【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、より多くの柔軟性を提供し、使用しやすい試料ラック操作ユニットが導入される。これは、搭載レールを含むラック搭載部を備えた試料ラック操作ユニットにより達成され、ラック搭載エッジの方向に、傾斜した搭載レール側部上でラックをスライドさせることにより、ラック搭載エッジから、ラックの側方からの係合と、ラックの側方からの離脱が可能になる。
【0005】
この方法で、ラック搭載部の移送路に沿ったいずれの位置でも、1つのラックまたは複数のラックを搭載することが可能となり、1つまたは2つ以上のラックの位置を変更すること、または、たとえばあるラックを別のラックに取り替えたい場合など、いずれの位置からも1つまたは2つ以上のラックを取り除くことも可能となる。同時に、ラックがレールに沿って長手方向に円滑に移送できることが確保される。さらに、レールの形状および配置は、ラックの係合時および離脱時の両方において、円滑で迅速な手動または自動操作のために、容易で生産性の高いラックの操作を可能にする。他の利点は、ラック操作ユニットがコンパクトで、シンプルで安価であるということである。
【0006】
本発明は、少なくとも1つの試料容器を保持するために構成された1つまたは2つ以上の試料ラックを搭載するラック搭載部を備えた試料ラック操作ユニットに関する。
【0007】
「試料ラック操作ユニット」は、機器内に一体化されるか、または機器に取り外し可能に連結されたワークセルであり、ユーザと、機器により処理される少なくとも1つの試料を含む少なくとも1つの試料容器を保持する試料ラックを搭載または積み下ろしする機器との間のインターフェースとして機能する。
【0008】
「機器」は、たとえば診断目的のための資料の定性的および/または定量的評価のような検出、検出前の試料の分類および/または調製、または、検出後の試料の保管および/または廃棄についてユーザを補助する、独立型装置または大型装置のモジュールである。特に、機器は、試料の分析および/または分析前および/または分析後処理工程に関連してよい。
【0009】
「試料容器」は、「一次管(primary tube)」とも呼ばれる、患者から血液試料のような試料を受け取り、その中に収容された試料を診断目的で分析検査室へ移送するために使用される試料収集試験管、または、プライマリー管から試料の分注を受けるために用いることができる「二次容器」である。一次試料管は、典型的にはガラスまたはプラスチック製であり、様々な大きさを有し、閉鎖された端部と、異なる材質、異なる形状、色とすることができる蓋により閉鎖される開放した端部とを有している。試料管は、蓋を有するか、または蓋無しで試料ラック操作ユニットに搭載することができる。機器はたとえば、試料管から蓋を取り除くキャップ除去装置を備えるか、または、蓋を通じて試料管から試料を吸引するように構成することができる。二次容器は、典型的にはより小さく、蓋を有するか、または蓋無しで設けることもできる。「試料」は典型的には、血液、血清、血漿、尿、母乳、唾液、脳脊髄液等の体液のような、診断対象の1つまたは2つ以上の検体が見つかる可能性のある液体の生体試料である。
【0010】
「試料ラック」は、1つまたは2つ以上の試料容器を受け取り、保持し、移送するように構成された、典型的にはプラスチックおよび/または金属製のキャリアである。本発明の試料ラック操作ユニットは、たとえば1つまたは2つ以上の列に配置された、たとえば5つまでのまたは6つ以上の試料容器といった、複数の試料容器を搬送するように構成された試料ラックに特に適している。試料ラックは典型的には、ラックの幅を画定する2つの短い方の側壁と、ラックの長さを画定する、より長い長手方向の側壁とを備えている。そしてラックは、ラックの高さを画定する底面および上面を備え、対応する数の試料容器を受け取るように構成された、ラックの長さにわたって直線的に配置された複数のキャビティを備えている。少なくとも1つの長い方の面には、開口部、窓、またはスリットがあってもよく、視覚的または光学的な検査や、試料容器、試料容器内の試料、または試料ラック内に保持された試料容器にあるバーコードのようなラベルを読み取ることが可能になる。