特許第5956148号(P5956148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956148
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】共重合芳香族ポリエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/688 20060101AFI20160714BHJP
   C08G 63/86 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   C08G63/688
   C08G63/86
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-273360(P2011-273360)
(22)【出願日】2011年12月14日
(65)【公開番号】特開2013-124291(P2013-124291A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】友成 安彦
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−277491(JP,A)
【文献】 特開2004−107559(JP,A)
【文献】 特開2010−241974(JP,A)
【文献】 特開平02−003420(JP,A)
【文献】 特開2001−200046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/688
C08G 63/86
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくは2,7−ナフタレンジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールおよび下記式(I)で示される芳香族ジオールを原料として用いる共重合芳香族ポリエステルの製造方法において、少なくとも下記の工程を含んでなることを特徴とする共重合芳香族ポリエステルの製造方法。
工程1:前記2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくは2,7−ナフタレンジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体と、前記エチレングリコールおよび前記下記式(I)で示される芳香族ジオールとをエステル交換反応触媒を使用し0.08MPa以上の加圧下でエステル交換反応させる工程
工程2:工程1で製造した反応物を下記式(II)で示されるリン化合物とゲルマニウム化合物を使用して重縮合させる工程
【化1】
【化2】
[上記式中、R、RおよびRは、同一または異なって炭素数原子数1〜4のアルキル基を示し、Xは、−CH−または―CH(Y)−を示す(Yは、ベンゼン環を示す)。]
【請求項2】
前記工程2で得られた共重合芳香族ポリエステルの固有粘度が0.50〜0.60dL/gであって、前記一般式(II)で表されるリン化合物を、該共重合芳香族ポリエステルを構成する全ての芳香族ジカルボン酸成分に対して10〜50mmоl%含有することを特徴とする請求項1に記載の共重合芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項3】
前記共重合芳香族ポリエステルガラス転移温度が135℃以上かつ末端カルボキシル濃度が15eq/T以下であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の共重合芳香族ポリエステルの製造方法。



【請求項4】
前記共重合芳香族ポリエステルを成形する際の流動性が50cm/10min以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の共重合芳香族ポリエステルの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエチレンナフタレート樹脂を用いた溶融重合によって耐熱性や耐食品性、さらには酸素バリア性や耐沸水性に優れたポリエステル重合体およびその製造方法に関するものである。本発明で得られた共重合芳香族ポリエチレンナフタレート重合体は、食器や食品包装材料に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
近年、食品包装材料や医療用材料などにプラスチックを用いる研究開発が精力的に行われており、食品包装材料や医療用材料においては成形品の耐熱性やガスバリア性、さらには耐沸水性や表面硬度が要求される。医療用材料には非晶性の環状ポリオレフィンが、食品容器材料にはポリカーボネートや芳香族ポリエステルなどが使用されている。しかし、環状ポリオレフィンは耐熱性や透明性に優れるものの、酸素バリア性が低いことに問題がある(例えば、特許文献1〜3参照。)。芳香族ポリエステルにおいては、酸素バリア性は優れているものの、吸水性、耐熱性、透明性不足であるといった問題があり(例えば、特許文献4参照。)、共重合ポリエチレンナフタレートにおいては、耐熱性不足であると言った問題がある(例えば、特許文献5、6参照。)。
【0003】
一方で耐熱性を改良した共重合芳香族ポリエステルは製造されているものの、重合触媒にアンチモンといった食品の安全性が懸念される重金属を用いていることや、n−ブチルチタネートといった食品安全性を有する金属を用いていても反応速度が遅くかつ反応率も低い、さらには成形品の色相が悪化するといった問題がある(例えば、特許文献7、8参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−186632号公報
【特許文献2】特開2008−208237号公報
【特許文献3】特開平02−189347号公報
【特許文献4】特開平10−245433号公報
【特許文献5】特開平10−017661号公報
【特許文献6】特開平11−293005号公報
【特許文献7】特許第2555377号公報
