(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、骨伝導と気導音を利用した水泳用の骨伝導イヤホンが開示されている。この特許文献1には、外耳道が水で塞がれた場合、骨伝導で聞くことができる旨の記載がある。しかし、実際は、当該特許文献1の(0014)段落にも記されているとおり、骨伝導による音量は小さい。そして、外耳道が水で塞がれている場合は、人体や水以外の物体で耳を塞いでいる状態ではないため、水が動くことで音が発生し、また、周囲に音がある場合は聞きづらかった。よって、特許文献1の骨伝導イヤホンでは、水が動くことで音が発生することがあり、また、周囲の音がある場合は、耳穴を人体や水以外の物体で塞いで聞く必要があった。また、骨伝導イヤホンでは、音量を充分に大きくするように骨伝導を利用して聞こうとすると、振動が大きくなり振動が不快と感じることもあり、同時に消費電力も大きくなってしまう。また、仮に、人体や水以外の物体で耳穴を塞いでしまうと、周囲の音を聞くことができないという問題もあった。
【0003】
また、特許文献2には、円筒状の筺体内に圧電素子を設置した圧電式イヤホンが開示されている。
特許文献2の方式は、音響(気導音)を鼓膜側へ出力するものであって、筺体から振動を人体に対して積極的に伝えていないほか、筺体に振動を伝えることで得られる気導音発生効果の利用もない。
また、特許文献2の圧電式イヤホンには、円筒の外気側に外気圧平衡用の穴がある。しかし、この穴は、穴としては小さく積極的に外気から伝わる音を遮断せず伝えることができなかった。また、特許文献2の圧電式イヤホンは、水中での利用を想定したものではなく、仮に水中で使用したとしても、上述の穴が小さいことから、この穴を通して水が耳穴に入ることは期待できなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、陸上及び水中のいずれにおいても使用可能であって、陸上でも水中においても周囲の音の聞こえを妨げず、外耳道が水で満たされていてもいなくても、出力された音声を利用者が聞き取ることができる音声振動出力装置を提供することである。
また、本発明の他の課題は、ゴーグル等のバンドを用いなくとも音声を聴覚器官に伝えることができるよう耳に装着することができ、部品点数が少なく、構造が簡易であり、音量も大きく、軽量かつ小型で、電池を電源として駆動できる音声振動出力装置を提供することである。
さらに、本発明の他の課題は、周波数特性が改善され、音漏れも軽減された音声振動出力装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の事項を提案している。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
(1)本発明は、音声に対応して振動する圧電バイモルフ素子により形成された振動子(111,211)と、人体の外耳道内に挿入可能に形成され、かつ、外耳道内に挿入された状態においても外耳道を塞がないように外耳道内部と外部とを外耳道内部側から外部側へ向かうほど、断面積が大きくなる断面形状で繋ぐ少なくとも1つの貫通路(131,231,331)を有し、前記振動子の振動により振動する挿入部(130,230,330)と、を備える音声振動出力装置(100,200,300)を提案している。
【0008】
この発明によれば、振動子は、音声に対応して振動する圧電バイモルフ素子により形成されている。挿入部は、人体の外耳道内に挿入可能に形成され、かつ、外耳道内に挿入された状態においても外耳道を塞がないように外耳道内部と外部とを外耳道内部側から外部側へ向かうほど、断面積が大きくなる断面形状で繋ぐ少なくとも1つの貫通路を有し、前記振動子の振動により振動する。したがって、音声振動出力装置は、陸上及び水中のいずれにおいても使用可能であって、陸上でも水中においても周囲の音の聞こえを妨げず、外耳道が水で満たされていてもいなくても、出力された音声を利用者が聞き取ることができる。また、音声振動出力装置は、ゴーグル等のバンドを用いなくとも音声を聴覚器官に伝えることができるよう耳に装着することができ、部品点数が少なく、構造が簡易であり、音量も大きく、軽量かつ小型で、電池を電源として駆動できる。また、貫通路は、外耳道内部側から外部側へ向かうほど、断面積が大きくなっているので、音声振動出力装置は、貫通路への水の侵入が容易になり、また、外界の音を聞きやすくできる。
