(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956532
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】筒内圧検出装置
(51)【国際特許分類】
G01L 23/08 20060101AFI20160714BHJP
F02D 35/00 20060101ALI20160714BHJP
G01L 23/22 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
G01L23/08
F02D35/00 368Z
G01L23/22
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-219805(P2014-219805)
(22)【出願日】2014年10月29日
(65)【公開番号】特開2015-215329(P2015-215329A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2015年6月17日
(31)【優先権主張番号】特願2014-87132(P2014-87132)
(32)【優先日】2014年4月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105119
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 孝治
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(72)【発明者】
【氏名】赤崎 修介
(72)【発明者】
【氏名】四方山 正徳
(72)【発明者】
【氏名】饗場 哲也
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/129133(WO,A1)
【文献】
特開2011−164029(JP,A)
【文献】
特表2009−536995(JP,A)
【文献】
特開2004−360626(JP,A)
【文献】
特開平6−22424(JP,A)
【文献】
実開平5−94718(JP,U)
【文献】
特開平3−198514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32
G01L27/00−27/02
F02D35/00
F02M51/00
F02M61/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射装置の先端部に装着される圧力検出素子と、該圧力検出素子から出力される信号を増幅して圧力検出信号を出力する増幅回路を含む増幅回路ユニットとを備え、前記燃焼室内の圧力を検出する筒内圧検出装置において、
前記圧力検出素子、前記増幅回路ユニット、及び前記圧力検出素子と前記増幅回路ユニットとを接続する接続部材を含む筒内圧検出ユニットを前記燃料噴射装置と一体化することによって、筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置を構成し、前記筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置を前記内燃機関に装着し、
前記筒内圧検出ユニットは、前記圧力検出素子が先端部に固定された円筒状のセンサ固定部材と、前記増幅回路ユニットと、前記圧力検出素子と前記増幅回路ユニットとを接続する接続部材とを予め組み上げることによって構成され、前記センサ固定部材が前記燃料噴射装置の先端部に嵌め込まれることを特徴とする筒内圧検出装置。
【請求項2】
前記増幅回路ユニットは、前記燃料噴射装置を制御する制御ユニットから前記燃料噴射装置へ駆動信号を供給する駆動信号線が接続されるコネクタの近傍に配置され、前記コネクタは、前記増幅回路ユニットと前記制御ユニットとの間の接続線の接続端子を含むように構成されることを特徴とする請求項1に記載の筒内圧検出装置。
【請求項3】
前記燃料噴射装置は、該燃料噴射装置を制御する制御ユニットから駆動信号を供給する駆動信号線が接続される接続端子を備える本体コネクタ部を備え、
前記筒内圧検出ユニットは、前記圧力検出信号を前記制御ユニットに供給するための検出信号線が接続される接続端子を備えるサブコネクタ部を備え、該サブコネクタ部は前記本体コネクタ部とは別体に構成されることを特徴とする請求項1に記載の筒内圧検出装置。
【請求項4】
前記増幅回路ユニットは、前記燃料噴射装置の駆動回路を内蔵する金属ケーシングの外側に、モールド材によって被覆された状態または金属ケースに収容された状態で固定されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の筒内圧検出装置。
【請求項5】
前記増幅回路ユニットは、該増幅回路ユニットと、前記圧力検出信号を供給する制御ユニットとの接続状態を、前記制御ユニットで診断するための故障検出用回路を備えることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の筒内圧検出装置。
【請求項6】
前記増幅回路ユニットは、前記増幅回路のゲイン調整を行うための感度調整回路を有することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の筒内圧検出装置。
