特許第5956179号(P5956179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956179
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】油圧駆動システム
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/02 20060101AFI20160714BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20160714BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   F15B11/02 B
   F15B11/08 C
   E02F9/22 E
【請求項の数】4
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-37233(P2012-37233)
(22)【出願日】2012年2月23日
(65)【公開番号】特開2013-170696(P2013-170696A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 好治
(72)【発明者】
【氏名】秋山 照夫
(72)【発明者】
【氏名】飯田 昇
(72)【発明者】
【氏名】山下 光治
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−539043(JP,A)
【文献】 特開昭60−139902(JP,A)
【文献】 実開昭59−177805(JP,U)
【文献】 特表2009−511831(JP,A)
【文献】 特開平11−117907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00−11/22
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1閉回路ポートと第2閉回路ポートとを有し、前記第2閉回路ポートから作動油を吸入して前記第1閉回路ポートから作動油を吐出する第1吐出状態と、前記第1閉回路ポートから作動油を吸入して前記第2閉回路ポートから作動油を吐出する第2吐出状態とに切換可能な第1油圧ポンプと、
シリンダロッドとシリンダチューブとを有し、前記シリンダチューブの内部は、前記シリンダロッドによって第1室と第2室とに区画されており、前記シリンダロッドの前記第1室側の受圧面積は前記第2室側の受圧面積より大きく、前記第1室に作動油が供給され且つ前記第2室から作動油が排出されることにより伸長し、前記第2室に作動油が供給され且つ前記第1室から作動油が排出されることにより収縮する油圧シリンダと、
前記第1閉回路ポートと前記第1室とを接続する第1流路と、前記第2閉回路ポートと前記第2室とを接続する第2流路とを有する作動油流路と、
作動油を貯留する作動油タンクと、
前記第1流路に接続される第1開回路ポートと、前記作動油タンクに接続される第2開回路ポートとを有し、前記第2開回路ポートから作動油を吸入して前記第1開回路ポートから作動油を吐出する第1吐出状態と、前記第1開回路ポートから作動油を吸入して前記第2開回路ポートから作動油を吐出する第2吐出状態とに切換可能な第2油圧ポンプと、
前記作動油流路に接続されるチャージ流路と、前記チャージ流路に作動油を吐出するチャージポンプと、を有し、前記作動油流路の油圧が前記チャージ流路の油圧より小さくなったときに前記作動油流路へ作動油を補充するチャージ回路と、
前記第1油圧ポンプの吐出流量と前記第2油圧ポンプの吐出流量との和に対する前記第1油圧ポンプの吐出流量の比率が、前記第1室の受圧面積に対する前記第2室の受圧面積の比率と等しくなるように、前記第1油圧ポンプの吐出流量と前記第2油圧ポンプの吐出流量とを制御するポンプ制御部と、
前記第1流路に接続される第1入力ポートと、前記第2流路に接続される第2入力ポートと、前記作動油タンク又はチャージ流路に接続されるドレンポートと、前記第1流路の油圧が印加される第1受圧部と、前記第2流路の油圧が印加される第2受圧部とを有し、前記第1流路の油圧によって前記第1受圧部に加えられる力が、前記第2流路の油圧によって前記第2受圧部に加えられる力よりも大きいときには、前記第2入力ポートと前記ドレンポートとを連通させる第1位置状態となり、前記第2流路の油圧によって前記第2受圧部に加えられる力が、前記第1流路の油圧によって前記第1受圧部に加えられる力よりも大きいときには、前記第1入力ポートと前記ドレンポートとを連通させる第2位置状態となり、第1受圧部の受圧面積と前記第2受圧部の受圧面積との比は、前記シリンダロッドの前記第1室側の受圧面積と前記第2室側の受圧面積との比に等しい、シャトル弁と、
を備え
前記シャトル弁は、スプールと、前記第1受圧部側から前記第2受圧部側に向かって前記スプールを押圧する第1弾性部材と、前記第2受圧部側から前記第1受圧部側に向かって前記スプールを押圧する第2弾性部材と、を有し、
前記第1弾性部材の弾性定数と前記第2弾性部材の弾性定数との比は、前記第1受圧部の受圧面積と前記第2受圧部の受圧面積との比と逆比の関係にある、
油圧駆動システム。
【請求項2】
前記第1弾性部材は、前記スプールが中立位置であるときに第1の取付荷重で前記スプールを押圧するように取り付けられており、
前記第2弾性部材は、前記スプールが中立位置であるときに第2の取付荷重で前記スプールを押圧するように取り付けられており、
前記第1の取付荷重と前記第2の取付荷重との比は、前記第1受圧部の受圧面積と前記第2受圧部の受圧面積との比と逆比の関係にある、
請求項に記載の油圧駆動システム。
【請求項3】
第1閉回路ポートと第2閉回路ポートとを有し、前記第2閉回路ポートから作動油を吸入して前記第1閉回路ポートから作動油を吐出する第1吐出状態と、前記第1閉回路ポートから作動油を吸入して前記第2閉回路ポートから作動油を吐出する第2吐出状態とに切換可能な第1油圧ポンプと、
シリンダロッドとシリンダチューブとを有し、前記シリンダチューブの内部は、前記シリンダロッドによって第1室と第2室とに区画されており、前記シリンダロッドの前記第1室側の受圧面積は前記第2室側の受圧面積より大きく、前記第1室に作動油が供給され且つ前記第2室から作動油が排出されることにより伸長し、前記第2室に作動油が供給され且つ前記第1室から作動油が排出されることにより収縮する油圧シリンダと、
前記第1閉回路ポートと前記第1室とを接続する第1流路と、前記第2閉回路ポートと前記第2室とを接続する第2流路とを有する作動油流路と、
作動油を貯留する作動油タンクと、
前記第1流路に接続される第1開回路ポートと、前記作動油タンクに接続される第2開回路ポートとを有し、前記第2開回路ポートから作動油を吸入して前記第1開回路ポートから作動油を吐出する第1吐出状態と、前記第1開回路ポートから作動油を吸入して前記第2開回路ポートから作動油を吐出する第2吐出状態とに切換可能な第2油圧ポンプと、
前記作動油流路に接続されるチャージ流路と、前記チャージ流路に作動油を吐出するチャージポンプと、を有し、前記作動油流路の油圧が前記チャージ流路の油圧より小さくなったときに前記作動油流路へ作動油を補充するチャージ回路と、
前記第1油圧ポンプの吐出流量と前記第2油圧ポンプの吐出流量との和に対する前記第1油圧ポンプの吐出流量の比率が、前記第1室の受圧面積に対する前記第2室の受圧面積の比率と等しくなるように、前記第1油圧ポンプの吐出流量と前記第2油圧ポンプの吐出流量とを制御するポンプ制御部と、
前記第1流路に接続される第1入力ポートと、前記第2流路に接続される第2入力ポートと、前記作動油タンク又はチャージ流路に接続されるドレンポートと、前記第1流路の油圧が印加される第1受圧部と、前記第2流路の油圧が印加される第2受圧部とを有し、前記第1流路の油圧によって前記第1受圧部に加えられる力が、前記第2流路の油圧によって前記第2受圧部に加えられる力よりも大きいときには、前記第2入力ポートと前記ドレンポートとを連通させる第1位置状態となり、前記第2流路の油圧によって前記第2受圧部に加えられる力が、前記第1流路の油圧によって前記第1受圧部に加えられる力よりも大きいときには、前記第1入力ポートと前記ドレンポートとを連通させる第2位置状態となり、第1受圧部の受圧面積と前記第2受圧部の受圧面積との比は、前記シリンダロッドの前記第1室側の受圧面積と前記第2室側の受圧面積との比に等しい、シャトル弁と、
中立位置から前記油圧シリンダを伸長させる方向と、前記油圧シリンダを収縮させる方向とに操作可能な操作部材と、
前記作動油流路において前記第1油圧ポンプと前記油圧シリンダとの間に配置される切換弁と、
前記作動油タンク又は前記チャージ流路に接続される調整流路と、
を備え、
前記第1流路は、前記第1閉回路ポートに接続される第1ポンプ流路と、前記第1室に接続される第1シリンダ流路とを有し、
