(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956356
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】自動供給ロール清掃システム
(51)【国際特許分類】
B65H 1/14 20060101AFI20160714BHJP
【FI】
B65H1/14 310C
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-16713(P2013-16713)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-170084(P2013-170084A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2016年1月7日
(31)【優先権主張番号】13/401,039
(32)【優先日】2012年2月21日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ケイ・ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ディー・レッジャーウッド
(72)【発明者】
【氏名】デレク・エイ・ブライル
【審査官】
西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−334910(JP,A)
【文献】
特開2011−225329(JP,A)
【文献】
特開2003−072969(JP,A)
【文献】
特開2004−359449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00− 3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタ用の媒体供給装置であって、
プリンタ内のプロセス方向に印刷媒体を移動させるように構成された第1の部材と、
印刷媒体のスタックを保持するように構成された媒体トレイと、を含み、
前記媒体トレイが、
前記印刷媒体のスタックが載置される上面を有する第1のプレートであって、当該第1のプレートの前記上面に前記印刷媒体を積み込み可能にする載荷位置と、前記載荷位置より上にあり前記上面に積み込まれた前記印刷媒体が空になったときに当該第1のプレートが位置する無媒体位置と、前記無媒体位置より上にある清掃位置と、の間で移動できる第1のプレートと、
前記第1の部材の清掃を行う場合に前記第1のプレートを前記無媒体位置から前記清掃位置まで移動させる俯仰機構と、
前記第1のプレートに動作可能なように連結されている第2のプレートであって、前記第1のプレートが前記清掃位置にある時に、前記第1のプレートに対して前記プロセス方向に選択的に移動可能であることによって、当該第2のプレートが、前記第1の部材と接触しない第1の位置と、当該第2のプレートが前記第1の部材と接触する第2の位置との間で移動できる第2のプレートと、を含む、
プリンタ用の媒体供給装置。
【請求項2】
前記第1のプレートが前記プロセス方向に対して垂直な方向に移動する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のプレートが前記清掃位置にあるとき前記第2のプレートに接触するように位置決めされた第2の部材であって、前記第1の部材を前記第2のプレートと選択的に係合させるために前記第1の位置と前記第2の位置の間で前記第2のプレートを移動させるように構成されている第2の部材をさらに含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第2の部材が、
ローラと、
前記ローラを回転させて前記第1の位置と前記第2の位置の間で前記第2のプレートを移動させるために、前記ローラに動作可能なように連結されたアクチュエータと、をさらに含む、
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の部材が、
第1のローラと、
ニップを形成するように前記第1のローラに隣接して設置された第2のローラと、
前記第1のローラと前記第2のローラのうちの一方に動作可能なように連結されたアクチュエータであって、当該アクチュエータに動作可能なように連結された前記一方のローラを回転させるように構成されているアクチュエータと、をさらに含み、
