特許第5956267号(P5956267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956267
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】ろ過システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 24/16 20060101AFI20160714BHJP
   B01D 24/26 20060101ALI20160714BHJP
   B01D 24/46 20060101ALI20160714BHJP
   B01D 29/62 20060101ALI20160714BHJP
   E03F 5/14 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   B01D23/10 C
   B01D23/24 Z
   E03F5/14
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-158628(P2012-158628)
(22)【出願日】2012年7月17日
(65)【公開番号】特開2014-18720(P2014-18720A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229128
【氏名又は名称】ゼニス羽田株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】守屋 由介
(72)【発明者】
【氏名】大平 聡
(72)【発明者】
【氏名】石田 孝太郎
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−221197(JP,A)
【文献】 特開2004−016987(JP,A)
【文献】 特開2005−262009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/16
B01D 24/26
B01D 24/46
B01D 29/62
E03F 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮上ろ材からなる浮上ろ材層と、前記浮上ろ材層の上側に配置されて前記浮上ろ材の流出を防止するスクリーンと、前記浮上ろ材層より下側に設置された原水流入口および逆洗排水排出口と、前記スクリーンの上側に設けられたろ過水貯留部とを備える第1の縦穴と、
ポンプと、
前記ポンプを介して前記原水流入口へと原水を供給する原水供給流路と、
前記第1の縦穴内の水を、前記逆洗排水排出口から前記ポンプを介して排出する逆洗排水流路と、
前記原水を浮上ろ材層でろ過する際には、前記原水供給流路を介した前記第1の縦穴内への原水の供給を可能にする一方で前記逆洗排水流路を介した前記第1の縦穴内からの水の排出を制限し、前記浮上ろ材層を逆流洗浄する際には、前記逆洗排水流路を介した前記第1の縦穴内からの水の排出を可能にする一方で前記原水供給流路を介した前記第1の縦穴内への原水の供給を制限する流路切替機構と、
第2の縦穴と、
前記第2の縦穴と前記逆洗排水排出口とを結ぶ排出路と、
を備え、
前記ポンプが、前記第2の縦穴内に配置されており、
前記逆洗排水流路は、前記排出路と、前記第2の縦穴内の少なくとも一部と、前記第2の縦穴内に位置する前記ポンプの吸込口とを含んで構成され、
前記ポンプの吸込口は、前記スクリーンの下端を通る水平面よりも下側に位置することを特徴とする、ろ過システム。
【請求項2】
前記ポンプの吐出口と前記原水流入口とを結ぶ流入路を有し、
前記原水供給流路は、前記第2の縦穴内の少なくとも一部と、前記第2の縦穴内に位置する前記ポンプの吸込口と、前記流入路とを含んで構成され、
前記第2の縦穴内の水位を測定する水位計と、
前記水位計で測定した前記第2の縦穴内の水位に応じて前記流路切替機構を制御し、前記第2の縦穴内の水位が所定以下の場合にのみ前記浮上ろ材層の逆流洗浄を許容する制御装置と、
