(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956405
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】音漏れ防止構造
(51)【国際特許分類】
E01F 8/00 20060101AFI20160714BHJP
E01B 19/00 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
E01F8/00
E01B19/00 C
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-222913(P2013-222913)
(22)【出願日】2013年10月28日
(62)【分割の表示】特願2008-321777(P2008-321777)の分割
【原出願日】2008年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-15837(P2014-15837A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2013年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】関 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 千博
(72)【発明者】
【氏名】小口 貴士
【審査官】
石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−041188(JP,A)
【文献】
特開2003−013414(JP,A)
【文献】
特許第2818093(JP,B2)
【文献】
特開2006−089961(JP,A)
【文献】
特開2007−303214(JP,A)
【文献】
特開平08−068125(JP,A)
【文献】
特開昭57−051308(JP,A)
【文献】
特開昭59−015148(JP,A)
【文献】
特開平06−017492(JP,A)
【文献】
実開昭62−114914(JP,U)
【文献】
特開平03−147905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 8/00
E01B 19/00
E04B 1/82 − 1/90
E04H 17/00 −17/26
E04F 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道軌道において生じる騒音を低減するように鉄道軌道に沿って配置されて隣接する防音パネル(1)(2)の隙間部からの音漏れを防止する音漏れ防止構造であって、一方の防音パネル(1)の隣接側部の音源側または反音源側に、防音パネル間の隙間および他方の防音パネル(2)の隣接側部を覆う平板状の隠し板(15)が一方の防音パネル(1)の隣接側部に密着して設けられるとともに、隠し板(15)と他方の防音パネル(2)の隣接側部との間に、間隙が設けられており、隠し板(15)は防音パネル間の隙間における音波の直進を妨げる、音漏れ防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新幹線のような高速鉄道の騒音を低減する吸音パネル及び防音壁に関し、より詳しくは、隣接する吸音パネル及び防音壁の間の隙間を埋める
音漏れ防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道軌道において生じる騒音には、車両上部で発生する集電系音(上部音という)と車輛下部で発生する転動音や機器音(下部音という)、車両の空気摩擦により生じる空力音という複数の音源があり、それぞれが防音壁と車輌の間で多重反射をして防音壁外部に漏れる。特に新幹線のような高速鉄道においては、下部音を主体とする防音壁より低い位置で発生する騒音が特に問題となっている。
【0003】
このような騒音問題を解決するものとして、特許文献1記載のような吸音パネルが提案された。すなわち、吸音パネル(51)は、
図18に示すように、アルミニウムフレームからなる筺体(53)の内部において、筺体(53)を既存の防音壁(56)に固定する固定部材(55)の音源側の面に複数枚の傾斜反射板(52)が上下多段状に設けられ、筺体(53)内の各反射板間の空間に吸音材としてグラスウール(54)が充填されたものである。
【0004】
この構造の吸音パネルは隣接するパネルが互いに密接しておれば、音漏れの恐れはないが、実際の施工ではどうしても隣接パネルの間やパネルと道床の間に数mmから最大10cmの隙間が生じることが避けられない。非特許文献1に記載されているように、吸音パネルの性能が向上するに連れてこのような隙間の処理が重要視されてきている。