前記第2の部材が前記第2のプレートを、前記アクチュエータに動作可能なように連結された前記ローラに前記第2のプレートが接触する前記第2の位置まで移動させたことに呼応して、前記第2のプレートの一部分が、前記第1のローラと前記第2のローラの間に形成された前記ニップに入る、
請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の部材が、
第3のローラと、
前記第3のローラを回転させて前記第1のローラと前記第2のローラの間の前記ニップに前記第2のプレートを出し入れするために、前記第3のローラに動作可能なように連結されたアクチュエータと、をさらに含む、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1のプレート上に載っている前記印刷媒体がないことを検出するように構成されたセンサをさらに含み、
前記俯仰機構は、
前記第1のプレートに動作可能なように連結されており、前記第1のプレート上に前記印刷媒体が前記ないことを前記センサが検出したことに呼応して、前記第1のプレートを前記清掃位置まで移動させる、
請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記第2のプレートを前記第1の位置の方向に向かって付勢するように構成された付勢部材をさらに含む、
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第2のプレートが、
前記第1の部材からごみを取り除くように構成された表面をさらに含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
プリンタ用の媒体供給装置の動作方法であって、
媒体トレイの第1のプレートを、媒体フィーダの第1の部材に向かって持ち上げるステップであって、前記第1のプレートは、前記第1のプレートの上面に印刷媒体を積み込み可能にする載荷位置と、前記載荷位置よりも上にあり前記上面に積み込まれた前記印刷媒体が空になったときに当該第1のプレートが位置する無媒体位置と、前記無媒体位置より上にある清掃位置と、の間で移動できるように構成され、前記第1の部材は、前記上面にある前記印刷媒体のうち最上の印刷媒体を係合してプロセス方向に移動させるように構成されている、ステップと、
前記第1のプレートの前記上面に前記印刷媒体が無い時に、前記第1のプレートを前記無媒体位置から前記清掃位置まで移動させて第2のプレートを前記第1の部材に接触させるステップであって、前記第2のプレートは、前記第1のプレートに動作可能なように連結され、前記第1のプレートに対して前記プロセス方向に選択的に移動可能である、ステップと、
前記媒体フィーダの第2の部材と接触しない第1の位置から、前記第2のプレートが前記第2の部材と接触する第2の位置へ、前記プロセス方向に前記第2のプレートを駆動するように、前記第1の部材を作動させるステップと、
を含む方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記第2のプレートを前記第1の部材に接触させるステップはさらに、前記第2のプレートをナッジャロールに係合させることを含み、
前記第1の部材を作動させるステップはさらに、第1のローラと第2のローラとの間に形成されたニップに前記第2のプレートを押し込むように、前記ナッジャロールを作動させることを含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、さらに、
前記第2のプレートが前記第2の位置にある状態で、前記ナッジャロールおよび前記第1のローラを作動させるステップを含む、方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、さらに、
媒体センサを用いて、前記第1のプレートの前記上面に前記印刷媒体が無い時を検出するステップを含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、さらに、
前記媒体フィーダが前記媒体トレイから取り出した印刷媒体の枚数のカウントを保持するステップと、
前記カウントをカウント閾値と比較するステップと、
前記第1のプレートの前記上面に前記印刷媒体が無いことを前記媒体センサが示すこと、および、前記カウントが前記カウント閾値より大きいことに呼応して、前記第1のプレートを前記清掃位置へ持ち上げるステップと、
を含む方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法であって、さらに、