【特許文献8】特開2003−277491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために検討した結果達成されたものであって、ダイレクト成形品に必要な強度を持ち、優れた耐熱性、耐衝撃性、さらには耐食品性や耐加水分解性を有する共重合ポリエステルの効率的な製造方法、およびそれにより得られる共重合ポリエステルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下2つの工程を用いることによってダイレクト成形に必要な強度を持ち、耐熱性、耐衝撃性に優れた共重合ポリエステルが提供できることを見出し、本発明を解決した。即ち本発明は、2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくは2,7−ナフタレンジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールおよび下記式(I)で示される芳香族ジオールを原料として用いる共重合芳香族ポリエステルの製造方法において、少なくとも下記の工程を含んでなることを特徴とする共重合芳香族ポリエステルの製造方法である。
工程1:前記2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくは2,7−ナフタレンジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体と、前記エチレングリコールおよび下記式(I)で示される芳香族ジオールとをエステル交換反応触媒を使用し0.08MPa以上の加圧下でエステル交換反応させる工程
工程2:工程1で製造した反応物を下記式(II)で示されるリン化合物とゲルマニウム化合物を使用して重縮合させる工程
【0007】
すなわち、下記式(I)で表されるビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンを2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくは2,7−ナフタレンジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体、さらエチレングリコールとカルシウム化合物、マグネシウム化合物を使用して加圧下エステル交換せしめる工程、さらには下記式(II)で表されるリン化合物とゲルマニウム化合物を使用して重縮合せしめる工程、といった2つの製造工程を経て得られる共重合芳香族ポリエステルの製造方法および共重合芳香族ポリエステルである。
【0008】
【化1】
【0009】
【化2】
[上記式中、R、RおよびRは、炭素数原子数1〜4の、同一または異なるアルキル基を示し、Xは、−CH−または―CH(Y)−を示す(Yは、ベンゼン環を示す)。]
【発明の効果】
【0010】
本発明の共重合芳香族ポリエステルは耐熱性、耐食品性さらには耐沸水性に優れている。また、人体に悪影響を及ぼす物質(特に内分泌かく乱作用)を使用していないため、食品容器材料(特に給食食器など)や医療用材料に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の製造方法において原料として用いられる芳香族ジカルボン酸成分としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、または2,7−ナフタレンジカルボン酸を主成分とするが、他の1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸が共重合されていても良い。また、原料としてこれらのナフタレンジカルボン酸を用いる際には、その誘導体として、これらのナフタレンジカルボン酸のエステル形成性誘導体を用いても良い。具体的には、2,6−ナフタレンジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ジブチルエステル、ジヘキシルエステル、ジフェニルエステルもしくはジカルボン酸ハライド化合物または2.7−ナフタレンジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ジブチルエステル、ジヘキシルエステル、ジフェニルエステルもしくはジカルボン酸ハライド化合物を挙げることができる。本発明の共重合芳香族ポリエステルの特性を損なわない範囲で他のジカルボン酸を併用することができる。例えばテレフタル酸、イソフタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。また上述したようなこれらのジカルボン酸の誘導体を用いることもできる。本発明の共重合芳香族ポリエステルの特性を損なわない範囲とは、共重合芳香族ポリエステルを構成する全ての芳香族ジカルボン酸成分に対して30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。また、少量のトリメリット酸のような三官能性以上のカルボン酸成分を用いてもよく、無水トリメリット酸のような酸無水物を少量用いてもよい。また、乳酸、グリコール酸のようなヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル等の上述した誘導体に順ずる誘導体を少量用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。
【0012】
また、本発明においては、下記式(I)で示されるビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンを共重合されていることを特徴とする。
【0013】
【化3】
【0014】
この化合物を共重合芳香族ポリエステルに共重合することによって、本願発明は以下に示すような本願の発明の効果を奏するものである。この化合物は共重合芳香族ポリエステルを構成する全ての芳香族ジカルボン酸成分に対して50〜85モル%共重合するように、共重合芳香族ポリエステルの原料として用いることが好ましい。より好ましくは65〜80モル%共重合するように用いることである。共重合率は後述するように共重合芳香族ポリエステルを可溶な溶媒に溶解してH−NMRにて測定して得られたスペクトルの解析結果から測定することが出来る。
【0015】
