより検知された場合に、該収納部内に収納された前記電子機器の運用を中止させ、又は前記電子機器への電源供給を遮断する機構をさらに有している、請求項1から11のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項13】
各収納部内に収納された電子機器内、又は各収納部内に収納された電子機器周辺部に第2の温度センサーを設けるとともに、予め設定された以上の温度が前記第2の温度センサーにより検知された場合に、前記電子機器の運用を中止させ、又は前記電子機器への電源供給を遮断する機構をさらに有している、請求項1から11のいずれかに記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器の冷却装置に係り、特に、スーパーコンピュータやデータセンター等の超高性能動作や安定動作が要求され、かつそれ自体からの発熱量が大きな電子機器を、効率的に冷却するための電子機器の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のスーパーコンピュータの性能の限界を決定する最大の課題の一つは消費電力であり、スーパーコンピュータの省電力性に関する研究の重要性は、既に広く認識されている。すなわち、消費電力当たりの速度性能(Flops/W)が、スーパーコンピュータを評価する一つの指標となっている。また、データセンターにおいては、データセンター全体の消費電力の45%程度を冷却に費やしているとされ、冷却効率の向上による消費電力の削減の要請が大きくなっている。
【0003】
スーパーコンピュータやデータセンターの冷却には、従来から空冷式と液冷式が用いられている。液冷式は、空気より格段に熱伝達性能の優れる液体を用いるため、一般的に冷却効率がよいとされている。例えば、東京工業大学が構築した「TSUBAME−KFC」では、合成油を用いた液浸冷却システムにより、4.50GFlops/Wを達成し、2013年11月、及び2014年6月発表の「Supercomputer Green500 List」において1位を獲得している。しかし、冷却液に粘性の高い合成油を用いているため、油浸ラックから取り出した電子機器から、そこに付着した油を完全に除去することが困難であり、電子機器のメンテナンス(具体的には、例えば調整、点検、修理、交換、増設。以下同様)が極めて困難であるという問題がある。更には、使用する合成油が、冷却系を構成するパッキン等を短期間に腐食させて漏えいするなどし、運用に支障を来す問題の発生も報告されている。
【0004】
他方、上記のような問題を生ずる合成油ではなく、フッ化炭素系冷却液を用いる液浸冷却システムが提案されている。具体的には、フッ化炭素系の冷却液(3M社の商品名「Novec(3M社の商標。以下同様)7100」、「Novec7200」、「Novec7300」で知られる、ハイドロフルオロエーテル(HFE)化合物)を用いる例である(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−187251号公報
【特許文献2】特表2012−527109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1が開示する冷却システムは、データセンターに設置されたラックに、サーバを収納する複数の容器が格納され、各容器内には複数のサーバが収納され、各容器の入口から出口に向かう液冷媒の流れを形成する冷媒流通機構が接続されている。このため、1つの容器内で、入口から出口に近いほど液冷媒の温度が高くなり、また、大きい体積の容器内に高密度に収納した電子機器によって液冷媒の流通が阻害され、温められた液冷媒が容器の中央付近に滞留しやすいため、容器内の温度分布が発生してしまい、サーバの収納位置によってサーバ自体の、或いはサーバ内の主要な半導体部品や電子部品間の冷却性能に大きな差が出てしまうという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2が開示する冷却システムは、1つ又はそれ以上の発熱する電子機器を収容する密封型モジュールの構成を採用している。このため、個々の密封型モジュールに冷却液を流通させるための機構全体が複雑となり、また、密封型モジュールから電子機器全体を簡単に取り出すことができないため、電子機器のメンテナンス性に劣るという問題がある。
【0008】
最近のスーパーコンピュータやデータセンター等で使用される電子機器には、冷却すべき対象がCPU(Central Processing Unit)以外にも、GPU(Graphics Processing Unit)、高速メモリ、チップセット、ネットワークユニット、バススイッチユニット、SSD(Solid State Drive)、交流−直流変換器、直流−直流電圧変換器等、多数存在しており、これら電子部品のいずれか1つもしくは複数、又はこれらの電子部品の組み合わせを、1枚又は複数枚のボードを搭載すること(例えば、1枚のマザーボードと、GPUを搭載した複数枚の汎用ボードを組み合わせて搭載すること)が多い。このため、例えば、データセンターなどで一般的な19インチラックのサイズのサーバを、液浸ラックに収納して液浸冷却する場合、サイズが高さ70〜90cm、幅45cm程度と大きくかつ重量があるサーバを、液浸ラックに差し込み又は抜き出すためには、吊り上げ用のクレーンを使用するなどしている。従って、従来の液浸冷却装置では、サイズが大きく重量のある電子機器の取り扱いが不便であり、その設置とメンテナンスに手間がかかるという問題がある。