【請求項7】
前記増幅回路ユニットは、電源を供給する電源線に重畳するノイズ及び/または前記圧力検出信号に重畳するノイズを除去するためのノイズフィルタを備えることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の筒内圧検出装置。
【請求項8】
前記増幅回路ユニットは、フレキシブルプリント配線基板上に構成されていること特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の筒内圧検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼室内の圧力である筒内圧を検出する筒内圧検出装置に関し、特に燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射装置の先端部に装着された圧力検出素子を備える筒内圧検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内燃機関の点火プラグや燃料噴射弁などに装着される圧力検出素子と、該圧力検出素子の電圧変化を増幅して圧力検出信号を出力する増幅回路(チャージアンプ)とを備える燃焼圧センサが示されている。この燃焼圧センサでは、圧力検出素子は、例えば燃料噴射弁を取り付けるナットによって燃料噴射弁と一体に燃焼室外側に固定され、さらに増幅回路は、圧力検出素子が固定されたセンサ固定部に一体に設けられる。
【0003】
また特許文献2には、燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁の先端部に圧力検出素子を装着し、この圧力検出素子を用いて筒内圧を検出する筒内圧検出装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4407044号公報
【特許文献2】国際公開WO2012/115036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示される燃焼圧センサは、燃料噴射弁を固定するときにセンサ固定部を同時にナットに挟み込んで固定する必要があるため、取り付ける際の作業性の点で改善の余地があった。
【0006】
また特許文献2に示されるように、燃料噴射弁の、燃焼室内に挿入される部分の先端部に圧力検出素子を配置する場合には、圧力検出素子と増幅回路とを近接して配置する構成を作業性よく実現することが望まれていた。
【0007】
本発明は上述した点に着目してなされたものであり、燃料噴射装置(燃料噴射弁)の先端部に圧力検出素子を装着して筒内圧を検出し、燃料噴射装置の駆動信号の影響を低減するとともに、内燃機関に装着する際の作業性を高めることができる筒内圧検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射装置(1)の先端部に装着される圧力検出素子(2)と、該圧力検出素子から出力される信号を増幅して圧力検出信号を出力する増幅回路を含む増幅回路ユニット(11)とを備え、前記燃焼室内の圧力を検出する筒内圧検出装置において、前記圧力検出素子(2)、前記増幅回路ユニット(11)、及び前記圧力検出素子と前記増幅回路ユニットとを接続する接続部材(12)を含む筒内圧検出ユニット(101)を前記燃料噴射装置(1)と一体化することによって、筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置(100)を構成し、前記筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置を前記内燃機関に装着し
、前記筒内圧検出ユニット(101)は、前記圧力検出素子(2)が先端部に固定された円筒状のセンサ固定部材(13)と、前記増幅回路ユニット(11)と、前記圧力検出素子と前記増幅回路ユニットとを接続する接続部材(12)とを予め組み上げることによって構成され、前記センサ固定部材(13)が前記燃料噴射装置の先端部(4)に嵌め込まれることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、圧力検出素子、増幅回路ユニット、及びそれらを接続する接続部材を含む筒内圧検出ユニットを燃料噴射装置と一体化することによって、筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置が構成され、その筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置が内燃機関に装着されるので、圧力検出素子と増幅回路ユニットとを近接させることによって、燃料噴射装置の駆動信号の影響を低減するとともに、筒内圧検出ユニットが装着されていない燃料噴射装置と同様の作業で内燃機関に実装することが可能となり、作業性を高めることができる。
さらに、センサ固定部材、増幅回路ユニット、及びそれらを接続する接続部材を予め組み上げて筒内圧検出ユニットが構成され、その筒内圧検出ユニットの、圧力検出素子が固定された円筒状のセンサ固定部材を燃料噴射装置の先端部に嵌め込むことによって、筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置が構成されるので、筒内圧検出ユニットを燃料噴射装置と一体化する際の作業性を高めることができる。
