【実施例1】
【0032】
本発明の好適な一実施例であるウォータージェットピーニング装置(WJP装置)を、
図1、
図2、
図3、
図4及び
図5を用いて説明する。
【0033】
本実施例においてウォータージェットピーニング(WJP)が施工される沸騰水型原子力プラントの概略構成を
図1を用いて説明する。沸騰水型原子力プラントは原子炉圧力容器1を有する。円筒状の炉心シュラウド3が原子炉圧力容器1内に配置されて原子炉圧力容器1に設置される。上部格子板4が炉心シュラウド3に取り付けられ、上部格子板4の下方に配置された炉心支持板5も炉心シュラウド3に設置される。複数の燃料集合体(図示せず)が装荷された炉心(図示せず)が、炉心シュラウド5によって取り囲まれている。上部格子板4は炉心に装荷された各燃料集合体の上端部を支持する。炉心支持板5は、燃料集合体の下端部を支持する燃料支持金具(図示せず)を保持する。原子炉圧力容器1内の炉心支持板5より下方の領域は、下部プレナム8である。
【0034】
複数の制御棒駆動機構ハウジング7が原子炉圧力容器1の下鏡部2を貫通して設けられる。制御棒駆動機構ハウジング7の個数と同じ個数のスタブチューブ6が下鏡部2の内面に溶接により取り付けられている(
図2参照)。各制御棒駆動機構ハウジング7は、別々のスタブチューブ6内に挿入されて原子炉圧力容器1の下方まで伸びており、スタブチューブ6に溶接にて接続される。制御棒案内管(図示せず)の下端部が各制御棒ハウジング7の上端に結合され、燃料支持金具の下端部が炉心支持板5に形成された円形の開口部42(
図6参照)を通して制御棒案内管の上端部内に挿入される。炉心支持板5の上面に設けられた位置決めピン41(
図7参照)が燃料支持金具に形成された貫通孔内に挿入され、燃料支持金具の旋回を防止する。各制御棒駆動機構ハウジング7内に設置された制御棒駆動機構(図示せず)の上端部が、制御棒案内管内に配置された制御棒(図示せず)の下端部に連結されている。制御棒駆動機構は連結した制御棒の炉心への出し入れを行い、原子炉出力を制御する。
【0035】
本実施例のWJP装置11は、
図1及び
図2に示すように、ケーシング12、噴射ノズル14、噴射ノズル駆動機構(噴射ノズル移動装置)19及び高圧水中ポンプ26を備えている。ケーシング12は、旋回機構部49の第2ケーシング12B及び旋回機構部49よりも下方の旋回する第1ケーシング12Aを含んでいる。第2ケーシング12Bはケーシング12の上端部に位置している。
【0036】
一台の高圧水中ポンプ26が、円筒であるケーシング12の上端、すなわち、第2ケーシング12Bの上端に取り付けられている。水を吸い込む吸い込み口30が高圧水中ポンプ26に設けられる。高圧水中ポンプ26の、ケーシング12の軸心に垂直な方向における断面形状は、上部格子板4に形成される矩形の開口部を通過できる大きさになっている。ケーシング12の、ケーシング12の軸心に垂直な方向における断面形状、具体的には第1ケーシング12A及び第2ケーシング12Bのその断面形状は、上部格子板4に形成される矩形の開口部の面積よりも小さい、炉心支持板5に形成された円形の開口部42を通過できる大きさになっている。
【0037】
旋回機構部49の構造を
図3を用いて説明する。旋回機構部49は、第2ケーシング12B及び旋回装置53を有する。第2ケーシング12Bは、第1ケーシング12Aの上端にベアリング60により回転可能に設置される。リング状の支持部材51及び52が、第2ケーシング12B内に配置され、第2ケーシング12Bの内面にそれぞれ取り付けられている。支持部材52は第2ケーシング12Bの下端部に位置しており、支持部材51は支持部材52よりも上方に配置される。
【0038】