【0009】
以上のように、従来の液浸冷却装置においては、冷却槽内の冷却液に温度分布が発生し、電子機器の収納位置によって電子機器の冷却性能に大きな差が出てしまうという問題がある。また、密封型モジュールに冷却液を流通させるための機構全体が複雑となり、電子機器のメンテナンス性に劣るという問題がある。さらに、サイズが大きく重量のある電子機器の取り扱いが不便であり、その設置とメンテナンスに手間がかかるという問題がある。
【0010】
従って、本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決し、複数の電子機器の冷却性能を向上させ、かつ冷却性能のばらつきを無くして安定化させた冷却装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、浸漬冷却における複数の電子機器の取り扱い性とメンテナンス性を向上させた冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明によれば、複数の電子機器を冷却液中に浸漬して直接冷却する冷却装置であって、底壁及び側壁によって形成される開放空間を有する冷却槽と、前記冷却槽内に複数の内部隔壁を設けることにより前記開放空間を分割して形成される、配列された複数の収納部であって、各収納部に少なくとも1つの電子機器を収納するための収納部と、前記複数の収納部の各々に形成される、冷却液の流入開口及び流出開口と、を有し、前記流入開口は、各収納部の底部又は側面に形成され、前記流出開口は、各収納部を流通する前記冷却液の液面近傍に形成されている、冷却装置が提供される。
【0012】
本発明に係る冷却装置の好ましい実施の形態において、前記流出開口及び/又は前記流入開口は、各収納部を形成している前記複数の内部隔壁が互いに交差する位置もしくはその近傍に形成されているよう構成してよい。
【0013】
また、本発明に係る冷却装置の好ましい実施の形態において、前記底壁を貫通し前記液面近傍まで延びる流出管をさらに有し、該流出管の一端に前記流出開口が形成されているよう構成してよい。
【0014】
さらに、本発明に係る冷却装置の好ましい実施の形態において、前記流出管の長手方向に1つ以上の小孔が形成されていてよい。
【0015】
また、本発明に係る冷却装置の好ましい実施の形態において、前記底壁を貫通し前記液面近傍まで延びる流入管をさらに有し、前記流入管は、該流入管の長手方向に複数のノズルを有し、該複数のノズルの各々に前記流入開口が形成されていてよい。
【0016】
さらに、本発明に係る冷却装置の好ましい実施の形態において、前記底壁を貫通し前記液面近傍まで延びる流入管及び流出管をさらに有し、前記流入管は、該流入管の長手方向に複数のノズルを有し、該複数のノズルの各々に前記流入開口が形成され、前記流出管の上端に前記流出開口が形成され、前記流入管及び前記流出管が、各収納部を形成している前記複数の内部隔壁が互いに交差する位置もしくはその近傍に、交互に配置されていてよい。
【0017】
また、本発明に係る冷却装置の好ましい実施の形態において、前記底壁を貫通し前記液面近傍まで延びる流入管及び流出管をさらに有し、前記流入管は、該流入管の長手方向に複数のノズルを有し、該複数のノズルの各々に前記流入開口が形成され、前記流出管の上端に前記流出開口が形成され、前記流入管及び前記流出管が、該流入管内に該流出管を内包する二重管を構成していてよい。
【0018】
さらに、本発明に係る冷却装置の好ましい実施の形態において、前記二重管が、各収納部を形成している前記複数の内部隔壁が互いに交差する位置もしくはその近傍に配置されていてよい。
【0019】
また、本発明に係る冷却装置の好ましい実施の形態において、前記冷却液が、主成分として完全フッ素化物を含むよう構成してよい。
【0020】
さらに、本発明に係る冷却装置の好ましい実施の形態において、前記冷却槽は、各収納部の前記流入開口に向けて前記冷却液を分配するための入口と、各収納部の前記流出開口を通った前記冷却液を集めるための出口とを有し、前記出口と前記入口が、前記冷却槽の外部にある流通路により連結されており、前記流通路中に、前記冷却液を移動させる少なくとも1つのポンプと、前記冷却液を冷やす熱交換器が設けられていてよい。
【0021】
また、本発明に係る冷却装置の好ましい実施の形態において、各収納部内の温度変化に応じた入力信号を受けて、各収納部の前記流入開口を通る前記冷却液の流量、又は前記流入管に設けられた各ノズルを通る前記冷却液の流量を調整する機構をさらに有していてよい。
【0022】
さらに、本発明に係る冷却装置の好ましい実施の形態において、各収納部内に液体用の第1の温度センサーを設けるとともに、予め設定された以上の温度が前記第1の温度センサーにより検知された場合に、該収納部内に収納された前記電子機器の運用を中止させ、又は前記電子機器への電源供給を遮断する機構をさらに有していてよい。
【0023】