前記媒体トレイが開けられたことに呼応して、前記第2のプレートを前記第2の位置から前記第1の位置へ引っ込めるステップを含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、さらに、
前記第2のプレートが前記第2の位置から前記第1の位置へ引っ込められた後に、前記第1のプレートを前記載荷位置へ降下させるステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、一般に、プリンタ内の印刷媒体を管理するための装置に関し、さらに詳細には、プリンタ内の媒体シートのスタックを取り扱うための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、写真式複写機、および多機能画像装置のような多くの画像装置が、1つ以上の内部トレイ内に紙シートのような媒体シートの供給を格納している。使用者または保守技術員によって内部トレイの中に媒体シートが垂直方向に積み重ねられている。媒体トレイは、数百枚または数千枚のシートを保持するような寸法および構成である。媒体供給システムを使用して、媒体トレイ内の印刷媒体のスタックから一番上のシートを抜き取って、一番上のシートをプリンタの媒体搬送システムに送出する。
【0003】
媒体供給システムは、印刷媒体を摩擦により係合して印刷媒体を望ましい方向に移動させるために、ローラまたは類似の構造物を利用する場合が多い。媒体供給システムのローラ上には、時間の経過とともに、紙のほこり、破片、および汚染物質が蓄積する可能性がある。このほこりの蓄積は媒体供給システムのローラの摩擦特性を低下させて、結果として、性能に悪影響を及ぼす可能性がある。その結果、ローラからほこりおよび汚染物を取り除いて一貫性のある信頼性の高い供給性能を維持するために、画像装置の媒体供給システムは定期的な清掃を必要とする。
【0004】
いくつかの既知の画像装置では、装置の操作者が媒体供給システムを手作業で清掃する必要がある。通常、この手作業での清掃では、操作者がローラを清掃する必要性を特定できて、清掃のために供給ローラにアクセスするための知識を有している必要がある。他の既知の画像装置は、媒体供給システムに通してローラを清掃する清掃シートを利用するように構成されている。清掃シートの使用は、印刷動作を止めて清掃シートを媒体供給システムに通すことができる専用の時間を必要とするとともに、運転を再開する前に取り除かなければならない障害を引き起こす可能性がある。いくつかの画像装置は、媒体供給システムに追加する専用のロールクリーナを備えている。ロールクリーナは連続的に使用され、媒体供給システムにコストと複雑さとをもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
操作者の介入の必要性または装置休止時間の必要性のない画像装置の媒体フィーダ内の清掃ローラが有益であるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によって、プリンタ用の媒体供給装置が、プリンタ内のプロセス方向に印刷媒体を移動させるように構成された第1の部材と、印刷媒体のスタックを保持するように構成された媒体トレイと、を含んでいる。媒体トレイは、第1の位置と第2の位置の間で移動できる第1のプレートを含み、第1の位置では第1のプレートが第1の部材から第1の距離だけ離間しており、第2の位置では第1のプレートが第1の部材から第2の距離だけ離間しており、第2の距離は第1の距離よりも小さい。また、媒体トレイは、第1のプレートに動作可能なように連結された第2のプレートを含んでいる。第2のプレートは、第1の部材と接触していない第1の位置と、第2のプレートが第1の部材と接触している第2の位置との間で移動するように、第1のプレートに対してプロセス方向に選択的に移動可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本明細書の清掃機構を備えた媒体トレイを含む画像装置の模式図である。
【
図2】
図2は、媒体トレイに取り付けられた清掃プレートを示す
図1の媒体トレイおよび媒体フィーダの模式図である。
【
図3】
図3は、
図2の媒体トレイおよび媒体フィーダの側面図であり、清掃プレートが格納位置にある状態を示している。
【
図4】
図4は、
図2の媒体トレイおよび媒体フィーダの平面図であり、清掃プレートが格納位置にある状態を示している。
【
図5】
図5は、