を備えることを特徴とする、請求項に記載のろ過システム。
【請求項3】
前記第2の縦穴内への原水の流入を遮断する流入遮断機構を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のろ過システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上向流式のろ過システムに関し、特には、下水の処理に好適に用いられるろ過システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水等の原水をろ過してろ過水を得るろ過システムとして、発泡高分子製の浮上ろ材よりなる浮上ろ材層と、浮上ろ材層の上側に配置されて浮上ろ材の流出を防止するスクリーンと、浮上ろ材層の下側に配置された原水流入口および逆洗排水排出口と、スクリーンの上側に位置するろ過水貯留部とを備える、上向流式のろ過システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、浮上ろ材を用いた上記従来のろ過システムでは、原水流入口から流入した原水を浮上ろ材層に上向流で通水することにより、夾雑物(例えば、ごみ、異物など)や浮遊性懸濁物質が除去されたろ過水を得ている。また、上記従来のろ過システムでは、ろ過の継続に伴い浮上ろ材層に夾雑物や浮遊性懸濁物質が補足されてろ過抵抗が増加すると、ろ過水貯留部に貯留したろ過水を自然流下させることにより、下向流で浮上ろ材層を逆流洗浄(以下「逆洗」と称することがある。)している。
【0004】
また、近年では、地面等を掘削して形成した縦穴内に上述した浮上ろ材層、スクリーン、原水流入口、逆洗排水排出口およびろ過水貯留部を配置してろ過システムを形成することにより、合流式下水道の越流水等をオンサイト(その場)で処理可能とすることなども提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
ここで、縦穴内に浮上ろ材層等を配置してろ過システムを形成した場合、ろ過水貯留部に貯留したろ過水を自然流下させて浮上ろ材層を逆洗するためには、縦穴内の水を逆洗排水排出口から下方へと排出し、水頭差を利用してろ過水を浮上ろ材層に下向流で通水する必要がある。しかし、縦穴の下部に位置する逆洗排水排出口から更に下方へと縦穴内の水を排出するためには、浮上ろ材層等が配置された縦穴よりも深い縦穴や、逆洗排水排出口よりも下側を通る逆洗排水送出用の配管を設ける必要があり、ろ過システムの設置に要するコストが著しく増大する。
【0006】
そこで、縦穴内に浮上ろ材層等を配置してなる上記従来のろ過システムでは、逆洗排水排出口から排出された逆洗排水を下水処理場などへ送出するための逆洗ポンプを設けることにより、水頭差を確保するための深い縦穴や逆洗排水送出用配管を設置することなく、ろ過水を用いた下向流での浮上ろ材層の逆洗を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3853738号公報
【特許文献2】特開2010−221197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、逆洗排水ポンプを設けて逆洗排水を送出するためには、逆洗排水ポンプを設置するための空間(例えば、浮上ろ材層等が配置された縦穴とは別の縦穴)を用意する必要がある。そのため、例えば原水ポンプを使用して原水流入口から縦穴内へと原水を供給するような場合には、原水ポンプを設置するための空間と、逆洗排水ポンプを設置するための空間と、浮上ろ材層等を配置する縦穴とが必要になり、ろ過システムの設置面積が増大すると共に、ろ過システムの設置に要するコストを十分に削減することができない。
【0009】
