特許第5956568号(P5956568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5956568ビニルモノマーの重合を阻害するための相乗的組合せ
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  • 特許5956568-ビニルモノマーの重合を阻害するための相乗的組合せ 図000017
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956568
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】ビニルモノマーの重合を阻害するための相乗的組合せ
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/20 20060101AFI20160714BHJP
   C07C 15/46 20060101ALI20160714BHJP
   C07C 255/31 20060101ALN20160714BHJP
   C07C 251/22 20060101ALN20160714BHJP
【FI】
   C07C7/20
   C07C15/46
   !C07C255/31
   !C07C251/22
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-515900(P2014-515900)
(86)(22)【出願日】2012年6月11日
(65)【公表番号】特表2014-527509(P2014-527509A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】US2012041883
(87)【国際公開番号】WO2012173925
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2015年3月25日
(31)【優先権主張番号】13/158,979
(32)【優先日】2011年6月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507248837
【氏名又は名称】ナルコ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン マーセル
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06376728(US,B1)
【文献】 米国特許第04912247(US,A)
【文献】 特開2003−321401(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0205452(US,A1)
【文献】 特表2004−511569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 7/20
C07C 15/46
C07C 251/22
C07C 255/31
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中のビニルモノマーの重合を阻害する方法であって、化合物A及び化合物Bを含む組成物を前記液体に加えることを含んでおり、ここで、
化合物Aは、式
【化1】
を有するキノンメチド化合物であり、
ここで、R及びRは同じであっても異なっていてもよく、R及びRのそれぞれが、H、C〜C18アルキル、C〜C12シクロアルキル、及び〜C15フェニルアルキルらなる群から選択され、
はアリール基、C〜Cアルキル、アルコキシ、ニトロ、アミノ又はカルボキシによって置換されたアリール基、ニトリル基、メトキシ基、4―ヒドロキシ―3,5―ジ―tert―ブチルフェニル基、アセチレン基、フェニル置換アセチレン基、及び〜Cアルキル、アルコキシ、ニトロ、アミノ又はカルボキシによって置換されたフェニル置換アセチレン基らなる群から選択され、
ここで、化合物Bは、式
【化2】
のキノンジイミド化合物であり、
ここで、R及びRは同じであっても異なっていてもよく、R及びRのそれぞれが、アルキル基、アリール基、アルカリール基、及びアラルキル基からなる群から選択され、
ここで、化合物A:化合物Bの質量比は9:1〜1:9である、
方法。
【請求項2】
化合物A及び化合物Bを含む組成物であって、化合物Aが、式
【化3】
を有するキノンメチド化合物であって、
ここで、R及びRは同じであっても異なっていてもよく、R及びRのそれぞれが、H、C〜C18アルキル、C〜C12シクロアルキル、及び〜C15フェニルアルキルらなる群から選択され、
は、ニトリル基、アリール基、メトキシ基、4―ヒドロキシ―3,5―ジ―tert―ブチルフェニル基、アセチレン基、フェニル置換アセチレン基、及び〜Cアルキル、アルコキシ、ニトロ、アミノ又はカルボキシによって置換されたフェニル置換アセチレン基らなる群から選択され、
化合物が、式
【化4】
のキノンジイミド化合物であり、
ここで、R及びRは同じであっても異なっていてもよく、R及びRのそれぞれが、アルキル基、アリール基、アルカリール基、及びアラルキル基からなる群から選択され、
ここで、化合物A:化合物Bの質量比は9:1〜1:9である、
