【文献】
Asgari B. 'Chaetomium globosum strain C63 beta-tubulin (BTUB) gene, partial sequence', GenBank [online], 2011年6月9日, Accession No.HM365269, [2016年1月7日検索], インターネット<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/335058713?sat=21&satkey=41390843>
【文献】
Asgari B. 'Chaetomium cruentum strain C88 beta-tubulin (BTUB) gene, partial sequence', GenBank [online], 2011年6月9日, Accession No.HM365270, [2016年1月7日検索], インターネット<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/335058714?sat=21&satkey=41390843>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
検出を行うために、前記オリゴヌクレオチド対を用いてケトミウム・グロボーサム・クレードのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、ケトミウム・グロボーサム・クレードの検出を行う、請求項1又は2記載の検出方法。
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ケトミウム・グロボーサム・クレードのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、ケトミウム・グロボーサム・クレードの検出を行う、請求項3記載の検出方法。
前記ケトミウム・グロボーサム・クレードのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列が下記(c)〜(f)の塩基配列のいずれかである、請求項1〜4のいずれか1項記載の検出方法。
(c)配列番号3に記載のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列又はその相補配列
(d)配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(e)配列番号4に記載のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列又はその相補配列
(f)配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、下記(c)〜(f)の塩基配列のいずれかで表される核酸にハイブリダイズすることができ、ケトミウム・グロボーサム・クレードを検出するための核酸プライマーとして機能し得る、請求項6〜8のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド対。
(c)配列番号3に記載のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列又はその相補配列
(d)配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(e)配列番号4に記載のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列又はその相補配列
(f)配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応法によって前記(c)〜(f)の塩基配列のいずれかで表される核酸の一部を増幅でき、ケトミウム・グロボーサム・クレードを検出するための核酸プライマーとして機能し得るものである、請求項9記載のオリゴヌクレオチド対。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、ケトミウム・グロボーサム・クレード(ケトミウム・グロボーサム及びケトミウム・クルエンタムを含む)のβ−チューブリン遺伝子の特定の部分塩基配列、すなわち本領域に存在するケトミウム・グロボーサム・クレードに特異的な塩基配列部位(可変部位)にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチド対を用いてケトミウム・グロボーサム・クレードの検出を行い、ケトミウム・グロボーサム・クレードをクレードレベルで迅速かつ正確に検出する方法である。ここで、「可変部位」とは、β−チューブリン遺伝子の塩基配列中で塩基変異が蓄積しやすい部位であり、この部位の塩基配列は他菌種との間で大きく異なる。
【0015】
本発明における「ケトミウム・グロボーサム」とは、担子菌類の1種で、酸性食品、乳製品、甘味食品からの検出例の報告の多い過酢酸耐性菌類である。
本明細書において、「過酢酸耐性菌類」とは、無菌充填飲食品の事故報告がある菌種又は無菌充填飲食品の事故を起こし得る菌種であり、かつ1000ppmの過酢酸殺菌(40℃、1分間)処理でも生残する菌類を指す。具体的には、前記条件下の過酢酸殺菌によっても、食品業界において商業的無菌を担保する殺菌である6D殺菌(初発菌数を1/1000000に低減する殺菌)を確保することが出来ない菌類を指す。本発明者らは、ケトミウム・グロボーサムNBRC6345株について、1000ppmの過酢酸殺菌(40℃、1分間)処理によるD値(初期の菌数を1/10にするのに必要な滅菌処理単位)を測定したところ、D値=0.05Dであった。すなわち、ケトミウム・グロボーサムは、1000ppmの過酢酸殺菌(40℃、1分間)処理でも、初発菌数が1/1000000まで低減せず、6Dに満たなかった。
【0016】
本発明における「ケトミウム・クルエンタム」とは、担子菌類の1種で、ケトミウム・グロボーサムとは低温下での増殖性やコロニーの色調が異なるが、子のう胞子の形態を比較すると極めて類似性が高い菌類である。