旋回装置53は、モータ54、減速装置55、歯車56及び旋回軸57を有する。外面に歯車が形成された旋回軸57が、支持部材51及び52のそれぞれの中心を貫通して配置され、旋回軸57の上端が支持部材51にベアリング59により回転可能に支持された円板状の旋回部材58の下面に取り付けられる。旋回軸57は支持部材51に支持される。旋回軸57の下端は、第1ケーシング12A内に配置されて第1ケーシング12Aの上端部に取り付けられた支持部材61に取り付けられる。モータ54が支持部材52の上面に設置される。歯車56が、モータ54に連結された減速装置55の回転軸に取り付けられる。この歯車56は旋回軸57の外面に形成された歯車と噛み合っている。
【0039】
複数の開口29が、第2ケーシング12Bの上端部に形成され、第2ケーシング12Bを貫通している(
図3及び
図5参照)。支持部材40が、開口29の下方で第2ケーシング12Bの外面に取り付けられている(
図6参照)。ケーシング12の軸方向に伸びる貫通孔が支持部材40に形成される。
【0040】
軸受部62がケーシング12の下端部、すなわち、第1ケーシング12Aの下端部に設けられる。軸受部62は、第1ケーシング12Aの下端部に取り付けられた支持部材63にベアリング64により回転可能に取り付けられる。
【0041】
突起部46が、軸受部62の下端部に設けられ(
図3及び
図4参照)、第1ケーシング12Aの下方に向かって伸びている。突起部46の横断面積は、第1ケーシング12Aの下端から離れるに従って減少する。開口部13(
図2参照)が第1ケーシング12Aの下端部に形成される。開口部13はケーシング12の軸方向に伸びている。23は、開口部13の形成によって生じる、第1ケーシング12Aの周方向における端面である。
【0042】
噴射ノズル駆動機構19は、スイーベルユニット15、中継ボックス20、昇降テーブル35及びアーム部材45を有する(
図2及び
図4参照)。昇降テーブル35の上端部は、第1ケーシング12A内に設けられたボールネジ(図示せず)と噛み合うボールナットを有する支持板(図示せず)に取り付けられている。このボールネジの両端部が第1ケーシング12Aの内面に軸受により回転可能に取り付けられ、第1ケーシング12Aの内面に設置されたモータの回転軸がボールネジの一端部に連結されている(図示せず)。第1ケーシング12Aの軸方向に伸びる板状の昇降テーブル35の下端部は開口部13に位置している。一対のリンク21及び一対のリンク22のそれぞれの一端部が、別々に回転軸により回転可能に、昇降テーブル35の下端部に取り付けられる。一対のリンク21が取り付けられた回転軸は、昇降テーブル35に回転可能に取り付けられ、昇降テーブル35内に設けられたモータ(図示せず)により回転される。一対のリンク21及び一対のリンク22のそれぞれの他端部が、別々に回転軸により回転可能に、中継ボックス20に取り付けられる。これらの回転軸は、中継ボックス20に回転可能に取り付けられる。アーム部材45の一端部が中継ボックス20に取り付けられ、アーム部材45の他端部が中継ボックス20の下方に配置されたスイーベルユニット15のケーシング16に取り付けられる。アーム部材45及びスイーベルユニット15はケーシング12の外部に配置される。
【0043】
噴射ノズル14が、ケーシング16に回転可能に取り付けられた回転軸17に取り付けられている。ケーシング16内に設置されたモータ(図示せず)の回転軸が、減速機(図示せず)を介して回転軸17のケーシング16側の端部に連結される。回転軸17の他端部が、ケーシング16の側面に取り付けられた水受け部18内に挿入され、水受け部18に回転可能に取り付けられる。水受け部18と回転軸17の間には、水漏れを防止するためのシールが施されている。回転軸17の水受け部18の端部から噴射ノズル14に至る高圧水供給通路(図示せず)が、回転軸17内に形成されている。この高圧水供給通路は水受け部18内の水流入領域に連絡される。
【0044】
中継ブロック25が、中継ボックス20よりも上方の位置で第1ケーシング12A内に固定されている。高圧水供給通路(図示せず)が、中継ブロック25内にも形成される。高圧ホース27Aがケーシング12(第1ケーシング12A及び第2ケーシング12B)内に配置され、高圧ホース27Aの一端部が高圧水中ポンプ26に接続され、高圧ホース27Aの他端部が中継ブロック25に接続される(