また、本発明に係る冷却装置の好ましい実施の形態において、各収納部内に収納された電子機器内、又は各収納部内に収納された電子機器周辺部に第2の温度センサーを設けるとともに、予め設定された以上の温度が前記第2の温度センサーにより検知された場合に、前記電子機器の運用を中止させ、又は前記電子機器への電源供給を遮断する機構をさらに有していてよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る冷却装置によれば、底壁及び側壁によって形成される開放空間を有する冷却槽内に複数の内部隔壁を設けることにより、開放空間を分割して、配列された複数の収納部が形成される。そして、各収納部に少なくとも1つの電子機器が収納される。そして、複数の収納部の各々には、冷却液の流入開口及び流出開口が形成され、流入開口は、各収納部の底部又は側面に形成され、流出開口は、各収納部を流通する冷却液の液面近傍に形成されている。従って、冷却槽の開放空間の体積の約1/4の体積か、約1/4よりも小さい体積(例えば、開放空間の体積の約1/9(縦3×横3に分割する場合)、1/12(縦3×横4に分割する場合)、1/16(縦4×横4に分割する場合))の収納部に、従来よりも小さい幅(例えば、約1/2、1/3、1/4)の電子機器を収納して、冷却液を個別に流通させることにより、複数の電子機器を、個別に効率よく冷却することができる。換言すると、本発明においては、温められた冷却液を冷却槽の中央部からも流出させることができるので、温められた冷却液を冷却槽の側面から流出させる従来技術におけるように、冷却液が冷却槽の中央付近に滞留して、冷却槽内の電子機器の収納位置によって冷却性能に差が生じるのを避けることができる。従って、複数の電子機器の冷却性能を向上させ、かつ冷却性能のばらつきを無くして安定化させることができる。また、収納部に収納する電子機器のサイズを小さくできるので、電子機器の取り扱い性及びメンテナンス性を向上させることができる。なお、本明細書における「開放空間」を有する冷却槽には、電子機器の保守性を損なわない程度の簡素な密閉構造を有する冷却槽も含まれるものである。例えば、冷却槽の開口部に、パッキン等を介して天板を着脱可能に取り付ける構造は、簡素な密閉構造といえる。
【0025】
上記した本発明の目的及び利点並びに他の目的及び利点は、以下の実施の形態の説明を通じてより明確に理解される。もっとも、以下に記述する実施の形態は例示であって、本発明はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る冷却装置の全体構成を示す、部分断面を含む斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る冷却装置の要部の構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る冷却装置の要部の構成を示す平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る冷却装置の要部の構成を示す縦断面図である。
【
図5】冷却槽の出口と入口とを連結する流通路中に、駆動系と冷却系を設けた冷却装置の模式図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る冷却装置の要部の構成を示す平面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る冷却装置の要部の構成を示す縦断面図である。
【
図8】本発明のさらに他の実施形態に係る冷却装置の要部の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る冷却装置の好ましい実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態の説明では、電子機器として、CPU又はGPUからなるプロセッサを搭載したプロセッサボードを、一の面に3枚配置した構造の電子機器(1ユニット)を、合計16ユニット、冷却槽の各収納部に収納して冷却する、高密度冷却装置の構成を説明する。なお、これは例示であって、ボード当たりのプロセッサの数や種類(CPU又はGPU)は任意であり、また、高密度冷却装置における電子機器のユニット数も任意であり、本発明における電子機器の構成を限定するものではない。
【0028】
図1〜
図4を参照して、本発明の一実施形態に係る冷却装置10は冷却槽12を有し、冷却槽12の底壁12a及び側壁12bによって開放空間10aが形成されている。冷却槽12内に、縦方向の内部隔壁13a、13b、13c、13d、13eと、横方向の内部隔壁14a、14b、14c、14d、14eを設けることにより、開放空間10aを均等に16分割して、配列された16個の収納部15aa、15ab、15ac、15ad、15ba、15bb、15bc、15bd、15ca、15cb、15cc、15cd、15da、15db、15dc、15dd(以下、まとめて「収納部15aa〜15dd」と記載することがある。)が形成されている。そして、各収納部に少なくとも1つの電子機器100が収納される。冷却槽12の開放空間10a内には、冷却液11が液面19まで入れられている。収納部15aa、15ab、15ac、15ad、15ba、15bb、15bc、15bd、15ca、15cb、15cc、15cd、15da、15db、15dc、15ddの底部には、冷却液11の流入開口16aa、16ab、16ac、16ad、16ba、16bb、16bc、16bd、16ca、16cb、16cc、16cd、16da、16db、16dc、16dd(以下、まとめて「流入開口16aa〜16dd」と記載することがある。)が形成されている。