【0012】
請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の筒内圧検出装置において、前記増幅回路ユニット(11)は、前記燃料噴射装置(1)を制御する制御ユニット(60)から前記燃料噴射装置へ駆動信号を供給する駆動信号線が接続されるコネクタ(51)の近傍に配置され、前記コネクタ(51)は、前記増幅回路ユニット(11)と前記制御ユニット(60)との間の接続線の接続端子(31〜33)を含むように構成されることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、増幅回路ユニットと制御ユニットとの間の接続線の接続端子が、燃料噴射装置の駆動信号線が接続されるコネクタに含められて、増幅回路ユニットへの電源の供給及び圧力検出信号の伝送と燃料噴射装置駆動信号の伝送とを1つのコネクタを介して行うことが可能となり、組み立て時の作業を容易化するとともに、増幅回路ユニットを含めた燃料噴射装置の小型化を図ることができる。
【0014】
請求項
3に記載の発明は、請求項
1に記載の筒内圧検出装置において、前記燃料噴射装置は、該燃料噴射装置を制御する制御ユニット(60)から駆動信号を供給する駆動信号線が接続される接続端子(21〜23)を備える本体コネクタ部(51a)を備え、前記筒内圧検出ユニット(101)は、前記圧力検出信号を前記制御ユニットに供給するための検出信号線が接続される接続端子(31〜33)を備えるサブコネクタ部(51b)を備え、該サブコネクタ部(51b)は前記本体コネクタ部(51a)とは別体に構成されることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、圧力検出信号が伝送される検出信号線が、比較的大きな電流が流れる駆動信号線から離間し、駆動信号が筒内圧検出信号に与える影響を軽減することができる。
【0016】
請求項
4に記載の発明は、請求項1から
3の何れか1項に記載の筒内圧検出装置において、前記増幅回路ユニット(11)は、前記燃料噴射装置の駆動回路(24)を内蔵する金属ケーシング(3)の外側に、モールド材(10,11a)によって被覆された状態または金属ケースに収容された状態で固定されることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、増幅回路ユニットが、燃料噴射装置の駆動回路を内蔵する金属ケーシングの外側に、モールド材によって被覆された状態または金属ケースに収容された状態で固定されるので、燃料噴射装置と一体化した状態での取り扱いが容易となり、かつ増幅回路の防水、断熱、及び絶縁の効果を確実に得ることができる。
【0018】
請求項
5に記載の発明は、請求項1から
4の何れか1項に記載の筒内圧検出装置において、前記増幅回路ユニット(11)は、該増幅回路ユニット(11)と、前記圧力検出信号を供給する制御ユニット(60)との接続状態を、前記制御ユニット(60)で診断するための故障検出用回路(47)を備えることを特徴とする。
この構成によれば、故障検出用回路によって、増幅回路ユニットと、圧力検出信号を供給する制御ユニットとの接続状態を、制御ユニットで診断することが可能となる。
【0019】
請求項
6に記載の発明は、請求項1から
5の何れか1項に記載の筒内圧検出装置において、前記増幅回路ユニット(11)は、前記増幅回路の感度調整を行うための感度調整回路(46)を有することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、筒内圧検出装置を機関に装着する前に、圧力検出素子と増幅回路とを組み合わせた状態で感度調整を行うことが可能となる。圧力検出素子の出力電圧を増幅回路によって積分しつつ増幅することによって圧力検出信号が得られるが、圧力検出素子及び増幅回路の特性ばらつきによって検出感度がばらつくことが確認されている。したがって、圧力検出素子と増幅回路とを組み合わせ状態で増幅回路のゲイン調整を行うことで、圧力検出素子及び増幅回路の特性ばらつきの影響をともに排除し、正確な圧力検出を行うことが可能となる。
【0021】
請求項
7に記載の発明は、請求項1から
6の何れか1項に記載の筒内圧検出装置において、前記増幅回路ユニット(11)は、電源を供給する電源線(53)に重畳するノイズ及び/または前記圧力検出信号に重畳するノイズを除去するための電源ノイズフィルタ(49)を備えることを特徴とする。
この構成によれば、電源線を介してあるいは直接的に圧力検出信号にノイズが混入することを確実に防止することができる。
【0022】
請求項
8に記載の発明は、請求項1から
7の何れか1項に記載の筒内圧検出装置において、前記増幅回路ユニット(11)は、フレキシブルプリント配線基板上に構成されていること特徴とする。
この構成によれば、増幅回路ユニットがフレキシブルプリント配線基板上に構成されるので、増幅回路を小型化し、燃料噴射装置への装着を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施形態にかかる筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置の側面図である。
