(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から自動車エンジン等から排出された排ガスを浄化するための触媒としては、三元触媒や窒素酸化物(NO
x)吸蔵還元型触媒等の種々の排ガス浄化用触媒が用いられている。しかしながら、このような排ガス浄化用触媒においては、酸素の含有率が高いリーン排ガス中でのNO
xの還元反応が十分に進行しないという問題があった。
【0003】
また、リーン排ガス中においても比較的効率よくNO
xの還元反応を行うことができる触媒として、ゼオライトと、そのゼオライトに担持された金属とを含むNO
x還元触媒が開発されているが、このようなNO
x還元触媒は還元剤となる炭化水素(HC)の共存下でNO
xの還元反応を行うため、HC/NO
x比が低くなると十分な還元能が発揮されなくなるという問題を有していた。
【0004】
そこで、NO
xの還元能を向上させることを目的とした触媒や排ガス浄化用装置に関する開発がなされており、例えば、特開2000−42415号公報(特許文献1)には、HC改質材としてリン酸塩を含む第1触媒層とNO
x還元成分としてロジウム成分を含む第2触媒層とを積層してなるNO
x浄化用触媒が記載されている。さらに、特開2000−135419号公報(特許文献2)、特開2000−170522号公報(特許文献3)、及び特開2000−297627号公報(特許文献4)には、排ガス流路の上流側にゼオライトを含有するHC吸着放出材を設置し、その下流側にNO
x吸着還元材を配置してなる排ガス浄化システムが記載されており、前記HC吸着放出材には、アルミナ等の無機酸化物担体に担持されたNO
x還元成分及び/又はリン酸塩が添加されることが記載されており、前記NO
x吸着還元材には、白金及び/又はロジウムとNO
x吸着成分とが含有されることが記載されている。特許文献1〜4に記載されている触媒や排ガス浄化用装置は、排ガス中のHCを銅、銀、マグネシウム等のリン酸塩により改質し、NO
xの還元剤として利用するものである。
【0005】
また、水素の有効活用によってNO
xの還元能を向上させることを目的として、特開2007−132355号公報(特許文献5)、特開2007−132356号公報(特許文献6)、及び特開2002−364343号公報(特許文献7)には、排ガス浄化用装置において、排ガス流路上の水素富化手段と、その後に配置されたNO
x浄化触媒と、さらにその後に配置されたHCトラップ触媒とを組み合わせ、前記水素富化手段において、貴金属を含有する貴金属触媒により排ガス中のHC及び一酸化炭素(CO)を酸化して水素を生成させることや、ジルコニウム酸化物を含有するHC・CO酸化触媒により水素以外の還元成分を減らすことが記載されている。また、前記NO
x浄化触媒としては、白金等の貴金属と吸着材とを有する触媒が記載されている。
【0006】
さらに、特開平8−103656号公報(特許文献8)には、炭化水素酸化触媒の下流側にNO
x分解触媒を配置してなる排気ガス浄化用連結触媒が記載されており、前記炭化水素酸化触媒及びNO
x分解触媒としては、耐火性の多孔質担体に白金等の貴金属を担持させてなる触媒が記載されている。また、炭化水素改質方法としては、例えば、特開2005−306630号公報(特許文献9)において、多孔質酸化物よりなる担体とロジウムを含む触媒金属とからなる炭化水素改質触媒の反応系をプラズマ状態とする方法が記載されている。
【0007】
しかしながら、従来の触媒や排ガス浄化用装置においては、NO
xを還元させるためにロジウムや白金等の貴金属を用いる必要があり、また、特許文献8〜9に記載の触媒においては、炭化水素を改質するためにも貴金属を用いる必要があり、コストが高くなるという問題を有していた。さらに、貴金属を含有しない炭化水素改質用触媒においては、炭化水素の転化率が未だ十分ではなく、特に、従来の排ガス浄化用装置において、NO
x還元触媒として触媒活性金属種を貴金属から卑金属に代えた触媒と組み合わせて用いると、十分な排ガス浄化作用が発揮されないという問題を有していた。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。先ず、本発明の炭化水素改質用触媒及びその製造方法について説明する。すなわち、本発明の炭化水素改質用触媒は、アルミナの含有量が70質量%以上である金属酸化物担体と、前記金属酸化物担体に担持された酸化鉄及び酸化銅とを備え、前記酸化鉄の金属換算での担持量が前記金属酸化物担体100質量部に対して1.0〜15.0質量部であり、前記酸化銅の金属換算での担持量が前記金属酸化物担体100質量部に対して0.5〜5.0質量部であり、かつ、貴金属を含有しないことを特徴とするものである。
【0021】
本発明の炭化水素改質用触媒は炭化水素改質反応活性により十分に高い炭化水素転化率を達成することができかつ窒素酸化物還元作用も有する。本発明において、炭化水素の転化とは、炭化水素(C
xH
y)を一酸化炭素(CO)及び水素(H
2)に転化することをいう。このような炭化水素の転化反応としては、次式:C
xH
y+xH
2O→xCO+(y/2+x)H
2 で表わされる水蒸気改質反応、及び次式:C
xH
y+(x/2)O
2→xCO+(y/2)H
2 で表わされる部分酸化反応等が挙げられる。
【0022】
本発明に係る金属酸化物担体においては、アルミナ(Al
2O
3)の含有量が70質量%以上である。アルミナの含有量が前記下限未満である場合には、十分な炭化水素改質反応活性が発揮されず、炭化水素の転化率が低下する。また、前記アルミナの含有量としては、炭化水素の転化率がより向上する傾向にあるという観点から、75質量%以上であることが特に好ましい。