図1に示す、β−チューブリン遺伝子の塩基配列に基づき作成したケトミウム属に属する菌類の分子系統樹において、ケトミウム・グロボーサムが存在するクレードにはケトミウム・グロボーサム以外にもケトミウム・クルエンタムが含まれ、この2種は形態学・系統分類学的に極めて相同性が高いことが報告されている(Asgari B,Zare R.,The genus Chaetomium in Iran,a phylogenic study including six new species.,Mycologia,2011,vol.103(4),p.863-882参照)。ケトミウム・グロボーサムとケトミウム・クルエンタムとの間の相違点としては、低温域での増殖性、コロニーの色などが挙げられる。しかし、そのケトミウム・グロボーサムのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列に対する、ケトミウム・クルエンタムのβ−チューブリン遺伝子の部分配列の相同性は約99.5%と非常に高い。さらに、子のう胞子の形態も極めて類似性が高いため、過酢酸感受性も同等であると考えられる。
【0017】
本明細書において、「β−チューブリン」とは微小管を構成する蛋白質であり、「β−チューブリン遺伝子」とは、β−チューブリンをコードする遺伝子である。
【0018】
本明細書における「クレード(clade)」とは、ケトミウム属真菌のDNA(好ましくはβ−チューブリン遺伝子)の塩基配列について分子系統分類学的手法を用いて作成した分子系統樹に基づいて分類した、近縁関係にあるケトミウム属真菌の菌種群を意味する。
前記分子系統樹の作成方法としては特に制限はなく、通常の方法により作成することができる。例えば、近隣結合法(neighbor-joining method)、最大節約法(Maximum parsimony)、最尤法(Maximum likelihood estimation)、ベイズ法、非加重結合法(Unweighted Pair Group Method with Arithmetic mean)等を用いて作成することができる。本発明においては、近隣結合法を用いて分子系統樹を作成することが好ましい。また、本発明において、ケトミウム属真菌のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列に基づいて分子系統樹を作成することが好ましい。
【0019】
本明細書において、「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W.Russell.,Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられ、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
【0020】
本発明の検出方法は、ケトミウム・グロボーサム・クレードのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列中の可変部位に対応する核酸で表されるオリゴヌクレオチド対を用いることを特徴とする。
発明者等は、ケトミウム・グロボーサム及びケトミウム・クルエンタムを含むケトミウム・グロボーサム・クレードのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を決定し、種間での遺伝的距離と塩基配列の相同性の解析を行った。すなわち、シークエンシング法によりケトミウム・グロボーサム・クレードのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を決定し、アライメント解析により一致する塩基領域の検討を行った。その結果、β−チューブリン遺伝子の塩基配列中に同一のクレード内では保存性が高いが異なるクレード間で塩基配列の保存性が低く、クレードによって固有の塩基配列を有する可変部位を見い出した。この可変部位においてケトミウム・グロボーサム・クレードはクレード固有の塩基配列を有している。そのため、当該領域はケトミウム・グロボーサム・クレードをクレードレベルで迅速かつ正確に検出するための遺伝学的な指標として有用である。
【0021】
本発明の検出方法は、下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を用いる。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
前記オリゴヌクレオチド対を使用してケトミウム・グロボーサム・クレードをクレードレベルで検出し、同定することにより、ケトミウム・グロボーサム・クレードの検出が可能となる。
【0022】
ケトミウム・グロボーサム・クレードのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列中の可変部位を
図2、並びに配列番号3及び4に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、
図2は、ケトミウム・グロボーサム CBS148.51株及びケトミウム・クルエンタム CBS371.66株のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列、並びにケトミウム・グロボーサム及びケトミウム・クルエンタムを含むケトミウム・グロボーサム・クレードのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列における前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す。また、配列番号3に記載の塩基配列は、ケトミウム・グロボーサムCBS148.51株のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を示し、配列番号4に記載の塩基配列は、ケトミウム・クルエンタムCBS371.66株のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を示す。
前記(a)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Chae4Fともいう)及び前記(b)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Chae4Rともいう)はそれぞれ、配列番号3又は4に記載の塩基配列のうち25位〜46位までの領域及び251位〜269位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域はクレード間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、これらの領域の塩基配列はケトミウム・グロボーサム・クレードが固有に有する塩基配列であることを本発明者らが見出した。
