特許第5956136号(P5956136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社イトーキの特許一覧

<>
  • 特許5956136-什器装置 図000002
  • 特許5956136-什器装置 図000003
  • 特許5956136-什器装置 図000004
  • 特許5956136-什器装置 図000005
  • 特許5956136-什器装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956136
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】什器装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 17/00 20060101AFI20160714BHJP
【FI】
   A47B17/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-234689(P2011-234689)
(22)【出願日】2011年10月26日
(65)【公開番号】特開2013-90800(P2013-90800A)
(43)【公開日】2013年5月16日
【審査請求日】2014年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】守田 圭
【審査官】 西村 直史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−102565(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3046893(JP,U)
【文献】 実用新案登録第2547315(JP,Y2)
【文献】 実開平02−050238(JP,U)
【文献】 実公昭52−004266(JP,Y2)
【文献】 特開昭50−073763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 1/00−41/06
91/00−97/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止状態に配置される固定式什器と移動可能なワゴンとを有しており、
前記固定式什器は、前記ワゴンの背面と対向した被連結部材を有していて、この被連結部材に、前記ワゴンに向けて手前に突出した下板と該下板の前端から上向きに突出した前板を有していて左右方向に長く延びる後ろ装着部が形成されており、
前記ワゴンと被連結部材の後ろ装着部とが連結部材によって連結される構成であって、
前記連結部材は平板状の板材から成っていて前記ワゴンの間口方向に長い左右横長の形態であり、前記連結部材の後端に、前記被連結部材の後ろ装着部に上から係脱する下向きの鉤型の後ろ係止部が左右方向に長く形成されており、前記連結部材の後ろ係止部は前記被連結部材の後ろ装着部によって前向き移動不能に保持される一方、
前記連結部材の前端には、上向き鉤形で左右に分離した複数の前係止部が形成されて、前記ワゴンの背面板には、前記前係止部が係脱自在な溝孔状前装着部が前記前係止部に対応して複数形成されており、前記前係止部は前記前装着部に対して後ろ向き抜け不能に保持されている、
什器装置。
【請求項2】
前記連結部材は、前記前係止部が前装着部に係合することによって水平状の姿勢が保持されており、前記連結部材が取付けられたワゴンを前記被連結部材に向けて移動させると、後ろ係止部は、後ろ装着部をいったん乗り越えてから戻ることによって後ろ装着部に係止するようになっている、
請求項1に記載した什器装置。
【請求項3】
前記連結部材の前係止部は上向き鉤型であり、前記連結部材を後端が上になるように起こした姿勢で前記前係止部を前記前装着部に嵌め込んでから水平状に倒すと、当該連結部材は水平状の姿勢で後ろ向き抜け不能に保持される、
請求項2に記載した什器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定式什器とワゴンとからなる什器装置に係り、より詳しくは、地震などの際に、ワゴンが固定式什器から離れないようにするための連結構造に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地震発生時などに、移動式什器の一例であるワゴンが、固定式の作業台や間仕切パネルから不用意に離れて飛び出したりもしくは転倒しないようにすることが行われており、そのための装置として、特許文献1や特許文献2等が知られている。
