【0013】
本発明の一つの態様によれば、鉛を含有せず、かつ優れた色堅牢性を発揮する青色を呈するガラス組成物が提供される。この青色を呈する無鉛ガラス組成物は、Al
2O
3を0.5〜30重量%、ZnOを3〜25重量%、SiO
2を20〜40重量%、B
2O
3を3〜15重量%、Na
2Oを1〜5重量%、Li
2Oを0.5〜5重量%、BaOを3〜10重量%、Bi
2O
3を10〜25重量%、Co
2O
3を3〜23重量%、TiO
2を0.1〜5重量%の割合で含有する。このガラス組成物は鉛を含まないが、このガラス組成物から作られたガラスは450〜510℃の軟化点を持つ。
【0014】
上記青色を呈する無鉛ガラス組成物は、上記成分に加えて、調色の目的で、K
2Oを0〜3重量%の割合で、CaOを0〜3重量%の割合で、ZrO
2を0〜3重量%の割合で、Cr
2O
3を0〜3重量%の割合で、Fe
2O
3を0〜3重量%の割合で、MnOを0〜3重量%の割合で、La
2O
3を0〜3重量%の割合で、SrOを0〜3重量%の割合で、SnO
2を0〜3重量%の割合で、MgOを0〜3重量%の割合で含有することができる。これらの追加の成分は、青色の色調を調整するものであり、ガラス組成物の軟化点その他の物性に影響を与えない。
【0015】
また、本発明のもう一つの態様によれば、鉛を含有せず、かつ優れた色堅牢性を発揮する白色を呈するガラス組成物が提供される。この白色を呈する無鉛ガラス組成物は、Al
2O
3を0.5〜5重量%、ZnOを3〜10重量%、SiO
2を20〜40重量%、B
2O
3を3〜15重量%、Na
2Oを1〜5重量%、Li
2Oを0.5〜5重量%、BaOを3〜10重量%、Bi
2O
3を10〜25重量%、TiO
2を0.1〜25重量%の割合で含有する。このガラス組成物は鉛を含まないが、このガラス組成物から作られたガラスは450〜510℃の軟化点を持つ。
【0016】
上記白色を呈するガラス組成物は、上記成分に加えて、調色の目的で、K
2Oを0〜3重量%の割合で、CaOを0〜3重量%の割合で、ZrO
2を0〜3重量%の割合で、CeOを0〜25重量%の割合で、La
2O
3を0〜3重量%の割合で、SrOを0〜3重量%の割合で、SnO
2を0〜3重量%の割合で、MgOを0〜3重量%の割合で含有することができる。これらの追加の成分は、白色の色調を調整するものであり、ガラス組成物の軟化点その他の物性に影響を与えない。
【実施例】
【0021】
次に、本発明のガラス組成物、ガラス組成物から調製されたカラーマーキング等の特性を種々の試験で検証する。
【0022】
はじめに、本発明の青色を呈する粉末状ガラス組成物(試料1)、および白色を呈する粉末状ガラス組成物(試料2)について、軟化点試験および鉛検出試験を実施した。また、比較のために、鉛を含む青色ガラス組成物(比較試料1)、および鉛を含む白色ガラス組成物(比較試料2)についても同じ試験を行った。試料1および試料2の組成を以下の表1に、比較試料1および比較試料2の組成を以下の表2に示す。
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
[軟化点試験]
試料1および試料2それぞれを溶融させ、ついでガラス板を得、これをダイヤモンドカッターで切断し、5×50mmの試験切片を作製した。これらの切片を熱膨張係数測定器(ブルカー・エイエックス社製)にセットし、それぞれの軟化点を測定した。結果、試料1および試料2のいずれも、480℃の軟化点を呈した。
【0025】
[鉛検出試験]
試料1、試料2、比較試料1および比較試料2に含まれるPb量を、蛍光X線分析装置(PAN analytical社製Axios蛍光X線分析装置(波長分散型))で分析した。
【0026】
結果、比較試料1および比較試料2からは21重量%の鉛を検出したが、試料1および試料2については装置の検出限界以下であり、実質的にPbは検出されなかった。
【0027】
[カラーマーキング付ガラスアンプルの作製]
次に、本発明のカラーマーキングを付したガラスアンプルを以下の手順で作製し、これらのガラスアンプルについて種々の試験を行った。
【0028】
