(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記記録媒体加熱用加熱基板が、少なくとも前記記録媒体のトナーが転写される面側から加熱するように、前記記録媒体と接触させて設けられてなる請求項2または3記載の定着装置。
前記第1加熱基板が、前記転写部で転写の終った前記記録媒体を直ちに加熱できるように前記転写部の転写具に近接して設けられる請求項1〜5のいずれか1項に記載の定着装置。
前記加圧搬送部の下流側に排紙を集積する排紙集積部が設けられ、該排紙集積部、前記加圧搬送部、前記加熱部、前記転写部の少なくとも前記記録媒体の裏面側、および前記記録媒体加熱用加熱基板の部分を一体的に囲むカバーケースが設けられてなる請求項2〜6のいずれか1項に記載の定着装置。
前記加熱部での加熱を、前記記録媒体の前記トナーが転写された面と反対面側に第1加熱基板を設けることにより行うと共に、前記第1加熱基板を介して、または前記加熱基板の前後に設けられる吸引装置を介して真空吸着により、前記記録媒体を前記第1加熱基板に密着させて行う請求項9または10記載の定着方法。
前記加圧ローラの下流側に排紙を集積する排紙集積部を設け、該排紙集積部、前記加圧しながら前記記録媒体を搬送する加圧ローラ、前記加熱部、前記記録媒体に転写する転写部の少なくとも前記記録媒体のトナー転写面と反対面側、および前記転写の前の前記記録媒体を加熱する記録媒体加熱部を一体的にカバーケースで囲み、かつ、前記記録媒体の搬送を前記転写部側が前記排紙集積部より高くなるような傾斜面にして行う請求項9〜11のいずれか1項に記載の定着方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図面を参照しながら本発明の定着装置および定着方法が説明される。
図1に、本発明の一実施形態による定着装置の概要図が示されるように、本発明の定着装置は、感光体31に形成された静電潜像を現像して付着したトナー42aを記録媒体41に転写する転写部3と、記録媒体41の転写部3より下流側に設けられ、転写部3で転写されたトナー42を加熱する加熱部1と、記録媒体41の加熱部1より下流側に設けられ、記録媒体41のトナー42が設けられた面側を加圧ローラ21により加圧しながら記録媒体41を搬送する加圧搬送部2と、を具備している。そして、加熱部1では、記録媒体41のトナー42が転写された面と反対面側から加熱する第1加熱基板10aおよび/または記録媒体41のトナー42が転写された面側から記録媒体41と離間して設けられる第2加熱基板10bにより加熱されると共に、記録媒体41に転写されたトナー42が軟化状態または流動状態になるまで加熱され、加圧搬送部では、軟化状態の温度以下の温度で加圧され;
図2および
図3Dに示されるように、第1加熱基板10aが加圧ローラ21に記録媒体41を挟んで対向する位置まで延びるように形成され、加圧ローラ21と対向する部分には、発熱抵抗体12が形成されない構造にされるか、転写部3より上流側に、記録媒体41を加熱する記録媒体加熱用加熱基板5が設けられる構造になっている。
【0024】
すなわち、従来の定着装置は、前述のように、ハロゲンランプを使用しないで省電力を図ろうとすると、セラミックヒータとトナーが転写された記録媒体の面との間に耐熱性フィルムを介在させて加熱すると共に加圧することにより、トナーの転写された面が直接セラミックヒータと擦られないようにして行わなければならない。そのため、セラミックヒータの熱が直接トナーの転写された面には伝わらず、熱の無駄が多いという問題がある。さらに、耐熱性フィルムは熱抵抗となるだけでなく、回転する間に温度が低下し、再加熱する必要があり、より一層電力を消費する。また、耐熱性フィルムを記録媒体と同期させて搬送させなければならず、機構的に複雑になる。しかし、本発明では、従来のトナーの加熱と加圧を同時に行うという発想を変えて、記録媒体に転写されたトナーを加熱して、軟化状態または流動状態にする加熱部1と、軟化状態または流動状態に加熱されたトナー42を冷却しながら加圧する加圧搬送部2とを別の構成にすることにより、セラミックヒータを主体とした加熱基板10を用い、記録媒体41を回転ローラ(加圧ローラ21)により直接加圧しながら搬送する構成にしたことに特徴がある。その結果、加熱部1でトナー42が加熱されて軟化状態または流動状態になり、記録媒体41に浸み込み、加圧搬送部2で加圧ローラ21により圧接されることにより、温度が低下して固着される。その結果、加圧ローラ21側にトナーが付着することは殆どなく、トナー42の劣化は殆どない。しかも、加圧搬送部2では、瞬間的に力が加われば良く、また、加熱部1はその走行距離を長くすることにより、充分に加熱することができる。そのため、記録媒体41の搬送スピードを速くすることができ、1分当たりの処理枚数を大きくすることができる。
【0025】
トナーは、種々の成分を混合して構成されている。例えば、主成分はアクリル−スチレン共重合体であるが、その混合比率は種々設定され得るし、その他に顔料、染料、外添剤(トナーの粒子同士が付着しないように1μm以下の小粒子)などが混合されている。そのため、トナーの性状を一概に示すことは難しいが、一般的な状態として、
図4に温度に対するトナー42の粘弾性の変化の一例が示されている。一般に温度を上昇させるとその粘弾性が低下することが知られている。
図4で、A点がガラス転移点(典型的なトナーの主成分であるPETのガラス転移点は68〜80℃程度、アクリル−スチレン共重合体のガラス転移点は105℃程度)で、固体領域からゴム領域に変化する温度である。このガラス転移点では、固体領域からゴム領域に変化する温度であるが、それ程粘弾性が固体領域から急激に下がる訳ではないので、紙などの記録媒体に浸み込ませるには十分ではない。実際には、この温度(ガラス転移点)よりも20〜50℃程度高く、粘弾性の低下が急峻の状態から緩く変る状態への変化温度B点より高い温度では紙などの繊維間にも圧力により浸み込みやすくなる。従って、B点以上で白黒(モノクロ)の印刷をすることができる。カラー印刷の場合でも、トナーの粒子が非常に小さければ、加圧により混ざり込み印刷をすることも可能であるが、一般論としてモノクロ印刷に適した温度領域になる。さらに温度を高くすると、粘弾性の低下が再度急激になる変化点C(前述のPETで212〜265℃程度、アクリル−スチレン共重合体で、200℃程度)が現れる。しかし、これらの温度の絶対値は組成等により一定しない。このC点の温度がゴム領域から流動域に変化する点で、一般的に溶融または融解する温度と言われている温度である。この変化点BからCまでの領域では、前述のように、圧力がかけられることにより、紙の繊維の間にも入り込む程度の軟化した状態で、前述のように、特にモノクロの印刷では問題なく印刷することができる領域であり、このB点とC点との間の温度範囲を軟化状態と呼ぶ。