したがって、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを用いて、ケトミウム・グロボーサム・クレードをクレードレベルで迅速かつ正確に検出することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればケトミウム・グロボーサム・クレードに特異的なプライマーとして用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCR法による検出が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、ケトミウム・グロボーサム・クレードのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列と特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりケトミウム・グロボーサム・クレードを検出することが可能となる。
【0023】
本発明において、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを用いて、下記(c)〜(f)の塩基配列のいずれかで表される核酸(好ましくは、前記可変部位)の存在を確認することが好ましい。
(c)配列番号3に記載のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列又はその相補配列
(d)配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できる塩基配列、配列番号3に記載の塩基配列に対して70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、なお好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上)の相同性を有しかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できる塩基配列、又はこれらの相補配列
(e)配列番号4に記載のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列又はその相補配列
(f)配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できる塩基配列、配列番号4に記載の塩基配列に対して70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、なお好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上)の相同性を有しかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できる塩基配列、又はこれらの相補配列
【0024】
本発明の検出方法に用いる前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドは、配列番号1又は2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドが好ましい。また、本発明の検出方法に用いるオリゴヌクレオチドは、ケトミウム・グロボーサム・クレードのクレードレベルでの検出に使用できれば、配列番号1又は2に記載の塩基配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列又はその相補配列で表されるオリゴヌクレオチドであってもよく、相同性が80%以上であることがさらに好ましく、相同性が85%以上であることがさらに好ましく、相同性が90%以上であることがさらに好ましく、相同性が95%以上であることが特に好ましい。また、本発明で用いることができるオリゴヌクレオチドには、配列番号1又は2に記載の塩基配列において1又は数個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜3個、よりさらに好ましくは1又は2個、特に好ましくは1個の塩基の欠失、置換又は挿入されており、かつケトミウム・グロボーサム・クレードのクレードレベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチドも包含される。また、配列番号1又は2に記載の塩基配列に、適当な塩基配列を付加してもよい。
塩基配列の相同性については、Lipman-Pearson法(Science,1985,227,p.1435)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
【0025】
前記オリゴヌクレオチドの結合様式は、天然の核酸に存在するホスホジエステル結合だけでなく、例えばホスホロアミデート結合、ホスホロチオエート結合等であってもよい。
【0026】
前記オリゴヌクレオチドは、例えばDNA自動合成機等を用いた化学合成等の通常の合成方法により調製することができる。また、ケトミウム・グロボーサム・クレードの遺伝子から制限酵素等を用いて直接切り出したり、また遺伝子をクローニングして単離精製した後、制限酵素などを用いて切り出して調製することも可能である。操作の容易さ、大量かつ安価に一定品質のオリゴヌクレオチドを得られる点から化学合成により調製するのが好ましい。
【0027】
前記オリゴヌクレオチド対を用いてケトミウム・グロボーサム・クレードのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列で表される核酸の存在を確認し、ケトミウム・グロボーサム・クレードをクレードレベルで検出する方法として特に制限はなく、シークエンシング法、ハイブリダイゼンション法、PCR法、リアルタイムPCR法、LAMP法など通常用いられる遺伝子工学的手法で行うことができる。
【0028】
本発明の検出用オリゴヌクレオチドは、核酸プローブ及び/又は核酸プライマーとして用いることができる。
【0029】
