(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程a)によって得られた硬質基板積層体において硬質基板同士を貼り合わせている接着剤は、工程b)で研削される予定の部位全体に接着剤が存在し、且つ、各硬質基板の接着面の面積の90%以上を占める請求項1〜4の何れか一項に記載の硬質基板積層体の加工方法。
工程c)は、複数の分割ブロックを積層する及び/又は移動方向に横並びすることにより、複数の分割ブロックに対してまとめて実施する請求項1〜5の何れか一項に記載の硬質基板積層体の加工方法。
工程c)を実施する前において、二つの回転砥石の中心軸を結ぶ方向における分割ブロックの位置精度を±100μm以内に制御する請求項1〜6の何れか一項に記載の硬質基板積層体の加工方法。
【背景技術】
【0002】
テレビ、ノートパソコン、カーナビゲーション、電卓、携帯電話、電子手帳、及びPDA(Personal Digital Assistant)といった各種電子機器の表示装置には、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OELD)、電界発光ディスプレイ(ELD)、電界放出ディスプレイ(FED)、及びプラズマディスプレイ(PDP)等の表示素子が使用されている。そして、表示素子を保護するため、表示素子と対向させて保護用の板ガラス製品を設置するのが一般である。
【0003】
この板ガラス製品は板ガラスを各表示装置に適した大きさ及び形状に加工したものであるが、市場で要求される価格レベルに対応するために、大量の板ガラス製品を高い生産効率で加工することが求められる。
【0004】
そこで、特開2009−256125号公報(特許文献1)では、板ガラス製品の生産効率を高める方法が提案されている。具体的には「多数の素材板ガラス(1)を積み重ねるとともに、各素材板ガラス(1)を、各素材板ガラス(1)間に介在させた剥離可能な固着材(2)により一体的に固着してなる素材ガラスブロック(A)を形成し、該素材ガラスブロック(A)を面方向に分割して小面積の分割ガラスブロック(B)を形成し、該分割ガラスブロック(B)の少なくとも外周を加工して平面視製品形状となる製品ガラスブロック(C)を形成し、該製品ガラスブロック(C)を端面加工した後、該製品ガラスブロック(C)を個別に分離したことを特徴とする板ガラスの加工方法」を提案している(請求項1)。これにより、「多数の素材板ガラスを積み重ねた状態で、分割、外形加工、及び端面加工を行なうようにしたので、少ない工程で多数の板ガラス製品を得ることができ、生産性に富む」(段落0007)ことが記載されている。
【0005】
分割ガラスブロック(B)の外周加工について、特許文献1では回転砥石により実施し、これにより平面形状が製品の形状となる製品ブロックCを形成することが記載されている(段落0013)。特許文献1の
図5から分かるように、回転砥石の中心軸の方向は分割ガラスブロック(B)の上下面と平行な方向となっている。また、端面加工について、特許文献1では回転ブラシを製品ガラスブロック(C)の端面に接触させることにより実施することが記載されている(段落0014)。回転ブラシの中心軸の方向は分割ガラスブロック(B)の上下面と直角な方向とし、回転ブラシの線材が上下の板ガラス製品間に接触するようにし、各板ガラス製品の上下縁(稜)を面取りしている(特許文献1の
図7参照)。
【0006】
特許文献1の「発明を実施するための最良の実施形態」の欄には、各素材板ガラス間に光硬化性の液状固着剤を介在させながら素材板ガラスを20枚積み重ね、次いで、積み重ねた素材板ガラスの上面から紫外線(UV光)を照射して固着剤を硬化させ、上下の各素材板ガラスが一体的に固着された素材ガラスブロックを形成したことが記載されている(段落0010〜0011)。
【0007】
また、特開2010−269389号公報(特許文献2)では、分割ガラスブロックの端面を平坦な研磨面を有する回転研磨盤により研磨することが記載されている。そして、該端面を回転ブラシにより研磨して各分割板ガラスの縁部を面取りすることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の方法では分割ガラスブロックを作製後に回転砥石による外周加工を実施しているが、当該方法では予め分割ガラスブロックに対して端面形状の均一化処理がなされていないため寸法精度が低く、最終的に得られる板状ガラス製品の形状に誤差が生じやすい。また、分割によって端面に生じるチッピングを取り除くことはできない。特許文献2に記載の方法においては、分割ガラスブロックの端面に対して回転研磨盤により研磨しているので、当該方法では一度に多数の板ガラスの端面研磨を実施できるが、あくまで研磨処理であって端面形状の均一化処理が行われているわけではないので寸法精度は向上しない。また、分割によって端面に生じるチッピングのうち、小さいものは除去できるが、大きなものは除去が困難である。更に、一度に一つの端面しか処理できないので生産性も悪い。
