特許第5956101号(P5956101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5956101
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】飛散塩分捕獲装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/02 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
   G01N1/02 G
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-509811(P2016-509811)
(86)(22)【出願日】2014年9月8日
(86)【国際出願番号】JP2014073644
【審査請求日】2016年2月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金原 辰朗
【審査官】 後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3163165(JP,U)
【文献】 実開昭48−105585(JP,U)
【文献】 特開平04−285841(JP,A)
【文献】 特開平05−209996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00−1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中に飛散している塩分を捕獲可能である素材、及び、該素材が張られた枠体を有する複数の飛散塩分捕獲体と、該複数の飛散塩分捕獲体を保持する保持装置とを備え、
前記保持装置は、
前記飛散塩分捕獲体が通過可能な中段上スリットが形成された上板と、前記飛散塩分捕獲体が通過可能な中段下スリットが形成された下板と、前記中段上スリットと前記中段下スリットとの間に設けられ使用中の前記飛散塩分捕獲体を縦向きに収納する中段収納部とを備える中段部と、
前記中段部の上に鉛直な回転軸の周りに回転可能に設けられた上段筐体と、前記上段筐体内に前記回転軸の周りに並べて配され、未使用の前記飛散塩分捕獲体を縦向きに収納する複数の上段収納部とを備え、前記上段筐体における前記上段収納部の下に、前記飛散塩分捕獲体が通過可能な上段スリットが形成された上段部と、
前記中段収納部の下に前記回転軸の周りに前記上段部と共に回転可能に設けられた下段筐体と、前記下段筐体内に前記回転軸の周りに並べて配され、使用済みの前記飛散塩分捕獲体を縦向きに収納する複数の下段収納部とを備え、前記下段筐体における前記下段収納部の上に、前記飛散塩分捕獲体が通過可能な下段スリットが形成された下段部とを備え、
前記上段部と前記下段部とが前記回転軸の周りに回転すると、前記未使用の飛散塩分捕獲体が、前記複数の上段収納部の何れか一から前記中段収納部へ前記上段スリット及び前記中段上スリットを通して落下して、該飛散塩分捕獲体が、前記下段筐体の上に載る第一の状態と、前記使用中の飛散塩分捕獲体が、前記中段収納部から前記複数の下段収納部の何れか一へ前記中段下スリット及び前記下段スリットを通して落下すると共に、前記未使用の飛散塩分捕獲体が、前記上板の上に載る第二の状態とに交互に遷移するように構成されている飛散塩分捕獲装置。
【請求項2】
前記上段部と前記下段部とを前記回転軸の周りに回転させる駆動部と、
前記第一の状態が所定時間維持され、前記第二の状態を経由して前記第一の状態に遷移されて前記所定時間維持されることが繰り返されるように、前記上段部と前記下段部とを前記駆動部により回転させる制御部と
を備える請求項1に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項3】
前記下板は、前記使用済みの飛散塩分捕獲体を収納した前記下段収納部の上の前記下段スリットを塞ぐように構成されている請求項1又は請求項2に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項4】
前記上段部の上部に、前記上部を閉塞する上段蓋部が着脱可能に設けられ、
前記下段部の下部に、前記下部を閉塞する下段蓋部が着脱可能に設けられている請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項5】
前記保持装置を収容し、前記飛散塩分捕獲体に導風する導風口が設けられた箱を備える請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項6】
