【実施例】
【0017】
つぎに、前述した理論を、足関節サポーター100として、丸編で編成される靴下100aに応用した場合について、
図3〜
図5を用いて説明する。
なお、以下の説明においては、右足用の靴下100aを図示した
図3〜
図5を用いて説明するが、左足用の靴下100aは、右足用の靴下100aにおける第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2、第3の強伸縮部3、第4の強伸縮部4及び第5の強伸縮部5の編地の位置が左右対称の位置にあるだけの違いであるので、図示を省略する。
【0018】
図3及び
図4において、本実施形態に係る靴下100aは、表糸、裏糸及びゴム糸を編糸とし、靴下編機(例えば、株式会社村田製作所製の編み機種「ラムダアンフィニー(針数:144本)」)により丸編で編み立てられる筒状編地のうち着用者のつま先に対応する部分を縫製加工してソックス形状とする構成である。
靴下100aは、足部10、身部20及び口ゴム部30の三部に大別され、ベース生地101に対して部分的に編み立てを異ならせてなる。
なお、本実施形態に係るベース生地101は、編み目が連続して並び、表と裏の区別がある編地である平編で編成している。
【0019】
足部10は、筒状編地における着用者の踵に対応するかかと成形部分であるかかと部11と、筒状編地における着用者のつま先に対応する爪先成形部分である爪先部12と、かかと部11の成形線(ゴアライン)11a及び爪先部12の成形線12aの先端を結ぶ線より上の部分である足甲部10aと、かかと部11の成形線11a及び爪先部12の成形線12aの先端を結ぶ線より下の部分である足底部10bと、を備えている。
【0020】
また、本実施形態に係る爪先部12は、着用者の第1趾(足の親指)と第1趾以外の4つの足指とを分けて爪先部12に装着できるように、爪先部12を2つに分割することで、歩行による靴下100aの捩れを防止することができる。
【0021】
また、本実施形態に係る爪先部12は、足部10の爪先部12を2以上に分割し構成してもよいし、第1趾に限らずに1つの足指と他の4つの足指とを分割し構成してもよいし、複数の足指と他の複数の足指とを分割し構成してもよい。
【0022】
なお、本実施形態に係るかかと部11及び爪先部12は、平編をなす地編糸に他の編糸(パイル糸)を添えて給糸し、地編糸を表面に、パイル糸を裏面に現すように地編糸とともにパイル糸を編み込み、パイル糸のシンカ・ループを拡大してリング状にパイルを出したパイル編からなる編地(以下、平編・パイル編地と称す)で編成しており、後述する第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2、第3の強伸縮部3、第4の強伸縮部4及び第5の強伸縮部5の位置ずれを抑制するアンカーとして機能する。
【0023】
このように、かかと部11及び爪先部12は、生地の内側(着用者の体表と接する面)にタオルのようなループ状の編み目を加えているために、かかと部11及び爪先部12に空気の層を作り出し、クッション性を高めている。また、靴下100aの着用者が靴を履いた場合には、靴からのストレスを緩和する緩衝材の役割を果たすとともに、吸水性に優れ、着用者の汗を吸い取る役割も果たす。
【0024】
また、本実施形態に係る足底部10bは、生地を編成するときに、一時ある編み目を作らないで、次のコースを編むときに一緒に編み目を作る編地であるタック編と添え糸編とを併用した編地(以下、タック編・添え糸編地と称す)からなる編地で編成している。
また、タック編・添え糸編地では、タック編の地編糸の他に他の編糸(例えば、ウーリーナイロン糸)を添えて給糸することで、靴下100aの長さ方向における足底部10bの伸縮を適度に抑えており、足底部10bとベース生地101との境界において他の編糸をカットしている(カットボス)。
【0025】
このように、足底部10bは、ベース生地101と比較して伸縮抵抗が大きいことにより、靴下100aの横ずれを防止すると共に、着用者の足底から下腿方向に伸びる強伸縮部(第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2、第3の強伸縮部3、第4の強伸縮部4、第5の強伸縮部5)のアンカーとなりつつ、着用者の足部のアーチを足底から支持する役割を果たし、さらに地面からの衝撃を吸収及び緩和することができるという作用効果を奏する。