【0029】
また、収納部15aa〜15ddを流通する冷却液11の液面19近傍には、流出開口17aa、17ab、17ac、17ad、17ae、17ba、17bb、17bc、17bd、17be、17ca、17cb、17cc、17cd、17ce、17da、17db、17dc、17dd、17de、17ea、17eb、17ec、17ed、17ee(以下、まとめて「流出開口17aa〜17ee」と記載することがある。)が形成されている。
【0030】
図示の例において、流出開口は、各収納部を形成している複数の内部隔壁が互いに交差する位置もしくはその近傍に形成されている。例えば、
図1を参照すると、収納部15aaは、縦方向の内部隔壁13a、13bと、横方向の内部隔壁14a、14bによって形成されており、内部隔壁13aと内部隔壁14aが交差する点、内部隔壁13aと内部隔壁14bが交差する点、内部隔壁13bと内部隔壁14aが交差する点、及び内部隔壁13bと内部隔壁14bが交差する点にそれぞれ位置するように、流出開口17aa、17ba、17ab、17bbが形成されている。同様にして、
図2を参照すると、収納部15bbは、縦方向の内部隔壁13b、13cと、横方向の内部隔壁14b、14cによって形成されており、内部隔壁13bと内部隔壁14bが交差する点、内部隔壁13bと内部隔壁14cが交差する点、内部隔壁13cと内部隔壁14bが交差する点、及び内部隔壁13cと内部隔壁14cが交差する点にそれぞれ位置するように、流出開口17bb、17cb、17bc、17ccが形成されている。
【0031】
本実施形態では、流出開口は、冷却槽12の底壁12aを貫通し液面19近傍まで延びる流出管170の一端に形成されている。例えば、
図2を参照すると、収納部15bbに関し、流出開口17bb、17cb、17bc、17ccは、縦方向の内部隔壁13b、13cと、横方向の内部隔壁14b、14cによって形成されており、内部隔壁13bと内部隔壁14bが交差する点、内部隔壁13bと内部隔壁14cが交差する点、内部隔壁13cと内部隔壁14bが交差する点、及び内部隔壁13cと内部隔壁14cが交差する点にそれぞれ位置する流出管170の一端に形成されている。なお、流出管の他端には、底部開口18aa、18ab、18ac、18ad、18ae、18ba、18bb、18bc、18bd、18be、18ca、18cb、18cc、18cd、18ce、18da、18db、18dc、18dd、18de、18ea、18eb、18ec、18ed、18ee(以下、まとめて「底部開口18aa〜18ee」という場合がある。)が形成されている。
【0032】
流出開口が、各収納部を形成している複数の内部隔壁が互いに交差する位置に形成されている場合、各収納部に設けられる流出開口を、各収納部の四隅に分散して確保できるので有利である。例えば、収納部15bbでは、その四隅に配置される流出管170によって、流出開口17bb、17bc、17cb、及び17ccが形成されている。なお、このように流出開口が形成されている場合、1つの流出開口が複数の収納部にとっての共通の流出開口となりうる。例えば、流出開口17bbは、収納部15aaにとっての流出開口の一部であると同時に、収納部15ab、15ba、及び15bbにとっての流出開口の一部でもある。同様のことが、流出開口17bc、17cb、及び17ccについても当てはまる。ただし、各収納部について、流出管を設ける位置及び本数は任意であり、各収納部を形成している複数の内部隔壁が互いに交差する位置の近傍に流出管を1本又は複数本設けてよいことは勿論である。また、流出管は、内部隔壁と一体化されている必要はなく、内部隔壁から離れて配置された管であってもよい。
【0033】
また、流出管170には、
図2及び
図4に示すように、流出管170の長手方向に1つ以上の小孔171が形成されていてよい。これら小孔171は、後述するように、収納部の深さ方向の途中における冷却液11の流通を促進する。一方、流入開口16aa〜16ddは、図示のように円筒状の開口であることは必要でなく、例えば、複数のノズルを有するヘッダを円筒の一端に連結して、多数のノズルによって流入開口を形成してもよい。
【0034】
各収納部15aa〜15ddには、CPUを搭載したプロセッサボード110を1枚、GPUを搭載したプロセッサボード112を2枚の計3枚を、ボード120の一方の面上と他方の面上に搭載した電子機器100が収納され、冷却液11に浸漬されている。プロセッサボード110、112は、プロセッサに熱的に接続された放熱部材(放熱フィン)114を含む。プロセッサボード110、112上、及び電子機器100のボード120上には、プロセッサ以外に、周辺の電子部品が当然に搭載されているが、これら電子部品については図示を省略している。
【0035】