前記素材又は前記枠体に当該飛散塩分捕獲体を識別するための表示が記されている請求項1から請求項5までの何れか1項に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項7】
前記枠体の一辺にウエイトが取り付けられている請求項6に記載の飛散塩分捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛散塩分量を測定するために大気中に飛散している塩分を捕獲する飛散塩分捕獲装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電系統の絶縁碍子や鉄塔等の海塩粒子による塩害の予測を行うために、大気中に飛散している塩分(以下、単位体積あたりに含まれる塩分を気中塩分量、これに風速を乗じたものを飛散塩分量という)の量(飛散塩分量)を測定する必要があり、そのためには、大気中に飛散している塩分を捕獲する必要がある。JIS Z2382で規定されているドライガーゼ法は、窓が空いた木枠にガーゼをはめ込んで雨に濡れない風通しの良い場所に設置し、ガーゼに塩分を含んだ大気を通過させてガーゼに塩分を付着させ、その付着した塩分の量を測定するというものである。
【0003】
また、特許文献1に記載の外気導入装置では、外気を屋外構造物の内部に導入する外気導入部にテープ状の除塩フィルタを設け、この除塩フィルタで塩分を捕獲することで、外気中の塩分が屋外構造物の内部に入ることを防止している。ここで、特許文献1に記載の外気導入装置では、除塩フィルタの新規な面を外気導入部へ送り出し、塩分が付着した面を外気導入部から退避させる機構を設けることで、連続しての塩分の捕獲を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−85516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、百葉箱を鉄塔等の高所に設置してその中に上述のガーゼを設置することにより、高所での飛散塩分量を測定できる。この場合、ガーゼを所定期間毎に交換する必要があるが、交換作業の度に百葉箱を高所で上げたり下したりするのでは作業性が悪い。そのため、高所に設置した百葉箱の中で自動若しくは簡単な操作により、曝露位置において飛散塩分を捕獲するガーゼと未使用のガーゼとを交換できるようにすることが望ましい。なお、特許文献1に記載の送り出し機構を百葉箱内に設置することはこれらの寸法上難しい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、飛散塩分を捕獲する飛散塩分捕獲体の交換を百葉箱の中で自動若しくは簡単な操作により実施できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る飛散塩分捕獲装置は、大気中に飛散している塩分を捕獲可能である素材、及び、該素材が張られた枠体を有する複数の飛散塩分捕獲体と、該複数の飛散塩分捕獲体を保持する保持装置とを備え、前記保持装置は、前記飛散塩分捕獲体が通過可能な中段上スリットが形成された上板と、前記飛散塩分捕獲体が通過可能な中段下スリットが形成された下板と、前記中段上スリットと前記中段下スリットとの間に設けられ使用中の前記飛散塩分捕獲体を縦向きに収納する中段収納部とを備える中段部と、前記中段部の上に鉛直な回転軸の周りに回転可能に設けられた上段筐体と、前記上段筐体内に前記回転軸の周りに並べて配され、未使用の前記飛散塩分捕獲体を縦向きに収納する複数の上段収納部とを備え、前記上段筐体における前記上段収納部の下に、前記飛散塩分捕獲体が通過可能な上段スリットが形成された上段部と、前記中段収納部の下に前記回転軸の周りに前記上段部と共に回転可能に設けられた下段筐体と、前記下段筐体内に前記回転軸の周りに並べて配され、使用済みの前記飛散塩分捕獲体を縦向きに収納する複数の下段収納部とを備え、前記下段筐体における前記下段収納部の上に、前記飛散塩分捕獲体が通過可能な下段スリットが形成された下段部とを備え、前記上段部と前記下段部とが前記回転軸の周りに回転すると、前記未使用の飛散塩分捕獲体が、前記複数の上段収納部の何れか一から前記中段収納部へ前記上段スリット及び前記中段上スリットを通して落下して、該飛散塩分捕獲体が、前記下段筐体の上に載る第一の状態と、前記使用中の飛散塩分捕獲体が、前記中段収納部から前記複数の下段収納部の何れか一へ前記中段下スリット及び前記下段スリットを通して落下すると共に、前記未使用の飛散塩分捕獲体が、前記上板の上に載る第二の状態とに交互に遷移するように構成されている。