【0005】
従来、
図19に示すように、隣接する吸音パネル(61)(62)(63)の間にゴム製の隙間埋め部材(64)を介在させ、隣接パネルどうしを押し付けて隙間埋め部材(64)を潰してパネル間に固定し、これらパネルにわたって複数本の胴縁(65)をボルト(66)止めすることで、パネル間の隙間を埋めていた。
【0006】
しかし、この施工法では、操作が面倒である上に、パネルを1枚だけ交換したいときには、隙間に余裕がないため、パネルの出し入れが困難で交換ができないという問題がある。また、胴縁が温度変化により伸縮するため隙間幅が変わることで吸音パネル間に隙間が生じ、またはゴム製の隙間埋め部材が徐々に劣化することで吸音パネル間に隙間が生じ、そこから音漏れが生じるために、吸音パネルの防音効果が低下するという問題もある。さらに防音パネルと道床の間にも隙間があり、同様に防音効果を低下する一因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−255098号公報
【非特許文献1】「公害防止の技術と法規 騒音編」 公害防止の技術と法規 編集委員会編 第94〜96頁、第124〜126頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題を解決することができる、隣接する吸音パネルの間、隣接する防音壁の間、および吸音パネルと道床の間の隙間を埋めて音漏れを防ぐ
音漏れ防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、
鉄道軌道において生じる騒音を低減するように鉄道軌道に沿って配置されて隣接する
防音パネル(1)(2)の隙間部
からの音漏れを防止する音漏れ防止構造であって、一方の
防音パネル(1)の隣接側部の音源側または反音源側に、
防音パネル間の隙間および他方の
防音パネル(2)の隣接側部を覆う
平板状の隠し板(15)が一方の
防音パネル(1)の隣接側部に密着して設けられるとともに、隠し板(15)と他方の
防音パネル(2)の隣接側部との間に、間隙が設けられており、隠し板(15)は
防音パネル間の隙間における音波の直進を妨げる、
音漏れ防止構造である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の
音漏れ防止構造によれば、従来技術における問題点を全て解決することが可能となる。
【0011】
すなわち、従来、パネルの操作が面倒である上に、パネルを1枚だけ交換したいときには、隙間に余裕がないため、パネルの出し入れが困難で交換できなかったが、本発明の
音漏れ防止構造の採用により、容易な交換が可能となる。また、胴縁の温度変化に伴う伸縮によるパネル隙間幅の変化や、またはゴム製の隙間埋め部材の劣化による隙間幅の拡大により、音漏れが生じ、防音パネルの効果が低下するという問題があったが、本発明の
音漏れ防止構造により、低下の問題は解消できる。さらに、パネル下部と道床との隙間の問題についても同様に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1の
音漏れ防止構造を示す隣接パネルの隙間部における水平断面図である。
【
図2a】実施例1の
音漏れ防止構造の変形例を示す隣接パネルの隙間部における水平断面図である。
【
図2b】実施例1の
音漏れ防止構造の変形例を示す隣接パネルの隙間部における正面図である。
【
図3】実施例2の
音漏れ防止構造を示す隣接パネルの隙間部における水平断面図である。
【
図4】実施例2の
音漏れ防止構造を示す隣接パネルの隙間部における水平断面図である。
【
図5】実施例2の
音漏れ防止構造を示す隣接パネルの隙間部における水平断面図である。
【
図6】実施例2の
音漏れ防止構造を示す隣接パネルの隙間部における水平断面図である。
【
図7】実施例3の
音漏れ防止構造の変形例を示す隣接パネルの隙間部における水平断面図である。
【
図8】実施例3の
音漏れ防止構造の変形例を示す隣接パネルの隙間部における水平断面図である。
【
図9】実施例3の
音漏れ防止構造の変形例を示す隣接パネルの隙間部における水平断面図である。
【
図10】実施例3の
音漏れ防止構造の変形例を示す隣接パネルの隙間部における水平断面図である。
【
図11】実施例3の
音漏れ防止構造の変形例を示す隣接パネルの隙間部における水平断面図である。
【
図12】実施例3の
音漏れ防止構造の変形例を示す隣接パネルの隙間部における水平断面図である。
【
図13】実施例4の
音漏れ防止構造の変形例を示す隣接パネルの隙間部における水平断面図である。
【
図14】実施例4の