【0026】
一方、カラー印刷の場合には、色の異なるトナーが充分に混ぜ合わさる必要がある。そのため、ただ軟化状態になっただけでは、通常のトナーの粒度ではきれいな印刷物を得ることはできない場合がある。しかし、
図4に示される変化点C以上の流動域の温度になればトナー同士が十分に混ざり合い、カラー印刷でも、きれいな印刷が得られやすい。しかし、前述のように、カラー印刷がこの領域に限定される訳ではない。また、モノクロ印刷でも、この流動域で行うこともできる。一方、余り温度が高くなり、流動化が激しくなると、所望の画像の画素領域を越えてトナーが流れる可能性があるし、加圧ローラなどにトナーが付着しやすくなるため、きれいな画像を得ることができなくなる。そのため、流動域となるC点から数十℃程度高いD点以下にすることが好ましい。すなわち、カラー印刷の場合には、C点とD点の間の温度範囲がカラー定着域として好ましい。勿論、流動域に入ってカラー印刷領域になっても、白黒印刷を行うことは可能であるが、温度が高くなる程印刷の品位は低下し、エネルギーの無駄にもなり好ましくない。
【0027】
そこで、加熱部1では、印刷の種類により、軟化状態か流動状態(カラー定着域に適する)になるまで加熱される。加圧搬送部2では、軟化状態になり繊維間にも浸み込みやすくなるトナーの温度、または流動状態になって、異なる色のトナーが混ざり合って浸み込み得るトナーの温度を低下させながら加圧することで固着させることに特徴がある。なお、加圧搬送部2では、トナーの温度を低下させて固着させることを目的としているが、余り急激に温度が低下すると、しっかりと圧接することができないので、急激に温度が低下しないようにある程度の加熱がされることが好ましい。
【0028】
従って、加圧搬送部2の加圧ローラ21の温度は、軟化状態の温度以下の温度で行われ、流動域よりも低い温度で行われることになる。換言すると、加熱部1で加熱された温度よりも低い温度で加圧される。従って、連続して印刷されることにより、軟化状態または流動状態になったトナー42からの熱により加圧ローラ21の温度が上がり過ぎる場合には、加熱しないで冷却(空冷)する場合もあり得る。
【0029】
この加圧ローラ21の温度設定は、加圧ローラ21の温度が軟化状態の温度以下であれば、
図5Bに示されるように、加圧ローラ21には殆どトナー42は付着せず、記録媒体41側では、それより温度が高く、記録媒体41とは密着した状態になっている。
図5Bでは、トナー41のいくらかは加圧ローラ21に付着し、トナー41の表面が損傷したような図が誇張して描かれているが、実際には殆どトナー41の表面は損傷しないで光沢のある定着表面が得られる。一方、加圧ローラ21の温度が流動域の温度になっていると、加圧ローラ21と接するトナー41も流動状態になっているため、加圧ローラ21とトナー42とは密着しやすい。一方、記録媒体41とトナー42も、トナー42が流動状態になっているため、密着性が良い。逆に、トナー42同士の凝集力が弱くなっているので、
図5Cに示されるように、トナー42が分断されて、記録媒体41側のトナー42が半分程度に損傷してしまう。従って、加圧ローラ21は軟化状態の温度以下にしておく必要がある。加圧ローラ21の周面は、柔軟性、耐摩耗性、付着防止等が施されていることが好ましい。
【0030】
このような観点からも、加圧搬送部2では、加熱ローラ21の温度を上昇させるよりも、記録媒体41の裏面側から加熱されることが好ましい。その例が
図2に示されており、その第1加熱基板10aの平面図が
図3Dに示されている。すなわち、
図3Dで上下方向の上側が記録媒体41の下流側で、耐摩耗層20の形成されている部分が加圧ローラ21と対向する部分になっている。この部分には発熱抵抗体12は形成されていないので、温度はそれ程上昇しないが、発熱抵抗体12が設けられている部分で加熱された絶縁基板1の熱が伝熱して耐摩耗層20も温度が上昇する。加圧搬送部2では、その程度の熱で加熱されることが、流動状態にはしないで、急激な温度低下を防止することができるので好ましい。また、この加圧搬送部2でも、記録媒体41の裏面側から加熱されることが、記録媒体41側では粘着しやすく、加圧ローラ21側では固体化しやすいため、加圧ローラ21に付着するという問題が避けられやすい。
【0031】
この転写から、加熱部1および加圧搬送部2を経て定着が完了するまでの、記録媒体41の位置に対するトナー42の状態(その温度と粘弾性)の関係が
図5Aに示されている。すなわち、
図5Aで、F点が記録媒体加熱用加熱基板10fで加熱された温度で、転写の終った状態(固体領域)であり、G点はその後加熱されてガラス転移点Tgに達して軟化状態になる。さらに、加熱部1で加熱されることにより、徐々に温度が高くなると共に粘弾性が低下していき、H点で一部が流動化する。この軟化状態から流動化する温度は、ある温度で全てが一度に変化するのではなく、徐々に相変化し、温度で一定温度の範囲iの間相変化が起こる。そして、I点で、トナー42の全体が流動状態になる。この流動状態でも、前述のように、余り温度が高くなるときれいな印刷には好ましくないので、前述の
図4のD点に至る前の温度J点を維持するように制御される。そして、K点で加圧ローラ21により圧接されることにより、トナー42の温度は急激に低下し、点Lで完全な軟化状態になると、温度の低下も緩やかになる。点Mで完全に加圧ローラ21から解放され、その後搬送されながら冷却され、取り扱える程度の温度Fになる。この点Kから点Hまでの時間mが加圧ローラ21により圧接される時間である。
【0032】
トナー42は、高速化のため、低温化が進んでいる。また、印刷が文字だけではなく、全面画像の定着を前提に考慮する必要がある。例えばアクリル−スチレン系樹脂が用いられるとすると、2μm厚で比熱1.4、A4サイズ1枚当たり、0.126gで、トナー側の必要な熱量は17.6J/100℃になる。一方、普通コピー用紙は70μm厚で、比熱1.25、A4サイズ1枚当たり4.2gで、紙側の必要な熱量は525J/100℃になる。この点からも、本発明の定着方法にある装置そのものを傾けて、熱量を有効利用することは非常に効果がある。また、加熱基板を増やすことにより、毎分60枚以上の定着が可能となる。
【0033】
加熱部1は、