【0023】
前記金属酸化物担体としては、多孔質体であることが好ましく、具体的には、比表面積が100m
2/g以上(より好ましくは150m
2/g以上)であることが好ましい。比表面積が前記下限未満であると、酸化鉄粒子及び酸化銅粒子が安定に保持されず、触媒活性が低下する傾向にある。本発明において、比表面積は窒素吸着法で得られた窒素吸着等温線からBET等温吸着式により求めることができ、例えば、全自動表面積計(Micro Data社製)を用いて測定することにより求めることができる。
【0024】
また、前記金属酸化物担体の形態は特に限定されないが、例えば粒子状である場合には、平均一次粒子径が0.1μm以下であることが好ましい。平均一次粒子径が前記上限を超えると、酸化鉄粒子と酸化銅粒子との適度な電気的相互作用を維持したままこれらを保持することが困難となる傾向にある。なお、本発明において、粒子の平均一次粒子径は任意の100個以上の粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定して各粒子の一次粒子径を求め、その値を平均化することにより求めることができる。また、このような粒子径は、粒子の断面の最大直径を意味し、粒子の断面が円形ではない場合には、その粒子の断面の最大の外接円の直径とする。
【0025】
本発明に係る金属酸化物担体としては、ジルコニア、セリア、チタニア、シリカ、マグネシア、ゼオライト等を含有していてもよく、これらのうちの1種を単独で含有していても2種以上を組み合わせて含有していてもよい。また、これらの他の金属酸化物を含有する場合は、アルミナとこれらのうちの1種又は2種以上の金属酸化物とからなる複合酸化物であっても固溶体であっても混合物であってもよい。
【0026】
このような金属酸化物担体の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、アルミニウム(Al)、及び必要に応じてジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、チタン(Ti)等を含有する水溶液を用い、アンモニアの存在下で前記金属元素の共沈殿物を生成せしめ、得られた共沈殿物を濾過、洗浄した後に乾燥し、さらに焼成することによって金属酸化物からなる多孔質体を得る方法(共沈法)を採用することができる。また、このような金属酸化物担体としては、市販のものを適宜用いてもよい。
【0027】
本発明に係る酸化鉄としては、特に制限されず、例えば、酸化鉄(II)(FeO)、酸化鉄(II,III)(Fe
3O
4)、酸化鉄(III)(Fe
2O
3)が挙げられ、これらの中でも、中間的な酸化状態を有し、酸化反応及び還元反応のいずれの反応に対しても触媒活性を発揮する傾向にあるという観点から、Fe
3O
4が好ましい。
【0028】
前記酸化鉄の形態としては、酸化、還元を繰り返すことが容易であるという観点から、粒子状であることが好ましく、平均一次粒子径が5〜70nmであることが好ましい。平均一次粒子径が前記下限未満であると、金属酸化物担体との親和性が強くなり過ぎて活性点として十分に機能しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒反応の活性点が不足し、活性が低下する傾向にある。
【0029】
本発明に係る酸化銅としては、特に制限されず、例えば、酸化銅(I)(Cu
2O)、酸化銅(II)(CuO)が挙げられ、これらの中でも、中間的な酸化状態を有し、酸化反応及び還元反応のいずれの反応に対しても触媒活性を発揮する傾向にあるという観点から、Cu
2Oが好ましい。また、これと同様の観点から、前記酸化銅の形態としては、粒子状であることが好ましく、平均一次粒子径が5〜70nmであることが好ましい。平均一次粒子径が前記下限未満であると金属酸化物担体との親和性が強くなり過ぎて活性点として十分に機能しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒反応の活性点の数が不足し、触媒活性が低下する傾向にある。
【0030】
本発明の炭化水素改質用触媒において、前記酸化鉄の金属換算での担持量としては、前記金属酸化物担体100質量部に対して1.0〜15.0質量部であることが必要である。担持量が前記下限未満である場合、及び、前記上限を超える場合にはいずれも、十分な炭化水素改質反応活性が発揮されず、炭化水素の転化率が低下する。また、前記酸化鉄の金属換算での担持量としては、酸化鉄粒子の過剰な凝集を抑制することができ、かつ、十分な数の活性点を確保することができる傾向にあるという観点から、前記金属酸化物担体100質量部に対して1.0〜10.0質量部であることが特に好ましい。
【0031】
また、本発明の炭化水素改質用触媒において、前記酸化銅の金属換算での担持量としては、前記金属酸化物担体100質量部に対して0.5〜5.0質量部であることが必要である。担持量が前記下限未満である場合、及び、前記上限を超える場合にはいずれも、十分な炭化水素改質反応活性が発揮されず、炭化水素の転化率が低下する。また、前記酸化銅の金属換算での担持量としては、酸化銅粒子の過剰な凝集を抑制することができ、かつ、十分な数の活性点を確保することができる傾向にあるという観点から、前記金属酸化物担体100質量部に対して1.0〜4.0質量部であることが特に好ましい。
【0032】
さらに、本発明の炭化水素改質用触媒において、前記酸化鉄の金属換算での担持量と前記酸化銅の金属換算での担持量との質量比(酸化鉄/酸化銅)としては、1.0〜10.0の範囲内にあることが好ましく、1.0〜8.0の範囲内にあることがより好ましい。前記担持量の質量比が前記下限未満である場合、及び、前記上限を超える場合にはいずれも、十分な炭化水素改質反応活性が発揮されず、炭化水素の転化率が低下する傾向にある。
