特許第5956293号(P5956293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤンマー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5956293-エンジン 図000002
  • 特許5956293-エンジン 図000003
  • 特許5956293-エンジン 図000004
  • 特許5956293-エンジン 図000005
  • 特許5956293-エンジン 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956293
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02M 31/04 20060101AFI20160714BHJP
   F02M 31/13 20060101ALI20160714BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20160714BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20160714BHJP
   F02P 19/02 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   F02M31/04 A
   F02M31/13 301G
   F02M31/13 311D
   F02D43/00 301C
   F02D43/00 301P
   F02D45/00 312B
   F02D45/00 314B
   F02P19/02 302A
   F02M31/13 311C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-198602(P2012-198602)
(22)【出願日】2012年9月10日
(65)【公開番号】特開2014-51954(P2014-51954A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】川口 茂孝
(72)【発明者】
【氏名】藤本 悠己
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−276266(JP,A)
【文献】 特開昭62−170772(JP,A)
【文献】 実開昭59−081766(JP,U)
【文献】 特開昭59−170470(JP,A)
【文献】 実開昭60−032553(JP,U)
【文献】 実開昭60−032554(JP,U)
【文献】 実開昭60−039762(JP,U)
【文献】 特開昭60−050255(JP,A)
【文献】 特開昭60−116859(JP,A)
【文献】 特開昭62−082255(JP,A)
【文献】 特開昭62−082272(JP,A)
【文献】 特開昭62−282161(JP,A)
【文献】 実開平06−083960(JP,U)
【文献】 特開平09−296758(JP,A)
【文献】 特開平10−037817(JP,A)
【文献】 特開2000−240518(JP,A)
【文献】 特開2007−023869(JP,A)
【文献】 特開2008−002403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00−28/00
F02D 43/00−45/00
F02M 31/00−33/08
F02N 1/00−99/00
F02P 19/00−23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアヒータとグロープラグとこれらを制御する制御装置とを具備するエンジンであって、
制御装置によって、
エンジンの電源が入り状態にされるとエアヒータの電源のみを入り状態にし、所定時間の経過後にエアヒータの電源を切り状態とするとともにグロープラグの電源を入り状態にし、所定条件を満たした場合に、エアヒータの電源を再び入り状態にするようにし
前記エンジンの電源電圧が所定電圧以上である場合に、前記所定条件を満たしていると判断する
エンジン。
【請求項2】
エアヒータとグロープラグとこれらを制御する制御装置とを具備するエンジンであって、
制御装置によって、
エンジンの電源が入り状態にされるとエアヒータの電源のみを入り状態にし、所定時間の経過後にエアヒータの電源を切り状態とするとともにグロープラグの電源を入り状態にし、所定条件を満たした場合に、エアヒータの電源を再び入り状態にするようにし、
燃料の噴射量が所定噴射量以上である場合に、前記所定条件を満たしていると判断する
エンジン。
【請求項3】
エアヒータとグロープラグとこれらを制御する制御装置とを具備するエンジンであって、
制御装置によって、