底面は、ラックの全幅にわたって延びるようなラックの幅と等しい幅を有し、ラックの長さよりも短い長さを有する凹部を備え、典型的にはT字状または逆L字状の形状であり、すなわち、より狭くなった下部と、ラックの短い方の側面の1つまたは両方にそれぞれ向かって、1つまたは2つの凹部袖部が延びるより長い上部とを有している。ラックは典型的には、ラックが1つの方向だけで搭載および/または移送できる非対称な形状を有している。非対称な形状は、例として側面、たとえば短い方の側面の異なる形状、すなわち1つの面をたとえば平坦として、他の面を斜めにした、異なる形状により達成することができる。そして、またはその代わりに、底部の凹部が、ラックの中央部とは異なる位置、すなわち、1つの側面に近い側に配置してもよい。
【0011】
試料ラック操作ユニットは、少なくともラック搭載部を備えている。「ラック搭載部」は、1つまたは2つ以上のラックを搭載し、積み下ろしも可能な、一体化された、または分離可能なラック操作ユニットの構成要素である。特に、ラック搭載部は、ラック搭載エッジと、ラック受容領域とを備え、ラック受容領域は、ラック受容領域上に長手方向に配置され、ラック搭載エッジと平行な搭載レールを有している。ラック受容領域は、典型的には平坦であり、ラックの長さを収容するのに適合した幅を有し、ラックのそれぞれの長い方の面が隣り合って互いに平行に、かつ同方向に配置された複数のラックを収容できるように適合した長さを有している。ラック受容領域は、「ラック搭載エッジ」により、1つの側部において区切られており、ラック搭載エッジは、典型的にはユーザが外部からアクセス可能な位置にある機器の外部側に面する、ラック受容領域の境界である。搭載レールは搭載エッジに平行に配置され、一実施形態によると、搭載レールがラックの底部に位置する凹部と係合可能であり、ラックが一方向のときだけ、搭載レールに沿ってラックがラック受容領域上を長手方向にスライド可能になるように、ラック受容領域の中心から外側に配置されている。
【0012】
「長手方向」という用語は、搭載レールと、一般的には移送路とに平行な方向を示すのに用いられ、凹部を含むラックの側面、典型的には長い方の側面が、搭載レールに対して直交するように、搭載レールと係合するラックが向けられる。
【0013】
特に、搭載レールは、楔状または略三角形状の断面を有する基部と、基部から伸びる突出部とを備えている。より具体的には、突出部は、ラック搭載エッジを向くように配置され、基部は、ラック搭載エッジとは反対側に配置された傾斜した搭載レール側部を備えている。突出部は、楔の上部の角から外側に、ラック搭載エッジの方向に延びる頂部(リッジ)として配置され、ラックの底部に位置する凹部と係合できる形状を有している。突出部は、搭載レールに沿って長手方向に延び、複数のラックが、それらのそれぞれの凹部が隣り合って係合できる長さを有している。特に、突出部の形状は、凹部の上部セクションにおいて、凹部袖部の形状と実質的に相補的な形状である。したがって、搭載レールは部分的に形状嵌合し、すなわち、ラックの凹部と一方だけで形状嵌合する。ここで、「形状嵌合」とは、1つの形状が、たとえば円滑なスライドができる許容差を有して他方に嵌合するようにほぼ相補的な形状を有していることを意味する。
【0014】
「係合」という用語は、したがって、凹部と搭載レールとが係合したときの形状嵌合部分により、ラックの底部がラック受容領域上に置かれ、搭載レールに沿って長手方向にスライドすることを可能にしているが、ラックを鉛直方向に持ち上げることや、ラックを搭載エッジとは反対方向にスライドさせることによる離脱を防止することを意味する。しかしながら、形状嵌合しない部分により、搭載エッジの方向に、ラックを傾斜した搭載レール側部上でスライドさせることにより、ラックを離脱させることが可能となる。もちろん、ラックは、搭載レールの1つの先端まで長手方向に移動させることによっても離脱が可能である。
【0015】
傾斜した搭載レール側部は、突出部の長さと等しい長さ分だけ長手方向に延びていてもよく、楔の上部の角と、ラック受容領域との間に、平坦または湾曲した面を有していてもよい。特に、傾斜した搭載レール側部は、ラック搭載エッジから搭載レールに対して垂直な方向に、ラック受容領域上にラックが搭載されるときに、ラックの凹部が突出部と係合でき、かつ、ラック搭載エッジの方向に、傾斜した搭載レール側部上でラックをスライドさせることにより、搭載レールから凹部を離脱することができる傾きまたは半径を有している。
