特許第5956504号(P5956504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956504
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】引戸ガイド装置
(51)【国際特許分類】
   E05D 13/00 20060101AFI20160714BHJP
【FI】
   E05D13/00 K
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-98265(P2014-98265)
(22)【出願日】2014年5月12日
(65)【公開番号】特開2015-214837(P2015-214837A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2014年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】592114703
【氏名又は名称】株式会社ベスト
(74)【代理人】
【識別番号】100083873
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 秀一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 基次
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳一郎
【審査官】 仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−20049(JP,A)
【文献】 特開平11−71954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 13/00
E05D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸が走行する軌道下の床面に凹設した下穴に出没自在に内設した床側ガイドの昇降体を、引戸の下端面に形成した扉側ガイドの走行溝に突出状態で係合して引戸の走行を案内する引戸ガイド装置において、
前記床側ガイドは、
上端開口の筒体で、その開口内縁から外向きに延びる鍔状フランジを形成し、該鍔状フランジを穴縁に係止して前記下穴内に固設する嵌着手段と、前記昇降体を組み込む上端開口の筒体で、その開口内縁から外向きに延びる環状鍔部を形成し、該環状鍔部を前記嵌着手段の前記開口内縁に載せて前記嵌着手段に嵌着するケースを備え、
前記嵌着手段には、その上端開口の開口内縁と前記ケースの前記鍔状フランジとの間に、前記ケースの環状鍔部が載った前記嵌着手段の前記開口内縁の方を低くした段差を設けてなることを特徴とする、引戸ガイド装置。
【請求項2】
前記嵌着手段は、前記段差を、前記ケースを嵌着して前記環状鍔部を前記嵌着手段の前記開口内縁に載せたとき、前記環状鍔部が前記鍔状フランジを越えて突出しない高さに設定してなることを特徴とする、請求項1に記載の引戸ガイド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸が走行する床面に凹設した下穴に出没自在に内設した昇降体を、引戸の下端面に形成した走行溝に突出状態で係合し、引戸を横振れしないで直進するように案内する引戸ガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の引戸ガイド装置は、引戸が走行する床面に間隔をおいて下穴を凹設し、下穴には、それぞれ昇降体を出没自在に内蔵したケースを内設する一方、引戸の下端面に凹設した細長い走行溝の戸先側と戸尻側に、磁石を有した磁着体を配設し、引戸の開閉時に磁着体が床側の昇降体の上に至ると、磁力により昇降体を引き上げて走行溝に係合し、引戸が横振れしないで直進するように案内する構造のものが知られている(特許文献1参照)。この引戸ガイド装置は、ケースの外周面に係止用突起を凸設し、この係止用突起が下穴の内周面に係止されることにより昇降体のケースを床面に埋設固定される構造になっている。
【0003】