【0009】
(2)本発明は、(1)の音声振動出力装置において、前記貫通路の面は、少なくとも一部に親水性を高める処理が施されていること、を特徴とする音声振動出力装置を提案している。
【0010】
この発明によれば、貫通路の面は、少なくとも一部に親水性を高める処理が施されている。したがって、音声振動出力装置は、貫通路への水の侵入が容易になる。
【0011】
(3)本発明は、(1)又は(2)の音声振動出力装置において、前記挿入部(130)は、筒状に形成されていること、を特徴とする音声振動出力装置(100)を提案している。
【0012】
この発明によれば、挿入部は、筒状に形成されている。したがって、貫通路を有した挿入部を簡単に作成可能である。
【0013】
(4)本発明は、(1)から(3)までのいずれかに記載の音声振動出力装置において、前記振動子を内蔵するケースを有し、前記振動子は、前記ケース内に設けられた空間において一方の面が前記ケースの内壁面に接合されており、他方の面側は、前記ケースとの間に空隙を有して配置されており、前記ケースは、前記挿入部の前記貫通路に沿って設けられていること、を特徴とする音声振動出力装置を提案している。
【0014】
この発明によれば、ケースは、振動子を内蔵する。振動子は、ケース内に設けられた空間において一方の面がケースの内壁面に接合されており、他方の面側は、ケースとの間に空隙を有して配置されている。ケースは、筒状に形成された挿入部の貫通路に沿って設けられている。したがって、音声振動出力装置は、振動子の振動を阻害することなく、振動子の外力による破損を防止できる。
【0015】
(5)本発明は、(1)に記載の音声振動出力装置において、外耳道内に挿入されない位置にあって、前記挿入部(230)に振動を伝達可能に接続された非挿入部(250)を備え、前記貫通路(231)は、前記挿入部から前記非挿入部にわたって形成されて外部と繋がれていること、を特徴とする音声振動出力装置(200)を提案している。
【0016】
この発明によれば、非挿入部は、外耳道内に挿入されない位置にあって、挿入部に振動を伝達可能に接続されている。貫通路は、挿入部から非挿入部にわたって形成されて外部と繋がれている。したがって、音声振動出力装置は、非挿入部に、より大きな振動子を配置することが可能となる。また、挿入部を小型に形成可能である。
【0017】
(6)本発明は、(5)に記載の音声振動出力装置において、前記非挿入部(250)の内部に設けられ、前記振動子(211)を内蔵するケース(212,214)を有し、前記振動子は、前記ケース内に設けられた空間において一方の面が前記ケースの内壁面に接合されており、他方の面側は、前記ケースとの間に空隙(S)を有して配置されていること、を特徴とする音声振動出力装置(200)を提案している。
【0018】
この発明によれば、ケースは、非挿入部の内部に設けられ、振動子を内蔵する。振動子は、ケース内に設けられた空間において一方の面がケースの内壁面に接合されており、他方の面側は、ケースとの間に空隙を有して配置されている。したがって、音声振動出力装置は、振動子の振動を阻害することなく、振動子の外力による破損を防止できる。
【0019】
(7)本発明は、(1)から(6)までのいずれか1項に記載の音声振動出力装置において、音響信号を前記振動子(111,211)の電気信号へ変換する駆動部(150)を備えること、を特徴とする音声振動出力装置(100,200,300)を提案している。
【0020】
この発明によれば、駆動部は、音響信号を前記振動子の電気信号へ変換する。したがって、音声振動出力装置は、外部に駆動部を用意することなく、単体で音声振動の出力を行える。
【0021】
(8)本発明は、(7)に記載の音声振動出力装置において、音響信号に対して周波数特性を変更するイコライザ部(151)を有すること、を特徴とする音声振動出力装置(100,200,300)を提案している。
【0022】
この発明によれば、イコライザ部は、音響信号に対して周波数特性を変更する。したがって、音声振動出力装置は、音響特性を調整可能である。よって、例えば、水中と陸上とで使用状況に適した周波数特性に調整して、いずれの状況下においても聞こえやすい音声伝達を実現できる。