冷却槽12には、電子機器100の全体を浸漬するのに十分な量の冷却液11が、液面19まで入れられている。冷却液11としては、3M社の商品名「フロリナート(3M社の商標、以下同様)FC−72」(沸点56℃)、「フロリナートFC−770」(沸点95℃)、「フロリナートFC−3283」(沸点128℃)、「フロリナートFC−40」(沸点155℃)、「フロリナートFC−43」(沸点174℃)として知られる、完全フッ素化物(パーフルオロカーボン化合物)からなるフッ素系不活性液体を好適に使用することができるが、これらに限定されるものではない。なお、フロリナートFC−40、FC−43は、沸点が150℃よりも高く、極めて蒸発しにくいため、いずれかを冷却液に使用する場合、液面19の高さが長期間に亘って保たれ、有利である。
【0036】
本発明者は、完全フッ素化物が、高い電気絶縁性と、高い熱伝達能力を有し、不活性で熱的・化学的に安定性が高く、不燃性で、かつ酸素を含まない化合物であるためオゾン破壊係数がゼロである等の優れた特性を有している点に着目し、そのような完全フッ素化物を主成分として含む冷却液を、高密度の電子機器の浸漬冷却用の冷媒として使用する冷却システムの発明を完成し、特許出願している(特願2014−170616)。この先行出願において開示しているように、特に、フロリナートFC−43又はFC−40を冷却液に用いると、開放空間を有する冷却槽からの、冷却液11の蒸発による損失を大幅に低減しながら、小さい体積の冷却槽内に高密度に設置された複数の電子機器を効率よく冷却することができ、極めて有利である。ただし、他の種類の冷却液を選択することを、特に制限するものではない。
【0037】
冷却槽12には、各収納部15aa〜15ddに設けられた流入開口16aa〜16ddに向けて、分配管(図示せず)を介して冷却液11を分配するための入口16と、各収納部15aa〜15ddの流出開口17aa〜17eeを通った冷却液11を、集合管(図示せず)を介して集めるための出口18とが設けられている。
【0038】
図5を参照して、各収納部15aa〜15ddに収納された電子機器100が、動作中に所定の温度以下に保たれるよう、所望の温度に冷やされた冷却液11が連続的に各収納部15aa〜15dd内を流通するようにするために、冷却槽12の出口18から出た温められた冷却液11を、熱交換器で冷やし、冷えた冷却液を冷却槽12の入口16に戻す流通路30を構成するとよい。図示のとおり、冷却槽12の出口18と入口16が流通路30により連結されており、流通路30中に、冷却液11を移動させるポンプ40と、冷却液11を冷やす熱交換器90が設けられている。なお、流通路30を流れる冷却液11の流量を調整するための流量調整バルブ50と流量計70も、流通路30中に設けられている。
【0039】
ポンプ40は、動粘度が比較的大きい(室温25℃における動粘度が3cStを超える)液体を移動させる性能を備えていることが好ましい。例えば、冷却液11として、フロリナートFC−43又はFC−40を使用する場合、FC−43の動粘度は2.5〜2.8cSt程度であり、FC−40の動粘度は1.8〜2.2cSt程度だからである。流量調整バルブ50は、手動で動作させるものでよく、また、流量計70の計測値に基づき流量を一定に保つような調整機構を備えたものでもよい。加えて、熱交換器90は、循環式の各種の熱交換器(ラジエータ又はチラー)や冷却器でよい。
【0040】
次に、冷却装置10の動作について説明する。入口16から入った冷却液11は、図示しない分配管を介して、収納部15aa〜15ddの底部に形成された流入開口16aa〜16ddに向けて分配される。冷却液11は、流入開口16aa〜16ddから上方に吹き上がり、電子機器100のボード120上の3つのプロセッサボード112、110、112上に搭載されたCPU、GPU、及び周辺の電子部品(図示せず)を直接冷却する。例えば、
図2及び
図4に示すように、冷却液11は、流入開口16bbから吹き上がると、3つのプロセッサボード112、110、112上に搭載されたCPU及びGPUに熱的に接続された放熱部材114、並びに周辺の電子部品(図示せず)の表面から熱を奪い取りながら液面19に向けて上昇し、さらには流出開口17bb、17bc、17cb、17ccに向けて移動する。このとき、収納部15aa〜15ddの体積は、冷却槽12の開放空間10aの体積の約1/16の体積と小さく、そこに収納される電子機器100も、冷却槽12の幅の約1/4の幅と小さいため、冷却液11による電子機器100の冷却効率が極めてよく、また、電子機器100の周囲で冷却液11が滞留するのを有効に防ぐことができる。
【0041】
電子機器100から熱を奪い取って温められた冷却液11は、冷却槽12上の液面19の近傍に位置する流出開口17aa〜17eeを通り、流出管170内を下降し、底部開口18aa〜18eeを通り、集合管(図示せず)を介して出口18に集められる。このとき、流出管170の長手方向に1つ以上の小孔171が形成されていると、冷却液11がこれら小孔171を通って流出管170内へ流出する。従って、収納部の深さ方向の途中における冷却液11の流通が促進され、冷却液11が電子機器100のボード120全体により行き渡ることによって、より高い効率で周辺の電子部品(図示せず)を冷却することが可能となる。なお、図示した例において、各流出管170に、一定間隔で6つの小孔171が形成されているが、これは一例であって、当業者は小孔の個数や位置を任意に決定してよい。
【0042】
