(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956585
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】ガス発生器及びガス発生方法
(51)【国際特許分類】
B01J 7/00 20060101AFI20160714BHJP
A62C 5/00 20060101ALI20160714BHJP
A62C 13/22 20060101ALI20160714BHJP
C06D 5/00 20060101ALI20160714BHJP
C06B 31/28 20060101ALI20160714BHJP
C06B 29/22 20060101ALI20160714BHJP
C06B 31/02 20060101ALI20160714BHJP
C06B 29/02 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
B01J7/00 A
A62C5/00
A62C13/22
C06D5/00 Z
C06B31/28
C06B29/22
C06B31/02
C06B29/02
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-534522(P2014-534522)
(86)(22)【出願日】2011年10月6日
(65)【公表番号】特表2015-501202(P2015-501202A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】US2011055081
(87)【国際公開番号】WO2013052052
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2014年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】598174370
【氏名又は名称】オーバイタル・エイティーケイ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(72)【発明者】
【氏名】サンプソン,ウィリアム・ピー
【審査官】
松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−500496(JP,A)
【文献】
特表2007−521111(JP,A)
【文献】
特表2007−517705(JP,A)
【文献】
特表2013−538665(JP,A)
【文献】
特開平07−237520(JP,A)
【文献】
特表2007−528322(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3031800(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 7/00− 7/03
A62C 5/00,13/22
C06D 5/00
B60R 21/16−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の筐体を含むガス発生器を備えるガス発生器組立体であって、
前記筐体は、
横方向に近接し、横方向及び軸方向に支持された複数の円筒形状のガス発生ウェハのスタックであって、前記筐体の側壁と離間し当該側壁に接触することなく当該筐体内のチャンバ内に配置された、横方向に近接した複数のガス発生ウェハのスタックと、
前記横方向に近接した複数のスタックの各々に近接し、前記筐体の一方の端部に近接した点火材料と、
前記点火材料に動作可能に関連付けされて、前記筐体の外部と連通可能な点火器と、
を含み、
前記横方向に近接した複数のガス発生ウェハのスタックの少なくともいくつかは、近接する前記筐体の一方の端部から近接する前記筐体の他方の端部まで延在すると共に、横方向支持構造体によって横方向に支持され、
前記横方向支持構造体は、
各スタックの全長に沿って軸方向に延在し、
前記筐体の前記側壁の内側に向けて配置され、
それの周囲の少なくとも部分上で前記各スタックに接触し、
前記筐体内の回転動作に抗して各スタックを支持し、