図5参照)。この高圧ホース27Aは中継ブロック25内に形成された高圧水供給通路に連絡される。
【0045】
高圧ホース27Bが中継ボックス20を貫通しており、高圧ホース27Bの一端部が中継ブロック25に接続され、高圧ホース27Bの他端部が水受け部18に接続される(
図4参照)。高圧ホース27Bは中継ブロック25内に形成された高圧水供給通路と水受け部18内の水流入領域を連絡する。高圧ホース27Bは、逆U字状に配置されたケーブルベア(登録商標)24に取り付けられている。
【0046】
電力供給用のケーブル34はケーシング12内を通って中継ボックス20に接続される。このケーブル34は中継ボックス20内に設けられた第1開閉器(図示せず)を介してケーシング16内に設置された前述のモータに接続される。運転床10に設置された制御装置32に接続された制御ケーブル33もケーシング12内を通って中継ボックス20に接続され、第1開閉器に接続される。電力供給用のケーブル47が運転床10に置かれた第2開閉器48を介して高圧水中ポンプ26に接続される。制御装置32に接続された制御ケーブル36が第2開閉器48に接続される。
【0047】
WJP装置11を用いたウォータージェットピーニング方法を以下に説明する。このウォータージェットピーニング方法におけるWJP施工対象物は、例えば、制御棒駆動機構ハウジング7であり、WJP施工対象箇所は、例えば、スタブチューブ6と制御棒駆動機構ハウジング7の溶接部である。
【0048】
ある運転サイクルにおける沸騰水型原子力プラントの運転が停止され、沸騰水型原子力プラントの定期検査が実施される。この定期検査を開始するに際して、原子炉圧力容器1の上蓋が取り外され、冷却水が原子炉圧力容器1内及び原子炉ウェル9内に充填される。原子炉圧力容器1内の蒸気乾燥器(図示せず)及び気水分離器(図示せず)がそれぞれ取り外されて原子炉圧力容器1外に搬出される。炉心内の燃料集合体も原子炉圧力容器1から取り出され、燃料貯蔵プール(図示せず)に貯蔵される。燃料支持金具、制御棒及び制御棒案内管が、順次、原子炉圧力容器1外に取り出される。
【0049】
原子炉建屋内の天井クレーン(図示せず)に吊り下げられたWJP装置11が、冷却水31が充填された原子炉ウェル9内を下降し、原子炉圧力容器1内に達する。原子炉圧力容器1内を下降するWJP装置11は上部格子板4に形成された開口部内を通過する。WJP装置11の下降に伴って、WJP装置11のケーシング12の下端部は、炉心支持板5に形成されて燃料支持金具が挿入されていた開口部42を通って炉心支持板5よりも下方まで下降する。ケーシング12の下端部が、WJP施工対象物である一つの制御棒駆動機構ハウジング7の上端に着座される。
図2では、WJP装置11のスイーベルユニット15、中継ボックス20及びアーム部材45が第1ケーシング12Aの外面よりも外部に突出して表示されているが、これらの部材は、第1ケーシング12Aと共に炉心支持板5の開口部42を通過できるように、第1ケーシング12A内に収納されている。
【0050】
ケーシング12下端部の軸受部62が制御棒駆動機構ハウジング7の上端に着座されたとき、ケーシング12の下端部に設けられた突起部46が制御棒駆動機構ハウジング7の上端部内に挿入される(
図3及び
図4参照)。また、ケーシング12の上端部である第2ケーシング12Bに設けられた支持部材40が炉心支持板4の上面上に置かれ、炉心支持板4の上面に設けられた位置決めピン41が支持部材40に形成された貫通孔内に挿入される(
図6及び
図7参照)。位置決めピン41が支持部材40に係合されることにより、ケーシング12の位置ずれ、すなわち、ケーシング12の旋回が防止される。
【0051】
ケーシング12の旋回を防止する機構としては、
図6及び
図7に示す旋回防止機構以外に、