【0026】
また、靴下100aは、着用者の足の内側面側に足底部10bから着用者のアキレス腱に対応する部分にかけて帯状に編成され、ベース生地101と比較して伸縮抵抗が大きい第1の強伸縮部1と、着用者の足の内側面側にかかと部11から足甲部10aの付け根にかけて、着用者の内踝の中心に対応する部分の下方で第1の強伸縮部1と交差する帯状に編成され、ベース生地101と比較して伸縮抵抗が大きい第2の強伸縮部2と、を備える。
なお、本実施形態に係る第1の強伸縮部1及び第2の強伸縮部2は、足底部10bと同様に、タック編・添え糸編地により編成している。
【0027】
なお、第1の強伸縮部1及び第2の強伸縮部2は、
図1(a)に示すように、着用者の内踝204の中心の下方で交差するように、第1の強伸縮部1が着用者の足裏からアキレス腱まで延在し、第2の強伸縮部2が着用者の踵から足首の屈曲部まで延在することが理想的である。しかしながら、第2の強伸縮部2を靴下の丸編地で実現するには、第2の強伸縮部2の延長線上とある、柔軟性を有するかかと部11に強伸縮編地を編成する必要があり、困難である。このため、本実施形態に係る第2の強伸縮部2は、
図4(a)に示すように、かかと部11に隣接する足底部10bから足甲部10aの付け根にかけて帯状に編成されている。また、本実施形態に係る靴下100aは、かかと部11を編成することなく、着用者の踵を露出させる貫通孔(ホールアンカー)を設け、第2の強伸縮部2をホールアンカーに連結する構成であってもよい。
【0028】
なお、本実施形態に係る靴下100aは、第2の強伸縮部2が、
図4(b)に示すように、着用者の足の外側面側で着用者の足の後方まで延在して第5の強伸縮部5を介して口ゴム部30に連結され、第1の強伸縮部1が、
図3(b)に示すように、着用者の足の外側面側で第5の強伸縮部5に連結されることにより、第2の強伸縮部2を螺旋状にし、口ゴム部30をアンカーとして機能させて、第1の強伸縮部1及び第2の強伸縮部2の位置決めを行なっている。
しかしながら、靴下100aが身部20の短い靴下であれば、第2の強伸縮部2を螺旋状にすることなく、第1の強伸縮部1及び第2の強伸縮部2が着用者の足の内側面側で口ゴム部30に連結されてもよい。
【0029】
また、靴下100aは、着用者の足の外側面側にかかと部11から足甲部10aの付け根にかけて、着用者の外踝に対応する部分に重畳する帯状に編成され、ベース生地101と比較して伸縮抵抗が大きい第3の強伸縮部3と、着用者の足の外側面側に足底部10bにおける着用者の第5趾に対応する部分近傍から足甲部10aの付け根にかけて、当該足甲部10aの付け根近傍で第3の強伸縮部3に連結され、着用者の足の後方まで延在する帯状に編成され、ベース生地101と比較して伸縮抵抗が大きい第4の強伸縮部4と、着用者の足の外側面側に着用者の踵から口ゴム部30にかけて、着用者の足の後方に配設され、ベース生地101と比較して伸縮抵抗が大きい第5の強伸縮部5と、を備える。
なお、本実施形態に係る第3の強伸縮部3、第4の強伸縮部4及び第5の強伸縮部5は、足底部10b、第1の強伸縮部1及び第2の強伸縮部2と同様に、タック編・添え糸編地により編成している。
【0030】
なお、第3の強伸縮部3及び第4の強伸縮部4は、
図1(d)に示すように、着用者の外踝205に重畳するように、第3の強伸縮部3が着用者の踵から足首の屈曲部まで延在し、第4の強伸縮部4が着用者の足裏から足首の屈曲部まで延在することが理想的である。しかしながら、第3の強伸縮部3を靴下の丸編地で実現するには、第3の強伸縮部3の延長線上となる、柔軟性を有するかかと部11に強伸縮編地を編成する必要があり、困難である。このため、本実施形態に係る第3の強伸縮部3は、
図4(b)に示すように、かかと部11に隣接する足底部10bから足甲部10aの付け根にかけて帯状に編成されている。また、本実施形態に係る靴下100aは、かかと部11を編成することなく、着用者の踵を露出させる貫通孔(ホールアンカー)を設け、第3の強伸縮部3をホールアンカーに連結する構成であってもよい。
【0031】
なお、本実施形態に係る靴下100aは、第3の強伸縮部3が、