前記第2流路は、前記第2閉回路ポートに接続される第2ポンプ流路と、前記第2室に接続される第2シリンダ流路とを有し、
前記切換弁は、前記操作部材が前記中立位置に位置しているときには、前記第1ポンプ流路と前記第2ポンプ流路とを前記調整流路に接続する
圧駆動システム。
【請求項4】
前記シャトル弁は、中立位置状態であるときには、前記第1入力ポートと前記第2入力ポートとを前記ドレンポートに連通させる、
請求項1又は2に記載の油圧駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルやホイールローダー等の作業機械は、油圧シリンダを備えている。油圧シリンダには、油圧回路を介して油圧ポンプから吐出された作動油が供給される。例えば、特許文献1では、油圧シリンダに作動油を供給するための油圧閉回路を備える作業機械が提案されている。油圧回路が閉回路であることにより、油圧シリンダによって駆動される部材の運動エネルギーや位置エネルギーが回生される。その結果、油圧ポンプを駆動する原動機の燃費を低減することが可能となる。
【0003】
図12は、油圧シリンダ103を駆動するための従来の油圧回路の一例を示す図である。油圧シリンダ103は、シリンダロッド103aとシリンダチューブ103bとを有する。シリンダチューブ103bの内部は、シリンダロッド103aによって、第1室104と第2室105とに区画されている。第1室104は、第1流路106を介して第1油圧ポンプ101に接続されている。第2室105は、第2流路107を介して第1油圧ポンプ101に接続されている。このように、油圧シリンダ103と第1油圧ポンプ101とは閉回路によって接続されている。第1室104に作動油が供給され、第2室105から作動油が排出されることによって、油圧シリンダ103が伸長する。第2室105に作動油が供給され、第1室104から作動油が排出されることによって、油圧シリンダ103が収縮する。
【0004】
シリンダロッド103aは第2室105内を通るように配置されているため、シリンダロッド103aの第2室105側の受圧面積は、第1室104側の受圧面積よりも小さい。従って、油圧シリンダ103の伸長時に第1室104に供給される作動油は、第2室105から排出される作動油よりも多い。また、油圧シリンダ103の収縮時に第2室105に供給される作動油は、第1室104から排出される作動油よりも少ない。このため、油圧回路には、第1油圧ポンプ101と共に第2油圧ポンプ102が配置されている。油圧シリンダ103の伸長時には、第1油圧ポンプ101と第2油圧ポンプ102とから吐出された作動油が第1室104に供給され、第2室105から排出された作動油は、第1油圧ポンプ101に回収される。また、油圧シリンダ103の収縮時には、第1油圧ポンプ101から吐出された作動油が第2室105に供給され、第1室104から排出された作動油は、第1油圧ポンプ101と第2油圧ポンプ102とに回収される。この場合、第1油圧ポンプ101と第2油圧ポンプ102とは、合計吐出流量と第1油圧ポンプ101の吐出流量との比が、第1室104の受圧面積と第2室105の受圧面との比に一致するように制御される。合計吐出流量は、第1油圧ポンプ101の吐出流量と第2油圧ポンプ102の吐出流量との和である。例えば、第1室104と第2室105との受圧面比が2:1である場合には、合計吐出流量と、第1油圧ポンプ101の吐出流量との比が2:1になるように、第1油圧ポンプ101と第2油圧ポンプ102とが制御される。言い換えれば、第1油圧ポンプ101の吐出流量と第2油圧ポンプ102の吐出流量との比が1:1になるように、第1油圧ポンプ101と第2油圧ポンプ102とが制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−54602号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作業機レバーなどの作業部材が操作されると、第1油圧ポンプ101と第2油圧ポンプ102との合計吐出流量が、作業部材の操作量に応じた値となるように、第1油圧ポンプ101と第2油圧ポンプ102が制御される。このとき、常に上述した吐出流量比の関係を正確に維持しながら、第1油圧ポンプ101の吐出流量と第2油圧ポンプ102の吐出流量をそれぞれ制御することは困難である。例えば、油圧ポンプの容積効率には個体差があるため、容積効率の違いにより、第1油圧ポンプ101の吐出流量と第2油圧ポンプ102の吐出流量とが、指令値と一致していない場合があり得る。或いは、第1油圧ポンプ101と第2油圧ポンプ102との応答性の違いにより、第1油圧ポンプ101の吐出流量と第2油圧ポンプ102の吐出流量とが、指令値に見合った吐出流量比の関係を満たさない場合があり得る。第1油圧ポンプ101の吐出流量と第2油圧ポンプ102の吐出流量との比が、上述した吐出流量比の関係を満たさない場合には、次のような問題が生じる。
【0007】
例えば、油圧シリンダ103がブームシリンダであり、ブームを上昇させる動作を行う場合を想定する。第1室104と第2室105との受圧面比は2:1である。この場合、第1油圧ポンプ101の吐出流量と第2油圧ポンプ102の吐出流量とが1:1になるように、第1油圧ポンプ101の目標吐出流量と第2油圧ポンプ102の目標吐出流量が設定される。しかし、図12に示すように、第1油圧ポンプ101の実際の吐出流量が“0.95”であり、第2油圧ポンプ102の実際の吐出流量が“1.05”であるものとする。この場合、油圧シリンダ103の第1室104には、“2.0(=0.95+1.05)”の流量の作動油が供給される。また、第2室105からは、“1.0”の流量の作動油が排出される。しかし、第1油圧ポンプ101の吐出流量は、“0.95”であるため、第1油圧ポンプ101は、“0.95”の流量の作動油しか吸い込むことができない。このため、第2流路107には、“1.0”と“0.95”の差に対応した余剰流量が生じる。第2流路107の油圧が、リリーフ弁108のリリーフ圧まで上昇すると、リリーフ弁108が開かれることによって、余剰流量の作動油がチャージ回路109に排出される。ブームを上昇させる動作では、油圧シリンダ103に掛かる負荷は、第1室104内の作動油に作用するため、第2流路107の油圧が上がる必要は無い。従って、上記のように第2流路107の余剰流量の作動油をリリーフ圧まで上昇させるためのエネルギーが無駄となる。また、油圧シリンダ103を伸長させるためには、第1流路106の油圧を第2流路107の油圧よりも大きくする必要がある。従って、第2流路107の油圧が高くなると、第1流路106の油圧をさらに大きくする必要がある。この場合、第1油圧ポンプ101と第2油圧ポンプ102とを駆動する馬力が変わらなければ、第1油圧ポンプ101と第2油圧ポンプ102とから吐出される作動油の流量が低減する。その結果、油圧シリンダ103の動作速度が遅くなり、作業性が低下する。
【0008】
次に、油圧シリンダがブームシリンダであり、ブームを下降させる動作を行う場合を想定する。このとき、図13に示すように、第1油圧ポンプ101の吐出流量が“1.05”であり、第2油圧ポンプ102の吐出流量が“0.95”であるものとする。ブームを下降させるときには、ブームを含む作業機の自重による荷重が、第1室104の作動油に作用しながら、油圧シリンダ103が収縮する。この場合、油圧シリンダ103の第1室104から“2.0”の流量の作動油が排出されると、第2室105には“1.0”の流量の作動油が吸い込まれる。従って、第1油圧ポンプ101の吐出流量は、“1.05”であるのに、第2室105には“1.0”の流量の作動油しか吸い込むことができない。このため、上記と同様に、第2流路107の油圧がリリーフ圧まで上昇する。この場合、第1油圧ポンプ101は、第1流路106の油圧を第2流路107の油圧まで増大させるために、ポンプ作用を行うことになる。従って、第1油圧ポンプ101は、作業機の位置エネルギーを回生することができない。
【0009】