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
《関連出願についてのクロスリファレンス》
なし。
【0002】
《連邦支援の研究又は開発に関する記載》
適用なし。
【0003】
本発明は、キノンメチド、及びキノンジイミドを含む組成物、及びこれらを使用して望ましくない重合を阻害する方法に関する。米国特許第7,651,635号明細書に記載されているように、キノンメチドを用いて、ビニル芳香族モノマーの重合を阻害している。ビニル芳香族モノマーの高い反応性のために、これらのモノマーの多くは、製造、処理、取扱い、保存、及び使用の様々な段階において、望ましくないことに、重合する可能性がある。望ましくない重合反応は、有益なモノマーを消費するので、また、更なる精製工程を行って、プロセス装置から、及びモノマー生成物から望ましくないポリマーを除去することを必要とするので、結果として製造効率の損失につながる。精製プロセスの間、ビニル芳香族モノマーは望ましくないポリマーを形成するため、望ましくない重合反応は、ビニル芳香族モノマーにとって、特に問題となる。精製プロセスは高温で行われる。重合を促進する混入物の非存在下でさえ、ビニルモノマー、特にスチレンのような芳香族ビニルモノマーは、高温において、自己開始型の重合をする。得られるポリスチレンは直鎖状で、スチレンモノマーに可溶性であり、したがって、モノマー生成物に混入する可能性がある。望ましくない重合を妨げることが必要である。
【背景技術】
【0004】
望ましくない重合反応を妨げるために、化合物の二つのカテゴリー、すなわち、阻害剤、及び遅延剤が開発された。阻害剤は、プロセスの流れに連続的に加える限り、重合反応が起こることを効果的に妨げる。しかしながら、阻害剤は、連続的に補充しない限り、急速に消費される。機械上、又は他の操作上の理由のために、更なる阻害剤を加えることができない緊急停止の場合、すでに添加した阻害剤が急速に消費される。阻害剤が完全に消費されると、望ましくない重合反応が衰えずに起こる。一方、遅延剤は、阻害剤ほど効果的ではないとしても、重合反応の速度を遅くする。阻害剤は急速に消費されるが、しかしながら、遅延剤は、阻害剤ほど迅速に消費されずに、効果的にポリマーの含有量を低く保ち、従って、阻害剤の補充が不可能な非常停止状態の場合に、遅延剤はより信頼性が高い。
【0005】
望ましくない重合反応を妨げるために、最初は、硫黄、及びジニトロフェノール(DNP)化合物、(2,6―ジニトロフェノール、2,4―ジニトロクレゾール、及び2―sec―ブチル―4,6―ジニトロフェノール(DNBP)を含む)などの遅延剤のみを用いていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、DNP遅延剤、及び硫黄遅延剤は、それぞれ、NO排気物、及びSO排気物を放出する。更に、DNPに基づく遅延剤は毒性が高いため、それらの非毒性の代替物について、著しい必要性がある。より安全な、DNPの代替の遅延剤として機能することが期待される化合物の種類の一つは、キノンメチド構造に基づくものである。キノンメチド類は、静的条件においてポリマー形成の速度を遅くし、プロセスの流れに頻繁に再供給する必要がない。キノンメチド化合物の例は、米国特許第4,003,800号明細書中にある。しかしながら、これらの化合物は、キノンメチドの7位の上のアルキル置換基の結果として、工業的な設定における持続的な使用に対して、十分に安定ではない。より安定なキノンメチド類の他の用途は、米国特許第5,583,247号明細書、及び米国特許第7,045,647号明細書中に見られる。
【0007】
米国特許第5,750,765号明細書、米国特許第5,670,692号明細書、米国特許第6,926,820号明細書、及び米国特許第7,651,635号明細書において教示されているように、安定なキノンメチド類は、スチレン、及び他のビニル芳香族モノマーの早期の重合の阻害に使用するための、効果的で、環境に優しい、非毒性の代替物であることが分かった。従って、キノンメチド類を含む組成物を用いて望ましくない重合を阻害する有効な方法において、明確な有用性、及び新規性がある。
【0008】
その後、二つの種類の阻害剤、すなわちジアルキルヒドロキシルアミン(ヒドロキシプロピルヒドロキシルアミン(HPHA)を含む)、及び安定なニトロキシドフリーラジカル類が使用された。それから、他の阻害剤が用いられた。例としては、N,N’―ジアルキルフェニレンジアミン、N,N’―ジアリールフェニレンジアミン、N―アリール―N’―アルキルフェニレンジアミンである。キノンジイミド化合物は、他の種類の阻害剤でもある。キノンジイミド類の使用は、米国特許第4,774,374号明細書、米国特許第5,562,863号明細書、米国特許第6,184,276号明細書、米国特許第6,447,649号明細書、及び米国特許第6,592,722号明細書に教示されている。
【0009】
設備故障の場合の安全性を確実にするために、阻害剤は典型的に単独で使用せずに、多くの場合、遅延剤と組み合わせて使用する。
【0010】