【
図3】
図1に示す接続部材の構造を説明するための図である。
【
図4】筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置の先端部近傍の構造を示す断面図である。
【
図5】
図1に示す増幅回路ユニットの構成を示すブロック図である。
【
図7】燃料噴射装置の駆動用ソレノイドと、電子制御ユニットとの接続を説明するための図である。
【
図8】
図1に示す構成の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態にかかる筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置を示す斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示された燃料噴射装置の一部を視点を変えて示す斜視図である。また、
図2(a)は
図1(a)に示された燃料噴射装置の側面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示す燃料噴射装置に合成樹脂モールドが被覆された状態を説明するための図である。
図1及び
図2(a)は、説明のために合成樹脂モールドが無い状態を示している。
【0025】
筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置100は、燃料噴射装置1に筒内圧検出ユニット101を装着することによって構成される。本実施形態では、燃料噴射装置1に筒内圧検出ユニット101を一体化することによって構成された筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置100を内燃機関に装着して内燃機関の筒内圧が検出される。
【0026】
燃料噴射装置1は、内燃機関の燃焼室内に燃料を噴射する装置であり、内部に周知の構成要素である弁体、弁体を駆動するソレノイド(駆動回路)、弁体を付勢するスプリングなどを有し、先端部の噴射口5から燃料を噴射する。燃料噴射装置1は、ソレノイドが内蔵される金属製の大径部ケーシング3と、先端部に噴射口5が設けられた金属製の小径部ケーシング4とを有する。
【0027】
筒内圧検出ユニット101は、圧力検出素子2と、圧力検出素子2が先端部に固定された円筒状のセンサ固定部材13と、増幅回路ユニット11と、圧力検出素子2と増幅回路ユニット11を接続する接続部材12とを予め組み上げることによって構成され、センサ固定部材13を、燃料噴射装置1の小径部ケーシング4の先端側(噴射口5側)に嵌め込むことによって、筒内圧検出ユニット101が燃料噴射装置1に装着される。したがって、圧力検出素子2は、燃料噴射装置1の先端部(噴射口5を囲む位置)に装着され、接続部材12によって増幅回路ユニット11に接続されている。増幅回路ユニット11は、燃料噴射装置1の大径部ケーシング3から少し離れた位置に配置され、増幅回路ユニット11と大径部ケーシング3との間には、合成樹脂モールド10が介在するように構成される(
図2(b)参照)。
【0028】
図3は、接続部材12の構造を説明するための図であり、
図3(a)は平面図、
図3(b)は、
図3(a)のA−A線断面図である。接続部材12は、銅線17を接着剤16(エポキシ系樹脂)を介してポリイミド製の被覆部材14,15によって被覆して構成される、フレキシブル配線基板として知られる構造を有し、断線することなく容易に折り曲げ可能なものである。接続部材12は、圧力検出素子2に接続される先端部近傍(
図3(a)にRINで示す部分)は、
図4に示すように金属製のセンサ固定部材13の内側を通り、先端部近傍部分RINと、増幅回路ユニット11との間は、燃料噴射装置1の大径部ケーシング3の外周面に沿うように配置されている。ただし、増幅回路ユニット11との接続部近傍部分12aは、大径部ケーシング3の外周面から離れる。
【0029】
増幅回路ユニット11は、
図1及び
図2においては、透明ケースに収容されているように示されているが、これは説明のために示したものであり、実際にはフレキシブルプリント配線基板上に部品が配置されて電気的に接続されるとともに、合成樹脂モールド11aで全体を被覆することによって構成されている。したがって以下の説明では「合成樹脂モールド11a」という。
【0030】
増幅回路ユニット11には、コネクタピン31〜33が固定されており、コネクタピン31〜33は、燃料噴射装置1のソレノイド(駆動回路)に駆動信号を供給する駆動信号線が接続されるコネクタピン21〜23とともにコネクタ部51の一部を構成する。コネクタ部51のコネクタピン21〜23,31〜33と嵌合可能なコネクタ部材が、燃料噴射装置1を制御する電子制御ユニット(以下「ECU」という)60(
図5,7参照)からの接続線の先端部に固定され、そのコネクタ部材が嵌合することによって、接続線と各コネクタピン21〜23,31〜33とが接続される。
【0031】
増幅回路ユニット11及び接続部材12は、
図2(b)にクロスハッチングを付して示すように合成樹脂モールド10によって被覆され、燃料噴射装置1に固定される。
図2(b)に示す範囲RM1及びRM2では、燃料噴射装置1の周囲全体が合成樹脂モールド10によって被覆され、範囲RM3では、増幅回路ユニット11及び接続部材12の近傍が被覆される。また、コネクタ部51は、