核酸プローブは、前記オリゴヌクレオチドを標識物によって標識化することで調製することができる。前記標識物としては特に制限されず、放射性物質や酵素、蛍光物質、発光物質、抗原、ハプテン、酵素基質、不溶性担体などの通常の標識物を用いることができる。標識方法は、末端標識でも、配列の途中に標識してもよく、また、糖、リン酸基、塩基部分への標識であってもよい。かかる標識の検出手段としては、例えば核酸プローブが放射性同位元素で標識されている場合にはオートラジオグラフィー等、蛍光物質で標識されている場合には蛍光顕微鏡等、化学発光物質で標識されている場合には感光フィルムを用いた解析やCCDカメラを用いたデジタル解析等が挙げられる。このようにして標識化されたオリゴヌクレオチドを、通常の方法により検査対象物から抽出された核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせた後、ハイブリダイズした検出用オリゴヌクレオチドの標識を測定することでケトミウム・グロボーサム・クレードをクレードレベルで検出することができる。核酸とハイブリダイズした核酸プローブの標識を測定する方法としては、通常の方法(FISH法、ドットブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法等)を用いることができる。
また、前記オリゴヌクレオチドは、固相担体に結合させて捕捉プローブとして用いることもできる。この場合、捕捉プローブと、標識核酸プローブの組み合わせでサンドイッチアッセイを行うこともできるし、標識を目示として標的核酸を捕捉することもできる。
【0030】
本発明の検出方法において、ケトミウム・グロボーサム・クレードをクレードレベルで検出するために、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いたハイブリダイゼーションを行うことが好ましい。
【0031】
被検体中のケトミウム・グロボーサム・クレードをクレードレベルで検出するためには、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を標識化して核酸プローブとし、得られた核酸プローブをDNA又はRNAとハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしたプローブの標識を適当な検出方法により検出すればよい。上記核酸プローブはケトミウム・グロボーサム・クレードのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列中の可変部位と特異的にハイブリダイズするので、被検体中のケトミウム・グロボーサム・クレードを迅速かつ正確にクレードレベルで検出することができる。DNA又はRNAとハイブリダイズした核酸プローブの標識を測定する方法としては、通常の方法(FISH法、ドットブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法等)を用いることができる。
【0032】
本発明の検出方法において、ケトミウム・グロボーサム・クレードの検出を行うため、前記オリゴヌクレオチド対を用いてケトミウム・グロボーサム・クレードのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認することが好ましい。DNA断片を増幅する方法として特に制限はなく、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、リアルタイムPCR法、LCR(Ligase Chain Reaction)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence-based Amplification)法、RCA(Rolling-circle amplification)法、LAMP(Loop mediated isothermal amplification)法など通常の方法を用いることができる。本発明においては、PCR法を用いるのが好ましい。
本発明において、PCR法により増幅反応を行いケトミウム・グロボーサム・クレードの検出を行う場合について詳しく説明する。しかし、本発明はこれらに制限するものではない。
【0033】
本発明において、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド)からなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCRを行い、ケトミウム・グロボーサム・クレードのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列(好ましくは、前記(c)〜(f)の塩基配列のいずれか)で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、ケトミウム・グロボーサム・クレードのクレードレベルでの検出を行うのが好ましい。ここで、本発明における「ケトミウム・グロボーサム・クレード」は、分類学上の分類に関わらず、配列番号3又は4に記載のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を有するものの他、配列番号3若しくは4に記載の塩基配列との相同性が70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上)の塩基配列、又は、配列番号3若しくは4に記載の塩基配列において1若しくは数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されている塩基配列、をβ−チューブリン遺伝子に含むものも包含する。なお、塩基配列の相同性については、Lipman-Pearson法(Science,1985,227,p.1435)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドは、PCRによって前記(c)〜(f)の塩基配列のいずれかで表される核酸又はその一部を増幅でき、ケトミウム・グロボーサム・クレードをクレードレベルで迅速かつ正確に検出するための核酸プライマーとして機能し得る。したがって、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をケトミウム・グロボーサム・クレード検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0034】
PCRの条件は、目的のDNA断片を検出可能な程度に増幅することができれば特に制限されない。