【0003】
特許文献1では、ワゴン本体の下部に、作業台格納空間内の掛止部に係合すべき掛合凹所と該掛合凹所と掛止部に当接される手前下向きの傾斜縁を奥端部に形成し、手前側部分を操作部となした掛合部材を、支持軸による枢支点より奥部を重量大となして枢支している。
【0004】
他方、特許文献2には、両側の少なくとも前面に臨む位置に複数の係止孔を上下方向に設けてなる間仕切パネルと、該間仕切パネルの係止孔に着脱自在に嵌合係止するフックを両側に有し、前面には前方へ略直角に突設した上板と下板とで横方向の凹溝を形成するとともに、該下板の前縁に係止板を上方へ折曲形成してなる連繋部材と、移動式収納庫の本体より後縁部を後方へ突出した天板の内部奥行方向に、前方側に操作杆を設け且つ後方側前記連繋部材の係止板に係止する爪片を設けた長尺の係止杆を、該爪片が天板後縁部の下面から出没自在となして枢着するとともに、前記操作杆に摺動当接し該操作杆を下方へ押圧する傾斜縁を形成した可動板を横方向往復可能に設けた鍵装置を天板前面に取付けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭58−196629号公報(第1図〜第4図参照)
【特許文献2】実開平02−50238号公報(第2図〜第4図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記各特許文献の連結装置では、ワゴン本体の下部や、ワゴン本体の上面に設けられた天板の前部に操作部を臨ませ、奥行き方向に長い部材の後端部に、静止部材側の前面に設けられた掛止部もしくは連繋部材の係止板に係止できる係合凹所が備えられ、操作部の操作により前記長い部材の後端(奥端)側が上下揺動するように、当該長い部材の前後方向中途部が枢支されている。従って、ワゴン本体の前部から係止離脱の操作をできる便利さがあるものの、構成が複雑で、ワゴン本体への装置の組み込みにも手間が掛かるという問題があった。
【0007】
本願発明は、上記従来技術の問題点を解決し、簡単な構成で、ワゴンが固定式什器から不用意に離れて飛び出さないようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、
静止状態に配置される固定式什器と移動可能なワゴンとを有しており、
前記固定式什器は、前記ワゴンの背面と対向した被連結部材を有していて、この被連結部材に、前記ワゴンに向けて手前に突出した下板と該下板の前端から上向きに突出した前板を有していて左右方向に長く延びる後ろ装着部が形成されており、
前記ワゴンと被連結部材の後ろ装着部とが連結部材によって連結される構成において、
前記連結部材は平板状の板材から成っていて前記ワゴンの間口方向に長い左右横長の形態であり、前記連結部材の後端に、前記被連結部材の後ろ装着部に上から係脱する後ろ係止部が、下向きの鉤型で左右方向に長い状態に形成されており、前記連結部材の後ろ係止部は前記被連結部材の後ろ装着部によって前向き移動不能に保持される一方、
前記連結部材の前端には、上向き鉤形で左右に分離した複数の前係止部が形成されて、前記ワゴンの背面板に、前記前係止部が係脱自在な溝孔状前装着部が前記前係止部に対応して複数形成されており、前記前係止部は前記前装着部に対して後ろ向き抜け不能に保持されている。
【0009】
【0010】
請求項の発明は、請求項において、前記連結部材は、前記前係止部が前装着部に係合することによって水平状の姿勢が保持されており、前記連結部材が取付けられたワゴンを前記被連結部材に向けて移動させると、後ろ係止部は、後ろ装着部をいったん乗り越えてから戻ることによって後ろ装着部に係止するようになっている。請求項の発明は、請求項において、前記連結部材の前係止部は上向き鉤型であり、前記連結部材を後端が上になるように起こした姿勢で前記前係止部を前記前装着部に嵌め込んでから水平状に倒すと、当該連結部材は水平状の姿勢で後ろ向き抜け不能に保持される。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によれば、連結部材は、平板の前後両端部に係止部が形成されたもので、構成が至極簡単である。また、固定式什器における被連結部材の後ろ装着部も、被連結部材に剛性を高めるために屈曲形成した個所を利用できる。さらに、ワゴンの前装着部の構成も至極簡単である。このように、本願発明は簡単な構成でワゴンを前後方向に移動不能にでき、製造コスト低減させることができながら、装着作業性も向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(A)は本願発明を適用した机とワゴンの連結状態を前方から見た斜視図、(B)は同じく後方から見た斜視図である。