【0033】
本発明の炭化水素改質用触媒は、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Ru、Os等の貴金属を含有しないことを特徴とする。本発明の炭化水素改質用触媒としては、このような貴金属を含有していてもよいが、前記貴金属を含有しなくとも十分な炭化水素改質反応活性を発揮することができるため、貴金属を用いることによるコストを低減させることが可能となる。また、本発明の炭化水素改質用触媒としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、Ni、Co、Mn等をさらに含有していてもよい。
【0034】
本発明の炭化水素改質用触媒の製造方法としては、先ず、鉄(Fe)を含有する第1の化合物と、銅(Cu)を含有する第2の化合物とを含む水溶液を準備し、次いで、前記金属酸化物担体からなる粉末に前記水溶液を接触せしめた後に焼成することにより、前記金属酸化物担体の表面に酸化鉄及び酸化銅が上記担持量で担持された炭化水素改質用触媒を得る方法が挙げられる。具体的には、本発明の炭化水素改質用触媒の製造方法は、第1の化合物及び第2の化合物を含有する水溶液を金属酸化物担体に接触させて前記第1の化合物及び前記第2の化合物が前記金属酸化物担体に担持された触媒前駆体を得る担持工程と、前記触媒前駆体を焼成せしめる焼成工程とを含む炭化水素改質用触媒の製造方法であって、
前記第1の化合物が鉄を含有するものであり、前記第2の化合物が銅を含有するものであり、前記金属酸化物担体におけるアルミナの含有量が70質量%以上であり、前記水溶液が貴金属を含有しないものであり、かつ、
前記担持工程において、鉄の担持量が前記金属酸化物担体100質量部に対して1.0〜15.0質量部、及び、銅の担持量が前記金属酸化物担体100質量部に対して0.5〜5.0質量部となるように前記第1の化合物及び前記第2の化合物を前記金属酸化物担体に担持させ、前記焼成工程において、前記触媒前駆体を500〜1100℃の範囲内の温度で焼成せしめることによって上記本発明の炭化水素改質用触媒を得ることを特徴とする。
【0035】
前記第1の化合物としては、鉄、及び鉄の酸化物;水酸化物、塩化物、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩、有機酸塩等の塩が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記第2の化合物としては、銅、及び銅の酸化物;水酸化物、塩化物、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩、有機酸塩等の塩が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、前記第1の化合物及び前記第2の化合物としては、酸化鉄粒子及び酸化銅粒子の凝集をより十分に抑制することができ、かつ、塩化物、硫酸塩等の残留により活性点が被毒されることを防止するという観点から、それぞれ、硝酸塩であることが好ましい。また、前記金属酸化物担体としては、前述のとおりである。
【0036】
さらに、前記水溶液としては、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Ru、Os等の貴金属を含有しない。前記水溶液としては、このような貴金属を含有していてもよいが、前記貴金属を水溶液に含有させて該貴金属を前記金属酸化物担体に担持させなくとも、得られる炭化水素改質用触媒において十分な炭化水素改質反応活性を発揮させることができるため、貴金属を用いることによるコストを低減させることが可能となる。また、前記水溶液としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、Ni、Co、Mn等を含有する化合物をさらに含んでいてもよい。
【0037】
前記担持工程において、前記第1の化合物と前記第2の化合物とを含む水溶液を前記金属酸化物担体粉末に接触せしめる方法としては、特に制限されず、前記水溶液に前記金属酸化物担体粉末を含浸せしめる方法等、公知の方法を適宜採用できる。また、本発明においては、前記水溶液中における前記第1の化合物及び前記第2の化合物の濃度や接触の条件等を適宜調整することにより、前記担持工程において、鉄の担持量が前記金属酸化物担体100質量部に対して1.0〜15.0質量部(好ましくは1.0〜10.0質量部)、及び、銅の担持量が前記金属酸化物担体100質量部に対して0.5〜5.0質量部(好ましくは1.0〜4.0質量部)となるように前記第1の化合物及び前記第2の化合物を前記金属酸化物担体に担持させる。これにより、得られる触媒における酸化鉄の金属換算での担持量を前記金属酸化物担体100質量部に対して1.0〜15.0質量部(好ましくは1.0〜10.0質量部)、及び、酸化銅の金属換算での担持量を前記金属酸化物担体100質量部に対して0.5〜5.0質量部(好ましくは1.0〜4.0質量部)とすることができる。
【0038】
前記焼成工程において、前記焼成の温度としては、大気中において、500〜1100℃の範囲内であり、500〜900℃であることが好ましい。焼成の温度が前記下限未満では、金属酸化物担体において熱劣化による比表面積の減少量が大きくなり、他方、前記上限を超える場合には、熱劣化が進行して酸化鉄粒子及び酸化銅粒子が粒成長し、担体表面における分散性が低下する。また、前記焼成の温度としては、さらに高い炭化水素改質反応活性を発揮することができ、CO