図4(a)に示すように、着用者の足の内側面側で口ゴム部30に連結されることにより、第3の強伸縮部3を螺旋状にし、口ゴム部30をアンカーとして機能させて、第3の強伸縮部3の位置決めを行なっている。
しかしながら、靴下100aが身部20の短い靴下であれば、第3の強伸縮部3を螺旋状にすることなく、第3の強伸縮部3が着用者の足の外側面側で口ゴム部30に連結されてもよい。
【0032】
また、着用者の足裏側におけるかかと部11及び爪先部12並びに足底部10bは、滑り止め部材6が表地面(靴に当接する面)及び裏地面(着用者に当接する面)に配設される。
表地面の滑り止め部材6(以下、第1の滑り止め部材6aと称す)は、
図3(b)に示すように、かかと部11におけるつま先側の略半分の領域と、爪先部12における第2趾、第3趾、第4趾及び第5趾の指袋を除く領域と、足底部10bにおけるかかと部11及び爪先部12との境界近傍の領域と、に配設され、靴下100aと靴の中敷との位置ずれを防止する。
【0033】
また、裏地面の滑り止め部材6(以下、第2の滑り止め部材6bと称す)は、
図5(b)に示すように、かかと部11におけるつま先側の略半分の領域と、爪先部12における指袋を除く領域と、足底部10bにおけるかかと部11及び爪先部12との境界近傍の領域と、に配設され、靴下100aと着用者の足裏との位置ずれを防止する。
また、第2の滑り止め部材6bは、
図5に示すように、第2の強伸縮部2、第3の強伸縮部3及び第5の強伸縮部5における足甲部10aの付け根から上方の領域に配設され、着用者の皮膚に当接されることにより、第2の強伸縮部2及び第3の強伸縮部3のアンカーとして機能すると共に、皮膚の裏側に張り付いている筋肉等に対してマッサージ効果を与え、足関節の柔軟性を回復させることができるという作用効果を奏する。
【0034】
第1の滑り止め部材6a及び第2の滑り止め部材6bは、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリウレタン若しくはシリコーン等の軟性の合成樹脂又は天然樹脂を接着樹脂とし、ドット加工(パウダードット、ペースドット、ダブルドット)、パウダー加工、くもの巣加工又はフィルム加工等を接着樹脂の加工方法とするものであり、形状は特に限定されるものではない。
【0035】
なお、本実施形態に係る第1の滑り止め部材6aは、シリコーンゴム製の複数の突起(例えば、ドット)により構成され、例えば、シルクスクリーン印刷法を用いて、足底部10bの表地面における所定の領域に液体状のシリコーンゴムを塗布し、塗布したシリコーンゴムを乾燥させて足底部10bの表地面に固着して配設される。
【0036】
同様に、本実施形態に係る第2の滑り止め部材6bは、シリコーンゴム製の複数の突起により構成され、例えば、シルクスクリーン印刷法を用いて、足底部10bの裏地面における所定の領域に液体状のシリコーンゴムを塗布し、塗布したシリコーンゴムを乾燥させて足底部10bの裏地面に固着して配設される。
【0037】
なお、滑り止め部材6は、表地面のみに配設されてもよいし、裏地面のみに配設されてもよいが、表地面及び裏地面の両面に配設されることにより、着用者の靴の中で、靴の中敷と着用者の足と靴下100aとが位置ずれすることなく一体となり、安定した歩行を実現することができるために、両面に配設させることが好ましい。
【0038】
なお、本実施形態においては、平編及びタック編に用いられる地編糸として、綿50%とエステル50%とで配合され、太さ30デニール、撚り本数1本及び編み本数2本からなる表糸、太さ30デニールのポリウレタンの芯糸と太さ75デニールのエステルの巻き糸とからなるカバーリング・ヤーンである裏糸を用いているが、この材質に限られるものではなく、表糸として、綿、毛(カシミヤ、ラム、アンゴラなど)、絹若しくは麻などの天然繊維、アクリルなどの化学繊維、又は吸汗、速乾若しくは体温調整機能を持つ素材などを、靴下100aのコスト又は着用者のニーズに合わせて選択することが好ましい。また、裏糸として、ナイロン若しくはFTY、又は抗菌、防臭若しくは消臭素材を、靴下100aのコスト又は着用者のニーズに合わせて選択することが好ましい。
【0039】
また、タック編・添え糸編地及び平編・パイル編地におけるウーリーナイロン糸は、太さ100デニール、撚り本数2本及び編み本数2本からなる。
【0040】