図1に示される例では、記録媒体41の裏面(トナーが転写された面と反対面)側に設けられる第1加熱基板10aと、記録媒体41の表面(トナー42が転写された面)側に記録媒体41と離間して設けられる第2加熱基板10bとにより加熱されるようになっている。しかし、両方に加熱基板が設けられる必要はなく、どちらか一方だけに設けられればよい。いずれか一方だけに設けられる場合、記録媒体41の裏面(トナー42が転写された面と反対面)側に設けられる第1加熱基板10aの方が好ましい。記録媒体41に直接接触させて加熱することができるし、記録媒体41の温度が先に上昇するので、記録媒体41に含まれている水分を蒸発させやすい。さらに、記録媒体41側からトナー42が加熱されることにより、トナー42の記録媒体41側から温度が上がるため、特に記録媒体41である用紙との接触面が速く流動状態になり、用紙の繊維間に浸み込みやすくなるからである。
【0034】
一方、後述されるように、トナー42が形成された側から第2加熱基板10bにより加熱されれば、
図1に示されるように第3加熱基板10cと兼用することができるというメリットがある。この第1加熱基板10aは、後述される保護膜17の形成面が、記録媒体41の裏面に接触するように設けられている。この第1加熱基板10aは固定で、記録媒体41は、順次搬送されるため、接触していると摺動することになるが、加圧されている訳ではないし、記録媒体41の接触面はトナー42が転写された面と反対側の裏面で、トナー42は付着していないので、何ら支障はない。なお、この保護膜17は、セラミックスなどの薄いサブ基板にすることもできる。耐久性が向上する。
【0035】
この記録媒体41の裏面側から加熱する場合、後述される加熱基板10の構造例で示されるように、第1加熱基板10aに貫通孔を設けておき、第1加熱基板10aの裏面(記録媒体41と反対面)から吸引する吸引具が設けられることが好ましい。記録媒体41を第1加熱基板に密着させることができるからである。この第1加熱基板10aの詳細については後述されるが、貫通孔ではなくて、表面に細い溝が形成され、第1加熱基板10aの側面からその溝内を吸引する吸引具が設けられてもよいし、第1加熱基板10aが複数個に分割されて、その間隙部に吸引具が接続される構造でもよい。要は、貫通孔又は溝と吸引具による吸引装置により記録媒体41が第1加熱基板10aに密着する構造にされることが好ましい。なお、この吸引は、減圧状態になればよい程度の吸引であり、記録媒体41の搬送の妨げになるほどの強い吸引は行われない。
【0036】
さらに、第1加熱基板10aが設けられる場合、できるだけ転写部3の転写ローラ37に近接して設けられることが好ましい。転写されたトナー42が直ちに加熱されて軟化状態になりやすく、トナー42の細かい微粉末の飛散を防止し得るからである。近接とは、転写部3が転写ローラ37により転写される場合には、転写ローラ37の回転に支障をきたさない程度に近くて離間することを意味し、転写部3が図示しない転写チャージャおよび分離チャージャを用いて行われる場合には、その外周に第1加熱基板10aの端部が接触する程度の近さを意味している。
【0037】
第2加熱基板10bは、加熱部1の記録媒体41のトナー42が設けられた面側に、記録媒体41と離間して設けられている。すなわち、記録媒体41に転写されたトナー42には接触しないでトナー42を加熱できるようになっている。すなわち、この第2加熱基板10bは、記録媒体41と接触させて加熱するのではなく、第2加熱基板10bからの放射熱(輻射熱)により加熱するようになっている。従って、第2加熱基板10bにより記録媒体41のトナー42が転写された面が擦られることはなく、未定着のトナー42の一部が剥がれることはない。この観点から、第2加熱基板10bは、その表面から熱を放射しやすい構造のものが好ましい。例えば、表面に熱放射に優れた材料、例えば黒色アルマイト、ガラス、ゴムなど(熱放射率:0.9)、黒ラッカー(0.9)、黒色塗装(0.85)、エポキシガラス、紙フェノール、ポリテトラフルオロエチレンガラス(0.8)などの熱放射層が形成されたり、その表面に、10〜50μm程度の幅で、10〜50μm程度の深さの凹凸が形成されたりすることにより、熱放射をしやすい構造であることが好ましい。
【0038】
さらに、
図1に示される例は、加圧ローラ21を加熱する第3加熱基板10cが設けられている。
図1に示される例では、この第3加熱基板10cは第2加熱10bと兼用されている。この第3加熱基板10cは、その絶縁基板11の側面が加圧ローラ21の周面21aに押し付けられるように端面を斜めにカットして設けられている。そのため、第3加熱基板10cの熱が絶縁基板11を介して加圧ローラ21の周面21aに伝わり、温度が上昇した加圧ローラ21の周面21aで記録媒体41のトナー42を圧接することができる。そのため、加熱部1で加熱され、軟化状態または流動状態になったトナー42が加圧ローラ21に近づいて急激に温度が下がり、固化しかかった状態で加圧されるということがなくなり、トナー42が軟化状態または流動状態で加圧され得る。この場合、トナー42の表面側から温度が低下するので、トナー42の表面固体領域の温度に近づき、加圧ローラ21に付着しなくなる。その結果、より一層定着を確実に行うことができる。なお、
図1に示されるように、第3加熱基板10cの絶縁基板11の端面が斜めにカットされることにより、より一層加圧ローラ21が記録媒体41を加圧する直前で加熱することができ、加熱を有効に利用することができる。
【0039】
しかし、この第3加熱基板10cは必須ではない。一方、第3加熱基板10cには、後述されるように、温度測定用抵抗体が設けられており、第3加熱基板10cを介して加圧ローラ21の周面の温度が測定される。従って、連続して印刷が行われる場合、加熱されたトナー42と接触する加圧ローラ21の周面の温度が上昇し、第3加熱基板10cによる加熱は必要がなくなる場合もある。むしろ空冷等の冷却をする必要がある場合もあり得る。この第1加熱基板10aの単体構造、第2加熱基板10b、第3加熱基板10cおよび記録媒体加熱用加熱基板10fの主要部は、従来のセラミック基板の一面に発熱抵抗体が形成される、いわゆるセラミックヒータとほぼ同じ構造になっている。そのため、共通の加熱基板10として、その一例が
図3A〜3Cを参照して説明される。
【0040】
加熱基板10は、カードなどに記録や消去などをするのに用いられる従来の加熱ヘッドと同様の構造になっており、例えば