【0008】
前記飛散塩分捕獲装置は、前記上段部と前記下段部とを前記回転軸の周りに回転させる駆動部と、前記第一の状態が所定時間維持され、前記第二の状態を経由して前記第一の状態に遷移されて前記所定時間維持されることが繰り返されるように、前記上段部と前記下段部とを前記駆動部により回転させる制御部とを備えてもよい。
【0009】
前記飛散塩分捕獲体において、前記下板は、前記使用済みの飛散塩分捕獲体を収納した前記下段収納部の上の前記下段スリットを塞ぐように構成されてもよい。
【0010】
前記飛散塩分捕獲体において、前記上段部の上部に、前記上部を閉塞する上段蓋部が着脱可能に設けられ、前記下段部の下部に、前記下部を閉塞する下段蓋部が着脱可能に設けられてもよい。
【0011】
前記飛散塩分捕獲装置は、前記保持装置を収容し、前記飛散塩分捕獲体に導風する導風口が設けられた箱を備えてもよい。
【0012】
前記飛散塩分捕獲装置において、前記素材又は前記枠体に当該飛散塩分捕獲体を識別するための表示が記されてもよい。
【0013】
前記飛散塩分捕獲装置において、前記枠体の一辺にウエイトが取り付けられてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、飛散塩分を捕獲する飛散塩分捕獲体の交換を百葉箱の中で自動若しくは簡単な操作により実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る飛散塩分捕獲装置を示す斜視図である。
図2】飛散塩分捕獲体を示す正面図である。
図3】保持装置を示す斜視図である。
図4】保持装置の内部を示す斜視図である。
図5】保持装置を示す平面図である。
図6図5の6−6断面図である。
図7】上段部、中段部、及び下段部のそれぞれの平断面図である。
図8】保持装置の動作を説明するための立断面図である。
図9】保持装置の動作を説明するための上段部、中段部、及び下段部のそれぞれの平断面図である。
図10】保持装置の動作を説明するための立断面図である。
図11】保持装置の動作を説明するための上段部、中段部、及び下段部のそれぞれの平断面図である。
図12】保持装置の動作を説明するための立断面図である。
図13】保持装置の動作を説明するための上段部、中段部、及び下段部のそれぞれの平断面図である。
図14】保持装置の動作を説明するための立断面図である。
図15】保持装置の動作を説明するための上段部、中段部、及び下段部のそれぞれの平断面図である。
図16】保持装置の動作を説明するための立断面図である。
図17】保持装置の動作を説明するための上段部、中段部、及び下段部のそれぞれの平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。図1は、一実施形態に係る飛散塩分捕獲装置10を示す斜視図である。この図に示すように、飛散塩分捕獲装置10は、百葉箱1と、百葉箱1内に設置された保持装置100と、保持装置100が保持する複数の飛散塩分捕獲体20とを備えている。百葉箱1は、直方体状の箱であり、四つの側面にガラリ2が設けられている。ガラリ2は、奥側へかけて上側に傾斜する整流板が縦に並んだ構成である。なお、百葉箱1の一の側面を前面といい、該一の側面と対向する面を後面という。また、百葉箱1の前面側を装置前側、百葉箱1の後面側を装置後側といい、百葉箱1の前後方向を装置前後方向という。また、装置前後方向と直交する横方向を装置左右方向という。また、百葉箱1の上面には、保持装置100を箱内に出し入れするための蓋3が設けられている。この蓋3の一辺がヒンジ(図示省略)を介して百葉箱1の上端の一辺に取り付けられており、蓋3のヒンジとは反対側の一辺と百葉箱1の上端の一辺とが蝶番9で着脱可能に固定されている。
【0017】
図2は、飛散塩分捕獲体20を示す正面図である。この図に示すように、飛散塩分捕獲体20は、通気性を有し、飛散する塩分を捕獲可能である矩形状のガーゼ22と、ガーゼ22を保持する矩形状の枠体であるガーゼホルダー24と、ガーゼホルダー24に取り付けられたウエイト26とを備えている。この飛散塩分捕獲体20では、ガーゼ22の周縁部がガーゼホルダー24に取り付けられることで、ガーゼ22がガーゼホルダー24の内側に張られている。また、ガーゼホルダー24は上下左右及び表裏の設置向きが決められており、その向きでガーゼホルダー24が設置された場合に、ガーゼホルダー24の下辺となる位置にウエイト26が取り付けられている。
【0018】