音漏れ防止構造の変形例を示す隣接パネルの隙間部における水平断面図である。
【
図15】実施例4の
音漏れ防止構造の変形例を示す隣接パネルの隙間部における水平断面図である。
【
図16】実施例5の
音漏れ防止構造の変形例を示す隣接パネルの隙間部における水平断面図である。
【
図17】実施例6の
音漏れ防止構造の変形例を示す隣接パネルの隙間部における水平断面図である。
【
図18】従来の吸音パネルを示す垂直縦断面図である。
【
図19】従来の吸音パネルの
音漏れ防止構造を示す胴縁側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明を具体的に説明するために、本発明の実施例をいくつか挙げる。
実施例1
図1において、隣接するパネル(1)(2)の隙間部にて、パネル(1)(2)のうち一方のパネル(1)の隣接側部の音源側に、パネル間の隙間および他方のパネル(2)の隣接側部を覆う隠し板(15)が固定されている。隠し板(15)と他方のパネル(2)の隣接側部との間には間隙が設けられて、隠し板(15)は他方のパネル(2)には固定されず、該隙間を大きさが変化しても常に隙間を覆うようになされている。隠し板(15)はパネル間の隙間における音波の直進を防いでいる。
【0014】
図2aおよび
図2bにおいて、隣接するパネル(1)(2)の隙間部にて、一方のパネル(1)の隣接側部の音源側に、パネル間の隙間および他方のパネル(2)の隣接側部を覆う隠し板(15)が固定されている。隠し板(15)と他方のパネル(2)の隣接側部との間にはプラスチック発泡体などからなる緩衝材(46)が介在させられている。こうして、隠し板(15)は隣接方向に設置位置調節可能な状態でパネル(1)(2)の隣接側部に取り付けられている。隠し板(15)はパネル間の隙間における音波の直進を防いでいる。この構造によって、隣接するパネル(1)(2)の隙間が変動しても該隙間は隠し板(15)によって常に塞がれている。
実施例2
図3において、隣接するパネル(1)(2)の隙間部にて、一方のパネル(1)の隣接側部の音源側、および他方のパネル(2)の隣接側部の反音源側にそれぞれ隣接相手に向かって突出状に、平板からなるじゃま板(16)(17)が設けられている。各じゃま板(16)(17)の先端と隣接相手との間には小間隔が置かれている。この構造によって、じゃま板(16)(17)はパネル間の隙間における音波の直進を防いでいる。
【0015】
図4において、隣接するパネル(1)(2)の隙間部にて、一方のパネル(1)の隣接側部の音源側、および他方のパネル(2)の隣接側部の反音源側にそれぞれ隣接相手に向かって突出状に、断面L字状のじゃま板(16)(17)が設けられている。各じゃま板(16)(17)の垂直部どうしは小間隔をおいて食い違い状に配置されている。この構造によって、じゃま板(16)(17)はパネル間の隙間における音波の直進を防いでいる。
【0016】
図5において、隣接するパネル(1)(2)の隙間部にて、一方のパネル(1)の隣接側部の音源側、および他方のパネル(2)の隣接側部の反音源側にそれぞれ隣接相手に向かって、平板からなる傾斜状のじゃま板(16)(17)が小間隙をおいて食い違い状に設けられている。この構造によって、じゃま板(16)(17)はパネル間の隙間における音波の直進を防いでいる。
【0017】
図6において、隣接するパネル(1)(2)の隙間部にて、一方のパネル(1)の隣接側部の音源側、および他方のパネル(2)の隣接側部の反音源側にそれぞれ隣接相手に向かって、平板からなるじゃま板(16)(17)が小間隙をおいて設けられている。パネル(1)(2)の隙間にはじゃま板(16)(17)の間にプラスチック発泡体などからなる緩衝材(46)が介在させられている。この構造によって、じゃま板(16)(17)および緩衝材(46)はパネル間の隙間における音波の直進を防いでいる。
実施例3
図7において、隣接するパネル(1)(2)の隙間部にて、一方のパネル(1)の隣接側面が傾斜状に形成されることにより凸部(1a)が設けられている。他方のパネル(2)の隣接側面がパネル(1)の隣接側面の上記傾斜に合致する傾斜状に形成されることにより凹部(2a)が設けられている。一方のパネル(1)の凸部(1a)を形成する傾斜面と他方のパネル(2)の凹部(2a)を形成する傾斜面との間には小隙間が置かれている。この構造によって、小間隙における音波の直進が妨げられている。
【0018】
図8において、隣接するパネル(1)(2)の隙間部にて、一方のパネル(1)の隣接側面に断面三角形の凸部(1a)が形成され、他方のパネル(2)の隣接側面に、パネル(1)の隣接側面の上記凸形状に合致する形状の凹部(2a)が形成されている。一方のパネル(1)の凸部(1a)と他方のパネル(2)の凹部(2a)の間には小隙間が置かれている。この構造によって、小間隙における音波の直進が妨げられている。