【0010】
電子機器によっては、板ガラスに所望の印刷パターン(例えば、携帯電話の表示画面のデザイン)を形成することが要求される場合もあり、このような場合には印刷されるパターンについて高い位置精度(例えば許容誤差が10〜30μm程度)が要求される。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、端面における寸法精度の高い板状製品を高い生産性で製造するための透光性硬質基板積層体の加工方法を提供することを課題とする。また、本発明は当該透光性硬質基板積層体の加工方法を利用した板状製品の製造方法を提供することを別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は一側面において、
a)2枚以上の硬質基板同士が剥離可能な接着剤で貼り合わせられた硬質基板積層体を準備する工程と、
b)前記硬質基板積層体を厚み方向に分割し、所望の数の分割された硬質基板積層体(以下、「分割ブロック」という。)を形成する工程と、
c)所定の間隔で並列に配置された回転砥石の間に分割ブロックを相対移動させて分割ブロックの対向する二つの端面を同時に研削する工程と、ここで、分割ブロックの上下面はこれら回転砥石の中心軸に直交し、分割ブロックはこれら回転砥石の中心軸に直交する方向に相対移動する、
を含む硬質基板積層体の加工方法である。
【0013】
本発明に係る硬質基板積層体の加工方法の一実施形態においては、工程c)は、分割ブロックを治具で固定してから行う。
【0014】
本発明に係る硬質基板積層体の加工方法の別の一実施形態においては、前記治具は、分割ブロックを二つの回転砥石の間の中央に配置させるための位置決め手段を有する。
【0015】
本発明に係る硬質基板積層体の加工方法の更に別の一実施形態においては、前記治具は、二つの回転砥石の中心軸間の距離の中央を直角に通過する直線状のレール上を移動可能である。
【0016】
本発明に係る硬質基板積層体の加工方法の更に別の一実施形態においては、工程a)によって得られた硬質基板積層体において硬質基板同士を貼り合わせている接着剤は、工程b)で研削される予定の部位全体に接着剤が存在し、且つ、各硬質基板の接着面の面積の90%以上を占める。
【0017】
本発明に係る硬質基板積層体の加工方法の更に別の一実施形態においては、工程c)は、複数の分割ブロックを積層する及び/又は移動方向に横並びすることにより、複数の分割ブロックに対してまとめて実施する。
【0018】
本発明に係る硬質基板積層体の加工方法の更に別の一実施形態においては、工程c)を実施する前において、二つの回転砥石の中心軸を結ぶ方向における分割ブロックの位置精度を±100μm以内に制御する。
【0019】
本発明に係る硬質基板積層体の加工方法の更に別の一実施形態においては、硬質基板が強化ガラス製である。
【0020】
本発明に係る硬質基板積層体の加工方法の更に別の一実施形態においては、工程b)と工程c)の間、及び/又は、工程c)の後に形状加工を行う。
【0021】
本発明に係る硬質基板積層体の加工方法の更に別の一実施形態においては、工程c)の後に、d)研削を行った端面を研磨処理する工程を実施することを含む。
【0022】
本発明に係る硬質基板積層体の加工方法の更に別の一実施形態においては、工程c)と工程d)の間、及び/又は、工程d)の後に形状加工を行う。
【0023】
本発明は別の一側面において、本発明に係る硬質基板積層体の加工方法を実施した後、分割ブロックを剥離し、複数の板状製品を形成する工程を含む板状製品の製造方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、端面における寸法精度の高い板状製品を高い生産性で製造することが可能となる。本発明は例えば表示素子の保護ガラスを量産する方法に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る硬質基板積層体の加工方法の一実施形態においては、
a)2枚以上の硬質基板同士が剥離可能な接着剤で貼り合わせられた硬質基板積層体を準備する工程と、
b)前記硬質基板積層体を厚み方向に分割し、所望の数の分割された硬質基板積層体(以下、「分割ブロック」という。)を形成する工程と、
c)所定の間隔で並列に配置された回転砥石の間に分割ブロックを相対移動させて分割ブロックの二つの端面を同時に平坦化処理する工程と、ここで、分割ブロックの上下面はこれら回転砥石の中心軸に直交し、分割ブロックはこれら回転砥石の中心軸に直交する方向に相対移動する、
を含む。
【0027】
<工程a>