本発明の製造方法において原料として用いられる脂肪族ジオールとしてはエチレングリコールを主成分とするが、本発明の共重合芳香族ポリエステルの特性を損なわない範囲で他のグリコール成分を併用することができる。例えば、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール(トリメチレングリコール)、ブタンジオール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール(1,6−ヘキサンジオール)、1,9−ノナンジオール、デカメチレングリコール、2−メチル−1,3プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチルオクタンジオールなどの直鎖または分岐鎖のある脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、2−メチル−1,1−シクロヘキサンジオール、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−2,2−プロパン、2,2−ノルボルナンジメタノール、3−メチル−2,2−ノルボルナンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、2,6−ノルボルナンジメタノール、パーヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,3−ジメタノール、アダマンタンジメタノール、1,3−ジメチル−5,7−アダマンタンジメタノール、1,3−アダマンタンジオール、1,3−ジメチル−5,7−アダマンタンジオールなどの脂環式ジオール;ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシフェナンスロリン、キシリレンジオール[ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン]、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールS(ビス[4−ヒドロキシフェニル]スルホン)、ビスフェノールSのエチレンオキシド4モル付加物(ビス[4−ヒドロキシエトキシエトキシフェニル]スルホン等)またはプロピレンオキシド2モルもしくは4モル付加物などの芳香族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(オキシ)エチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリメチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテル酸素を有するグリコールなどが挙げられる。上記ジオール成分は1種または2種以上混合して目的によって任意に使用できる。さらに少量のグリセリン、ペンタエリスリトールのような多価アルコール成分を用いてもよい。また少量のエポキシ化合物を用いてもよい。本発明の共重合芳香族ポリエステルの特性を損なわない範囲とは、全グリコール成分に対して30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。本発明の共重合ポリエステルの製造時におけるかかるグリコール成分の使用量は、前記ジカルボン酸もしくはジカルボン酸のエステル形成性誘導体に対して1.5モル倍以上2.0モル倍以下であることが好ましい。グリコール成分の使用量が1.5モル倍に満たない場合にはエステル化あるいはエステル交換反応が十分に進行せず好ましくない。また、2.0モル倍以上を超える場合にも、理由は定かではないが反応速度が遅くなり、過剰のグリコール成分からの副生成物(たとえばジエチレングリコール)量が大となり好ましくない。これらの観点から特にジエチレングリコールの共重合量については全グリコール成分のモル数を基準として7.0モル%以下、好ましくは1.0〜6.0モル%とすることが好ましい。
【0016】
本発明の共重合芳香族ポリエステルの製造方法においては、共重合芳香族ポリエステルを構成する全ての芳香族ジカルボン酸成分に対して10モル%以下、より好ましくは1〜8モル%ジエチレングリコールを共重合するような条件で製造を行うことも好ましい。なお、製造の際においては。そのジエチレングリコールを原料として製造の当初の時点ないしは重縮合反応の終了時点の任意の工程で投入する場合や、エステル交換反応条件または重縮合反応条件としてエチレングリコールからジエチレングリコールが副生するような条件を選択し、原料としてジエチレングリコールを添加せずともジエチレングリコールが共重合芳香族ポリエステルに共重合される場合も含んでいる。この比率が10モル%を超えると共重合芳香族ポリエステルの耐熱性が著しく低下して、本願発明の効果を奏さない場合がある。共重合率の測定操作は上述もしくは実施例の項目に記載のとおりである。
【0017】
エステル交換反応をさせるためにエステル交換反応触媒を用いるが、該エステル交換反応触媒は、反応性の観点から、マンガン化合物、チタン化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物が好ましく、整色剤としても有効なコバルト化合物が好ましいが、食品安全性を考慮した場合、カルシウム化合物やマグネシウム化合物を用いるのが特に好ましい。これらのエステル交換反応触媒を用いる場合には、それぞれ単独で用いても良いし、併用しても良い。より好ましくはカルシウム化合物またはマグネシウム化合物を用いる場合であり、更に好ましくはカルシウム化合物およびマグネシウム化合物を用いる場合である。これらのエステル交換反応触媒としては、上記の金属元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、塩化物、臭化物、酢酸塩、安息香酸塩(これらの化合物に対して結晶水が含有されている場合を含む。)であることが好ましい。すなわち好ましいエステル交換反応触媒は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、酢酸カルシウム、安息香酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、酢酸マグネシウム、安息香酸マグネシウムである。