この引戸ガイド装置において、一般に、室内の床面は、木質材からなることが多いが、近年、マンションの増加に伴い木質材ではなくRC下地で施工される場合が多く、その場合は床面がコンクリートであるために所望の寸法、形状に下穴を正確に形成することが困難になっている。そのため、コンクリート製床面に形成する下穴は、不正確な寸法、形状で且つ内周面が粗くて硬いものとなっている。従って、そのような下穴にケースがそのまま収容されると、その外周面の係止用突起は下穴の硬い内周面に係止され難くいために、ケースが床面に確実に埋設固定されないという問題があった
【0004】
そこで、従来の引戸ガイド装置の中に、たとえば図8に示すように、コンクリート製床面fに凹設した下穴1内に合成樹脂製の略筒状の保持部材2を固設し、この保持部材2内に、昇降体3を内蔵したケース4を収容することになるので、ケース4の外筒体5の外周面に形成した係止用突起5aが下穴1の内周面に係止することで、ケース4が床面fに確実に埋設固定されるようにしたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−326402号公報
【特許文献2】特開2014−5669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の引戸ガイド装置において、昇降体3のケース4は、コンクリート製下穴1内に固設した保持部材2内に、その底板部2b上に重なって底部4aが載った状態で埋設固定されるから、昇降体3が収納状態にあるケース4の内筒体6の上端部6aが保持部材2の鍔状フランジ部2aより一段高く床面fから出っ張り、通行時にその出っ張りにつまずいて転んだりする危険性があり安全性に欠けるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、床面に歩行の妨げになる出っ張りのない安全な引戸ガイド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、引戸10が走行する軌道下の床面F2に凹設した下穴16に出没自在に内設した床側ガイドg2の昇降体15を、引戸10の下端面10aに形成した扉側ガイドg1の走行溝11に突出状態で係合して引戸10の走行を案内する引戸ガイド装置Gにおいて、前記床側ガイドg2は、上端開口の筒体で、その開口内縁19から外向きに延びる鍔状フランジ19aを形成し、該鍔状フランジ19aを穴縁に係止して前記下穴16内に固設する嵌着手段13と、前記昇降体15を組み込む上端開口の筒体で、その開口縁から外向きに延びる環状鍔部14bを形成し、該環状鍔部14bを前記嵌着手段の前記開口内縁19に載せて前記嵌着手段13に嵌着するケース14を備え、前記嵌着手段13には、その上端開口の開口内縁と前記ケースの前記鍔状フランジ19aと前記開口内縁19との間に、前記ケース14の環状鍔部14bが載った前記嵌着手段の前記開口内縁19の方を低くした段差hを設けてことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の引戸ガイド装置Gにおいて、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、前記嵌着手段13は、前記段差hを、前記ケース14を嵌着して前記環状鍔部14bを前記嵌着手段の前記開口内縁19に載せたとき、前記環状鍔部14bが前記鍔状フランジ19aを越えて突出しない高さに設定してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、床側ガイドにおいて、嵌着手段には、鍔状フランジと開口内縁との間に該開口内縁の方を低くした段差を設けることにより、昇降体が収納状態のケースが嵌着手段の鍔状フランジより高く突出することが抑えられるから、床面に歩行の妨げになる出っ張りが殆どなくなり、引戸周りの安全性を向上させることができる。
【0011】
しかも、請求項2に記載の発明によれば、床側ガイドにおいて、嵌着手段は、開口内縁と外周の鍔状フランジとの間の段差を、ケースを嵌着して環状鍔部を載せたとき、環状鍔部が鍔状フランジを越えて突出しない高さに設定しているため、昇降体が収納状態のケースが嵌着手段の鍔状フランジより高く突出することがないから、床面に歩行の妨げになる出っ張りがなくなり、引戸周りの安全性をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一例である引戸ガイド装置を、突出状態の昇降体が走行溝に係合して引戸の走行を案内する状態を示す縦断面図である。