図1を参照すると、工程aでは、2枚以上の硬質基板11同士が剥離可能な接着剤12で貼り合わせられた硬質基板積層体10を準備する。本実施形態では、硬質基板は特に制限はない。硬質基板として、透光性を有しない硬質基板を用いても良い。但し、接着剤として光硬化性接着剤を使用するときや表示素子の保護目的で使用するときは硬質基板は透光性であることが必要であり、例えば、板ガラス(強化板ガラス、素材板ガラス、透明導電膜付きガラス基板、電極や回路が形成されたガラス基板等)、サファイア基板、石英基板、プラスチック基板、フッ化マグネシウム基板などが使用可能である。本発明に使用する硬質基板としては強化ガラスが特に好ましい。強化ガラスはイオン交換法や風冷強化法などの公知の任意の方法によって製造することができる。今まで、強化ガラスを回転砥石で加工することは割れの問題が生じることから困難であったが、本発明を使用すれば強化ガラスの加工も容易にできるようになる。
【0028】
硬質基板の大きさに特に制限はないが、典型的には10000〜250000mm
2程度の面積を有し、0.1〜2mm程度の厚みを有する。各硬質基板は同じサイズであるのが一般的である。限定的ではないが、各硬質基板の表面には板状製品の機能の一つを奏するための所定の印刷パターンやめっきパターンを付すことができる。印刷パターンの例としては携帯電話の表示画面のデザイン、めっきパターンの例としてはクロムめっきパターンが施されているロータリーエンコーダーが挙げられる。
【0029】
硬質基板の積層は例えば、一方又は両方の貼り合わせ面に剥離可能な接着剤が塗布された硬質基板同士を貼り合わせることで行うことができる。これを所望の回数だけ繰り返すことにより、所望の枚数の硬質基板が積層された硬質基板積層体を作製することができる。板状製品の生産効率向上の観点からは、10枚以上の硬質基板、典型的には10〜30枚の硬質基板が積層された硬質基板積層体を作製することが望ましい。
【0030】
剥離可能な接着剤としては、限定的ではないが、湿気硬化型接着剤、2液混合型接着剤、加熱硬化型接着剤、光硬化性接着剤等が挙げられる。生産性及び作業性の観点から光硬化性接着剤が好ましい。光硬化性接着剤を使用する場合は、透光性硬質基板同士を貼り合わせた後に、両基板に挟まれて拡がっている接着剤を硬化するための光を照射することによって積層することができる。光照射は、透光性硬質基板を1枚積層する度に実施してもよく、接着剤へ光が到達する限りにおいて、複数枚を積層した後にまとめて実施してもよい。
【0031】
照射する光の波長は、使用する接着剤の特性に応じて適宜変更すればよいが、例えばマイクロ波、赤外線、可視光、紫外線、X線、γ線、電子線等を照射することができる。簡便に使用でき、比較的高エネルギーをもつことから一般的には照射光は紫外線である。このように、本発明において、光とは可視光のみならず、幅広い波長領域を包含する電磁波(エネルギー線)を指す。
【0032】
ここで照射する光は透光性硬質基板を仮留めするのに必要な程度の照射量でよく、365nmの受光器を使用した積算照度計で測定して、一般に1〜500mJ/cm
2、典型的には3〜300mJ/cm
2、より典型的には5〜200mJ/cm
2とすることができる。照射時間としては一般に1〜120秒、典型的には2〜60秒程度であり、好ましくは2.5〜20秒程度である。
【0033】
本発明に好適に使用される光硬化性接着剤としては、例えばWO2008/018252に記載のような(A)多官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート、及び(C)光重合開始剤を含有する接着性組成物が挙げられる。
【0034】
(A)多官能(メタ)アクリレートとしては、オリゴマー/ポリマー末端又は側鎖に2個以上(メタ)アクロイル化された多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーや、2個以上の(メタ)アクロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。例えば、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーとしては、1,2-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本曹達社製「TE−2000」、「TEA−1000」)、その水素添加物(例えば、日本曹達社製「TEAI−1000」)、1,4−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、大阪有機化学社製「BAC−45」)、ポリイソプレン末端(メタ)アクリレート、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本合成化学社製「UV−2000B」、「UV−3000B」、「UV−7000B」、根上工業社製「KHP−11」、「KHP−17」)、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本合成化学社製「UV−3700B」、「UV−6100B」)、又はビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