またこれらのエステル交換反応触媒の使用量は1化合物あたり共重合芳香族ポリエステルを構成する全ての芳香族ジカルボン酸成分に対して10〜70ミリモル%、より好ましくは20〜60ミリモル%であることが好ましい。また使用するエステル交換反応触媒の合計量としては、共重合芳香族ポリエステルを構成する全ての芳香族ジカルボン酸成分に対して10〜2000ミリモル%、より好ましくは20〜150ミリモル%である。エステル交換反応触媒の使用量が上記の数値範囲より少ないとエステル交換反応が進行しない、または下記のようにエステル交換反応率が80%まで達しない場合がある。一方、上記の数値範囲より多いと副反応生成物の発生が顕著となり、目的とする共重合率、固有粘度、ガラス転移温度等の所定の物性を有する共重合芳香族ポリエステルを得ることができないことがある。
【0018】
エステル交換反応後に反応槽内に添加する安定剤はリン化合物が好ましく、正リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノプロピルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノヘキシルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノフェニルホスフェート、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、カルシウムジエチルビス(((3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスホネート)(チバスペシャリティケミカルズ、商品名:Irgnox1425)、マグネシウムジエチルビス(((3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスホネート)、カルシウムジエチルビス(((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスホネート)、マグネシウムジエチルビス(((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスホネート)、カルシウムジエチルビス(((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)エチル)ホスホネート)、マグネシウムジエチルビス(((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)エチル)ホスホネート)などの各種の有機、無機リン化合物が挙げられるが、エステル交換反応触媒の失活効果や成形品の着色を抑える点では、下記一般式(II)により表されるリン化合物を用いることが好ましい。
【0019】
【化4】
[上記式中、R、RおよびRは、炭素数原子数1〜4の、同一または異なるアルキル基を示し、Xは、−CH−または―CH(Y)−を示す(Yは、ベンゼン環を示す)。]
【0020】
ここで、前記一般式(II)により表されるリン化合物としては、カルボメトキシメタンホスホン酸、カルボエトキシメタンホスホン酸、カルボプロポキシメタンホスホン酸、カルボプトキシメタンホスホン酸、カルボメトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボエトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボプロトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸もしくはカルボブトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸のジメチルエステル類、ジエチルエステル類、ジプロピルエステル類またはジブチルエステル類から選ばれることが好ましい。より具体的にはトリメチルホスホノアセテート、トリエチルホスホノアセテート(ホスホノ酢酸トリエチル)、トリプロピルホスホノアセテート、トリブチルホスホノアセテート、カルボエトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸ジメチルエステル、カルボエトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸ジエチルエステルが好ましく選択される。
【0021】
上述のリン化合物は、共重合芳香族ポリエステルを構成する全ての芳香族ジカルボン酸成分に対して10〜200ミリモル%含有することが好ましい。より好ましくは20〜150ミリモル%、更に好ましくは50〜100ミリモル%含有することである。またリン元素換算とすると5〜40ミリモル%、好ましくは8〜35ミリモル%、更に好ましくは10〜30ミリモル%の範囲とすることが好ましい。該リン化合物が下限値未満であるとポリエステルの色調が低下しやすくなり、また上限値を超えると重合反応が進行しにくくなるため好ましくない。また本発明においては、上記式(I)以外に列挙した1種または2種以上のリン化合物を、上記式(I)で示したリン化合物を併用しても良い。
【0022】
本発明において重合触媒成分として用いられる重合触媒としては、食品安全性や反応性の観点からゲルマニウム化合物を用いることが好ましい。より好ましくは非晶性二酸化ゲルマニウムを用いることである。これらのゲルマニウム化合物は使用量は共重合芳香族ポリエステルを構成する全ての芳香族ジカルボン酸成分に対して10〜100ミリモル%であり、より好ましくは30〜80ミリモル%である。本発明の効果に多大なる影響を及ぼさない範囲でゲルマニウム化合物の他にアンチモン化合物、チタン化合物等を用いることも出来る。
工程1:芳香族ジカルボン酸またはその誘導体と、脂肪族ジオールおよび上記式(I)で示される芳香族ジオールとをエステル交換反応触媒を使用し0.08MPaの加圧下でエステル交換反応させる工程
工程2:工程1で製造した反応物を下記式(II)で示されるリン化合物とゲルマニウム化合物を使用して重縮合させる工程
【0023】