図8、
図9及び
図10に示す旋回防止機構または
図11、
図12及び
図13に示す旋回防止機構を用いてもよい。
【0052】
図8、
図9及び
図10に示す旋回防止機構は、第2ケーシング12Bに設けられた支持部材40Aにシリンダ(図示せず)を設け、このシリンダ内に設けたピストンに押し付け部材43を取り付けた構成を有する。WJP装置11のケーシング12が制御棒駆動機構ハウジング7の上端に着座したとき、炉心支持板4の上面に置かれた支持部材40Aの押し付け部材43が炉心支持板4に設けられた位置決めピン41に対向して配置される。支持部材40Aのシリンダ内に圧縮空気が供給されると、押し付け部材43が、位置決めピン41に向かって移動し、位置決めピン41に押し付けられる。このとき、第2ケーシング12Bの、支持部材40Aの位置とは180°反対側の外面が開口部42の内面に押し付けられ、第2ケーシング12Bの旋回が防止される。
【0053】
図11、
図12及び
図13に示す旋回防止機構は、第2ケーシング12Bに設けられた支持部材40Bに把持部材44A,44Bを回転可能に取り付け、これらの把持部材を回転させるシリンダ機構を有している。このシリンダ機構は支持部材40Bに設けられる。WJP装置11のケーシング12が制御棒駆動機構ハウジング7の上端に着座したとき、炉心支持板4に設けられた位置決めピン41が炉心支持板4の上面に置かれた支持部材40Bの把持部材44Aと把持部材44Bの間に配置される。シリンダ機構に圧縮空気が供給されると、把持部材44Aが
図13において時計方向に回転し、把持部材44Bが
図13において反時計方向に回転する。やがて、把持部材44A,44Bが位置決めピン41の外面に接触し、把持部材44A,44Bによって位置決めピン41が把持される。このため、第2ケーシング12Bの旋回が防止される。
【0054】
高圧水中ポンプ26の駆動及び停止は、制御装置32から制御ケーブル36に出力される制御信号によって第2開閉器48をON,OFFすることによって制御される。噴射ノズル14の、ケーシング12の軸方向における位置決め、及びWJP施工対象物である制御棒駆動機構ハウジング7に対する、噴射ノズル14の噴射角が、制御装置32から制御ケーブル33に出力される制御信号によって制御される。
【0055】
噴射ノズル14の、ケーシング12の軸方向における位置決めは、噴射ノズル駆動機構19によって噴射ノズル14をケーシング12の軸方向において移動させることによって行われる。すなわち、第1ケーシング12A内に設置されたボールネジがモータにより回転されると、このボールネジに噛み合うボールナットを有する支持板が第1ケーシング12Aの軸方向に移動し、昇降テーブル35及びアーム部材45も第1ケーシング12Aの軸方向に移動する。この移動により、噴射ノズル14の噴射口が、WJP施工箇所である制御棒駆動機構ハウジング7とスタブチューブ6との溶接部の外面付近に位置決めされる。昇降テーブル35及びアーム部材45が第1ケーシング12Aの軸方向に移動するとき、この移動に合せて、第1ケーシング12A内に逆U字状に配置されたケーブルベア24の逆U字の頂部の位置も、その軸方向に移動する。WJP施工箇所がスタブチューブ6と原子炉圧力容器1の溶接部である場合には、ボールネジの回転により昇降テーブル35及びアーム部材45がさらに下降され、噴射ノズル14の噴射口がスタブチューブ6と原子炉圧力容器1の溶接部の位置に合せられる。
【0056】
噴射ノズル14の水平方向における位置決めは以下のように行われる。昇降テーブル35内に設けられたモータを回転させて一対のリンク21のそれぞれの一端部が取り付けられた回転軸を回転させる。これにより、一対のリンク21が第1ケーシング12Aの軸方向において回転され、中継ボックス20を第1ケーシング12Aに近づける(または遠ざける)ように移動させる。なお、一対のリンク21が回転すると、従動リンクである一対のリンク22もリンク21と同様に回転する。一対のこのようなリンク21,22の回転によっても、アーム部材45は昇降テーブル35と平行な状態に保持される。一対のリンク21及び一対のリンク22は、平行リンク機構を構成している。この結果、スイーベルユニット15に取り付けられた噴射ノズル14が水平方向に移動し、噴射ノズル14の噴射口とWJP施工箇所(制御棒駆動機構ハウジング7とスタブチューブ6の溶接部)の間の水平方向の距離を所定の距離に合せることができる。