図2(c)に示すようにコネクタピン21〜23,31〜33が露出し、接続線の先端部に固定されたコネクタ部材(図示せず)が嵌合可能に構成されている。
図2(c)は、
図2(b)の矢印Bで示す方向からコネクタ部51をみた図である。
【0032】
図5は増幅回路ユニット11の構成を示すブロック図であり、増幅回路ユニット11は、コンデンサ41、ローパスフィルタ42、チャージアンプ43、ハイパスフィルタ44、増幅回路45、感度調整回路46、故障検出用回路47、基準電圧回路48、電源ノイズフィルタ49、交流接地コンデンサ50、及びコネクタ部51を構成するコネクタピン31〜33を備えている。コネクタピン31はアース接続線61を介してECU60のアースに接続され、コネクタピン32には電源接続線62を介して直流電源電圧(例えば5V)が供給され、コネクタピン33は信号接続線(検出信号線)63を介して、ECU60のAD変換器に接続される。コネクタピン32に接続された電源線53は、電源ノイズフィルタ49を介して、基準電圧回路48に接続されている。
【0033】
コンデンサ41により、圧力検出素子2から接続部材12を介して、入力される検出信号の直流成分がカットされ、入力検出信号の交流成分のみがローパスフィルタ42に入力される。ローパスフィルタ42は、不要な高周波成分を減衰させる。チャージアンプ43は、入力信号を積分しつつ増幅することによって、圧力変化率を示す入力信号を圧力値を示す圧力信号に変換する。ハイパスフィルタ44は、不要な低周波成分を減衰させる。増幅回路45は、ハイパスフィルタ44の出力信号を増幅する。
【0034】
感度調整回路46は、たとえば複数の抵抗素子の組み合わせで構成され、圧力検出素子2を接続して、テスト用の圧力を圧力検出素子2に印加したときの、増幅回路45の出力信号レベルが所定レベルとなるように、増幅回路45のゲインを調整するための回路である。具体的には、予め装着されている複数の抵抗素子を接続する配線をカットすることによって、全体としての抵抗値を調整し、ゲイン調整が行われる。なお、このゲイン調整は増幅回路ユニット11を合成樹脂モールド11aで被覆する前に行われる。
【0035】
基準電圧回路48は、ECU60から供給される電源電圧VS1から基準電圧VREFを生成して、チャージアンプ43、ハイパスフィルタ44、及び増幅回路45に供給する。基準電圧VREFは、直流電圧をオフセットさせる(0Vを1Vに上げる)ための電圧である。電源ノイズフィルタ49は電源接続線62を介して混入するノイズを除去するローパスフィルタである。
【0036】
増幅回路ユニット11のアース線52は、コネクタ部51及びアース接続線61を介してECU60のアースと接続されているが、燃料噴射装置1の筐体とは交流接地コンデンサ50を介して接続されているのみであり、直流的には燃料噴射装置1の筐体と接続されていない。これによって、以下に説明するようにアース接続線61の断線を、ECU60で検出することが可能となる。なお、燃料噴射装置1の筐体は内燃機関のシリンダヘッドと導通している。
【0037】
故障検出用回路47は、
図6に示すように電源線LSにプルアップ抵抗RPUを接続することによって構成される。ECU60にはアースに接続されたプルダウン抵抗RPDが設けられており、入力直流電圧VINに応じて電源接続線62または信号接続線63の断線もしくは地絡(アースとの短絡)、またはアース接続線61の断線が検出可能に構成されている。すなわち、接続線62または63の断線もしくは地絡が発生すると、入力直流電圧VINは「0」となり、またアース接続線61の断線が発生すると、入力直流電圧VINは、正常電圧VNLより高くなる。したがって、入力直流電圧VINが正常電圧VNLより所定電圧以上と高くなったときは、アース接続線61の断線が発生していると判定できる。
【0038】
図7は、燃料噴射装置1の駆動用ソレノイド24と、ECU60との接続を説明するための図であり、ソレノイド24の両端はコネクタ部51のコネクタピン22,23を介してECU60と接続され、コネクタピン21は燃料噴射装置1において筐体に接地されている。
【0039】
以上のように本実施形態では、圧力検出素子2、増幅回路ユニット11、及びそれらを接続する接続部材12を含む筒内圧検出ユニット101を燃料噴射装置1と一体化することによって、筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置100が構成され、その筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置100が内燃機関に装着されるので、圧力検出素子2と増幅回路ユニット11とを近接させることによって、燃料噴射装置1の駆動信号の影響を低減するとともに、筒内圧検出ユニット101が装着されていない燃料噴射装置と同様の作業で内燃機関に実装することが可能となり、実装時の作業性を高めることができる。
【0040】
また圧力検出素子2が固定された円筒状のセンサ固定部材13、増幅回路ユニット11、及び圧力検出素子2と増幅回路ユニット11を接続する接続部材12を予め組み上げて筒内圧検出ユニット101が構成され、その筒内圧検出ユニット101が、円筒状のセンサ固定部材13を燃料噴射装置1の先端部に嵌め込むことによって、筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置100が構成されるので、筒内圧検出ユニット101を燃料噴射装置1と一体化する際の作業性を高めることができる。