そこで、この発明は、縦穴内に浮上ろ材層等を配置してなるろ過システムにおいて、設置面積および設置に要するコストを十分に削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のろ過システムは、浮上ろ材からなる浮上ろ材層と、前記浮上ろ材層の上側に配置されて前記浮上ろ材の流出を防止するスクリーンと、前記浮上ろ材層より下側に設置された原水流入口および逆洗排水排出口と、前記スクリーンの上側に設けられたろ過水貯留部とを備える第1の縦穴と、ポンプと、前記ポンプを介して前記原水流入口へと原水を供給する原水供給流路と、前記第1の縦穴内の水を、前記逆洗排水排出口から前記ポンプを介して排出する逆洗排水流路と、前記原水を浮上ろ材層でろ過する際には、前記原水供給流路を介した前記第1の縦穴内への原水の供給を可能にする一方で前記逆洗排水流路を介した前記第1の縦穴内からの水の排出を制限し、前記浮上ろ材層を逆流洗浄する際には、前記逆洗排水流路を介した前記第1の縦穴内からの水の排出を可能にする一方で前記原水供給流路を介した前記第1の縦穴内への原水の供給を制限する流路切替機構と、第2の縦穴と、前記第2の縦穴と前記逆洗排水排出口とを結ぶ排出路とを備え、前記ポンプが、前記第2の縦穴内に配置されており、前記逆洗排水流路は、前記排出路と、前記第2の縦穴内の少なくとも一部と、前記第2の縦穴内に位置する前記ポンプの吸込口とを含んで構成され、前記ポンプの吸込口は、前記スクリーンの下端を通る水平面よりも下側に位置することを特徴とする。このように、流路切替機構を設けると共に、原水供給流路と逆洗排水流路とで同一のポンプを共用すれば、原水ポンプと逆洗排水ポンプとを別々に設置することなくろ過および逆洗を行うことができるので、ポンプの設置に必要な空間およびコストを削減することができる。従って、縦穴内に浮上ろ材層等を配置してなるろ過システムにおいて、ろ過システムの設置面積および設置に要するコストを十分に削減することができる。また、第2の縦穴内にポンプを配置すると共に、排出路を設けて当該排出路を逆洗排水流路の一部として利用すれば、吐出量の大きいポンプを使用して第1の縦穴内の水を引き抜かなくても、第1の縦穴内の水位と第2の縦穴内の水位との差(水頭差)を利用して第1の縦穴内の水を第2の縦穴内へと高流速で流入させ、浮上ろ材層を高流速で逆洗することができる。更に、ポンプの吸込口の位置を、スクリーンの下端を通る水平面よりも下側にすれば、スクリーンの上側に位置するろ過水貯留部に貯留されているろ過水を全て使用して効率的に逆洗を行うことができる。
なお、本発明において、「縦穴」とは、鉛直方向下向きに向かって延びる穴を指す。そして、本発明では、「鉛直方向下向きに向かって延びる穴」には、鉛直方向に沿って(平行に)下向きに延びる穴以外に、鉛直方向に対して傾斜して延びる穴も含まれる。また、本発明において、「水の排出を制限(または原水の供給を制限)する」とは、浮上ろ材層で原水がろ過されるように(または浮上ろ材層が逆流洗浄されるように)、逆洗排水流路を介した水の排出流量(または原水供給流路を介した原水の供給流量)を制限することを指す。そして、本発明では、「水の排出を制限(または原水の供給を制限)する」には、逆洗排水流路を介した水の排出(または原水供給流路を介した原水の供給)を完全に停止すること以外に、浮上ろ材層での原水のろ過(または浮上ろ材層の逆流洗浄)が可能な範囲内まで水の排出流量(または原水の供給流量)を低減することも含まれる。また、本発明において、「スクリーンの下端」とは、スクリーンの鉛直方向最下端を指し、スクリーンが水平に設置されている場合には、「スクリーンの下端を通る水平面」は、スクリーンの下面を面内に含む水平面を指す。
【0012】
また、本発明のろ過システムは、前記ポンプの吐出口と前記原水流入口とを結ぶ流入路を有し、前記原水供給流路は、前記第2の縦穴内の少なくとも一部と、前記第2の縦穴内に位置する前記ポンプの吸込口と、前記流入路とを含んで構成され、前記第2の縦穴内の水位を測定する水位計と、前記水位計で測定した前記第2の縦穴内の水位に応じて前記流路切替機構を制御し、前記第2の縦穴内の水位が所定以下の場合にのみ前記浮上ろ材層の逆流洗浄を許容する制御装置とを備えることが好ましい。原水供給流路が、第2の縦穴内の少なくとも一部と、ポンプの吸込口と、流入路とを含んで構成される場合に、水位計および制御装置を用いて流路切替機構を制御すれば、第2の縦穴内の水位が所定の水位以下の場合(即ち、第1の縦穴内の水位と第2の縦穴内の水位との差(水頭差)が十分に大きい場合)にのみ逆洗を実施して、十分に高い流速で効率的に浮上ろ材層を逆洗することができるからである。