本発明の課題は、油圧ポンプと油圧シリンダとの間で閉回路を構成する油圧回路において、油圧ポンプの吐出流量制御に誤差が生じても、油圧の上昇を抑えることができる油圧駆動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係る油圧駆動システムは、第1油圧ポンプと、油圧シリンダと、作動油流路と、作動油タンクと、第2油圧ポンプと、チャージ回路と、ポンプ制御部と、シャトル弁と、を備える。第1油圧ポンプは、第1閉回路ポートと第2閉回路ポートとを有する。第1油圧ポンプは、第1吐出状態と第2吐出状態とに切換可能である。第1油圧ポンプは、第1吐出状態において、第2閉回路ポートから作動油を吸入して第1閉回路ポートから作動油を吐出する。第1油圧ポンプは、第2吐出状態において、第1閉回路ポートから作動油を吸入して第2閉回路ポートから作動油を吐出する。油圧シリンダは、シリンダロッドとシリンダチューブとを有する。シリンダチューブの内部は、シリンダロッドによって第1室と第2室とに区画されている。シリンダロッドの第1室側の受圧面積は、第2室側の受圧面積より大きい。油圧シリンダは、第1室に作動油が供給され且つ第2室から作動油が排出されることにより伸長する。油圧シリンダは、第2室に作動油が供給され且つ第1室から作動油が排出されることにより収縮する。作動油流路は、第1流路と第2流路とを有する。第1流路は、第1閉回路ポートと第1室とを接続する。第2流路は、第2閉回路ポートと第2室とを接続する。作動油タンクは、作動油を貯留する。第2油圧ポンプは、第1開回路ポートと、第2開回路ポートとを有する。第1開回路ポートは、第1流路に接続される。第2開回路ポートは、作動油タンクに接続される。第2油圧ポンプは、第1吐出状態と第2吐出状態とに切換可能である。第2油圧ポンプは、第1吐出状態において、第2開回路ポートから作動油を吸入して第1開回路ポートから作動油を吐出する。第2油圧ポンプは、第2吐出状態において、第1開回路ポートから作動油を吸入して第2開回路ポートから作動油を吐出する。チャージ回路は、チャージ流路とチャージポンプとを有する。チャージ流路は、作動油流路に接続される。チャージポンプは、チャージ流路に作動油を吐出する。チャージ回路は、作動油流路の油圧がチャージ流路の油圧より小さくなったときに作動油流路へ作動油を補充する。ポンプ制御部は、第1油圧ポンプの吐出流量と第2油圧ポンプの吐出流量との和に対する第1油圧ポンプの吐出流量の比率が、第1室の受圧面積に対する第2室の受圧面積の比率と等しくなるように、第1油圧ポンプの吐出流量と第2油圧ポンプの吐出流量とを制御する。シャトル弁は、第1入力ポートと、第2入力ポートと、ドレンポートと、第1受圧部と、第2受圧部とを有する。第1入力ポートは、第1流路に接続される。第2入力ポートは、第2流路に接続される。ドレンポートは、作動油タンク又はチャージ流路に接続される。第1受圧部には、第1流路の油圧が印加される。第2受圧部には、第2流路の油圧が印加される。第1流路の油圧によって第1受圧部に加えられる力が、第2流路の油圧によって第2受圧部に加えられる力よりも大きいときには、シャトル弁は、第1位置状態となる。シャトル弁は、第1位置状態において、第2入力ポートとドレンポートとを連通させる。第2流路の油圧によって第2受圧部に加えられる力が、第1流路の油圧によって第1受圧部に加えられる力よりも大きいときには、シャトル弁は、第2位置状態となる。シャトル弁は、第2位置状態において、第1入力ポートとドレンポートとを連通させる。第1受圧部の受圧面積と第2受圧部の受圧面積との比は、シリンダロッドの第1室側の受圧面積と第2室側の受圧面積との比に等しい。
【0011】
本発明の第2の態様に係る油圧駆動システムは、第1の態様の油圧駆動システムであって、シャトル弁は、スプールと、第1弾性部材と、第2弾性部材とを有する。第1弾性部材は、第1受圧部側から第2受圧部側に向かってスプールを押圧する。第2弾性部材は、第2受圧部側から第1受圧部側に向かってスプールを押圧する。第1弾性部材の弾性定数と第2弾性部材の弾性定数との比は、第1受圧部の受圧面積と第2受圧部の受圧面積との比と逆比の関係にある。
【0012】
本発明の第3の態様に係る油圧駆動システムは、第2の態様の油圧駆動システムであって、第1弾性部材は、スプールが中立位置であるときに第1の取付荷重でスプールを押圧するように取り付けられている。第2弾性部材は、スプールが中立位置であるときに第2の取付荷重でスプールを押圧するように取り付けられている。第1の取付荷重と第2の取付荷重との比は、第1受圧部の受圧面積と第2受圧部の受圧面積との比と逆比の関係にある。
【0013】
本発明の第4の態様に係る油圧駆動システムは、第1から第3の態様のいずれかの油圧駆動システムであって、操作部材と、切換弁と、調整流路とをさらに備える。操作部材は、中立位置から油圧シリンダを伸長させる方向と、油圧シリンダを収縮させる方向とに操作可能である。切換弁は、作動油流路において第1油圧ポンプと油圧シリンダとの間に配置される。調整流路は、作動油タンク又はチャージ流路に接続される。第1流路は、第1閉回路ポートに接続される第1ポンプ流路と、第1室に接続される第1シリンダ流路とを有する。第2流路は、第2閉回路ポートに接続される第2ポンプ流路と、第2室に接続される第2シリンダ流路とを有する。切換弁は、操作部材が中立位置に位置しているときには、第1ポンプ流路と第2ポンプ流路とを調整流路に接続する。
【0014】
本発明の第5の態様に係る油圧駆動システムは、第1から第3の態様のいずれかの油圧駆動システムであって、シャトル弁は、中立位置状態であるときには、第1入力ポートと第2入力ポートとをドレンポートに連通させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の態様に係る油圧駆動システムでは、外力に抗して油圧シリンダが伸長する時には、シャトル弁は、第2入力ポートとドレンポートとを連通させる。このため、第1油圧ポンプの吐出流量が第2油圧ポンプの吐出流量より小さいときでも、第2流路の油圧が上昇することが抑えられる。また、外力を受けて油圧シリンダが収縮する時には、シャトル弁は、第2入力ポートとドレンポートとを連通させる。このため、第1油圧ポンプの吐出流量が第2油圧ポンプの吐出流量より大きいときでも、第2流路の油圧の上昇が抑えられる。その結果、本態様に係る油圧駆動システムでは、油圧ポンプと油圧シリンダとの間で閉回路を構成する油圧回路において、油圧ポンプの吐出流量制御に誤差が生じても、油圧の上昇を抑えることができる。
【0016】
なお、第1受圧部の受圧面積と第2受圧部の受圧面積との比を、シリンダロッドの第1室側の受圧面積と第2室側の受圧面積との比に等しくした理由は次の通りである。ここでは例として、外力に抗してシリンダロッドを伸長させる場合を検討する。シリンダロッドに作用する外力による負荷を考慮しない場合の第1室の油圧をP1、第2室の油圧をP2とする。この場合、流路の圧損は小さいとして、第1流路の油圧は第1室の油圧P1と同じであると見なす。同様に、第2流路の油圧は第2室の油圧P2と同じであると見なす。シリンダロッドの第1室側の受圧面積をA1、シリンダロッドの第2室側の受圧面積をA2とする。この場合、P1×A1=P2×A2である。従って、例えば、A1:A2=2:1であるならば、P1=(1/2)P2となる。すなわち、P1はP2よりも小さな値である。第1室の油圧でシリンダピストンを駆動する場合に、シリンダロッドへの外部からの負荷に対抗するための油圧をαとする。負荷が小さいとαが小さくなる。このため、負荷が小さいときには、第1流路の油圧P1+αは、第2流路の油圧P2よりも低い値となる。従って、シャトル弁の第1受圧部の受圧面積S1と第2受圧部の受圧面積S2とが等しい場合には、第1受圧部に作用する力“(P1+α)×S1”は、第2受圧部に作用する力“P2×S2”よりも小さい。このため、シャトル弁は、第1流路をチャージ流路又は作動油タンクに接続することになり、第2流路をチャージ流路又は作動油タンクに接続することができない。本態様に係る油圧駆動システムにおいては、第1受圧部の受圧面積S1と第2受圧部の受圧面積S2との比は、第1室の受圧面積A1と第2室の受圧面積A2との比に等しい。このため、シリンダロッドへの外部からの負荷に対抗するための油圧αを考慮しない場合には、P1×S1=P2×S2である。従って、シリンダロッドへの外部からの負荷に対抗するための油圧αを考慮した場合には、第1受圧部に作用する力“(P1+α)×S1”は、第2受圧部に作用する力“P2×S2”よりも、“α×S1”分だけ大きくなる。すなわち、負荷が小さいときでも、シャトル弁は第2入力ポートとドレンポートとを連通させるので、第2流路をチャージ流路又は作動油タンクに接続することができる。同様に、外力を受けてピストンロッドが収縮する場合を検討する。このとき、外力に対抗する油圧をαとすると、第1受圧部に作用する力“(P1+α)×S1”は、第2受圧部に作用する力“P2×S2”よりも、“α×S1”分だけ大きくなる。すなわち、この場合もシャトル弁は第2流路をチャージ流路又は作動油タンクに接続する。このように、油圧が上昇する必要がない方の流路はシャトル弁を介してチャージ流路または作動油タンクに接続されるので、不必要な油圧の上昇を抑えることができる。
【0017】
本発明の第2の態様に係る油圧駆動システムでは、第1弾性部材の弾性定数と第2弾性部材の弾性定数との比は、第1受圧部の受圧面積と第2受圧部の受圧面積との比と逆比の関係にある。このため、シャトル弁のスプールが中立位置から第1受圧部側に移動するときと、シャトル弁のスプールが中立位置から第2受圧部側に移動するときとで、シャトル弁の切換特性を近似させることができる。
【0018】