エンジンの電源が入り状態にされるとエアヒータの電源のみを入り状態にし、所定時間の経過後にエアヒータの電源を切り状態とするとともにグロープラグの電源を入り状態にし、所定条件を満たした場合に、エアヒータの電源を再び入り状態にするようにし、
燃料の噴射圧力が所定噴射圧力以上である場合に、前記所定条件を満たしていると判断する
エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンに関する。詳しくは、冷態始動補助装置を備えたディーゼルエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンは、冷態始動時において、燃料が着火し難くなり始動性が低下する場合がある。そこで、燃焼室内にグロープラグを設け、冷態始動時に燃焼室及び燃焼室内の吸気や燃料を暖めることで始動性を向上させるディーゼルエンジンが知られている。冷却水温度に基づいてグロープラグを適切な温度に制御するものである。例えば、特許文献1に記載の如くである。また、吸気通路に空気を暖めるエアヒータを設け、冷態始動時に吸気を暖めることで始動性を向上させるディーゼルエンジンが知られている。吸気が所定温度に到達してから燃料を料噴するものである。例えば、特許文献2に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のディーゼルエンジンは、グロープラグによって燃料の着火性を向上させるがエンジン回転の立ち上がりが安定的でない傾向にある。一方、特許文献2に記載のディーゼルエンジンは、エアヒータによってエンジン回転の立ち上がりを安定させるが、燃料の着火性が向上し難い傾向にある。そこで、グロープラグとエアヒータとを併用することで燃料の着火性の向上及びエンジン回転の立ち上がりの安定化が見込まれる。しかし、グロープラグとエアヒータとを用いながら、セルモータによってエンジンを起動することで、バッテリーの大幅な電圧低下が発生する。これにより、電力を動力源とするECU等の電子機器の動作に支障がでる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−2403号公報
【特許文献2】特開2007−23869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、バッテリーの電圧が大幅に低下することを抑制しつつ、冷態始動時における燃料の着火性を向上させ、エンジン回転の立ち上がりを安定化させることができるエンジンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1においては、エアヒータとグロープラグとこれらを制御する制御装置とを具備するエンジンであって、制御装置によって、エンジンの電源が入り状態にされるとエアヒータの電源のみを入り状態にし、所定時間の経過後にエアヒータの電源を切り状態とするとともにグロープラグの電源を入り状態にし、所定条件を満たした場合にエアヒータの電源を再び入り状態にするようにし、前記エンジンの電源電圧が所定電圧以上である場合に、前記所定条件を満たしていると判断するものである。
【0007】
請求項2においては、エアヒータとグロープラグとこれらを制御する制御装置とを具備するエンジンであって、制御装置によって、エンジンの電源が入り状態にされるとエアヒータの電源のみを入り状態にし、所定時間の経過後にエアヒータの電源を切り状態とするとともにグロープラグの電源を入り状態にし、所定条件を満たした場合に、エアヒータの電源を再び入り状態にするようにし、前記制御装置は、燃料の噴射量が所定噴射量以上である場合に、前記所定条件を満たしていると判断するものである。
【0008】
請求項3においては、エアヒータとグロープラグとこれらを制御する制御装置とを具備するエンジンであって、制御装置によって、エンジンの電源が入り状態にされるとエアヒータの電源のみを入り状態にし、所定時間の経過後にエアヒータの電源を切り状態とするとともにグロープラグの電源を入り状態にし、所定条件を満たした場合に、エアヒータの電源を再び入り状態にするようにし、前記制御装置は、燃料の噴射圧力が所定噴射圧力以上である場合に、前記所定条件を満たしていると判断するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
即ち、本発明によれば、所定条件を満たすまでは、エアヒータ又はグロープラグのいずれか一方のみを用いてエンジンの始動を補助し、所定条件を満たした後は、エアヒータ及びグロープラグによってエンジンの始動を補助する。これにより、バッテリーの電圧が大幅に低下することを抑制しつつ、冷態始動時における燃料の着火性を向上させ、エンジン回転の立ち上がりを安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るエンジンの構成を示した概略図。
