(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多孔質樹脂層の両面に高密度樹脂層を有しており、各高密度樹脂層の厚さ方向断面における空孔の面積割合が50%以下であり、かつシート全体の体積空孔率が20%以上であるモーター用電気絶縁性樹脂シート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の絶縁性樹脂シートは、多孔質樹脂層の両面に高密度樹脂層を有する。
【0022】
多孔質樹脂層を構成する熱可塑性樹脂は特に限定されないが、耐熱性を有する熱可塑性樹脂であることが好ましく、特にガラス転移温度が150℃以上、好ましくは180℃以上の耐熱性を有するものが好適に使用される。このような熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルイミドなどが挙げられる。熱可塑性樹脂は単独で又は2種以上混合して使用できる。
【0023】
本発明においては、上記の熱可塑性樹脂の中でも、高温時の寸法安定性がよく長期での耐久性が高いことから、特にポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンを好適に使用することができる。また高ガラス転移温度(例えば220℃以上、さらに230℃以上)の樹脂と、低ガラス転移温度(例えば150℃以上220℃未満)の樹脂を併用することが好ましい。それにより、耐久性を維持しつつ微細な気泡を形成することができる(加工性の向上が可能)。ガラス転移温度が異なる熱可塑性樹脂を併用する場合、その配合割合(重量)は、高ガラス転移温度/低ガラス転移温度=20/80〜80/20程度が好ましく、30/70〜70/30程度がより好ましい。
【0024】
前記ポリイミドは公知乃至慣用の方法により得ることができる。例えば、ポリイミドは、有機テトラカルボン酸二無水物とジアミノ化合物(ジアミン)とを反応させてポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を合成し、このポリイミド前駆体を脱水閉環することにより得ることができる。
【0025】
上記有機テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物等が挙げられる。これらの有機テトラカルボン酸二無水物は単独で又は2種以上混合して用いてもよい。
【0026】
上記ジアミノ化合物としては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノ−2,2−ジメチルビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノビフェニル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上混合して用いてもよい。
【0027】
ポリイミドの原料としては、有機テトラカルボン酸二無水物として、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用い、ジアミノ化合物としてp−フェニレンジアミン及び/又は4,4′−ジアミノジフェニルエーテルを用いることが好ましい。
【0028】
前記ポリイミド前駆体は、略等モルの有機テトラカルボン酸二無水物とジアミノ化合物(ジアミン)とを、通常、有機溶媒中、0〜90℃で1〜24時間程度反応させることにより得られる。前記有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒が挙げられる。
【0029】
ポリイミド前駆体の脱水閉環反応は、例えば、300〜400℃程度に加熱したり、無水酢酸とピリジンの混合物などの脱水環化剤を作用させることにより行われる。一般に、ポリイミドは有機溶媒に不溶であり、成形困難なポリマーである。そのため、ポリイミドからなる多孔質体を製造する場合、前記ミクロ相分離構造を有するポリマー組成物の調製には、ポリマーとして上記のポリイミド前駆体を用いるのが一般である。
【0030】
なお、ポリイミドは、上記方法のほか、有機テトラカルボン酸二無水物とN−シリル化ジアミンとを反応させて得られるポリアミド酸シリルエステルを加熱閉環させる方法などよっても得ることができる。
【0031】
前記ポリエーテルイミドは、前記ジアミノ化合物と、2,2,3,3−テトラカルボキシジュフェニレンエーテル二無水物のような芳香族ビスエーテル無水物との脱水閉環反応により得ることができるが、市販品、例えば、ウルテム樹脂(SABIC社製)、スペリオ樹脂(三菱樹脂社製)などを用いてもよい。