前記横方向に近接した複数のガス発生ウェハのスタックの少なくともいくつかは、前記各スタックのガス発生ウェハに接触する軸方向支持構造体によって各スタックの対向する端部でのみ軸方向に支持され、
編成された前記スタックを有する前記ガス発生ウェハは、結合して充分な塊を有し、点火時に前記チャンバ内で周囲を凌ぐ圧力を有するガスを生成し、
前記円筒形状の筐体は、前記筐体の前記他方の端部に近接した前記チャンバと連通している少なくとも1つの閉鎖した排気ポートを備え、
前記少なくとも1つの閉鎖した排気ポートは、前記チャンバ内で発生した環境圧力以上の所定の圧力に応答してガスを前記円筒形状の筐体の外部に開放するように構成された、ガス発生器組立体。
【請求項2】
請求項1に記載のガス発生器組立体において、
開放されるとき、前記少なくとも1つの排気ポートがその中と連通するガス放出構造体を更に備える、ガス発生器組立体。
【請求項3】
請求項2に記載のガス発生器組立体において、
前記ガス放出構造体は、前記少なくとも1つの排気ポートからのガスが通過する通路を提供するヒートシンク材料を含むヒートシンクチャンバを含む管状の筐体を更に備える、ガス発生器組立体。
【請求項4】
請求項3に記載のガス発生器組立体において、
前記ヒートシンク材料は、スチールショットを備える、ガス発生器組立体。
【請求項5】
請求項4に記載のガス発生器組立体において、
前記スチールショットは、前記管状の筐体の内部の軸方向に離間した2つの多孔支持部の間に含まれる、ガス発生器組立体。
【請求項6】
請求項5に記載のガス発生器組立体において、
前記多孔支持部の少なくとも1つの部分は、前記管状の筐体内部で軸方向に調整可能である、ガス発生器組立体。
【請求項7】
請求項1に記載のガス発生器組立体において、
前記軸方向支持構造体は、前記横方向に近接した複数のガス発生ウェハのスタックの対向する端部に近接して配設されたスパイダを備え、
前記横方向支持構造体は、
前記横方向に近接した複数のガス発生ウェハのスタックを横方向に取り囲むケージと、
側面上で前記スパイダのひとつに近接し、前記横方向に近接した複数のスタックに対向するリテーナリングと、
を備える、ガス発生器組立体。
【請求項8】
請求項7に記載のガス発生器組立体において、
各スパイダは、半径方向に延在する複数の脚部を備え、該複数の脚部は、該脚部の両端部の間の半径方向の位置でリングに固定され、
前記複数の脚部の内部端部は、中央開口部を形成し、
前記脚部の外側端部は、前記筐体の内径より小さい直径を画定し、
ひとつのスパイダは、前記筐体のひとつの端部に近接し、
前記ケージは、軸方向に離間した複数の支持リングを備え、
前記軸方向に離間した複数の支持リングは、軸方向に方向付けられ周方向に離間した複数の支持セグメントが固定され、
前記支持リングは、前記支持セグメントの端部から軸方向に離間し、
前記リテーナリングは、前記スパイダの前記ひとつと、前記筐体の対向する端部に近接するスパイダとの間に配設された、ガス発生器組立体。
【請求項9】
請求項1に記載のガス発生器組立体において、
前記ガス発生ウェハは、軸方向の中央開口部を更に備える、ガス発生器組立体。
【請求項10】
請求項1に記載のガス発生器組立体において、
前記ガス発生ウェハは、HACN組成物を備える、ガス発生器組立体。
【請求項11】
請求項1に記載のガス発生器組立体において、
前記横方向に近接した複数のガス発生ウェハのスタックは、7個のガス発生ウェハのスタックを備える、ガス発生器組立体。
【請求項12】
請求項1に記載のガス発生器組立体において、
前記横方向に近接した複数のガス発生ウェハのスタックの少なくともいくつかは、前記チャンバ内で円周状に整列されている、ガス発生器組立体。
【請求項13】
請求項1に記載のガス発生器組立体において、
前記少なくとも1つの閉鎖された排気ポートを閉鎖する壊れ易い障壁を更に備え、
前記壊れ易い障壁は、前記チャンバ内で発生した環境圧力以上の所定の圧力に応答して壊れ、前記少なくとも1つの閉鎖された排気ポートを開放するように構成されている、ガス発生器組立体。
【請求項14】
請求項1に記載のガス発生器組立体において、