【0023】
(9)本発明は、(8)に記載の音声振動出力装置において、前記イコライザ部(151)は、2〜5kHzの周波数帯域の音を抑制することによる音漏れ軽減機能を有すること、を特徴とする音声振動出力装置(100,200,300)を提案している。
【0024】
この発明によれば、イコライザ部は、2〜5kHzの周波数帯域の音を抑制することによる音漏れ軽減機能を有する。したがって、音声振動出力装置は、周波数特性が改善され、音漏れを軽減でき、利用者は、周囲を気にすることなく大きな音で音声を聞くことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、音声振動出力装置は、陸上及び水中のいずれにおいても使用可能であって、陸上でも水中においても周囲の音の聞こえを妨げず、外耳道が水で満たされていてもいなくても、出力された音声を利用者が聞き取ることができるという効果がある。
また、本発明によれば、音声振動出力装置は、ゴーグル等のバンドを用いなくとも音声を聴覚器官に伝えることができるよう耳に装着することができ、部品点数が少なく、構造が簡易であり、音量も大きく、軽量かつ小型で、電池を電源として駆動できるという効果がある。
さらに、本発明によれば、音声振動出力装置は、周波数特性が改善され、音漏れも軽減されるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の音声振動出力装置100を示す断面図である。
図2は、音声振動出力装置100を
図1中の矢印A側から見た図である。
なお、
図1及び
図2を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
音声振動出力装置100は、振動子111と、配線120と、挿入部130と、当接部材140とを備えた、イヤホンとして用いることができる装置である。
【0029】
振動子111は、挿入部130の円筒壁部分に振動可能な状態で固定されて内蔵されており、挿入部130と一体化している。また、振動子111は、後述する貫通路131に沿うように配置されている。振動子111の詳細については、後述する。
【0030】
配線120は、振動子111と後述する駆動部150とを接続するケーブルである。配線120の一端は、後述する振動子111に接続されている。また、配線120の他端は、駆動部150へ接続されている。
【0031】
挿入部130は、外周に当接部材140が取り付けられており、当接部材140と共に、人体の外耳道内に挿入可能に形成されている。挿入部130は、振動を外耳道及び外耳道に満たされる水や海水、及び、空気に伝える。挿入部130は、略円筒形状に形成されており、中央部に貫通路131が貫通形成されている。貫通路131は、挿入部130が外耳道内に挿入された状態においても外耳道を塞がないように外耳道内部と外部とを外耳道内部側から外部側へ向かうほど、断面積が大きくなる断面形状で繋ぐ。この貫通路131は、水がその表面張力により侵入を妨げられることなく容易に通過できるように、また外界の音が大きく減衰することのないように、充分に大きな断面形状として略円筒形状の場合直径3.5mm以上とすることが望ましい。なお、挿入部が円筒形状ではなく、貫通路の断面形状が円形ではない場合には、直径3.5mmの円形の場合と同等以上の断面積を確保するようにすることが望ましい。出願人の検討の結果、この面積以上の断面積を確保すると、本発明の貫通路として必要な機能を発揮することができる。
また、挿入部130には、上述したように振動子111が内蔵されており、この振動子111の振動により振動する。
【0032】
当接部材140は、挿入部130の外周に着脱可能に取り付けられ、外耳道の内壁に直接当接する部材である。当接部材140は、例えば、シリコンゴムや軟質フォーム等により形成されており、肌触りの感触を良好にして装着時に痛くならず快適に装着可能とし、また、脱落防止の作用も有している。
また、当接部材140は、挿入部130と共に振動子111の振動により振動する。
【0033】
振動子111は、アンプ部152により増幅された可聴周波数帯域の音響信号に基づいて、駆動部150が生成した駆動信号により駆動されて、音響信号に応じた振動を行う。