ここで、ガーゼ22には、当該ガーゼ22を識別するための表示である数字が記されている。この数字は使用する順序や使用する月等を特定するものである。即ち、使用する順序を特定する数字の場合は、ガーゼ22の設置数に応じて1,2,3,4,…となり、使用する月を特定する数字の場合は、例えば、4,5,6,7,…となる。
【0019】
図3は、保持装置100を示す斜視図であり、図4は、保持装置100の内部を示す斜視図である。また、図5は、保持装置100を示す平面図であり、図6は、図5の6−6断面図である。さらに、図7は、上段部110、中段部120、及び下段部130のそれぞれの平断面図である。
【0020】
これらの図に示すように、保持装置100は、未使用の飛散塩分捕獲体20を装置の上段で保持する上段部110と、使用中の飛散塩分捕獲体20を装置の中段の曝露位置で保持する中段部120と、使用済の飛散塩分捕獲体20を装置の下段で保持する下段部130と、これらを支持するフレーム140と、上段部110及び下段部130を移動させる移動機構150とを備えている。
【0021】
フレーム140は、縦長の矩形状の側板141と、中心角が90°の扇形状の底板142と、半円形状の中段下板143と、中心角が90°の扇形形状の中段上板144と、回転軸146とを備えている。側板141の幅方向一端には、回転軸146を回転可能に支持する複数の軸受141A、141B、141C、141Dが設けられている。軸受141A、141B、141C、141Dは、下からこの順番で等間隔に配されている。
【0022】
軸受141Aは、側板141の下端と底板142の角部(扇形の一対の半径の交差部)とに一体化されており、底板142は、軸受141Aを介して側板141の下端に結合されている。また、軸受141Bは、側板141の高さ方向の中間部と中段下板143の中心(半円の中心)とに一体化されており、中段下板143は、軸受141Bを介して側板141の高さ方向の中間部に結合されている。また、軸受141Cは、側板141の高さ方向の中間部と中段上板144の角部(扇形の一対の半径の交差部)とに一体化されており、中段上板144は、軸受141Cを介して側板141の高さ方向の中間部に結合されている。さらに、軸受141Dは、側板141の上端と一体化されている。
【0023】
上段部110は、筐体112と、筐体112内に配された複数(本実施形態では3組)の保持枠114とを備えている。筐体112の上板112A及び底板112Bの形状は、中心角が90°の扇形である。上板112A及び底板112Bの角部(扇形の一対の半径の交差部)には、軸受112Cが設けられており、この軸受112Cが回転軸146に固定されている。また、上板112Aは、筐体112の扇形の側壁112Dの上端に着脱可能に設けられている。
【0024】
各保持枠114は、底板112Bに立てられた一対のガイドレール114Aを備える。この一対のガイドレール114Aは、縦方向の断面形状がコ字状の縦長の部材であり、底板112Bの半径方向に並べて、互いに溝が対向するように配されており、両側の溝の間に飛散塩分捕獲体20が嵌め込まれている。また、複数の保持枠114は、回転軸146の周りに所定間隔(本実施形態では30°)で配されている。
【0025】
底板112Bには、飛散塩分捕獲体20を中段部120へ落下させるためのスリット112E(図6参照)が形成されている。このスリット112Eは、各保持枠114の一対のガイドレール114Aの間に配されている。
【0026】
中段部120は、上述の中段下板143及び中段上板144と、中段下板143と中段上板144との間に配された保持枠124とを備えている。ここで、中段下板143を周方向に(装置前側と後側とに)二分したその一方(装置後側)の範囲と中段上板144とが上下に重なるように、中段下板143と中段上板144とが配されている。
【0027】
保持枠124は、中段下板143と中段上板144とに上下両端を結合された一対のガイドレール124Aを備える。この一対のガイドレール124Aは、縦方向の断面形状がコ字状の縦長の部材であり、中段下板143及び中段上板144の半径方向に並べて、互いに溝が対向するように配されており、両側の溝の間に飛散塩分捕獲体20が嵌め込まれている。また、保持枠124は、中段下板143の周方向の中央側に寄せて配されている。
【0028】
中段下板143には、飛散塩分捕獲体20を下段部130へ落下させるためのスリット143B(図6参照)が形成されている。このスリット143Bは、保持枠124の一対のガイドレール124Aの間に配されている。また、中段上板144には、飛散塩分捕獲体20を上段部110から中段部120へ落下させるためのスリット144Bが形成されている。このスリット144Bは、保持枠124の一対のガイドレール124Aの間に配されている。