図2】本発明に係るエンジンの燃焼室を示す断面図。
図3】本発明に係るエンジンにおける射御装置の制御態様を表すフローチャートを示す図。
図4】エンジンの電源入り状態からのエアヒータ及びグロープラグの制御態様とエアヒータの温度変化、エンジンの電源であるバッテリーの電圧変化、及びエンジンの回転数変化との関係を示したグラフを示す図。
図5】各冷態始動補助装置を使用した場合におけるエンジンの回転数変化を示したグラフを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図1を用いて、本発明の一実施形態に係るエンジン1について説明する。
【0013】
図1及び図2に示すように、エンジン1は、ディーゼルエンジンであり、本実施形態においては、四つのシリンダ3・3・3・3を有する直列四気筒のディーゼルエンジンである。なお、本実施形態において、エンジン1は当該構成のディーゼルエンジンに限定するものではない。
【0014】
エンジン1は、吸気管2を介して供給される空気と、燃料噴射弁8・8・8・8から供給される燃料とを燃焼室6及び副燃焼室7において混合して燃焼させることで出力軸を回転駆動させる。エンジン1の燃焼室6は、シリンダブロックに設けられるシリンダ3・3・3・3の内部において、ピストン4とシリンダヘッド5とに囲まれて構成される。また、エンジン1の副燃焼室7は、シリンダヘッド5に構成される(図2参照)。エンジン1は、燃料の燃焼により発生する排気を、排気管9を介して外部へ排出する。エンジン1は、冷却水によって冷却される水冷式エンジンであり、加熱された冷却水がラジエータ10によって熱交換されるように構成される。エンジン1は、始動時にエンジン1の電源であるバッテリー11から供給される電流によって、図示しないクランクを回転させるセルモータ12を備える。なお、本実施形態において、エンジン1は副燃焼室が構成されるが、これに限定するものではない。
【0015】
エンジン1は、冷態始動補助装置として、エアヒータ13及びグロープラグ14を具備する。さらに、エンジン1は、エンジン回転数検出センサー15、冷却水温度検出センサー16、燃料噴射弁の噴射量検出センサー17、燃料噴射弁の燃料噴射圧を検出する噴射圧検出センサー18及び制御装置であるECU19を具備する。
【0016】
エアヒータ13は、吸気を暖めるものである。エアヒータ13は、吸気管2の途中部に設けられる。エアヒータ13は、電熱線によって吸気を加熱する電熱式エアヒータとして構成される。エアヒータ13は、電熱線を面状に形成した加熱面13aが吸気の流れ方向に対して垂直になるように吸気管2に配置される。エアヒータ13は、バッテリー11から供給される電流によって電熱線が加熱される。なお、本実施形態において、エアヒータ13を電熱式エアヒータで構成しているがこれに限定するものでなく、電力によって加熱されるものであればよい。
【0017】
グロープラグ14は、燃焼室内の吸気及び燃料を暖めるものである。グロープラグ14は、シリンダヘッド5に設けられる。グロープラグ14は、内部の電熱線によってその筐体を加熱する電熱式グロープラグとして構成される。グロープラグ14は、その筐体の先端部が副燃焼室7内に到達するように配置される。グロープラグ14は、バッテリー11から供給される電流によって内部の電熱線が加熱される。なお、本実施形態において、グロープラグ14を電熱式グロープラグで構成しているがこれに限定するものでなく、電力によって加熱されるものであればよい。
【0018】
エンジン回転数検出センサー15は、エンジン1の回転数Nを検出するものである。エンジン回転数検出センサー15は、センサーとパルサーとから構成され、エンジン1の出力軸に設けられる。なお、本実施形態において、エンジン回転数検出センサー15をセンサーとパルサーとから構成しているがこれに限定するものでなく、回転数Nを検出することができるものであればよい。
【0019】
冷却水温度検出センサー16は、エンジン1の冷却水温度Tを検出するものである。冷却水温度検出センサー16は、温度センサー等から構成され、エンジン1の冷却水の熱交換を行うラジエータ10に配置される。なお、本実施形態において、冷却水温度検出センサー16として温度センサーを設けているが、エンジンサーモスタッドの代表値を検出するものでもよい。
【0020】
噴射量検出センサー17は、燃料噴射弁8から噴射される燃料の噴射量Fを検出するものである。噴射量検出センサー17は、図示しない燃料供給管の途中部に設けられる。噴射量検出センサー17は、流量センサーから構成される。なお、本実施形態において、噴射量検出センサー17を流量センサーで構成しているがこれに限定するものでなく、燃料の噴射量を検出できるものであればよい。
【0021】