【0016】
一実施形態によると、ラック搭載エッジには、搭載レールの方を向き、傾斜した搭載レール側部とほぼ平行に配置されている傾斜した搭載レール側部が備えられ、ラックを傾斜した搭載レール側部および傾斜した搭載エッジ側部上を横方向にスライドさせ、それぞれ逆の方向にスライドさせると、凹部と搭載レールとの係合と、凹部の搭載レールからの離脱とが可能となる。特に、搭載レールおよび搭載エッジは、ラックの底部がブリッジのように搭載レールと搭載エッジの頂部上で略水平に置かれるように、同じまたは同様の高さを有していてもよい。より具体的には、搭載エッジから搭載レールに向かう方向にラックをスライドさせることにより、凹部が搭載レールの突出部と係合して、ラックの底部がラック受容領域上にフラットに置かれるまで、ラックの底部が徐々に低くなるように、搭載エッジと搭載レールとの間の距離は、凹部とラックの1つの短い方の側面との間の距離とほぼ同等である。同様に、ラックを搭載エッジに向かって反対方向にスライドさせることにより、凹部が離脱し、ラックの底部が搭載レールと搭載エッジの頂部上でフラットに置かれるまで、ラックは徐々に上昇する。係合および離脱を達成するために、円滑で直線的な動作だけが必要とされ、すなわち、特別なラックの操作やラックを傾かせることが必要ないので、搭載および積み下ろしがそれによりさらに容易になる。さらにこれにより、同時に同じ簡単な動作により、容易な搭載および/または積み下ろしが可能となる。これは、搭載および/または積み下ろしをより簡単に自動化することも可能にする。
【0017】
したがって、「横(transverse)」または「横方向(transversally)」という用語は、搭載レール、一般的には移送路に直交する方向であって、横方向への移動では、凹部を含むラックの側面、典型的には長い方の側面が、移動方向に平行になるようにラックが向けられている。
【0018】
一実施形態によると、ラック操作ユニットは、ラック搭載部からラックを受け取り、ラック内に含まれる試料容器からの試料の処理が可能になるように構成された試料処理部を備えている。試料処理部は、ラック処理領域およびラック処理領域上の処理レールを備え、処理レールは、ラックが係合したときに処理レールに沿ってラック処理領域上を、ラックが長手方向にスライド可能なように、凹部と係合可能である。
【0019】
一実施形態によると、処理レールに沿ってラック処理領域上で、ラックを長手方向にスライドさせることによってのみ、凹部が係合および離脱できるように、たとえば、処理レールの一方の先端において係合し、処理レールの全長に沿ってスライドさせた後、処理レールの他方の先端において離脱するように、処理レールは、ラックの凹部と形状嵌合する、たとえば少なくとも2つの突出部を有する断面を有している。これは、ラックが処理レールから横方向または上方向へ離脱することが防止され、したがって、ラック処理領域から底部が浮き上がることを防止することもできることを意味する。
【0020】
「処理」とは、診断目的での定性的および/または定量的評価のための試料の使用に関連する操作を実行することを意味する。特に、処理は、ピペット操作、すなわち、試料および/または試薬を含む試料の吸引および/または分注、投薬、希釈、混合のような操作を含んでいてもよい。処理は、試料容器または穿孔蓋から蓋を取り除くことを含んでいても良い。
【0021】
特に、試料処理部は、少なくとも1つの試料容器から少なくとも1つの試料をピペット操作するように構成されたピペットユニットを備えるか、または、ピペットユニットと連携するように構成することができる。
【0022】
一実施形態によると、試料処理部は、少なくとも1つの開放位置と保持位置との間で移動可能なラック保持機構を備え、保持位置では、ラック保持機構は、1つまたは2つ以上のラックが、処理レールに沿って長手方向に移動することを防ぐ。
【0023】
特に、保持機構は、処理の間に保持位置をとり、1つまたは2つ以上のラックが移送路に沿って前進移動することができるときに開放位置をとるように構成されている。一実施形態によると、ピペットユニットは、保持機構が保持位置にあるときに、少なくとも1つの試料容器から少なくとも1つの試料をピペット操作するように構成されている。言い換えると、保持機構はピペット操作工程が必要なときに保持位置にある。