図3A〜3Bに保護膜(シート)17を除去した基本的な加熱基板10の平面説明図およびそのB-B断面図で、保護膜17が形成された状態が示されるような構成になっている。すなわち、絶縁基板11上に形成される発熱抵抗体12や温度測定用抵抗体13(13a、13b)、電極14(14a、14b、14c)、温度測定端子15(15a〜15e)などが形成され、その上に保護膜17が形成されている。なお、発熱抵抗体12や温度測定用抵抗体13と電極14や測定用端子15との間は、それぞれ導電体16により接続されている。この電極14や測定用端子15には図示しないリードが接続される。
【0041】
さらに具体的には、
図3Aに示されるように、例えばアルミナなどのセラミックスからなる絶縁基板11の一面に発熱抵抗体12と温度測定用抵抗体13(13a、13b)とが設けられた構造になっている。なお、これらの形状および配置等は任意に形成され得る。
図3Aに示される例では、例えば直線状で、帯状の発熱抵抗体12が矩形状の絶縁基板11の長手方向の一辺に沿って設けられることにより形成されている。この絶縁基板11の長手方向の長さは、50mm以上に形成され、例えば記録媒体41の幅(
図1の記録媒体41の紙面と垂直方向の寸法)に応じて形成される。記録媒体41が大きい場合には、この絶縁基板11を長くするか、または加熱基板10をその長手方向に複数個並べて配置することにより記録媒体41の幅に合せられる。また、1個で長い絶縁基板11で加熱基板10が形成される場合には、発熱抵抗体12や温度測定用抵抗体13の途中に電極14や測定用端子15を複数個形成しておき、分割して電圧を印加できるようにしたり、絶縁基板11の領域ごとに温度を定めることができるようにしたりして、常に絶縁基板11の全体で均一な温度になるように制御される。
【0042】
図3Aに示される例では、温度測定用抵抗体13a、13bが2本形成されているが、この構造に限定されない。この絶縁基板11の温度は、低すぎると記録媒体41上に転写されたトナー42が軟化状態や流動状態にならず、充分に定着されなくなるし、高過ぎてもトナー42が流動状態になり過ぎて加圧ローラ21にトナーが付着してトナーオフセットの現象が生じるので、絶縁基板11の温度が、その各領域に応じて正確に制御される必要がある。そのため、温度測定用抵抗体13の数や、測定用端子15の数はできるだけ多く形成されることが好ましい。
【0043】
絶縁基板11は、アルミナなどからなる熱伝導率の優れた絶縁性の基板が用いられる。形状は矩形状が好ましいが、これに限定されるものではない。長さは、記録媒体41の幅と等しいことが好ましいが、それより小さくても、前述のように、複数個の加熱基板10が並べられることにより支障はない。絶縁基板11の幅(
図3Aの発熱抵抗体12の延びる方向と垂直方向の寸法)は、例えば12mm程度の大きさに形成される。厚さは、例えば0.6mm程度のアルミナ基板が用いられる。
【0044】
発熱抵抗体12は、例えばAg、Pd、RuO
2、Pt、金属酸化物、ガラス粉末などを選択して混合することにより温度係数、抵抗値などが最適になるようにし、ペースト状にして印刷し、焼成することにより形成されている。焼成により形成される抵抗膜のシート抵抗値は固形絶縁粉末の量によって変えられる。両者の比率により抵抗値や温度係数を変えることができる。また、導体(電極14、測定端子15、接続導体16として使用する材料としては、Agの割合を多くし、Pdを少なくした同様のペースト状にしたものが用いられる。そうすることにより、発熱抵抗体12と同様に、印刷により形成することができる。端子接続の関係で使用温度により変る必要がある場合もある。Agが多い程抵抗値を低くすることができる。この発熱抵抗体12の抵抗温度係数は正に高い方が好ましく、とくに1000〜3500ppm/℃の材料を用いることが好ましい。また、図示されていないが、発熱抵抗体12の電流の流れる方向に沿って適当な位置に電極が設けられることにより、部分的に電圧を印加することができ、場所によって温度を変えることができる。
【0045】
抵抗温度係数が正に大きいということは、温度が上昇すると抵抗値の増加が大きいことであるから、発熱させた状態における抵抗値測定により基準抵抗値からのずれにより実際の発熱温度の検出を容易に精度よく行え、実効印加電力を調整することにより所望の発熱温度からのずれを修正しやすくなる。定着装置の場合、発熱抵抗体12用の電源に商用交流電源が使用されることが多く、交流のまま、例えば半波整流、全波整流のままで直流変換せずに使用される場合が多い。この場合、脈流のまま実効値を制御することになる。但し、制御には双方向サイリスタ(商品名トライアック)が用いられ、実効値で制御される。温度測定も実効値で行われ、トライアックで温度制御される。また、抵抗温度係数が正であることにより、温度が上昇し過ぎた場合に抵抗値が増大して電流値が下がり、抵抗による発熱量が下がるため、より早く温度が飽和状態となり、高温時の温度安定性に優れているからであり、熱暴走などによる過熱を防止できる。なお、発熱抵抗体12の標準的な部分の幅も、用途に応じて所定の温度になるように設定されてもよく、複数本の発熱抵抗体12が並列に並べられてもよい。
【0046】
また、発熱抵抗体12の両端部には、例えばパラジウムの比率を小さくした銀・パラジウム合金やAg-Pt合金などの良導電体からなる電極14が印刷などにより形成されている。この電極14は、図示しないリードが接続され、電源が接続されて発熱抵抗体12に通電される構造になっている。この電源は、直流でも、交流でもよく、また、パルス電圧でもよい。パルス電圧であれば、そのデューティを変えることにより、印加電力を制御することができる。また、
図3Aには、4mm程度の幅広の発熱抵抗体12が1本で形成されているが、発熱抵抗体の幅や本数はこの例に限定されず、目的に応じて、所望の温度になるように形成される。
【0047】
発熱抵抗体12の近傍には、発熱抵抗体12と同様に絶縁基板11の表面に温度測定用抵抗体13が形成されている。この温度測定用抵抗体13は、例えば
図3Aに示されるように、発熱抵抗体12に沿って形成されるのが好ましい。
図3Aに示される例では、間隔をあけて若干長さの異なる2個が形成されている。そして、それぞれの両端が一対の測定用端子15a、15bに接続されている。この測定用端子15a、15bも前述の電極14と同様に、良導電性の材料により形成されている。この温度測定用抵抗体13には、両端の一対の測定用端子15a、15bのみならず、その中心部にも測定用端子15eが形成されている。また、第2の温度測定用抵抗体13bの両端部にも一対の測定用端子15c、15dがそれぞれ形成され、中心部の測定用端子15eにも接続されている。
【0048】