2までの優れた完全酸化活性を発揮することができる炭化水素改質用触媒を得られるという観点からも、本発明の製造方法に後述の高温処理工程をさらに含む場合には、500〜900℃の範囲内であることがさらに好ましい。さらに、前記焼成の加熱時間としては、特に制限されず、前記焼成の温度によって異なるものであるため一概には言えないが、3〜20時間であることが好ましい。
【0039】
また、本発明の炭化水素改質用触媒の製造方法としては、前記焼成工程の後に、前記焼成後の炭化水素改質用触媒をリッチ雰囲気において500〜1100℃の範囲内の温度で0.1〜30分間加熱する工程と、前記焼成後の炭化水素改質用触媒をリーン雰囲気において500〜1100℃の範囲内の温度で0.1〜30分間加熱する工程とを含むリッチ/リーン変動雰囲気処理工程をさらに含むことが好ましい。本発明者らは、このようなリッチ/リーン変動雰囲気処理工程をさらに施すことにより、前記焼成工程、あるいは、後述する高温処理工程において金属酸化物担体と固溶した酸化鉄粒子及び酸化銅粒子を再析出化させることができるため、さらに高い炭化水素改質反応活性を発揮することができ、CO
2までの優れた完全酸化活性を発揮することができる炭化水素改質用触媒を得ることが可能となるものと推察する。
【0040】
本発明において、リッチ雰囲気とは、還元雰囲気、すなわち、還元性ガスが酸素、窒素酸化物等の酸化性ガスに対して量論的に過剰である雰囲気のことをいう。このような還元雰囲気としては、前記焼成後の炭化水素改質用触媒を加熱する雰囲気中の還元性ガス濃度が0.1容量%以上にあることが好ましく、0.5〜4.0容量%にあることがより好ましい。前記還元性ガス濃度が前記下限未満であると、酸化鉄粒子及び酸化銅粒子の再析出が不十分となって炭化水素改質反応活性の向上効果が十分に発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、酸化鉄粒子及び酸化銅粒子が凝集して十分な炭化水素改質反応活性が発揮されなくなる傾向にある。前記還元性ガスとしては、水素、一酸化炭素、炭化水素等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、一酸化炭素が好ましい。
【0041】
また、本発明において、リーン雰囲気とは、酸化雰囲気、すなわち、酸化性ガスが前記還元性ガスに対して量論的に過剰である雰囲気のことをいう。このような酸化雰囲気としては、前記焼成後の炭化水素改質用触媒を加熱する雰囲気中の酸化性ガス濃度が0.05容量%以上にあることが好ましく、0.2〜5.0容量%にあることがより好ましい。前記酸化性ガス濃度が前記下限未満であると、酸化鉄粒子及び酸化銅粒子の再析出が不十分となって炭化水素改質反応活性の向上効果が十分に発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、酸化鉄粒子及び酸化銅粒子が凝集して十分な炭化水素改質反応活性が発揮されなくなる傾向にある。前記酸化性ガスとしては、酸素、一酸化窒素等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、酸素が好ましい。
【0042】
また、前記リッチ雰囲気及び前記リーン雰囲気における加熱温度としては、それぞれ独立に、500〜1100℃の範囲内であることが必要である。加熱温度が前記下限未満であると、酸化鉄粒子及び酸化銅粒子の再析出が不十分となって炭化水素改質反応活性の向上効果が十分に発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、酸化鉄粒子及び酸化銅粒子が凝集して十分な炭化水素改質反応活性が発揮されなくなる傾向にある。また、より効率よく酸化鉄粒子及び酸化銅粒子を再析出させることが可能であるという観点から、このような加熱温度としては、それぞれ、600〜900℃の範囲内であることが特に好ましい。
【0043】
さらに、前記リッチ雰囲気及び前記リーン雰囲気における加熱時間としては、それぞれ独立に、0.1〜30分間の範囲内であることが必要である。加熱時間が前記下限未満であると、酸化鉄粒子及び酸化銅粒子の再析出が不十分となって炭化水素改質反応活性の向上効果が十分に発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、酸化鉄粒子及び酸化銅粒子が凝集して十分な炭化水素改質反応活性が発揮されなくなる傾向にある。また、より効率よく酸化鉄粒子及び酸化銅粒子を再析出させることが可能であるという観点から、このような加熱時間としては、それぞれ、1〜20分間の範囲内であることが特に好ましい。
【0044】
前記リッチ/リーン変動雰囲気処理工程において、前記リッチ雰囲気における加熱工程及び前記リーン雰囲気における加熱工程の順序は特に制限されず、いずれの工程が先であってもよく、各工程をそれぞれ複数回繰り返してもよいが、さらに高い炭化水素改質反応活性を発揮することができ、優れた完全酸化活性を発揮することができる炭化水素改質用触媒をより効率よく得ることが可能となるという観点から、先ず前記リッチ雰囲気における加熱工程を1回行い、次いで前記リーン雰囲気における加熱工程を1回行うことが好ましい。
【0045】
また、本発明の炭化水素改質用触媒の製造方法としては、いっそう高い炭化水素改質反応活性を発揮することができ、より優れた完全酸化活性を発揮することができる炭化水素改質用触媒を得られるという観点から、前記焼成工程における焼成の温度が500〜900℃の範囲内であり、前記焼成工程の後、かつ、前記リッチ/リーン変動雰囲気処理工程の前に、前記焼成後の炭化水素改質用触媒を酸化性ガス雰囲気において500〜1100℃で加熱する高温処理工程をさらに含むことがより好ましい。本発明者らは、このような高温処理工程をさらに施し、酸化鉄粒子及び酸化銅粒子と金属酸化物担体とを十分に固溶させた後に酸化鉄粒子及び酸化銅粒子を再析出化させることにより、さらに高い炭化水素改質反応活性を発揮することができ、CO
