特許第5956207号(P5956207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956207
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】エンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20160714BHJP
   G01D 5/347 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   G01D5/245 110J
   G01D5/245 110M
   G01D5/347 110A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-62693(P2012-62693)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-195238(P2013-195238A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宮島 徹
(72)【発明者】
【氏名】石塚 よし
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昭二
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−14799(JP,A)
【文献】 特開平11−325969(JP,A)
【文献】 特開平10−38615(JP,A)
【文献】 特開2009−232261(JP,A)
【文献】 特開昭62−251615(JP,A)
【文献】 特開2009−121958(JP,A)
【文献】 特開昭63−235817(JP,A)
【文献】 特開2005−127762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/38
G01B 7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転方向に透光部と遮光部とを交互に有するグレイコード光学パターンが径方向に複数形成された回転ディスクと、
前記回転ディスクの各グレイコード光学パターンに対峙する透光部と遮光部とを有する光学パターンが形成された透遮光部材と、
前記回転ディスクのグレイコード光学パターンおよび前記透遮光部材の光学パターンに光を照射する光源と、
前記回転ディスクおよび前記透遮光部材の透光部を通過した光を受光し前記回転ディスクの回転位置に応じたデジタルデータを出力する光検出部と、
前記回転ディスクの回転中心部に設けられ、磁極の配置により磁気パターンを形成する磁石と、
前記磁気パターンを検出し前記回転ディスクの回転位置に応じたデジタルデータを出力する磁気検出部と、
前記磁気検出部および前記光検出部のデジタルデータを用いて前記回転ディスクの回転角度を求める演算部と、を有し、
前記光検出部は、前記回転ディスクの回転中において、該回転ディスクおよび前記透遮光部材の透光部を通過した光を受光して正弦波のアナログデータを出力し、
前記演算部は、前記光検出部から出力されるアナログデータを参照して検出誤差を補正し、前記回転ディスクの回転角度を求めることを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
前記透遮光部材は、前記回転ディスクのディスク面と間隔を空けて対向された固定マスクであることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記透遮光部材は、前記光検出部に一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記演算部は、前記光検出部のデジタルデータに基づいて、前記磁気検出部のデジタルデータを補正することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記光検出部は分割された受光部を有し、各受光部は前記回転ディスクの一回転における周期が異なる複数のビット/回転のグレイコードのデジタルデータを出力し、
前記磁気検出部はデジタルデータを出力することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記演算部は、前記各検出部のデジタルデータを比較して、前記回転ディスクの回転角度の検出誤差を補正することを特徴とする請求項5に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記演算部は、前記磁気検出部の1回転データをカウントすることにより、前記回転ディスクの回転数を求めることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項8】
前記演算部は、正弦波アナログデータに基づいて桁上げ判定もしくは桁下げ判定して、前記回転ディスクの回転数を求めることを特徴とする請求項に記載のエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する測定対象物の機械的変位量を電気信号に変換し、信号処理して回転角度や回転数を検出するエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