図2の媒体トレイおよび媒体フィーダの側面図であり、清掃プレートが伸長位置にある状態を示している。
【
図6】
図6は、
図2の媒体トレイおよび媒体フィーダの平面図であり、清掃プレートが伸長位置にある状態を示している。
【
図7】
図7は、
図2の媒体トレイおよび媒体フィーダの側面図であり、清掃プレートが伸長位置にあり、媒体フィーダのロールが分離して清掃プレートを引っ込めることができる状態を示している。
【
図8】
図8は、
図1の媒体トレイおよび媒体供給システムを運転する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に開示する装置および方法に対する環境の一般的理解、ならびに装置および方法の詳細の一般的理解のために、図面を参照する。図面では、類似の参照番号は類似の要素を示している。
【0009】
本明細書では、用語「プリンタ」は、マーキング剤を用いて印刷媒体上に画像を形成するように構成された任意の装置を示している。「マーキング剤」は、本明細書で使用する場合、トナー、水性インク、油性インク、固体インク、相変化インク、およびUV硬化性インクを含む着色剤を示しているが、これらに限らない。印刷媒体は、さまざまな種類の紙、羊皮紙、布、ボール紙、プラスチック、トランスペアレンシー、膜、または箔などの、マーキング剤を受け取る材料の基板または薄板を示している。本明細書で使用する場合、用語「媒体シート」は、プリンタを通過する材料の単一のシートを示している。プリンタは、それぞれ、片面印刷モードまたは両面印刷モードで媒体シートの片面または両面上に画像を形成する。媒体シートのスタックは、互いの上に垂直方向に配置された複数の媒体シートを含んでいる。本明細書で使用する場合、プロセス方向は、一枚の媒体がプリンタの中を通って搬送される方向である。逆方向は、プロセス方向と反対の方向である。
【0010】
図1を参照すると、本明細書は、プリンタ10の媒体フィーダ30を清掃するための内蔵された清掃機構(
図2)を有するプリンタ10用の媒体トレイ28に関する。媒体トレイ28は、媒体スタック32を保持して、媒体フィーダ30がアクセスできるように媒体スタック32を位置付けるように構成されている。媒体フィーダ30は、媒体スタックの一番上のシートと接触して一番上のシートをプリンタの媒体搬送システム34に送出するローラ38、40、44を含んでいる。後述するように、媒体トレイ28は清掃プレート100(
図2)の形の清掃機構を備えており、この清掃プレート100は媒体トレイ28の印刷媒体が空のときには媒体フィーダ30の中に引き込まれている。媒体フィーダ30のローラを清掃プレートに押し付けながら回転させて、長い間に媒体フィーダ30内に蓄積する可能性がある紙のほこり、破片、および他の汚染物質をローラから取り除く。媒体トレイ28にアクセスするとき、媒体トレイ28は媒体フィーダ30から清掃プレート100を引っ込める。
【0011】
図1は、本明細書の媒体トレイ28を備えたプリンタの模式図である。プリンタ10は、印刷ユニット14と、媒体供給18と、媒体仕上げ装置20と、を含んでいる。プリンタ10は、多くの異なる種類の、例えば、プリンタ、コピー機、ファクシミリ装置、および多機能装置(MFD)などのうちのいずれかを含む、印刷媒体上に画像を形成できる任意の装置を含んでいてもよい。プリンタに関連して説明しているが、本明細書の媒体トレイ28は、専用のまたは特殊な文書スキャナまたはリーダ、郵便物処理装置、小切手リーダ、およびスタンドアロン型媒体供給モジュールなどの、印刷装置ではない媒体および/または文書処理システムにも、また同様に組み込んでもよい。
【0012】
印刷ユニット14は、印刷媒体上に画像を印刷するための印刷システム24を含んでいる。印刷システム24は、画像を形成するために印刷媒体上にマーキング剤を付着させるように構成された1つ以上のマーキングエンジン(図示せず)を含んでいる。マーキングエンジンは、例えば、電子写真印刷、レーザ印刷、液体インクジェット印刷、相変化インクジェット印刷、固体インク印刷、昇華型印刷、印刷染色法、およびオフセット印刷を含む任意の種類または方法の印刷を利用するように構成してもよい。さらに、マーキングエンジンは、任意のマーキング剤を利用するように構成してもよい。
【0013】
媒体供給18は、印刷ユニット14に送出するために印刷媒体のスタック32を保持する少なくとも1つの媒体トレイ28を含んでいる。