2までの優れた完全酸化活性を発揮することができる炭化水素改質用触媒を得ることが可能となるものと推察する。
【0046】
前記高温処理工程における酸化性ガス雰囲気としては、酸化性ガス濃度が3〜25容量%にあることが好ましく、6〜25容量%にあることがより好ましい。前記酸化性ガスとしては、酸素、一酸化窒素等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記酸化性ガスとしては、酸素が好ましく、前記酸化性ガス雰囲気としては、大気中であることがより好ましい。
【0047】
前記高温処理工程における加熱温度が前記下限未満であると、酸化鉄粒子及び酸化銅粒子と金属酸化物担体との固溶度合いが不十分となって炭化水素改質反応活性の向上効果が十分に発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱劣化が進行して酸化鉄粒子及び酸化銅粒子が粒成長し、担体表面における分散性が低下する傾向にある。
【0048】
さらに、前記高温処理工程における加熱時間としては、特に制限されず、前記加熱温度によって異なるものであるため一概には言えないが、30〜500分間(0.5〜8.3時間)の範囲内であることが好ましく、1〜5時間であることがより好ましい。加熱時間が前記下限未満であると、酸化鉄粒子及び酸化銅粒子と金属酸化物担体との固溶度合いが不十分となって炭化水素改質反応活性の向上効果が十分に発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱劣化が進行して酸化鉄粒子及び前記酸化銅粒子が粒成長し、担体表面における分散性が低下する傾向にある。
【0049】
本発明の炭化水素改質用触媒の形態としては特に制限されず、粉末状の触媒をそのまま用いてもよく、粉末状の触媒を定法によりペレット成形してペレット状の触媒としてもよく、粉末状の触媒を含有するスラリーを他の基材に被覆成形して用いてもよい。また、このような成形に際しては、本発明に係る金属酸化物担体に酸化鉄及び酸化銅を担持させた後に成形を施してもよく、また、本発明に係る金属酸化物担体に成形を施した後に酸化鉄及び酸化銅を担持させてもよい。さらに、本発明の製造方法において前記リッチ/リーン変動雰囲気処理工程や前記高温処理工程をさらに含む場合には、これらの工程の前に焼成後の炭化水素改質用触媒に成形を施してもよく、後に施してもよいが、炭化水素改質反応活性の向上効果が十分に発揮されるという観点からは、焼成後に成形を施した後に、前記リッチ/リーン変動雰囲気処理工程や前記高温処理工程をさらに実施することが好ましい。
【0050】
また、前記他の基材としては特に制限されず、モノリス担体基材(ハニカムフィルタ、高密度ハニカム等)、フォームフィルタ基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好適に採用される。また、このような基材の材質も特に制限されず、コージエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。このような基材に本発明の炭化水素改質用触媒を担持させる場合には、前記金属酸化物担体を基材1Lあたり100〜300g担持させることが好ましい。前記金属酸化物担体の担持量が前記下限未満では、十分な炭化水素転化率が達成されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、モノリス担体基材等の基材のガス通過孔が閉塞されて孔内における触媒層へのガスの拡散が低下し、触媒とガスとの反応率が低下する傾向にある。
【0051】
本発明の炭化水素改質用触媒としては、炭化水素50%転化温度が500℃以下であることが好ましく、450℃以下であることがより好ましく、420℃以下であることがさらに好ましい。本発明の炭化水素改質用触媒は、貴金属を含有していないにもかかわらず、このように優れた炭化水素改質反応活性を発揮することができる。さらに、前記リッチ/リーン変動雰囲気処理工程(より好ましくは前記リッチ/リーン変動雰囲気処理工程及び前記高温処理工程)をさらに含む製造方法により得られた本発明の炭化水素改質用触媒においては、より高い炭化水素改質反応活性を発揮することができ、炭化水素50%転化温度を420℃以下とすることが可能である。
【0052】
また、本発明の炭化水素改質用触媒としては、酸素50%転化温度が450℃以下であることが好ましく、400℃以下であることがより好ましい。酸素50%転化温度が前記上限を超えると炭化水素改質温度範囲及び窒素酸化物還元温度範囲において酸素転化活性を発揮することが困難となり、本発明の排ガス浄化用装置に用いた際のNO
x還元効率が低下する傾向にある。
【0053】
さらに、本発明の炭化水素改質用触媒としては、窒素酸化物50%転化温度が600℃以下であることが好ましく、550℃であることがより好ましい。本発明の炭化水素改質用触媒は、貴金属を含有していないにもかかわらず、このように優れた窒素酸化物還元作用も発揮することができる。
【0054】
なお、本発明において、炭化水素50%転化温度とは、触媒に供給される炭化水素の50%が転化されるときの温度であり、炭化水素改質用触媒1.0gにC
3H
6(0.18容量%−C(1800ppm−C))、O
2(0.646容量%)、CO(0.933容量%)、CO
2(10容量%)、NO(0.12容量%(1200ppm)、H
2O(3.0容量%)、N