前記少なくとも1つの排気ポートと整合して固定された当該少なくとも1つの排気ポートのボア直径より小さいボア直径を有する交換可能なオリフィス板を更に備える、ガス発生器組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、様々な実施形態の中で、一般に、ガス発生ウェハの多数のスタックを共通の筐体内に備えたガス発生器組立体と、ガス発生器組立体の操作方法とに関する。発生器及び方法は、消火用途の使用のための特殊な用途を有する。
【背景技術】
【0002】
過去において、ハロンハロカーボンについては、消火に関連する広範囲の用途が見出されてきた。「ハロンハロカーボン」の用語は、概して、ハロアルカン、または、ハロゲノアルカン、結合した(linked)ハロゲンを備えるアルカンからなる化学化合物のグループを参照し、とりわけ、臭素含有ハロアルカンを指す。ハロンハロカーボンは、一般に、ほとんどのタイプの火災を消すのに効果的であり、非導電性であり、残留物の形成なしに急速に消散する傾向があり、限られた人体の露出(human exposure)に対して比較的に安全である傾向がある。過去において、ハロカーボンハロン1301(ブロモトリフルオロメタン、CBrF
3)などのハロンハロカーボンは、典型的に水スプリンクラーシステムの適用があまり適切でない領域または建物、データおよびコンピュータセンタ、博物館、図書館、手術室、および、水ベースの抑制剤の適用が、電子機器、重要な記録文書収集などに取り返しのつかない損傷を結果的に生じさせ得る他の場所などの領域の中で、または、それらの領域のために、消火剤として有用であることが見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許番号第5,439,537号
【特許文献2】米国特許番号第5,673,935号
【特許文献3】米国特許番号第5,725,699号
【特許文献4】米国特許番号第6,039,820号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ハロンハロカーボンは、大気に関してオゾン層を破壊する態様に起因して、環境に有害な影響を有することが見出されてきた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態は、ガス発生器組立体及び操作方法を備える。
【0006】
ひとつの実施形態では、ガス発生器組立体は、筐体を含むガス発生器を備え、筐体は、横方向に近接し横方向及び軸方向に支持された複数のガス発生ウェハのスタックと、横方向に近接したスタックの一方の端部に近接した点火材料とを含む。点火材料に動作可能に関連付けされた点火器は、筐体の外部と連通可能である。筐体は、横方向に近接したスタックの反対側の端部に近接した少なくとも1つの閉鎖したポートを備え、少なくとも1つの閉鎖した排気ポートは、環境圧力以上の筐体内の圧力に応答して開放されるように構成された閉鎖部を有する。
【0007】
別の実施形態では、ガスを発生させる方法は、横方向に近接し、共通筐体内で横方向及び軸方向に支持された複数のガス発生ウェハのスタックを点火材料で実質的に同時に点火する工程と、ガス発生ウェハの燃焼によるガスの発生に応答して筐体内の圧力を増加させて、増加した圧力に応答して筐体の少なくとも1つのポートの閉鎖を開かせて筐体内から加圧したガスを開放する工程とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態によるガス発生器とガス放出構造体を含むガス発生器組立体の側面断面図である。
【
図2A】ガス発生器の筐体内のガス発生ウェハのスタックを横方向に支持するケージの平面図である。
【
図2B】ガス発生器の筐体内のガス発生ウェハのスタックを横方向に支持するケージの側面図である。
【
図3A】ガス発生ウェハのスタックを軸方向に支持するガス発生器の筐体の対向する端部内での配置のためのスパイダである。
【
図3B】ガス発生ウェハのスタックを軸方向に支持するガス発生器の筐体の対向する端部内での配置のためのスパイダリングである。
【
図3C】ガス発生ウェハのスタックを軸方向に支持するガス発生器の筐体の対向する端部内での配置のためのスパイダの脚部である。
【
図4】ガス発生ウェハのスタックを軸方向に支持するために、筐体内で一方の端部に近接して配置するリテーナリングの平面図である。