図2】第1実施例の側面図である。
図3】(A)はワゴンの背面の前装着部への連結部材の係止状態を示す要部拡大断面図、(B)はワゴンとともに連結部材を机の被連結部材に接近させる状態を示す要部拡大断面図、(C)は連結部材で机とワゴンを連結した状態の要部拡大断面図である。
図4】ワゴンの前装着部と連結部材との関係を示す概略平面図である。
図5】(A)は連結部材などの第2実施例を示す要部側面図、(B)は同じく要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本願発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1図2に示すように、移動式什器の一例としてのワゴン1、固定式什器の一例としての机2の内部に配置されるものである。
【0014】
机2は左右の脚体3を備えていてそれらの上に天板4が固定されており、左右の脚体3の後端上部間を横長の梁状の被連結部材5にて連結している。図の実施例では、左右の脚体3は、前後の脚支柱3a,3bの上端間を前後長手の梁材3cにて連結した側面視下向きコ字状の形態であるが(図2等参照)、一方の脚体を側面視で横向きコ字状の形態としてもよい。通常、各脚体3の下端にはアジャスタ6が取付けられていて、天板4の水平度を確保できる。なお、図示の机は事務用であり、天板4の後端縁にパソコン等の電気製品のためのコードを床側から導くためのダクト開口部7を有しており、ダクト開口部7は不要時にはカバー体8に覆われている。
【0015】
実施例のワゴン1は、多段の抽斗11が金属板製の本体10に対して前後引き出し自在に設けられている。本体10の下端にはキャスタ12を設けている。
【0016】
[連結装置]
静止体である机2に対してワゴン1を前方に移動不能とする連結装置は、机2の奥端側に位置する被連結部材5と、この被連結部材5とワゴン1の本体10の背面側とに対して着脱自在な連結部材13を備えている。
【0017】
被連結部材5は、金属板を屈曲形成(板金加工)したもので、側断面がコ字状の外横梁14の内面に、同じく内横梁15が溶接等にて固着された構成になっている。外横梁14の下板14aには上向きにL字状の後ろ装着部16が形成され、内横梁15の下端部と後ろ装着部16との間に、連結部材13の後端に設けた下向き鉤型の後ろ係止部20が嵌まり得る挿入空間17が形成されている(図3(B),図3(C)参照)。
【0018】
連結部材13は板材製で水平状の平板13aを備えており、この平板13aの前端に、左右一対(もしくは複数)の前係止部21が形成されている一方、平板13aの後端に、既述の後ろ係止部20が形成されている。後ろ係止部20は下向きに屈曲した鉤型であり、且つ、下方に行くに従って手前にずれた傾斜面20aを有する。そして、後ろ係止部20は、平板13aの左右長さLとほぼ同じ左右長さを有している。平板13aの左右長さLは、ワゴン1の本体10の左右幅寸法と等しいか(図4参照)、もしくは適宜短く設定されている。連結部材13の前後幅寸法H(図4参照)は、被連結部材5に連結部材13を介して連結されたワゴン1の前面位置が机2の天板8の前縁より若干奥位置になる程度に設定されている(図2参照)。
【0019】
左右の前係止部21は、平板13aに上向きに屈曲形成されており、上端に行くに従って後方に若干ずれた(傾斜した)上向きの鉤型である(図3(A),図3(B),図3(C)参照)。
【0020】
ワゴン1の本体10の背面板10aには、前装着部18が第2係止部21の配置位置と対応するように設けられている。前装着部18は、背面板10aに穿設された横長孔である(図3(A),図3(B),図3(C),図4参照)。
【0021】
[連結装置の取付け方法]