この節に記載した技術は、具体的にそのように示さない限り、本明細書において参照する任意の特許、刊行物、又は他の情報が、本発明に関する「従来技術」であるとの容認を構成することを意図しない。更に、この節は、調査が行われたことを、又は米国特許施行規則第1.56条(a)に定義されている他のいかなる関連する情報も存在しないことを意味するものと解釈すべきでない。本出願により引用する全ての特許、特許出願、及び他の文献は、引用によりその全体が本明細書中に含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の少なくとも一つの実施形態は、液体中のビニルモノマーの重合を阻害する方法であって、化合物A及び化合物Bを含む組成物を、上記のモノマーに加えることを含んでおり、ここで、化合物Aは、式
【化1】
を有するキノンメチド化合物であり、ここで、R及びRは、独立して、H、C〜C18アルキル、C〜C12シクロアルキル、C〜C15フェニルアルキル、及びこれらの任意の組み合わせである、方法に関する。好ましくは、R及びRは、tert―ブチル、tert―アミル、tert―オクチル、シクロヘキシル、α―メチルベンジル、又はα,α―ジメチルベンジルであり、最も好ましくは、tert―ブチル、tert―アミル、又はtert―オクチルであり、Rは、好ましくは、アリール基、又はC〜Cアルキル、アルコキシ、ニトロ、アミノ、及びカルボキシによって置換されたアリール基であり、また好ましくは、Rは、ニトリル基、メトキシ基、4―ヒドロキシ―3,5―ジ―tert―ブチルフェニル基、アセチレン基であり、又はC〜Cアルキル、アルコキシ、ニトロ、アミノ、及びカルボキシによって好ましくは置換されたフェニル置換アセチレン基である。
【0012】
本発明の少なくとも一つの実施形態は、化合物A及び化合物Bを含む組成物であって、ここで、化合物Bは、式
【化2】
のキノンジイミド化合物であり、ここで、置換基R及びRは同じであるか、又は異なっており、アルキル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基、及びこれらの任意の組み合わせであり、ここで、化合物A:化合物Bの質量比が、約9:1〜約1:9であり、化合物Aは安定キノンメチドであってもよい、組成物に関する。キノンメチドの適切な例としては、7―シアノキノンメチド(2―(3,5―ジ―tert―ブチル―4―オキソシクロヘキサ―2,5―ジエニリデン)アセトニトリル、2,6―ジ―tert―ブチル―7―シアノキノンメチドとも呼ばれる7―置換―キノンメチド)、7―フェニルキノンメチドとも呼ばれる4―ベンジリデン―2,6―ジ―tert―ブチルシクロヘキサ―2,5―ジエノン、7―メトキシキノンメチドとも呼ばれる2,6―ジ―tert―ブチル―4―(メトキシメチレン)シクロヘキサ―2,5―ジエノン、及び7―(4―ヒドロキシ―3,5―ジ―tert―ブチルフェニル)キノンメチドとも呼ばれる2,6―ジ―tert―ブチル―4―(3,5―ジ―tert―ブチル―4―ヒドロキシベンジリデン)シクロヘキサ―2,5―ジエノンである。
【0013】
化合物Bは、キノンジイミドでもよい。キノンジイミドは、ベンゾキノンジイミド化合物であるN,N’―(シクロヘキサ―2,5―ジエン―1,4―ジイリデン)ジブタン―1―アミン、ベンゾキノンジイミド化合物である(E)―N―((E)―4―(4―メチルペンタン―2―イリミノ)シクロヘキサ―2,5―ジエニリデン)アニリン、及びこれらの任意の組み合わせであってよい。モノマーは、ビニルモノマーでもよい。モノマーに添加する上記の組成物の量は、上記のモノマーの1〜10,000ppmで変化させてもよい。化合物A:化合物Bの質量比は、約9:1〜約1:1、及び約1:9〜約1:1、及び/又は4:6〜6:4であってよい。重合を、実質的に阻害してもよい。重合を、無酸素性環境内で阻害してもよい。阻害は、化合物Bから本質的に成る阻害剤の効果と、化合物Aから本質的に成る阻害剤の効果とを加えた線形結合よりも効果的であることがある。
【0014】
化合物Aは、式
【化3】
を有するキノンメチド化合物であってよく、ここで、R及びRは、独立して、H、C〜C18アルキル、C〜C12シクロアルキル、又はC〜C15フェニルアルキルである。好ましくは、R及びRは、tert―ブチル、tert―アミル、tert―オクチル、シクロヘキシル、α―メチルベンジル、又はα,α―ジメチルベンジルであり、最も好ましくは、tert―ブチル、tert―アミル、又はtert―オクチルであり、また、Rは、好ましくは、ニトリル基、アリール基、メトキシ基、4―ヒドロキシ―3,5―ジ―tert―ブチルフェニル基、アセチレン基であり、又はC〜Cアルキル、アルコキシ、ニトロ、アミノ、及びカルボキシによって置換されたフェニル置換アセチレン基であり、(B)は、式
【化4】
のキノンジイミド化合物であり、ここで、置換基R及びRは同じであるか、又は異なっており、アルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基であり、ここで、化合物A:化合物Bの質量比は、約9:1〜約1:9である。
【0015】
キノンメチド化合物は、2―(3,5―ジ―tert―ブチル―4―オキソシクロヘキサ―2,5―ジエニリデン)アセトニトリル(7―シアノキノンメチドとも呼ばれる)、2,6―ジ―tert―ブチル―4―(メトキシメチレン)シクロヘキサ―2,5―ジエノン(7―メトキシキノンメチドとも呼ばれる)、2,6―ジ―tert―ブチル―4―(3,5―ジ―tert―ブチル―4―ヒドロキシベンジリデン)シクロヘキサ―2,5―ジエノン(7―(4―ヒドロキシ―3,5―ジ―tert―ブチルフェニル)キノンメチドとも呼ばれる)、及び4―ベンジリデン―2,6―ジ―tert―ブチル―シクロヘキサ―2,5―ジエノン(7―フェニルキノンメチドとも呼ばれる)であってよい。