本発明の第3の態様に係る油圧駆動システムでは、第1の取付荷重と第2の取付荷重との比は、第1受圧部の受圧面積と第2受圧部の受圧面積との比と逆比の関係にある。このため、シャトル弁のスプールが中立位置から第1受圧部側に移動するときと、シャトル弁のスプールが中立位置から第2受圧部側に移動するときとで、シャトル弁の切換特性を近似させることができる。
【0019】
本発明の第4の態様に係る油圧駆動システムでは、操作部材が中立位置であるときに、第1油圧ポンプ及び/または第2油圧ポンプの吐出流量がゼロになっていなくても、作動油が調整流路を解して作動油タンク又は前記チャージ流路に排出される。これにより、第1流路及び/又は第2流路の油圧が上昇することを抑えることができる。
【0020】
本発明の第5の態様に係る油圧駆動システムでは、操作部材が中立位置であるときに、第1油圧ポンプ及び/または第2油圧ポンプの吐出流量がゼロになっていなくても、作動油がドレンポートを介して作動油タンク又は前記チャージ流路に排出される。これにより、第1流路及び/又は第2流路の油圧が上昇することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る油圧駆動システムの構成を示すブロック図である。
図2】油圧シリンダを伸長させる場合の油圧駆動システムにおける作動油の流量の一例を示す図である。
図3】油圧シリンダを伸長させる場合の油圧駆動システムにおける作動油の流量の一例を示す図である。
図4】油圧シリンダを収縮させる場合の油圧駆動システムにおける作動油の流量の一例を示す図である。
図5】油圧シリンダを収縮させる場合の油圧駆動システムにおける作動油の流量の一例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る油圧駆動システムが適用された油圧ショベルの作業姿勢の一例を示す模式図である。
図7】シャトル弁の切換特性を示す図。
図8】本発明の第1の変形例に係る油圧駆動システムの構成を示すブロック図である。
図9】本発明の第2の変形例に係る油圧駆動システムの構成を示すブロック図である。
図10】本発明の第3の変形例に係る油圧駆動システムの構成を示すブロック図である。
図11】本発明の第4の変形例に係る油圧駆動システムの構成を示すブロック図である。
図12】従来技術に係る油圧駆動システムの構成を示すブロック図である。
図13】従来技術に係る油圧駆動システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る油圧駆動システムについて説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る油圧駆動システム1の構成を示すブロック図である。油圧駆動システム1は、例えば油圧ショベル、ホイールローダー、ブルドーザなどの作業機械に搭載される。油圧駆動システム1は、エンジン11と、メインポンプ10と、油圧シリンダ14と、作動油流路15と、流路切換弁16と、シャトル弁51と、エンジンコントローラ22と、ポンプコントローラ24とを有する。
【0024】
エンジン11は、メインポンプ10を駆動する。エンジン11は、例えば、ディーゼルエンジンであり、燃料噴射装置21からの燃料の噴射量が調整されることにより、エンジン11の出力が制御される。燃料噴射量の調整は、燃料噴射装置21がエンジンコントローラ22によって制御されることで行われる。なお、エンジン11の実回転速度は、回転速度センサ23にて検出され、その検出信号は、エンジンコントローラ22およびポンプコントローラ24にそれぞれ入力される。
【0025】
メインポンプ10は、エンジン11によって駆動され、作動油を吐出する。メインポンプ10は、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13とを有する。メインポンプ10から吐出された作動油は、流路切換弁16を介して油圧シリンダ14に供給される。
【0026】
第1油圧ポンプ12は、可変容量型の油圧ポンプである。第1油圧ポンプ12の傾転角が制御されることにより、第1油圧ポンプ12の容量が制御される。第1油圧ポンプ12の傾転角は、第1ポンプ流量制御部25によって制御される。第1ポンプ流量制御部25は、ポンプコントローラ24からの指令信号に基づいて、第1油圧ポンプ12の傾転角を制御することにより、第1油圧ポンプ12の容量を制御する。これにより、第1油圧ポンプ12の吐出流量が制御される。なお、本実施形態において、第1油圧ポンプ12の吐出流量は、第1油圧ポンプ12の容量に対応しているものとする。また、第2油圧ポンプ13の吐出流量は、第2油圧ポンプ13の容量に対応しているものとする。第1油圧ポンプ12は、2方向吐出型の油圧ポンプである。具体的には、第1油圧ポンプ12は、第1閉回路ポート12aと第2閉回路ポート12bとを有する。第1油圧ポンプ12は、第1吐出状態と第2吐出状態とに切り換え可能である。第1油圧ポンプ12は、第1吐出状態では、第2閉回路ポート12bから作動油を吸入して第1閉回路ポート12aから作動油を吐出する。第1油圧ポンプ12は、第2吐出状態では、第1閉回路ポート12aから作動油を吸入して第2閉回路ポート12bから作動油を吐出する。
【0027】
第2油圧ポンプ13は、可変容量型の油圧ポンプである。第2油圧ポンプ13の傾転角が制御されることにより、第2油圧ポンプ13の容量が制御される。第2油圧ポンプ13の傾転角は、第2ポンプ流量制御部26によって制御される。第2ポンプ流量制御部26は、ポンプコントローラ24からの指令信号に基づいて第2油圧ポンプ13の傾転角を制御することにより、第2油圧ポンプ13の容量を制御する。第2油圧ポンプ13は、2方向吐出型の油圧ポンプである。具体的には、第2油圧ポンプ13は、第1開回路ポート13aと第2開回路ポート13bとを有する。第2油圧ポンプ13は、第1油圧ポンプ12と同様に、第1吐出状態と第2吐出状態とに切り換え可能である。第2油圧ポンプ13は、第1吐出状態では、第2開回路ポート13bから作動油を吸入して第1開回路ポート13aから作動油を吐出する。第2油圧ポンプ13は、第2吐出状態では、第1開回路ポート13aから作動油を吸入して第2開回路ポート13bから作動油を吐出する。
【0028】
油圧シリンダ14は、メインポンプ10から吐出された作動油によって駆動される。油圧シリンダ14は、例えば、ブーム、アーム、或いはバケットなどの作業機を駆動する。油圧シリンダ14は、シリンダロッド14aとシリンダチューブ14bとを有する。シリンダチューブ14bの内部は、シリンダロッド14aによって第1室14cと第2室14dとに区画されている。油圧シリンダ14は、第1シリンダポート14eと第2シリンダポート14fとを有する。第1シリンダポート14eは、第1室14cに連通している。第2シリンダポート14fは、第2室14dに連通している。油圧シリンダ14は、第2シリンダポート14fに作動油が供給され第1シリンダポート14eから作動油が排出される状態と、第1シリンダポート14eに作動油が供給され第2シリンダポート14fから作動油が排出される状態と、に切り換え可能である。すなわち、油圧シリンダ14は、第1室14cと第2室14dに対する作動油の供給と排出とが切り換えられることにより伸縮する。具体的には、第1シリンダポート14eを介して第1室14cに作動油が供給され、第2シリンダポート14fを介して第2室14dから作動油が排出されることによって、油圧シリンダ14は伸張する。第2シリンダポート14fを介して第2室14dに作動油が供給され、第1シリンダポート14eを介して第1室14cから作動油が排出されることによって、油圧シリンダ14は収縮する。シリンダロッド14aの第1室14c側の受圧面積(以下、簡略に「第1室14cの受圧面積」と呼ぶ)は、シリンダロッド14aの第2室14d側の受圧面積(以下、簡略に「第2室14dの受圧面積」と呼ぶ)よりも大きい。従って、油圧シリンダ14を伸張させるときには、第2室14dから排出される作動油よりも多量の作動油が第1室14cに供給される。また、油圧シリンダ14を収縮させるときには、第2室14dに供給される作動油よりも多量の作動油が第1室14cから排出される。
【0029】