温度測定用抵抗体13は、発熱抵抗体12と同じ材料で形成されてもよいが、好ましくはできるだけ温度係数の絶対値(%)が大きい方が好ましい。この温度測定用抵抗体13は、発熱させるものではなく、絶縁基板21の温度を検出して、造形材料の融解温度に達するようにするもので、例えば0.5mm幅で、発熱抵抗体12より若干短い長さで形成される。また、温度測定用抵抗体13自身は発熱しないよう印加電圧が低く抑えられて、例えば5V程度が印加される。すなわち、この温度測定用抵抗体13は絶縁基板11上に直接設けられているため、両者の温度は殆ど同じで、温度測定用抵抗体13の抵抗値を測定することにより、絶縁基板11表面の温度、ひいては記録媒体41を加熱する絶縁基板11の温度を知り、その温度をその軟化状態または流動状態にする温度にするためである。すなわち、抵抗体材料は、一般的にその温度が変化するとその抵抗値が変化するので、その抵抗値の変化を測定することにより、温度を測定するのである。温度検出手段については後述するが、この温度測定用抵抗体13の両端の電圧変化を検出することにより温度測定用抵抗体13の抵抗値を検出し、その抵抗値と温度測定用抵抗体13の温度係数(材料により分っている)から、その温度を検出するものであり、温度係数が大きい方が測定誤差を小さくすることができる。なお、この場合は、温度係数は正でも負でもよい。
【0049】
温度測定用抵抗体13は、発熱抵抗体12と同じ材料とは限らず用途に応じて印刷などにより形成される。すなわち、微小の温度差を必要とする場合には、AgとPdの混合比率を変えたものや、全く別の材料で温度係数の大きいものを用いることもできる。この温度測定用抵抗体13の測定端子15a、15bも、発熱抵抗体12の電極14などと同様に、Agを多くしてPdを少なくした良導電性の材料により形成される。この温度測定用端子15a、15bの形成は、温度測定用抵抗体13の端部に設けられるとは限らない。例えば
図3Aに示されるように、中央部に測定端子15eが設けられてもよいし、さらに二分されたそれぞれの中点に形成されてもよい。なお、温度測定用抵抗体13は、絶縁基板11の大きさ、または目的に応じて、形成される位置や測定端子15の位置が設定される。
【0050】
図3Aには省略して二点鎖線で外周部分のみが示されているが、
図3Bに断面図が示されているように、この発熱抵抗体12、温度測定用抵抗体13、および接続導体16は、保護膜17により被覆されている。この保護膜17は熱伝導率の大きいことが好ましく、例えば表面が平滑な硬質ガラス膜などにより形成される。しかし、後述される
図2に示されるような絶縁基板11と反対側の面が加圧ローラ21などと接触してローラなどを加熱する場合には、絶縁基板11の半分ぐらいの厚さの薄いセラミック板などからなるカバー基板が代わりに設けられてもよい。この場合も含めて保護膜17という。なお、電極14や測定用端子15は被覆されないで、露出しており、図示しないリードが接続される。
【0051】
図3Aに示される例は、それぞれの端部に電極や測定端子が設けられていたが、これらの一方を共通にして電極や測定端子を狭い方の側縁に集約させることもできる。その一例が
図3Cに示されている。すなわち、
図3Cに示される例は、発熱抵抗体12と温度測定用抵抗体13が1本ずつ並行して形成されると共に、さらに共通導体18が形成されている。この共通導体18は、発熱抵抗体12の他端部、および温度測定用抵抗体13の他端部に接続して形成され、その一端部が発熱抵抗体の一端部に接続される電極14、および温度測定用抵抗体13の一端部に接続される測定用端子15と並んで形成されている。その他の構造は
図3Aと同じで、同じ部分には同じ符号を付してその説明は省略される。
【0052】
図3Dに示される例は、
図2に示されるように、加圧ローラ21と対向する回転ローラの代りに、第1加熱基板10aの延長部分で支持する構成にした場合の第1加熱基板10aの構成例である。この例では、発熱抵抗体12と温度測定用抵抗体13とがそれぞれ2本ずつ形成されている。そして、その延長部分で加圧ローラ21と対向する部分には、発熱抵抗体12は形成されないで、耐摩耗層20が形成されている。発熱抵抗体12が形成されていなくても、絶縁基板11の熱伝導により、ある程度の温度上昇があり、加圧搬送部2での記録媒体41の温度の急激な低下が防止され、都合がよい。さらに、この例では、前述のように、記録媒体41が第1加熱基板10aと密着するように吸引装置が構成されている。すなわち、
図3Dに示される例では、発熱抵抗体12と温度測定用抵抗体13との間に、貫通孔19aとその貫通孔を結ぶ溝19bが形成されている。この貫通孔19aの絶縁基板11の裏面側に図示しない吸引具が形成されて貫通孔19aおよび溝19b内の空気が吸引されることにより、負圧になるため、その上を搬送される記録媒体41が吸いつける吸引装置になっている。すなわち、記録媒体41は第1加熱基板10aと密着しながら搬送される。その結果、第1加熱基板10aの熱量がより一層効率的に記録媒体41に与えられて、記録媒体41、ひいては転写されたトナー42の加熱に寄与する。
【0053】
この貫通孔19aの大きさは、0.3〜0.5mm程度で、溝19bの幅は0.3〜0.5mm程度であり、溝19bの深さは、0.2〜0.3mm程度である。吸引具としては、小型ブロワーや小型源圧ポンプ(半導体ウェハ用真空チャック)などが用いられ得る。この吸引された加熱空気は予熱部(転写前後の記録媒体の予熱)で熱の再利用も考えられる。
図3Dにおいて、20は、例えば表面が平滑な硬質ガラスなどからなる耐摩耗層である。すなわち、前述の加圧ローラ21と対向する回転ローラ22に代えて、この第1加熱基板10aの延長部分で加圧の対向基板とする例であるが、回転ローラ22と異なり、加圧ローラ21により押しつけられた記録媒体41を搬送するため、記録媒体41とこの第1加熱基板10aの耐摩耗層20とは摺動することになる。そのため、記録媒体41がスムースに動くように、かつ、第1加熱基板10aの表面が消耗しないように、滑らかで摩耗しにくい耐摩耗層20が形成されている。この耐摩耗層20の近傍には、発熱抵抗体12は形成されていないので、それほど温度は上がらないが、第1加熱基板10aの絶縁基板の熱伝導により、ある程度の温度上昇はある。
【0054】
この発熱抵抗体12や温度測定用抵抗体13の表面には、前述の保護膜17が設けられ、直接記録媒体41の裏面に接触している。そのため、記録媒体41の温度上昇が速く、また、省電力の点で優れる。省電力の観点からは、図示されていないが、発熱抵抗体12と絶縁基板11との間に、グレーズ層などの熱伝導率の小さい断熱層が挿入されることが好ましい。また、発熱抵抗体12の数は、発熱する温度や記録媒体41の搬送速度などに応じて、適当に増減される(70μm厚のA4紙の場合で、1枚当たり搬送中に約6Jの熱量を与えて加熱することによりトナー42を融解することができる)。なお、