【0057】
制御棒駆動機構ハウジング7に対する、噴射ノズル14の噴射角は、制御装置32から制御ケーブル33に出力される制御信号によって第1開閉器をONしてケーシング16内に設けられたモータを駆動することによって調節される。第1開閉器がONすると、ケーブル34を介して供給される電力がそのモータを回転させる。回転軸17が回転するため、噴射ノズル14が回転軸17を中心に回転される。噴射ノズル14の噴射口が制御棒駆動機構ハウジング7とスタブチューブ6との溶接部を向いたとき、第1開閉器がOFFされ、モータによる回転軸17の回転が停止される。噴射ノズル14の状態は、第1ケーシング12Aに設けられた監視カメラ(図示せず)によって監視される。
【0058】
制御信号が制御装置32から制御ケーブル36に出力されたとき、第2開閉器48がONされる。電力がケーブル47を通して高圧水中ポンプ26に供給され、高圧水中ポンプ26が駆動される。原子炉圧力容器1内の冷却水31が、吸い込み口30から吸引され、高圧水中ポンプ26で昇圧される。高圧水中ポンプ26から吐出された高圧水は、高圧ホース27A、中継ブロック25内の高圧水供給通路、高圧ホース27B、水受け部18内の水流入領域及び回転軸17内の高圧水供給通路を通して噴射ノズル14に供給される。この高圧水は、微細な無数の気泡を含んだキャビテーション噴流37として噴射ノズルから噴射される。キャビテーション噴流37に含まれた気泡が潰れて発生した衝撃波が、制御棒駆動機構ハウジング7とスタブチューブ6との溶接部の表面に衝突する。これにより、この溶接部の表面に圧縮残留応力が付与される。
【0059】
制御棒駆動機構ハウジング7とスタブチューブ6との溶接部は、制御棒駆動機構ハウジング7の全周に亘って存在するため、WJPをこの溶接部の全周に亘って実施する場合には、キャビテーション噴流37を噴射している噴射ノズル14を、その溶接部に沿って制御棒駆動機構ハウジング7の回りを旋回させる必要がある。この噴射ノズル14の旋回は、旋回装置53を用いて行われる。モータ54が駆動されると、モータ54の回転力が減速装置55を介して歯車56に伝えられ、歯車56が回転される。このため、歯車56により旋回軸57が回転し、第1ケーシング12Aが回転する。第1ケーシング12Aの回転により、キャビテーション噴流37を噴射している噴射ノズル14が、制御棒駆動機構ハウジング7の周囲を旋回し、その溶接部に沿って移動する。高圧ホース27A、制御ケーブル33及びケーブル34のねじりを防止するために、モータ54は正転及び逆転を交互に繰り返す。このため、噴射ノズル14は、キャビテーション噴流37を噴射しながら、制御棒駆動機構ハウジング7の周囲を、時計回りに180°及び反時計回りに180°の旋回を繰り返すことになる。このようにして、制御棒駆動機構ハウジング7とスタブチューブ6との溶接部の全周に亘って、この溶接部の表面及び熱影響部の表面に圧縮残留応力を付与することができる。なお、モータ54が駆動したとき、第2ケーシング12B及び高圧水中ポンプ26は旋回しない。
【0060】
本実施例によれば、高圧水中ポンプ26が、噴射ノズル14が設けられた、WJP装置11の構成部材であるケーシング12に設置されているので、高圧水中ポンプ26から噴射ノズル14に高圧水を供給する高圧ホース27A,27Bを、WJP装置11、具体的にはケーシング12に設けることができる。このため、原子炉ウェル9及び原子炉圧力容器1内におけるWJP装置11の移動を速く行うことができ、WJP装置11をWJP施工対象物の位置に設定するのに要する時間を著しく短縮することができる。