【0016】
キノンジイミド化合物は、N,N’―シクロヘキサ―2,5―ジエン―1,4―ジイリデン)ジブタン―1―アミン、(E)―N―((E)―4―(4―メチルペンタン―2―イリミノ)シクロヘキサ―2,5―ジエニリデン)アニリンであってよい。化合物A:化合物Bの質量比は、約9:1〜約1:9、又は約4:6〜6:4であってよい。ビニルモノマー重合の阻害剤としての、化合物Aと化合物Bとの相乗効果が存在してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の相乗的な阻害効果を実証するグラフを説明する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本出願の目的において、用語の定義としては、以下のとおりである。
【0019】
「アルコキシ」は、本明細書において定義するように、酸素原子を通して親分子部分に結合したアルキル基を意味する。代表的なアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、及びこれらと同種のものが挙げられる。
【0020】
「アルキル」は、直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素から、一つの水素原子を除去することによって導かれる一価の基を意味する。代表的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、n―プロピル基、及びiso―プロピル基、n―ブチル基、sec―ブチル基、iso―ブチル基、及びtert―ブチル基、n―オクチル基、並びにこれらと同種のものが挙げられる。
【0021】
「組合せ」は、望ましくない重合を阻害する組成物を得るための、2以上の化合物を組み合わせた使用を意味する。
【0022】
「有効阻害剤量」は、ビニル芳香族モノマーの重合を阻害することにおいて効果的な、阻害剤組成物の量を意味する。
【0023】
「誘導時間」は、理想的な閉鎖系において、組成物が、所定の反応の間、特定のポリマーの形成を完全に妨げる時間を意味する。
【0024】
「阻害剤」は、誘導時間の間に、特定のポリマーの形成を阻害する化合物を意味するが、しかしながら、誘導時間が経過したあとは、組成物の非存在下において形成するのと実質的に同じ速度で、特定のポリマーの形成が起こる。
【0025】
「遅延剤」は、誘導時間を有しないが、その代わりに、いったん所定の反応に加えると、組成物の非存在下で特定のポリマーが形成する速度に対して、特定のポリマーの形成が起こる速度を低下させる組成物を意味する。
【0026】
上記の定義、又は本出願中の他の箇所の記載が、一般的に用いられている、辞書中の、又は引用によって本出願中に含まれる出典において述べられている意味と(明確に、又は暗に)矛盾する場合には、本出願及び請求項の用語は、特に本出願における定義又は記載に従うものであり、一般的な定義、辞書の定義、又は引用により含まれる定義に従うものではないと解することが理解される。上記を考慮して、用語が辞書によって解釈される場合にのみ用語を理解することができる場合には、用語がカーク―オスマー エンサイクロペディア オブ ケミカルテクノロジー(Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)第5版(2005)(ワイリー(Wiley)、ジョンアンドサンズ社(John & Sons, inc.)出版)によって定義されていれば、この定義が、用語が請求項においてどのように定義されるかについて支配するものとする。
【0027】
少なくとも一つの実施形態において、本発明は、キノンメチド誘導体、及びキノンジイミドを含む組成物に関する。これらの組成物は、ビニルモノマーの望ましくない重合を阻害する。
【0028】
本発明のキノンメチド誘導体は、共通して、化学構造
【化5】
を有しており、ここで、R及びRは、独立して、H、C〜C18アルキル、C〜C12シクロアルキル、C〜C15フェニルアルキルである。好ましくは、R及びRは、tert―ブチル、tert―アミル、又はtert―オクチル、シクロヘキシル、α―メチルベンジル、又はα,α―ジメチルベンジルであり、最も好ましくは、tert―ブチル、tert―アミル、tert―オクチルである。
【0029】
は、好ましくは、アリール基であり、又はC〜Cアルキル、アルコキシ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、若しくはニトリルによって置換されたアリール基であり、又はアセチレン基であり、又はフェニル基、若しくは置換フェニル基によって置換されたアセチレン基であり、又はC〜Cアルキル、アルコキシ、ニトロ、アミノ、カルボキシによって置換されたアセチレン基である。
【0030】
