【文献】
J.G. LU, et al.,Zno-based thin films synthesized by atmosphericpressure mist chemical vapor deposition,Journal of CrystalGrowth,,2007年,vol.299,p.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る金属酸化膜の製造方法では、非真空(大気圧)下での成膜処理を行う。ここで、当該非真空(大気圧)下で成膜された亜鉛(Zn)を含む金属酸化膜は、成膜直後には高抵抗となる。そこで、当該成膜直後の金属酸化膜に対して、高温処理を伴わない、低抵抗化処理を施す(つまり、金属酸化膜の結晶の再構成を伴わない、金属酸化膜のバンドギャップ以上のエネルギーを与える低抵抗化処理を、成膜直後の金属酸化膜に施す)。なお、当該低抵抗化処理として、たとえば、金属酸化膜に対する紫外線照射が採用可能である。
【0016】
上記低抵抗化処理により、当該低抵抗化処理直後においては、金属酸化膜の低抵抗が実現される。
【0017】
しかしながら、金属酸化膜にドーパントが含有されていない場合(ノンドープの金属酸化膜の場合)には、低抵抗化処理から時間が経過すると、当該金属酸化膜の抵抗が再び高抵抗化することを、発明者らは見出した。
【0018】
さらに、基板にドーパントおよび亜鉛を供給する際、基板に供給される亜鉛のモル濃度に対する、基板に供給されるドーパントのモル濃度が、所定の値以上とすることにより(換言すれば、基板に供給される亜鉛に対するドーパントのモル濃度比に下限値を設定し、当該下限値以上の当該モル濃度比のドーパントを基板に供給することにより)、低抵抗化処理から時間が経過しても、金属酸化膜の高抵抗化を抑制することができることも、発明者らは見出した。
【0019】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0020】
<実施の形態>
具体的に、本実施の形態に係る金属酸化膜の製造方法を、
図1に示した製造装置(成膜装置)を用いて説明する。
【0021】
まず、少なくとも亜鉛を含む溶液7を作製する。ここで、当該溶液7の溶媒として、エーテルやアルコールなどの有機溶媒を採用する。当該作製した溶液7は、
図1に示すように、容器3Aに充填される。
【0022】
また、酸化源6として水(H
2O)を採用し、
図1に示すように、当該酸化源6を容器3Bに充填する。なお、酸化源6としては、水以外に、酸素、オゾン、過酸化水素、N
2OやNO
2なども採用できるが、安価、取扱い容易の観点から水が望ましい(以下では、酸化源6が水であるとする)。
【0023】
また、ドーパントを含むドーパント溶液5を作製する。たとえば、ホウ素(B)を含むドーパント溶液5を作製する。当該ドーパント溶液5として、たとえばホウ酸(H
3BO
3)溶液を採用できる。当該作製したドーパント溶液5は、
図1に示すように、容器3Cに充填される。
【0024】
次に、上記ドーパント溶液5、酸化源6および溶液7を、を夫々ミスト化する。容器3Aの底部には霧化器4Aが配設されており、容器3Bの底部には霧化器4Bが配設されており、容器3Cの底部には霧化器4Cが配設されている。霧化器4Aにより、容器3A内の溶液7をミスト化し、霧化器4Bにより、容器3B内の酸化源6をミスト化し、霧化器4Cにより、容器3C内のドーパント溶液5をミスト化する。
【0025】
そして、ミスト化された溶液7は経路L1を通ってノズル8に供給され、ミスト化された酸化源6は経路L2を通ってノズル8に供給され、ミスト化されたドーパント溶液5は経路L3を通ってノズル8に供給される。ここで、
図1に示すように、経路L1と経路L2と経路L3とは各々、別通路である。
【0026】
ここで、本発明では、基板1に供給される亜鉛のモル濃度に対する、基板1に供給されるドーパントのモル濃度(つまり、ドーパント/Znモル濃度比)が、所定の値以上とする必要がある。当該モル濃度比は、溶液7のノズル8(または基板1)へのキャリアガス供給量(リットル/分)、溶液7内の亜鉛のモル濃度、ドーパント溶液5のノズル8(または基板1)へのキャリアガス供給量(リットル/分)、およびドーパント溶液5内のドーパントのモル濃度を調整することにより、調整することが可能である。
