特許第5956108号(P5956108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許59561081,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンを含有しないN−メチルイミダゾールのキャッピング剤を用いたオリゴヌクレオチドまたはホスホロチオ酸オリゴヌクレオチドの合成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956108
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンを含有しないN−メチルイミダゾールのキャッピング剤を用いたオリゴヌクレオチドまたはホスホロチオ酸オリゴヌクレオチドの合成
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160707BHJP
   C07H 21/04 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
   C07H21/04 A
   C07H21/04 B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-530041(P2010-530041)
(86)(22)【出願日】2008年10月13日
(65)【公表番号】特表2011-516028(P2011-516028A)
(43)【公表日】2011年5月26日
(86)【国際出願番号】US2008079678
(87)【国際公開番号】WO2009052034
(87)【国際公開日】20090423
【審査請求日】2011年10月6日
【審判番号】不服2014-21920(P2014-21920/J1)
【審判請求日】2014年10月29日
(31)【優先権主張番号】60/980,063
(32)【優先日】2007年10月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/224,953
(32)【優先日】2008年10月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100098590
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 隆
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツ,サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】プシブィテク,ジム
(72)【発明者】
【氏名】スノーブル,カレル
【合議体】
【審判長】 中田 とし子
【審判官】 齊藤 真由美
【審判官】 冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】 Custom Oligonucleotide Synthesis,2003年,Retrieved from the internet,[retrieved on 2013−09−03],URL,http://www.bio.davidson.edu/Courses/Molbio/MolStudents/spring2003/Holmberg/oligonucleotide_synthesis.htm
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00, C07H 21/04
CAPLUS(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスホロアミダイト法によりオリゴヌクレオチドまたはホスホロチオ酸オリゴヌクレオチドを製造する方法であって、次の工程:
(a)所定量のブロッキングされたヌクレオチドを準備すること;
(b)前記ブロッキングされたヌクレオチドをデブロッキングして、デブロッキングされたヌクレオチドを生成すること;
(c)前記デブロッキングされたヌクレオチドを活性化すること;
(d)前記デブロッキングされたヌクレオチドをホスホロアミダイトと反応させて、ホスファイトオリゴマーを生成すること;
(e)無水酢酸およびN−メチルイミダゾールと反応させることにより、未反応の前記デブロッキングされたヌクレオチドをキャッピングすること;
(f)前記ホスファイトオリゴマーを酸化してオリゴヌクレオチドを生成し、または前記ホスファイトオリゴマーを硫化してホスホロチオ酸オリゴヌクレオチドを生成すること;及び
(g)任意的に(b)から(f)の工程を反復すること;
を含む方法であって、前記N−メチルイミダゾールが、N−メチルイミダゾールの重量を基準にして10ppm以下の含有量の1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンを有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記デブロッキングが、トルエンまたはジクロロメタン中でのジクロロ酢酸との反応を含む方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記ホスファイトオリゴマーの酸化が、水およびピリジン中でヨウ素と接触させることによって実施される方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、前記ブロッキングされたヌクレオチドがヘテロ環式核酸塩基のなかから選択される方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法であって、前記ブロッキングされたヌクレオチドが支持体に共有結合している方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、(b)から(f)の工程を、所望のオリゴヌクレオチド長またはホスホロチオ酸オリゴヌクレオチド長に達するまで反復する方法。