噴射圧検出センサー18は、燃料噴射弁8から噴射される燃料の噴射圧Pを検出するものである。噴射圧検出センサー18は、図示しない燃料供給管の途中部に設けられる。噴射圧検出センサー18は、圧力センサーから構成される。なお、本実施形態において、噴射圧検出センサー18を圧力センサーで構成しているがこれに限定するものでなく、燃料の噴射圧を検出できるものであればよい。
【0022】
制御装置であるECU19は、エンジン1を制御するものである。ECU19には、エンジン1の制御を行うための種々のプログラムやデータが格納される。ECU19は、CPU、ROM、RAMがバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。
【0023】
ECU19は、燃料噴射弁8・8・8・8と接続され、燃料噴射弁8・8・8・8を制御することが可能である。
【0024】
ECU19は、セルモータ12と接続され、セルモータ12を制御することが可能である。
【0025】
ECU19は、エアヒータ13と接続され、エアヒータ13を制御することが可能である。
【0026】
ECU19は、グロープラグ14と接続され、グロープラグ14を制御することが可能である。
【0027】
ECU19は、エンジン回転数検出センサー15に接続され、エンジン回転数検出センサー15が検出する回転数Nを取得することが可能である。
【0028】
ECU19は、冷却水温度検出センサー16に接続され、冷却水温度検出センサー16が検出する冷却水温度Tを取得することが可能である。
【0029】
ECU19は、噴射量検出センサー17に接続され、噴射量検出センサー17が検出する噴射量Fを取得することが可能である。
【0030】
ECU19は、噴射圧検出センサー18に接続され、噴射圧検出センサー18が検出する噴射圧Pを取得することが可能である。
【0031】
ECU19は、バッテリー11に接続され、バッテリー11の電圧Vを取得することが可能である。
【0032】
ECU19は、取得した回転数N、冷却水温度T、噴射量F、噴射圧P、及び電圧Vに基づいてエンジン1、特に、エンジン1のエアヒータ13及びグロープラグ14を制御することが可能である。
【0033】
以下では、図3から図5を用いて、本発明の一実施形態に係るエンジン1の冷態始動時におけるエアヒータ13及びグロープラグ14の制御態様について説明する。
【0034】
ECU19は、冷却水温度Tが所定温度Tt以下であると判断した場合、すなわち、冷態始動であると判断した場合、エアヒータ13の電源のみを入り状態にし、所定時間taの経過後にグロープラグ14の電源のみを入り状態にする。その後、ECU19は、所定条件を満たしていると判断した場合、具体的には、バッテリー電圧Vが所定電圧Vt以上であるとECU19が判断した場合、更にエアヒータ13の電源を入り状態にする。
【0035】
次に、本発明に係るエンジン1のECU19による冷態始動制御の態様について具体的に説明する。
【0036】
図3に示すように、エンジン1の電源が入り状態にされた後、ステップS110において、ECU19は、冷却水温度検出センサー16が検出する冷却水温度Tを取得し、ステップをステップS120に移行させる。
【0037】
ステップS120において、ECU19は、冷却水温度検出センサー16から取得した冷却水温度Tが所定温度Tt以下か否か判定する。その結果、冷却水温度検出センサー16から取得した冷却水温度Tが所定温度Tt以下であると判定した場合、ECU19はステップをステップS130に移行させる。一方、冷却水温度検出センサー16から取得した冷却水温度Tが所定温度Tt以下でないと判定した場合、ECU19は冷態始動制御を終了する。
【0038】
ステップS130において、ECU19は、エアヒータ13の電源を入り状態として、ステップをステップS140に移行させる。
【0039】
ステップS140において、ECU19は、エアヒータ13の電源が入り状態になってからの時間tが所定時間ta以上経過したか否か判定する。その結果、エアヒータ13の電源が入り状態になってからの時間tが所定時間ta以上経過したと判定した場合、ECU19はステップをステップS150に移行させる。一方、エアヒータ13の電源が入り状態になってからの時間tが所定時間ta以上経過していないと判定した場合、ECU19はステップをステップS140に戻す。
【0040】
ステップS150において、ECU19は、エアヒータ13の電源を切り状態にし、グロープラグ14の電源を入り状態にし、ステップをステップS160に移行させる。
【0041】
ステップS160において、ECU19は、作業者からの指令に基づいてエンジン1の始動操作を開始させる。すなわち、ECU19は、セルモータ12によってエンジン1の始動操作を開始して、ステップをステップS170に移行させる。
【0042】