本実施形態の振動子111は、圧電セラミックを用いた圧電バイモルフ素子であり、ベンディングモード(撓み振動)で駆動する。振動子111に使用する圧電材料は、高変位な圧電材料を積層した素子であり、アンプから音響信号に忠実な電圧を圧電素子へ印加することにより、振動子111は、(結果として)音響信号を再現するように振動する。
本実施形態では、
図1に示すように、挿入部130の筒方向に沿って振動子111がモールドされている。振動子111の固定方法は、振動子111を破断しないよう、人の押し圧力で生じる曲げに強い樹脂(例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等)で固定し、防水絶縁に対応するよう軟質樹脂(シリコーン等)でモールドするとよい。
【0034】
図3は、音声振動出力装置100の使用状態を示すブロック図である。
音声振動出力装置100には、駆動部150が設けられている。
駆動部150は、イコライザ部151と、アンプ部152とを備え、音響信号を振動子111の駆動に用いる電気信号へ変換する。また、図示していないが、駆動部150には、音声振動出力装置100の電源となる電池が設けられている。本実施形態の音声振動出力装置100は、圧電バイモルフ素子を振動子111に用いているので、消費電力が少なく、電池も小型のもので充分である。
【0035】
イコライザ部151は、周波数イコライジングを行う。イコライザ部151は、再生機器160の出力部161から得た音響信号に、周波数イコライジングを行って、アンプ部152へ送る。本実施形態では、イコライザ部151は、2〜5kHzの周波数帯域の音を抑制するように周波数イコライジングを行う。2〜5kHzの周波数帯域の音は、音漏れとして耳に付きやすい。よって、イコライザ部151は、2〜5kHzの周波数帯域の出力を抑制することにより、音漏れを軽減する音漏れ軽減機能として作用する。また、イコライザ部151は、水中での使用と陸上での使用とで周波数特性を調整して、水中、陸上のそれぞれの環境下において聞き取りやすい音声振動伝達を行うようにしてもよい。
【0036】
アンプ部152は、イコライザ部151から送られた音響信号を増幅して振動子111へ伝える。
【0037】
以上説明したように、第1実施形態によれば、音声振動出力装置100は、挿入部130に貫通路131を備える。よって、音声振動出力装置100は、陸上及び水中のいずれにおいても使用可能であって、陸上でも水中においても周囲の音の聞こえを妨げず、外耳道が水で満たされていてもいなくても、出力された音声を利用者が聞き取ることができる。また、音声振動出力装置100は、ゴーグル等のバンドを用いなくとも音声を聴覚器官に伝えることができるよう耳に装着することができ、部品点数が少なく、構造が簡易であり、音量も大きく、軽量かつ小型で、電池を電源として駆動できる。さらに、貫通路131は、外耳道内部側から外部側へ向かうほど、断面積が大きくなる断面形状になっているので、貫通路131への水の侵入が容易になり、また、外界の音を聞きやすくできる。
【0038】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態の音声振動出力装置200を示す断面図である。
音声振動出力装置200は、振動発生部210と、配線220と、挿入部230と、当接部材240と、非挿入部250とを備えている。
なお、第2実施形態の音声振動出力装置200は、上述した構成の他、第1実施形態の音声振動出力装置100と同様な駆動部150を備えているが、これについては、第1実施形態と同様であるので、第1実施形態と同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0039】
振動発生部210は、非挿入部250の円筒壁部分に振動可能な状態で固定されて内蔵されており、非挿入部250と一体化している。また、振動発生部210は、後述する貫通路231に沿うように配置されている。振動発生部210の詳細については、後述する。
【0040】
配線220は、振動発生部210の振動子211と後述する駆動部150とを接続するケーブルである。配線220の一端は、振動子211に接続されている。また、配線220の他端は、駆動部150へ接続されている。
【0041】