【0035】
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、又は2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。3官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイキシエチル]イソシアヌレート等が挙げられる。4官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
(B)単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド2モル変性)(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド8モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(プロピレンオキサイド2.5モル変性)(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性フタル酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性コハク酸(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、β−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、n−(メタ)アクリロイルオキシアルキルヘキサヒドロフタルイミド、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
(A)多官能(メタ)アクリレートと(B)単官能(メタ)アクリレートの配合比としては、(A):(B)=5:95〜95:5(質量部)であることが好ましい。5質量部以上であれば初期の接着性が低下する恐れもなく、95質量部以下であれば、剥離性が確保できる。硬化した接着剤は温水に浸漬することでフィルム状に剥離する。(B)単官能(メタ)アクリレートの含有量は、(A)及び(B)の合計量100質量部中、40〜80質量部がさらに好ましい。
【0038】
(C)光重合開始剤は、可視光線や紫外線の活性光線により増感させて樹脂組成物の光硬化を促進するために配合するものであり、公知の各種光重合開始剤が使用可能である。具体的にはベンゾフェノン又はその誘導体;ベンジル又はその誘導体;アントラキノン又はその誘導体;ベンゾイン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン誘導体;ジエトキシアセトフェノン、4−t−ブチルトリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体;2−ジメチルアミノエチルベンゾエート;p−ジメチルアミノエチルベンゾエート;ジフェニルジスルフィド;チオキサントン又はその誘導体;カンファーキノン;7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−ブロモエチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−メチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸クロライド等のカンファーキノン誘導体;2−メチル−1−[4-(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のα−アミノアルキルフェノン誘導体;ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシポスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジエトキシフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド誘導体、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル及び/又はオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル等が挙げられる。光重合開始剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、効果が大きい点で、ベンジルジメチルケタール、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル及びオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルからなる群のうちの1種又は2種以上が好ましい。