作動油流路15は、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13とを油圧シリンダ14に接続している。作動油流路15は、第1流路17と第2流路18とを有する。第1流路17は、第1油圧ポンプ12の第1閉回路ポート12aと第1シリンダポート14eとを接続する。また、第1流路17は、第2油圧ポンプ13の第1開回路ポート13aと第1シリンダポート14eとを接続する。第2流路18は、第1油圧ポンプ12の第2閉回路ポート12bと第2シリンダポート14fとを接続する。第1流路17は、第1シリンダ流路31と第1ポンプ流路33とを有する。第2流路18は、第2シリンダ流路32と第2ポンプ流路34とを有する。第1シリンダ流路31は、第1シリンダポート14eを介して第1室14cに接続される。第2シリンダ流路32は、第2シリンダポート14fを介して第2室14dに接続される。第1ポンプ流路33は、第1シリンダ流路31を介して第1室14cに作動油を供給する、或いは、第1シリンダ流路31を介して第1室14cから作動油を回収するための流路である。第1ポンプ流路33は、第1油圧ポンプ12の第1閉回路ポート12aに接続される。また、第1ポンプ流路33は、第2油圧ポンプ13の第1開回路ポート13aに接続される。従って、第1ポンプ流路33には、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13との両方からの作動油が供給される。第2ポンプ流路34は、第2シリンダ流路32を介して第2室14dに作動油を供給する、或いは、第2シリンダ流路32を介して第2室14dから作動油を回収するための流路である。第2ポンプ流路34は、第1油圧ポンプ12の第2閉回路ポート12bに接続される。第2油圧ポンプ13の第2開回路ポート13bは、作動油を貯留する作動油タンク27に接続される。従って、第2ポンプ流路34には、第1油圧ポンプ12からの作動油が供給される。作動油流路15は、第1ポンプ流路33と第1シリンダ流路31と第2シリンダ流路32と第2ポンプ流路34とによって、第1油圧ポンプ12と油圧シリンダ14との間で閉回路を構成している。また、作動油流路15は、第1ポンプ流路33と第1シリンダ流路31とによって第2油圧ポンプ13と油圧シリンダ14との間で開回路を構成している。
【0030】
油圧駆動システム1は、チャージ回路19をさらに備える。チャージ回路19は、チャージ流路35と、チャージポンプ28とを有する。チャージポンプ28は、作動油流路15に作動油を補充するための油圧ポンプである。チャージポンプ28は、エンジン11によって駆動されることによって、作動油をチャージ流路35に吐出する。チャージポンプ28は、固定容量型の油圧ポンプである。チャージ流路35は、チャージポンプ28と作動油流路15とを接続する。チャージ流路35は、作動油流路15においてメインポンプ10と第1チェック弁44との間に接続されている。具体的には、チャージ流路35は、チェック弁41aを介して第1ポンプ流路33に接続されている。チェック弁41aは、第1ポンプ流路33の油圧がチャージ流路35のチャージ圧よりも低くなったときに開かれる。チャージ流路35は、作動油流路15においてメインポンプ10と第2チェック弁45との間に接続されている。具体的には、チャージ流路35は、チェック弁41bを介して第2ポンプ流路34に接続されている。チェック弁41bは、第2ポンプ流路34の油圧がチャージ圧よりも低くなったときに開かれる。これにより、チャージ回路19は、作動油流路15の油圧が、チャージ圧より小さくなったときに、作動油流路15へ作動油を補充する。また、チャージ流路35は、チャージリリーフ弁42を介して作動油タンク27に接続されている。チャージリリーフ弁42は、チャージ圧を所定の設定圧に維持する。第1ポンプ流路33又は第2ポンプ流路34の油圧がチャージ圧よりも低くなると、チャージポンプ28からの作動油がチャージ流路35を介して第1ポンプ流路33又は第2ポンプ流路34に供給される。これにより、第1ポンプ流路33及びは第2ポンプ流路34の油圧が所定値以上に維持される。
【0031】
作動油流路15は、リリーフ流路36をさらに有する。リリーフ流路36は、チェック弁41cを介して第1ポンプ流路33に接続されている。チェック弁41cは、第1ポンプ流路33の油圧がリリーフ流路36の油圧よりも高くなったときに開かれる。リリーフ流路36は、チェック弁41dを介して第2ポンプ流路34に接続されている。チェック弁41dは、第2ポンプ流路34の油圧がリリーフ流路36の油圧よりも高くなったときに開かれる。また、リリーフ流路36は、リリーフ弁43を介してチャージ流路35に接続されている。リリーフ弁43は、リリーフ流路36の圧力を所定のリリーフ圧以下に維持する。これにより、第1ポンプ流路33及び第2ポンプ流路34の油圧が所定のリリーフ圧以下に維持される。また、作動油流路15は、調整流路37をさらに有する。調整流路37は、チャージ流路35に接続されている。
【0032】
流路切換弁16は、ポンプコントローラ24からの指令信号に基づいて制御される電磁制御弁である。流路切換弁16は、ポンプコントローラ24からの指令信号に基づいて、流路の接続を切り換える。流路切換弁16は、作動油流路15において第1油圧ポンプ12と油圧シリンダ14との間に配置される。流路切換弁16は、第1ポンプ用ポート16aと第1シリンダ用ポート16bと第1調整用ポート16cと第1バイパスポート16dとを有する。第1ポンプ用ポート16aは、第1チェック弁44を介して第1ポンプ流路33に接続される。第1シリンダ用ポート16bは、第1シリンダ流路31に接続される。第1調整用ポート16cは、調整流路37に接続される。
【0033】
第1チェック弁44は、作動油流路15においてメインポンプ10と油圧シリンダ14との間に配置される。第1チェック弁44は、メインポンプ10から油圧シリンダ14への作動油の流れを許容する。第1チェック弁44は、油圧シリンダ14からメインポンプ10への作動油の流れを禁止する。具体的には、第1チェック弁44は、流路切換弁16によって作動油が第1ポンプ流路33から第1シリンダ流路31に供給される際に、第1ポンプ流路33から第1シリンダ流路31への作動油の流れを許容し、第1シリンダ流路31から第1ポンプ流路33への作動油の流れを禁止する。
【0034】
流路切換弁16は、第2ポンプ用ポート16eと第2シリンダ用ポート16fと第2調整用ポート16gと第2バイパスポート16hとをさらに有する。第2ポンプ用ポート16eは、第2チェック弁45を介して第2ポンプ流路34に接続される。第2チェック弁45は、作動油の流れを一方向に規制するチェック弁である。第2シリンダ用ポート16fは、第2シリンダ流路32に接続される。第2調整用ポート16gは、調整流路37に接続される。
【0035】
第2チェック弁45は、作動油流路15においてメインポンプ10と油圧シリンダ14との間に配置される。第2チェック弁45は、メインポンプ10から油圧シリンダ14への作動油の流れを許容する。第2チェック弁45は、油圧シリンダ14からメインポンプ10への作動油の流れを禁止する。具体的には、第2チェック弁45は、流路切換弁16によって作動油が第2ポンプ流路34から第2シリンダ流路32に供給される際に、第2ポンプ流路34から第2シリンダ流路32への作動油の流れを許容し、第2シリンダ流路32から第2ポンプ流路34への作動油の流れを禁止する。
【0036】
流路切換弁16は、第1位置状態P1と第2位置状態P2と中立位置状態Pnに切り換え可能である。流路切換弁16は、第1位置状態P1では、第1ポンプ用ポート16aと第1シリンダ用ポート16bとを連通させ、且つ、第2シリンダ用ポート16fと第2バイパスポート16hとを連通させる。従って、流路切換弁16は、第1位置状態P1では、第1ポンプ流路33を、第1チェック弁44を介して第1シリンダ流路31に接続し、且つ、第2シリンダ流路32を、第2チェック弁45を介さずに第2ポンプ流路34に接続する。なお、流路切換弁16が第1位置状態P1であるときには、第1バイパスポート16dと第1調整用ポート16cと第2ポンプ用ポート16eと第2調整用ポート16gとは、何れのポートに対しても遮断されている。
【0037】
油圧シリンダ14を伸張させるときには、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13とが第1吐出状態で駆動されると共に、流路切換弁16が第1位置状態P1に設定される。これにより、第1油圧ポンプ12の第1閉回路ポート12aと、第2油圧ポンプ13の第1開回路ポート13aとから吐出された作動油が、第1ポンプ流路33、第1チェック弁44、第1シリンダ流路31を通って、油圧シリンダ14の第1室14cに供給される。また、油圧シリンダ14の第2室14dの作動油が、第2シリンダ流路32、第2ポンプ流路34を通って、第1油圧ポンプ12の第2閉回路ポート12bに回収される。これにより、油圧シリンダ14が伸長する。
【0038】
流路切換弁16は、第2位置状態P2では、第2ポンプ用ポート16eと第2シリンダ用ポート16fとを連通させ、且つ、第1シリンダ用ポート16bと第1バイパスポート16dとを連通させる。従って、流路切換弁16は、第2位置状態P2では、第1シリンダ流路31を、第1チェック弁44を介さずに第1ポンプ流路33に接続し、且つ、第2ポンプ流路34を、第2チェック弁45を介して第2シリンダ流路32に接続する。なお、流路切換弁16が第2位置状態P2であるときには、第1ポンプ用ポート16aと第1調整用ポート16cと第2バイパスポート16hと第2調整用ポート16gとは、何れのポートに対しても遮断されている。
【0039】