エンコーダは、サーボモータ等の回転する測定対象物の回転角度(回転位置)や回転数を検出する装置として知られている。
【0003】
一般的なエンコーダは、回転する測定対象物の回転軸に接続された回転ディスクと、回転ディスクを挟んで対向された発光素子および受光素子を有する。回転ディスクには、所定の規則に従って透光部および遮光部を有する光学パターンが形成されている。
【0004】
発光素子から発せられた光は、回転ディスクの光学パターンの遮光部に遮断され、あるいは透光部を通り抜けて受光素子に受光される。受光素子による受光のタイミングは、光学パターンによる。したがって、この受光タイミングを電気信号として測定することにより、回転ディスクの回転角度を検出することができる。
【0005】
回転ディスクの一回転において表われる光学パターンの周期を異ならせて複数のトラックを構成することにより、回転角度の検出精度を高めることができる。この検出精度を高める程トラック数は多くなり、回転ディスクも大きくなってしまう。これでは、モータ等の小型化が要請される製品に対応できない。
【0006】
そこで、トラック数を軽減して回転ディスクを小型化する技術として、光学パターンを有する回転ディスクと共に回転軸に磁石を取り付けたエンコーダが開示されている(たとえば、特許文献1参照)。このエンコーダは、磁石の磁気パターンを検出することにより回転角度をある精度で特定し、さらに光学パターンと組み合わせて回転角度の検出精度を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−294073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1のエンコーダでは、光学パターンおよび磁気パターンが、いずれも正弦波や余弦波のアナログデータとして検出される。検出データがすべてアナログデータであると、すべての検出データをアナログ−デジタル変換して信号処理しなければならない。そのため、エンコーダには複数の光学パターン用および磁気パターン用に個別にアナログ−デジタル変換回路を備える必要があり、装置コストが増大してしまう。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みて創案されたものであり、検出精度の信頼性が高く、装置コストを低減することができるエンコーダの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためのエンコーダは、回転ディスク、透遮光部材、光源、光検出部、磁石、磁気検出部および演算部を有する。
【0011】
回転ディスクには、回転方向に透光部と遮光部とを交互に有するグレイコード光学パターンが径方向に複数形成されている。
【0012】
透遮光部材は、上記回転ディスクの各グレイコード光学パターンに対峙する透光部と遮光部とを有する光学パターンが形成されている。
【0013】
光源は、上記回転ディスクのグレイコード光学パターンおよび上記透遮光部材の光学パターンに光を照射する。
【0014】
光検出部は、上記回転ディスクおよび上記透遮光部材の透光部を通過した光を受光し上記回転ディクスの回転位置に応じたデジタルデータを出力する。
【0015】
磁石は、上記回転ディスクの回転中心部に設けられ、磁極の配置により磁気パターンを形成する。
【0016】
磁気検出部は、上記磁気パターンを検出し上記回転ディクスの回転位置に応じたデジタルデータを出力する。
【0017】
演算部は、上記磁気検出部および上記光検出部のデジタルデータを用いて上記回転ディスクの回転角度を求める。上記光検出部は、上記回転ディスクの回転中において、該回転ディスクおよび上記透遮光部材の透光部を通過した光を受光して正弦波のアナログデータを出力し、上記演算部は、上記光検出部から出力されるアナログデータを参照して検出誤差を補正し、上記回転ディスクの回転角度を求める。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るエンコーダによれば、演算部が磁気検出部および光検出部のデジタルデータを用いて回転ディクスの回転角度を求めるので、検出精度の信頼性が高い。
【0019】
また、回転ディスクに設けられたグレイコード光学パターンおよびバイナリコード磁気パターンをデジタルデータとして検出するので、アナログ−デジタル変換回路の数を大幅に低減することができ、エンコーダの装置コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るエンコーダの一実施形態の構成を示す概略斜視図である。
図2】本実施形態のエンコーダにおける回転ディスクを示す平面図である。
図3】本実施形態のエンコーダにおける固定マスクを示す平面図である。
図4】本実施形態の演算部におけるデータ処理手順を示すブロック図である。
図5】本実施形態の演算部における演算処理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係るエンコーダの一実施形態を説明する。
【0022】
図1から図3を参照しながら、本実施形態のエンコーダの構成について説明する。図1は本発明に係るエンコーダの一実施形態の構成を示す概略斜視図である。図2は本実施形態のエンコーダにおける回転ディスクを示す平面図である。図3は本実施形態のエンコーダにおける固定マスクを示す平面図である。