図1の媒体供給18の実施形態では、単一の媒体トレイ28を示している。媒体トレイ28は、特定種類の印刷媒体の所定枚数を保持するように構成されている。他の実施形態では、異なる種類(例えば、異なるサイズ、重さ、色、コーティング、およびトランスペアレンシーなど)の異なる媒体を保持するために複数の媒体トレイを提供してもよい。媒体トレイは、印刷媒体を積み込むためにプリンタから引っ張り出すことができる引き出しの中に組み込んでもよい。
【0014】
媒体供給は、媒体トレイ内の媒体スタック32から一番上のシートを抜き取って、一番上のシートを印刷ユニット14の媒体搬送システム34に送出するように構成された媒体フィーダを含んでいる。
図1の媒体供給の媒体フィーダは、摩擦遅延フィーダを含んでいる。摩擦遅延フィーダは、摩擦により係合して一番上のシートを媒体スタック32から引き離し、一番上のシートをプロセス方向に動かしてプリンタの媒体搬送システムへと駆動するように位置付けられた、本明細書でロールと呼ぶ複数の円筒ローラを含んでいる。
図1の実施形態では、複数のロールが、ナッジャロール38と、供給ロール40と、遅延ロール44と、を含んでいる。ロール38、40、44は、媒体シートの表面との摩擦接触を促進するゴムなどの材料で形成されている。
【0015】
ナッジャロール38は、スタック32の一番上のシートと接触して一番上のシートをプロセス方向Pに前進させるために、媒体トレイ28内の媒体スタック32の真上に支持されている。供給ロール40と遅延ロール44とは、フィーダニップまたは分離ニップと一般に呼ばれるニップ46を形成するように配置されており、このニップ46は、ナッジャロール38から一番上のシートを受け取るように位置付けられている。ナッジャロール38および供給ロール40のそれぞれは、1つ以上の所定回転速度で回転するようにロール38、40を駆動する電気モータなどのアクチュエータ48、50(
図2)のそれぞれに動作可能なように連結されている。
図2では、ナッジャロール38および供給ロール40のそれぞれに対して別々のアクチュエータ48、50を示しているが、いくつかの実施形態では、ナッジャロール38と供給ロール40とを同じアクチュエータに動作可能なように連結して、その同じアクチュエータにより駆動してもよい。
【0016】
媒体スタック32の一番上のシートは、場合によっては、1枚以上の付加的な媒体シートを供給ニップ46の中に引っ張り込む可能性がある。遅延ロール44は、一番上のシートといっしょに付加的な媒体シートが供給ニップ46を通り抜けるのを防止するように構成されている。例えば、ニップ46内に一番上のシートだけがあるか、またはニップ46内にシートがない場合に、遅延ロール44がプロセス方向に回転することを可能にするスリップクラッチ54のような機構に遅延ロール44を連結してもよい。一実施形態では、ニップ内に2枚以上のシートがある場合、アクチュエータ52(
図2)が遅延ロール44を逆方向に回転させることを、この機構が可能にする。あるいは、ニップ内に2枚以上のシートがある場合、遅延ロール44がプロセス方向に回転するのを防止するように機構54を構成してもよい。この構成では、アクチュエータ52を削除する。
【0017】
媒体トレイ28は、エレベータプレート56と、俯仰機構58と、を含んでいる(
図2)。媒体トレイ28のエレベータプレート56は、上部表面60と、前縁部62と、後縁部64と、一対の側面縁端部66、68と、を含んでいる(
図4)。エレベータプレート56の上部表面60は、その上に媒体のスタックをセットする、ほぼ平坦な水平面を提供する。エレベータプレート56は、前縁部62がプロセス方向Pに向き、後縁部64が逆方向Rに向いた状態で媒体トレイ28内で支持されている。
【0018】
俯仰機構58は、エレベータプレート56に動作可能なように連結された電気モータなどのアクチュエータを含んでいる。スタック32からシートを抜き取るとき、俯仰機構58は、エレベータプレート56をほぼ垂直に持ち上げて、スタック32の一番上のシートの高さを媒体フィーダ30との接触に適した高さに保つように構成されている。俯仰機構58は、媒体トレイ28に関連する1つ以上の媒体センサ70の出力に基づいて制御される。媒体センサ70は、媒体トレイ内の媒体スタックの上端の高さまたは位置を示す信号を生成する。
【0019】