【
図5】
図2A及び
図2Bのケージであって、ガス発生ウェハのスタックのうち最下層のガス発生ウェハがケージの中に配設され、
図3Aのスパイダ上に置かれたケージの概観図である。
【
図6】排気ポート上に固定された壊れ易い障壁とオリフィス板と拡散板とを有する排出ポートを示す
図1のガス発生器の筐体の部分の一方の端部の拡大した側面断面図である。
【
図7】冷却剤チャンバ内に配設された多量のヒートシンク材料を正確に変化させて軸方向及び横方向の拘束を可能にするために、軸方向に調節可能な多孔板を採用する
図1のガス発生器組立体のガス放出構造体のヒートシンクチャンバの部分の別の実施形態の側面断面図である。
【
図8】本開示の実施形態によるガス発生ウェハの概観図である。
【
図9】
図1及び
図7のガス発生器組立体のガス放出構造体内に採用されるときの円形で多孔の支持板の部分の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ガス発生器、その構成要素、及び、操作方法が、記述される。本開示のある特徴は、特に消火用途の使用に好適なガス発生器を特に参照するが、本開示は、消火用途に限定されない。
【0010】
以下に更に詳細に記述されるように、本開示の実施形態によるガス発生器は、発生器内で採用されるガス発生材料を横方向及び軸方向に支持する構造体を含み、他の方法では使用に先立ってガス発生材料の移動および崩壊を生じさせ得る振動等の力の副作用からガス発生材料を支持して、信頼性を高め、点火時にガス発生材料の燃焼速度を更に一定で反復可能に提供する。
【0011】
図1は、本開示の実施形態によるガス発生器組立体10を記載する。ガス発生器組立体10は、ガス発生器12と、関連するガス放出構造体13とを備える。
【0012】
ガス発生器12は、閉鎖した端部を有する実質的に円筒形状の筐体14を備え、一方の端部はベース板16を備え、反対側の端部は、孔22を通り、例えば溶接によって筐体14に固定されたフランジ26内の雌ねじ孔24の中へと延伸する円周状に離間した複数のボトル20によってそれぞれが固定されたカバー板18を備える。気体気密の封止部は、筐体14に面しているベース板16とカバー板18の表面の中の環状の溝部内に配設されたOリング28を使用して、ベース板16とカバー板18の各々の間に効果を生じる。筐体14、ベース板16、カバー板18は、各々が、例えば、鋼材料などの金属材料を備える。繊維補強の複合材料や補強セラミック材料のような他の材料もまた、特殊な用途に好適であろう。組み立てられるとき、そのような構成要素は、チャンバCを閉鎖し、ガス発生器12の操作に関連して上昇した温度と圧力に耐える。筐体の一方の端部は筐体の実質的に円筒形状の部分と一体的に形成されることが考慮される。商業的な用途のために、筐体14は、例えば溶接、圧着、接着剤の使用などで永久に封止されることが考慮される。
【0013】
ベース板16は、中央に配置され、点火器32の遠位端部がその中に突出する孔部30を含み、点火器32は、従来の設計であり、本発明の技術分野で周知なように電気的に点火される。孔部30の外側部分は、点火器32の固定に使用されるねじ等を備え、一方、孔部30の内側部分は、拡大された直径を備え、点火器材料34の顆粒やタブレット等の粒子を保持する。孔部30の開口部は、そこを覆って固定されるカバー36で覆われ、そこを通る複数の孔部38を有する。
【0014】
軸方向の支持部構造体は、スパイダ40の形態を有し(
図3Aから
図3C)、筐体14内のベース板16に近接して配設される。スパイダのリング42は、カバー36を取り囲み、カバー36の上方にクリアランスを提供する。スパイダの脚部44は、リング42のスロット48と係合し、半径方向に外側に延在するスロット46を備え、スロット46は、チャンバC内でスパイダ40を中心に集めるために、筐体14の内径より僅かに小さい直径の長さを有する。リング42内で延在する脚部44の部分は、カバー36がその中に突出する中央開口部50を囲む。脚部44とリング42とは、例えば溶接で一緒に固定される。
【0015】