【0032】
前記ポリエーテルスルホンは、ジクロロジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンのカリウム塩との縮重合反応により得ることができるが、市販品、例えば、ウルトラゾーンEシリーズ(BASF社製)、レーデルAシリーズ(ソルベイ社製)などを用いてもよい。
【0033】
多孔質樹脂層は、熱可塑性樹脂のほか、本発明の効果を損ねない範囲において、種々の添加剤を含んでいてもよい。この添加剤の種類は特に限定されず、粘着付与樹脂、難燃剤、酸化防止剤、無機フィラー、気泡核剤、結晶核剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、顔料、架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤などの一般的なプラスチック用配合剤などを挙げることができる。これらの添加剤は、樹脂組成物100重量部に対して、例えば0.1〜5重量部用いることができる。
【0034】
多孔質樹脂層は、前記熱可塑性樹脂およびその他の添加剤を含む熱可塑性樹脂組成物を多孔質化することで得ることができる。多孔質化する方法は特に限定されず、従来周知の化学発泡、物理発泡などにより発泡させることで得ることが出来るが、低比誘電率の多孔質樹脂層を得るためには、微細な気泡を高い空孔率で均一に形成することが好ましく、この点から、(1)非反応性ガスにより発泡させる方法、または(2)熱可塑性樹脂中に相分離させた相分離化剤を抽出する方法、のいずれかが好ましい。これらの方法では、化学発泡の場合に用いられる発泡剤に起因する反応残渣が残らず、また気泡が独立気泡構造となるため、吸湿などによる電気特性の変動が起こりにくい。
【0035】
上記(1)の発泡方法は、例えば、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物に非反応性ガスを加圧下で含浸させるガス含浸工程、ガス含浸工程後に圧力を減少させて熱可塑性樹脂組成物を発泡させる発泡工程を含む。
【0036】
ガス含浸工程は、少なくとも熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物に非反応性ガスを加圧下に含浸させる工程であり、非反応性ガスとしては、例えば二酸化炭素、窒素ガス、空気等が挙げられる。これらのガスは、単独で使用してもよく、混合して使用してもよい。
【0037】
これらの非反応性ガスのうち、多孔質樹脂層の素材として用いる熱可塑性樹脂への含浸量が多く、含浸速度も速い二酸化炭素の使用が特に好ましい。
【0038】
非反応性ガスを含浸させる際の圧力および温度は、非反応性ガスの種類、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物の種類、および目的とする多孔質樹脂層の平均気泡径や空孔率によって適宜調整する必要がある。例えば非反応性ガスとして二酸化炭素を用い、熱可塑性樹脂としてポリイミドを用いた場合において、平均気泡径5μm以下、体積空孔率30%以上の多孔質樹脂層を製造するためには、圧力は7.4〜100MPa程度、好ましくは20〜50MPaであり、温度は120〜350℃程度、好ましくは120〜300℃程度である。また例えば非反応性ガスとして二酸化炭素を用い、熱可塑性樹脂としてポリエーテルイミドを用いた場合において、平均気泡径5μm以下、体積空孔率30%以上の多孔質樹脂層を製造するためには、圧力は7.4〜100MPa程度、好ましくは20〜50MPaであり、温度は120〜260℃程度、好ましくは120〜220℃程度である。
【0039】
また、ポリマー中への含浸速度を速めるという観点から、前記非反応性ガスは超臨界状態であることが好ましい。例えば、二酸化炭素の場合、臨界温度が31℃、臨界圧力が7.4MPaであり、温度31℃以上、圧力7.4MPa以上の超臨界状態にすると、ポリマーへの二酸化炭素の溶解度が著しく増大し、高濃度の混入が可能となる。また、超臨界状態でガスを含浸させるとポリマー中のガス濃度が高いため、急激に圧力を降下させると、気泡核が多量に発生し、その気泡核が成長してできる気泡の密度が大きくなり、非常に微細な気泡を得ることができる。
【0040】
発泡工程は、前記ガス含浸工程後に圧力を減少させて熱可塑性樹脂組成物を発泡させる工程である。圧力を減少させることにより、熱可塑性樹脂組成物中に気泡核が多量に発生する。圧力を減少させる程度(減圧速度)は特に制限されないが、5〜400MPa/秒程度である。
【0041】