【請求項7】
ホスホロアミダイト法によりオリゴヌクレオチドまたはホスホロチオ酸オリゴヌクレオチドを製造する方法において、無水酢酸およびN−メチルイミダゾールと反応させることにより、未反応のデブロッキングされたヌクレオチドをキャッピングする方法であって、前記N−メチルイミダゾールが、N−メチルイミダゾールの重量を基準にして10ppm以下の含有量の1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンを有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年10月15日に出願された米国特許仮出願第60/980,063号の優先権を主張するものであり、この出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンを実質的に含有しないN−メチルイミダゾールのキャッピング剤を使用しながら、オリゴヌクレオチドまたはホスホロチオ酸オリゴヌクレオチドを合成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
オリゴヌクレオチドおよびホスホロチオ酸オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドのカップリングにより合成される。合成には、一般に次の工程:(a)デブロッキング(deblocking)、(b)活性化/カップリング(activation/coupling)、(c)キャッピング(capping)、および(d)酸化(oxidation;オリゴヌクレオチドの場合)または硫化(sulfurization;ホスホロチオ酸オリゴヌクレオチドの場合)が含まれる。このサイクルを、カップリングする塩基の数に応じて連続的に反復することができる。
【0004】
キャッピングの工程は、一般的にN−メチルイミダゾールと無水酢酸との組合せの存在下で実施される。N−メチルイミダゾールを使用するいくつかのオリゴヌクレオチド合成では、望ましくない付加化合物を有するいくつかのオリゴヌクレオチドが生成し得ることが観察されている。付加化合物によって、オリゴヌクレオチドの分子量は85ダルトン増加したことが観察されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最終生成物が、望ましくない付加化合物を実質的に含有しない、オリゴヌクレオチドまたはホスホロチオ酸オリゴヌクレオチドを合成する方法を有することは望ましいことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、オリゴヌクレオチドまたはホスホロチオ酸オリゴヌクレオチドを製造する方法が提供される。本方法には、次の工程:(a)所定量のブロッキングされたヌクレオチド(a blocked nucleotide)を準備すること;(b)前記ブロッキングされたヌクレオチドをデブロッキング(deblocking)して、ブロッキングされていないヌクレオチド(an unblocked nucleotide)を生成すること;(c)前記デブロッキングされたヌクレオチドを活性化すること;(d)前記デブロッキングされたヌクレオチドとホスホロアミダイトをカップリングして、ホスファイトオリゴマー(a phosphite oligomer)を生成すること;(e)所定量の無水酢酸、および1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンを実質的に含有しない所定量のN−メチルイミダゾールと反応させることにより、前記デブロッキングされたヌクレオチドのうちカップリングしなかったものをキャッピングすること;(f)前記ホスファイトオリゴマーを酸化してオリゴヌクレオチドを生成し、または前記ホスファイトオリゴマーを硫化してホスホロチオ酸オリゴヌクレオチドを生成すること;及び(g)任意的に(b)から(f)の工程を反復すること;が含まれる。
【0007】
さらに、本発明によれば、ヒドロキシル部位を有するヌクレオチドをキャッピングする方法が提供される。本方法は、ヌクレオチドを、所定量の無水酢酸、および1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンを実質的に含有しない所定量のN−メチルイミダゾールと反応させる工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の方法の一実施形態を示す循環図である。
図2】本発明の方法のデブロッキング工程を示す図である。「CPG」という頭字語は、コントロールドポアガラス(controlled pore glass;制御された細孔を有するガラス)を表す。
図3】DMT(ジメトキシトリチル)基で保護された4種類のヌクレオチド(ホスホロアミダイト)を示す図である。
図4】本発明の方法のキャッピング工程を示す図である。
図5】1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンのH−NMRスペクトルを示す図である。
図6】GCMS(ガスクロマトグラフ質量分析法)クロマトグラムにより得られた、工業ロットのN−メチルイミダゾールの不純物プロファイルを示す図である。
図7】GCMSクロマトグラムにより得られた、工業ロットのN−メチルイミダゾールの不純物プロファイルを示す図である。
図8】1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンのGCMSピークを示す図である。
図9】1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンのGCMSピークを示す図である。
図10】1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンのGCMSピークを示す図である。
図11】1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンがそのシッフ塩基と平衡状態にあることを示す図である。