【0027】
一方、
図1に示すように、加熱器2上に基板1が載置されている。ここで、基板1は非真空(大気圧)下に載置されている。当該非真空(大気圧)下に載置されている基板1に対して、ノズル8を介して、ミスト化した溶液7、ミスト化した酸化源6およびミスト化したドーパント溶液5を夫々、別個独立の噴出口から噴霧(供給)する。ここで、当該噴霧の際には、当該基板1は、加熱器2により例えば200℃程度に加熱されている。
【0028】
以上の工程により、非真空(大気圧)下に載置されている基板1に対して、所定の膜厚の金属酸化膜(透明導電膜である亜鉛酸化膜)が成膜される。なお、本発明では、上記工程から明らかなように、成膜された金属酸化膜内には、亜鉛のみならず、亜鉛に対してドーパントが含有されている。
【0029】
ところで、非真空(大気圧)下において成膜された金属酸化膜は、スパッタ法などの真空下において成膜された金属酸化膜よりも、抵抗が高くなる。そこで、本発明に係る金属酸化膜の製造方法では、上述したように、金属酸化膜の結晶の再構成を伴わない、金属酸化膜のバンドギャップ以上のエネルギーを与える低抵抗化処理を実施する。
【0030】
たとえば、本実施の形態に係る金属酸化膜の製造方法では、
図2に示すように、基板1上に成膜された金属酸化膜10の主面全面に対して、紫外線ランプ12などを用いて紫外線13を照射する。当該紫外線13の照射により、金属酸化膜10の抵抗(抵抗率)を低下させることができる。
【0031】
ここで、上述したように、たとえば金属酸化膜がノンドープである場合には、成膜された金属酸化膜に対して上記低抵抗化処理を施したとしても、時間が経過すると高抵抗化が進む。そして、結果として、金属酸化膜の抵抗は、低抵抗処理前の抵抗値にまで戻ってしまう。
【0032】
しかしながら、金属酸化膜内にドーパントが含有されており、加えて、基板1へのドーパントおよび亜鉛供給の際の、ドーパント/Znモル濃度比が所定の値以上である場合には、金属酸化膜に対して上記低抵抗化処理を施し、その後時間が経過したとしても、当該金属酸化膜の高抵抗化を抑制することが可能である。
【0033】
図3は、当該高抵抗化抑制の効果を示す実験データである。
図3には、各金属酸化膜の抵抗率の時系列的変化が示されている。より具体的には、
図3には、紫外線照射(低抵抗化処理)と当該紫外線照射後における、各金属酸化膜の抵抗率の時系列的変化が示されている。なお、
図3の縦軸は、抵抗率(Ω・cm)であり、
図3の横軸は、時間(h)である。
【0034】
図3に示す実験データでは、亜鉛を含むノンドープ金属酸化膜と、ドーパントと亜鉛を含む複数の金属酸化膜とが、測定対象である。ここで、ドーパントはホウ素である。また、
図3には、ドーパントと亜鉛を含む複数の金属酸化膜として、基板1へ亜鉛およびホウ素を供給する際のB/Znモル濃度比が0.2%であった金属酸化膜、基板1へ亜鉛およびホウ素を供給する際のB/Znモル濃度比が0.4%であった金属酸化膜、基板1へ亜鉛およびホウ素を供給する際のB/Znモル濃度比が0.8%であった金属酸化膜、および基板1へ亜鉛およびホウ素を供給する際のB/Znモル濃度比が1.8%であった金属酸化膜を、示している。
【0035】
ここで、上述した全ての金属酸化膜の成膜温度は、200℃である。また、各金属酸化膜の成膜は、
図1に示す成膜装置において形成され、成膜条件は、
図4に示す通りである。
【0036】
図4に示すように、ノンドープの金属酸化膜では、基板1への亜鉛の供給量は、1.26m(ミリ)mol/minであり、基板1への酸化剤(水)の供給量は、67mmol/minである。
【0037】
また、
図4に示すように、上記B/Znモル濃度比が0.2%,0.4%,0.8%,1.8%である各金属酸化膜では、基板1への亜鉛の供給量は、1.05mmol/minであり、基板1への酸化剤(水)の供給量は、67mmol/minである。
【0038】
図3に示すように、各金属酸化膜は、紫外線照射(低抵抗化処理)により、抵抗率が減少している。しかしながら、