発泡工程により気泡核が形成された熱可塑性樹脂組成物からなる多孔質樹脂層を、150℃以上の温度で加熱する加熱工程を設けてもよい。気泡核が生じた多孔質樹脂層を加熱することにより、気泡核が成長し、気泡が形成される。加熱温度は180℃以上であることが好ましく、より好ましくは200℃以上である。加熱温度が150℃未満では、空孔率の高い多孔質樹脂層を得ることが困難な場合がある。なお加熱工程後には、多孔質樹脂層を急冷して気泡の成長を防止したり、気泡形状を固定してもよい。
【0042】
上記(1)の発泡方法は、バッチ方式、連続方式の何れの方式で行ってもよい。
【0043】
バッチ方式によれば、例えば以下のようにして発泡体を製造できる。すなわち、少なくとも熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物を単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して押し出すことにより、熱可塑性樹脂を基材樹脂として含むシートが形成される。あるいは、少なくとも熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物を、ローラ、カム、ニーダ、バンバリ型等の羽根を設けた混錬機を使用して均一に混錬しておき、熱板のプレスなどを用いて所定の厚みにプレス成形することにより、熱可塑性樹脂を基材樹脂として含むシートが形成される。こうして得られる未発泡シートを高圧容器中に入れて、二酸化炭素、窒素、空気などからなる非反応性ガスを注入し、前記未発泡シート中に非反応性ガスを含浸させる。十分に非反応性ガスを含浸させた時点で圧力を解放し(通常、大気圧まで)、基材樹脂中に気泡核を発生させる。そして、この気泡核を加熱することによって気泡を成長させた後、冷水などで急激に冷却し、気泡の成長を防止したり、形状を固定することにより発泡体が得られる。
【0044】
一方、連続方式によれば、例えば、少なくとも熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物を単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して混練しながら非反応性ガスを注入し、十分に非反応性ガスを樹脂中に含浸させた後、押し出すことにより圧力を解放(通常、大気圧まで)して気泡核を発生させる。そして、加熱することによって気泡を成長させた後、冷水などで急激に冷却し、気泡の成長を防止したり、形状を固定化することにより発泡体を得ることができる。
【0045】
上記(2)の発泡方法は、例えば、熱可塑性樹脂と、該熱可塑性樹脂の硬化体と相分離する相分離化剤とを含む熱可塑性樹脂組成物を基板上に塗布し、硬化させてミクロ相分離構造を有する樹脂シートを作製する工程、樹脂シートから相分離化剤を除去する工程を含む。
【0046】
相分離化剤は、ミクロ相分離構造の非連続相を構成する成分であり、熱可塑性樹脂と混合した場合に相溶性であり、かつ該熱可塑性樹脂の硬化体と相分離する化合物である。ただし熱可塑性樹脂と相分離する化合物であっても、適宜な媒体(例えば有機溶剤)を加えることで均一状態(均一溶液)となるものは使用可能である。
【0047】
このような相分離化剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール;前記ポリアルキレングリコールの片末端もしくは両末端メチル封鎖物、又は片末端もしくは両末端(メタ)アクリレート封鎖物;ウレタンプレポリマー;フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート系化合物などが例示される。これらの相分離化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用することも出来る。
【0048】
相分離化剤を用いることで、微小なミクロ相分離構造を得ることができ、それにより多孔質樹脂層の平均気泡径を5μm以下にすることができる。
【0049】
相分離化剤の分子量は特に制限はないが、後の除去操作が容易になることから、重量平均分子量として10000以下、例えば100〜10000程度であるのが好ましく、より好ましくは100〜2000である。重量平均分子量が100未満の場合には、樹脂成分の硬化体と相分離し難くなり、一方、重量平均分子量が10000を超えると、ミクロ相分離構造が大きくなりすぎたり、樹脂シート中から除去し難くなる。
【0050】
相分離剤の添加量は、該相分離剤と前記樹脂成分の組み合わせに応じて適宜選択出来るが、多孔質樹脂層の体積空孔率を30%以上にするためには、通常樹脂成分100重量部に対して25〜300重量部用いることが好ましく、より好ましくは30〜200重量部である。