油圧シリンダ14を収縮させるときには、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13とが第2吐出状態で駆動されると共に、流路切換弁16が第2位置状態P2に設定される。これにより、第1油圧ポンプ12の第2閉回路ポート12bから吐出された作動油が、第2ポンプ流路34、第2チェック弁45、第2シリンダ流路32を通って、油圧シリンダ14の第2室14dに供給される。また、油圧シリンダ14の第1室14cの作動油が、第1シリンダ流路31、第1ポンプ流路33を通って、第1油圧ポンプ12の第1閉回路ポート12a及び第2油圧ポンプ13の第1開回路ポート13aに回収される。これにより、油圧シリンダ14が収縮する。
【0040】
流路切換弁16は、中立位置状態Pnでは、第1バイパスポート16dと第1調整用ポート16cとを連通させ、且つ、第2バイパスポート16hと第2調整用ポート16gとを連通させる。従って、流路切換弁16は、中立位置状態Pnでは、第1ポンプ流路33を、第1チェック弁44を介さずに調整流路37に接続し、且つ、第2ポンプ流路34を、第2チェック弁45を介さずに調整流路37に接続する。なお、流路切換弁16が中立位置状態Pnであるときには、第1ポンプ用ポート16aと第1シリンダ用ポート16bと第2ポンプ用ポート16eと第2シリンダ用ポート16fとは、何れのポートに対しても遮断されている。
【0041】
油圧駆動システム1は、操作装置46をさらに備える。操作装置46は、操作部材46aと、操作検出部46bとを有する。操作部材46aは、作業機械の各種の動作を指令するためにオペレータによって操作される。例えば、油圧シリンダ14が、ブームを駆動するブームシリンダである場合には、操作部材46aは、ブームを操作するためのブーム操作レバーである。操作部材46aは、中立位置から油圧シリンダ14を伸長させる方向と、油圧シリンダ14を収縮させる方向との2方向に操作可能である。操作検出部46bは、操作部材46aの操作量及び操作方向を検出する。操作検出部46bは、例えば操作部材46aの位置を検出するセンサである。操作部材46aが中立位置に位置しているときには、操作部材46aの操作量はゼロである。操作部材46aの操作量及び操作方向を示す検出信号が、操作検出部46bからポンプコントローラ24に入力される。
【0042】
エンジンコントローラ22は、燃料噴射装置21を制御することによりエンジン11の出力を制御する。エンジンコントローラ22には、設定された目標エンジン回転速度および作業モードに基づいて設定されるエンジン出力トルク特性がマップ化されて記憶されている。エンジン出力トルク特性は、エンジン11の出力トルクと回転速度との関係を示す。エンジンコントローラ22は、エンジン出力トルク特性に基づいて、エンジン11の出力を制御する。
【0043】
ポンプコントローラ24は、操作部材46aの操作方向に応じて、流路切換弁16を制御する。操作部材46aが、中立位置に位置している場合、ポンプコントローラ24は、流路切換弁16を中立位置状態Pnに設定する。操作部材46aが、中立位置から油圧シリンダ14を伸長させる方向に操作されたときには、ポンプコントローラ24は、流路切換弁16を第1位置状態P1に設定する。これにより、第1ポンプ流路33と第1シリンダ流路31とが第1チェック弁44を介して接続される。また、第2ポンプ流路34と第2シリンダ流路32とが第2チェック弁45を介さずに接続される。これにより、油圧シリンダ14の第1室14cに作動油が供給され、油圧シリンダ14が伸長する。
【0044】
操作部材46aが、中立位置から油圧シリンダ14を収縮させる方向に操作されたときには、ポンプコントローラ24は、流路切換弁16を第2位置状態P2に設定する。これにより、第2ポンプ流路34と第2シリンダ流路32とが第2チェック弁45を介して接続される。また、第1ポンプ流路33と第1シリンダ流路31とが第1チェック弁44を介さずに接続される。これにより、油圧シリンダ14の第2室14dに作動油が供給され、油圧シリンダ14が収縮する。
【0045】
また、ポンプコントローラ24は、油圧シリンダ14へ供給される作動油の流量を制御する。ポンプコントローラ24は、ポンプ制御部24aと、記憶部24bとを有する。ポンプ制御部24aは、例えばCPUなどの演算装置によって実現される。記憶部24bは、RAM、ROM、ハードディスク、フラッシュメモリなどの記録装置によって実現される。ポンプ制御部24aは、操作部材46aの操作位置に基づいてメインポンプ10の容量を制御する。具体的には、ポンプ制御部24aは、操作部材46aの操作量に応じて油圧シリンダ14に供給される作動油の目標流量を演算する。ポンプ制御部24aは、目標流量に基づいて、第1ポンプ流量制御部25の目標容量(以下「第1目標容量」と呼ぶ)と、第2ポンプ流量制御部26の目標容量(以下「第2目標容量」と呼ぶ)とを演算する。油圧シリンダ14を伸長させる場合には、第1目標容量と第2目標容量との合計(以下、「合計容量」と呼ぶ)が、目標流量に対応する目標容量である。油圧シリンダ14を収縮させる場合には、第1目標容量が、目標流量に対応する目標容量である。また、ポンプ制御部24aは、合計容量に対する第1目標容量の比率が、第1室14cの受圧面積に対する第2室14dの受圧面積の比率と等しくなるように、第1目標容量と第2目標容量とを演算する。すなわち、ポンプ制御部24aは、合計容量と第1目標容量との比が、第1室14cの受圧面積と第2室14dの受圧面積との比と等しくなるように、第1目標容量と第2目標容量とを演算する。例えば、第1室14cの受圧面積と第2室14dの受圧面積との比が2:1であるときには、ポンプ制御部24aは、合計容量と第1目標容量との比が2:1となるように、第1目標容量と第2目標容量とを演算する。すなわち、ポンプ制御部24aは、第1目標容量と第2目標容量との比が1:1となるように、第1目標容量と第2目標容量とを演算する。ポンプ制御部24aは、第1目標容量に対応する指令信号を、第1ポンプ流量制御部25に送る。第1ポンプ流量制御部25は、第1油圧ポンプ12の容量が第1目標容量となるように、第1油圧ポンプ12の傾転角を制御する。また、ポンプ制御部24aは、第2目標容量に対応する指令信号を第2ポンプ流量制御部26に送る。第2ポンプ流量制御部26は、第2油圧ポンプ13の容量が第2目標容量となるように、第2油圧ポンプ13の傾転角を制御する。これにより、ポンプ制御部24aは、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13との合計容量に対する第1油圧ポンプ12の容量の比率が、第1室14cの受圧面積に対する第2室14dの受圧面積の比率と等しくなるように、第1油圧ポンプ12の容量と第2油圧ポンプ13の容量とを制御する。記憶部24bは、上述した第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13の制御のための情報を記憶している。
【0046】
シャトル弁51は、第1入力ポート51aと、第2入力ポート51bと、ドレンポート51cと、第1受圧部51dと、第2受圧部51eとを有する。第1入力ポート51aは、第1流路17に接続される。第2入力ポート51bは、第2流路18に接続される。具体的には、第1入力ポート51aは、第1ポンプ流路33に接続される。第2入力ポート51bは、第2ポンプ流路34に接続される。ドレンポート51cは、ドレン流路52に接続される。ドレン流路52は、調整流路37を介してチャージ流路35に接続される。第1受圧部51dは、第1パイロット流路53を介して、第1流路17に接続される。これにより、第1受圧部51dには、第1流路17の油圧が印加される。第1パイロット流路53には、第1絞り部54が配置されている。第2受圧部51eは、第2パイロット流路55を介して、第2流路18に接続される。これにより、第2受圧部51eには、第2流路18の油圧が印加される。第2パイロット流路55には、第2絞り部56が配置されている。
【0047】
シャトル弁51は、第1流路17の油圧と第2流路18の油圧とに応じて、第1位置状態Q1と第2位置状態Q2と中立位置状態Qnとに切り換えられる。シャトル弁51は、第1位置状態Q1において、第2入力ポート51bとドレンポート51cとを連通させる。これにより、第2流路18がドレン流路52に接続される。シャトル弁51は、第2位置状態Q2において、第1入力ポート51aとドレンポート51cとを連通させる。これにより、第1流路17がドレン流路52に接続される。シャトル弁51は、中立位置状態Qnにおいて、第1入力ポート51aと第2入力ポート51bとドレンポート51cとの間を閉塞する。
【0048】
シャトル弁51は、スプール57と、第1弾性部材58と、第2弾性部材59とを有する。第1弾性部材58は、第1受圧部51d側から第2受圧部51e側に向かってスプール57を押圧する。第2弾性部材59は、第2受圧部51e側から第1受圧部51d側に向かってスプール57を押圧する。第1弾性部材58は自然長よりも圧縮された状態で、スプール57に取り付けられている。第1弾性部材58は、スプール57が中立位置であるときに第1の取付荷重でスプール57を押圧するように取り付けられている。第2弾性部材59は自然長よりも圧縮された状態で、スプール57に取り付けられている。第2弾性部材59は、スプール57が中立位置であるときに第2の取付荷重でスプール57を押圧するように取り付けられている。