【0023】
[エンコーダの構成]
本実施形態のエンコーダ100は、光源50から照射され回転ディスク20および透遮光部材40の光学パターン30を透過した光を光検出部60にて受光し、デジタルデータとして検出する透過型のエンコーダである。また、本実施形態のエンコーダ100は、回転ディスク20の回転中心に設けられた磁石70の磁気パターンを磁気検出部80にてデジタルデータとして検出する。そして演算部90が、光検出部60のデジタルデータに基づいて、磁気検出部80のデジタルデータを補正することにより、検出精度の良いエンコーダ100を提供できるようになる。
【0024】
本実施形態のエンコーダ100は、図1に示すように、回転する測定対象物(図示せず)に接続された回転ディスク20の他、透遮光部材40、光源50、光検出部60、磁石70、磁気検出部80および演算部90を有する。
【0025】
本実施形態のエンコーダ100の測定対象物としては、たとえば、サーボモータ等の回転制御可能なモータが挙げられる。サーボモータにおいては、回転角度の検出精度や分解能によって位置決めや速度等の性能が決まる。したがって、エンコーダ100の性能によって、サーボシステムの性能が決まると言っても過言ではない。
【0026】
回転ディスク20は、測定対象物の回転軸10に、当該回転軸10と一体となって回転するように取り付けられた円板部材である。この回転ディスク20は、当該回転ディスク20の回転中心が測定対象物の回転軸10と同心となり、かつディスク面21が回転軸10の軸方向に対して垂直となるように、当該回転軸10に固定されている。
【0027】
本実施形態の回転ディスク20は透光部材で形成され、たとえば、透明ガラスやポリカーボネートのような透明の合成樹脂等が用いられる。
【0028】
回転ディスク20のディスク面21の周縁部近傍には、図1および図2に示すように、透光部30aと遮光部30bとが当該回転ディスク20の回転方向に沿って交互に配置された光学パターン30が形成されている。光学パターン30の透光部30aと遮光部30bは、透光部材で形成された回転ディスク20のディスク面21に、光吸収性または光反射性の遮光膜を被覆することにより形成されている。すなわち、回転ディスク20のディスク面21における透光部30aとなる部位を除いて、遮光部30bとなる部位に遮光膜を被覆している。なお、図2において、光学パターン30における白色部位が透光部30a、透光部30a同士の間の黒色部位が遮光部30bである。
【0029】
本実施形態の光学パターン30は、グレイコード光学パターンである。ここでグレイコードとは、1ステップ進めると1ビットだけ変化するという性質をもつnビットの数値符号であり、2進数変換が容易なデジタルデータである。
【0030】
グレイコード光学パターンは、回転ディスク20の径方向に複数のトラック35に亘って形成されている。各トラック35のグレイコード光学パターンの一回転における周期は異なっている。本実施形態の光学パターン30は、たとえば、回転ディスク20の径方向外側から64A、64B、512A、256A、128A、/回転のグレイコードが設定されている。光学パターン30は、上記の64A、64B、128A、256A、512A/回転に限定されず、たとえば、128A、128B、256A、512A、1024A/回転等の他のグレイコードパターンに設定してもよい。
【0031】
本実施形態の透遮光部材40は、光源50と回転ディスク20との間に設けられた固定マスクとして形成されている。固定マスク40は、矩形状または扇状の板部材であって、回転ディスク20のディスク面21と空間を隔ててマスク面41が相対向するように設けられている。この固定マスク40には、図3に示すように、回転ディスク20の複数トラック35の各グレイコード光学パターンに対峙する光学パターン31が形成されている。
【0032】
固定マスク40の光学パターン31は、上記回転ディスク側の各グレイコード光学パターンに対応するように形成されている。固定マスク40が固定であるのに対し、回転ディスク20は上記回転軸10とともに回転動作するので、当該回転ディスク20の回転動作に伴って、回転ディスク側光学パターン30および固定マスク側光学パターン31の透光部30a、31aが開閉されることになる。したがって、後述する光検出部60は、開閉する透光部30a、31aを透過した光を受光して、正弦波アナログデータを出力する。
【0033】
この固定マスク側の光学パターン31は、上記回転ディスク側の光学パターン30と同様に、透光部31aと遮光部31bとを交互に有する。この固定マスク40は、上記回転ディスク20と同様に、透明ガラスや透明の合成樹脂等の透光部材よって形成され、透光部31aと遮光部31bは、マスク面41に遮光膜を被覆して形成される。
【0034】
回転ディスク20および固定マスク40を挟んで、光源50と光検出部60とが相対向するように設けられている。
【0035】
光源50は、固定マスク40の光学パターン31および回転ディスク20の光学パターン30に光を照射する。光源50としては、たとえば、発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)等の発光素子が用いられる。光学パターン30、31の検出を精度の良く行うためには、光源50の照射方向前方にレンズ51を配置して平行光を形成することが好ましい。
【0036】