【0051】
以下、上記(2)の発泡方法を用いた多孔質樹脂層の製造方法について詳しく説明する。
【0052】
まず、前記熱可塑性樹脂と相分離化剤とを含む熱可塑性樹脂組成物を基板上に塗布する。
【0053】
均一な熱可塑性樹脂組成物を調製するために、トルエン、及びキシレンなどの芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、及びアセトンなどのケトン類;N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、及びジメチルホルムアミドなどのアミド類などの有機溶媒を使用してもよい。有機溶媒の使用量は、樹脂成分100重量部に対して通常100〜500重量部であり、好ましくは200〜500重量部である。
【0054】
基材としては、平滑な表面を有するものであれば特に制限されず、例えば、PET、PE、及びPPなどのプラスチックフィルム;ガラス板;ステンレス、銅、及びアルミニウムなどの金属箔が挙げられる。連続して樹脂シートを製造するために、ベルト状の基材を用いてもよい。
【0055】
熱可塑性樹脂組成物を基材上に塗布する方法は特に制限されず、連続的に塗布する方法としては、例えば、ワイヤーバー、キスコート、及びグラビアなどが挙げられ、バッチで塗布する方法としては、例えば、アプリケーター、ワイヤーバー、及びナイフコーターなどが挙げられる。
【0056】
次に、基板上に塗布した熱可塑性樹脂組成物を硬化させて、相分離化剤がミクロ相分離した熱可塑性樹脂シートを作製する。ミクロ相分離構造は、通常、樹脂成分を海、相分離化剤を島とする海島構造となる。
【0057】
熱可塑性樹脂組成物が溶媒を含まない場合には、塗布膜に熱硬化処理などの硬化処理を施し、塗布膜中の熱可塑性樹脂成分を硬化させて相分離化剤を不溶化する。
【0058】
熱可塑性樹脂組成物が溶媒を含む場合には、塗布膜中の溶媒を蒸発(乾燥)させてミクロ相分離構造を形成した後に熱可塑性樹脂成分を硬化させてもよく、熱可塑性樹脂成分を硬化させた後に溶媒を蒸発(乾燥)させてミクロ相分離構造を形成してもよい。溶媒を蒸発(乾燥)させる際の温度は特に制限されず、用いた溶媒の種類により適宜調整すればよいが、通常10〜250℃であり、好ましくは60〜200℃である。
【0059】
次に、熱可塑性樹脂シートからミクロ相分離した相分離化剤を除去して多孔質樹脂層を作製する。なお、相分離化剤を除去する前に熱可塑性樹脂シートを基材から剥離しておいてもよい。
【0060】
熱可塑性樹脂シートから相分離化剤を除去する方法は特に制限されないが、溶剤で抽出する方法が好ましい。溶剤は、相分離化剤に対して良溶媒であり、かつ熱可塑性樹脂成分の硬化体を溶解しないものを用いる必要があり、例えば、トルエン、エタノール、酢酸エチル、及びヘプタンなどの有機溶剤、液化二酸化炭素、亜臨界二酸化炭素、超臨界二酸化炭素などが挙げられる。液化二酸化炭素、亜臨界二酸化炭素及び超臨界二酸化炭素は、樹脂シート内に浸透しやすいため相分離化剤を効率よく除去することができる。
【0061】
溶剤として液化二酸化炭素、亜臨界二酸化炭素または超臨界二酸化炭素を用いる場合には、通常、圧力容器を用いる。圧力容器としては、例えば、バッチ式の圧力容器、耐圧性のシート繰り出し・巻き取り装置を有する圧力容器などを用いることができる。圧力容器には、通常、ポンプ、配管、及びバルブなどにより構成される二酸化炭素供給手段が設けられている。
【0062】
液化二酸化炭素、亜臨界二酸化炭素または超臨界二酸化炭素で相分離化剤を抽出する際の温度及び圧力は、二酸化炭素の臨界点以上であればよく、通常、32〜230℃、7.3〜100MPaであり、好ましくは40〜200℃、10〜50MPaである。
【0063】
抽出は、熱可塑性樹脂シートを入れた圧力容器内に、液化二酸化炭素、亜臨界二酸化炭素または超臨界二酸化炭素を連続的に供給・排出して行ってもよく、圧力容器を閉鎖系(投入した樹脂シート、液化二酸化炭素、亜臨界二酸化炭素または超臨界二酸化炭素が容器外に移動しない状態)にして行ってもよい。超臨界二酸化炭素および亜臨界二酸化炭素を用いた場合には、熱可塑性樹脂シートの膨潤が促進され、かつ不溶化した相分離化剤の拡散係数の向上によって効率的に熱可塑性樹脂シートから相分離化剤が除去される。液化二酸化炭素を用いた場合には、前記拡散係数は低下するが、熱可塑性樹脂シート内への浸透性が向上するため効率的に樹脂シートから相分離化剤が除去される。
【0064】