図3に示すように、ノンドープである金属酸化膜およびB/Znモル濃度比が0.2%である金属酸化膜では、紫外線照射(低抵抗化処理)終了後、時間が経過すると、当該金属酸化膜の抵抗率は、紫外線照射(低抵抗化処理)前の水準まで高抵抗化している。
【0039】
これに対して、B/Znモル濃度比が0.4%,0.8%,1.8%である各金属酸化膜では、紫外線照射(低抵抗化処理)終了後、時間が経過したとしても、当該金属酸化膜は高抵抗化が抑制され、低抵抗率の状態を維持している(時間が経過しても、ドーパントとしてホウ素が含有されている金属酸化膜では、抵抗がほぼ上昇せず、低抵抗化処理後の抵抗値をほぼ維持している)。
【0040】
つまり、金属酸化膜内にドーパントとしてホウ素が含有されており、しかも、基板1へ亜鉛およびホウ素を供給する際のB/Znモル濃度比が0.4%以上である場合には、金属酸化膜に対して上記低抵抗化処理を施した後、時間が経過したとしても、当該金属酸化膜の高抵抗化を抑制することができる。
【0041】
また、
図5は、高抵抗化抑制の効果を示す他の実験データである。
図5には、各金属酸化膜の抵抗率の時系列的変化が示されている。より具体的には、
図5には、紫外線照射(低抵抗化処理)と当該紫外線照射後における、各金属酸化膜の抵抗率の時系列的変化が示されている。なお、
図5の縦軸は、抵抗率(Ω・cm)であり、
図5の横軸は、時間(h)である。
【0042】
図5に示す実験データでは、亜鉛を含むノンドープ金属酸化膜と、ドーパントと亜鉛を含む複数の金属酸化膜とが、測定対象である。ここで、ドーパントはインジウム(In)である。また、
図5には、ドーパントと亜鉛を含む複数の金属酸化膜として、基板1へ亜鉛およびインジウムを供給する際のIn/Znモル濃度比が0.4%であった金属酸化膜、基板1へ亜鉛およびインジウムを供給する際のIn/Znモル濃度比が0.8%であった金属酸化膜、および基板1へ亜鉛およびインジウムを供給する際のIn/Znモル濃度比が2.0%であった金属酸化膜を、示している。
【0043】
ここで、上述した全ての金属酸化膜の成膜温度は、200℃である。また、各金属酸化膜の成膜は、
図1に示す成膜装置において形成され、成膜条件は、
図6に示す通りである。
【0044】
図6に示すように、In/Znモル濃度比が0.4%,0.8%,2.0%である各金属酸化膜では、基板1への亜鉛の供給量は、0.53mmol/minであり、基板1への酸化剤(水)の供給量は、67mmol/minである。なお、
図6に示すノンドープの金属酸化膜の成膜条件は、
図4に示す他ノンドープの金属酸化膜の成膜条件と同じである。
【0045】
図5に示すように、各金属酸化膜は、紫外線照射(低抵抗化処理)により、抵抗率が減少している。しかしながら、
図5に示すように、ノンドープである金属酸化膜では、紫外線照射(低抵抗化処理)終了後、時間が経過すると、当該金属酸化膜の抵抗率は、紫外線照射(低抵抗化処理)前の水準まで高抵抗化している。
【0046】
これに対して、In/Znモル濃度比が0.4%,0.8%,2.0%である各金属酸化膜では、紫外線照射(低抵抗化処理)終了後、時間が経過したとしても、当該金属酸化膜は高抵抗化が抑制され、低抵抗率の状態をほぼ維持している(ドーパントとしてホウ素が含有されている金属酸化膜と比べて、ドーパントとしてインジウムが含有されている金属酸化膜では、少し高抵抗化するが、ドーパントとしてインジウムが含有されている金属酸化膜は、それでも十分に高抵抗化が抑制されている)。
【0047】
つまり、金属酸化膜内にドーパントとしてインジウムが含有されており、しかも、基板1へ亜鉛およびインジウムを供給する際のIn/Znモル濃度比が0.4%以上である場合には、金属酸化膜に対して上記低抵抗化処理を施した後、時間が経過しても、当該金属酸化膜の高抵抗化を抑制することができる。
【0048】
また、
図7は、高抵抗化抑制の効果を示す他の実験データである。
図7には、各金属酸化膜の抵抗率の時系列的変化が示されている。より具体的には、
図7には、紫外線照射(低抵抗化処理)と当該紫外線照射後における、各金属酸化膜の抵抗率の時系列的変化が示されている。なお、
図7の縦軸は、抵抗率(Ω・cm)であり、
図7の横軸は、時間(h)である。