例えば、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCRを行う場合、好ましいPCR条件としては、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95℃以上98℃以下で5秒以上60秒以下行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を57℃以上67℃以下で5秒以上(好ましくは10秒以上)120秒以下(好ましくは60秒以下)行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で10秒以上60秒以下行い、これらを1サイクルとしたものを30サイクル以上35サイクル以下行う。
【0035】
本発明において、遺伝子断片の確認は通常の方法で行うことができる。例えば増幅産物について電気泳動を行い増幅した遺伝子の大きさに対応するバンドの有無を確認する方法、増幅産物量を経時的に計測する方法、増幅産物の塩基配列を解読する方法等が挙げられるが、本発明はこれらの方法に限定されるものではない。本発明においては、遺伝子増幅処理後に電気泳動を行い、増幅した遺伝子の大きさに対応するバンドの有無を確認する方法が好ましい。また、本発明において、増幅産物の検出は通常の方法で行うことができる。例えば増幅反応時に放射性物質などで標識されたヌクレオチドを取り込ませる方法、蛍光物質などで標識されたプライマーを用いる方法、増幅したDNA2本鎖の間にエチジウムブロマイドなどのDNAと結合することにより蛍光強度が強くなる蛍光物質を入れ込む方法等が挙げられるが、本発明はこれらの方法に限定されるものではない。本発明においては、増幅したDNA2本鎖の間にDNAと結合することにより蛍光強度が強くなる蛍光物質を入り込ませる方法が好ましい。
検体に検出対象真菌が含まれる場合、本発明のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCRを行い、得られたPCR産物について電気泳動を行うと、特定のサイズでDNA断片が確認される。具体的には、検体にケトミウム・グロボーサム・クレードが含まれる場合、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて得られたPCR産物の電気泳動を行うと、約240bpのサイズでDNA断片が確認される。このような操作を行うことにより、検体に検出対象真菌が含まれているかを確認することができる。
【0036】
本発明において、前記オリゴヌクレオチド対を用いて被検体のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を決定し、該部分塩基配列が前記(c)〜(f)の塩基配列のいずれかに含まれるか否かを確認することで、前記(c)〜(f)の塩基配列のいずれかで表される核酸の存在を確認しケトミウム・グロボーサム・クレードをクレードレベルで検出することもできる。すなわち、本発明の検出方法は、被検体の有するβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を解析・決定し、決定した塩基配列と前記(c)〜(f)の塩基配列のいずれかとを比較し、その一致又は相違に基づいて前記(c)〜(f)の塩基配列のいずれかで表される核酸の存在を確認しケトミウム・グロボーサム・クレードのクレードレベルの検出を行うものである。例えば、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をプライマーとして用いてPCRを行い前記(c)〜(f)の塩基配列のいずれかで表される核酸の一部を増幅して増幅産物の有無を確認し、得られる増幅産物の塩基配列と前記(c)〜(f)の塩基配列のいずれかとを比較し、前記(c)〜(f)の塩基配列のいずれかで表される核酸の存在を確認する。増幅産物の塩基配列が、前記(c)〜(f)の塩基配列のいずれかで表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をケトミウム・グロボーサム・クレードと同定することができる。このようにして、ケトミウム・グロボーサム・クレードをクレードレベルで迅速かつ正確に検出することができる。
塩基配列を解析・決定する方法としては特に限定されず、通常行われているRNA又はDNAシークエンシングの手法を用いることができる。
具体的には、マクサム−ギルバート法、サンガー法等の電気泳動法、質量分析法、ハイブリダイゼーション法等が挙げられる。サンガー法においては、放射線標識法、蛍光標識法等により、プライマー又は、ターミネーターを標識する方法が挙げられる。
【0037】
本発明において、増幅反応に用いられるプライマーは、設計した配列を基にして化学合成したり、試薬メーカーから購入することができる。具体的には、オリゴヌクレオチド合成装置等を用いて合成することができる。また、合成後、吸着カラム、高速液体クロマトグラフィーや電気泳動法を用いて精製したものを用いることもできる。また、1ないし数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加された塩基配列を有するオリゴヌクレオチドについても、通常の方法を使用して合成できる。
【0038】
本発明において使用される検体としては特に制限はなく、飲食品自体、飲食品の原材料、単離菌体、培養菌体、飲食品又はその原材料の包装容器等を用いることができる。
検体からゲノムDNAを調製する方法としては、ケトミウム・グロボーサム・クレードの検出を行うのに未精製の状態でも十分な精製度及び量のDNAが得られるのであれば特に制限されず、さらに分離、抽出、濃縮、精製等の前処理をして使用することもできる。例えば、フェノール及びクロロホルムで処理したり、市販の抽出キットを用いて精製して、核酸の純度を高めて使用することができる。また、被検体中のRNAを逆転写して得られるDNAを用いることもできる。
【0039】
本発明のケトミウム・グロボーサム・クレード検出キットは、前記本発明のオリゴヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチド対を核酸プローブ又は核酸プライマーとして含有するものである。本発明のキットは、前記核酸プローブ及び核酸プライマーの他に、目的に応じ、標識検出物質、緩衝液、核酸合成酵素(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素等)、酵素基質(dNTP,rNTP等)等、菌類の検出に通常用いられる物質を含有する。本発明のキットには、本発明のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対によって検出が可能であることを確認するための陽性対照(ポジティブコントロール)を含んでいてもよい。陽性対照としては、例えば、本発明の方法により増幅される領域を含んだゲノムDNAが挙げられる。