抽出時間は、抽出時の温度、圧力、相分離化剤の配合量、及び樹脂シートの厚みなどにより適宜調整する必要があるが、通常、1〜10時間であり、好ましくは2〜10時間である。
【0065】
一方、溶剤として有機溶剤を用いて抽出する場合、大気圧下で相分離化剤を除去できるため、液化二酸化炭素または超臨界二酸化炭素を用いて抽出する場合に比べて多孔質樹脂層の変形を抑制できる。また、抽出時間を短縮することもできる。さらに、有機溶剤中に順次熱可塑性樹脂シートを通すことにより、連続的に相分離化剤の抽出処理を行うことができる。
【0066】
有機溶剤を用いた抽出方法としては、例えば、有機溶剤中に熱可塑性樹脂シートを浸漬する方法、熱可塑性樹脂シートに有機溶剤を吹き付ける方法などが挙げられる。相分離化剤の除去効率の観点から浸漬法が好ましい。また、数回に亘って有機溶剤を交換したり、撹拌しながら抽出することで効率的に相分離化剤を除去することができる。
【0067】
相分離化剤を除去した後に多孔質樹脂層を乾燥処理等してもよい。
【0068】
相分離化剤として加熱により蒸発または分解できるものを用いた場合は、上記抽出の前に、相分離化剤を加熱して蒸発又は分解することで除去する方法と組み合わせることもできる。相分離化剤を加熱により蒸発又は分解する場合の加熱温度は、相分離化剤の沸点、分解温度に応じて適宜選択できるが、一般に100℃以上、例えば100〜500℃、好ましくは250〜450℃程度である。蒸発、分解操作は、前記相分離化剤の除去効率を高めるため、減圧下(例えば、1mmHg以下)で行うことが好ましい。蒸発又は分解と抽出操作とを組み合わせて行うと、一方の操作では除去出来ない添加剤の残渣を他の操作により完全に取り除くことができ、比誘電率の極めて低い多孔質樹脂層を得ることができる。
【0069】
多孔質樹脂層の平均気泡径は5μm以下であることが好ましく、より好ましくは4.5μm以下であり、さらに好ましくは4μm以下である(通常0.01μm以上)。
【0070】
多孔質樹脂層の体積空孔率は、30%以上であることが好ましく、より好ましくは40%以上である(通常、90%以下)。多孔質樹脂層の体積空孔率が30%以上であれば、多孔質樹脂層内に均等な空孔が存在する状態となり誘電特性のバラツキが低減され、低誘電率化を図れる。体積空孔率が30%未満であると空孔形成状態が不均一になって誘電特性のバラツキが生じやすくなり、比誘電率を低くすることが困難になる傾向にある。
【0071】
多孔質樹脂層は、1GHzにおける比誘電率が2.0以下であることが好ましく、より好ましくは1.9以下であり、さらに好ましくは1.8以下である(通常1.4以上)。多孔質樹脂層の比誘電率が2.0以下であれば、絶縁性樹脂シートの1GHzにおける比誘電率を2.0以下にすることが可能となり、モーターの絶縁部材として使用した際に、サージ電圧による絶縁破壊を防止することができる。一方、1GHzにおける比誘電率が2.0を超えると、絶縁性樹脂シートの比誘電率を2.0以下にすることが困難となる。なお、比誘電率は、多孔質樹脂層の形成材料固有の比誘電率に依存するが、体積空孔率を高くすることで低誘電化することが可能である。
【0072】
多孔質樹脂層の厚さは7〜490μmであることが好ましく、より好ましくは14〜280μmである。多孔質樹脂層の厚さが7〜490μmであれば、絶縁性樹脂シートにおいて、高い絶縁性を維持できる。多孔質樹脂層の厚さが7μm未満であると絶縁破壊が起こりやすく、一方、490μmを超えるとコイル線の巻数が低下して、モーター出力が低下する傾向にある。
【0073】
次に、本発明の絶縁性樹脂シートについて、
図1を参照して説明する。
【0074】
図1は、本発明の絶縁性樹脂シートの一実施形態についての断面図である。絶縁性樹脂シート1は、多孔質樹脂層2の両面に高密度樹脂層3を有している。高密度樹脂層3は1層であってもよく、2層以上積層されたものであってもよい。
【0075】
絶縁性樹脂シートの形状は特に限定されず、シート状又はテープ状であってもよく、適宜必要な形状に打ち抜き加工されていてもよく、また3次元的に折り曲げ加工がなされていてもよい。
【0076】
高密度樹脂層3の形成方法としては、例えば、1)高密度樹脂層3を多孔質樹脂層2の表面に接着する方法、2)多孔質樹脂層2の表面を加熱溶融して当該表面を高密度化する方法、3)前記熱可塑性樹脂シートを作製する際に、熱可塑性樹脂組成物を基材に接触させることにより、熱可塑性樹脂シートの表面にスキン層を形成する方法、が挙げられる。多孔質樹脂層2と高密度樹脂層3は同一材料で一体形成されていることが好ましいため、上記2)及び3)の形成方法が好ましい。
【0077】