【0029】
下段部130は、筐体132と、筐体132内に配された複数(本実施形態では3組)の保持枠134とを備えている。筐体132の上板132A及び底板132Bの形状は、中心角が90°の扇形である。上板132Aの角部(扇形の一対の半径の交差部)には、軸受132C(図4参照)が設けられ、底板132Bの角部(扇形の一対の半径の交差部)には、ギア132Dが設けられており、軸受132C及びギア132Dが回転軸146に固定されている。また、上板132Aは、筐体132の扇形の側壁132Eの下端に着脱可能に設けられている。
【0030】
各保持枠134は、底板132Bに立てられた一対のガイドレール134Aを備える。この一対のガイドレール134Aは、縦方向の断面形状がコ字状の縦長の部材であり、底板132Bの半径方向に並べて、互いに溝が対向するように配されており、両側の溝の間に飛散塩分捕獲体20が嵌め込まれている。また、複数の保持枠134は、回転軸146の周りに所定間隔(本実施形態では30°)で配されている。
【0031】
上板132Aには、飛散塩分捕獲体20を中段部120から下段部130へ落下させるためのスリット132F(図6参照)が形成されている。このスリット132Fは、各保持枠134の一対のガイドレール134Aの間に配されている。
【0032】
ここで、回転軸146は、側板141に回転可能に支持され、この回転軸146に上段部110と下段部130とが固定されているのに対して、中段部120は、側板141に固定されている。これにより、上段部110と下段部130とは、回転軸146の周りに一斉に同じ速度で回転でき、これらが回転している際、中段部120は、定位置で停止する。
【0033】
移動機構150は、側板141に取り付けられたモータ152と、モータ152を制御するモータ制御装置154(図4参照)とを備えている。モータ152の出力軸は、回転軸146と平行であり、該出力軸に取り付けられたギア152Aが、下段部130のギア132Dと噛み合っている。これにより、モータ制御装置154によりモータ152が駆動されると、上段部110及び下段部130が回転軸146の周りに回転する。
【0034】
図6に示すように、上段部110の3組の保持枠114及びスリット112Eは、回転方向に等間隔(例えば、30°間隔)で配され、下段部130の3組の保持枠134及びスリット132Fは、回転方向に等間隔(例えば、30°間隔)で配されている。また、上段部110の3組の保持枠114及びスリット112Eの回転方向の間隔と、下段部130の3組の保持枠134及びスリット132Fの回転方向の間隔とは、同一である。
【0035】
上段部110の3組の保持枠114及びスリット112Eの回転方向の位置と、下段部130の3組の保持枠134及びスリット132Fの回転方向の位置とは、前者が後者よりも時計回り方向にずれるように配されている。この両者のずれ量は、スリット112Eとスリット132Fとの回転軸146から遠い側の端部が上下に重ならないように設定されている。これにより、飛散塩分捕獲体20が、上段部110の保持枠114からスリット112E、144Bを通して中段部120の保持枠124内に落下した際に、該飛散塩分捕獲体20が、下段部130の上板132Aに乗ることで中段部120に留まる。
【0036】
ここで、モータ152は、タイマ機能付きのモータ制御装置154によって所定期間(例えば、1か月間)おきに駆動され、上段部110及び下段部130を回転軸146の回りに回転させる。以下、保持装置100の動作について説明する。
【0037】
図6図17は、保持装置100の動作を説明するための立断面図又は平断面図である。まず、図6の立断面図及び図7の平断面図に示すように、上段部110の装置後側の2列の保持枠114と、中段部120の保持枠124とに未使用の飛散塩分捕獲体20が収納される。中段部120の飛散塩分捕獲体20のガーゼ22は、曝露されて飛散塩分を捕獲する。
【0038】
次に、所定期間経過後にモータ152が駆動され、図8の立断面図及び図9の平断面図に示すように、下段部130の装置前側(最前列)のスリット132Fが中段部120の飛散塩分捕獲体20の位置まで移動される。この際、中段部120の使用済みの飛散塩分捕獲体20が、スリット143B及び最前列のスリット132Fを通して下段部130の最前列の保持枠134内に落下する。
【0039】