好ましくは、キノンメチド誘導体は、2―(3,5―ジ―tert―ブチル―4―オキソシクロヘキサ―2,5―ジエニリデン)アセトニトリル(2,6―ジ―tert―ブチル―7―シアノキノンメチド、又は7―シアノキノンメチドとも呼ばれる、7―置換―キノンメチド)、7―フェニルキノンメチドとも呼ばれる4―ベンジリデン―2,6―ジ―tert―ブチル―シクロヘキサ―2,5―ジエノン、7―メトキシキノンメチドとも呼ばれる2,6―ジ―tert―ブチル―4―(メトキシメチレン)シクロヘキサ―2,5―ジエノン、及び7―(4―ヒドロキシ―3,5―ジ―tert―ブチルフェニル)キノンメチドとも呼ばれる2,6―ジ―tert―ブチル―4―(3,5―ジ―tert―ブチル―4―ヒドロキシベンジリデン)シクロヘキサ―2,5―ジエノンである。
【0031】
本発明のキノンジイミド化合物は、一般式
【化6】
を典型的に有するベンゾキノンジイミド化合物を含んでおり、ここで、置換基R及びRは同じであるか、又は異なっており、及びアルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基である。好ましいベンゾキノンジイミド化合物は、N,N’―ジアルキル―p―ベンゾキノンジイミド、及びN―フェニル―N’―アルキル―p―ベンゾキノンジイミドからなる群から選択される。ベンゾキノンジイミド化合物は、N,N’―ジ―sec―ブチル―p―ベンゾキノンジイミド、N―フェニル―N’―メチル―p―ベンゾキノンジイミド、N―フェニル―N’―エチル―p―ベンゾキノンジイミド、N―フェニル―N’―プロピル―p―ベンゾキノンジイミド、N―フェニル―N’―n―ブチル―p―ベンゾキノンジイミド、N―フェニル―N’―iso―ブチル―p―ベンゾキノンジイミド、N―フェニル―N’―sec―ブチル―p―ベンゾキノンジイミド、N―フェニル―N’―tert―ブチル―p―ベンゾキノンジイミド、N―フェニル―N’―n―ペンチル―p―ベンゾキノンジイミド、N―フェニル―N’―(1―メチルへキシル)―p―ベンゾキノンジイミド、N―フェニル―N’―(1,3―ジメチルヘキシル)―p―ベンゾキノンジイミド、N,N’―ビス(1,4―ジメチルペンチル)―p―ベンゾキノンジイミド、N―フェニル―N’―(1,4―ジメチルペンチル)―p―ベンゾキノンジイミド、及びN―フェニル―N’―(1,4―ジメチルブチル)―p―ベンゾキノンジイミドからなる群から選択してもよい。
【0032】
好ましいベンゾキノンジイミド化合物としては、N,N’―(シクロヘキサ―2,5―ジエン―1,4―ジイリデン)ジブタン―1―アミン、及び(E)―N―((E)―4―(4―メチルペンタン―2―イリミノ)シクロヘキサ―2,5―ジエニリデン)アニリンが挙げられる。
【0033】
少なくとも一つの実施形態において、キノンメチドを含む組成物を、モノマー溶液に添加することによって、目標の液体環境内の望ましくない重合を阻害する。組成物は、キノンメチドの少なくとも一つの形態、及びキノンジイミドへと酸化されたフェニレンジアミンの少なくとも一つの形態を含む。組成物を作る前に、フェニレンジアミンを、最初にキノンジイミドへと酸化する。代替として、商業的に入手可能なキノンジイミド化合物を使用することができる。キノンジイミドをキノンメチドと組み合わせると、この形態で、重合を効果的に阻害する。
【0034】
少なくとも一つの実施形態において、米国特許第5,955,643号明細書に記載されている方法及び手順と同様の態様で組合せて、それによって、安定ニトロキシドラジカルと、非毒性フェニレンジアミンとの組合せを使用して、無酸素性条件下で、スチレンの望ましくない重合を阻害する。著しい違いとしては、本発明では、キノンジイミドとキノンメチドとの組合せにおいて、フェニレンジアミンがキノンジイミドへとすでに酸化されているという事実、及び組合せは、ニトロキシドの形態のキノンジイミドに依存するという事実である。インサイチュ(in situ)でフェニレンジアミンをキノンジイミドへと酸化させる代わりに、フェニレンジアミンをプロセスの流れの中へと注入する前に酸化する。少なくとも一つの実施形態において、組合せは、キノンメチドと、キノンジイミドとから成る。組成物は、他の材料、及び組合せを含んでもよい。
【0035】
従来から、異なる阻害剤の組合せが試みられてきた。例えば、HTEMPOを単独で使用することによる技術的な、及び経済的な欠点を解決するために、HTEMPOは他の阻害剤と組み合わせられてきた。しかしながら、これらの組合せは、結果として、それらの構成要素の線形和より優れた、全体的な阻害性能を有する組合せにはならなかった。さらに、多くの場合、阻害剤の組合せは、それらの構成要素が単独で生み出す結果よりも良好であるというより、むしろより悪い結果を生じた。したがって、このキノンジイミド―キノンメチドの組合せが、キノンメチドの効果とキノンジイミドの効果との線形結合から予想されるよりも強い抗重合活性を示す、そのような強い相乗的効果を示したことは、全く予想外であった。
【0036】