上記1)の方法において、高密度樹脂層3の形成材料である熱可塑性樹脂は特に限定されないが、耐熱性を有する熱可塑性樹脂であることが好ましく、具体的にはガラス転移温度が150℃以上の熱可塑性樹脂であることが好ましく、より好ましくはガラス転移温度が180℃以上の熱可塑性樹脂である。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、液晶ポリマー、及びポリエーテルイミドなどが挙げられる。これら熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
上記熱可塑性樹脂の中でも、高温時の寸法安定性がよく長期間の耐久性が高いことから、ポリイミド、ポリエーテルイミド、及びポリエーテルスルホンが好適である。
【0079】
高密度樹脂層3を多孔質樹脂層2に接着するための接着剤は特に限定されないが、例えば、エポキシ接着剤、ウレタン接着剤、及びアクリル接着剤などを挙げることができる。
【0080】
上記2)の方法において、多孔質樹脂層2の表面を加熱溶融する方法は特に限定されないが、例えば、多孔質樹脂層2の表面を熱板又は熱ロールでプレスする方法、多孔質樹脂層2の表面にレーザーを照射する方法、加熱したロール間に多孔質樹脂層2を通す方法などが挙げられる。なお、ロールの材質としては、ゴム、金属、及びフッ素系樹脂(例えば、テフロン(登録商標))などが挙げられる。
【0081】
加熱溶融する際の温度は特に限定されないが、多孔質樹脂層2を構成する樹脂のガラス転移温度よりも10〜40℃高い温度(より好ましくは20〜30℃高い温度)であることが好ましい。ガラス転移温度よりも10〜40℃高い温度で多孔質樹脂層2の表面を加熱溶融することにより、効率よく多孔質樹脂層2の表面を高密度化して高密度樹脂層3を形成することができる。加熱溶融する際の温度が、前記温度より低い場合には、多孔質樹脂層2の表面を高密度化することが難しくなり、高密度樹脂層3の厚さ方向断面における空孔の面積割合が50%以下になり難い傾向にある。一方、加熱溶融する際の温度が、前記温度より高い場合には、シート全体の体積空孔率が20%未満になりやすい傾向にある。
【0082】
また、加熱溶融の時間は、処理温度にもよるが、通常0.1秒〜10秒程度であり、好ましくは0.5秒〜7秒である。処理時間が短すぎると溶融による高密度化が進行し難くなり、処理時間が長すぎるとシート全体の体積空孔率が20%未満になりやすい傾向にある。
【0083】
加熱溶融処理に用いられる装置としては、例えば、圧力を調整可能な加熱ロールを有する連続処理装置が挙げられる。
【0084】
本発明において、各高密度樹脂層3は、厚さ方向断面における空孔の面積割合が50%以下であることが必要であり、好ましくは45%以下であり、より好ましくは40%以下である。
【0085】
高密度樹脂層3の表面粗さ(Ra)は2.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは1.0μm以下であり、さらに好ましくは0.6μm以下である(通常0.01μm以上)。
【0086】
高密度樹脂層3の総厚さは、絶縁性樹脂シート1の厚さの2〜30%であることが好ましく、より好ましくは4〜25%である。具体的には、高密度樹脂層3の総厚さは、3〜75μm程度であり、好ましくは6〜50μmである。
【0087】
絶縁性樹脂シート1の厚さは特に限定されないが、10〜500μmであることが好ましく、より好ましくは20〜300μmである。絶縁性樹脂シート1の厚さが10〜500μmの範囲であれば、モーター用の電気絶縁性樹脂シートとして、十分に絶縁性を維持できる。絶縁性樹脂シート1の厚さが10μm未満であると、絶縁破壊が起こりやすく、500μmを超えるとコイル線の巻数が低下して、モーター出力が低下する傾向にある。
【0088】
絶縁性樹脂シート1全体の体積空孔率は20%以上であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。
【0089】
絶縁性樹脂シート1の片面又は両面にシート材を設けて絶縁性積層樹脂シートとしてもよい。シート材を設けることにより、絶縁性樹脂シートの強度及び滑り性が向上する。
【0090】
シート材としては、例えば、不織布、紙、又はフィルム等が挙げられる。
【0091】
シート材としては、湿式抄紙法により作製されたもの(湿式不織布等)、大気中で乾式法により作製されたもの(乾式不織布等)などが挙げられる。シート材としては、絶縁性樹脂シートの耐熱性がより優れたものになり得るという点で、湿式抄紙法により作製された紙が好ましい。