【0049】
第1受圧部51dの受圧面積と第2受圧部51eの受圧面積との比は、第1室14cの受圧面積と第2室14dの受圧面積との比に等しい。例えば、第1室14cの受圧面積と第2室14dの受圧面積との比が2:1であるときには、第1受圧部51dの受圧面積と第2受圧部51eの受圧面積との比は、2:1である。第1弾性部材58の弾性定数と第2弾性部材59の弾性定数との比は、第1受圧部51dの受圧面積と第2受圧部51eの受圧面積との比と逆比の関係にある。言い換えれば、第1弾性部材58の弾性定数と第2弾性部材59の弾性定数との比は、第1室14cの受圧面積と第2室14dの受圧面積との比と逆比の関係にある。例えば、第1室14cの受圧面積と第2室14dの受圧面積との比が2:1であるときには、第1弾性部材58の弾性定数と第2弾性部材59の弾性定数との比は、1:2である。第1の取付荷重と第2の取付荷重との比は、第1受圧部51dの受圧面積と第2受圧部51eの受圧面積との比と逆比の関係にある。言い換えれば、第1の取付荷重と第2の取付荷重との比は、第1室14cの受圧面積と第2室14dの受圧面積との比と逆比の関係にある。例えば、第1室14cの受圧面積と第2室14dの受圧面積との比が2:1であるときには、第1の取付荷重と第2の取付荷重との比は、1:2である。
【0050】
第1流路17の油圧によって第1受圧部51dに加えられる力が、第2流路18の油圧によって第2受圧部51eに加えられる力よりも大きいときには、シャトル弁51は、第1位置状態Q1となる。これにより、第2流路18とドレン流路52とが接続される。その結果、第2流路18の作動油の一部が、ドレン流路52を介してチャージ流路35へ流れる。第2流路18の油圧によって第2受圧部51eに加えられる力が、第1流路17の油圧によって第1受圧部51dに加えられる力よりも大きいときには、シャトル弁51は、第2位置状態Q2となる。これにより、第1流路17とドレン流路52とが接続される。その結果、第1流路17の作動油の一部が、ドレン流路52を介してチャージ流路35へ流れる。
【0051】
図2は、例えば油圧ショベルのブームを上昇させるために油圧シリンダ14を伸長させる場合の油圧駆動システム1における作動油の流量の一例を示す図である。油圧シリンダ14の目標流量が“2.0”である場合、ポンプ制御部24aは、第1目標容量と第2目標容量とをそれぞれ“1.0”に設定する。しかし、実際の第1油圧ポンプ12の容量が“0.95”であり、第2油圧ポンプ13の容量が“1.05”であるとする。このとき、油圧シリンダ14の第2室14dからは、“1.0”の流量の作動油が排出されるが、第1油圧ポンプ12は“0.95”の流量の作動油しか吸い込むことができないので“0.05”の流量の作動油が余剰となる。しかし、シャトル弁51において、第1受圧部51dの受圧面積と第2受圧部51eの受圧面積との比は、第1室14cの受圧面積と第2室14dの受圧面積との比に等しい。シリンダロッド14aに作用する外部からの負荷を考慮しない場合の第1室14cの油圧をP1、第2室14dの油圧をP2、シリンダロッド14aに作用する外部からの負荷に対抗するための第1室14cの油圧をα、第1受圧部51dの受圧面積をS1、第2受圧部51eの受圧面積をS2とすると、(P1+α)×S1>P2×S2となる。従って、図3に示すように、シャトル弁51は第1位置状態Q1に切り換えられるので、第2入力ポート51bとドレンポート51cが接続される。このため、第2ポンプ流路34はドレン流路52に接続されて“0.05”の流量の余剰な作動油はチャージ回路35に排出される。よって、第2流路18の油圧が不必要に上昇することが抑えられる。逆に、実際の第1油圧ポンプ12の容量が“1.05”であり、第2油圧ポンプ13の容量が“0.95”である場合には、第2室14dから“1.0”の流量の作動油が排出されるのに対して第1油圧ポンプ12は“1.05”の流量の作動油を吸い込む。不足分の“0.05”の流量の作動油は、チェック弁41b及び/またはシャトル弁51の第1位置状態Q1を介してチャージ流路35から吸い込まれる。
【0052】
図4は、例えば油圧ショベルのブームを下降させるために油圧シリンダ14を収縮させる場合の油圧駆動システム1における作動油の流量の一例を示す図である。油圧シリンダ14の目標流量が“1.0”である場合、ポンプ制御部24aは、第1目標容量と第2目標容量とをそれぞれ“1.0”に設定する。しかし、実際の第1油圧ポンプ12の容量が“1.05”であり、第2油圧ポンプ13の容量が“0.95”であるとする。このとき、第1油圧ポンプ12は“1.05”の流量の作動油を吐出するが、油圧シリンダ14の第1室14cからは“2.0”の流量の作動油が排出されるので、油圧シリンダ14の第2室14dには、“1.0”の流量の作動油しか吸い込まれない。このため、“0.05”の流量の作動油が余剰となる。しかし、シャトル弁51において、第1受圧部51dの受圧面積と第2受圧部51eの受圧面積との比は、第1室14cの受圧面積と第2室14dの受圧面積との比に等しい。シリンダロッド14aに作用する外部からの負荷を考慮しない場合の第1室14cの油圧をP1、第2室14dの油圧をP2、シリンダロッド14aに作用する外部からの負荷に対抗するための第1室14cの油圧をα、第1受圧部51dの受圧面積をS1、第2受圧部51eの受圧面積をS2とすると、(P1+α)×S1>P2×S2となる。従って、図5に示すように、シャトル弁51は第1位置状態Q1に切り換えられるので、第2入力ポート51bとドレンポート51cが接続される。このため、第2ポンプ流路34はドレン流路52に接続されて“0.05”の流量の余剰な作動油はチャージ回路35に排出される。よって、第2流路18の油圧が不必要に上昇することが抑えられる。逆に、実際の第1油圧ポンプ12の容量が“0.95”であり、第2油圧ポンプ13の容量が“1.05”である場合には、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13は“2.0”の流量の作動油を吸い込むので、第1室14cからは“2.0”の流量の作動油が排出される。このため、第2室14dには“1.0”の流量の作動油が吸い込まれる。そして、不足分の“0.05”の流量の作動油はチェック弁41b及び/またはシャトル弁51の第1位置状態Q1を介してチャージ流路35から吸い込まれる。
【0053】
また、油圧ショベルでは、図6に示すように、履帯91の後部と作業機92とを使って履帯91の前部を地面から浮かせるような姿勢(以下、「ジャッキアップ姿勢」と呼ぶ)を取ることがある。上述した油圧シリンダ14がブームシリンダである場合には、ジャッキアップ姿勢では、シリンダチューブ14bの第2室14dに車体の荷重Wを支えるための油圧が発生する。したがって、車体の荷重Wを支えるための第2室14dの油圧をαとすると、第1室14cに作動油を供給して第2室14dから作動油を排出する場合にはP1×S1<(P2+α)×S2となる。その結果、シャトル弁51は第2位置状態Q2に切り換えられて第1入力ポート51aとドレンポート51cが接続される。このため、第1ポンプ流路33はドレン流路52に接続される。また、第2室14dに作動油を供給して第1室14cから作動油を排出する場合にもP1×S1<(P2+α)×S2となる。その結果、シャトル弁51は第2位置状態Q2に切り換えられて第1入力ポート51aとドレンポート51cが接続される。このため、第1ポンプ流路33はドレン流路52に接続される。したがって、ジャッキアップ姿勢で油圧シリンダ14のシリンダロッド14aが伸長するときには、第1ポンプ流路33はドレン流路52に接続される。これにより、余剰な作動油はチャージ回路35に排出されるので、第1流路17の油圧が不必要に上昇することが抑えられる。また、ジャッキアップ姿勢で油圧シリンダ14のシリンダロッド14aが収縮するときにも、第1ポンプ流路33はドレン流路52に接続される。これにより、余剰な作動油はチャージ回路35に排出されるので、第1流路17の油圧が不必要に上昇することが抑えられる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る油圧駆動システム1では、シャトル弁51は、第1室14cと第2室14dとのうち外力を受けない方に接続される流路をチャージ回路35に接続する。従って、油圧ポンプ12,13の容量制御の誤差があるときでも、第1室14cと第2室14dとのうち油圧シリンダ14の外力を受けない方に接続される流路は、シャトル弁51を介してチャージ回路35に接続されるので、油圧の上昇が抑えられる。このように、本実施形態に係る油圧駆動システム1では、油圧ポンプ12,13と油圧シリンダ14との間で閉回路を構成する油圧回路において、油圧ポンプ12,13の容量制御に誤差が生じても、油圧の上昇を抑えることができる。