挿入部230は、外周に当接部材240が取り付けられており、当接部材240と共に、人体の外耳道内に挿入可能に形成されている。挿入部230は、振動を外耳道及び外耳道に満たされる水や海水、及び、空気に伝える。挿入部130は、後述する非挿入部250と接続される部分を除いて略円筒形状に形成されている。
【0042】
当接部材240は、挿入部230の外周に着脱可能に取り付けられ、外耳道の内壁に直接当接する部材である。当接部材240は、例えば、シリコンゴムや軟質フォーム等により形成されており、肌触りの感触を良好にして装着時に痛くならず快適に装着可能とし、また、脱落防止の作用も有している。
また、当接部材240は、非挿入部250に設けられた振動発生部210の振動により挿入部230と共に振動する。
【0043】
非挿入部250は、略円筒形状に形成されており、挿入部230と略直交する方向で挿入部230に繋がっている。本実施形態の非挿入部250は、挿入部230と一体で形成されているが、非挿入部と挿入部とを別々の部材により構成してもよい。ただし、非挿入部250は、挿入部230に対して振動発生部210が発生する振動を伝えることができるように接続されていることを要する。
非挿入部250の円筒壁部分には、上述したように、振動発生部210が固定されて内蔵されている。
【0044】
挿入部230と非挿入部250の内部には、貫通路231が貫通形成されている。貫通路231は、挿入部230が外耳道内に挿入された状態においても外耳道を塞がないように外耳道内部と外部とを外耳道内部側から外部側へ向かうほど、断面積が大きくなる断面形状で繋ぐように略L字形状に折曲がった通路となっている。また、この貫通路231は、水がその表面張力により侵入を妨げられることなく容易に通過できるように、また、外界の音が大きく減衰することのないように、充分に大きな断面形状を有することが望ましい。
【0045】
図5は、振動発生部210を振動部212の平面の法線方向から透視して示した図である。
図6は、
図5中に矢印で示したD−D断面を示す図である。
振動発生部210は、振動子211と、振動部212と、両面テープ213と、枠部材214と、基材215とを備えている。
【0046】
振動子211は、アンプ部152により増幅された可聴周波数帯域の音響信号に基づいて、駆動部150が生成した駆動信号により駆動されて、音響信号に応じた振動を行う。また、振動子211は、両面テープ213を用いて振動部212に対して全面が貼り付けられており、振動子211の振動は、そのまま振動部212へ伝わる。
【0047】
本実施形態の振動子211は、圧電セラミックを用いた圧電バイモルフ素子であり、ベンディングモード(撓み振動)で駆動する。振動子211に使用する圧電材料は、高変位な圧電材料を積層した素子であり、アンプから音響信号に忠実な電圧を圧電素子へ印加することにより、振動子211は、(結果として)音響信号を再現するように振動する。
【0048】
振動部212は、薄板状の部材であり、周縁部分が基材215に対して接着又は両面テープを用いて固定されている。また、振動部212の中心付近には、上述したように振動子211が両面テープ213により貼り付けられている。したがって、振動部212は、振動子211が振動すると、振動子211の撓み振動と共に撓み振動を行う。
【0049】
両面テープ213は、振動子211と振動部212とを接合するための接着部材である。なお、振動子211と振動部212との接合は、両面テープに限らず、接着剤を用いて接合してもよい。
【0050】
枠部材214は、振動発生部210の振動部212とは反対側、及び、外周領域を形成する部材である。枠部材214と振動子211との間には、隙間Sが設けられている。この隙間Sを設けることにより、振動子211及び振動部212の振動を阻害することを防止できる。なお、隙間Sの部分には、振動を阻害しないような柔軟な素材、例えば、スポンジ状のエラストマー部材等を設けてもよい。
【0051】
上述した振動部212及び枠部材214は、振動子211を内蔵するケースとして機能しており、振動子を破断しないよう、人の押し圧力で生じる曲げに強い樹脂や金属等により形成されることが望ましい。
【0052】