本実施形態の冷却装置10において、各収納部の温度を制御装置(図示せず)において常時モニターしておき、制御装置から送信される、収納部内の温度変化に応じた入力信号を受けて、各収納部15aa〜15ddの流入開口16aa〜16ddを通る冷却液11の流量を調整するための別の流量調整バルブ(図示せず)が、入口16から流入開口16aa〜16ddまでの各分配管(図示せず)中に設けられていてよい。このように構成した場合、各収納部を流通する冷却液の流量を個別に調整することによって、冷却液による電子機器の冷却強度を個別に管理することができるので、複数の電子機器の冷却性能をきめ細かく管理することができる。
【0043】
本実施形態の冷却装置10において、各収納部15aa〜15dd内に、液体用の第1の温度センサー(図示せず)を設けるとともに、予め設定された以上の温度が第1の温度センサーにより検知された場合に、当該温度の検知された収納部に収納された電子機器100の運用を中止させ、又は電子機器100への電源供給を遮断する機構(図示せず)を、さらに有していてよい。かかるフェールセーフ機構を付加的に設けることにより、各収納部を流通する冷却液11に設定温度を超える異常な温度上昇が起こらないようにし、電子機器の破損とフッ化炭素からの有害な化合物の発生を防止することができる。
【0044】
また、フェールセーフ機構の他の構成として、本実施形態の冷却装置10において、各収納部15aa〜15dd内に収納された電子機器100内、又は各収納部15aa〜15dd内に収納された電子機器100周辺部に第2の温度センサー(図示せず)を設けるとともに、予め設定された以上の温度が第2の温度センサーにより検知された場合に、電子機器100の運用を中止させ、又は電子機器100への電源供給を遮断する機構(図示せず)を、さらに有していてよい。
【0045】
上記の一実施形態では、流入開口を各収納部の底部に形成する例を説明したが、流入開口を各収納部の側面に形成してもよい。以下、
図6及び
図7を参照して、本発明の他の実施形態に係る冷却装置を説明し、
図8を参照して、さらに他の実施形態に係る冷却装置を説明する。
【0046】
図6及び
図7は、他の実施形態に係る冷却装置の要部の構成を示す平面図及び縦断面図であり、冷却装置10の各収納部15aa〜15ddの底部に冷却液11の流入開口が形成されるかわりに、各収納部15aa〜15ddの側面に設けられた流入管160によって流入開口が形成されている。すなわち、冷却装置10は、底壁12aを貫通し液面19近傍まで延びる流入管160をさらに有しており、流入管160は、流入管160の長手方向に複数のノズル161を有し、複数のノズル161の各々に流入開口116aa、116ab、116ac、116ad、116ae、116ba、116bb、116bc、116bd、116be、116ca、116cb、116cc、116cd、116ce、116da、116db、116dc、116dd、116de、116ea、116eb、116ec、116ed、116ee(以下、まとめて「流入開口116aa〜116ee」という場合がある。)が形成されている。
【0047】
本実施形態においては、流入管160及び流出管170が、各収納部15aa〜15ddを形成している複数の内部隔壁が互いに交差する位置もしくはその近傍に、交互に配置されていてよい。よって、例えば
図6を参照すると、収納部15bbは、縦方向の内部隔壁13b、13cと、横方向の内部隔壁14b、14cによって形成されており、内部隔壁13bと内部隔壁14cが交差する点、及び内部隔壁13cと内部隔壁14bが交差する点に、それぞれ流出管170が配置され、流出管170の上端に、それぞれ流出開口17cb、17bcが形成されているのは、
図3におけるのと同様である。一方、内部隔壁13bと内部隔壁14bが交差する点、及び内部隔壁13cと内部隔壁14cが交差する点には、それぞれ流入管160が配置され、流入管160は、その長手方向に複数のノズル161を有し、複数のノズルの各々に流入開口116bbが形成されている。なお、流入管及び流出管は、内部隔壁と一体化されている必要はなく、内部隔壁から離れて配置された管であってもよい。
【0048】
図6を参照して、流入管160は、内部が4つの区画に分けられた構造を有し、このうちの1つの区画を流れる冷却液11が、複数のノズル161の各々に形成された流入開口116bbを通って収納部15bb内に吹き出すようになっている。従って、本実施形態においては、各収納部の側面に、対角方向に1対の流入開口が形成されていることになる。また、流入管160が、内部が4つの区画に分けられた構造を有しているので、各区画を流れる冷却液の流量を個別に制御することもできる。すなわち、各収納部の温度を制御装置(図示せず)において常時モニターしておき、制御装置から送信される、収納部内の温度変化に応じた入力信号を受けて、複数のノズル161の流入開口を通る冷却液11の流量を調整するための別の流量調整バルブ(図示せず)が、区画ごとに、後述する底部開口から流入開口までの経路の適宜の位置に設けられていてよい。これにより、対角方向に1対の流入開口からの冷却液の流量を、収納部ごとに個別に制御することが可能である。なお、流入管160の下端には底部開口118aa、118ab、118ac、118ad、118ae、118ba、118bb、118bc、118bd、118be、118ca、118cb、118cc、118cd、118ce、118da、118db、118dc、118dd、118de、118ea、118eb、118ec、118ed、118ee(以下、まとめて「底部開口118aa〜118ee」という場合がある。)が形成されているが、底部開口118aa〜118eeは、流入管160内部の4つの区画にそれぞれ対応するように4つに分割されていてよい。また、流入管160の上端は完全に閉じられている。