2(バランス)からなる混合ガスを流量7L/分で流通させ、昇温速度15℃/分で温度100〜600℃の範囲内で昇温しつつ、炭化水素改質用触媒を流通した生成ガスに含まれる全炭化水素濃度を分析し、次式:
炭化水素転化率(%)=〔(生成ガス中の全炭化水素量)/(混合ガス中の全炭化水素量)〕×100
により求められる炭化水素転化率が50%になるときの温度をいう。また、本発明において、酸素50%転化温度とは、触媒に供給される酸素の50%が転化されるときの温度であり、前記生成ガスに含まれる全酸素濃度を分析し、次式:
酸素転化率(%)=〔(生成ガス中の全酸素量)/(混合ガス中の全酸素量)〕×100
により求められる酸素転化率が50%になるときの温度をいう。さらに、本発明において、窒素酸化物50%転化温度とは、触媒に供給される窒素酸化物の50%が転化されるときの温度であり、前記生成ガスに含まれる全窒素酸化物濃度を分析し、次式:
窒素酸化物転化率(%)=〔(生成ガス中の全窒素酸化物量)/(混合ガス中の全窒素酸化物量)〕×100
により求められる窒素酸化物転化率が50%になるときの温度をいう。
【0055】
また、前述のように、本発明の炭化水素改質用触媒により、炭化水素は主に一酸化炭素(CO)と水素(H
2)とに転化されるが、前記リッチ/リーン変動雰囲気処理工程(より好ましくは前記リッチ/リーン変動雰囲気処理工程及び前記高温処理工程)をさらに含む製造方法によって得られた本発明の炭化水素改質用触媒の場合には、生成したCOをCO
2まで完全に酸化せしめることができ、一酸化炭素(CO)の生成量を低減させることができる。このときの炭化水素改質用触媒としては、一酸化炭素生成率が0〜3%であることが好ましく、0〜1%であることがより好ましい。
【0056】
なお、本発明において、一酸化炭素生成率とは、炭化水素改質用触媒1.0gにC
3H
6(0.16容量%−C(1600ppm−C))、O
2(0.24容量%)、H
2O(5.0容量%)、N
2(バランス)からなる混合ガスを流量7L/分で流通させ、昇温速度15℃/分で温度100〜600℃の範囲内で昇温しつつ、炭化水素改質用触媒を流通した生成ガスに含まれる全一酸化炭素濃度を分析し、次式:
一酸化炭素生成率(%)=〔(生成ガス中の全一酸化炭素量)/(生成ガス中の全一酸化炭素量+生成ガス中の全二酸化炭素量)〕×100
により求めることができる。
【0057】
次いで、本発明の排ガス浄化用装置について説明する。本発明の排ガス浄化用装置は、排ガス流路と、前記排ガス流路の上流側に配置された炭化水素改質用触媒と、前記排ガス流路の下流側に配置された窒素酸化物還元触媒とを備える排ガス浄化用装置であって、前記炭化水素改質用触媒が上記本発明の炭化水素改質用触媒であることを特徴とするものである。
【0058】
以下、図面を参照しながら本発明の排ガス浄化用装置の好ましい形態を例に挙げて説明するが、本発明の排ガス浄化用装置はこれに限定されるものではない。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0059】
図1に、内燃機関に接続された本発明の排ガス浄化用装置の好適な一実施形態の模式図を示す。このような排ガス浄化用装置は、基本的には、内燃機関4に接続された排ガス流路3と、排ガス流路3内の上流側に配置された炭化水素改質用触媒1と、炭化水素改質用触媒1よりも下流側に配置された窒素酸化物還元触媒2とを備えるものである。
【0060】
内燃機関4としては特に制限されず、自動車のディーゼルエンジン等の公知の内燃機関を適宜用いることができる。排ガス流路3としては、特に制限されず、例えば、石英管やアルミナ管等が挙げられる。炭化水素改質用触媒1としては、上記本発明の炭化水素改質用触媒を用いる。
【0061】
窒素酸化物還元触媒2としては、窒素酸化物を還元する活性を発揮するものであればよく、特に制限されず、例えば、酸化物担体と前記酸化物担体に担持されたアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種のNOx吸蔵材及び活性金属とを含有するNOx吸蔵還元型触媒が挙げられる。前記酸化物担体に含有される酸化物としては、ジルコニア、セリア、マグネシア、アルミナ、チタニア、シリカ等が挙げられ、これらのうちの1種からなる単体であっても2種以上からなる複合酸化物や固溶体であってもよい。
【0062】
また、前記活性金属種としては、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Ru、Os等の貴金属;Cu、Fe、Ni、Co、Mn等の卑金属が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、窒素酸化物還元触媒2としては、貴金属を含有しないことが好ましい。本発明の排ガス浄化用装置においては、炭化水素改質用触媒1を窒素酸化物還元触媒2の上流に配置し、内燃機関4から排出された排ガスを先ず炭化水素改質用触媒1に接触させて、窒素酸化物還元触媒2に供給される排ガスの酸素濃度及び炭化水素濃度を低減させ、一酸化炭素濃度及び水素濃度を増加させ、さらに窒素酸化物(NO
x)量を一部減少させることにより、窒素酸化物還元触媒2によるNO
x還元反応を効率よく進行させ、前記貴金属を含有しなくとも十分なNO
x還元効率を達成させることができるため、貴金属を用いることによるコストを低減させることが可能となる。また、前記本発明の炭化水素改質用触媒として、前記リッチ/リーン変動雰囲気処理工程、あるいは、リッチ/リーン変動雰囲気処理工程及び前記高温処理工程を製造工程に含んで得られた炭化水素改質用触媒を用いる場合、窒素酸化物還元触媒2としては、前記活性金属種として、Cu、Fe、Ni、Co、Mn等の卑金属のうちの1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いたものであることが好ましい。