【0049】
図7に示す実験データでは、亜鉛を含むノンドープ金属酸化膜と、ドーパントと亜鉛を含む複数の金属酸化膜とが、測定対象である。ここで、ドーパントはガリウム(Ga)である。また、
図7には、ドーパントと亜鉛を含む複数の金属酸化膜として、基板1へ亜鉛およびガリウムを供給する際のGa/Znモル濃度比が0.33%であった金属酸化膜、基板1へ亜鉛およびガリウムを供給する際のGa/Znモル濃度比が0.5%であった金属酸化膜、基板1へ亜鉛およびガリウムを供給する際のGa/Znモル濃度比が0.67%であった金属酸化膜、基板1へ亜鉛およびガリウムを供給する際のGa/Znモル濃度比が0.83%であった金属酸化膜、基板1へ亜鉛およびガリウムを供給する際のGa/Znモル濃度比が1.17%であった金属酸化膜、および基板1へ亜鉛およびガリウムを供給する際のGa/Znモル濃度比が2.67%であった金属酸化膜、を各々示している。
【0050】
ここで、上述した全ての金属酸化膜の成膜温度は、200℃である。また、各金属酸化膜の成膜は、
図1に示す成膜装置において形成され、成膜条件は、
図8に示す通りである。
【0051】
図8に示すように、Ga/Znモル濃度比が0.33%,0.5%,0.67,0.83%,1.17%である各金属酸化膜では、基板1への亜鉛の供給量は、1.26mmol/minであり、基板1への酸化剤(水)の供給量は、67mmol/minである。
【0052】
また、Ga/Znモル濃度比が2.67%である金属酸化膜では、基板1への亜鉛の供給量は、0.63mmol/minであり、基板1への酸化剤(水)の供給量は、67mmol/minである。
【0053】
なお、
図8に示すノンドープの金属酸化膜の成膜条件は、
図4に示す他ノンドープの金属酸化膜の成膜条件と同じである。
【0054】
図7に示すように、各金属酸化膜は、紫外線照射(低抵抗化処理)により、抵抗率が減少している。しかしながら、
図7に示すように、ノンドープである金属酸化膜では、紫外線照射(低抵抗化処理)終了後、時間が経過すると、当該金属酸化膜の抵抗率は、紫外線照射(低抵抗化処理)前の水準まで高抵抗化している。
【0055】
これに対して、Ga/Znモル濃度比が0.33%,0.5%,0.67,0.83%,1.17%,2.67%である各金属酸化膜では、紫外線照射(低抵抗化処理)終了後、時間が経過したとしても、当該金属酸化膜は高抵抗化が抑制されている(ドーパントとしてBやInが含有されている金属酸化膜と比べて、ドーパントとしてGaが含有されている金属酸化膜では、高抵抗化の傾向にあるが、それでもなお、ノンドープである金属酸化膜と比べて、ドーパントとしてGaが含有されている金属酸化膜では、高抵抗化が抑制されている)。
【0056】
つまり、金属酸化膜内にドーパントとしてガリウムが含有されており、しかも、基板1へ亜鉛およびガリウムを供給する際のGa/Znモル濃度比が0.33%以上である場合には、金属酸化膜に対して上記低抵抗化処理を施した後、時間が経過しても、当該金属酸化膜の高抵抗化を抑制することができる。
【0057】
なお、ホウ素、インジウム、ガリウムと同じ13族の元素として、アルミニウム(Al)が存在し、当該アルミニウムも、ホウ素、インジウムおよびガリウムと同じ電子構造を有する。したがって、ドーパントしてアルミニウムを含有して、亜鉛を含む金属酸化膜を成膜した場合においても、当該成膜した金属酸化膜は、亜鉛とドーパントとしてB,In,Gaを含む金属酸化膜と同じ挙動を示す。
【0058】
ここで、
図3,5,7の考察からも分かるように、基板1へ亜鉛およびドーパント(B,In,Ga)を供給する際の(B or In or Ga)/Znモル濃度比が少なくとも0.4%以上である場合には、当該供給により成膜される金属酸化膜は、低抵抗化処理後において、高抵抗化を抑制することができる。よって、B,In,Gaと同じ13族に属するAlをドーパントして採用し、亜鉛を含む金属酸化膜を成膜する場合においても、基板1へ亜鉛およびAlを供給する際のAl/Znモル濃度比が少なくとも0.4%以上である場合には、当該供給により成膜される金属酸化膜は、低抵抗化処理後において、高抵抗化を抑制することができる。