【0061】
特許第2859125号公報に記載されたウォータージェットピーニング方法では、運転床に設置された高圧ポンプと噴射ノズルを接続する高圧ホースの長さが50〜100m程度にもなり、高強度で曲がりづらい高圧ホースによる制約を受けて、WJP装置の、噴射ノズルを設けたケーシング12をWJP施工対象箇所まで移動させるのに長時間を要していた。しかしながら、本実施例では、高圧水中ポンプ26がケーシング12に取り付けられているため、WJP装置11の移動が特許第2859125号公報のように高圧ホースによる制約を受けなく、WJP装置11を速く移動させることができる。
【0062】
本実施例では、WJP施工対象物へのWJP施工の終了後において、WJP装置11を運転床まで回収するのに要する時間も短縮することができる。
【0063】
したがって、本実施例は、WJP施工作業に要する時間を著しく短縮することができる。
【0064】
高圧水中ポンプ26がケーシング12の上端に設けられているので、沸騰水型原子力プラントにおいて、WJP装置11が上部格子板4に形成された開口部を容易に通過することができる。
【0065】
また、特許第2859125号公報に記載されたウォータージェットピーニング方法では、50〜100m程度の高圧ホースによる圧力損失が、10MPa程度となる。このため、その従来のウォータージェットピーニング方法では、高圧ホースの圧力損失を見込んで、高圧ポンプの仕様を設定する必要があり、高圧ホースの圧力損失の分だけ高圧ポンプの運転効率が低下する。本実施例では、ケーシング12内に配置される高圧ホース27A,27Bの合計長さは、従来の50〜100mに比べれば非常に短くなる。このため、高圧ホースによる圧力損失が著しく低下し、高圧水中ポンプ26の運転効率を高めることができる。
【0066】
本実施例では、高圧水中ポンプ26と噴射ノズル14を接続する高圧ホース27A,27Bがケーシング12内に配置され、高圧ホース27Bのケーシング12外に配置される部分もケーブルベア24に取り付けられているので、WJP装置11の、上部格子板4に形成された開口部及び炉心支持板5の開口部42の通過もスムーズに行うことができ、WJP施工作業に要する時間をさらに短縮することができる。
【0067】
本実施例では、高圧水中ポンプ26で昇圧した、原子炉圧力容器1内の冷却水31を、噴射ノズル14から、原子炉圧力容器1内のWJP施工対象箇所に向かって噴射する。このように、本実施例では、WJPを施工する際に原子炉圧力容器1内の冷却水31を循環して噴射ノズル14から噴射させることができる。このため、噴射ノズル14に供給する冷却水の管理が不要になる。
【0068】
本実施例では、原子炉圧力容器1内におけるWJP施工作業に噴射ノズル14を設けたケーシング12に高圧水中ポンプ26を設置したWJP装置11を用いるので、複数台のWJP装置11を複数の制御棒駆動機構ハウジング7のそれぞれの上端に別々に着座させ、複数の制御棒駆動機構ハウジング7に対するWJP施工作業を並行して行うことができる。これにより、原子炉圧力容器1に設けられた全制御棒駆動機構ハウジング7に対するWJP施工作業をより短時間で終了することができる。また、ケーシング12に高圧水中ポンプ26を設置したWJP装置11であれば、一度に使用するWJP装置11の台数を容易に増加することができる。
【0069】
前述の従来のWJP施工作業に用いる高圧ポンプは、長い高圧ホースの圧力損失を考慮して、所要動力約100kWの高圧ポンプを使用するため、高圧ポンプに電力を供給する電源として、電圧440Vの仮設電源が必要となる。しかしながら、本実施例では、ケーシング12に高圧水中ポンプ26を設置しているため、高圧水中ポンプ26の所要動力が22kW以下であれば、高圧水中ポンプ26への供給電圧は200Vで良い。このため、高圧水中ポンプ26の所要動力を22kW以下にすれば、原子炉建屋内の200V電源の増設工事を実施すれば良く、従来のような仮設電源工事が不要になる。