試料1および試料2の粉末状ガラス組成物をそれぞれオイル(奥野製薬工業社製:オイル1063)中に懸濁させたペーストを、2mLワンポイントカットアンプル(日本硝子産業社製)に円形スポット状(径1.0mm)に塗布し、バーナーで仮乾燥させた(450℃で4秒)。これらのアンプルを700℃のアニール炉内で、60秒焼付け、青色のワンポイントカラーマーキング付ガラスアンプル(試料3)、および白色のワンポイントカラーマーキング付ガラスアンプル(試料4)を作製した。
【0029】
また、比較のために鉛を含むガラス組成物(比較試料1、比較試料2)を用いて作製された青色のワンポイントカラーマーキング付ガラスアンプル(比較試料3)、および白色のワンポイントカラーマーキング付ガラスアンプル(比較試料4)も用意した。
【0030】
[耐性試験]
上記手順によって得られた試料3、試料4、比較試料3および比較試料4について種々の耐性試験を実施した。耐性試験のフローを
図2に示す。
【0031】
すなわち、試料3、試料4、比較試料3および比較試料4をそれぞれ70本ずつ用意し、これらの試料について、最初に超音波洗浄剥離・変色試験、次に乾熱滅菌剥離・変色試験、その後の蒸気滅菌剥離・変色試験を実施し、各試験おいて本発明のカラーマーキングの耐性を評価した。以下、試験ごとに説明する。
【0032】
(超音波洗浄剥離・変色試験)
試料3、試料4、比較試料3および比較試料4それぞれ70本ずつを、超音波洗浄機(島津製作所製SUS−103)に投入し、出力28KHzで30分間洗浄した。洗浄終了後、各試料から無作為に10本ずつ取出し、カラーマーキングの剥離および変色の程度を確認した。さらに、別途無作為に10本ずつ取出した各試料のカラーマーキング部分を金属片で擦過し、再び剥離および変色の程度を確認した。
【0033】
(乾熱滅菌剥離・変色試験)
超音波洗浄が終わった試料3、試料4、比較試料3および比較試料4それぞれ50本ずつをビーカーに入れ、これを350℃に設定した電気炉(アドバンテック製KM−420)中で6時間加熱した。加熱終了後、各試料から無作為に10本ずつ取出し、カラーマーキングの剥離および変色の程度を確認した。さらに、別途無作為に10本ずつ取出した各試料のカラーマーキング部分を金属片で擦過し、再び剥離および変色の程度を確認した。
【0034】
(蒸気滅菌剥離・変色試験)
乾熱滅菌が終わった試料3、試料4、比較試料3および比較試料4それぞれ30本ずつをビーカーに入れ、これを121℃に設定したオートクレーブ(アドバンテック製SV−300)中で6時間蒸気滅菌した。蒸気滅菌終了後、各試料から無作為に20本ずつ取出し、カラーマーキングの剥離および変色の程度を確認した。さらに、各試料の残りのガラスアンプルのカラーマーキング部分を金属片で擦過し、再び剥離および変色の程度を確認した。
【0035】
一連の耐性試験の結果、試験のどの段階においても、本発明のガラス組成物を用いて作製されたガラスカラーマーキングに変色、剥離は認められなかった。なお、上記有鉛ガラスを用いて作製されたカラーマーキングにも変色、剥離は認められなかったが、本発明のガラス組成物は、有鉛ガラスに劣らない耐性を持つことが明らかとなった。
【0036】
[光退色・変色試験]
次に、上記手順で作製された試料3、試料4、比較試料3および比較試料4について、光退色・劣化試験を行った。
【0037】
すなわち、試料3、試料4、比較試料3および比較試料4それぞれ10本ずつを用意し、これらをカラーマーキング部分が光源に正対するようにアルミニウム製トレイに並べた。ここで、光源には15W白色蛍光灯を使用し、試料と光源の距離を200mmにセットし、試料上面での照度を2万ルクス/hとした。累計照度が120万ルクスに到達するまで(60時間(2.5日))、連続で光照射を行った。なお、照度測定はデジタル照度計(ミノルタ製T−1M)を用いた。
【0038】
照射終了後、試料を取出し、目視にて未試験試料との比較を行った。結果、本発明のガラス組成物を用いて作製されたカラーマーキングに退色、変色は認められなかった。なお、上記有鉛ガラスを用いて作製されたカラーマーキングにも退色、変色は認められなかったが、本発明のガラス組成物は、有鉛ガラスに劣らない耐性を持つことが明らかとなった。
【0039】
[ダンボール内蔵置試験]
上記手順によって作製された白色のカラーマーキングを有する試料4を100本用意し、これらを相対湿度60〜85%の環境下、残留H
2Sを不可避的に含む段ボール箱中に6ヶ月蔵置し、カラーマーキングの変色を確認した。
【0040】
結果、蔵置後の全てのカラーマーキングに変色は認められなかった。