【0040】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のケトミウム・グロボーサム・クレードの検出方法、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対、ケトミウム・グロボーサム・クレード検出キット、使用、並びに方法を開示する。
【0041】
<1>下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を用いてケトミウム・グロボーサム・クレードのの検出を行う、ケトミウム・グロボーサム・クレードの検出方法。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個(好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜3個、よりさらに好ましくは1又は2個、特に好ましくは1個)の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できるオリゴヌクレオチド、若しくは配列番号1に記載の塩基配列との相同性が70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上)でありかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個(好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜3個、よりさらに好ましくは1又は2個、特に好ましくは1個)の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できるオリゴヌクレオチド、若しくは配列番号2に記載の塩基配列との相同性が70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上)でありかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
【0042】
<2>前記ケトミウム・グロボーサム・クレードがケトミウム・グロボーサム及びケトミウム・クルエンタムを含む、前記<1>項記載の検出方法。
<3>検出を行うために、前記オリゴヌクレオチド対を用いてケトミウム・グロボーサム・クレードのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、ケトミウム・グロボーサム・クレードの検出を行う、前記<1>又は<2>項記載の検出方法。
<4>前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ケトミウム・グロボーサム・クレードのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、ケトミウム・グロボーサム・クレードの検出を行う、前記<3>項記載の検出方法。
<5>前記ケトミウム・グロボーサム・クレードのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列が下記(c)〜(f)の塩基配列のいずれかである、前記<1>〜<4>のいずれか1項記載の検出方法。
(c)配列番号3に記載のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列又はその相補配列
(d)配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できる塩基配列、配列番号3に記載の塩基配列に対して70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、なお好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上)の相同性を有しかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できる塩基配列、又はこれらの相補配列
(e)配列番号4に記載のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列又はその相補配列
(f)配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できる塩基配列、配列番号3に記載の塩基配列に対して70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、なお好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上)の相同性を有しかつケトミウム・グロボーサム・クレードの検出に使用できる塩基配列、又はこれらの相補配列
【0043】
<6>前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれるオリゴヌクレオチド、又は前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対。
【0044】
<7>前記オリゴヌクレオチドが核酸プローブ又は核酸プライマーである、前記<6>項記載のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対。
<8>前記ケトミウム・グロボーサム・クレードがケトミウム・グロボーサム及びケトミウム・クルエンタムを含む、前記<6>又は<7>項記載のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対。
<9>前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、前記(c)〜(f)の塩基配列のいずれかで表される核酸にハイブリダイズすることができ、ケトミウム・グロボーサム・クレードを検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る、前記<6>〜<8>のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対。