【0039】
(C)光重合開始剤の含有量は、(A)及び(B)の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。0.1質量部以上であれば、硬化促進の効果が確実に得られるし、20質量部以下で充分な硬化速度を得ることができる。(C)成分を1質量部以上添加することは、光照射量に依存なく硬化可能となり、さらに組成物の硬化体の架橋度が高くなり、切削加工時に位置ずれ等を起こさなくなる点や剥離性が向上する点で、さらに好ましい。
【0040】
光硬化性接着剤は、接着剤の成分(A)、(B)及び(C)に溶解しない粒状物質(D)を含有するのが好ましい。これにより、硬化後の組成物が一定の厚みを保持できるため、加工精度が向上する。さらに、接着性組成物の硬化体と粒状物質(D)の線膨張係数が異なることから、前記接着剤組成物を用いて透光性硬質基板を貼り合わせた後に剥離する際の剥離性が向上する。
【0041】
粒状物質(D)の材質としては、一般的に使用される有機粒子、又は無機粒子いずれでもかまわない。具体的には、有機粒子としては、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子などが挙げられる。無機粒子としてはガラス、シリカ、アルミナ、チタンなどセラミック粒子が挙げられる。
【0042】
粒状物質(D)は、加工精度の向上、つまり接着剤の膜厚の制御の観点から球状であることが好ましい。粒状物質(D)のレーザー法による平均粒径は20〜200μmの範囲にあることが好ましい。前記粒状物質の平均粒径が20μm未満であると剥離性に劣り、200μmを超えると仮固定した部材の加工時にずれを生じ易く、寸法精度面で劣る。剥離性と寸法精度の観点からより好ましい平均粒径(D50)は35μm〜150μmであり、更に好ましくは50μm〜120μmである。粒径分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される。
【0043】
粒状物質(D)の使用量は、接着性、加工精度、剥離性の観点から、(A)及び(B)の合計量100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.2〜10質量部がより好ましく、0.2〜6質量部が最も好ましい。
【0044】
光硬化性接着剤には、貯蔵安定性向上のため重合禁止剤(E)を添加することができる。重合禁止剤としては、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ジターシャリーブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジターシャリーブチル−p−ベンゾキノン、ピクリン酸、クエン酸、フェノチアジン、ターシャリーブチルカテコール、2−ブチル−4−ヒドロキシアニソール及び2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール等が挙げられる。
重合禁止剤(E)の使用量は、(A)及び(B)の合計量100質量部に対して、0.001〜3質量部が好ましく、0.01〜2質量部がより好ましい。0.001質量部以上であれば、貯蔵安定性が確保されるし、3質量部以下であれば、良好な接着性が得られ、未硬化になることもない。
【0045】
光硬化性接着剤は、硬化性向上の目的で、更に、有機過酸化物を使用しても良い。透光性を有しない硬質基板の積層には例えば、光重合開始剤(C)の代わりに、有機過酸化物を重合開始剤として使用することもできる。
【0046】
本発明に好ましい光硬化性接着剤として、下記の光硬化性接着剤1〜2が挙げられる。
1.光硬化性接着剤1
以下の(A)〜(E)の成分を混合して光硬化性接着剤1を作製する。
(A)多官能(メタ)アクリレートとして、日本合成社製「UV-3000B」(ポリエステル系ウレタンアクリレート、重量平均分子量18000、ポリオール化合物はポリエステルポリオール、有機ポリイソシアネート化合物はイソホロンジイソシアネート、ヒドロキシ(メタ)アクリレートは2−ヒドロキシエチルアクリレート)15質量部、ジシクロペンタニルジアクリレート(日本化薬社製「KAYARAD R−684」)15質量部、
(B)単官能(メタ)アクリレートとして、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−140」)45質量部、フェノールエチレンオキサイド2モル変性アクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−101A」)25質量部、
(C)光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(BASFジャパン社製「IRGACURE651」))10質量部、