【0024】
保持機構は、たとえば、処理レールに平行なラック処理領域の一方のエッジにおいて、尾根状(リッジ)として配置することができ、それは開放位置では後退し、保持位置ではラック処理領域上の1つまたは2つ以上のラックと接触するように前進することができる。特に、保持機構は、ラックが処理レールに沿って長手方向に移動するのを防ぐように、処理レールと係合する1つまたは2つ以上のラックの短い方の1つの側面に摩擦力を加えるように構成することができる。一実施形態によると、保持機構は、複数の突出歯を備えた前面櫛状の形状を有し、保持位置において、複数のラックの傾斜した短い方の側面のそれぞれを囲うように構成されている。これは、処理中に処理レールに沿って長手方向にラックが移動することを防ぐ他の方法である。
【0025】
一実施形態によると、試料ラック操作ユニットは、試料処理部からラックを受け取るように構成された試料ラック積み下ろし部を備えている。「試料ラック積み下ろし部」は、1つまたは2つ以上のラックを積み下ろすように構成されたラック操作ユニットの一体化した、または分離可能な構成要素である。特に、ラック積み下ろし部は、ラック積み下ろし領域と、ラック積み下ろし領域上の積み下ろしレールとを備えている。一実施形態によると、積み下ろしレールは、搭載レールのものと同様に、楔状または略三角形状の断面を有している。特に、積み下ろしレールは、突出部と、傾斜した積み下ろしレール側部とを備え、傾斜した積み下ろしレール側部上を横方向にラックをスライドさせることにより、または積み下ろしレールに沿ってラックを長手方向にスライドさせることにより、凹部が離脱可能なように配置されている。この方法により、たとえば、積み下ろしレールに沿ったいずれの位置においても、ラック積み下ろし領域からラックを積み下ろすこと、および、たとえば、他のラックがラック受容領域上に既に存在する前に、搭載レールに沿った優先位置において、ラック搭載部のラック受容領域上に、たとえば再検査のためにラックを再搭載することが可能となる。
【0026】
ラック積み下ろし部は、ラック搭載部のラック搭載エッジと同様のラック積み下ろしエッジを備えることができる。
【0027】
一実施形態によると、試料ラック積み下ろし部は、試料ラック操作ユニットから、直線移動可能および/または取り外し可能である。試料ラック積み下ろし部は、たとえば、ラック積み下ろし領域上のラックに容易にアクセスするために、直線移動可能な引き出しのように配置することができる。そして、またはその代わりに、ラック積み下ろし部は、たとえば、ラック積み下ろし領域上の1つまたは2つ以上のラックを備えたラック操作ユニットから取り除かれる、手持ち用の搬送ハンドルを備える、取り外し可能なトレイとして構成することができる。
【0028】
一実施形態によると、試料ラック積み下ろし部は、ラック積み下ろし領域からラックを受け取るように構成された分離したラック積み下ろしトレイを備え、ラック積み下ろしトレイは、手持ち用の搬送ハンドルと、ラックトレイと、積み下ろしレールと直線状に並ぶことができる、ラックトレイ領域上のトレイレールとを備えている。この方法で、ラックが積み下ろしレールから離脱し、積み下ろしレールとトレイレールとが直線状に並んだときにトレイレールと係合するように、ラックをトレイレールの方向に積み下ろしレールに沿ってスライドさせることにより、1つまたは複数のラックがラック積み下ろし領域からラックトレイ領域へと移送できる。また、トレイレールは、積み下ろしレールのものと同様に、楔状または略三角形状の断面を有している。特に、トレイレールは、突出部および傾斜したトレイレール側部を備え、傾斜した積み下ろしレール側部上でラックを横方向にスライドさせることにより、ラックの凹部がトレイレールから離脱できるように配置されている。その代わりに、ラックは、トレイレールに沿ってラックを長手方向にスライドさせることにより、積み下ろしトレイから積み下ろすこともできる。したがって、ラック積み下ろしトレイは、ラック積み下ろし部から、1つのスライド動作で複数のラックを積み下ろすために便利に使用することができる。
【0029】
一実施形態によると、ラック搭載部と、試料処理部と、ラック積み下ろし部とは、搭載レール、処理レールおよび積み下ろしレールからなる群から選択される少なくとも2つのラックレールが、ラックレール間でラックがスライド可能なよう、互いに一直線上に並ぶように配置される。