図3Dに示される例では、発熱抵抗体12と温度測定用抵抗体13との間に吸引用の貫通孔19aおよび溝19bが形成されているが、このように発熱抵抗体12の近傍で吸引されることが、発熱抵抗体12に記録媒体41が吸着しやすいため、好ましい。しかし、発熱抵抗体12の温度を正確に測定し難いという問題はあり、次の
図3Eに示されるように、温度測定用抵抗体13の発熱抵抗体12と反対側に吸引用の貫通孔や溝が形成されても良い。
【0055】
図3Eに示される例は、吸引装置として、第1加熱基板10aの表面に形成される溝19bのみにより形成された例である。すなわち、第1加熱基板10aの表面の少なくとも一端縁に達するように溝19bが形成され、その第1加熱基板10aの端壁に吸引具が接続されて、溝19b内を負圧にする吸引装置の構成になっている。両端縁に溝19bが達している場合には、両端縁に吸引具が接続される。このような構造でも、
図3Dに示される例と同様に、記録媒体41を充分に第1加熱基板10aに密着させることができる。その他の構造は、
図3Dに示される構造と同じで、同じ部分には同じ符号を付してその説明は省略される。なお、この構造は、前述の
図3Dに示される構造に適用することもできる。すなわち、貫通孔19a側から吸引すると共に、溝19bを端部まで延ばして、端縁に吸引具を接続することもできる。
【0056】
図3Fは、吸引装置の他の例を示す例であり、
図3Cなどに示されるような発熱抵抗体12と温度測定用抵抗体13が1組形成された第1加熱基板10a1、10a2および基板10a3が、例えば0.1mm〜0.5mm程度の間隙部19cを介して並べられ、その間隙部19cに吸引具を接続して吸引装置とする例である。このような間隙部に限らず、0.1mm〜0.3mm程度の吸引用の孔や溝を有する金属やセラミックス類の多孔質材料を挟み込むこともできる。間隙部19cの場合は、周囲および適当な個所で、それぞれを連結して熱伝導を良くすることにより、また、例えば第1加熱基板10a3には発熱抵抗体12が形成されず、耐摩耗層20が形成されることにより、前述の
図3Dに示される構造と同様に構成することができる。このように個別の加熱基板が間隙や多孔質材料を介して並べられることにより、その間隙部19cや孔を利用して吸引装置を形成し得る。なお、
図3Fにおいて、一番左の基板10a3は、発熱用抵抗体は形成されておらず、右側の2つの基板10a1、10a2に発熱抵抗体と温度測定用抵抗体が形成されているが図では省略されている。一番左の基板10a3は、基板の表面に耐摩耗層が形成されているが、図では省略されている。なお、個々の第1加熱基板10a1などの裏面周囲で、予め固定されても良いし、この3つの基板への分割が完全には行われないで、その周囲で連結するように形成されてもよい。すなわち、基板にスリットが形成されているのと同じ構造でもよい。そのようにすれば、相互の位置関係が動かず、組立も容易になる。
【0057】
図1に示される例では、転写部3より上流側に、記録媒体加熱部5が設けられ、記録媒体41を加熱する記録媒体加熱用加熱基板10fが記録媒体41の両面に接触するように設けられている。この記録媒体加熱用加熱基板10fは、記録媒体41の両面に設ける必要はなく、一方だけで良いが、特に、トナー42が転写される面(表面)に設けられるのが好ましい。しかし、裏面側だけに設けられてもよい。薄い記録媒体の加熱は直ちに行われるからである。裏面側であれば、第1加熱基板10aなどと一体化することも考え得る。前述のように、記録媒体41が紙などの場合、水分を吸収しやすく、水分を内部に含んでいると、トナー42が転写されて定着される場合に、水分が蒸発して定着後のトナー43の表面に凹凸が形成されやすい。本発明では、加熱部と加圧部とを別の構成で行っているので、この問題はかなり解消されているが、なお一層確実にするには、トナー42の転写前に記録媒体41を加熱して記録媒体41中の水分を蒸発させておくことが好ましいからである。
【0058】
この記録媒体加熱用加熱基板10fも、前述の
図3A〜3Bに示される加熱基板10と同様の構造のものを使用することができる。前述のように、記録媒体41のトナー42が転写される面に直接接触させて設けられることが熱効率の観点から好ましい。しかし、耐摩耗性を考慮すれば、絶縁基板11の裏面を接触させたり、保護膜17を薄いセラミック板としたカバー基板にしたりしたものを使用することもできる。この記録媒体加熱用加熱基板10fは、トナー42を軟化状態にしたり、流動状態にしたりするものではなく、ただ記録媒体41の水分を蒸発させるものであるため、第1加熱基板10aより小さい電力で良い。
【0059】
この記録媒体41を加熱して水分を蒸発させること、および各加熱部を有効加熱すること、という観点から、例えば
図1に示されるように、この記録媒体加熱部5、トナー42を加熱する加熱部1、加圧搬送部2および排紙された記録媒体41を集積する排紙集積部6を転写部3の記録媒体41の裏面側を介して一体的に最小限の空間で囲むカバーケース7が形成され、さらに、転写部3側が加圧搬送部2よりも高くなるように、記録媒体41の搬送路が傾けて設置されることが好ましい。また、排紙集積部6側に第1開口部7aが形成され、記録媒体加熱部5側に第2開口部7bが形成されていることにより、カバーケース7内に気流7cが形成される。すなわち、カバーケース7が傾斜されていることにより、熱せられた空気は上方に行くため、第1開口部7aから第2開口部7bに向かって気流7cが形成される。その結果、記録媒体加熱部5およびトナー41の加熱部1や加圧搬送部2の加熱に寄与する。また、加熱部1に到達する前に記録媒体41を予熱することができる点からも好ましい。
【0060】
この定着装置の傾斜は、熱の有効利用という観点からは水平面に対する角度が大きいほど好ましい。しかし、転写したトナー42は紙などの記録媒体41の表面に付着しているだけであるので、余り傾けるとトナー42がずれる可能性がある。これは加熱部1で流動状態になるまで加熱された場合にも同様の危険性がある。その観点からは傾斜は小さいほど好ましい。この両者の関係を考慮すると、20°〜60°、さらに好ましくは30°〜45°程度が好ましい。このようにカバーケース7で囲まれ、傾斜されることにより、記録媒体加熱部5などで弱い加熱によっても記録媒体41を乾燥させ、また、加熱部1での軟化状態または流動状態にトナー42を加熱することができる。従って、全体的にエネルギー消費を少なくすることができ、地球温暖化への対策にもなる。