【0055】
一般的に、シャトル弁のスプールの受圧部に印加される圧力(以下「切換圧力」と呼ぶ)Pと、スプールの中立位置からのストローク量xとの関係は以下の数1式で表される。
【0056】
【数1】
【0057】
Sは受圧部の受圧面積である。F0は弾性部材の取付荷重である。kは弾性部材の弾性定数である。数1式を変形すると以下の数2式のように表される。
【0058】
【数2】
【0059】
従って、シャトル弁51の切換特性は、図7のL1,L2のように表される。切換特性L1,L2は、切換圧力Pとストローク量xとの関係を示す。図7において、シャトル弁51が中立位置状態Qnであるときのストローク量xは0である。また、シャトル弁51が第1位置状態Q1となるときのストローク量を正の値、シャトル弁51が第2位置状態Q2となるときのストローク量を負の値とする。この場合、シャトル弁51が第1位置状態Q1となるときの切換特性L1は以下の数3式で表される。また、シャトル弁51が第2位置状態Q2となるときの切換特性L2は以下の数4式で表される。
【0060】
【数3】
【0061】
【数4】
【0062】
数3式において、F1は第1の取付荷重である。S1は第1受圧部51dの受圧面積である。k1は第1弾性部材58の弾性定数である。数4式において、F2は第2の取付荷重である。S2は第2受圧部51eの受圧面積である。k2は第2弾性部材59の弾性定数である。
【0063】
上述したように、第1弾性部材58の弾性定数k1と第2弾性部材59の弾性定数k2との比は、第1受圧部51dの受圧面積S1と第2受圧部51eの受圧面積S2との比と逆比の関係にある。従って、シャトル弁51が第1位置状態Q1となるときの切換特性L1の傾きの絶対値a1は、シャトル弁51が第2位置状態Q2となるときの切換特性L2の傾きの絶対値a2と等しい。また、第1の取付荷重F1と第2の取付荷重F2との比は、第1受圧部51dの受圧面積S1と第2受圧部51eの受圧面積S2との比と逆比の関係にある。従って、シャトル弁51が第1位置状態Q1となるときの切換特性L1の切片の絶対値b1は、シャトル弁51が第2位置状態Q2となるときの切換特性L2の切片の絶対値b2と等しい。従って、スプール57が中立位置から第1受圧部51d側に移動するときと、スプール57が中立位置から第2受圧部51e側に移動するときとでシャトル弁51の切換特性が同じになる。これにより、第1流路17の油圧を低減する場合と第2流路18の油圧を低減する場合とで同様のシャトル弁51の切換特性を得ることができる。
【0064】
操作部材46aが中立位置であるときに、流路切換弁16は中立位置状態Pnに設定される。これにより、第1流路17と第2流路18とが調整流路37を介してチャージ流路35に接続される。これにより、操作部材46aが中立位置であるときに、第1油圧ポンプ12及び/または第2油圧ポンプ13の容量がゼロになっていなくても、第1流路17及び/又は第2流路18の油圧が上昇することを抑えることができる。すなわち、操作部材46aが中立位置であるときに、第1油圧ポンプ12及び/または第2油圧ポンプ13の傾転角が中立位置に対応する角度から、ずれていても、第1流路17及び/又は第2流路18の油圧が上昇することを抑えることができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0066】
図8は、第1の変形例に係る油圧駆動システム2の構成を示すブロック図である。第1の変形例に係る油圧駆動システム2では、上述した油圧駆動システム1から流路切換弁16が省略されている。また、シャトル弁51は、中立位置状態Qnであるときには、第1入力ポート51aと第2入力ポート51bとをドレンポート51cに連通させる。他の構成については上述した油圧駆動システム1と同様である。第1の変形例に係る油圧駆動システム2では、シャトル弁51が中立位置状態Qnであるときには、第1流路17と第2流路18とがドレン流路52を介してチャージ流路35に接続される。これにより、操作部材46aが中立位置であるときに、第1油圧ポンプ12及び/または第2油圧ポンプ13の容量がゼロになっていなくても、第1流路17及び/又は第2流路18の油圧が上昇することを抑えることができる。すなわち、操作部材46aが中立位置であるときに、第1油圧ポンプ12及び/または第2油圧ポンプ13の傾転角が中立位置に対応する角度から、ずれていても、第1流路17及び/又は第2流路18の油圧が上昇することを抑えることができる。
【0067】
上記の実施形態に係る油圧駆動システム1では、ポンプ流量制御部25,26が、油圧ポンプ12,13の傾転角を制御することにより、油圧ポンプ12,13の容量を制御している。すなわち、ポンプ流量制御部25,26は、油圧ポンプ12,13の傾転角を制御することにより、油圧ポンプ12,13の吐出流量を制御している。しかし、油圧ポンプ12,13の回転速度を制御することにより、油圧ポンプ12,13の吐出流量が制御されてもよい。例えば、駆動源として電動機が用いられてもよい。図9は、第2の変形例に係る油圧駆動システム3の構成を示すブロック図である。第2の変形例に係る油圧駆動システム3では、上述した実施形態の油圧駆動システム1において、エンジン11に替えて、電動機60が用いられている。また、油圧ポンプ12,13は、固定容量型の油圧ポンプである。この場合、ポンプコントローラ24は、電動機60の回転速度を制御することにより、油圧ポンプ12,13の回転速度が、操作部材46aの操作量に対応する目標回転速度になるように、油圧ポンプ12,13の回転速度を制御する。或いは、図10に示す第3の変形例に係る油圧駆動システム4のように、第1の変形例に係る油圧駆動システム2において、エンジン11に替えて、駆動源として電動機60が用いられてもよい。油圧駆動システム3,4においては第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13との容積効率が経時変化等により異なってくると第1油圧ポンプ12の吐出流量と第2油圧ポンプ13の吐出流量の差が大きくなることがあり得る。しかし、この場合でも、油圧駆動システム3,4において、第1流路17と第2流路18とのうち外力による負荷が作用しない方の流路の油圧が不必要に上昇することが抑えられる。
【0068】
上記の実施形態及び第1〜第3の変形例に係る油圧駆動システム1−4では、ドレン流路52は、チャージ回路19に接続されている。しかし、ドレン流路52は、作動油タンクに接続されてもよい。図11は、第4の変形例に係る油圧駆動システム5の構成を示すブロック図である。第4の変形例に係る油圧駆動システム5では、ドレン流路52が作動油タンク27に接続されている。他の構成は、上述した実施形態に係る油圧駆動システム1と同様である。
【0069】
上記の実施形態では、第1室14cの受圧面積と第2室14dの受圧面積との比として2:1が例示されているが、第1室14cの受圧面積と第2室14dの受圧面積との比は2:1に限らず、他の値であってもよい。
【0070】
上記の実施形態では、第1弾性部材58の弾性定数と第2弾性部材59の弾性定数との比は、第1受圧部51dの受圧面積と第2受圧部51eの受圧面積との比と逆比の関係にある。しかし、第1弾性部材58の弾性定数と第2弾性部材59の弾性定数との比は、上記のような比の関係に限られない。ただし、第1流路17の油圧を低減するときのシャトル弁51の切換特性と、第2流路18の油圧を低減するときのシャトル弁51の切換特性とを近似させる観点からは、上記のような比の関係が望ましい。
【0071】
上記の実施形態では、第1の取付荷重と第2の取付荷重との比は、第1受圧部51dの受圧面積と第2受圧部51eの受圧面積との比と逆比の関係にある。しかし、第1の取付荷重と第2の取付荷重との比は、上記のような比の関係に限られない。ただし、第1流路17の油圧を低減するときのシャトル弁51の切換特性と、第2流路18の油圧を低減するときのシャトル弁51の切換特性とを近似させる観点からは、上記のような比の関係が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、油圧ポンプと油圧シリンダとの間で閉回路を構成する油圧回路において、油圧ポンプの吐出流量制御に誤差が生じても、油圧の上昇を抑えることができる油圧駆動システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 油圧駆動システム
14 油圧シリンダ
15 作動油流路
19 チャージ回路
24a ポンプ制御部
28 チャージポンプ
35 チャージ流路
51 シャトル弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13