包含構造体、例えば、点火器材料54の顆粒やタブレット等の粒子を含むアルミニウム材料でできており、カバー36の直径より横方向にある程度大きいフォイルポーチ52は、スパイダ40に近接しており、ガス発生ウェハ50の複数の(この実施形態では7個の)スタック58の最下層のガス発生ウェハ56の下に延在する。中央開口部50は、点火器材料34の燃焼によるエネルギがフォイルポーチ52に到達し貫通して、点火材料54の点火を可能にする。しかし、ガス発生ウェハは、発生するガスの量とガス発生器組立体10の据付に利用可能な空間とを考慮して、ガス発生ウェハ56の7個のスタック58より少ない又は多いスタックが採用されることも可能であることが考えられる。例えば、ガス発生ウェハのより少ない数のスタック58、例えば4個のスタックが採用され、ガス発生ウェハの中央のスタック58が省かれる。点火器材料34は、点火器材料54と同じであり、各々は、例えば、B/KNO
3を備える。更に、点火器材料34と点火器材料54とは、共通の包含構造体の中で結合され、直近に近接した点火器32の部分の近接部を提供するように構成されている。例えば、包含構造体の部分は、中央開口部を通り、点火器32に向けて、点火器32に直近の近接部の中に突出する。
【0016】
ガス発生ウェハのスタック58の各々の一方の端部はフォイルポーチ52に近接し、ガス発生ウェハのスタック58は横方向支持構造体によって横方向に支持され、横方向支持構造体は、軸方向に方向付けられ周方向に離間した、「V」字断面を有する支持セグメント62を備えたケージ60(
図2A、2B)の形態を有する。支持セグメント62は、外方向に面を向け、例えば溶接によって軸方向に離間した上方及び下方の支持リング64の内側表面に固定された山形鉄(angle iron)のセグメントを備える。上方及び下方の支持リング64は、支持セグメント62の端部から離間しており、支持セグメント62の下方の端部は、スパイダ40の脚部44の間を延在する(
図5)。支持セグメント62は、近接して周方向に配列した6個のガス発生ウェハのスタック58の使用に関連付けられた60度の間隔で配設して示されるが、周方向に離間した6個より多い又は少ないガス発生ウェハのスタック58が採用されれば、そのような支持セグメントの数と間隔は変化することを当業者は理解し評価するであろう。周方向に離間して並ぶタブ66は、支持リング64の外側表面から半径方向に突出し、タブ66は、筐体14のチャンバC内でケージ60を中心に集めるために、実質的に円筒形状の筐体14の内径より僅かに小さい直径の長さを有する。
図1に示されるようなケージ60は、ガス発生ウェハのスタック58、2つの外側スタック58の間に示される中央スタック58を明瞭に見るためにいくつかの支持セグメント62が省略されている。
【0017】
ガス発生ウェハのスタック58は、実質的に円筒形状の構造を有し、中央の軸方向に延在する孔部A(
図8)を備える複数のガス発生ウェハ56を備える。ガス発生ウェハはまた、スタック内で組み立てられたウェハ間のスタンドオフを提供して各ガス発生ウェハ56のすべての表面の燃焼を容易にするために、ひとつの主要な面からの複数の突出部57を含む。
【0018】
ガス発生ウェハの少なくともいくつかのスタック58は、ケージ60内で周方向に整列され、ガス発生ウェハの複数のスタック58は、複数の例えば6個の周方向に整列された外側のウェハスタック58によって取り囲まれた中央のウェハスタック58を備える。周方向に整列されたガス発生ウェハのスタック58の各々は、横方向支持構造体によって、図解した実施形態で更に特定すれば、山形鉄(angle iron)の端部によって、スタック(
図5参照)の外部の少なくとも2つの点に沿って横方向に支持される。中央のウェハスタック58は、取り囲んでいる周方向のウェハスタック58との接触によって横方向に支持される。
【0019】
他のスパイダ40’の形態を有する軸方向支持構造体は、ベース板16に近接したスパイダ40と同じ大きさと構造とを有し、スパイダ40からウェハスタック58の各々の反対側の端部に近接し、スパイダ40に関して上記した方法で支持セグメント62の上方部分とぴったりと収まる。追加の軸方向支持構造体は、例えばセグメント62によって画定された内径よりも小さい直径を有するリテーナリング70の形態を有し(