【0041】
また増幅回路ユニット11が合成樹脂モールド11aによって被覆されるので、次に合成樹脂モールド10による被覆・固定を行う際に、熱によって回路素子が故障することを防止できる。増幅回路ユニット11は、燃料噴射装置1の駆動回路(ソレノイド24)を内蔵する金属性の大径部ケーシング3の外側に、合成樹脂モールド10によって被覆・固定されるので、燃料噴射装置と一体化した状態での取り扱いが容易となり、かつ増幅回路ユニット11の防水、断熱、及び絶縁の効果を確実に得ることができる。
【0042】
また増幅回路ユニット11と制御ユニット60との間の接続線が接続されるコネクタピン31〜33が、燃料噴射装置1の駆動信号線が接続されるコネクタ部51に含められ、コネクタピン31〜33及びコネクタピン21〜23がコネクタ部51として一体化して構成されるので、増幅回路ユニット11への電源の供給及び圧力検出信号の伝送と燃料噴射装置駆動信号の伝送とを1つのコネクタ部を介して行うことが可能となり、組み立て時の作業を容易化するとともに、筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置100の小型化を図ることができる。
【0043】
増幅回路ユニット11の故障検出用回路47はプルアップ抵抗RPUを有し、増幅回路ユニット11のアース線52を、直流的には燃料噴射装置1の筐体に接続せずに、アース接続線61を介してECU60のアースと接続するようにしたので、接続線62,63の断線もしくは地絡だけでなく、アース接続線61の断線も、ECU60で検出することが可能となる。
【0044】
また圧力検出素子2及び増幅回路ユニット11の組み合わせとしての筒内圧検出ユニット101を機関に装着する前に、圧力検出素子2とチャージアンプ43及び増幅回路45とを組み合わせた状態で感度調整を行うことが可能となる。圧力検出素子2の出力信号をチャージアンプ43によって積分しつつ増幅することによって圧力検出信号が得られるが、圧力検出素子2やチャージアンプ43等の特性ばらつきによって検出感度がばらつくことが確認されている。したがって、圧力検出素子2とチャージアンプ43及び増幅回路45とを組み合わせ状態で増幅回路45のゲイン調整を行うことで、圧力検出素子2の特性ばらつきの影響と、チャージアンプ43及び増幅回路45の特性ばらつきの影響とをともに排除し、正確な圧力検出を行うことが可能となる。
【0045】
また増幅回路ユニット11は、電源を供給する電源線に重畳するノイズを除去するための電源ノイズフィルタ49を備えるので、電源線を介して圧力検出信号にノイズが混入することを確実に防止することができる。
【0046】
また増幅回路ユニット11は、フレキシブルプリント配線基板上に構成されているので、増幅回路ユニット11を小型化し、燃料噴射装置1への装着を容易化することができる。
【0047】
[変形例]
上述した実施形態では、増幅回路ユニット11を燃料噴射装置1のコネクタピン21〜23の近傍に配置して、増幅回路ユニット11のコネクタピン31〜33と一体化してコネクタ部51を構成するようにしたが、
図8に示すように、燃料噴射装置1のコネクタピン21〜23からなる本体コネクタ部51aから離れた位置に増幅回路ユニット11を配置し、増幅回路ユニット11のコネクタピン31〜33によって別の3ピンのサブコネクタ部51bを構成するようにしてもよい。
【0048】
このようにコネクタ部51bをコネクタ部51aと別体に構成することによって、圧力検出信号が伝送される接続線63が、比較的大きな電流が流れる駆動信号線から離間し、燃料噴射装置1の駆動信号が圧力検出信号に与える影響を軽減することができる。
【0049】
また合成樹脂モールド10,11aは、セラミックモールドに代えてもよく、また増幅回路ユニット11を燃料噴射装置1の大径部ケーシング3とは別の金属ケースに収容した状態で、大径部ケーシング3の外側に固定するようにしてもよい。
【0050】
また電源ノイズフィルタ49に代えて故障検出用回路47とコネクタピン33との間にノイズ成分を除去する信号ノイズフィルタ(ローパスフィルタ)を設けるようにしてもよく、また電源ノイズフィルタ49及び信号ノイズフィルタをともに設けるようにしてもよい。
【0051】
また増幅回路ユニット11の感度調整回路46を複数の抵抗素子の組み合わせで構成するようにしたが、これに限るものではなく、例えば不揮発メモリにゲイン調整データ書き込むことによってゲイン調整を行うようにしてもよい。
また増幅回路ユニット11は、ガラスエポキシ樹脂基板上に構成し、接続部材12をそのガラスエポキシ樹脂基板に接続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 燃料噴射装置
2 圧力検出素子
10 合成樹脂モールド
11 増幅回路ユニット
11a 合成樹脂モールド
21〜23 コネクタピン
31〜33 コネクタピン
46 感度調整回路
47 故障検出用回路
49 電源ノイズフィルタ
51 コネクタ部
60 電子制御ユニット
100 筒内圧検出ユニット付き燃料噴射装置
101 筒内圧検出ユニット