【0030】
一実施形態によると、試料処理部およびラック積み下ろし部は、処理レールから積み下ろしレールへとラックがスライド可能なよう、処理レールと積み下ろしレールとが互いに一直線上に並ぶように配置される。一実施形態によると、ラック搭載部は、試料処理部およびラック積み下ろし部に平行かつ隣接して配置されている。この配置により、試料ラック操作ユニットがよりコンパクトになることができ、ラック受容領域上により多くのラックを搭載することができるように、ラック搭載部は、試料処理部またはラック積み下ろし部より長くすることができ、たとえば、試料処理部とラック積み下ろし部の長さの合計と同じ長さとすることができる。
【0031】
一実施形態によると、試料ラック操作ユニットは、搭載レールおよび処理レールからなる群から選択される少なくとも1つのラックレールに平行な方向に直線移動可能な、少なくとも1つの押圧または引張要素を備え、たとえば、搭載レールおよび/または処理レールに沿って長手方向に、搭載レールおよび/または処理レールと係合した1つまたは2つ以上の試料ラックを押したり、引いたりする。
【0032】
一実施形態によると、ラック搭載部は、搭載レールに沿って長手方向に、ラック搭載領域上の1つまたは2つ以上のラックを押圧する、少なくとも1つの搭載側押圧要素を備え、試料処理部は、処理レールに沿って長手方向に、ラック処理領域上の1つまたは2つ以上のラックを押圧する、少なくとも1つの処理側押圧要素を備えている。
【0033】
一実施形態によると、少なくとも1つの押圧または引張要素は、一方向だけに押圧するまたは引っ張るように構成され、逆方向に直線移動されたときに、格納可能となっている。特に、搭載側押圧要素は、移送路に沿って試料処理部の方向に押圧し、反対方向では格納され、たとえば、ラックの横方向への積み下ろしによるラック間にギャップが残った後に、たとえば搭載レールに沿ってラック受容領域上で広がった複数のラックを再度詰めるため、たとえば、再度押圧される前に以前の位置に戻るように構成されている。同様に、処理側押圧要素は、ラック積み下ろし部の方向にだけ押圧され、反対方向に直線移動したときに格納するように構成されている。
【0034】
一実施形態によると、少なくともラック受容領域および/またはラック処理領域は、少なくとも1つのスリットを備え、スリットは、少なくとも1つの押圧要素が、少なくとも1つのスリットを貫通して直線移動できるように、搭載レールおよび/または処理レールに平行に配置されている。
【0035】
一実施形態によると、ラック受容領域は、2つのスリットを備え、1つのスリットが搭載レールの両側にあり、それぞれのスリットに搭載側押圧要素がある。
【0036】
一実施形態によると、ラック処理領域は、2つのスリットを備え、1つのスリットが処理レールの両側にあり、それぞれのスリットに処理側押圧要素がある。
【0037】
少なくとも1つの押圧または引張要素は、たとえば、ラック搭載部および/または試料処理部の下に配置された、1つまたは2つ以上の電動モータにより駆動される1つまたは2つ以上のスピンドル駆動装置に枢動可能に連結されることが可能である。特に、少なくとも1つの押圧または引張要素は、押圧または引張モードと、格納モードとの間の押圧または引張要素の受動的切り替えのための、バネのような弾性部材を備えている。たとえば、1つまたは複数の搭載側押圧要素は、最初に面するラックの長い方の側面に押圧力を加えるように、ラック受容領域の下から、1つまたは複数のスリットを通ってラック受容領域の上方へと出るように構成され、枢動可能に取り付けられている。最初のラックを前進移動させることにより、その下流に位置する他のラックもまた、手前のラックと接触したときに押圧される。逆に、たとえば、ラック受容領域の最初から押圧を再スタートするため、または搭載レールに沿って広がったラックを再度詰めるために、搭載側押圧要素が逆方向に直線移動したときは、搭載側押圧要素は、その進路上でラックと接触すると格納されるように構成されている。したがって、搭載側押圧要素は、ラックを後に向かって押さずに、ラックの底部の下方へ退き、ラックの他の側面を通り過ぎた後に、再度現れる。
【0038】