【0049】
本実施形態において、
図6及び
図7に示すように、流出管170に小孔を形成しないで、流出管170の上端に流出開口17bc、17cbを形成することでよい。なお、これら流出開口が、複数の収納部にとっての共通の流出開口となりうることは、
図2〜
図4に示した実施形態における流出開口と同様である。
【0050】
本実施形態においては、収納部15bbの側面の、対角方向に1対に形成された、深さ方向に複数ある流入開口116bbから、ボード120の両面にそれぞれ搭載された3つのプロセッサボード112、110、112に向かう、冷却液11の複数の流れによって、電子機器100が強制冷却されるので、冷却効率がより一層向上する。なお、各収納部において、流入管及び流出管を設ける位置及び本数は任意であり、各収納部を形成している複数の内部隔壁が互いに交差する位置の近傍に、流入管及び流出管をそれぞれ1本又は複数本設けてよいことは勿論である。
【0051】
次に、
図8を参照して、さらに他の実施形態に係る冷却装置を説明する。本実施形態では、底壁12aを貫通し液面19近傍まで延びる流入管160を有している構成は、
図6及び
図7に示した実施形態の構成と同様であるが、流入管160及び流出管170が、流入管160内に流出管170を内包する二重管180を構成している点、換言すれば、流出管170を内管とし、流入管160を外管として有する二重管180を構成している点に特徴がある。なお、流入管160が、流入管160の長手方向に複数のノズル161を有し、複数のノズル161の各々に流入開口116aa〜116eeが形成されていること、流入管160の上端は完全に閉じられていること、流入管160は、内部が4つの区画に分けられた構造を有し、このうちの1つの区画を流れる冷却液11が、複数のノズル161の各々に形成された流入開口116aa〜116eeを通って収納部15aa〜15dd内に吹き出すようになっていることは、
図6及び
図7に示す実施形態におけるのと同様である。
【0052】
本実施形態では、二重管180が、各収納部15aa〜15ddを形成している複数の内部隔壁が互いに交差する位置もしくはその近傍に配置されていてよい。すなわち、内部隔壁13bと内部隔壁14bが交差する点、内部隔壁13bと内部隔壁14cが交差する点、内部隔壁13cと内部隔壁14bが交差する点、及び内部隔壁13cと内部隔壁14cが交差する点にそれぞれ位置するように、二重管180が配置されていてよい。なお、二重管は、内部隔壁と一体化されている必要はなく、内部隔壁から離れて配置された管であってもよい。
【0053】
従って、本実施形態においては、各収納部の側面の四隅に流入開口が形成されていることになる。また、流入管160が、内部が4つの区画に分けられた構造を有しているので、各区画を流れる冷却液の流量を個別に制御することもできる。すなわち、各収納部の温度を制御装置(図示せず)において常時モニターしておき、制御装置から送信される、収納部内の温度変化に応じた入力信号を受けて、複数のノズル161の流入開口を通る冷却液11の流量を調整するための別の流量調整バルブ(図示せず)が、区画ごとに、底部開口から流入開口までの経路の適宜の位置に設けられていてよい。これにより、各収納部の側面の、四隅の流入開口からの冷却液の流量を、収納部ごとに個別に制御することが可能である。なお、二重管180の外管にあたる流入管160の下端には、底部開口118aa〜118eeが形成されているが、各底部開口118aa〜118eeは、流入管160内部の4つの区画にそれぞれ対応するように4つに分割されていてよい。また、二重管180の外管にあたる流入管160の上端は完全に閉じられている。なお、流出管170の下端には、底部開口18aa〜18eeが形成されている。二重管180の内管にあたる流出管170の上端に形成された流出開口が、複数の収納部にとっての共通の流出開口となりうることは、
図6及び
図7に示した実施形態における流出開口と同様である。
【0054】
本実施形態においては、収納部15bbの側面の四隅に形成された、深さ方向に複数ある流入開口116bbから、ボード120の両面にそれぞれ搭載された3つのプロセッサボード112、110、112に向かう、冷却液11の複数の流れによって、電子機器100が強制冷却されるので、冷却効率がさらにより一層向上する。なお、各収納部において、二重管を設ける位置及び本数は任意であり、各収納部を形成している複数の内部隔壁が互いに交差する位置の近傍に、二重管を1本又は複数本設けてよいことは勿論である。
【0055】
上記した
図6及び
図7に示す実施形態、並びに