本発明の製造方法における工程1では、上記の芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、脂肪族ジオールおよび下記式(I)で示される芳香族ジオールを上記のエステル交換反応触媒の存在下で加圧反応せしめることにより製造される。エステル交換反応の反応温度は150℃以上とし、反応の進行とともに昇温するのが好ましい。この場合の上限は250℃程度、より好ましくは240℃程度である。この加圧反応の際には、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下とすることが好ましい。なお、この工程1における反応槽は縦型反応槽、横型反応槽のいずれであっても構わず、その他通常のポリエステルの製造工程で用いられる製造設備を使用することができる。
【0024】
本発明の工程1の製造方法において、エステル交換反応率は80%以上が好ましい。反応率が80%を下回ると、工程2での反応の際、未反応の芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体が昇華してしまい、反応槽内の減圧度に悪影響を及ぼすとともに、重合反応が進行しないことがある。そこで我々はエステル交換反応を常圧ではなく窒素を用いた加圧反応を行うことによって、短時間でかつエステル交換反応率が高い共重合芳香族ポリエステルを製造する方法を見出すに至った。
【0025】
特許文献6および特許文献7等で開示されている従来技術においては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族および芳香族ジオールとを常圧反応により製造しているが、本発明においては、工程1で反応した反応率の高いモノマーを用いて共重合芳香族ポリエステルの分子量を効率的に増大させることが大きな特徴となっている。該対応により、従来技術で得られていた共重合芳香族ポリエステルの抱えていた特性が大幅に改善され高品質な共重合芳香族ポリエステルを経済的に、かつ効率的に安定して製造できるようになった。すなわち工程1におけるエステル交換反応を0.08MPa以上の加圧下で行うことに本願発明の製造方法に特徴がある。0.08MPa未満でエステル交換反応を行うと、十分に分子量の高い、すなわち固有粘度の高い共重合芳香族ポリエステルを製造することができない。特に上述したような上記式(I)で表される化合物を、所定比率以上の高い共重合率で共重合された共重合芳香族ポリエステルを製造することができることで本発明の効果を奏することができる。
【0026】
本発明により得られる工程2終了後の共重合芳香族ポリエステルの固有粘度は機械的強度、成形性の点から0.50〜0.60dL/gが好ましい。より好ましい固有粘度範囲は0.505〜0.58dL/gである。固有粘度が0.50dL/g未満では機械的強度に劣り、0.60dL/gを超える場合には流動性が低下して成形加工性に劣るので好ましくない。この固有粘度の値は通常ポリエステルで用いられるようなオルトクロロフェノールを用いた溶液中で35℃下で測定された値で表すことが好ましい。また本発明により得られる共重合芳香族ポリエステルのガラス転移温度は135℃以上であることが好ましく、より好ましくは140℃以上であり、更に好ましくは141〜160℃である。このガラス転移温度の値は通常ポリエステルで用いられるような示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分、20℃/分の条件により測定された値で表すことが好ましい。ガラス転移温度が135℃以下では成形品の耐熱性に劣り好ましくない。十分な固有粘度値と上記式(I)で表される化合物の共重合率によって、このガラス転移温度の値の範囲を達成することができる。十分な固有粘度値とするためには、上記の工程1におけるエステル交換反応率を高い状態まで進行させ、その後の重縮合反応を適正な真空度、重縮合温度、重縮合時間を保って行うことが必要である。重縮合温度は得られる共重合芳香族ポリエステルの融点以上とすることは、重縮合反応を進行させるためには明らかであるが、好ましくは260〜380℃、より好ましくは270〜370℃、さらにより好ましくは280〜350℃である。
【0027】
本発明により得られる共重合芳香族ポリエステルの末端カルボキシル濃度は20eq/T(10kg)以下が好ましく、15eq/T以下がより好ましい。末端カルボキシル濃度が20eq/T以上では成形品の耐加水分解性に劣り好ましくない。この末端カルボキシ濃度は試料をベンジルアルコールに加熱溶解した後、適切な指示薬を添加し、水酸化ナトリウム等の通常のアルカリ溶液にて中和滴定操作を行って測定された値で表すことが好ましい。なお末端カルボキシル濃度をこの値の範囲にするためには、上記工程1のエステル交換反応率と工程2の重合反応時間によってこの末端カルボキシル濃度の値の範囲を達成することができる。本発明により得られる共重合芳香族ポリエステルの成形流動性は50cm/10min以上が好ましい。成形流動性が50cm/10min以下でれば、成形サイクルを上げることができず好ましくない。なお成形流動性をこの値の範囲にするためには、共重合芳香族ポリエステルを製造する際に上記式(I)で表される化合物の共重合率と固有粘度を0.50〜0.60L/gの間に調整することによってこの成形流動性の値の範囲を達成することができる。
【0028】
本発明により得られる共重合ポリエステルの荷重1.80MPaにおける荷重たわみ温度は、成形品の物性の点から100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましい。荷重たわみ温度が100℃以下であれば、成形品の耐熱性に劣り好ましくない。この荷重たわみ温度は、ISO 75に従って測定された値で表すことが好ましい。なお荷重たわみ温度をこの値の範囲にするためには、共重合芳香族ポリエステルを製造する際に、上記式(I)で表される化合物の共重合率によってこの荷重たわみ温度の値の範囲を達成することができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の内容は以下の実施例に限定されるものではない。なお、得られた共重合芳香族ポリエステルの諸物性の測定は以下の方法により実施した。