<10>前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応法によって前記(c)〜(f)の塩基配列のいずれかで表される核酸の一部を増幅でき、ケトミウム・グロボーサム・クレードを検出するための核酸プライマーとして機能し得るものである、前記<9>項記載のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対。
【0045】
<11>前記<6>〜<10>のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対を含むケトミウム・グロボーサム・クレード検出キット。
【0046】
<12>ケトミウム・グロボーサム・クレード検出用核酸プライマーとしての、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドの使用。
<13>ケトミウム・グロボーサム・クレード検出用核酸プライマーの製造のための、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドの使用。
<14>前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドをケトミウム・グロボーサム・クレード検出用核酸プライマーとして使用する方法。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
試験例1 ケトミウム属に属する菌類の分子系統樹の作成
下記の方法により、ケトミウム属に属する菌類各種(ケトミウム・グロボーサム、ケトミウム・クルエンタム、ケトミウム・アンデュラチュラム(
Chaetomium undulatulum)、ケトミウム・スバフィン(
Chaetomium subaffine)、ケトミウム・レクタングラー(
Chaetomium rectangulare)、ケトミウム・エラタム(
Chaetomium elatum)、ケトミウム・インターラプタム(
Chaetomium interruptum)、ケトミウム・メガロカルパム(
Chaetomium megalocarpum)、ケトミウム・グランデ(
Chaetomium grande)、ケトミウム・フニコラ(
Chaetomium funicola)、ケトミウム・インディカム(
Chaetomium indicum)、ケトミウム・クリスパタム(
Chaetomium crispatum)、ケトミウム・トランカチュラム(
Chaetomium truncatulum)、ケトミウム・カリンチアカム(
Chaetomium carinthiacum)、ケトミウム・アトロブランネウム(
Chaetomium atrobrunneum)及びケトミウム・ムロラム(
Chaetomium murorum))のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を決定した。
【0049】
ポテトデキストロース寒天培地(PDA培地、Difco社製)を用いて、The Centraalbureau voor Schimmelculturesが保管しCBSナンバーにより管理されている株、及びThe CABI Bioscience Fungal Reference Collectionが保管しIMIナンバーにより管理されている株を適温(25〜37℃)で2〜5日間暗所培養を行った。
培養後の菌体1白金耳量をPrepman UltraReagent(商品名、Applied Biosystems社製)を使用し、マニュアルに準じた操作手順でDNAを抽出した。抽出したDNA溶液のDNA濃度はNanoDrop(商品名、エル・エム・エス社製)を用いて測定し、ultra PURE Distilled Water(商品名、インビトロジェン社製)を用いて5ng/μLとなるように希釈調製した。
各菌種のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列をDNA data bank of Japan(DDBJ:http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome-j.html)のARSA検索、及びBt2aプライマー(5’-aataggtgccgctttctgg-3’:配列番号5)とBt2bプライマー(5’-agttgtcgggacggaagag-3’:配列番号6)(Glass and Donaldson,Appl Environ Microbiol 61:1323−1330,1995)を用いたPCR(変性温度95℃1分、アニーリング温度55℃1分、伸長温度72℃1分の35サイクル)で得られたPCR産物の解析により得た。PCR産物は、BigDye terminator Ver.1.1(商品名、Applied Biosystems社製)を使用してラベル化し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウェア‘ATGC Ver.4’(Genetyx社製)を使用した。
得られた塩基配列をClustal W(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)を使用してアライメント解析を行い、ソフトウェアNJPLOTを用いて近隣結合法による解析を行い、分子系統樹を作成した。作成した分子系統樹を
図1に示す。
【0050】
図1に示すように、ケトミウム・グロボーサム及びケトミウム・クルエンタムは同一のクレードに含まれることが明らかとなった(Asgari B,Zare R.,The genus Chaetomium in Iran,a phylogenic study including six new species.,Mycologia,2011,vol.103(4),p.863-882参照)。
ケトミウム・グロボーサムとケトミウム・クルエンタムとの間の相違点としては、低温域での増殖性、子のう胞子の色などが挙げられる(Bita Asgari,Rasoul Zare,The genus Chaetomium in Iran,a phylogenetic study including six new species Mycologia,2011,vol.103(4),pp.863-882など参照)。しかし、ケトミウム・グロボーサムのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列に対する、ケトミウム・クルエンタムのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列の相同性は約99.5%と非常に高い。さらに、子のう胞子の形態も極めて類似性が高く、過酢酸感受性も同等であると考えられる。