(D)粒状物質として平均粒径100μmの球状架橋ポリスチレン粒子(アイカ工業社製「GS−100S」)1質量部、
(E)重合禁止剤として2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)(住友化学社製「スミライザーMDP−S」)0.1質量部
【0047】
2.光硬化性接着剤2の作製
以下の(A)〜(E)の成分を混合して光硬化性接着剤2を作製する。
(A)多官能(メタ)アクリレートとして、日本合成社製「UV-3000B」(ポリエステル系ウレタンアクリレート、重量平均分子量18000、ポリオール化合物はポリエステルポリオール、有機ポリイソシアネート化合物はイソホロンジイソシアネート、ヒドロキシ(メタ)アクリレートは2−ヒドロキシエチルアクリレート)20質量部、ジシクロペンタニルジアクリレート(日本化薬社製「KAYARAD R−684」)25質量部、
(B)単官能(メタ)アクリレートとして、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−5700」)35質量部、フェノールエチレンオキサイド2モル変性アクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−101A」)20質量部、
(C)光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(BASFジャパン社製「IRGACURE651」))10質量部、
(D)粒状物質として平均粒径100μmの球状架橋ポリスチレン粒子(アイカ工業社製「GS−100S」)1質量部、
(E)重合禁止剤として2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)(住友化学社製「スミライザーMDP−S」)0.1質量部
【0048】
硬質基板を積層するときは、一般には、面方向に両硬質基板がぴったりと重なるように行う。特に、高い位置精度(例えば許容誤差が10〜30μm程度)が要求される印刷パターン(例えば、携帯電話の表示画面のデザイン)を形成するときは重要である。これを実施する手段としては、各硬質基板の移動方向を拘束して一定の位置に移動させるためのガイドレール、突き当て板又は枠を利用することが考えられる。より高精度の位置決めのためには、各透光性硬質基板の表面に位置合わせのための目印を付し、これを撮像装置で撮像しながら位置調整を行うことが好ましい。そのような方法は例えばWO2011/089963号やWO2011/089964号に記載されており、これらの全開示を本明細書に援用する。
【0049】
積層時の硬質基板の撓みを防止して積層精度を高めるという観点、端面加工時のチッピングを防止するという観点、及びエッチング処理を行う場合にエッチング液が基板間の隙間に浸入するのを防ぐという観点からは、工程bによって得られた分割ブロックにおいて硬質基板同士を貼り合わせている接着剤は、工程bにおける端面加工によって研削される予定の部位全体に存在し、且つ、各硬質基板の接着面の面積の90%以上であることが好ましく、95%以上を占めることがより好ましい。
図5の(x)に示すように、工程bを実施するときに分割ブロックの端面16において、基板間に接着剤の存在しない隙間が存在すると端面加工時にチッピングが生じやすくなる一方で、
図5の(y)に示すように、基板間が接着剤で充填されることで接着剤が基板を補強する役割を果たし、端面加工時にチッピングが抑制される。
【0050】
<工程b>
図2を参照すると、工程bでは、前記硬質基板積層体10を厚み方向に分割し、所望の数の分割された硬質基板積層体14(以下、「分割ブロック」という。)を形成する。前記硬質基板積層体10厚み方向への分割は例えば
図2に示す切断線13に沿って行うことができる。分割方法は特に制限はないが、円板カッター(ダイヤモンドディスク、超硬合金ディスク)、固定砥粒式又は遊離砥粒式ワイヤソー、レーザービーム、エッチング(例:フッ酸や硫酸等を用いた化学エッチングや電解エッチング)、ウォータージェット及び赤熱帯(ニクロム線)をそれぞれ単独で又は組み合わせて使用して、同サイズの直方体形状に分割する方法が挙げられる。エッチングは分割後の切断面の表面処理に用いることもできる。
【0051】
工程bの後において、分割ブロックを構成する各硬質基板の工程cを実施予定の対向する二つの端面の距離(硬質基板の幅)がばらばらだと工程cの安定的な実施に支障がでるので、硬質基板の幅はばらつきが少ないことが望ましい。具体的には、寸法誤差が100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましい。ここで、寸法誤差とは工程cを実施する一つの分割ブロック内で最も大きな幅と小さな幅の差のことであり、例えば分割ブロックをマイクロメーターで分割ブロックの4つの角と中央部を測定し測定された最も大きな値から最も小さい値を引くことで得られる。
【0052】
<工程c>