【0070】
WJP装置11を用いてスタブチューブ6と原子炉圧力容器1の下鏡部2の溶接部の表面に対してWJPを施工してもよい。
【実施例3】
【0076】
実施例1ではケーシングの上端に高圧ポンプを設置したWJP装置を用いて制御棒駆動機構ハウジング7とスタブチューブ6の溶接部の表面に対するWJP施工作業を実施したが、原子炉圧力容器1内で炉心を取り囲んでいる、上部格子板4と炉心支持板5の間における炉心シュラウドの溶接部に対してもWJP施工作業を実施することができる。
【0077】
炉心シュラウドの溶接部に対してWJP施工作業を実施する、本発明の他の好適な実施例である実施例3のウォータージェットピーニング方法を以下に説明する。
【0078】
本実施例のウォータージェットピーニング方法に使用されるWJP装置は、WJP装置11において第1ケーシング12A及び第2ケーシング12Bを一体化したケーシング12を有し、さらにWJP装置11とは噴射ノズル駆動機構が異なっている。筒状体であるケーシング12の横断面は、上部格子板4に形成された矩形の開口部に合せて矩形となっている。本実施例に用いるWJP装置の他の構成はWJP装置11と同じであり、第1ケーシング12Aが回転しない。
【0079】
本実施例で使用されるWJP装置のノズル駆動機構は、ボールネジ、ボールネジを回転させる第1モータ、ボールネジに噛み合うボールナットに取り付けられた昇降部材、レール部材、昇降部材に取り付けられてレール部材をボールネジと直交する方向に移動させる前後駆動装置、及び第2モータを有している。レール部材は水平方向と垂直方向の90°の範囲において回転できるように昇降部材に取り付けられており、第2モータはレール部材を上記した90°の範囲で時計方向及び反時計方向に回転させる装置である。噴射ノズル14はレール部材のレール上に移動可能に設置されている。
【0080】
ボールネジは、ケーシング12内に回転可能に設けられ、ケーシング12の軸方向においてケーシング12の下端からケーシング12の上端部まで伸びている。ケーシング12内でケーシングの上端部に設置された第1モータの回転軸が減速機を介してボールネジの上端部に連結される。昇降部材を取り付けたボールナットがボールネジと噛み合っている。ボールネジの回転に伴う昇降部材の回転を防止するガイド棒が、昇降部材を貫通してケーシング12内に設置され、ボールネジと平行に配置されている。WJP装置11と同様に一端が中継ブロック25に接続されてケーブルベア24に取り付けられた高圧ホース27Bの他端が、旋回板に取り付けられた噴射ノズル14に接続される。本実施例で用いられるWJP装置のケーシング12に形成される開口部13は、WJP装置11と異なり、ケーシング12の下端からボールネジの上端付近まで伸びている。
【0081】
炉心支持板5よりも
上方において炉心シュラウド3の溶接部に対してWJPを実施する場合には、本実施例で用いる上記したWJP装置(以下、第1WJP装置という)は、原子炉容器1内を下降されて上部格子板4に形成された矩形の開口部内を下降する。第1WJP装置が上部格子板4の開口部を通過するとき、レール部材は、垂直状態になっており、ケーシング12の軸心と平行になっている。ケーシング12の下端部が所定の制御棒
案内管(制御棒ガイドチュー
ブ)に着座され、ケーシング12の上端部が上部格子板4に形成された矩形の開口部内に挿入されている。横断面が矩形のケーシング12が上部格子板4のその開口部に挿入されているため、ケーシング12が回転することはない。
【0082】
第1WJP装置が制御棒