一実施形態によると、試料ラック操作ユニットは、移送路に沿ってラック搭載部と試料処理部との間に位置する試料ラック移送部を備え、ラック移送部は移送要素を備え、ラック搭載部から試料処理部に、一度に少なくとも1つのラックを移送する。特に、ラック移送要素は、ラックが搭載レールから離脱した後に、移送領域に沿ってラック搭載レールに垂直な方向にラックを押圧するように構成することができる。移送要素は、ラックの凹部内に嵌合するように構成された水平バー、ロッド等として配置することができる。より詳細には、凹部が搭載レールから離脱し、凹部が搭載レールと一直線に並んだ移送要素と係合するように、搭載側押圧要素および移送要素は連携する。そして、移送要素と凹部とが試料処理部の処理レールに一直線に並ぶまで、移送要素は移送領域上のラックを押圧する。処理側押圧要素は、凹部が処理レールに係合するように、ラック処理領域上までラックを押圧または引っ張るように構成することができる。
【0039】
一実施形態によると、試料ラック移送部は、バーコードリーダー、RFIDリーダー、またはカメラのような光学検出器等の識別センサーを備えている。これにより、それぞれのラックおよび/またはラック内の試料容器は、たとえば、ラックの一側面および/または試料容器に取り付けられたバーコードやRFIDチップに含まれる情報を読み取ることにより、試料処理部に移送される前に識別され得る。
【0040】
本発明は、上記実施形態のいずれかによる試料ラック操作ユニットと、少なくとも1つの試料ラックに保持された少なくとも1つの試料容器からの少なくとも1つの試料を分析する、少なくとも1つの分析ユニットとを備えた、生体試料のインビトロ診断分析用分析機器にも関する。分析機器の例は、化学または生体反応を検知する、または1つまたは2つ以上の検出器または検出方法により、化学または生体反応の進行をモニタするのに使用される、臨床化学分析器、凝固化学分析器、免疫化学分析器、尿分析器である。分析機器は、試料および/または試薬のピペット操作、投薬、混合を補助するユニットを含んでいてもよい。分析機器は、分析を実行するために試薬を保持する試薬保持ユニットを備えていてもよい。試薬はたとえば、保管区画またはコンベア内の適切な受容部または位置に位置付けられた、個別の試薬または一群の試薬を収容する容器またはカセットの形で配置されてもよい。反応容器またはキュベット供給ユニットを備えていてもよい。特に、分析機器は、ピペットユニットのような、反応容器に試料および/または試薬を供給する1つまたは2つ以上の液体処理ユニットを備えていていもよい。ピペットユニットは、たとえばスチール針など、再利用可能、洗浄可能な針、または使い捨てのピペットチップを備えていてもよい。分析機器はさらに、液体を含むキュベットを振動させるシェーカー、または、キュベットまたは試薬容器内で液体を混合する混合パドルを備えた、1つまたは2つ以上の混合ユニットを備えていてもよい。
【0041】
本発明は、少なくとも1つの試料容器を保持する試料ラックを操作する方法にも関し、この方法は、
ラックの底部の凹部を、ラック受容領域上に長手方向に配置された搭載レールに横方向に係合することにより、少なくとも1つの試料ラックを、ラック搭載部のラック受容領域上に搭載する工程、
ラックを搭載レールに沿ってラック受容領域上で長手方向にスライドさせる工程、
凹部を処理レールに長手方向で係合させ、処理レールに沿ってラック処理領域上で長手方向にラックをスライドさせることにより、ラックを、ラック搭載部から、ラック処理領域上に長手方向に配置された処理レールを備えた試料処理部へと移送する工程、
凹部を積み下ろしレールに長手方向で係合させ、積み下ろしレールに沿ってラック積み下ろし領域上を長手方向にラックをスライドさせることにより、試料処理部から、ラック積み下ろし領域と、ラック積み下ろし領域上に長手方向に配置された積み下ろしレールとを備えた試料ラック積み下ろし部へとラックを移送する工程、
凹部を積み下ろしレールから横方向に離脱させることにより、または積み下ろしレールに沿って長手方向にスライドさせることにより、ラック積み下ろし領域からラックを積み下ろす工程とを備えている。
【0042】
本発明の他のさらなる目的、特徴および利点は、例示的な実施形態を示し、本発明の原理をより詳細に説明するのに役立つ、以下の説明および添付図面から明らかになるであろう。