図8に示す実施形態において、各収納部の側面に流入開口を形成する例として、各収納部の対角方向に1対に形成する例と、各収納部の四隅に形成する例を説明し、また、各収納部の側面に流入開口を形成するために、流入開口が形成された複数のノズルを有する流入管を利用し、また、流入管を、各収納部を形成している複数の内部隔壁が互いに交差する位置もしくはその近傍に配置するようにしたが、各収納部の側面に流入開口を形成する形態はこれらに限定されない。例えば、別の構成例として、流入管を配置するかわりに、中空構造の内部隔壁を採用し、内部隔壁の壁面に1つ以上のスリットを入れて流入開口を形成し、冷えた冷却液を内部隔壁内に流して、1つ以上のスリットを通して収納部内に冷却液が吹き出すようにしてもよい。また、さらに別の構成例として、内部隔壁の表面の一部又は全面に、冷えた冷却液が通る枝管を設け、枝管の任意の位置及び個数だけ流入開口を形成し、これら流入開口を通して収納部内に冷却液が吹き出すようにしてもよい。
【0056】
上記の一実施形態及び他の実施形態において、電子機器100のボード120上にプロセッサボード110、112を搭載する例を図示しているが、プロセッサはCPU又はGPUのいずれか又は両方を含んでよく、また、図示しない高速メモリ、チップセット、ネットワークユニット、PCI Expressバスや、バススイッチユニット、SSD、パワーユニット(交流−直流変換器、直流−直流電圧変換器等)を含んでよい。また、電子機器100は、ブレードサーバを含むサーバ、ルータ、SSD等の記憶装置等の電子機器であってもよい。ただし、既に述べたように、従来の一般的な幅よりも小さい幅(例えば、約1/2、1/3、1/4)の電子機器でよいことは勿論である。
【0057】
以上、要するに、本発明に係る冷却装置によれば、冷却槽の開放空間の体積の約1/4の体積か、約1/4よりも小さい体積の収納部に、従来よりも小さい幅の電子機器を収納して、冷却液を個別に流通させることにより、複数の電子機器を、個別に効率よく冷却することができ、従来技術におけるように冷却槽内の電子機器の収納位置によって冷却性能に差が生じるのを避けることができる。従って、複数の電子機器の冷却性能を向上させ、かつ安定化させることができる。また、収納部に収納する電子機器のサイズを小さくできるので、電子機器の取り扱い性及びメンテナンス性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、電子機器を効率よく冷却する、冷却装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 冷却装置
10a 開放空間
100 電子機器
110 プロセッサボード(CPU搭載)
112 プロセッサボード(GPU搭載)
114 放熱部材
120 ボード
11 冷却液
12 冷却槽
12a 底壁
12b 側壁
13a、13b、13c、13d、13e 内部隔壁
14a、14b、14c、14d、14e 内部隔壁
15aa、15ab、15ac、15ad、15ba、15bb、15bc、15bd、15ca、15cb、15cc、15cd、15da、15db、15dc、15dd 収納部
16 入口
16aa、16ab、16ac、16ad、16ba、16bb、16bc、16bd、16ca、16cb、16cc、16cd、16da、16db、16dc、16dd 流入開口
116aa、116ab、116ac、116ad、116ae、116ba、116bb、116bc、116bd、116be、116ca、116cb、116cc、116cd、116ce、116da、116db、116dc、116dd、116de、116ea、116eb、116ec、116ed、116ee 流入開口
160 流入管
161 ノズル
17aa、17ab、17ac、17ad、17ae、17ba、17bb、17bc、17bd、17be、17ca、17cb、17cc、17cd、17ce、17da、17db、17dc、17dd、17de、17ea、17eb、17ec、17ed、17ee 流出開口
170 流出管
171 小孔
18 出口
180 二重管
18aa、18ab、18ac、18ad、18ae、18ba、18bb、18bc、18bd、18be、18ca、18cb、18cc、18cd、18ce、18da、18db、18dc、18dd、18de、18ea、18eb、18ec、18ed、18ee 底部開口
118aa、118ab、118ac、118ad、118ae、118ba、118bb、118bc、118bd、118be、118ca、118cb、118cc、118cd、118ce、118da、118db、118dc、118dd、118de、118ea、118eb、118ec、118ed、118ee 底部開口
19 液面
30 流通路
40 ポンプ
50 流量調整バルブ
70 流量計
90 熱交換器
【要約】
複数の電子機器の冷却性能を向上させ、かつ冷却性能のばらつきを無くして安定化させるとともに、電子機器の取り扱い性とメンテナンス性を向上させた冷却装置を提供する。底壁及び側壁によって形成される開放空間を有する冷却槽12内に複数の内部隔壁13a〜13e、14a〜14eを設けることにより、開放空間を分割して、配列された複数の収納部15aa〜15ddが形成される。各収納部15aa〜15ddに電子機器100が収納される。収納部15aa〜15ddの各々には、冷却液11の流入開口16aa〜16dd又は流入開口116aa〜116ee、及び流出開口17aa〜17eeが形成され、流入開口16aa〜16dd又は流入開口116aa〜116eeは、各収納部15aa〜15ddの底部又は側面に形成され、流出開口17aa〜17eeは、各収納部15aa〜15ddを流通する冷却液11の液面19近傍に形成されている。