【0030】
1)固有粘度(IV)
常法に従って、溶媒としてオルトクロロフェノールを用いた溶液中において、35℃で測定した。
【0031】
2)ガラス転移温度
25℃で24時間減圧乾燥した共重合芳香族ポリエステルを示差走査型熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分で昇温しながら測定した。測定試料はアルミニウム製パン(TA Instruments社製)に約10mg計量し、窒素雰囲気下で測定した。
【0032】
3)共重合率算出
本発明により得られた共重合芳香族ポリエステル中の共重合率は、日本電子製JEOLA−600を用いて600MHzのH−NMRスペクトルを測定し、上記式(I)の化合物中のメチレン基に帰属するピーク面積をA、エチレングリコール中のメチレン基に帰属するピーク面積をB、ジエチレングリコール中のメチレン基のピーク面積をCとすると、式(I)の共重合率は、A/(A+2B+C)×100で算出した。エチレングリコールの共重合率は、2B/(A+2B+C)×100で算出し、残りのジエチレングリコール等の共重合率は、100%からそれらの共重合率を差し引いて算出した。
【0033】
4)末端カルボキシル濃度(末端COOH濃度)
共重合芳香族ポリエステルをベンジルアルコールに溶解して、0.1N−NaOHにて滴定した値であり、1×10g当たりのカルボキシル当量である。
【0034】
5)流動性
共重合芳香族ポリエステルの流動性の指標としてメルトボリュームレート(MVR)をISO 1133の規格に従い測定した。具体的には以下のとおりである。本発明により得られた共重合芳香族ポリエステルのペレットを110℃で8時間以上乾燥させ、シリンダ温度300℃に設定し、2.16kgfの荷重をかけた条件で10分間あたりにピストンが所定の距離を移動する時間を測定したのち、以下計算式よりMVRを求めた。MVRの値が大きいほど流動性が良好で成形しやすく、逆にMVRの値が小さいほど流動性が悪く成形しにくいことを示す。
MVR(cm/10min)=427×L/t
L:ピストン移動距離(cm)
t:所定の距離のピストン移動に要する測定時間を3回測定した値の平均値
427:ピストンとシリンダの平均断面積0.711(cm)×基準時間の秒数600(s)
共重合芳香族ポリエステルの流動性の指標としてメルトボリュームレート(MVR)を測定した。得られたペレットを測定を行った。
【0035】
6)荷重たわみ温度
本発明により得られた共重合芳香族ポリエステルをISO 75の方法に従い測定を行った。
【0036】
7)耐加水分解性
プレッシャークッカーにて110℃×100時間処理後のIVを測定し、その保持率を算出した。
IV保持率(%)=(処理後のIV)/(処理前のIV)×100
IV保持率が95%以上のものを耐加水分解性良好と判断し○と、90%以上95%未満のものを耐加水分解性がやや良好と判断し△と、90%未満のものを耐加水分解性不良と判断し×と、それぞれ表記した。
【0037】
8)耐食品性
得られた共重合芳香族ポリエステルチップを射出成形し、厚み3mmの平板状の成形品を得た。その成形品をケチャップ中およびグレープフルーツ果汁中にそれぞれ室温下で12時間漬け置きし、双方の成形品が共に汚染あるいは溶解(重量減少)が見られなかった場合を○、そうでなかった場合を×とした。
【0038】
[実施例1]
2価ジカルボン酸として、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルを60重量部、2価ジオールとしてエチレングリコールを22重量部、さらには共重合成分として、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンを50重量部、エステル交換反応触媒として酢酸カルシウム一水塩を2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として20ミリモル%、酢酸マグネシウム四水塩を2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として50ミリモル%加え、0.08MPaの加圧下で反応温度が245℃となるように昇温しながらエステル交換反応を行った。反応温度が235℃になった時点で10分かけて系内を常圧に戻しさらに40分間反応を保持した。40分後に非晶性二酸化ゲルマニウムを2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として60ミリモル%加え、さらに15分後にホスホノ酢酸トリエチルを2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として70ミリモル%加えて反応させた。反応温度が250℃に到達した時点で反応生成物を重縮合反応槽移して重縮合反応を開始した。
重縮合反応は常圧から0.133kPa(1Torr)まで50分掛けて徐々に減圧し、同時に所定の反応温度295℃まで昇温し、以降は所定の重合温度、0.133kPa(1Torr)の状態を維持して30分間重縮合反応を行った。
重縮合反応開始から180分間が経過した時点で重縮合反応を終了して共重合芳香族ポリエステルを抜き出し、固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、共重合率を測定し、さらには流動性、荷重たわみ温度を測定し、その結果を表1に示した。
【0039】
[実施例2]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルを56重量部、エチレングリコールを20重量部、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンを54重量部に変更した以外は実施例1と同様にして共重合芳香族ポリエステルを得た。得られた共重合芳香族ポリエステルの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、共重合率を測定し、さらには流動性、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表1に示した。
【0040】