キノンジイミドは、望ましくない重合を安定させるために以前から用いられてきたが、キノンジイミドのこれまでの使用の効果は、この組合せの効果が全く予想外であることを納得できるよう実証している。米国特許第4,774,374号明細書においては、酸素を共に注入することにより、インサイチュ(in situ)でフェニレンジアミンをキノンジイミドへと酸化することを用いて、ビニル芳香族モノマーを重合に対して安定させている。しかしながら、フェニレンジアミンは無酸素性条件において効果的ではなく、一方、キノンジイミド―キノンメチドの組合せは、無酸素性条件において、又は他の酸素不足の状況において効果的である。米国特許第5,221,764号明細書は、高温でのアクリル酸の重合を効果的に阻害するキノンジイミドをインサイチュ(in situ)で作り出す、セリウム化合物とフェニレンジアミン化合物とを組み合わせた使用を記載している。
【0037】
少なくとも一つの実施形態において、キノンジイミドをインサイチュ(in situ)で作る必要はない。キノンジイミドの使用は、米国特許第6,184,276号明細書、及び米国特許第6,376,728号明細書に教示されている。米国特許第5,562,863号明細書において、キノンジイミドを、2,6―ジ―tert―ブチル―4―メチルフェノ―ルと組み合わせて使用している。米国特許第5,648,573号明細書は、キノンジイミドと、ヒドロキシルアミンとを組み合わせた使用を教示している。更に、米国特許第6,447,649号明細書、及び米国特許第6,592,722号明細書は、ビニルモノマーの望ましくない重合の阻害剤としての、キノンジイミドと、安定ニトロキシドラジカルとを組み合わせた使用を教示している。
【0038】
少なくとも一つの実施形態において、本発明の組成物は、処理条件の下で、ビニル芳香族モノマーの望ましくない重合を効果的に阻害する。これらの処理条件としては、限定されないが、調製、精製、蒸留、及び減圧蒸留処理が挙げられる。典型的な例としては、スチレンは、95℃〜125℃の温度で処理する。本発明の組成物は、この温度範囲にわたるスチレンの重合を阻害することにおいて、効果的である。組成物は、スチレンモノマーの重合を阻害することにおいて、特に効率的である。
【0039】
少なくとも一つの実施形態において、本発明の方法において使用する、キノンメチド誘導体及びキノンジイミド化合物の総量は、ビニル芳香族モノマーの重合を阻害する程度に十分な量である。ビニル芳香族モノマーを処理する系の条件、例えば系中の混入物の存在、及び処理温度は、使用する組成物の量を決定する。したがって、より高い処理温度、及びより高濃度の混入物を含むモノマーにおいては、より多くの量の阻害剤組成物が必要である。
【0040】
キノンメチド誘導体、及びキノンジイミド組成物の好ましい量は、モノマーに対して約1〜約10,000ppmである。最も好ましくは、この量は、モノマーに対して合計約1〜約1000ppmである。
【0041】
キノンメチド化合物と、キノンジイミド化合物とを組み合わせることによって、得られる組成物は、相当する処理濃度で測定したとき、両者の化合物の単独による使用によって得られるよりも効果的な、ビニル芳香族モノマーの重合を阻害する処理を得ることができる。構成要素の間の二次的な相乗効果、又は強化された活性は、同程度のレベルの重合阻害を達成しつつ、必要な重合阻害剤の総量が付随して低減するように、構成要素の各々の濃度を低減することを可能にする。
【0042】
従って、組成物中のキノンメチド化合物:キノンジイミド化合物のモルパーセントは、一般に約1:99〜約99:1まで変化し、好ましくは、モルパーセント比は、約30:70〜約90:10である。最も好ましくは、モルパーセント比は約50:50である。
【0043】
本発明の範囲において、及び特に請求項の解釈において制限されないが、キノンメチドは使用において柔軟性を提供し、キノンジイミドは高レベルの効果を提供し、これらは共に結果として著しい相乗効果につながると考えられる。
【実施例】
【0044】
説明のために示し、本発明の範囲を制限することを意図しない以下の例を参照することによって、以上をよりよく理解することができる。
【0045】
《例1》
非阻害溶液を、以下のように調製し、望ましくないポリマーについて試験した。5.25gのスチレン、5mLのn―オクタン、及び6mLのキシレンを含む溶液を、ガラスコンテナ(ペトロテスト(Petrotest)社、13―0533を参照)内で調製した。トルエンを、総質量20.882gまで、溶液に加えた。ガラス蓋(ペトロテスト(Petrotest)社、13―0514を参照)をコンテナに取り付け、ボム(bomb)(ペトロテスト(Petrotest)社、13―1141を参照)として知られる閉鎖反応容器内に置き、ボムの蓋を閉じた。8bar(800kPa)の高純度の窒素の供給(含まれる酸素は10ppb未満)を使用して、ボムを6回パージした。これは、各々の充填の間にラインをパージすることができると共に、ボムを満たし、及び部分的に空にすることを可能にする、三方向弁(スウェージロック(Swagelok)社、SS―43GXF4を参照)の使用を含んだ。最後に、ボムを窒素で100psi(689.7kPa)まで加圧した。ボムを、30分間、系にリークがあるか否かを決定するTESTに設定した。反応器がリーク試験に合格した場合、反応器を130℃で2時間、熱浴槽内に置いた。ボムを熱浴槽から除去してすぐに、室温に冷却し、減圧して、ガラスコンテナを除去した。製造されたポリマーの量を計量した。処理をしていない(ブランク)試験の望ましくないポリマーの平均濃度は19778ppmであり、標準偏差は4032ppmであった。
【0046】
《例2》