なお、本発明において、逆流洗浄を許容する水位は、ろ過水貯留部に貯留されたろ過水の水面を面内に含む水平面よりも下側であれば任意の位置とすることができるが、十分に高い流速で効率的に浮上ろ材層を逆洗する観点からは、逆流洗浄を許容する水位は、スクリーンの下端を通る水平面よりも下側の位置とすることが好ましく、当該位置を通る水平面とスクリーンの下端を通る水平面との間に存在する空間の容積がろ過水貯留部に貯留されたろ過水の容積と等しくなる位置とすることが更に好ましい。
【0013】
そして、本発明のろ過システムは、前記第2の縦穴内への原水の流入を遮断する流入遮断機構を有することが好ましい。流入遮断機構を設ければ、逆洗時に第2の縦穴内への原水の流入を遮断することができるので、ポンプを用いて逆洗排水を効率的に送出し、浮上ろ材層の逆洗を効率的に行うことができるからである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、縦穴内に浮上ろ材層等を配置してなるろ過システムにおいて、ろ過システムの設置面積および設置に要するコストを十分に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に従う代表的なろ過システムの設置位置の一例を示す説明図である。
図2】本発明に従う代表的なろ過システムの概略構成を説明する説明図である。
図3】本発明に従うろ過システムの変形例の概略構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。なお、各図において同一の符号を付したものは、同一の構成要素を示すものとする。
【0017】
ここで、本発明のろ過システムは、特に限定されることなく、下水の処理等に用いることができる。具体的には、本発明のろ過システムは、図1にろ過システム100の設置位置の一例を示すように、雨水と汚水とを同一の管路で流す合流式下水道において、合流下水管111の近傍に配置して、計画遮集量nQを超えた、下水処理場にて処理しきれない越流水(nQ超過分)をその場(オンサイト)で処理する際に用いることができる。なお、「計画遮集量nQ」とは、下水処理場の処理能力に応じて設計される遮集管の計画遮集量であり、ここで、「n」は都市により異なる数値である。また、「Q」は晴天時時間最大汚水量である。
【0018】
そして、図1に示す、本発明のろ過システム100を適用した合流式下水道では、合流下水管111に流入する雨水および汚水の量が計画遮集量を超えた場合に、越流水(原水)が合流下水管111に設けられた越流部(図示せず)を超えてろ過システム100へと流入し、処理される。ここで、越流部は、望ましくは既設の雨水吐き112の下流側に設けられる。但し、雨水吐き112の下流側への設置が困難な場合には、雨水吐き112や、雨水吐き112の上流側に設けても良い。そして、ろ過システム100でろ過されて水質が改善した越流水(ろ過水)は、河川114等に放流されることとなる。
【0019】
ここで、図2に示すように、本発明の一例のろ過システム100は、地面Gの下に設置されており、第1の縦穴10と、第2の縦穴20と、合流下水管111と第2の縦穴20とを接続する原水流路とを具えている。なお、原水流路には、第2の縦穴20内への原水の流入を遮断する流入遮断機構としての流量調整弁115が設けられている。また、第1の縦穴10および第2の縦穴20の地面Gへの開口部には、縦穴内への人や物の落下を防止する蓋(図示せず)が配置されている。
【0020】
第1の縦穴10としては、例えば、地面Gを掘削して形成した新設のマンホール等の構造物を利用することができる。そして、図2に示すように、第1の縦穴10内には、スクリーン11と、スクリーンで支持された複数の浮上ろ材からなる浮上ろ材層12と、浮上ろ材層12の下側に設置された原水流入口13と、浮上ろ材層12の下側に設置された複数の逆洗排水排出口14と、スクリーン11の上側に設けられたろ過水貯留部15と、スクリーン11の上側に設けられたろ過水流出口16とが配置されている。なお、第1の縦穴10内には、任意に、浮上ろ材層12の逆流洗浄時に浮上ろ材の流動性を向上させるためのブロア(図示せず)を配置してもよい。