媒体搬送システム34は、媒体経路のネットワークを形成するように配置された駆動ロール、アイドラロール、ニップ、バッフル(邪魔板)、および空気ジェットなどのさまざまな装置を含んでいる。媒体経路は、媒体供給18から、印刷媒体上に画像を形成する印刷システム24までプロセス方向に印刷媒体を誘導し、その後、印刷システム24から媒体仕上げ装置20まで印刷媒体を誘導する。媒体仕上げ装置20は搬送システム34から印刷媒体を受け取り、印刷媒体を出力トレイ72に送る。媒体仕上げ装置20は、印刷媒体に対して、例えば、積み重ね、丁合い、ホチキス止め、穴あけ、裁ち落とし、製本、および折り畳みなどを含む1つ以上の仕上げ作業を行うように構成してもよい。
【0020】
制御システム74が、プリンタ10のさまざまなサブシステム、構成要素、および機能の操作および制御を支援する。画像供給源から画像データを受け取って管理するために、およびプリンタの構成要素およびサブシステムに送出する制御信号を生成するために、スキャナシステムまたはワークステーション接続などの1つ以上の画像供給源(図示せず)に制御システム74を動作可能なように接続している。制御信号の一部は画像データに基づいており、印刷媒体上に画像を形成するために印刷システム24を操作する。他の制御信号は、印刷ユニット14の媒体搬送システム34に印刷媒体を送出するために、プリンタ10の構成要素およびサブシステムに、媒体トレイ28および媒体フィーダ30を作動させることなどのさまざまな手順および動作を実行させる。
【0021】
制御システム74は、コントローラ76、電子記憶装置またはメモリ78、およびユーザインタフェース(UI)80を含んでいる。コントローラ76は、中央処理装置(CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)デバイス、またはマイクロコントローラなどの処理装置を含んでいる。他のタスクの中でも、処理装置は画像供給源(図示せず)により提供される画像を処理する。メモリ78内に保存されているプログラムされた命令とともに、コントローラ76を含む1つ以上の処理装置を構成する。コントローラ76は、プリンタの構成要素およびサブシステムを作動させるためにこれらの命令を実行する。任意の好適な種類のメモリまたは電子記憶装置を使用できる。例えば、メモリ78は、読み出し専用メモリ(ROM)などの不揮発性メモリ、またはEEPROMもしくはフラッシュメモリなどのプログラマブル不揮発性メモリである可能性がある。
【0022】
ユーザインタフェース(UI)80は、プリンタ10上に位置しており、操作者と制御システム74とのやりとりを可能にする好適な入出力装置を含んでいる。例えば、UI80はキーパッド82および表示部84を含むことができる。装置の使用者または操作者がユーザインタフェース80に対して行う選択と、他の情報入力と、を示す信号を受信するために、コントローラ76はユーザインタフェース80に動作可能なように接続されている。選択可能なオプション、機械状況、および消耗状況などを含む情報を使用者または操作者に表示するために、コントローラ76はユーザインタフェース80に動作可能なように接続されている。また、コントローラ76は、離れた場所から画像データおよびユーザ相互作用データを受信するためのコンピュータネットワークなどの通信リンク(図示せず)に接続できる。
【0023】
図2〜
図6を参照すると、清掃プレート100は、格納位置(
図2〜
図4)と、伸長位置(
図5および
図6)の間で移動できるようにエレベータプレート56に摺動可能に取り付けてある。清掃プレート100は、上部表面102と、下部表面104と、前縁部106と、後縁部108と、第1の側面縁端部110と、第2の側面縁端部112と、を有する、ほぼ平面状の部材を含んでいる。清掃プレート100は、前縁部106がプロセス方向Pに向き、後縁部が逆方向Rに向いた状態でエレベータプレート56に取り付けてある。
【0024】
図6を参照すると、清掃プレート100は、清掃プレートの第1および第2の側面縁端部110、112の間の幅W1が媒体フィーダ30のロール38、40、44の幅W2に等しいか、または幅W2よりも大きいような寸法となされている。さらに、清掃プレート100の上部および下部表面102、104の間の厚さは、供給ニップ46内の供給ロール40と遅延ロール44の間に清掃プレート100を受け入れることを可能にする厚さを有している。清掃プレート100の上部および下部表面102、104は、媒体フィーダ30のロール38、40、44の清掃を促進する表面性状または表面処理を有することができる。
【0025】
一実施形態では、エレベータプレート56内に設けられた結合領域114内に清掃プレート100を摺動可能に受け入れる。結合領域114は、エレベータプレート56の前縁部62内の、清掃プレート100と補完的な寸法および形となされたすき間または切り欠きを含んでいる。清掃プレート100が