処理をした溶液を、例1の手順に従って調製し、望ましくないポリマーについて試験した。阻害剤はすべて異なる分子量を有するため、この調査において、1キログラムの溶液当たりの阻害剤1ミリグラム(ppm)の代わりに、モル濃度を使用した。
【0047】
最初の実験は、25ppmのHTEMPOと等価な、総阻害剤濃度0.145mMを使用して実施した。任意の組合せを試験する前に、キノンメチド、及びキノンジイミドを、0.145mMの濃度で、それぞれ別々に試験した。その後、異なる組合せの性能を調査した。二つの構成要素は、モル濃度におけるものであったが、総濃度は0.145mMで一定に保った。キノンメチドのモルパーセント:キノンジイミドのモルパーセントは、0:100〜100:0であった。好ましくは、キノンメチドのモルパーセント:キノンジイミドのモルパーセントは、10:90〜90:10、より好ましくは30:90〜90:10、より好ましくは50:50であった。
【0048】
結果は、本明細書の下記表1において、及び図1においてもまた見られる。
【表1】
【0049】
図1に説明するように、一連の阻害剤の組合せのサンプルを調製した。組合せは、様々な割合のキノンメチド(特に7―シアノキノンメチド(QM―CN))、及び酸化させた(E)―N―((E)―4―(4―メチルペンタン―2―イリミノ)シクロヘキサ―2,5―ジエニリデン)アニリンを含んだ。ビニルモノマーの重合を阻害することにおける様々なサンプルの効果を、QM―CN及び(E)―N―((E)―(4―メチルペンタン―2―イリミノ)シクロヘキサ―2,5―ジエニリデン)アニリン自体による効果の間の線形表現との「相違」を比較した。データは、キノンメチドの割合が組合せの30%〜90%である場合、阻害剤はほぼ100%効果的であること、及びこの範囲の外側であっても、組合せは、キノンジイミド、又はキノンメチド単独よりもなお効果的であることを示した。したがって、予想外な相乗効果は、二つの組合せの全てに存在するようである。
【0050】
本発明は、本明細書における本発明の詳細な説明に詳細に示し、及び記載されている多くの異なる形態で実施してもよい。本開示は、本発明の背景及び原理の実例であって、本発明を、説明した特定の実施形態に制限することを意図するものではない。本明細書のいずれかの場所で言及した全ての特許、特許出願、学術論文、及び任意の他の引用物は、引用によりその全体の内容が含まれる。更に、本発明は、本明細書中に明確に記載されている、及び本明細書中に含まれる、様々な実施形態の一部若しくは全ての任意の可能な組み合わせ、並びに本明細書中に明確に記載され及び/又は含まれる様々な実施形態の一つ、いくつか、又は一つ以外の全てを除く組み合せを含む。
【0051】
上記の開示は、説明的であって、網羅的ではないことを意図する。この記載は、多くの変形及び代替を当業者に示唆している。全てのこれらの代替及び変形は、請求項の範囲内に含まれることを意図しており、ここで、用語「含む」は、「含むが、これに限定されるものではない」ことを意味する。当業者であれば、本明細書中に記載されている特定の実施形態に対する他の均等物であって、請求項にも含まれることもまた意図された均等物を認識してもよい。
【0052】
本明細書中に開示されている全ての範囲、及びパラメータは、そこに包含される任意の、及び全てのサブレンジ、及びエンドポイントの間の、あらゆる数を含むと理解される。例えば、「1〜10」との一定の範囲は、最小値である1、及び最大値である10の間の(並びに最小値及び最大値を含む)、全てのサブレンジ、すなわち、1以上(例えば1〜6.1)の最小値から始まり、10以下(例えば2.3〜9.4、3〜8、4〜7)の最大値で終わる全てのサブレンジ、及び最後に、範囲内に含まれる1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10のそれぞれの数を含むと考えるべきである。
【0053】
これは、本発明の好ましい、及び代替の実施形態の記載を完成する。当業者であれば、本明細書中に記載されている特定の実施形態に対する他の均等物を認識してもよく、均等物は、本願明細書に添付した請求項に含まれることが意図されている。本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[19]に記載する。
[1]
液体中のビニルモノマーの重合を阻害する方法であって、化合物A及び化合物Bを含む組成物を前記モノマーに加えることを含んでおり、ここで、
化合物Aは、式
【化1】
を有するキノンメチド化合物であり、
ここで、R及びRは、独立して、H、C〜C18アルキル、C〜C12シクロアルキル、C〜C15フェニルアルキル、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
アルキル、tert―ブチル、tert―アミル、tert―オクチル、シクロヘキシル、α―メチルベンジル、又はα,α―ジメチルベンジル、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択された変形態様を有し、
はアリール基、又はC〜Cアルキル、アルコキシ、ニトロ、アミノ、及びカルボキシによって置換されたアリール基、ニトリル基、メトキシ基、4―ヒドロキシ―3,5―ジ―tert―ブチルフェニル基、アセチレン基、又はフェニル置換アセチレン基、C〜Cアルキル、アルコキシ、ニトロ、アミノ、及びカルボキシによって置換されたフェニル置換アセチレン基であり、