ステップS170において、ECU19は、バッテリー11の電圧V、エンジン1が始動してからの時間t、エンジン1の回転数N、燃料の噴射量F及び燃料の噴射圧Pのうちいずれか1つが所定条件を満たしたか否か判定する。本実施形態においては、バッテリー11の電圧Vが所定電圧Vt以上か否か判定する(図4参照)。その結果、バッテリー11の電圧Vが所定電圧Vt以上であると判定した場合、ECU19はステップをステップS180に移行させる。一方、バッテリー11の電圧Vが所定電圧Vt以上でないと判定した場合、ECU19はステップをステップS170に戻す。
【0043】
ステップS180において、ECU19は、エアヒータ13の電源を入り状態として、ステップをステップS190に移行させる。すなわち、ECU19は、グロープラグ14に加えて、エアヒータ13の電源を入り状態として、ステップをステップS190に移行させる。
【0044】
ステップS190において、ECU19は、エンジン回転数検出センサー15から取得した回転数Nがアイドル回転数である最低回転数Nmin以上か否か判定する(図4参照)。その結果、エンジン回転数検出センサー15から取得した回転数Nが最低回転数Nmin以上であると判定した場合、ECU19はステップをステップS200に移行させる。一方、エンジン回転数検出センサー15から取得した回転数Nが最低回転数Nmin以上でないと判定した場合、ECU19はステップをステップS190に戻す。
【0045】
ステップS200において、ECU19は、エアヒータ13及びグロープラグ14の電源を切り状態にし、冷態始動制御を終了する。
【0046】
図4における線Aに示すように、エアヒータ温度(加熱面13aの温度)は、電源が入り状態である所定時間Taが経過するまで上昇した後、自然放熱によって低下する。エンジン1の始動操作が開始されると、エアヒータ13の加熱面13aは、通過する吸気との熱交換によって強制的に温度が低下する。一方、加熱面13aを通過する吸気は、加熱面13aとの熱交換により温度が上昇する。すなわち、吸気は、電源が切り状態であるエアヒータ13の余熱によって暖められる。バッテリー11の電圧Vが所定電圧Vt以上になると(図4における線B参照)、エアヒータ13は、電源が入り状態にされてエアヒータ温度が上昇する。
【0047】
図4における線Bに示すように、バッテリー11の電圧Vは、所定時間Taが経過するまでエアヒータ13に供給される電力量に応じて低下する。エンジン1の始動操作が開始されると、電圧Vは、セルモータ12とグロープラグ14とに供給される電力量に応じて所定電圧Vt以下に低下する。この際、バッテリー11は、エアヒータ13に電力を供給していないので電圧Vが大幅に低下することがない。エンジン1の回転数Nの上昇によりセルモータ12の負荷が減少すると、電圧Vは、セルモータ12に供給される電力量の減少に伴って上昇する。バッテリー11は、電圧Vが所定電圧Vt以上に上昇すると再びエアヒータ13に電力を供給する。
【0048】
図4における線Cに示すように、エンジン1は、セルモータ12の作動に応じた回転数Nによって始動操作が開始される。エンジン1は、エアヒータ13の余熱によって暖められた吸気をグロープラグ14によって暖められた燃焼室6及び副燃焼室7に供給することで着火性を向上させた状態で始動操作が行われる(図2参照)。そして、バッテリー11の電圧Vが所定電圧Vt以上になると、エンジン1は、エアヒータ13によって更に暖められた吸気を供給することでエンジン回転の立ち上がりを安定させた状態で始動操作が行われる。エンジン1は、回転数Nが最低回転数Nmin以上になるとエアヒータ13及びグロープラグ14の電源を切り状態にする。
【0049】
このように制御することで、図5における線Zに示すように、エンジン1は、エアヒータ13のみを用いて始動させた場合(図5における線X)よりも燃料の着火性が向上する。また、エンジン1は、グロープラグ14のみを用いて始動させた場合(図5における線Y)よりもエンジン回転の立ち上がりが安定化する。
【0050】
以上の如く、本発明の一実施形態に係るエンジン1は、エアヒータ13とグロープラグ14とこれらを制御する制御装置であるECU19とを具備するエンジン1であって、ECU19によって、エンジン1の電源が入り状態にされるとエアヒータ13の電源のみを入り状態にし、所定時間taの経過後にエアヒータ13の電源を切り状態とするとともにグロープラグ14の電源を入り状態にし、所定条件を満たした場合にエアヒータ13の電源を再び入り状態にするようにしたものである。
【0051】
また、エンジン1の電源電圧であるバッテリー11の電圧Vが所定電圧Vt以上である場合に前記所定条件を満たしているとECU19が判断するものである。
【0052】
このように構成することにより、バッテリー11の電圧Vが所定電圧Vt以上とする所定条件を満たすまでは、エアヒータ13又はグロープラグ14のいずれか一方のみを用いてエンジン1の始動を補助し、所定条件を満たした後は、エアヒータ13及びグロープラグ14によってエンジン1の始動を補助する。これにより、バッテリー11の電圧Vが大幅に低下することを抑制しつつ、冷態始動時における燃料の着火性を向上させ、エンジン回転の立ち上がりを安定化させることができる。