図3を参照すると、工程cでは、所定の間隔で並列に配置された回転砥石15の間に分割ブロック14を相対移動させて分割ブロックの対向する二つの端面16を同時に研削する。一度の加工処理で複数の硬質基板の端面を加工できることに加えて、二つの端面が平坦化できるので、生産効率の向上に寄与する。分割ブロックが直方体のときは、本工程を合計2回実施すれば、四つすべての端面を処理することもできる。更に、
図3に示すように、複数の分割ブロックを積層する及び/又は移動方向に横並びすることにより、複数の分割ブロックに対してまとめて工程cを実施することもできる。これにより、更に多くの硬質基板の端面処理を一括して行うことが可能になる。
【0053】
工程cを実施する前の分割ブロックの幅と二つの回転砥石の中心軸を結ぶ直線上の距離dとの差が、一度の研削処理で減少する分割ブロックの幅に相当する。工程cを実施する前の分割ガラスブロックの幅が二つの回転砥石の中心軸を結ぶ直線上の距離dに比べて過大な場合、端面処理時に大きな負荷がかかり、分割ブロックや回転砥石の破損の危険性が高くなる。一方で、工程cを実施する前の分割ブロックの幅が距離dに比べて小さすぎると研削が非効率となる。よって、一度の研削処理によって減少させる分割ブロックの幅は片方の端面につき10〜300μm程度とするのが好ましく、15〜200μmとするのがより好ましい。工程cは必要なだけ繰り返すことができる。工程bで生じた寸法誤差やチッピングを無駄なく有効に除去するという観点からは片方の端面につき、全体で30〜500μm幅を減少させるまで工程cを繰り返すことが好ましく、50〜300μm減少させるまで工程cを繰り返すことがより好ましい。分割ブロックの幅全体としては当該数値の2倍の値だけ減少することになる。
【0054】
工程cを繰り返す場合は、最初は表面粗さの大きい砥石を使用し、仕上げに表面粗さの小さな砥石を使用することが好ましい。研削後の分割ブロックの端面は表面粗さの小さな砥石を使用した方が平坦化するが、表面粗さの小さな砥石は研削効率が低いので、当初から表面粗さの小さな砥石を使用すると研削に必要な繰り返し回数が増える。また、表面粗さの小さな砥石は寿命が短いので、仕上げ用に使用することで使用頻度を減らすことができる。これにより砥石の交換頻度を低くすることもできる。
【0055】
例示的には、400番以下、好ましくは150〜350番の粒度の砥石を繰り返しの最初の処理に使用し、必要に応じて番手を上げていき、400番超、好ましくは500〜800番の粒度の砥石を繰り返しの最後の処理に使用する。必要以上に砥石の番手を変更することはなく、通常は荒削り用と仕上げ用の二種類用意すれば十分である。番手はJIS R 6001に基づく。
【0056】
分割ブロック14はその上下面が二つの回転砥石15の中心軸に直交するように配置し、分割ブロック14はこれら回転砥石15の中心軸に直交する方向に相対移動する。相対移動は、回転砥石及び分割ブロックの何れか又は両者を動かすことにより実施することができる。相対移動はモーター等の駆動手段により自動的に行われるようにすることもできる。相対移動時の速度をインバーター等により制御することもできる。分割ブロック14と回転砥石15をこのような位置関係で相対移動させることで、加工時に硬質基板のエッジに対する負荷が大きく軽減され、チッピングの発生確率を大幅に低下させることができるので、生産性が大きく向上する。逆に言えば、分割ブロック14の上下面を二つの回転砥石15の中心軸に平行に配置すると、加工時に硬質基板のエッジに対する負荷が大きくなって、チッピングが生じやすい。
【0057】
回転砥石の回転方向に制限はないが、
図3の矢印で示すように、分割ブロックの進行を妨害するような方向とするのが研削効率の観点から好ましい。また、両端面を均一に加工して寸法精度を向上させる観点からは、二つの回転砥石は回転速度や材質を同一にするのが一般的である。回転砥石は、例えば、砥粒を結合剤により結合し、作製する。砥粒の材質としては、限定的ではないが、ダイヤモンドや窒化ホウ素等が挙げられる。ガラスを研削する場合、ダイヤモンドが好ましい。結合剤の材質としては、限定的ではないが、金属粉末等を用いたメタルボンド、熱硬化性樹脂等を用いたレジンボンド、金属粉末と熱硬化性樹脂等を併用したメタルレジンボンド等が挙げられる。中でも本用途においてはメタルボンドが一般的に用いられる。メタルボンドは、複数の金属をはじめ様々な物質が配合、焼結されることにより作られる。メタルボンドを使用した砥石としては、台金に一層のみダイヤモンドをニッケルメッキにより規格量まで埋め込んだ電着砥石、及び、台金がなく、ダイヤモンドがメッキを介して緻密に結着された電鋳砥石が挙げられる。これらの中では、砥石の形状維持性の観点から、電鋳砥石が好ましい。メッキ層の材質としては特に制限はないが、一般的にはニッケルを主成分とすることが多い。
【0058】