そしてさらにモータ152が駆動され、図10の立断面図及び図11の平断面図に示すように、上段部110の2列目の保持枠114が中段部120の保持枠124上まで移動される。この際、上段部110の2列目の未使用の飛散塩分捕獲体20が、上段部110の2列目のスリット112Eと中段部120のスリット144Bとを通して中段部120の保持枠124内に落下する。ここで、下段部130の2列目のスリット132Fが、中段部120のスリット143Bよりも装置後側に位置することにより、2列目の未使用の飛散塩分捕獲体20が、下段部130の上板132A上に乗る。これにより、2列目の飛散塩分捕獲体20が、中段部120の保持枠124に収納され、該飛散塩分捕獲体20のガーゼ22が、曝露されて飛散塩分を捕獲する。
【0040】
次に、所定期間経過後にモータ152が駆動され、図12の立断面図及び図13の平断面図に示すように、下段部130の2列目のスリット132Fが中段部120の飛散塩分捕獲体20の位置まで移動される。この際、中段部120の使用済みの飛散塩分捕獲体20が、スリット143B及び2列目のスリット132Fを通して下段部130の2列目の保持枠134内に落下する。
【0041】
そしてさらにモータ152が駆動され、図14の立断面図及び図15の平断面図に示すように、上段部110の3列目の保持枠114が中段部120の保持枠124上まで移動される。この際、上段部110の3列目の未使用の飛散塩分捕獲体20が、上段部110の3列目のスリット112Eと中段部120のスリット144Bとを通して中段部120の保持枠124内に落下する。ここで、下段部130の3列目のスリット132Fが、中段部120のスリット143Bよりも装置後側に位置することにより、3列目の未使用の飛散塩分捕獲体20が、下段部130の上板132A上に乗る。これにより、3列目の飛散塩分捕獲体20が、中段部120の保持枠124に収納され、該飛散塩分捕獲体20のガーゼ22が、曝露されて飛散塩分を捕獲する。
【0042】
次に、所定期間経過後にモータ152が駆動され、図16の立断面図及び図17の平断面図に示すように、下段部130の3列目のスリット132Fが中段部120の飛散塩分捕獲体20の位置まで移動される。この際、中段部120の使用済みの飛散塩分捕獲体20が、スリット143B及び3列目のスリット132Fを通して下段部130の3列目の保持枠134内に落下する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る飛散塩分捕獲装置10は、大気中に飛散している塩分を捕獲可能であるガーゼ22、及び、ガーゼ22が張られたガーゼホルダー24を有する複数の飛散塩分捕獲体20と、複数の飛散塩分捕獲体20を保持する保持装置100とを備える。この保持装置100は、中段部120と、中段部120の上下に鉛直な回転軸146の周りに互いに一緒に回転可能に設けられた上段部110及び下段部130とを備える。
【0044】
中段部120は、中段上板144と、中段下板143と、これらの間に設けられた保持枠124とを備える。中段上板144と中段下板143とにはそれぞれ、飛散塩分捕獲体20が通過可能なスリット144B、143Bが形成され、保持枠124は、上下のスリット144B、143Bの間に設けられて使用中の飛散塩分捕獲体20を縦向きに収納する。
【0045】
上段部110は、未使用の飛散塩分捕獲体20を収納する複数の保持枠114を備える。この複数の保持枠114は回転軸146の周りに並べて配されており、各保持枠114の下には、飛散塩分捕獲体20が通過可能なスリット112Eが形成されている。
【0046】
下段部130は、使用済の飛散塩分捕獲体20を収納する複数の保持枠134を備える。この複数の保持枠134は回転軸146の周りに並べて配されており、各保持枠134の上には、飛散塩分捕獲体20が通過可能なスリット132Fが形成されている。
【0047】
ここで、保持装置100は、上段部110と下段部130とが回転軸146の周りに一緒に回転すると、未使用の飛散塩分捕獲体20が、上段部110の複数の保持枠114の何れか一から中段部120の保持枠124へスリット112E、144Bを通して落下して、該飛散塩分捕獲体20が、下段部130の上に載る第一の状態と、使用中の飛散塩分捕獲体20が、中段部120の保持枠124からか下段部130の複数の保持枠134の何れか一へスリット143B、132Fを通して落下すると共に、未使用の飛散塩分捕獲体20が、中段上板144の上に載る第二の状態とに交互に遷移するように構成されている。
【0048】
これによって、複数の未使用の飛散塩分捕獲体20を上段部110に収納しておき、上段部110と下段部130とを所定量ずつ回転させるという簡単な操作により、装置前側から順番に未使用の飛散塩分捕獲体20を上段部110から中段部120へ落下させて所定期間曝露状態とし、使用済の飛散塩分捕獲体20については、装置前側から順番に下段部130へ落下させて下段部130に収納することができる。従って、飛散塩分を捕獲するガーゼ22の交換を百葉箱1の中で簡単に実施できる。