図12】オリゴヌクレオチド付加化合物を生成するプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
生成物であるオリゴヌクレオチド中の望ましくない付加化合物の供給源は、合成プロセスで使用されたキャッピング剤の1つであるN−メチルイミダゾール中の不純物であると特定された。この不純物は、いくつかの工業ロットのN−メチルイミダゾール中に、1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンおよび/またはそのシッフ塩基であるN−メチレンメタンアミンとして認められた。この2つの不純物は、通常N−メチルイミダゾール中で平衡状態で存在している。便宜上および参照しやすいように、この2つの不純物を、まとめて、1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンと呼ぶ。N−メチルイミダゾール中のかかるトリアジンの含有量は、約40〜約70ppm(100万重量部当たりの重量部)と高いことが観察されている。このトリアジンは、N−メチルイミダゾール中でガスクロマトグラフ質量分析法(GCMS)およびプロトンNMRなどの分析技法により同定することができる。
【0010】
本発明の方法では、不純物を含有するN−メチルイミダゾールの問題は、前記トリアジンを実質的に含有しない工業ロットのN−メチルイミダゾールを求めることによって解決された。好ましくは、このN−メチルイミダゾールは、N−メチルイミダゾールの重量を基準にして約10重量ppm以下しか前記トリアジンを含有しない。最も好ましくは、このN−メチルイミダゾールは、約1ppm以下しか前記トリアジンを含有しない。
【0011】
本方法の第1の工程では、ブロッキングされたヌクレオチドを準備する。最初に使用するブロッキングされたヌクレオチドは、好ましくはシリカまたはポリマーなどの支持体に共有結合させた形態で提供される。ブロッキングされたヌクレオチドは、利用可能なヘテロ環式核酸塩基のなかから様々に誘導されおよび選択される。
【0012】
ブロッキングされたヌクレオチドをデブロッキングして、ブロッキングされていないヌクレオチドを生成する。本発明の一実施形態において、かかるデブロッキングは、好ましくはトルエンまたはジクロロメタン(DCM)の存在下、所定量のジクロロ酢酸(DCA)と反応させることにより実施される。
【0013】
次いで、デブロッキングされたヌクレオチドを活性化して、それを調製し、ホスホロアミダイトとカップリングさせる。活性化は、アクチベーターとの接触により実施される。
【0014】
活性化した後、前記デブロッキングされたヌクレオチドをホスホロアミダイトとカップリング、すなわち反応させて、ホスファイトオリゴマーを生成する。ホスホロアミダイトは、利用可能なすべてのホスホロアミダイトのなかから様々に選択される。有用なオリゴヌクレオチドの生成では、このカップリング工程を、所望のオリゴヌクレオチド長が実現されるまで反復することが好ましい。
【0015】
典型的には、かかるカップリング工程中に、一部分のデブロッキングされたヌクレオチドのみがホスホロアミダイトと反応する。未反応のヌクレオチドにはキャッピングを行わなければならない。キャッピングは、この未反応のヌクレオチドを、所定量の無水酢酸、および1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンを実質的に含有しない所定量のN−メチルイミダゾールと反応させることによって実施される。キャッピングしたオリゴヌクレオチドは、もはやその後のヌクレオチド付加に利用されることはない。
【0016】
キャッピングした後、ホスファイトオリゴマーは、酸化または硫化される。本方法の一実施形態において、このホスファイトオリゴマーを、水およびピリジンの存在下、ヨウ素と反応させることにより酸化する。
【0017】
オリゴヌクレオチドを生成する方法に関するさらなる開示は、米国特許第7,169,916B2号明細書に記載され、この特許は参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
本発明の特徴は、次の実施例によりさらに明らかになるであろう。実施例は、限定するものと解釈されるべきでない。
【実施例】
【0019】
実施例1
ホスホロチオ酸オリゴヌクレオチドは、本発明の方法に従って、1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンを実質的に含有しないN−メチルイミダゾールのキャッピング剤を使用しながら、合成することができる。
【0020】
図2を参照すると、CPG固体支持体に結合している第一の塩基であるシチジンヌクレオチドは、活性部位がすべて保護されているので最初は不活性である。次の塩基を付加させるために、5’−ヒドロキシル基を保護しているジメトキシトリチル(DMT)基を除去しなければならない(デブロッキング工程)。DCM(ジクロロメタン)中(またはトルエン中)の3%DCA(ジクロロ酢酸)を添加することで、DMT基が除去され、5’−ヒドロキシル基が反応部位になることが可能になる。
【0021】
次の塩基モノマーは、活性化される(活性化工程)まで付加することはできない。活性化は、5−エチルチオテトラゾールのようなテトラゾール系アクチベーターなどのアクチベーターをカラムに添加することによって行われる。前述した塩基の活性な5’−ヒドロキシル基と、新たに活性化されたリンとが結合して、この2つの塩基が一緒に緩く結合する。これによって、不安定なホスファイト結合が形成される。次いで、この反応カラムをアセトニトリルで洗浄して、過剰のアクチベーター、未結合のホスホロアミダイト、および副生物を除去する。DMTで保護されたヌクレオチド(ホスホロアミダイト)は4種類あり、図3に示されている。
【0022】