図2〜
図4に示すように格納位置にあるとき、清掃プレート100はエレベータプレート56の結合領域114内に位置している。格納位置にあって結合領域114内に位置するとき、清掃プレート100の前縁部106はエレベータプレート56の前縁部62とほぼ一致するとともに、清掃プレート100の上部表面102はエレベータプレート56の上部表面60とほぼ同一平面になる。したがって、清掃プレート100の上部表面102は、エレベータプレート56に対して媒体スタック32を支持する表面の少なくとも一部分を形成する。
【0026】
俯仰機構58は、媒体スタック32を使い切って、
図3および
図4に示すように清掃プレートの上部表面102が露出するまで、エレベータプレート56を持ち上げる。清掃プレート100がナッジャロール38と接触するまで、エレベータプレートを持ち上げる。ナッジャロールは清掃プレートをプロセス方向Pに駆動して、結合領域114内の格納位置から、伸長位置の方へ清掃プレート100を摺動させる(
図5および
図6)。清掃プレート100およびエレベータプレート56は、エレベータプレート56に対する清掃プレート100の動きを誘導するために協働する補完的な誘導機構を含んでいる。一実施形態では、エレベータプレート内の補完的に構成された案内溝部118内に摺動可能に受け入れられるガイドレール116が、清掃プレート100に設けてある。しかしながら、清掃プレート100およびエレベータプレート56は、格納位置と伸長位置の間の動きを可能にする任意の好適な方法で互いに取り付けることができる。
【0027】
一実施形態では、清掃プレート100とエレベータプレート56の間に、図中のばねで示す一対の付勢部材120を連結する。付勢部材は、清掃プレートを格納位置に向かって逆方向Rに移動させる傾向がある付勢力を加えるように構成されている。付勢力は、ナッジャロール38が清掃プレート100に接触するまで、清掃プレート100を格納位置に保持する。ナッジャロール38は、付勢部材120の付勢動作に打ち勝って清掃プレートをプロセス方向Pに駆動するのに十分な力を生成して、清掃プレート100を格納位置から伸長位置まで移動させる。図面では一対の付勢部材を示しているが、単一の付勢部材または3つ以上の付勢部材を使用して清掃プレート100を格納位置の方へ付勢できる。
【0028】
伸長位置では、清掃プレート100の前縁部106は、エレベータプレート56の前縁部62よりプロセス方向Pの所定の距離Dだけ前方に位置している。清掃プレート100の前縁部106と後縁部108の間の長さは、
図5および
図6に示すように清掃プレート100が伸長位置にあるとき清掃プレート100がエレベータプレート56から供給ニップ46の中に延びることを可能にする長さを有している。清掃プレート100を供給ニップ内に受け入れている状態で、ナッジャロール38と、供給ロール40と、(可能なとき)遅延ロール44とを清掃プレート100に押し付けながら回転させて、紙のほこり、破片、および他の汚染物質をロールから取り除く。
【0029】
一実施形態では、清掃動作を行う前にエレベータプレート56が無媒体位置(例えば
図3)から清掃位置(例えば
図5)まで垂直に移動するように構成されている。この実施形態では、エレベータプレート56の印刷媒体が空の状態のときには、エレベータプレート56と清掃プレート100とがナッジャロール38から離間している。コントローラ76は、エレベータプレート56の媒体が空であることを媒体センサ70が検出するとき、俯仰機構58を作動させてエレベータ56を無媒体位置から清掃位置まで移動させるように構成されている。
【0030】
一実施形態では、コントローラが、選択された時間に、または選択された間隔で、エレベータプレートだけを清掃位置まで移動させるように構成されている。例えば、コントローラは、媒体トレイが空であると示された時点で清掃サイクルを行う必要があるかどうかを判断するためのプロセスを実行するように構成できる。このプロセスは、さまざまな所定の要素および基準を考慮して、清掃サイクルを行うのに適切な時間を判断できる。一実施形態では、コントローラが、媒体フィーダ30を清掃してから後にニップ46を通った枚数のカウントを保持するとともに、所定のカウント閾値に達したときに清掃サイクルを始動させる(例えば、エレベータプレートを清掃位置まで移動させる)ように構成されている。各清掃サイクルの後に、清掃サイクルに対するカウント値はゼロにリセットされる。