【0061】
加圧搬送部2は、
図1に示される例では、加圧ローラ(定着ローラ、上側ローラ)21と回転ローラ(下側ローラ)22とで、記録媒体41を圧接した状態で両ローラ21、22を回転させることにより、記録媒体41を加圧すると共に、搬送する仕組みになっている。なお、名称を加圧ローラ21と回転ローラ22と分けて記載しているが、便宜的に名称を分けただけで、両方のローラ21、22により圧接することは言うまでもない。また、回転ローラ22はローラでなくて、平板状のものでもよい。通常の定着装置に用いられる加熱加圧ローラは、ゴムローラなどの加熱しやすい材料が用いられ、加熱しながら加圧されるが、本発明では、加熱を目的とはしていないので、むしろ冷却しながら圧接をする。従って、加圧ローラ21の少なくとも周面には、トナー42は付着しないで、分離しやすい離型性のある材料で形成されていることが好ましい。
【0062】
具体的には、プラスチックなどの比較的固い断熱材料で、外面21aには付着防止用のフッ素樹脂系被膜が形成されたものが用いられる。下側の回転ローラ22も、断熱材料(スポンジ、バルーン(空気カプセル)混入プラスチックなど)が用いられる。なお、この加圧ローラ21の加熱は、トナー42を軟化状態や流動状態にさせるための熱量が求められている訳ではなく、軟化状態または流動状態になっているトナー42の温度が急激に低下して固化しないようにするものである。従って、それ程温度を高くする必要はなく、
図1に示されるように、加熱基板10の絶縁基板11を介しての熱で充分である。しかし、後述される
図2に示されるように、第3加熱基板10cが加圧ローラ21の加熱専用に用いられる場合には、絶縁基板11側ではなく、保護膜17側が接触するように設けられることができる。勿論、絶縁基板11の側面ではなく、裏面側を接触させて加熱することもできる。そうすることにより耐摩耗性が向上する。
【0063】
この加圧ローラ21は、前述のように、記録媒体41上で、加熱部1により軟化状態または流動状態になったトナー42を押し付けることにより記録媒体41に浸み込ませることが目的であるが、加圧搬送部2に送られてきた記録媒体(用紙)41上のトナー42の温度が急激に下がると加圧だけでは充分に記録媒体41に浸み込ませることができない場合が生じ得る。そのような場合を考慮すると、急激にトナー42の温度が下がらないように、加圧ローラ21もある程度の高温になっていることが好ましい。そのため、
図1に示される例では、第3加熱基板10c(
図1に示される例では、第2加熱基板10bと兼用)が、その絶縁基板11の側面で加圧ローラ21の周縁部21aに接触するように押し付けられている。この加圧ローラ21と第3加熱基板10cとの接触部分は、加圧ローラ21が記録媒体41と接触する部分にできるだけ近い上流(接触部分に至る手前側)の部分(加圧ローラ21の回転により圧接点にできるだけ早く達する位置)であることが好ましい。第3加熱基板10cから伝導した熱が逃げないうちに記録媒体41と接触させることが好ましいからである。しかし、第2加熱基板と共用するためには、第2加熱基板10bの配置位置との関係で決まる。
【0064】
図1に示される例では、加圧ローラ21と記録媒体41を介して回転ローラ22が設けられている。この回転ローラ22の回転を加圧ローラ21の回転と同期させておくことにより、両面から記録媒体41を挟み付けて搬送することができるため好ましい。しかし、記録媒体41の裏面側は、回転ローラ22でなくても、普通の平板でも構わない。加圧ローラ21の圧力に対して耐え得るものであればよい。搬送される記録媒体41と摺動することになるが、記録媒体41の裏側での摺動になるため、影響は生じない。
【0065】
また、下側(トナー面と反対側)に回転ローラ(下側ローラ)22が用いられる場合、図示されていないが、回転ローラ22の周縁にも、第4加熱基板が接触するように設けられることが、加圧ローラ21の場合と同様に記録媒体41の温度を急速に下げないで確実な定着を行いやすいという点で望ましい。しかし、回転ローラ22の場合は、記録媒体41の裏面と接触するため、その効果は小さく、必須ではない。また、回転ローラ22ではなく、平板が設けられる場合には、その平板に代えて前述の加熱基板10が設けられてもよい。このように、加圧搬送部3で軟化状態または流動状態になって未定着のトナー42が圧接されることにより、定着されたトナー43になる。
【0066】
すなわち、転写されたトナー42が加熱されると、前述の
図4に示されるように、その粘弾性が徐々に低下し、記録媒体41に浸み込みやすくなる。これを加圧すると、紙の繊維間に浸み込んだトナー42が固着されて剥れ難くなる。このトナー42の加圧により、加圧されたトナー43の表面は平坦化されてきれいな印刷表面が得られる。
【0067】
転写部3は、通常の電子写真方式プリンタの場合と同様に、清掃部32、除電部33、帯電部34、露光(光書込み)部35、現像部36を通るように感光体の一例である感光ドラム31を回転させながら露光部35でレーザ光またはLED光を用いて光書込みをして感光ドラム31上に静電潜像を形成し、これに現像部36でトナー42aを感光ドラム31に付着させて現像し、可視像化する。そして、転写具37で電気力によりトナー42aを感光ドラム31から記録媒体41に転写することにより、記録媒体41に写真画像が形成される。トナー42aは、樹脂に種々の顔料を混合したものである。この記録媒体41が順次搬送されて加熱部1、加圧搬送部2を経由することにより、転写されたトナー42の画像が定着される。なお、カラープリントの場合は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のある色のトナー42が順次転写され、複数色のトナーが転写された後に加熱部1で軟化状態に、加熱部1で溶融状態に加熱され、その後に加圧することにより定着される。しかし、転写されたままの状態で長時間、多く移動していると、トナーが脱落して浮遊する機会が多くなるので、各色それぞれのトナーが転写された後に仮定着することも考えられている。
【0068】
図1に示される例では、記録媒体41が連続した帯状体で示されているが、実際には、A4判とか、B5判、カードのような一定の大きさの記録媒体41が連続して送られる構成になっている。そのため、一番下流側では、定着が完了した用紙(記録媒体)41は排紙され、排紙集積部6に溜る。この定着が完了して送り出された排紙41は、加圧搬送部2で冷却されたといっても、常温よりは遥かに高い温度であり、熱が放熱される。本発明では、この熱も有効に利用することにより省エネ化を図るもので、この排紙集積部6も含めてカバーケース7により被覆し、転写部3側に温度が伝達されるようにカバーケース7が形成されると共に、記録媒体41の搬送部が傾斜するように設けられている。