したがって、ケトミウム・グロボーサムとケトミウム・クルエンタムとは、一括して検出することが好ましい。
【0051】
試験例2 ケトミウム・グロボーサム・クレードに特異的なβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の解析
上記の方法により決定したケトミウム属真菌各種や、各種菌類の公知のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列情報をもとに、Clustal W(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)を用いてアライメント解析を行い、ケトミウム・グロボーサム・クレードに特異的な塩基配列(Chae4F:agcaaagcaaacactcttggct(配列番号1)、Chae4R:cacgccatcactcggtcgt(配列番号2))を決定した。
【0052】
実施例
(1)プライマーの設計
上記で決定したケトミウム・グロボーサム・クレードに特異的な塩基配列部位をもとに、配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Chae4Fプライマー)及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Chae4Rプライマー)を設計し、シグマアルドリッチジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
【0053】
(2)検体の調製
設計したプライマーの有効性の評価に用いる菌類、すなわちケトミウム・グロボーサム・クレードとその他のケトミウム属菌類、並びに飲食品での事故事例で報告されている真菌等としては、表1〜3に記載した菌株を使用した。これらの菌株に関しては、千葉大学真菌医学研究センターが保管しIFMナンバーにより管理されている株、独立行政法人製品評価技術基盤機構が保管しNBRCナンバーにより管理されている株、The Centraalbureau voor Schimmelculturesが保管しCBSナンバーにより管理されている株、千葉県立中央博物館が保管しCBM-FAナンバーにより管理されている株、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンターが保管しIAMナンバーにより管理されている株、財団法人発酵研究所が管理しIFOナンバーで管理されている株、及び国立医薬品食品衛生研究所が保管しNIHSナンバーにより管理されている株を入手し、使用した。
各菌株を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて各菌の至適温度で7日間培養した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
培養した各菌体を白金耳を用いて回収し、ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は5ng/μLに調製した。
【0058】
(3)ケトミウム・グロボーサム・クレードの検出
DNAテンプレートとして上記で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL及び無菌蒸留水10μLを混合し、Chae4Fプライマー(20pmol/μL)0.5μL及びChae4Rプライマー(20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR溶液を調製した。
PCR溶液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR条件は、97℃、10分間の処理後、(i)97℃、1分間の熱変性反応、(ii)61℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行い、反応液を72℃で10分間保持した。
【0059】
PCR後、PCR溶液から2μLを分取してローディングバッファー(Nucleic Acid sample loading buffer 5×(BIO RAD社製))0.5μLと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(135V、25分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を
図3〜5に示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、
図3は表1に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、
図4は表2に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、
図5は表3に示す菌類の試料についての電気泳動図を示す。なお、分子量マーカーとして、EZ Load 100bp molecular Ruler(商品名、BIO RAD社製)を用いた。
【0060】
その結果、ケトミウム・グロボーサム又はケトミウム・クルエンタムを含むケトミウム・グロボーサム・クレードのゲノムDNAを含む試料では、約240bpのサイズで遺伝子断片が確認された。一方、ケトミウム・グロボーサム・クレード以外のケトミウム属及び、その他食品の製造環境から広く検出される菌類のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片は確認されなかった。したがって、本発明によれば、ケトミウム・グロボーサム・クレードをクレードレベルで特異的に検出することができる。
【0061】
上記の結果から、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ケトミウム・グロボーサム・クレードのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の存在を確認することができ、ケトミウム・グロボーサム・クレードをクレードレベルで特異的に検出できることがわかる。したがって、本発明の方法によれば、従来の方法と比較して、クレードレベルでより迅速かつより正確にケトミウム・グロボーサム・クレードを一括して検出することが可能である。