【0092】
紙の材質としては、ポリアミド、ポリエステルなどの合成高分子化合物、セルロースなどの天然高分子化合物等が挙げられ、絶縁性樹脂シートの耐熱性がより優れたものになり得るという点で、ポリアミドが好ましい。
【0093】
ポリアミドとしては、構成モノマーの全てが芳香族炭化水素を有する全芳香族ポリアミド、構成モノマーの全てが脂肪族炭化水素のみを有する脂肪族ポリアミド、構成モノマーの一部が芳香族炭化水素を有する半芳香族ポリアミドなどが挙げられ、絶縁性樹脂シートの耐熱性がより優れたものになり得るという点で、全芳香族ポリアミドが好ましい。すなわち、シート材は、全芳香族ポリアミドを含んでいることが好ましい。
【0094】
また、前記紙としては、絶縁性樹脂シートの耐熱性がより優れたものになり得るという点で、全芳香族ポリアミド繊維を含む全芳香族ポリアミド紙がさらに好ましい。即ち、全芳香族ポリアミド繊維を用いて湿式抄紙法により作製された全芳香族ポリアミド紙がさらに好ましい。
【0095】
全芳香族ポリアミド紙(アラミド紙)としては、例えば、アミド基以外がベンゼン環で構成されたフェニレンジアミンとフタル酸との縮合重合物(全芳香族ポリアミド)を繊維化し、繊維化した全芳香族ポリアミド繊維を主たる構成材として形成されたものが挙げられる。
【0096】
全芳香族ポリアミド紙は、力学的特性に優れ、絶縁性積層樹脂シートの製造工程におけるハンドリングが良好であるという点で、坪量が5g/m
2以上であることが好ましい。坪量が5g/m
2以上であることにより、力学的強度の不足が抑制され、絶縁性積層樹脂シートの製造中に破断しにくいという利点がある。
【0097】
なお、全芳香族ポリアミド紙には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を加えることができ、他の成分としては、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリエステル繊維、アリレート繊維、液晶ポリエステル繊維、及びポリエチレンナフタレート繊維などの有機繊維;ガラス繊維、ロックウール、アスベスト、ボロン繊維、及びアルミナ繊維などの無機繊維が挙げられる。
【0098】
全芳香族ポリアミド紙としては、デュポン社より「ノーメックス」などの商品名で市販されているもの等を用いることができる。
【0099】
シート材として、耐熱性を有するフィルムも用いることができ、絶縁性樹脂シートの耐熱性及び強度がより優れたものになり得るという点で、ガラス転移温度が150℃以上の耐熱性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルムが好適に使用される。そのようなフィルムとしては、例えば、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、及びポリエーテルイミドなどが挙げられる。
【0100】
絶縁性樹脂シート1の両面にシート材を設ける場合、2つのシート材は同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0101】
シート材の表面にはコロナ処理を施しておいてもよい。コロナ処理を施しておくことにより、多孔質樹脂層2又は高密度樹脂層3とシート材との層間剥離を抑制できる。コロナ処理は、シート材の一方の面に放電処理を行い、極性を持つカルボキシル基又は水酸基を生成させ荒面化する処理である。コロナ処理としては、従来公知の方法を採用することができる。
【実施例】
【0102】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0103】
〔測定及び評価方法〕
(空孔の面積割合の測定)
絶縁性樹脂シートを液体窒素で冷却し、刃物を用いてシート面に対して垂直に切断してサンプルを作製した。サンプルの切断面にAu蒸着処理を施し、該切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所社製、S−3400N)で観察した。その画像を画像処理ソフト(三谷商事社製、WinROOF)で二値化処理し、スキン層の表面から厚さ方向5μm×幅方向40μmの領域、及び高密度樹脂層の表面から厚さ方向5μm×幅方向40μmの領域における空孔の面積割合(%)を求めた。
【0104】
(平均気泡径の測定)