寸法精度を向上させる観点からは、分割ブロック14を治具17で固定してから行うのが好ましい。治具17は分割ブロック14を上下方向及び/又は進行方向に挟むためのクランプ板18を有することが好ましい。クランプ板18はクランプボルト19により締め付け強度を調整可能である。治具17は、二つの回転砥石15の中心軸間の距離の中央を直角に通過する直線状のレール25上を移動可能にすることもできる。
【0059】
治具17は、寸法精度を向上させる観点から、分割ブロック14を二つの回転砥石の間の中央に配置させる(センタリングする)ための位置決め手段を有することが好ましい。位置決め手段としては、特に制限はないが、例えば、
図4に示すように、治具17は分割ブロック14の上下面に平行で進行方向に直角な方向にセンタリングに必要な距離だけ離れたところに、突き当て板20をボルト28、29等の固定手段で着脱可能に取り付け、これを位置決め手段として使用することができる。距離はスペーサー21を治具の本体26と突き当て板20の間に挟むことで調節可能である。突き当て板20に分割ブロック14の片側端面が当接するように治具17に分割ブロック14を治具にセッティングすることでセンタリングを完了することができる。
【0060】
更に高精度の位置決めを実施するために、前記突き当て板20とは反対側の位置にもスペーサー23を介して突き当て板22を着脱可能に取り付け、進行方向前後に設けたボルト28、29の締め込み具合を調整することにより、分割ブロック14の端面が進行方向に平行となるように微調整することができる。平行度を測定しながら微調整するため、締め込み距離を計測できるダイヤルゲージ27を分割ブロック14や治具17に設置することができる。センタリングが完了した後は、突き当て板20、22及びスペーサー21、23は取り外すことができる。
【0061】
分割ブロック14の治具への固定は、センタリングを実施する前に緩く仮締めしておき、センタリングを実施した後に本締めする方法が位置決めを容易に実施する上では好ましい。
【0062】
<工程d>
工程cの後、研削を行った端面を研磨処理する工程dを実施することが好ましい。工程dを実施することにより、硬質基板の端面がより平滑になると共に、チッピングの発生が抑制されて強度が格段に向上する。工程dによって減少する硬質基板の幅は工程cよりも少なくするのが一般的であり、典型的には50μm未満であり、より典型的には20〜45μmである。研磨方法としては、限定的ではないが、機械研磨、化学研磨、電解研磨及びこれらの組み合わせが挙げられる。機械研磨の具体例として回転ブラシによる研磨が挙げられる。この時は、酸化セリウム等の研磨剤を含有したスラリーを研磨面に接触させながら行ってもよい。ブラシの材質は特に制限はないが、例えば、ナイロン、PVC、及びPPが挙げられる。豚毛、羊毛、馬毛、真鍮、酸化セリウム、酸化アルミニウム、シリコンカーバイド、及びアルミニウムシリケイト等をナイロン、PVC、及びPP等に練り込むこともできる。化学研磨の具体例としてはエッチングが挙げられる。エッチングはエッチング液に被処理物を浸漬するなどによって接触させることで実施することができる。エッチング液としては特に制限はないが、例えばフッ酸、リン酸、塩酸、及びこれらのアンモニウム塩等が挙げられる。
【0063】
<形状加工>
工程bと工程cの間、及び/又は、工程cの後に任意の形状加工を行うことができる。工程dを実施する場合は、工程cと工程dの間、及び/又は、工程dの後に、任意の形状加工を行うこともできる。分割ブロックの状態で目的とする板状製品の形状に一体的に加工を行うことができるため、板状製品の生産速度を格段に高められるという利点がある。形状加工は公知の任意の手段によって行えばよいが、例えば回転砥石、ルーター、ドリル、エッチング等による外形加工、超音波振動ドリルやエッチングによる孔開け、バーナーを用いた火炎加工、レーザービーム及びウォータージェット等による切断加工等が挙げられる。形状加工は端面の平坦化以外を目的とするのが一般的であるが、それに限定するものではない。加工方法はそれぞれ単独で又は組み合わせて使用することができる。エッチングは形状加工後の表面処理に用いることもできる。
【0064】
<板状製品の形成>
以上のようにして硬質基板積層体の加工方法を実施した後は、分割ブロックを剥離し、複数の板状製品を形成することができる。分割ブロックの剥離方法は接着剤に応じて選択すればよいが、例えば加熱することにより剥離可能である。光硬化性接着剤の場合の加熱方法の具体例としては、固着剤がフィルム状に軟化して各板状製品に上手く分離するため、温水に形状加工後の透光性硬質基板積層体を浸漬する方法が好ましい。好適な温水の温度は採用する固着剤によって異なるが、通常は60〜95℃程度、好ましくは80〜90℃である。UVなどの光を照射することにより、剥離し易くすることもできる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、種々のバリエーションが可能である。