[実施例3]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルを53重量部、エチレングリコールを17重量部、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンを59重量部に変更した以外は実施例1と同様にして共重合芳香族ポリエステルを得た。得られた共重合芳香族ポリエステルの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、共重合率を測定し、さらには流動性、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表1に示した。
【0041】
[比較例1]
2価ジカルボン酸として、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルを60重量部、2価ジオールとしてエチレングリコールを22重量部、さらには共重合成分として、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンを50重量部、エステル交換反応触媒として酢酸カルシウムと酢酸マグネシウムを2価ジカルボン酸のモル数に対して総量としてそれぞれ20、70ミリモル%加え、反応温度が220℃となるように昇温しながら常圧にてエステル交換反応を行った。反応温度が220℃になった時点から40分間反応を保持し、40分後に二酸化ゲルマニウムを2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として60ミリモル%加え、さらに15分後にトリメチルホスフェートを2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として70ミリモル%加えて反応させた。反応温度が240℃に到達した時点で反応生成物を重縮合反応槽移して重縮合反応を開始した。
重縮合反応は常圧から0.133kPa(1Torr)まで50分掛けて徐々に減圧し、同時に所定の反応温度295℃まで昇温し、以降は所定の重合温度、0.133kPa(1Torr)の状態を維持して30分間重縮合反応を行った。
重縮合反応開始から180分間が経過した時点で重縮合反応を終了して共重合芳香族ポリエステルを抜き出し、固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、共重合率を測定し、さらには流動性、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表1に示した。
【0042】
[比較例2]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルを56重量部、エチレングリコールを20重量部、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンを54重量部に変更した以外は比較例1と同様にして共重合芳香族ポリエステルを得た。得られた共重合芳香族ポリエステルの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、共重合率を測定し、さらには流動性、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表1に示した。
【0043】
[比較例3]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルを53重量部、エチレングリコールを17重量部、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンを59重量部に変更した以外は比較例1と同様にして共重合芳香族ポリエステルを得た。得られた共重合芳香族ポリエステルの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、共重合率を測定し、さらには流動性、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表1に示した。
【0044】
[比較例4]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル100重量部とエチレングリコール49重量部とを酢酸コバルト四水塩を2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として3ミリモル%、酢酸カルシウム一水塩を2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として20ミリモル%および酢酸マグネシウム四水塩を2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として50ミリモル%をエステル交換反応触媒として用い、常圧反応によりエステル交換反応させ、非晶性二酸化ゲルマニウムを2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として35ミリモル%添加したのち、トリメチルホスフェートを2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として100ミリモル%添加し、エステル交換反応を終了せしめた。次に引き続き常法通り高温高真空下で70分間重縮合反応を行い、その後ストランド型のチップとした。得られたポリマーの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、共重合率を測定し、さらには流動性、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表1に示した。
【0045】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の共重合芳香族ポリエステルは耐熱性、耐食品性さらには耐沸水性に優れている。また、人体に悪影響を及ぼす物質(特に内分泌かく乱作用)を使用していないため、食品容器材料(特に給食食器など)や医療用材料に好適に用いる材料の提供が可能となり、このことは産業上の意義が極めて大きい。