【0021】
ここで、浮上ろ材とは、原水よりも比重の小さい(即ち、原水中で浮く)ろ材である。そして、ろ過システム100では、浮上ろ材として、特許文献1や特許文献2に記載の発泡高分子製の粒子状の浮上ろ材などの既知の浮上ろ材を用いることができる。
【0022】
また、浮上ろ材層12の上側に配置するスクリーン11としては、浮上ろ材の流出を防止し得るスクリーン、例えばパンチングメタル等を用いることができる。なお、浮上ろ材層12は、所定の高さまで水を入れた第1の縦穴10内に多数の浮上ろ材を投入した後、投入した浮上ろ材の上側にスクリーン11を設置することにより、第1の縦穴10内に設けることができる。
【0023】
第2の縦穴20としては、第1の縦穴10と同様に、地面Gを掘削して形成した新設のマンホール等の構造物を利用することができる。そして、図2に示すように、第2の縦穴20内の下部には、ポンプ30が配置されている。また、第2の縦穴20の上部は、流量調整弁115を有する原水流路を介して合流下水管111と連通している。更に、第2の縦穴20内には、第2の縦穴20内の水位を測定するための水位計(図示せず)が設置されている。なお、ポンプ30および水位計としては、既知のポンプおよび水位計を適宜選択して用いることができる。
【0024】
ここで、このろ過システム100では、ポンプ30の吸込口31は、第2の縦穴20内に位置している。具体的には、ポンプ30の吸込口31は、第1の縦穴10のスクリーン11の下端を通る水平面(図2中、L2で示す位置にある水平面)よりも下側であって、第2の縦穴20内の底面近傍に位置している。また、ポンプ30の吐出口は、第1配管41に接続されており、第1配管41は、ポンプ30の吐出口と、第1の縦穴の原水流入口13とを接続している。即ち、第1配管41は、ポンプ30の吐出口と原水流入口13とを結ぶ流入路として機能する。
【0025】
また、第1配管41からは、第2配管43が分岐して延びている。具体的には、ポンプ30の吐出口と、第1の縦穴10の原水流入口13との間で、第1配管41から第2配管43が分岐している。そして、第1配管41は、第2配管43が分岐する位置と、原水流入口13との間に第1配管弁42を有している。
【0026】
更に、第1配管41から分岐した第2配管43は、図1に示す遮集管113に接続されており、遮集管113は、下水処理場まで延在している。そして、第2配管43は、第2配管弁44を有している。なお、図1に破線で示すように、第2配管は、原水(越流水)が合流下水管111から越流する越流部よりも下流側で合流下水管111に接続させてもよい。
【0027】
従って、第2の縦穴20内にポンプ30を配置したろ過システム100では、第1配管弁42を開くことにより、流入路としての第1配管41を介して第2の縦穴20内の水を第1の縦穴10内へと送出することができる。また、ろ過システム100では、第2配管弁44を開くことにより、第1配管41の一部(ポンプの吐出口から第2配管43が分岐する部分まで)および第2配管43を介して第2の縦穴20内の水を遮集管113内へと送出することができる。なお、第1配管弁42および第2配管弁44の開閉は、制御器50で制御することができる。
【0028】
また、ろ過システム100では、第1の縦穴10の下部に位置する複数の(図2では6つの)逆洗排水排出口14は、第1の縦穴10から逆洗排水を排出する排出路としての集水配管45に接続されており、集水配管45は、第2の縦穴20の下部まで延在している。即ち、排出路としての集水配管45は、逆洗排水排出口14と、第2の縦穴とを接続している。なお、集水配管45は、集水配管弁46を有している。
【0029】
従って、集水配管45を介して第1の縦穴10と第2の縦穴20とを連通させたろ過システム100では、第2の縦穴20内の水位が第1の縦穴10内の水位よりも低い場合、集水配管弁46を開くことにより、集水配管45を介して第1の縦穴10内の水を第2の縦穴20内へと送出することができる。なお、集水配管弁46の開閉は、制御器50で制御することができる。