図4)、ウェハスタック58とは反対側の側面上のスパイダ40’に近接して配置される。選択的には、リテーナリング70は、チャンバC内でリテーナリング70を中心に集めるために、リテーナリング70の外部表面から半径方向に突出する周方向に離間して配置したタブ72を備え、或いは、カバー板18の内部表面内で類似の直径を有する溝部を使用することで中心に集められる。様々な軸方向高さを有するリテーナリング70が採用され、高さは、所定の用途のために選択されるウェハスタック58内のガス発生ウェハ56の数に依存する。しかし、実質的に円筒形状の筐体14の軸方向高さは、ウェハスタック58の選択された高さや軸方向高さを有する他の構成要素に基づいて選択され、チャンバC内の自由な容積を最小化し、ガス発生ウェハ56の点火時にチャンバC内の圧力上昇割合を高める。そのような場合、リテーナリング70は、省かれることもある。
【0020】
スパイダ40,40’、ケージ60、リテーナリング70の構成要素は、金属材料、例えば鋼材料で形成される。
【0021】
カバー板18が筐体14に固定されるとき、ケージ60、スパイダ40,40’、リテーナリング70を組み合わせて使用することは、ガス発生器12の取り扱い中や据え付け中にウェハスタックに損傷を与える振動や他の力に抗して、ガス発生ウェハのスタック58を横方向及び軸方向に支持し、点火中及び燃焼中にガス発生ウェハのスタック58を支持する。ウェハスタック58で採用される異なる数のガス発生ウェハ56の使用から結果として生じるスパイダ40’とカバー板18との間の軸方向の異なるギャップを橋渡しするために異なる高さを有するリテーナリング70を使用することは、スタックの高さにもかかわらず、正確で信頼性を有する軸方向支持部を提供する。
【0022】
カバー板18は、そこを通過するボア直径Bを有する少なくとも1つの排気ポート80を備え、閉鎖部(拡大された
図6参照)は、破裂ディスクとして構成された壊れ易い障壁82の形態を取る排気ポート80と関連付けられる。ボアBの直径より小さいボア直径を有するオリフィス板84は、排気ポート80上に選択的に配置され、カバー板に固定される。壊れ易い障壁82とオリフィス板84とは、使用されれば、ボルト86でカバー板18に固定される。オリフィス板が採用されなければ、少なくとも1つの排気ポート80に類似するボア直径を有する環状の押し付けカラー(hold-down collar)(不図示)が、壊れ易い障壁82を固定するために採用される。オリフィス板84の使用は、排気ポート80の効率的な大きさの調節を可能にし、その結果、チャンバCから放出されるガスの速度の調節を可能にし、チャンバC内で充分な圧力を維持し、ガス発生ウェハ56の自己維持燃焼速度を確実にして、ガス発生器12の所望の用途のためにチャンバCからのガス排出速度を規制する。カバー板18はまた、オリフィス板84と拡散板(diffuser plate)84dの両方をカバー板18とスリーブ87とに固定するために例えば細長ボルト86eを使用して、オリフィス板84の上方に取り付けられた拡散板84dを選択的に担持し、スリーブ87は、その中を細長ボルト86eが延在し、オリフィス板84の上方で拡散板84dに空間を開けるために使用される。拡散板84dの使用は、排気ポート80から軸方向に方向付けられた加圧ガスGの高エネルギの流れを効率的に遮蔽し、ポート上方のガス放出構造体13の部分がガス流で損傷を受けることを防ぎ、以下に記述されるように、ヒートシンクチャンバを通るガス流の通過を拡散する。
【0023】
チャンバC内のガス発生材料の容積及び燃焼速度のために適切に選択されたオリフィスの大きさはまた、過度の内部圧力に起因してガス発生器12の筐体14が破裂する潜在性を最小化する。しかし、例えばカラー94とボルト96によって破裂ディスクや他の壊れ易い障壁92が固定された1又は2以上の過圧開放ポート90は、カバー板18内に、筐体14内に、或いは、所望であればベース板16内に組み込まれる。もちろん、壊れ易い障壁92の破裂圧力は、壊れ易い障壁82の破裂圧力より大きくなるように選択され、望ましくない過圧状態がチャンバC内で発生しなければ、そして、過圧状態が発生するまで、後者が最初に壊れ、ガス発生器が適切に動作することを確実にする。もちろん、2以上のガス発生器ポート80が採用されることもあり、単一の又は3以上の過圧開放ポート90が採用されることもある。