図2】(A)同引戸ガイド装置を、床側ガイドを昇降体の収納状態において示す平面図(B)X−X断面図である。
図3】同引戸ガイド装置の床側ガイドを、嵌着手段とケースに分解して示す斜視図である。
図4】昇降体が収納状態で床側ガイドを示す組立斜視図である。
図5】昇降体が収納状態の床側ガイドを縦に破断して示す斜視図である。
図6】(A)昇降体が突出状態の床側ガイドを示す平面図(B)図A中線Y−Y断面図である。
図7】引戸ガイド装置を(A)突出状態の昇降体を走行溝に係合して引戸の走行を案内する通常の状態を示す縦断面図(B)突出状態の昇降体を走行溝に係合して引戸の走行を案内するとき、引戸が煽られたために昇降体のケースが嵌着手段から外れて衝撃吸収状態を示す縦断面図である。
図8】従来の引戸ガイド装置の床側を(A)ケースから昇降体が突出した状態において示す平面図(B)縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一例である引戸ガイド装置を、突出状態の昇降体が走行溝に係合して引戸の走行を案内する状態を示し、図2は同じ引戸ガイド装置の床側ガイドを昇降体の収納状態において示す。図示例では、天井側に固定した引戸レール(図示省略)に戸車を介して係合した引戸10を開閉方向に走行自在に吊持し、引戸10を走行して開口部を開閉するとき、本発明の引戸ガイド装置Gを作動し、床面F2上を開閉方向に走行する引戸10が横振れしないで直進するように案内する。
【0015】
引戸ガイド装置Gは、引戸10の下端面10aの長さ方向に沿って走行溝11に内設する扉側ガイドg1と床Fに配設する床側ガイドg2とからなる。扉側のガイドg1は、走行溝11において、両端の凹溝11aに内設する一対の磁着手段(図示省略)と、両端凹溝間の中間凹溝に敷設するガイドレール12とからなる。磁着手段は磁石を備え、磁力により床側ガイドg2の後述する昇降体15を突出させ、その突出状態の床側ガイドg2の昇降体15を、引戸10の走行溝11に係合して引戸10の走行を案内する。
【0016】
一方、床側ガイドg2は、引戸10が走行する軌道下の床Fに間隔を置いて複数備え、それぞれ嵌着手段13と、嵌着手段13に嵌着するケース14と、ケース14に出没自在に内設する昇降体15を備える。図示例の床Fは、モルタルで床本体F1を構築し、床本体F1上に塩化ビニルシートを葺いて床面F2を形成する。床Fには、引戸10が走行する軌道下の床面F2に、下穴16を間隔を置いて予め凹設する。
【0017】
嵌着手段13は、図3図4および図5に示すように、全体に上端開口の桶形筒状に樹脂により一体に成形し、下部側の椀状籠形掛け止め部17と上部側の保持部18からなる。掛け止め部17は、外周に斜め上向きに多数の引っ掛け爪17a…を突設し、内部に雌ねじ穴を有するボス部17bを立設する。保持部18は、内周が八面体で、図中上側の開口内縁19に、外向きに延びる鍔状フランジ19aを形成する一方、図中下側の掛け止め部17との境界位置には係止段部21を形成する。そこで、保持部18は、内周面20での厚さを係止段部21から開口内縁19に向かうに従い次第に薄くして内周面20にテ―パを付けて形成し、内周面20に嵌着したケース14との間に隙間Sを設ける構成にする。他方、開口内縁19は、その外周のフランジ19aとの間を段状に形成して間に段差hを設ける。段差hは、保持部18にケース14を嵌着して環状鍔部14bを開口内縁19に載せて係止したとき、環状鍔部14bが鍔状フランジ19aを越えて突出しない高さに設定する。
【0018】
ケース14は、樹脂製で、上下両端を開口し、嵌着手段13の内形に合わせて外周が八面体状のケース本体部14aと、ケース本体部14aの図中上端に開いた突出口22の開口縁から円形鍔状に延びるフラットな環状鍔部14bとからなる。ケース本体部14aは、内側に重ねて上側開口が突出口22の筒状ガイド穴23を形成する。ガイド穴23は、円周壁23aの一部が平面23bの断面D形の回転規制穴で形成し、突出口22の開口縁には、円周部位に抜け止め顎部23cを内向きに突設する。更に、ケース本体部14aは、外壁部の下端の対向部位に連結爪14cを外向きに突設する。一方、環状鍔部14bは、ガイド穴23の平面23bへ連なる突出口22の開口縁に向け次第に低く勾配になった案内溝29を設ける。
【0019】
昇降体15は、それぞれケース14のガイド穴23に入れ子状に重ねて組み入れる円筒状の第1凸部材24と、第1凸部材24に入れ子状に重ねて組み入れるピン状の第2凸状部材25とからなる。