【0030】
そして、このろ過システム100では、以下のようにして、合流下水管111から第2の縦穴20内に流入した越流水(原水)を第1の縦穴10の浮上ろ材層12でろ過し、或いは、第1の縦穴10内の浮上ろ材層12を逆洗する。
【0031】
<原水のろ過>
ろ過システム100では、第1配管弁42を開き、第2配管弁44および集水配管弁46を閉じた状態でポンプ30を運転させることにより、合流下水管111から原水流路を介して第2の縦穴20内へと流入した原水を第1の縦穴10の下部へと送水し、浮上ろ材層12に原水を上向流で通水して、ろ過水を得る。即ち、原水のろ過時には、第2の縦穴20内の少なくとも一部(原水が貯留されている部分)と、第2の縦穴20内に位置するポンプ30の吸込口31と、流入路としての第1配管41とが、ポンプ30を介して原水流入口13へと原水を供給する原水供給流路として機能する。そして、得られたろ過水は、ろ過水貯留部15内を上向流で流れた後、ろ過水流出口16を介して河川等へ放流される。
なお、原水をろ過する場合、第1の縦穴内を原水が上向流で流れれば、第2配管弁44および集水配管弁46を開いた状態としてもよいが、原水を効率的にろ過する観点からは、第2配管弁44および集水配管弁46を閉じた状態で原水をろ過することが好ましい。
【0032】
ここで、原水のろ過時に、第2の縦穴20から原水供給流路を介して第1の縦穴10内へと送られる原水の流量が第2の縦穴20内に流入する原水の流量よりも大きい場合、即ち、ポンプ30の吐出量が原水の流入量よりも大きい場合には、第2の縦穴20内の水位LVが、例えば図2に実線で示す位置から二点鎖線で示す位置まで低下する。
【0033】
そこで、ろ過システム100では、第2の縦穴20内の水位の低下によりポンプ30が空運転するのを防止するために、第2の縦穴20内の水位が所定の位置(例えば図2に二点鎖線で示す位置)まで低下した場合には、ポンプ30の運転を停止し、第1配管弁42を閉じて、原水のろ過を中止する。そして、第2の縦穴20内に再び原水が貯留され、第2の縦穴20内の水位が上昇すると、第1配管弁42を開き、ポンプ30の運転を再開して、原水のろ過を再開する。
【0034】
<浮上ろ材層の逆洗>
また、ろ過システム100では、定期的に、或いは、ろ過抵抗が所定値以上に上昇すると、第1配管弁42を閉じ、第2配管弁44および集水配管弁46を開いた状態でポンプ30を運転させることにより、浮上ろ材層12を逆洗する。具体的には、集水配管45を介して第1の縦穴10内の水を第2の縦穴20の下部へと送水し、ろ過水貯留部15に貯留されたろ過水を浮上ろ材層12に下向流で通水して、浮上ろ材層12を構成する多数の浮上ろ材を下方に展開させる。そして、浮上ろ材層12に補足されていた夾雑物や浮遊性懸濁物質を浮上ろ材層12から排出させ、浮上ろ材層12を逆洗する。また、第1の縦穴10内から第2の縦穴20内へと流入した水(浮上ろ材層12に補足されていた夾雑物や浮遊性懸濁物質を含む逆洗排水)を、ポンプ30を介して第2の縦穴20内から遮集管113へと送出する。即ち、浮上ろ材層12の逆洗時には、排出路としての集水配管45と、第2の縦穴20内の少なくとも一部(集水配管45を介して流入した逆洗排水が流れる部分)と、第2の縦穴20内に位置するポンプ30の吸込口31と、第1配管41の一部(ポンプ30の吐出口から第2配管43が分岐する部分まで)および第2配管43とが、第1の縦穴10内の水を逆洗排水排出口14からポンプ30を介して排出する逆洗排水流路として機能する。
なお、浮上ろ材層12を逆洗する場合、第1の縦穴10内をろ過水が下向流で流れ、浮上ろ材が下方に展開すれば、第1配管弁42を開いたままの状態としてもよいが、浮上ろ材層12を効率的に逆洗する観点からは、第1配管弁42を閉じた状態で浮上ろ材層12を逆洗することが好ましい。
【0035】