また、タック編・添え糸編地におけるゴム糸は、太さ260デニールのポリエーテル系の芯糸と太さ75デニールのエステルの巻き糸とからなるカバーリング・ヤーンである。
【0041】
なお、本実施形態に係る靴下100aにおいては、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2、第3の強伸縮部3、第4の強伸縮部4及び第5の強伸縮部5の編地を、タック編によって編み目数を変化させ、また添え糸編によって編地を補強することで、伸縮抵抗がベース生地101に対して大きくなるように編成し構成しているが、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエチレン系(高密度、低密度)又はエチレン酢酸ビニル系などの種類の樹脂を含浸させた糸によって、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2、第3の強伸縮部3、第4の強伸縮部4及び第5の強伸縮部5の編地を編成し構成することで、伸縮抵抗を増加させることができ、同様の作用効果を奏することができる。
【0042】
また、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2、第3の強伸縮部3、第4の強伸縮部4及び第5の強伸縮部5の編地に、伸びを防ぐための細幅の布地などでできたテープ(伸び止めテープ)を縫付けることや、セロファン又はビニールなどのテープに接着剤を塗った粘着テープを貼り付けることでも、伸縮抵抗を増加させることができる。
【0043】
また、第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2、第3の強伸縮部3、第4の強伸縮部4及び第5の強伸縮部5の編地に、液体の樹脂を塗り、樹脂が空気に触れ酸化して固着させることや、薄膜状の樹脂を取り付けることや、液体の樹脂を噴霧器などで吹着け、樹脂が空気に触れ酸化して固着させることでも、伸縮抵抗を増加させることができる。
【0044】
第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2、第3の強伸縮部3、第4の強伸縮部4及び第5の強伸縮部5の編地を、接着剤を使用して樹脂加工を施す接着芯地としてもよい。この場合には、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエチレン系(高密度、低密度)又はエチレン酢酸ビニル系などの種類の樹脂からなる接着樹脂を、ドット加工、パウダー加工、くもの巣加工又はフィルム加工などの加工方法によって、編地に塗布し、フラット型プレス機、ローラー型プレス機などによって加熱及び加圧処理を施すことで、編地に樹脂を固着させることができる。
【0045】
なお、本実施形態に係るかかと部11は、平編・パイル編地で編成しているが、着用者の踵との間に位置ずれを生じ、アンカーとしての機能を十分に発揮できない可能性がある。このため、本実施形態に係るかかと部11は、
図6に示すように、足底部10b及び身部20との境界近傍に環状の樹脂製シート状体7を加熱圧着して配設することにより、着用者の踵に対する摩擦力を高め、着用者の踵との間の位置ずれを抑制し、アンカーとしての機能を十分に発揮することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る靴下100aは、強伸縮部(第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2、第3の強伸縮部3、第4の強伸縮部4、第5の強伸縮部5)が、丸編で編み立てられる筒状編地中に編成される製造方法について説明したが、この製造方法に限られるものではなく、例えば、ベースとなる靴下に強伸縮部としてベルト状の素材を縫製してもよいし、複数のパーツからなる生地を互いに縫製して靴下100aとしてもよい。
【0047】
特に、ベースとなる靴下に強伸縮部としてベルト状の素材を縫製する場合は、
図3及び
図4に示す第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2、第3の強伸縮部3及び第4の強伸縮部4を丸編地に編成する代わりに、
図7及び
図8に示す第1の強伸縮部1、第2の強伸縮部2、第3の強伸縮部3、第4の強伸縮部4及び第5の強伸縮部5となるベルトを縫製することが考えられる。