反応しなかった第1の塩基はいずれも、図4に示すようにNMI(N−メチルイミダゾール)でキャッピングする(キャッピング工程)。これらの反応しなかった塩基は、合成サイクルにおいてさらに役割を果たすことはない。左側の塩基(固体の支持体にすでに結合されている)は、活性化工程で塩基に結合しなかった。未反応の5’−ヒドロキシルは、アセチル化によるさらなる反応でブロッキングされる。
【0023】
活性化工程で、次の所望の塩基を、前の塩基に付加し、不安定なホスファイト結合を形成する。この結合を安定化するために、水およびピリジンに溶かした希ヨウ素酸化溶液を反応カラムに添加する。不安定なホスファイト(phosphite)結合を酸化して、より安定なホスフェイト(phosphate)結合を形成する(酸化工程)。
【0024】
Sigma Aldrich(シグマ アルドリッチ社)のウェブサイト(SIAL.COM)から取得した1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンのH NMRスペクトルを図5に示す。1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンのGCMSプロファイルを図8〜10に示す。1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンの同定されたGCMSピークを下記の表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
NMI(N−メチルイミダゾール)の総イオンカウント数を示すGCMSクロマトグラムを図6に示す。不純物ピークが目に見えるように拡大したスケールで総イオンカウント数を示したGCMSクロマトグラムを図7に示す。データは、Shimadzu(島津製作所) GCMS 2010で収集した。
【0027】
1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンとそのシッフ塩基の平衡式を図11に示す。この式は、「Infrared and NMR Spectroscopic Studies of Hexhydro−1,3,5−Trialkyltriazines(ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアルキルトリアジンの赤外線およびNMRスペクトルの研究)」、Chemia Stosowana(1973年)、17巻(3号)、359〜66頁から抜粋した。
【0028】
図12は、1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンのオリゴマー化生成物を示す図である。
【0029】
実施例2
手順に従って、表2および3に記載の材料を用いて、DNAを合成する。
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
上記の説明は本発明の例示にすぎないと理解されたい。当業者は、本発明から逸脱することなく様々な代替形態および修正形態を考案することができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内に入るような代替形態、修正形態、および変形形態をすべて包含するよう意図されている。
[本発明の態様]
1.オリゴヌクレオチドまたはホスホロチオ酸オリゴヌクレオチドを製造する方法であって、次の工程:
(a)所定量のブロッキングされたヌクレオチドを準備すること;
(b)前記ブロッキングされたヌクレオチドをデブロッキングして、デブロッキングされたヌクレオチドを生成すること;
(c)前記デブロッキングされたヌクレオチドを活性化すること;
(d)前記デブロッキングされたヌクレオチドとホスホロアミダイトをカップリングして、ホスファイトオリゴマーを生成すること;
(e)所定量の無水酢酸、および1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンを実質的に含有しない所定量のN−メチルイミダゾールと反応させることにより、前記デブロッキングされたヌクレオチドのうちカップリングしなかったものをキャッピングすること;
(f)前記ホスファイトオリゴマーを酸化してオリゴヌクレオチドを生成し、または前記ホスファイトオリゴマーを硫化してホスホロチオ酸オリゴヌクレオチドを生成すること;及び
(g)任意的に(b)から(f)の工程を反復すること;
を含む、前記方法。
2.前記のブロッキングされたヌクレオチドがブロッキング基を含み、前記デブロッキングが、トルエンまたはジクロロメタン中、所定量のジクロロ酢酸と接触させることによって実施される、1に記載の方法。
3.前記のデブロッキングされたヌクレオチドの活性化が、所定量のアクチベーターとの接触によって実施される、1に記載の方法。
4.前記N−メチルイミダゾールが、N−メチルイミダゾールの重量を基準にして約10ppm以下の含有量の1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンを有する、1に記載の方法。
5.前記ホスファイトオリゴマーを酸化し、かかる酸化が、水およびピリジン中、所定量のヨウ素と接触させることによって実施される、1に記載の方法。
6.(b)から(f)の工程を、所望のオリゴヌクレオチド長またはホスホロチオ酸オリゴヌクレオチド長に達するまで反復する、1に記載の方法。
7.前記のブロッキングされたヌクレオチドがヘテロ環式核酸塩基のなかから選択される、1に記載の方法。
8.最初に使用する前記のブロッキングされたヌクレオチドが、支持体に共有結合している、1に記載の方法。
9.ヒドロキシル部位を有するヌクレオチドを、所定量の無水酢酸、および1,3,5−トリメチルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンを実質的に含有しない所定量のN−メチルイミダゾールと反応させることによりキャッピングすることを含む方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12