【0024】
ウェハ56内での使用に好適なガス発生材料のための組成物は、当業者に周知であり、発生するガスの意図された用途に依存して異なる。消火での使用のために、特に人が占有する領域での消火のために、ガス発生ウェハ56のガス発生材料は、ヒンショーらによる、米国特許番号第5,439,537号、第5,673,935号、第5,725,699号、第6,039,820号に開示されるように、HACN組成物であろう。これらの特許の各々の開示は、参照することでここに取り込む。ガス発生材料内で使用されるHACNは、再結晶化され、約0.1%未満の活性炭や炭素を含む。ガス発生材料内で少ない量の炭素を維持することで、CO、CO
2やその混合物等の炭素含有ガスの量は、ガス発生材料の燃焼時に最少化される。代替的には、最大で約1%の活性炭や炭素を有する工業銘柄(technical grade)のHACNが使用されるであろう。炭素含有ガスやNO
xを含まないガス状燃焼生成物を生成する従来のガス発生材料もまた使用されることは考慮される。
【0025】
HACN組成物や他のガス発生材料は、酸化剤、点火促進剤、バリスティック調整剤(ballistic modifier)、スラグ促進剤(slag enhancing agent)、冷却剤、化学的消火剤、無機結合剤、有機結合剤の少なくとも1つ等の追加の原料を含む。例として、HACN組成物は、酸化第二銅、二酸化チタン、硝酸グアニジン、硝酸ストロンチウム、及び、ガラスの少なくとも1つを含む。ガス発生材料で使用される多くの添加物は、多数の目的を有する。単に例示のために、酸化剤として使用される添加剤は、冷却特性、バリスティック調整特性、またはスラグ促進特性を、ガス発生材料に提供することが可能である。酸化剤は、HACN内に存在する活性炭の酸化を促進するために使用され、或いは、HACN内のコバルトに配位された(coordinated)アンモニアグループの酸化を促進するために使用される。酸化剤は、硝酸アンモニウム、アルカリ金属硝酸塩、アルカリ土類金属硝酸塩、過塩素酸アンモニウム、アルカリ金属過塩素酸塩、アルカリ土類金属過塩素酸塩、過酸化アンモニウム、アルカリ金属過酸化物、又は、アルカリ土類金属過酸化物であってもよい。酸化剤はまた、限定しないが、塩基性硝酸銅(〔Cu
2(OH)
3NO
3〕)(「BCN」)、Cu
2O、CuOを含む銅ベースの酸化剤のような遷移金属ベースの酸化剤であってもよい。酸化剤であることに加えて、銅ベースの酸化剤は、冷却剤、バリスティック調整剤、又は、スラグ促進剤として作用する。ガス発生8の燃焼時に、銅ベースの酸化剤は、金属コバルトや酸化コバルト等のコバルト燃焼生成物と混和できる金属銅や酸化第1銅等の銅含有燃焼生成物を生成する。これらの燃焼生成物は、ウェハ56の燃焼面或いはその近くで溶ける溶融スラグを生成し、微粒子が形成されるのを防止する。銅ベースの酸化剤はまた、燃焼速度の圧力依存性を減少させて、ガス発生材料の圧力指数を低下させる。一般に、銅ベースの酸化剤を含むHACN含有ガス発生材料は、大気圧またはその付近で、更に容易に点火し更に迅速に燃焼する。しかし、圧力依存性が更に低いために、約20.69MPa(3000psi)より大きいような極端に高い圧力ではそれほど迅速には燃焼しない。
【0026】
図解された実施形態では、ガス放出構造体13は、ガス発生器12から軸方向に延在し、実質的に円筒形状で管状の筐体100を備え、筐体100は、ガス発生器12の近傍でそれの端部に環状フランジ102を有し、カバー板18内の穴22を通じて延在するボルト20を使用してガス発生器12に固定される。
【0027】
環状支持部104は、例えば溶接やボルトを使用してカバー板の上方で管状筐体100内に固定される。多孔支持板106(
図9)の形態を有する多孔ヒートシンク材料支持部は、支持部104の頂面から軸方向に延在する穴110の中に螺合する円周状に離間した複数のボルト108を使用して支持部104に固定される。支持ロッド111は、選択的には、多孔支持板106の下でカバー板18に固定され、それの中央へと延在し、続けて記述されるように、上記したヒートシンク材料の重量のもとで曲がることを防止する。