【0053】
次に、本発明に係るエンジン1の他の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0054】
図3に示すように、エンジン1の電源が入り状態にされた後、ステップS110からステップS160において、ECU19は、エンジン1の始動操作を行う。
【0055】
ステップS170において、ECU19は、バッテリー11の電圧V、エンジン1が始動してからの時間t、エンジン1の回転数N、燃料の噴射量F及び燃料の噴射圧Pのうちいずれか1つが所定条件を満たしたか否か判定する。本実施形態においては、エンジン1が始動してからの時間tが所定時間tb以上経過したか否か判定する。その結果、エンジン1が始動してからの時間tが所定時間tb以上経過したと判定した場合、ECU19はステップをステップS180に移行させる。一方、エンジン1が始動してからの時間tが所定時間tb以上経過していないと判定した場合、ECU19はステップをステップS170に移行させる。
【0056】
また、エンジン1の他の実施形態として、ステップS170において、ECU19は、所定条件を満たしたか否か判定する。本実施形態においては、エンジン1の回転数Nが所定回転数Nt以上、かつ単位時間当たりの回転数偏差ΔNが所定偏差ΔNt以上であるか否か判定する。その結果、エンジン1の回転数Nが所定回転数Nt以上、かつ単位時間当たりの回転数偏差ΔNが所定偏差ΔNt以上であると判定した場合、ECU19はステップをステップS180に移行させる。一方、エンジン1の回転数Nが所定回転数Nt以上、かつ単位時間当たりの回転数偏差ΔNが所定偏差ΔNt以上でないと判定した場合、ECU19はステップをステップS170に移行させる。
【0057】
また、エンジン1の他の実施形態として、ステップS170において、ECU19は、所定条件を満たしたか否か判定する。本実施形態においては、燃料噴射弁8から噴射される燃料の噴射量Fが所定噴射量Ft以上であるか否か判定する。その結果、燃料噴射弁8から噴射される燃料の噴射量Fが所定噴射量Ft以上であると判定した場合、ECU19はステップをステップS180に移行させる。一方、燃料噴射弁8から噴射される燃料の噴射量Fが所定噴射量Ft以上でないと判定した場合、ECU19はステップをステップS170に移行させる。
【0058】
また、エンジン1の他の実施形態として、ステップS170において、ECU19は、所定条件を満たしたか否か判定する。本実施形態においては、燃料噴射弁8から噴射される燃料の噴射圧Pが所定噴射圧Pt以上であるか否か判定する。その結果、燃料噴射弁8から噴射される燃料の噴射圧Pが所定噴射圧Pt以上であると判定した場合、ECU19はステップをステップS180に移行させる。一方、燃料噴射弁8から噴射される燃料の噴射圧Pが所定噴射圧Pt以上でないと判定した場合、ECU19はステップをステップS170に移行させる。
【0059】
ステップS180からステップS200において、ECU19は、エンジン1の始動操作を行う。
【0060】
以上の如く、本発明の他の実施形態に係るエンジン1において、エンジン1が始動してから所定時間tbが経過した場合に前記所定条件を満たしているとECU19が判断するものである。
【0061】
また、エンジン1の回転数Nが所定回転数Nt以上、かつ単位時間あたりの回転数偏差ΔNが所定偏差ΔNt以上である場合に前記所定条件を満たしているとECU19が判断するものである。
【0062】
また、燃料の噴射量Fが所定噴射量Ft以上である場合に前記所定条件を満たしているとECU19が判断するものである。
【0063】
また、燃料の噴射圧Pが所定噴射圧Pt以上である場合に前記所定条件を満たしているとECU19が判断するものである。
【0064】
このように構成することにより、エンジン1が始動してから所定時間taが経過した場合、エンジン1の回転数Nが所定回転数Nt以上、かつ単位時間あたりの回転数偏差ΔNが所定偏差ΔNt以上である場合、燃料の噴射量Fが所定噴射量Ft以上である場合、又は燃料の噴射圧Pが所定噴射圧Pt以上である場合のいずれか1つの所定条件を満たすまでは、エアヒータ13又はグロープラグ14のいずれか一方のみを用いてエンジン1の始動を補助し、所定条件を満たした後は、エアヒータ13及びグロープラグ14によってエンジン1の始動を補助する。これにより、バッテリー11の電圧Vが大幅に低下することを抑制しつつ、冷態始動時における燃料の着火性を向上させ、エンジン回転の立ち上がりを安定化させることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 エンジン
13 エアヒータ
14 グロープラグ
19 ECU
ta 所定時間
図1
図2
図3
図4
図5