光検出部60は、光源50から照射され回転ディスク20および固定マスク40の光学パターン30、31の透光部30a、31aを通過した光を受光する素子である。この光検出部60は、光学パターン30、31の透光部30a、31aを通過した光の受光タイミングを電気信号として測定し、光学パターン30、31によって受光タイミングが異なる。光検出部60としては、たとえば、フォトダーオード(PD)やフォトIC等の受光素子が用いられる。
【0037】
光検出部60には、同一の部材であるが分割された受光部A/B(図示せず)が設定されている。光検出部60は、回転ディスク20の回転中において、該回転ディスク20および固定マスク40のグレイコード光学パターンの透光部30a、31aを通過した光を受光して、本実施形態では64A、64B、128A、256A、512A/回転のグレイコードのデジタルデータを出力する。
【0038】
また光検出部60は、回転ディスク20の回転中において、該回転ディスク20および固定マスク40の透光部30a、31aを通過した光を受光して、本実施形態では512A、512B/回転のアナログデータを出力する。本実施形態では、512A、512B/回転の正弦波アナログデータを出力するが、これに限定されず、1024A、1024B/回転等の他の正弦波アナログデータを出力するように設定してもよい。
【0039】
磁石70は、上記回転ディスク20の回転中心部に設けられている。この磁石70はS磁極とN磁極で所定の磁気パターンを構成している。本実施形態の磁石70は、バイナリコード磁気パターンを構成する。
【0040】
磁気検出部80は、上記磁石70の磁気パターンを読み取るセンサである。この磁気検出部80は、回転軸10の軸方向において上記磁石70と空間を隔てて相対向するように配置されている。磁気検出部80としては、たとえば、ホール素子やフラックス・ゲートセンサ等の磁気検出素子が用いられる。磁気検出部80は、上記磁気パターンを読み取って、デジタルデータを出力する。本実施形態の磁気検出部80には、たとえば、12ビット/回転の磁気検出素子が使用される。
【0041】
演算部90は、光検出部60および磁気検出部80から出力される検出データを処理する演算処理装置である。したがって、演算部90は、光検出部60および磁気検出部80と電気的に接続されている。光検出部60のアナログデータ出力部は、不図示のアナログ−デジタル変換回路を介して、演算部90と電気的に接続されている。
【0042】
演算部90は、グレイコード光学パターンのデジタルデータの演算処理に用いる第1電子カウンタ91と、磁気パターンのデジタルデータの演算処理に用いる第2電子カウンタ92とを備えている(後述の図4参照)。この演算部90は、光検出部60および磁気検出部80の検出データを演算処理することにより、回転ディスク20の回転角度および回転数を求めて、測定対象物の回転角度および回転数を特定する。
【0043】
すなわち、演算部90は、光検出部60から出力されるグレイコードのデジタルデータに基づいて、磁気検出部80から出力されるバイナリコードのデジタルデータを補正する。また演算部90は、光検出部60から出力される正弦波アナログデータを参照して、当該光検出部60から出力されるグレイコードのデジタルデータの検出誤差を補正し、回転ディスク20の回転角度を求める。
【0044】
演算部90は、512A、512B/回転の正弦波アナログデータに基づいて桁上げもしくは桁下げ判定して、前記回転ディスク20の回転数を求めているが、磁気検出部80の1回転データをカウントすることにより、回転ディスク20の回転数を求めてもよい。なお、演算部90におけるデータ処理の詳細については、後述する。
【0045】
[エンコーダの動作]
再び図1を参照して、本実施形態のエンコーダ100の動作について説明する。
【0046】
サーボモータ等の測定対象物が回転すると、その回転軸10とともに回転ディスク20も回転する。そして、固定マスク40および回転ディスク20に、光源50から平行光が照射される。光源50から照射され固定マスク40の光学パターン31および回転ディスク20の光学パターン30の透光部30a、31aを通過した光は、光検出部60に受光される。
【0047】
光検出部60は、照射され固定マスク40および回転ディスク20のグレイコード光学パターンの透光部30a、31aを通過した光を受光して、グレイコードのデジタルデータを出力する。これとともに光検出部60は、照射され固定マスク40および回転ディスク20の透光部30a、31aを通過した光を受光して、正弦波のアナログデータを出力する。
【0048】
また、測定対象物の回転が開始されると、磁気検出部80は、回転ディスク20の回転中心部に設けられた磁石70の磁気パターンを読み取って、バイナリコードのデジタルデータを出力する。
【0049】
演算部90は、光検出部60および磁気検出部80から出力された検出データを演算処理して、回転ディスク20の回転角度および回転数を求めて、測定対象物10の回転角度および回転数を特定する。
【0050】
ここで図4を参照して、上記演算部90における演算処理手順について説明する。図4は本実施形態の演算部におけるデータ処理手順を示すブロック図である。
【0051】
演算部90は、磁気検出部80の1回転データをカウントすることにより、回転ディスク20の回転数を求めることができる。
【0052】