多孔質樹脂層を液体窒素で冷却し、刃物を用いてシート面に対して垂直に切断してサンプルを作製した。サンプルの切断面にAu蒸着処理を施し、該切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所社製、S−3400N)で観察した。その画像を画像処理ソフト(三谷商事社製、WinROOF)で二値化処理し、気泡部と樹脂部とに分離して気泡の最大垂直弦長を測定した。気泡径の大きい方から50個の気泡について平均値をとり、平均気泡径とした。
【0105】
(体積空孔率の測定)
原料であるポリエーテルイミド樹脂、多孔質樹脂層、及び絶縁性樹脂シートの比重を比重計(Alfa Mirage社製、MD−300S)により測定し、下記式より体積空孔率を算出した。
絶縁性樹脂シートの体積空孔率(%)=[1−(絶縁性樹脂シートの比重/ポリエーテルイミド樹脂の比重)]×100
多孔質樹脂層の体積空孔率(%)=[1−(多孔質樹脂層の比重/ポリエーテルイミド樹脂の比重)]×100
【0106】
(表面粗さの測定)
JIS B0601に準拠して、光学式表面粗さ計(Veeco Metrology Group社製、Wyko NT9100)を用いて、高密度樹脂層の表面粗さRa(μm)を測定した。サンプルサイズは70mm×60mmであり、マイクロスライドガラス((株)松浪硝子工業社製、S1214)に乗せて測定した。測定範囲は2.5mm×5.0 mmとした。
【0107】
(絶縁破壊電圧の測定)
JIS K 6911に準拠して、絶縁性樹脂シートの折り曲げ前後の絶縁破壊電圧(BDV)を測定した。折り曲げ条件を以下に記す。
絶縁性樹脂シートからサンプル(50mm×50mm)を切り取り、サンプルに電極を当てて、昇圧速度1kV/秒の条件で絶縁破壊電圧を測定した。また、サンプルのTD方向中央部を厚み方向に沿って2MPaで1秒間加圧し、サンプルをTD方向と直行する方向に沿って180°折り曲げた。その後、サンプルを開き、折り曲げ部分に電極を当てて、昇圧速度1kV/秒の条件で絶縁破壊電圧を測定した。
【0108】
(ATF浸み込みの評価)
絶縁性樹脂シートからサンプル(50mm×50mm)を切り取り、サンプルのTD方向中央部を厚み方向に沿って2MPaで1秒間加圧し、サンプルをTD方向と直行する方向に沿って180°折り曲げた。折り曲げたサンプルをATF(トヨタ自動車社製、オートフールドWS)に1晩浸漬させた。サンプルを取り出し、表面に付着したATFを拭きとり、折り曲げ部分へのATFの浸み込みの有無を目視で確認した。浸み込みがない場合は○、浸み込みがある場合は×とした。
【0109】
実施例1
1000m1の4つ口フラスコに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)667.7gを加えて70℃に加熱した。そこにポリエーテルイミド(PEI)樹脂(SABIC Innovative Plastics社製、Ultem1000)250gを加え、5時間撹拌してPEI樹脂溶液(I)を得た。
【0110】
PEI樹脂溶液(I)に重量平均分子量400のポリプロピレングリコールをPEI樹脂100重量部に対して30重量部添加し、撹拌して透明な均一のPEI樹脂溶液(II)を得た。PEI樹脂溶液(II)をコンマダイレクト方式で、PETフィルム上に塗布し、その後130℃で8分間乾燥させてNMPを蒸発除去し、ミクロ相分離構造を有する相分離構造体を作製した。PETフィルムを相分離構造体から剥離し、相分離構造体を30Lの耐圧容器に入れ、45℃の雰囲気中で二酸化炭素を注入し、25MPaに加圧し、その圧力を保ったまま約1.8kg/hrの流量で、総使用量が1.8kgになるまで二酸化炭素流体を注入、排出して残存溶媒およびポリプロピレングリコールを抽出する操作を行った。その後、雰囲気温度を85℃に設定して二酸化炭素流体を昇温させながら、さらに7.2kgの二酸化炭素流体を注入、排出して抽出処理を行い、片面に厚さ30μmのスキン層(高密度樹脂層)を有する多孔質樹脂層を作製した。
【0111】
その後、多孔質樹脂層のスキン層を有さない面を、熱ロール(250℃)を用いて0.2MPa、1m/minの条件で加圧及び加熱して、多孔質樹脂層上に厚さ7μmの高密度樹脂層を形成して絶縁性樹脂シートを作製した。
【0112】
実施例2
実施例1と同様の方法で作製した多孔質樹脂層のスキン層を有さない面に、厚み15μmのポリエーテルイミドフィルム(三菱樹脂株式会社製、スペリオ)を置き、熱ロール(300℃)を用いて0.2MPa、0.5m/minの条件で加圧及び加熱して、多孔質樹脂層上に厚さ15μmの高密度樹脂層を形成して絶縁性樹脂シートを作製した。
【0113】
比較例1
実施例1と同様の方法で作製した多孔質樹脂層のスキン層を有さない面に、高密度樹脂層を形成しなかった以外は実施例1と同様の方法で絶縁性樹脂シートを作製した。
【0114】
【表1】