基材215は、振動部212と枠部材214とを接続する部材であり、枠部材214の内側であって、外周壁部分に沿って振動子211を囲むように配置されている。ただし、基材215は、振動子211には、接触しないように設けられている。
【0053】
第2実施形態の音声振動出力装置200における音声に応じた振動の伝達形態は、第1実施形態の音声振動出力装置100と同様である。
【0054】
第2実施形態の音声振動出力装置200では、非挿入部250を設け、この非挿入部250に振動発生部210を設けた。よって、第2実施形態の音声振動出力装置200は、第1実施形態の音声振動出力装置100よりも大きな振動子を設けることができるので、より大きな振動を出すことができる。
また、挿入部230は、振動子の形状等の制約を受けないので、耳へ装着した時のフィット感を重視した形状に形成されることが可能である。また、同様な理由から、第2実施形態の音声振動出力装置200では、挿入部230の長さを短くすることができ、第1実施形態の音声振動出力装置100よりも出っ張り感が軽減される。また、利用者は、第2実施形態の音声振動出力装置200を装着した状態であっても、潜水服や水中メガネバンド等を耳の上に当てることができる。
【0055】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態の音声振動出力装置300を第1実施形態の
図2と同様な方向から見た図である。
第3実施形態の音声振動出力装置300は、挿入部330の形状が異なり、当接部材140に相当する部分を持たない他は、第1実施形態と同様な形態をしている。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0056】
挿入部330は、人体の外耳道内に挿入可能に形成されている。また、挿入部330の外周部には、貫通路331が4つ設けられている。この貫通路331は、挿入部330の周方向において均等に配置されている。貫通路331は、第1実施形態の貫通路131と同様な機能を有している。
また、挿入部330の中央には、第1実施形態と同様に振動子111が配置されている。
【0057】
以上説明した第3実施形態によれば、貫通路331が外周側に開放された形態に形成されているので、水中で使用した後等に、貫通路331に浸水した水を素早く乾かすことができ、メンテナンス性を向上できる。
【0058】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0059】
(変形形態)
(1)第1及び第2実施形態において、挿入部130,230には、当接部材140,240を設けた例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、挿入部は、当接部材を設けずに直接外耳道内に接触するようになっていてもよい。
【0060】
(2)各実施形態において、音声振動出力装置100,200,300は、再生機器160と有線接続されている例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、音声振動出力装置への音響信号の伝達を無線により行うようにしてもよい。
【0061】
(3)第1実施形態及び第3実施形態において、振動子111の代わりに、第2実施形態の振動発生部210を用いてもよい。また、実施形態2において、振動発生部210の代わりに振動子111を用いてもよい。
【0062】
(4)第2実施形態において、非挿入部250は、円筒状ではなく、棒状でも構わない。この場合、挿入部230の円筒は、外側に向かって開放されている形状とする。
【0063】
(5)各実施形態において、貫通路(131,231,331)への水の侵入を容易にするため、超親水性の表面コーティングを貫通路面に施してもよい。また、水中から陸上に移動したときに排水を容易にするため、装置外装面全体又は装置外装面の一部まで貫通路面と同様の超親水性コーティングを施し、超親水性を持つ面が貫通路面と連続するようにしてもよい。さらに、超親水コーティングを施した貫通路面の貫通する方向に一筋の撥水性コーティングを施すこともよい。さらに、親水性と撥水性を高めるため貫通路面を粗く表面処理を施してもよい。
【0064】
なお、第1実施形態から第3実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。