ここで、ろ過システム100では、原水のろ過時と、浮上ろ材層12の逆洗時との双方においてポンプ30を使用(共用)するため、原水のろ過を停止し、浮上ろ材層12の逆洗を開始する際には、第1配管弁42、第2配管弁44および集水配管弁46を開閉して、流路を切り替える。即ち、ろ過システム100では、第1配管弁42、第2配管弁44および集水配管弁46が、原水のろ過時には、原水供給流路を介した第1の縦穴10内への原水の供給を可能にする一方で逆洗排水流路を介した第1の縦穴10内からの水の排出を制限し、浮上ろ材層の逆洗時には、逆洗排水流路を介した第1の縦穴10内からの水の排出を可能にする一方で原水供給流路を介した第1の縦穴10内への原水の供給を制限する流路切替機構として機能する。
【0036】
そして、このろ過システム100によれば、原水のろ過時と、浮上ろ材層12の逆洗時との双方においてポンプ30を共用することができるので、ろ過用の原水ポンプと逆洗用の逆洗排水ポンプとを別々に設置することなくろ過および逆洗を行うことができる。従って、このろ過システム100によれば、ポンプの設置に必要な空間およびコストを削減し、ろ過システムの設置面積および設置に要するコストを十分に削減することができる。
【0037】
また、このろ過システム100では、前述した通り、ポンプ30の吸込口31が、スクリーン11の下端を通る水平面(図2中、L2で示す位置にある水平面)よりも下側に位置している。ここで、ろ過システム100では、浮上ろ材層12の逆洗時に、第1の縦穴10内から第2の縦穴20内へと流入した水を、ポンプ30を介して第2の縦穴20内から遮集管113へと送出する。従って、逆洗時には、第1の縦穴10内の水位および第2の縦穴20内の水位を、最大でポンプ30の吸込口31の位置(スクリーン11の下端を通る水平面よりも下側)まで低下させることができる。そのため、このろ過システム100によれば、浮上ろ材層12の逆洗時に、スクリーン11の上側に位置するろ過水貯留部15に貯留されているろ過水を全て使用して効率的に逆洗を行うことができる。
【0038】
更に、ろ過システム100では、逆洗時に、集水配管45を介して第1の縦穴10内の水を第2の縦穴20の下部へと送水し、第1の縦穴10内から第2の縦穴20内へと流入した水を、ポンプ30を介して第2の縦穴20内から遮集管113へと送出している。従って、ろ過システム100では、吐出量の大きいポンプを使用して第1の縦穴10内の水を引き抜かなくても、第1の縦穴10内の水位と第2の縦穴20内の水位との差(水頭差)を利用して第1の縦穴10内の水を第2の縦穴20内へと高流速で流入させることができる。よって、ろ過システム100によれば、浮上ろ材層12を高流速で効率的に逆洗することができる。
【0039】
ここで、水頭差を利用して第1の縦穴10内の水を第2の縦穴20内へと高流速で流入させる場合、第2の縦穴20内の水位LVは、逆洗を開始する際の第1の縦穴10内の水位(図2中にL1で示す、ろ過水貯留部15に貯留されたろ過水の水面の位置)よりも下側にある必要がある。そこで、このろ過システム100では、第2の縦穴20内に設置した水位計で測定した第2の縦穴20内の水位LVがろ過水の水位以下の場合にのみ浮上ろ材層12の逆洗を開始するように、制御装置としての制御器50で、第1配管弁42、第2配管弁44および集水配管弁46(流路切替機構)の開閉を制御する。具体的には、第2の縦穴20内の水位が第1の縦穴10内のろ過水の水位よりも下側に位置する場合にのみ、制御器50が、第1配管弁42を閉じ、第2配管弁44および集水配管弁46を開くことを許容し、第2の縦穴20内の水位が第1の縦穴10内のろ過水の水位以上の場合には、制御器50は、第2配管弁44および集水配管弁46を開かない。
【0040】
なお、水頭差を大きくして十分に高い流速で効率的に浮上ろ材層12を逆洗する観点からは、逆洗の開始を許容する水位は、スクリーン11の下端を通る水平面(図2中、L2で示す位置にある水平面)よりも下側の位置とすることが好ましい。また、ろ過水貯留部15に貯留されたろ過水の全てを高流速で自然流下させることにより十分に高い流速で効率的に浮上ろ材層12を逆洗する観点からは、逆洗の開始を許容する水位は、図2中、L3で示す位置よりも下側の位置とすることが好ましい。なお、図2中、L3で示す位置は、当該位置を通る水平面とスクリーンの下端を通る水平面との間に存在する空間(第2の縦穴20の一部)の容積Vが、逆洗開始直前のろ過水貯留部に貯留されたろ過水の容積Vと等しくなる位置である。