案内管(または炉心支持板)に着座した後、第2モータを駆動してレール部材を回転させ、レール部材を水平状態にする。このとき、ケーシング12の開口部13は炉心シュラウド3の内面と対向しており、レール部材に設けられたレール上に移動可能に設置されている噴射ノズル14の噴射口は炉心シュラウド3の内面に面している。第1モータを駆動してボールネジを回転させ、昇降部材をケーシング12の軸方向における所定位置まで移動させる。この昇降部材の移動によって、噴射ノズル14の噴射口が、ケーシング12の軸方向において、WJPの施工対象の溶接部の位置に位置決めされる。
【0083】
次に、昇降部材に設けられた前後駆動装置を駆動させてレール部材を炉心シュラウドの半径方向に移動させることにより、噴射ノズル14の噴射口と炉心シュラウド内面のと間の距離、すなわち、噴射距離が設定距離に調節され、噴射ノズル14の炉心シュラウドの半径方向における位置決めがなされる。
【0084】
高圧水中ポンプ26を駆動することによって原子炉圧力容器1内の冷却水31が昇圧されて高圧水になり、この高圧水が高圧ホース27A,27Bを通って噴射ノズル14に供給され、噴射ノズル14から噴射される。キャビテーション噴流を噴射している噴射ノズル14をレール部材のレールに沿って炉心シュラウドの周方向に移動させる。レール部材は炉心シュラウドの内面の曲率に合せて扇形をしているので、噴射ノズル14を炉心シュラウドの周方向において或る距離、例えば、複数セル亘って移動させることができる。キャビテーション噴流を噴射している噴射ノズル14と炉心シュラウドの内面との間に距離が、一定になるように、前後駆動装置の駆動により調節される。噴射ノズル14は、レール部材上を、高圧水であるキャビテーション噴流を炉心シュラウド3の溶接部の内面に向って噴射しながら炉心シュラウドの周方向に所定の距離だけ移動する。キャビテーション噴流に含まれた各気泡が潰れ、衝撃波が発生する。発生した各衝撃波が炉心シュラウド3の溶接部の内面に衝突して、その内面に圧縮残留応力が付与される。噴射ノズル14を設けた旋回板の旋回により、炉心シュラウド3の周方向において、その所定の角度範囲内でその溶接部の内面に圧縮残留応力が付与される。炉心シュラウドの周方向においてその所定の距離の範囲内でその溶接部の内面に圧縮残留応力が付与された後、本実施例で用いられる第1WJP装置が、上方に移動されて上部格子板4の開口部から引き抜かれ、炉心シュラウド3の周方向において移動され、上部格子板4の、所定の他の開口部を通して下降され、他の制御棒
案内管(または炉心支持板)に着座される。この位置で、前述したように、噴射ノズル14からキャビテーション噴流を噴射しながら噴射ノズル14を炉心シュラウドの周方向に移動させる。この結果、前述の圧縮残留応力が付与された溶接部の内面に連続して次の所定角度範囲の溶接部の内面に圧縮残留応力が付与される。このように、第1WJP装置を炉心シュラウド3の周方向において隣接している制御棒駆動機構ハウジング7に順番に着座させて所定角度範囲内にキャビテーション噴流を噴射することによって、炉心シュラウド3の周方向に伸びる溶接部の内面の全周に亘って連続して圧縮残留応力を付与することができる。
【0085】
また、本実施例において、炉心支持板5よりも上方で炉心シュラウド3の溶接部の内面にWJPを施工する場合には、第2WJP装置のケーシング12の下端の突起部46が炉心支持板5の開口部42内に挿入され、ケーシング12の下端が制御棒駆動機構
ハウジングの上面に着座される。ケーシング12の上端部は、上部格子板4の開口部内に挿入されており、上部格子板4に支持される。ケーシング12の上端に設置された高速水中ポンプ26は、上部格子板4よりも上方に配置される。第2WJP装置を用いたWJPが、第1WJP装置を用いたWJPと同様に、炉心シュラウド3の溶接部の内面に対して実施される。
【0086】
さらに、本実施例において、実施例1で用いるWJP装置11を用いることによって、炉心シュラウド3へのWJPの実施と並行して、制御棒駆動機構ハウジング7とスタブチューブ6の溶接部へのWJPを実施することができる。
【0087】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。