【0063】
以上、本発明の排ガス浄化用装置の好適な実施形態について説明したが、本発明の排ガス浄化用装置は上記実施形態に限定されるものではなく、排ガス流路3内の上流側に配置された炭化水素改質用触媒1と、炭化水素改質用触媒1よりも下流側に配置された窒素酸化物還元触媒2とを備えていればよく、他の構成は特に制限されない。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
(
比較例1)
先ず、アルミナ粉末(平均一次粒子径:0.03μm、比表面積:100m
2/g)100質量部を、硝酸鉄(III)2.5質量部及び硝酸銅(II)1.5質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた水溶液に含浸せしめ、大気中において温度110℃で10時間乾燥させた後、大気中において温度600℃で5時間加熱焼成した。次いで、焼成後の粉末を粒子径0.5〜1.0mmのペレット状に成形して炭化水素改質用触媒〔酸化鉄の担持量(金属換算):アルミナ100質量部に対して2.5質量部、酸化銅の担持量(金属換算):アルミナ100質量部に対して1.5質量部、酸化鉄の担持量(金属換算)と酸化銅の担持量(金属換算)との質量比(酸化鉄/酸化銅)=1.7〕を得た。
【0066】
(
比較例2)
水に溶解させる硝酸鉄(III)を5.0質量部、及び硝酸銅(II)を1.0質量部とし、酸化鉄の担持量(金属換算)がアルミナ100質量部に対して5.0質量部、酸化銅の担持量(金属換算)がアルミナ100質量部に対して1.0質量部となり、酸化鉄の担持量(金属換算)と酸化銅の担持量(金属換算)との質量比(酸化鉄/酸化銅)が5.0となるようにしたこと以外は
比較例1と同様にして炭化水素改質用触媒を得た。
【0067】
(
比較例3)
水に溶解させる硝酸鉄(III)を25.9質量部、及び硝酸銅(II)を5.9質量部とし、酸化鉄の担持量(金属換算)がアルミナ100質量部に対して6.0質量部、酸化銅の担持量(金属換算)がアルミナ100質量部に対して2.0質量部となり、酸化鉄の担持量(金属換算)と酸化銅の担持量(金属換算)との質量比(酸化鉄/酸化銅)が3.0となるようにしたこと以外は
比較例1と同様にして炭化水素改質用触媒を得た。
【0068】
(実施例
1)
先ず、アルミナ粉末(平均一次粒子径:0.03μm、比表面積:100m
2/g)100質量部を、硝酸鉄(III)25.9質量部及び硝酸銅(II)5.9質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた水溶液に含浸せしめ、大気中において温度110℃で10時間乾燥させた後、大気中において温度600℃で5時間加熱焼成した。次いで、焼成後の粉末を粒子径0.5〜1.0mmのペレット状に成形し、大気中(酸素濃度21容量%)において温度900℃で5時間加熱した。次いで、これをリッチ雰囲気(CO:1.5容量%)において温度600℃で15分間加熱した後、リーン雰囲気(O
2:0.75容量%)において温度600℃で15分間加熱して炭化水素改質用触媒〔酸化鉄の担持量(金属換算):アルミナ100質量部に対して6.0質量部、酸化銅の担持量(金属換算):アルミナ100質量部に対して2.0質量部、酸化鉄の担持量(金属換算)と酸化銅の担持量(金属換算)との質量比(酸化鉄/酸化銅)=3.0〕を得た。
【0069】
(比較例
4)
硝酸銅(II)を用いなかったこと以外は
比較例1と同様にして炭化水素改質用触媒(酸化鉄の担持量(金属換算):アルミナ100質量部に対して5質量部)を得た。
【0070】
(比較例
5)
硝酸鉄(III)を用いなかったこと以外は
比較例1と同様にして炭化水素改質用触媒(酸化銅の担持量(金属換算):アルミナ100質量部に対して1.0質量部)を得た。
【0071】
(比較例
6)
先ず、アルミナ粉末(平均一次粒子径:0.03μm、比表面積:100m
2/g)65質量部及びチタニア粉末(平均一次粒子径:0.03μm、比表面積:100m
2/g)35質量部を混合し(質量比(Al
2O
3:TiO
2)=65:35)、得られた混合物を、硝酸鉄(III)5.0質量部及び硝酸銅(II)1.0質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた水溶液に含浸せしめ、大気中において温度110℃で10時間乾燥させた後、大気中において温度600℃で5時間加熱焼成した。次いで、焼成後の粉末を粒子径0.5〜1.0mmのペレット状に成形して炭化水素改質用触媒〔酸化鉄の担持量(金属換算):アルミナ及びチタニアの合計質量100質量部に対して5.0質量部、酸化銅の担持量(金属換算):アルミナ及びチタニアの合計質量100質量部に対して1.0質量部〕を得た。
【0072】
(比較例
7)
水に溶解させる硝酸鉄(III)を16.0質量部とし、酸化鉄の担持量(金属換算)がアルミナ100質量部に対して16質量部となるようにしたこと以外は
比較例2と同様にして炭化水素改質用触媒を得た。
【0073】
(比較例
8)
水に溶解させる硝酸鉄(III)を0.5質量部とし、酸化鉄の担持量(金属換算)がアルミナ100質量部に対して0.5質量部となるようにしたこと以外は
比較例2と同様にして炭化水素改質用触媒を得た。
【0074】
(比較例
9)
水に溶解させる硝酸銅(II)を6.0質量部とし、酸化銅の担持量(金属換算)がアルミナ100質量部に対して6.0質量部となり、酸化鉄の担持量(金属換算)と酸化銅の担持量(金属換算)との質量比(酸化鉄/酸化銅)が0.83となるようにしたこと以外は