【0069】
図2に示される実施形態は、加熱部1で第2加熱基板10bが設けられないと共に、回転ローラ22の代りに、平板上の基板として、第1加熱基板10aが延長して設けられ、その第1加熱基板10aの表面に耐摩耗層20が形成されている。すなわち、前述の
図3Eに示される構造の加熱基板が用いられている。第3加熱基板10cは、加圧ローラ21の加熱または温度測定の専用に設けられている。なお、この
図2では、カバーケース7が省略されると共に、定着装置の傾斜も省略されていないが、
図1と同様の構成にすることが好ましい。この実施形態では、加圧ローラ21を加熱する第3加熱基板10cは、第2加熱基板10bと共用していないので、発熱抵抗体12側の保護膜(カバー基板)17側が接触されることが、熱の有効利用、または加圧ローラ21の温度の正確な測定の観点から好ましい。他の構造は
図1に示される構造と同じであり、
図1と同じ部分には同じ符号を付し、その説明は省略される。
【0070】
前述のように、トナー42を加熱する温度が低すぎると、軟化状態または流動状態にすることができず、十分な定着をすることができない。また、高すぎても、加圧搬送部2でトナー42の一部が加圧ローラ21に付着して好ましくない。そのため、加熱基板10の温度制御は正確に行うことが必要となる。
図1などに示される定着装置の温度制御手段(駆動回路)が
図6に示されている。すなわち、この駆動回路は直流または交流の電源390で駆動する例で電源390としては、電池または商用電源390をパルス駆動、トランスなどにより電圧や印加時間を調整して、印加電力を調整する調整部370を介して発熱抵抗体12に接続される電極14(
図3A参照)に駆動電力が供給されるようになっている。その結果、交流電源をそのまま使用することもでき、商用の交流電源390により供給される電圧は、電力の調整部370により調整され、所望の温度になるように調整される。調整部370は、たとえば電源390が交流の場合には、トライアックやサイリスタなどの交流電力制御手段が用いられる。その結果、直流電源が不要で、電源冷却ファンも不要になる。しかし、電池による直流電源を用いることもできる。また、図示されていないが、パルスを印加するパルス駆動により加熱することもできる。その場合、電圧を変える以外にもデューティサイクルを変えることにより印加電力を調整することができる。さらに、パルス印加する場合には、その位相制御をする(PDM)ことにより出力を変えることもできる。
【0071】
その温度は、温度測定用抵抗体13を利用して、定電流回路350により測定用電源310の電流を一定にして供給される電流と、温度測定用抵抗体24の両端の電圧Vの測定により、その時点の温度測定用抵抗体13の抵抗値を知り、その抵抗値の変化により温度測定用抵抗体13、すなわち絶縁基板11(
図3A参照)の温度を測定して、その温度により電力の調整部370で印加電圧などを調整できるようになっている。調整部370は、特に複数の発熱抵抗体12を並べて加熱する場合に、各発熱抵抗体12の温度を均一にする、または温度を異ならせる場合に有効である。そのため、複数の温度測定用抵抗体13が設けられている場合には、それぞれ別々にその近傍の温度を測定し、各発熱抵抗体12で印加電圧などが調整されることが好ましい。ここに示される例では、直流電源の例で示されているが、交流でも実効値制御により温度検出をすることができる。
【0072】
この温度測定の原理を、もう少し詳しくした
図7を参照しながら説明する。例えば直流電源からなる測定用電源310の両端に定電流回路CCR(current controlled regulator)350を温度測定用抵抗体13と直列に接続しておき、温度測定用抵抗体13の両端の電圧Vを測定すれば、温度検出手段330により、その電圧を定電流で割り算することにより、温度測定用抵抗体13のその時点での抵抗値を知ることができ、予め分っている温度測定用抵抗体13の温度係数(材料により定まる)とから温度を算出することができる。なお、交流の場合は、内部で半波整流し、トリガー作用により行われる。その検出温度に応じて、制御手段360から調整部37により発熱抵抗体12の両端に印加する電力を制御することにより、絶縁基板11の温度を所定の温度に維持することができる。この制御手段360による発熱用抵抗体12の温度制御は、前述のように、印加電圧をパルスにして、そのパルスのデューティサイクルを変えてもよいし、電圧そのものを変化させてもよい。
図7に示される例では、定電流回路350が設けられたが、それに代えて、温度が変化しない場所に基準抵抗を設けて、その基準抵抗の電圧を測定することにより、電流を求めて、温度測定用抵抗体13の両端の電圧をV検出器340で測定してもよい。また、温度測定用電源310は、直流電源とは限らない。交流でもパルス的に定電流を得ることができる。
【0073】
前述の例では、発熱抵抗体12用の電源と、温度測定用抵抗体13用の電源とを別々の構成にしたが、両方を共用にして、例えばAC100V〜240Vの商用電源を用いることができる。その例の回路図が
図8に示されている。すなわち、この商用電源391に発熱抵抗体12と温度測定用抵抗体13とが並列に接続され、発熱抵抗体12と商用電源391の間に制御手段360が接続されている。そして、温度測定用抵抗体13から検出される温度に応じて、制御手段360が制御されることにより、発熱抵抗体12に印加される電圧が制御される。なお、発熱抵抗体12と温度測定用抵抗体13は、加熱基板上に形成されている。
【課題】加熱部と加圧部とを別構成にすることにより、加熱部で基板表面に発熱抵抗体が形成された省電力で、かつ、クイックスタートが可能な加熱基板を用いながら、転写されたトナーの損傷を生じさせないで鮮明な定着画像を得ることを目的とする。
【解決手段】転写部3と、それより下流側に設けられ、転写部3で転写されたトナー42を加熱する加熱部1と、さらに下流側に設けられる加圧搬送部2とを具備し、加熱部1では、記録媒体41の裏面側から加熱する第1加熱基板10aを有し、加熱部1でトナー42が軟化状態または流動状態になるまで加熱され、加圧搬送部2では、第1加熱基板が加圧ローラ21の下まで延びるように形成され、第1加熱基板10aの基板の熱伝導により加熱されながら加圧される構造になっている。