【0028】
多孔支持板106’の形態を有する別の多孔ヒートシンク材料支持部は、多孔支持板106と同じ材料で形成され、同じ大きさを有し、多孔が多孔支持板106と同じ大きさと同じパターンを有するが、別の多孔ヒートシンク材料支持部は、支持板106、2つの多孔支持板106,106’、及び、ヒートシンクチャンバ108を提供するこれら2つの構成要素の間の管状筐体100のセグメントの軸方向の上方に配設される。ヒートシンクチャンバHCは、ヒートシンク材料を含み、少なくとも1つの排気ポート80を通じてガス発生器10のチャンバCから放出されガス放出構造体13を通過するガスGから熱を吸収する形態を有し、ガスがヒートシンク材料を通過するとき、多孔支持板106の下で望ましくない高い背面圧を生成することなくガスGを冷却する。ひとつの好適なヒートシンク材料は、例えば多孔支持板106,106’内の穴径より大きい直径を有するスチールショットSのような(ヒートシンクチャンバ108は動作のためにスチールショットSで満たされるが、明瞭にするために
図1ではいくつかだけが示されている)金属のペレットや粒子の形態を有し、そのような配置は、スチールショットS間にガスの通路を提供する。多孔支持板106の上方のヒートシンクチャンバ108内への出口管112の開口部は、キャップ114が除去されるとき、所望であれば、ヒートシンクチャンバからスチールショットや他のヒートシンク材料を除去するために使用される。ガス放出構造体の構成要素は、金属材料、例えば鋼材料で製造される。
【0029】
図1に示されるように、多孔支持板106’は、ボルト116によって管状筐体100に固定され、管状筐体100内で軸方向に複数の位置P1からP5で位置調節が可能である。ヒートシンクチャンバ108と、その結果としてのスチールショットSの量は、排ガス中の充分な熱削減を有効にするために、所望なように変えられ、スチールショットの選択された量は、多孔支持板106,106’間のヒートシンクチャンバ内にぴったりと含まれる。
【0030】
図7は、ガス放出構造体13のヒートシンクチャンバ部分の別の実施形態を示し、多孔支持板106’は、管状筐体100内で軸方向に更に細かく調節可能である。
図7の実施形態では、その中に軸方向スロット122を有する軸方向延在支柱120は、それの外径近くの多孔支持板106に固定され、ボルト116は、スロット122を通り、多孔支持板106’が軸方向に所望の位置に調節されるとき締結されるナット118へ延在する。例えば、多孔支持板106’は、ヒートシンクチャンバHC内でスチールショットSのコンパクトな塊を維持するために調節され、選択的には、ショット間の自由な空間を最小化するためにスチールショットSが管状筐体内で揺すられた後に調節される。
【0031】
動作において、本開示の実施形態のガス発生組立体は、選択的には、当業者に周知なように、センサによって検出された望ましくない環境条件に応答して効果を発揮する点火器32の動作によって起動し、或いは、そのような条件を検出した人によって手動で起動する。例えば、温度および煙センサは、手動スイッチが採用されるように、採用される。点火器32が動作に入るとき、点火器32は、ウェハスタック58のガス発生ウェハ56を順に、実質的には同時に点火する点火材料34の点火を通じて、点火材料34、54を点火する。ガス発生材料が燃焼してガスを生成するとき圧力はガス発生器12内で上昇し、ガス発生ウェハ56の燃焼は自己抑制となり、壊れ易い障壁82は、ガス発生器筐体14の概ね所定の内部圧力で壊れ、この内部圧力は、ガス発生器12を取り囲む環境の環境圧力より大きい。燃焼ガス発生ウェハ56から発生したガスは、少なくとも1つの排気ポート80を通ってガス放出構造体13の中へ開放され、スチールショットSを備えるヒートシンク材料を通じて流れ、実質的には、意図された目的のためにガス放出構造体13の外へ流れる。
【0032】
本開示は、図解された実施形態を参照して記述されたが、限定されるものではない。本発明の技術分野の当業者は、以下の特許請求の範囲、及び、法上の均等物にだけ制限される本発明の範囲を逸脱することなく、図解された実施形態に対する追加や修正、実施形態からの削除がなされることを理解し評価するであろう。