図4に示すように、演算部90は、磁気検出部80のデジタルデータを算出する(S201)。起動時において、磁気検出部80の算出データの初期値(起動時のみ)が第2電子カウンタ92にセットされ、第2電子カウンタ92は当該初期値を保持する(S202)。
【0053】
そして演算部90は、2回転目以後の磁気検出部80の算出データを第2電子カウンタ92の値と比較することにより、異常の有無を検出する(S203)。
【0054】
また演算部90は、光検出部60のグレイコード・デジタルデータを算出する(S301)。起動時において、光検出部60のグレイコード算出データの初期値(起動時のみ)が第1電子カウンタ91にセットされ、第1電子カウンタ91は当該初期値を保持する(S302)。
【0055】
そして演算部90は、回転ディスク20の回転中における光検出部60のグレイコード算出データを第1電子カウンタ91の値と比較することにより、異常の有無を検出する(S303)。
【0056】
回転ディスク20の回転中において、演算部90は、光検出部60の正弦波アナログデータA/Bを算出する(S401)。演算部90は、正弦波アナログデータA/Bにおける前回データと今回データとを比較して(S402)、桁上げ判定もしくは桁下げ判定を行う(S403)。この判定結果は、第1電子カウンタ91へ入力される(S404)。
【0057】
演算部90は、第1電子カウンタ91における前回データと今回データとを比較して(S405)、桁上げ判定もしくは桁下げ判定を行う(S406)。この判定結果は、上記の第2電子カウンタ92へ入力される(S407)。
【0058】
演算部90は、正弦波アナログデータA/Bに基づいて桁上げ判定もしくは桁下げ判定することにより、回転ディスク20の回転数を求めることができる。なお、演算部90は、磁気検出部80の1回転データをカウントすることにより、回転ディスク20の回転数を求めてもよい。
【0059】
そして、上記のS203で説明したのと同様の処理を行う(S408)。
【0060】
次に図5を参照して、上記演算部90における演算処理について説明する。図5は本実施形態の演算部における演算処理を示す説明図である。
【0061】
図1図4および図5に示すように、まず起動時に、正弦波アナログデータA/Bより算出するデジタルデータによって補正した光検出部60のグレイコード・デジタルデータの128〜512分割/回転の領域を第1電子カウンタ91の初期値に設定する。また、補正された光検出部60のグレイコード・デジタルデータによって補正した磁気検出部80のデジタルデータの2〜64分割/回転の領域を第2電子カウンタ92の初期値に設定する。
【0062】
通常時には、まず1024分割/回転以上の領域において、演算部90は、正弦波アナログデータA/Bにおける前回データと今回データを比較して、桁上げ/桁下げがあった場合には、第1電子カウンタ91と第2電子カウンタ92の値を更新する。
【0063】
次に128〜512分割/回転の領域において、演算部90は、光検出部60のグレイコード・デジタルデータと第1電子カウンタ91の値とを比較する。すなわち、光検出部60のグレイコード・デジタルデータと、第1電子カウンタ91の値を比較して、異常の有無を検出し、異常があればその情報を外部出力する。
【0064】
その後、2〜64分割/回転の領域において、演算部90は、磁気検出部80のデジタルデータと第2電子カウンタ92の値とを比較する。すなわち、磁気検出部80のデジタルデータと、第2電子カウンタ92の値を比較して、異常の有無を検出し、異常があればその情報を外部出力する。
【0065】
以上のように、本実施形態のエンコーダ100は、基本的に光検出部60および磁気検出部80から出力されるグレイコードおよびバイナリコードのデジタルデータを用いて、回転ディスク20の回転角度(絶対角度)を求めている。光検出部60から出力される正弦波アナログデータは、回転角度の検出精度を高めるために参酌される。したがって、グレイコードおよびバイナリコードのデジタルデータについては、アナログ−デジタル変換回路が必要なく、エンコーダ100の装置コストを低減することができる。
【0066】
また本実施形態のエンコーダ100は、磁気検出部80から出力されるバイナリコードのデジタルデータ、光検出部60から出力される正弦波アナログデータおよびグレイコードのデジタルデータを比較して、回転ディスクの回転角度の検出誤差を補正する。したがって本実施形態によれば、検出精度の信頼性の高いアブソリュート方式のエンコーダ100を実現することができる。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【0068】
たとえば、上記実施形態では、透遮光部材40は固定マスクとして形成され、回転ディスク20の光源50側に配置されているが、回転ディスク20の光検出部60側に固定マスクを配置してもよい。さらに透遮光部材40は、光検出部60に作り込んで、当該光検出部60と一体的に形成してもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 回転軸、
20 回転ディスク、
21 ディスク面、
30、31 光学パターン、
30a、31a 透光部、
30b、31b 遮光部、
40 透遮光部材(固定マスク)、
50 光源、
60 光検出部、
70 磁石、
80 磁気検出部、
90 演算部、
100 エンコーダ。
図1
図2
図3
図4
図5