【0041】
そして、このように水位計および制御器50を用いて逆洗開始のタイミングを制御するろ過システム100によれば、原水流路を介して合流下水管111から第2の縦穴20内に原水が流入する構成であっても、原水のろ過に伴って第2の縦穴20内の水位が所定の水位以下まで低下した場合にのみ逆洗を実施することができる。従って、十分に高い流速で効率的に浮上ろ材層12を逆洗することができる。
【0042】
なお、第1の縦穴10と第2の縦穴20との間の水頭差を十分に確保し、高い流速で効率的に浮上ろ材層12を逆洗する観点からは、逆洗中は、流量調整弁115を閉じ、第2の縦穴20内への原水の流入を遮断することが好ましい。因みに、流量調整弁115を閉じ、第2の縦穴20内への原水の流入を遮断すれば、ポンプ30を用いて逆洗排水を効率的に送出することもできる。
【0043】
以上、一例を用いて本発明のろ過システムについて説明したが、本発明のろ過システムは、上記一例に限定されることはなく、本発明のろ過システムには、適宜変更を加えることができる。
【0044】
具体的には、上記一例のろ過システム100では、ポンプ30を第2の縦穴20内に配置したが、本発明のろ過システムでは、図3に示すように、ポンプ30を第2の縦穴内に配置しなくてもよい。
【0045】
ここで、図3に示すろ過システム200は、ポンプ30が、第2の縦穴内ではなく、地下に形成されたポンプ室または地上に設置されている点、原水が、原水配管弁48を有する原水配管47を介してポンプ30へと供給される点、集水配管45が、原水配管弁48とポンプ30との間で原水配管47に接続している点、および、第2配管43が、遮集管ではなく下水処理場まで延在している点において、先の一例のろ過システム100と構成が異なっている。
そして、このろ過システム200では、原水配管弁48および第1配管弁42を開き、第2配管弁44および集水配管弁46を閉じた状態でポンプ30を運転させることにより、原水槽(図示せず)等から原水を第1の縦穴10の下部へと送水し、浮上ろ材層12に原水を上向流で通水して、ろ過水を得る。また、このろ過システム200では、原水配管弁48および第1配管弁42を閉じ、第2配管弁44および集水配管弁46を開いた状態でポンプ30を運転させることにより、浮上ろ材層12を逆洗する。
【0046】
そして、このろ過システム200によれば、先の一例のろ過システム100と同様に、ポンプの設置に必要な空間およびコストを削減し、ろ過システムの設置面積および設置に要するコストを十分に削減することができる。
【0047】
また、本発明のろ過システムでは、水道水や、中水や、工水を第1の縦穴の上部に供給する手段を設けて、水道水や、中水や、工水を用いて浮上ろ材層の逆洗を行うようにしても良い。このようにすれば、雨天時にはろ過水を用いて逆洗すると共に、降雨後には水道水や、中水や、工水を用いて浮上ろ材層を逆洗してろ過システムを次の降雨時まで待機させておくことが可能となる
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、縦穴内に浮上ろ材層等を配置してなるろ過システムにおいて、ろ過システムの設置面積および設置に要するコストを十分に削減することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 第1の縦穴
11 スクリーン
12 浮上ろ材層
13 原水流入口
14 逆洗排水排出口
15 ろ過水貯留部
16 ろ過水流出口
20 第2の縦穴
30 ポンプ
31 吸込口
41 第1配管
42 第1配管弁
43 第2配管
44 第2配管弁
45 集水配管
46 集水配管弁
47 原水配管
48 原水配管弁
50 制御器
100 ろ過システム
111 合流下水管
112 雨水吐き
113 遮集管
114 河川
115 流量調整弁
200 ろ過システム
図1
図2
図3