【0031】
図3および
図5に示すように、エレベータプレート56が清掃位置に到達するまで、ラッチ機構128を使用して清掃プレート100を格納位置に保持してもよい。一実施形態では、ラッチ機構128が、媒体トレイ28の下端から延びる支柱構造を含んでいる。支柱構造128は戻り止め130などの清掃プレート100の一部分と係合するように位置しており、エレベータプレート56が清掃位置(
図3)よりも低い位置にある間、清掃プレート100が格納位置から動くのを阻止する。エレベータプレート56が清掃位置に到達すると、
図5に示すように清掃プレート100をラッチ機構128から切り離して清掃プレートが伸長位置まで移動できるようにする。
【0032】
一実施形態では、ナッジャロールと、供給ロールと、遅延ロールとが位置調整機構124(
図7)に連結してあり、この位置調整機構124は、ナッジャロール38を清掃プレート100から離れる方向に移動させるとともに、供給ロール40を遅延ロール44から離れる方向に移動させてニップ46を分離して、その結果、清掃プレート100を結合領域114の中に引っ込めることができるように構成されている。いったん清掃プレート100からナッジャロール38と供給ロール40との駆動力が取り除かれると、付勢部材120が清掃プレート100を格納位置まで戻すことができる(
図3および
図4)。ナッジャロールを清掃プレートから離れる方向に移動させて、供給ニップのロールを分離するための多くの機構および方法のうちのいずれかを実行できる。
【0033】
エレベータ位置調整機構58は、清掃プレート100が延びている間、エレベータプレート56を所定の位置に保持するように構成されている。清掃プレート100を格納位置まで戻した時点で、エレベータ位置調整機構58が作動してエレベータプレート56が載荷位置(
図2)まで下がることができるようにして、その結果、媒体シートをエレベータプレート上に積み込むことができる。エレベータ位置調整機構58は、エレベータプレート56を載荷位置まで能動的に下げるように構成されてもよい。あるいは、エレベータ位置調整機構58は、エレベータプレート56が載荷位置まで自由に下がることができるように構成されてもよい。
【0034】
一実施形態では、ナッジャロールを引っ込めるため、供給ロールと遅延ロールとを分離するため、およびエレベータプレートを下げるための機構を媒体トレイ28の動作に機械的に連結してあり、操作者が媒体トレイ28に手を伸ばして媒体トレイ28を開けたときに清掃プレート100を引っ込めてエレベータプレート56を下げるようになっている。あるいは、機構は装置の制御システムにより作動でき、センサ入力に基づいて起動できる。例えば、媒体トレイセンサ(図示せず)を使用して、いつ媒体トレイが開けられているか、その結果、いつ清掃プレートを引っ込めることができ、エレベータプレートを下げることができるかを検出してもよい。
【0035】
プリンタの媒体フィーダを清掃する方法のフローチャートを
図8に示している。方法は、媒体トレイの印刷媒体が空であるかどうかを媒体センサが示した時に判断を開始する(ブロック800)。その後、コントローラは、清掃サイクルを行うべきかどうかを特定するためのプロセスを実行する(ブロック804)。例えば、コントローラは、シートカウント値と、清掃サイクルを行うための閾値とを比較できる。コントローラが、清掃サイクルを行うべきと判断した場合、エレベータプレートを清掃位置まで持ち上げる(ブロック808)。清掃位置では、エレベータプレートに取り付けられた清掃プレートがナッジャロールと接触する。その後、ナッジャロールと供給ロールとを回転させて、清掃プレートを供給ニップの中に押し込む(ブロック810)。その後、ナッジャロールと、供給ロールと、(可能なとき遅延ロールと)を清掃プレートに押し付けながら回転させて、ほこりおよび破片をロールから取り除く(ブロック814)。媒体トレイにアクセスするとき、清掃プレートを供給ニップから引っ込めてエレベータプレートに戻す(ブロック818)。
【0036】
媒体トレイに組み込まれた供給ロール清掃機構は、上述のように、休止時間がごく少ないかまったくない状態で、かつ操作者が介入する必要もなく媒体供給システムを自動的に清掃することを可能にする。この種類の清掃システムは、エレベータプレートとナッジャとを利用する任意の媒体供給システムに組み込むことができる。さらに、この種類の清掃システムは、追加の駆動システムまたは複雑な機構を必要としないため、低コストである。