図3(A)で示すように、まず、作業者は連結部材13を手に持ち、前係止部21を下にして起こした姿勢で平板13aがワゴン1の本体10の背面板10aに近づくようにし、各前係止部21をその自由端から前装着部18に差し込む。その状態で平板13aから手を離すと、当該平板13aをほぼ水平となした状態で、連結部材13がワゴン1の本体10の背面側に装着される。
【0022】
次いで、ワゴン1を天板8の下方において被連結部材5の前面に接近する方向に押し込む。すると、連結部材13は、連結部材13の後ろ係止部20が後ろ装着部16の上端に接近するに従い、当該後ろ係止部20の傾斜面20aが後ろ装着部16の上面を乗り越えてから(図3(B)参照)、自重により、後ろ係止部20が後ろ装着部16に係止するように姿勢変更する(図3(C)参照)。
【0023】
図3(C)の状態では、ワゴン1が机1の前方に移動しようとしても、連結部材13の後ろ係止部20が後ろ装着部16に係止し、且つ前係止部21が前装着部18に係止して、それぞれ抜け不能であるので、ワゴン1机1の前方に飛び出すことない。
【0024】
他方、ワゴン1が机1の後方に移動しようとすると、後ろ係止部20が後ろ装着部16の挿入空間の後端に当たり、連結部材13における平板13aの前端縁がワゴン1の本体10の背面板10aに当たることになるので、ワゴン1は後方にも移動できない。このようにして、地震発生の際に、ワゴン1は机1の前後方向に移動不能となり、転倒することが防止できる。
【0025】
なお、被連結部材5の後ろ装着部16及び連結部材13の後ろ係止部20は机2の左右横方向(幅方向)に延び、且つ、後ろ係止部20の左右長さが後ろ装着部16の左右長さよりも短いため、連結部材13にてワゴン1を後ろ装着部16に連結した状態の元で、ワゴン1を机2の内部において左右の脚体3、3のいずれかに近づくように配置することが任意にできる。
【0026】
[連結装置の第2実施例]
図5に示す第2実施例の連結部材22でも、平板22aに後ろ係止部20と前係止部23とが形成されている。後ろ係止部20は第1実施例と同じである。前係止部23は、平板22aの前端から下向きにほぼ直角に屈曲形成されている。被連結部材5も第1実施例と同じ構成である。ワゴン1における本体10の背面板10aには、平面視でコ字状に屈曲形成された前装着部24が配置されており、前装着部24の左右両端を溶接などにて固定している。この実施例では、前装着部24と背面板10aとの間には、前係止部23を上方から挿入できる隙間が形成されることになる。
【0027】
この実施例では、机2における被連結部材5の前端の後ろ装着部16と、ワゴン1における本体10の背面板10aとを所定の間隔(連結部材22の前後幅寸法に近い値)で配置し、被連結部材5における後ろ被装着部16に第1係止部20が上方から嵌まり、ワゴン1の前装着部24に第2係止部23が上方から嵌まるように、連結部材22を装着すればよい図5(A)参照)。この第2実施例の構成でも、連結部材22は、ワゴン1の前装着部24及び被連結部材5の後ろ装着部16に対して着脱自在となる。
【0028】
上記実施例の他、ワゴン1における本体10の背面板10aに対する連結部材を水平枢支軸を介して上下揺動可能に取付け、且つ連結部材の平板が下向きからほぼ水平となる方向にバネ付勢し、連結部材の奥端の後ろ係止部を被連結部材の下端に形成された下向きの後ろ装着部に対して下方から係止できる構成を採用しても良い。
【0029】
いずれの実施例であっても、連結装置の構成として、固定式什器の被連結部材を利用でき、且つ連結部材が前後両端を屈曲形成した板材よりなるから、構造が極めて簡単となり、製造コストも低減させることができる。また連結部材の装着作業性も至極簡単である。さらに、後ろ装着部16と前装着部18、24の床面からの高さ寸法とを同一に設定しておけば、ワゴン1の上面の天板の有無、天板の高さ寸法の相違などの仕様の変更に拘らず、本願発明を適用できる。また、本願発明において、固定式什器とは机の他、間仕切パネル等も含む趣旨であり、ワゴンは、事務用や家庭用のワゴンを含む。
【符号の説明】
【0030】
1 ワゴン
2 固定式什器の一例としての机
5 被連結部材
10 本体
12 キャスタ
13、22 連結部材
16 後ろ装着部
18、24 前装着部
20 後ろ係止部
21、23 前係止部
図1
図2
図3
図4
図5