【0020】
第1凸状部材24は、ケース14のガイド穴23に合わせて、一部が平面24aの断面D形の回転規制穴が貫通した樹脂製の円筒体で、図中下端の周縁に抜け止め鍔部24bを外向きに突設する。第2凸状部材25は、図中上側になる先端の頭部25aが笠状のビス形をなす金属の磁性材からなり、基端の外周には、その端面に抜け止めリング26のを有する。
【0021】
そこで、床側ガイドg2は、まず、突出口27から第1凸状部材24内に第2凸状部材25を挿入してから、円周溝に抜け止めリング26を嵌着して抜け止めし、第2凸状部材25を、第1凸状部材24に入れ子式に重ねて突出口27から出没自在に連結して昇降体15を組み立てる。それから、昇降体15をケース14のガイド穴23に下側開口28から嵌入する。そのとき、第1凸状部材24を位置決め保持した状態で、ガイド穴23内に入れ子状に重ねて突出口22から出没自在に内設する。
【0022】
嵌着手段13は、図1および図2に示すように、引戸10が走行する軌道の下の床面F2に間隔をあけて予め凹設した下穴16内に、接着剤、シーリング剤、コーキング剤等の充填剤30を注入し、それが未硬化の状態で嵌め入れ、穴周壁に引っ掛け爪17a…を引っ掛けて抜け止め状態で内設する。また、掛け止め部17のボス部17bを止めネジ35で穴底16aに捩じ込む。そして、充填剤30が硬化することによって嵌着手段13は下穴16内に固設される。次いで、下穴16内で嵌着手段13にケース本体部14aを嵌め込んでボス部17b上に載置する一方、環状鍔部14bを開口内縁19に載せて係止した状態で、連結爪14dを係止段部21に係止して抜け止めし、ケース14を嵌着手段13の保持部18に嵌着する。そのとき、嵌着手段13は、保持部18の内周面20において、ケース本体部14aとの間に隙間Sを生ずる遊嵌状態でケース14を嵌着する。以上のように床側ガイドg2を組み立て、引戸10が走行移動する軌道下の床面F1に設置する。
【0023】
従って、本発明の引戸ガイド装置Gでは、床側ガイドg2において、嵌着手段13の開口内縁19は、その外周の鍔状フランジ19aとの間を段状に形成して間に段差hを設け、その段差hを、保持部18にケース14を嵌着して環状鍔部14bを載せたとき、環状鍔部14bが鍔状フランジ19aを越えて突出しない高さに設定しているため、昇降体15が収納状態のケース14が嵌着手段13の鍔状フランジ19aより高く突出することがないから、床面F2に歩行の妨げになる出っ張りが殆どなくなり安全性を向上させることができる。
【0024】
さて、図示例の引戸ガイド装置Gでは、引戸10の走行時、図7(A)に示すように、扉側ガイドg1の磁石の磁力により昇降体15の第2凸状部材25と第1凸状部材24を床側ガイドg2のケース14の突出口22から順次、入れ子式に立ち上げて、第2凸状部材25の頭部25aを、引戸10の走行に従い、走行溝20のガイドレール12に係合して引戸10を開閉方向に直進するように案内する。ところが、走行時、引戸10が煽られて側圧Pが加わることがあると、その際にケース14が強い固定状態にあることが災いし、図示例のように床本体F1がコンクリートよりも強度の落ちるモルタルからなる場合にモルタルやタイルカーペットや塩化ビニルシートに亀裂やひびが入ったり割れたりして床面を損壊するおそれがある。
【0025】
しかし、図示例の引戸ガイド装置Gでは、床側ガイドg2において、嵌着手段13は、保持部18の内周面20において、ケース本体部14aとの間に隙間Sを生ずる遊嵌状態でケース14を嵌着して可動に配設するから、走行時、例えば図7(B)に示すように、引戸10が煽られて側圧Pが加わると、それに応じて、ケース14が隙間Sを遊動して嵌着手段13の保持部18から外れることで衝撃を緩衝し、その結果、ケース14が嵌着手段13内に強い固定状態にあることに関係なく、たとえ床面F1がコンクリートよりも強度の落ちるモルタル等からなる場合でもモルタル等が割れたりして損壊することを防止することもできる。
【符号の説明】
【0026】
F2 床面
G 引戸ガイド装置
g1 扉側ガイド
g2 床側ガイド
h 段差
M 磁石
10 引戸
10a 引戸の下端面
11 走行溝
13 嵌着手段
14 ケース
15 昇降体
16 下穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8