ここで、化合物Bは、式
【化2】
のキノンジイミド化合物であり、
ここで、置換基R及びRは同じであるか、又は異なっており、アルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基であり、
ここで、化合物A:化合物Bの質量比は約9:1〜約1:9である、
方法。
[2]
化合物Aが、好ましくは、7―シアノキノンメチド(2―(3,5―ジ―tert―ブチル―4―オキソシクロヘキサ―2,5―ジエニリデン)アセトニトリル、2,6―ジ―tert―ブチル―7―シアノキノンメチドとも呼ばれる7―置換―キノンメチド)、7―フェニルキノンメチドとも呼ばれる4―ベンジリデン―2,6―ジ―tert―ブチルシクロヘキサ―2,5―ジエノン、7―メトキシキノンメチドとも呼ばれる2,6―ジ―tert―ブチル―4―(メトキシメチレン)シクロヘキサ―2,5―ジエノン、及び7―(4―ヒドロキシ―3,5―ジ―tert―ブチルフェニル)キノンメチドとも呼ばれる2,6―ジ―tert―ブチル―4―(3,5―ジ―tert―ブチル―4―ヒドロキシベンジリデン)シクロヘキサ―2,5―ジエノン、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択された安定キノンメチドである、項目1に記載の方法。
[3]
化合物Bがキノンジイミドである、項目1に記載の方法。
[4]
化合物Bが、ベンゾキノンジイミド化合物のN,N’―(シクロヘキサ―2,5―ジエン―1,4―ジイリデン)ジブタン―1―アミンである、項目3に記載の方法。
[5]
化合物Bが、ベンゾキノンジイミド化合物の(E)―N―((E)―4―(4―メチルペンタン―2―イリミノ)シクロヘキサ―2,5―ジエニリデン)アニリンである、項目3に記載の方法。
[6]
前記モノマーがビニルモノマーである、項目1に記載の方法。
[7]
前記モノマーに添加する前記組成物の量が、前記モノマーの1〜10,000ppmである、項目1に記載の方法。
[8]
化合物A:化合物Bの質量割合が、約9:1〜約1:1、及び約1:9〜約1:1である、項目1に記載の方法。
[9]
化合物A:キノンジイミドの質量割合が4:6〜6:4である、項目1に記載の方法。
[10]
重合が実質的に阻害される、項目1に記載の方法。
[11]
重合が無酸素性環境内で阻害される、項目1に記載の方法。
[12]
阻害が、キノンジイミド(化合物B)から本質的に成る阻害剤の効果と、キノンメチド(化合物A)から本質的に成る阻害剤の効果との線形結合よりも効果的である、項目1の方法。
[13]
組成物であって、化合物Aが、式
【化3】
を有するキノンメチド化合物であって、
ここで、R及びRは、独立して、H、C〜C18アルキル、C〜C12シクロアルキル、又はC〜C15フェニルアルキルであり、
好ましくは、R及びRは、tert―ブチル、tert―アミル、tert―オクチル、シクロヘキシル、α―メチルベンジル、又はα,α―ジメチルベンジルであり、最も好ましくは、tert―ブチル、tert―アミル、又はtert―オクチルであり、
また、Rは、好ましくは、ニトリル基、アリール基、メトキシ基、4―ヒドロキシ―3,5―ジ―tert―ブチルフェニル基、アセチレン基、又はC〜Cアルキル、アルコキシ、ニトロ、アミノ、及びカルボキシによって好ましくは置換されたフェニル置換アセチレン基であり、
(B)が、式
【化4】
のキノンジイミド化合物であり、
ここで、置換基R及びRは同じであるか、又は異なっており、アルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基であり、
ここで、化合物A:化合物Bの質量比は約9:1〜約1:9である、
組成物。
[14]
前記キノンメチド化合物が、2―(3,5―ジ―tert―ブチル―4―オキソシクロヘキサ―2,5―ジエニリデン)アセトニトリル(7―シアノキノンメチドとも呼ばれる)、2,6―ジ―tert―ブチル―4―(メトキシメチレン)シクロヘキサ―2,5―ジエノン(7―メトキシキノンメチドとも呼ばれる)、2,6―ジ―tert―ブチル―4―(3,5―ジ―tert―ブチル―4―ヒドロキシベンジリデン)シクロヘキサ―2,5―ジエノン(7―(4―ヒドロキシ―3,5―ジ―tert―ブチルフェニル)キノンメチドとも呼ばれる)、及び4―ベンジリデン―2,6―ジ―tert―ブチル―シクロヘキサ―2,5―ジエノン(7―フェニルキノンメチドとも呼ばれる)である、項目13に記載の組成物。
[15]
前記キノンジイミド化合物が、N,N’―(シクロヘキサ―2,5―ジエン―1,4―ジイリデン)ジブタン―1―アミンである、項目13に記載の組成物。
[16]
前記キノンジイミド化合物が、(E)―N―((E)―4―(4―メチルペンタン―2―イリミノ)シクロヘキサ―2,5―ジエニリデン)アニリンである、項目13に記載の組成物。
[17]
化合物A:化合物Bの質量比が、約9:1〜約1:9である、項目13に記載の組成物。
[18]
化合物A:化合物Bの質量比が、約4:6〜6:4である、項目13に記載の組成物。
[19]
ビニルモノマー重合の阻害剤としての、化合物Aと化合物Bとの相乗効果が存在する、項目13に記載の組成物。
図1