【0019】
図9において、隣接するパネル(1)(2)の隙間部にて、一方のパネル(1)の隣接側面に断面円弧形の凸部(1a)が形成され、他方のパネル(2)の隣接側面に、パネル(1)の隣接側面の上記凸形状に合致する形状の凹部(2a)が形成されている。一方のパネル(1)の凸部(1a)と他方のパネル(2)の凹部(2a)の間には小隙間が置かれている。この構造によって、小間隙における音波の直進が妨げられている。
【0020】
図10において、隣接するパネル(1)(2)の隙間部にて、一方のパネル(1)の隣接側面の音源側に凸部(1a)が形成され、他方のパネル(2)の隣接側面の音源側に、パネル(1)の隣接側面の上記凸形状に合致する形状の凹部(2a)が形成されている。一方のパネル(1)の凸部(1a)と他方のパネル(2)の凹部(2a)の間には小隙間が置かれている。この構造によって、小間隙における音波の直進が妨げられている。
【0021】
図11において、隣接するパネル(1)(2)の隙間部にて、一方のパネル(1)の隣接側面に断面長方形の凸部(1a)が形成され、他方のパネル(2)の隣接側面に、パネル(1)の隣接側面の上記凸形状に合致する形状の凹部(2a)が形成されている。一方のパネル(1)の凸部(1a)と他方のパネル(2)の凹部(2a)の間には小隙間が置かれている。この構造によって、小間隙における音波の直進が妨げられている。
【0022】
図12において、隣接するパネル(1)(2)の隙間部にて、一方のパネル(1)の隣接側面に断面櫛歯形の凸部(1a)が形成され、他方のパネル(2)の隣接側面に、パネル(1)の隣接側面の上記凸形状に合致する形状の凹部(2a)が形成されている。一方のパネル(1)の凸部(1a)と他方のパネル(2)の凹部(2a)の間には小隙間が置かれている。すなわち一方のパネル(1)の凸部(1a)と他方のパネル(2)の凸部が食い違い状に設けられている。この構造によって、小間隙における音波の直進が妨げられている。
実施例4
図13において、隣接するパネル(1)(2)の隙間部にて、パネル(1)(2)の隣接側部の各対抗面にそれぞれ凹条(19)が対向状に形成されている。これら凹条(19)に両側部を嵌め込む遮音板(20)が設けられている。この構造によって、隣接するパネル(1)(2)の隙間が変動しても該隙間は遮音板(20)によって常に塞がれている。遮音板(20)はパネル間の隙間における音波の直進を防いでいる。
【0023】
図14において、隣接するパネル(1)(2)の隙間部にて、パネル(1)(2)の隣接側部の音源側にそれぞれ凹条(19)が対向状に形成されている。これら凹条(19)に両側部を嵌め込む遮音板(20)が設けられている。この構造によって、隣接するパネル(1)(2)の隙間が変動しても該隙間は遮音板(20)によって常に塞がれている。遮音板(20)はパネル間の隙間における音波の直進を防いでいる。
【0024】
図15において、隣接するパネル(1)(2)の隙間部にて、パネル(1)の隣接側部の音源側に凹条(19)が反音源側開口状に形成され、パネル(2)の隣接側部の反音源側に凹条(19)が音源側開口状に形成されている。これら凹条(19)に亘って遮音板(20)が設けられている。遮音板(20)は、断面クランク状に屈曲しており、両側部をそれぞれ凹条(19)に嵌め込んでいる。遮音板(20)はパネル間の隙間における音波の直進を防いでいる。この構造によって、隣接するパネル(1)(2)の隙間が変動しても該隙間は遮音板(20)によって常に塞がれている。
実施例5
図16において、隣接するパネル(1)(2)の隙間部にて、断面クランク状に屈曲した遮音板(20)が、その中間垂直部(20a)が隙間内にかつ両端水平部(20b)が隙間部の音源側および反音源側にそれぞれ来るように、隙間部に配置されている。遮音板(20)はパネル間の隙間における音波の直進を防いでいる。この構造によって、隣接するパネル(1)(2)の隙間が変動しても該隙間は遮音板(20)によって常に塞がれている。
実施例6
図17において、パネル(1)の下端部と道床(32)の隙間部にて、該隙間の音源側に該隙間を隠すように遮蔽壁(39)が道床に立設されている。遮蔽壁(39)は、パネル(1)の下端部と道床(32)の隙間における音波の直進を防いでいる。この構造によって、パネル(1)の下端部と道床(32)の隙間が遮蔽壁(39)によって常に塞がれている。
【符号の説明】
【0025】
(1)(2) パネル
(15) 隠し板
(16)(17) じゃま板
(1a) 凸部
(2a) 凹部
(19) 凹条
(20) 遮音板
(32) 道床
(39) 遮蔽壁
(46) 緩衝材