【0049】
また、本実施形態に係る飛散塩分捕獲装置10では、前記第一の状態が所定時間(例えば1か月間)維持され、前記第二の状態を経由して前記第一の状態に遷移されて前記所定時間維持されることが繰り返されるように、上段部110と下段部130とを回転軸146の周りに回転させる移動機構150を備える。従って、飛散塩分を捕獲するガーゼ22の交換を、百葉箱1の中で自動で実施できる。
【0050】
また、本実施形態に係る飛散塩分捕獲装置10では、中段下板143が、使用済みの飛散塩分捕獲体20を収納した保持枠134の上のスリット132Fを塞ぐように構成されている。これによって、使用済みの飛散塩分捕獲体20を密封空間で保管できる。
【0051】
また、本実施形態に係る飛散塩分捕獲装置10では、上段部110の上部に、該上部を閉塞する上板112Aが着脱可能に設けられ、下段部130の下部に、該下部を閉塞する底板132Bが着脱可能に設けられている。これによって、上段部110や下段部130に飛散塩分が侵入してガーゼ22に付着することを防止できる。また、未使用の飛散塩分捕獲体20を上段部110に挿入でき、使用済の飛散塩分捕獲体20を下段部130から取り出すことができる。
【0052】
また、本実施形態に係る飛散塩分捕獲体20には、各々を識別するための表示が記されている。この表示は、曝露位置に置かれて飛散塩分を捕獲するのに使用される月等である。よって、使用済の飛散塩分捕獲体20の管理を容易化できる。さらに、本実施形態に係る飛散塩分捕獲体20のガーゼホルダー24の一辺にウエイト26が取り付けられていることにより、この一辺を下にして飛散塩分捕獲体20を上段部110に挿入することで、飛散塩分捕獲体20が、上段部110から中段部120へ、中段部120から下段部130へ落下し易くなる。
【0053】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、上記実施形態では、上段部110と下段部130とが移動機構150により自動で移動されるように構成したが、上段部110と下段部130とは手動で移動させてもよい。また、移動機構150は、ラック・アンド・ピニオン機構や、ボールネジを用いた機構等の他の機構にしてもよい。また、飛散塩分捕獲体20を交換するための蓋を設ける位置は上述の構成に限られず、例えば、中段下板143を着脱可能にする等してもよい。さらに、飛散塩分捕獲体20のガーゼ22に識別表示を記したが、ガーゼホルダー24に識別表示を記してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 百葉箱、2 ガラリ、3 蓋、9 蝶番、10 飛散塩分捕獲装置、20 飛散塩分捕獲体、22 ガーゼ、24 ガーゼホルダー、26 ウエイト、100 保持装置、110 上段部、112 筐体、112A 上板、112B 底板、112C 軸受、112D 側壁、112E スリット、114 保持枠、114A ガイドレール、120 中段部、124 保持枠、124A ガイドレール、130 下段部、132 筐体、132A 上板、132B 底板、132C 軸受、132D ギア、132E 側壁、132F スリット、134 保持枠、134 ガイドレール、140 フレーム、141 側板、141A 軸受、141B 軸受、141C 軸受、141D 軸受、142 底板、143 中段下板、143B スリット、144 中段上板、144B スリット、146 回転軸、150 移動機構、152 モータ、152A ギア、154 モータ制御装置
【要約】
【課題】飛散塩分を捕獲するガーゼの交換を百葉箱の中で自動若しくは簡単な操作により実施できるようにする。
【解決手段】保持装置100は、上段部110と下段部130とが回転軸146の周りに一緒に回転すると、未使用の飛散塩分捕獲体20が、上段部110の複数の保持枠114の何れか一から中段部120の保持枠124へスリット112E、144Bを通して落下して、該飛散塩分捕獲体20が、下段部130の上に載る第一の状態と、使用中の飛散塩分捕獲体20が、中段部120の保持枠124からか下段部130の複数の保持枠134の何れか一へスリット143B、132Fを通して落下すると共に、未使用の飛散塩分捕獲体20が、中段上板144の上に載る第二の状態とに交互に遷移するように構成されている。
図1
図2
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