【0059】
以上のように、本実施の形態に係る金属酸化膜の製造方法では、非真空下において基板1に対する金属酸化膜の成膜処理を実施している。したがって、成膜処理に要するコスト(成膜装置コスト)の削減を図ることができ、また利便性の向上も実現することができる。
【0060】
また、本実施の形態に係る金属酸化膜の製造方法では、成膜直後の金属酸化膜に対して、上記低抵抗化処理を実施している。したがって、非真空下において基板1に対して金属酸化膜が成膜された場合であっても、当該金属酸化膜の低抵抗化を実現することができる(真空下で成膜された金属酸化膜の抵抗と同程度まで、非真空下で成膜された金属酸化膜の抵抗を低減することができる)。
【0061】
さらに、本実施の形態に係る金属酸化膜の製造方法では、基板1へ亜鉛およびドーパントを供給(噴霧)することにより、基板1上に金属酸化膜を成膜している。ここで、基板1へ亜鉛およびドーパントを供給する際、(ドーパント)/Znモル濃度比が所定の値以上に設定されている。たとえば、(B or In or Al)/Znモル濃度比が少なくとも0.4%以上であり、Ga/Znモル濃度比が少なくとも0.33%以上である。
【0062】
したがって、上記低抵抗化処理後、長期間経過したとしても、当該低抵抗化処理を施した金属酸化膜の抵抗が高抵抗化することを、本発明に係る金属酸化膜の製造方法では抑制することができる。
【0063】
また、本実施の形態に係る金属酸化膜の製造方法では、亜鉛を含む金属酸化膜の成膜において、当該金属酸化膜のドーパントとして、13族の元素(ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム)を採用している。したがって、成膜される金属酸化膜において、より多くの電流を流すことが可能となる。
【0064】
なお、
図3,5,7の比較から分かるように、ドーパントとしてホウ素を採用した場合には、低抵抗化処理後の金属酸化膜の高抵抗化を最も抑制できる(長時間経過しても、低抵抗化処理直後の金属酸化膜の抵抗値を維持することができる)。また、ホウ素(ホウ酸)は安定で低コストであることから、金属酸化膜の成膜コストの更なる削減および金属酸化膜の成膜方法の更なる利便性の向上も図ることができる。
【0065】
また、
図1に例示する成膜装置では、溶液7用の容器3A、酸化源6用の容器3B、およびドーパント溶液5用の容器3Cが各々、別個独立に存在している。しかしながら、これらの容器3A,3B,3Cの何れかの省略が可能である。
【0066】
たとえば、溶液7と酸化源6とを同じ一方の容器に入れ、ドーパント溶液5を他方の容器に入れる構成の採用も可能であり、または、ドーパント溶液5と酸化源6とを同じ一方の容器に入れ、溶液7を他方の容器に入れる構成の採用も可能であり、溶液7とドーパント溶液5とを同じ一方の容器に入れ、酸化源6を他方の容器に入れる構成の採用も可能である。
【0067】
各溶液5,6,7毎に容器を分けるか、二つの溶液で共通の容器を使用するかは、ドーパント溶液7や酸化源6や溶液5の種類に応じて(たとえば、ドーパントの溶解性および各溶液5,6,7の反応性に依存して)、選択することができる。たとえば、ホウ酸は水に溶けるので、ドーパント溶液5であるホウ酸と酸化源6である水とは、同じ容器に入れることが可能である。
【0068】
なお、上記の通り、本発明では、基板1へ亜鉛およびドーパントを供給する場合に、(ドーパント/Zn)モル濃度比を、所定の値以上に調整する必要がある。ここで、基板1への供給される元素のモル濃度の調整は、各々の溶液5,6,7毎に容器3A,3B,3Cを設け、各溶液5,6,7を別系統L1,L2,L3を介して基板1へ供給する構成が、最も容易である。
【0069】
また、本発明では、非真空下(大気圧下)での成膜処理であるので、大気中の酸素を酸化源として利用することができる。しかしながら、
図1に例示するように、酸化源6を積極的に基板1に供給する構成を採用することにより、金属酸化膜の成膜速度の向上を図ることができ、また膜質の良い金属酸化膜の成膜も可能となる。
【0070】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。