比較例2と同様にして炭化水素改質用触媒を得た。
【0075】
(比較例
10)
水に溶解させる硝酸銅(II)を0.1質量部とし、酸化銅の担持量(金属換算)がアルミナ100質量部に対して0.1質量部となるようにしたこと以外は
比較例2と同様にして炭化水素改質用触媒を得た。
【0076】
(比較例
11)
水に溶解させる硝酸銅(II)を0.4質量部とし、酸化銅の担持量(金属換算)がアルミナ100質量部に対して0.4質量部となり、酸化鉄の担持量(金属換算)と酸化銅の担持量(金属換算)との質量比(酸化鉄/酸化銅)が12.5となるようにしたこと以外は
比較例2と同様にして炭化水素改質用触媒を得た。
【0077】
(比較例
12)
先ず、ジルコニア−チタニア複合酸化物粉末(平均一次粒子径:0.03μm、比表面積:100m
2/g、質量比(ZrO
2:TiO
2)=70:30)100質量部を、硝酸ロジウム0.15質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた水溶液に含浸せしめ、大気中において温度110℃で10時間乾燥させた後、大気中において温度600℃で5時間加熱焼成した。次いで、焼成後の粉末を粒子径0.5〜1.0mmのペレット状に成形して炭化水素改質用触媒〔ロジウムの担持量(金属換算):ジルコニア−チタニア複合酸化物100質量部に対して0.15質量部〕を得た。
【0078】
<触媒活性評価1>
各実施例及び比較例で得られた炭化水素改質用触媒の炭化水素転化率(C
3H
6転化率)、酸素転化率(O
2転化率)、窒素酸化物転化率(NO転化率)をそれぞれ以下の方法によって評価した。すなわち、炭化水素改質用触媒1.0gにC
3H
6(0.18容量%−C(1800ppm−C))、O
2(0.646容量%)、CO(0.933容量%)、CO
2(10容量%)、NO(0.12容量%(1200ppm)、H
2O(3.0容量%)、N
2(バランス)からなる混合ガスを流量7L/分で流通させ、昇温速度15℃/分で温度100〜600℃の範囲内で昇温しつつ、炭化水素改質用触媒を流通した生成ガスに含まれる全炭化水素濃度、全酸素濃度、全窒素酸化物濃度をそれぞれ分析し、次式:
炭化水素転化率(%)=〔(生成ガス中の全炭化水素量)/(混合ガス中の全炭化水素量)〕×100、
酸素転化率(%)=〔(生成ガス中の全酸素量)/(混合ガス中の全酸素量)〕×100、
窒素酸化物転化率(%)=〔(生成ガスの全窒素酸化物量)/(混合ガス中中の全窒素酸化物量)〕×100
により、炭化水素転化率、酸素転化率、窒素酸化物転化率をそれぞれ求めた。また、炭化水素転化率が50%になるときの温度を炭化水素50%転化温度(T
50)とした。
【0079】
<触媒活性評価2>
比較例3
及び実施例1で得られた炭化水素改質用触媒の炭化水素転化率(C
3H
6転化率)については、それぞれ以下の方法によっても評価した。すなわち、炭化水素改質用触媒1.0gにC
3H
6(0.16容量%−C(1600ppm−C))、O
2(0.24容量%)H
2O(5.0容量%)、N
2(バランス)からなる混合ガスを流量7L/分で流通させ、昇温速度15℃/分で温度100〜600℃の範囲内で昇温しつつ、炭化水素改質用触媒を流通した生成ガスに含まれる全炭化水素濃度をそれぞれ分析し、次式:
炭化水素転化率(%)=〔(生成ガス中の全炭化水素量)/(混合ガス中の全炭化水素量)〕×100
により、炭化水素転化率を求めた。また、炭化水素改質用触媒を流通した生成ガスに含まれる全一酸化炭素濃度を分析し、一酸化炭素生成率(CO生成率)を次式:
CO生成率(%)=〔(生成ガス中の全一酸化炭素量)/(生成ガス中の全一酸化炭素量+生成ガス中の全二酸化炭素量)〕×100
により求めた。
【0080】
比較例1〜2及び比較例
4〜12で得られた触媒について、前記触媒活性評価1を行った。
比較例1及び比較例
4〜5で得られた触媒の各温度における炭化水素転化率を示すグラフを
図2に、酸素転化率を示すグラフを
図3に、窒素酸化物転化率を示すグラフを
図4に、それぞれ示す。また、
比較例2及び比較例
6〜12で得られた触媒の各温度における炭化水素転化率を示すグラフを
図5〜
図9に示す。さらに、
比較例1〜2及び比較例
4〜12で得られた触媒の炭化水素50%転化温度(T
50)を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
また、
比較例3
及び実施例1で得られた触媒について、前記触媒活性評価2を行った。
比較例3
及び実施例1で得られた触媒の各温度における炭化水素転化率を示すグラフを
図10に、各温度における一酸化炭素生成率を示すグラフを
図11に、それぞれ示す。
【0083】
図2及び
図5〜
図10に示した結果から明らかなように、本発明の炭化水素改質用触媒は、炭化水素転化反応活性により十分に高い炭化水素の転化率を達成できることが確認された。また、表1に示した結果から明らかなように、
比較例1〜2で得られた炭化水素改質用触媒においては炭化水素50%転化温度(T
50)が低く、触媒活性(炭化水素転化反応活性)が十分に高いことが確認された。また、
図3〜
図4に示した結果から明らかなように、
比較例1で得られた炭化水素改質用触媒は、供給されるガス中の酸素濃度を低減させることができかつ窒素酸化物還元活性を発揮することが確認された。
【0084】
さらに、
図10〜
図11に示した結果から明らかなように、リッチ/リーン変動雰囲気処理工程及び高温処理工程をさらに含む製造方法により得られた本発明の炭化水素改質用触媒は特に、さらに高い炭化水素改質反応活性を発揮することができ、かつ、CO
2までの優れた完全酸化活性を発揮することができることが確認された。