特許第5956750号(P5956750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

特許5956750ガス切断装置とそれを備えたガス切断ロボット及びガス切断方法
<>
  • 特許5956750-ガス切断装置とそれを備えたガス切断ロボット及びガス切断方法 図000002
  • 特許5956750-ガス切断装置とそれを備えたガス切断ロボット及びガス切断方法 図000003
  • 特許5956750-ガス切断装置とそれを備えたガス切断ロボット及びガス切断方法 図000004
  • 特許5956750-ガス切断装置とそれを備えたガス切断ロボット及びガス切断方法 図000005
  • 特許5956750-ガス切断装置とそれを備えたガス切断ロボット及びガス切断方法 図000006
  • 特許5956750-ガス切断装置とそれを備えたガス切断ロボット及びガス切断方法 図000007
  • 特許5956750-ガス切断装置とそれを備えたガス切断ロボット及びガス切断方法 図000008
  • 特許5956750-ガス切断装置とそれを備えたガス切断ロボット及びガス切断方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956750
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】ガス切断装置とそれを備えたガス切断ロボット及びガス切断方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 7/00 20060101AFI20160714BHJP
   B23K 7/10 20060101ALI20160714BHJP
   F23D 14/42 20060101ALI20160714BHJP
   F23N 1/00 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   B23K7/00 505E
   B23K7/10 U
   B23K7/10 501A
   B23K7/10 T
   B23K7/10 V
   F23D14/42
   F23N1/00 102D
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-280246(P2011-280246)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-128954(P2013-128954A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 千秋
(72)【発明者】
【氏名】米本 臣吾
(72)【発明者】
【氏名】上月 崇功
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 準二
(72)【発明者】
【氏名】二宮 永伸
(72)【発明者】
【氏名】小池 雅司
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−053548(JP,A)
【文献】 実開平06−083162(JP,U)
【文献】 特開昭59−179260(JP,A)
【文献】 特開平10−132269(JP,A)
【文献】 実開昭59−191055(JP,U)
【文献】 特開平09−225633(JP,A)
【文献】 特開平05−004192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 7/00 − 7/10
F23N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと支援酸素による予熱炎によってワークを予熱し、切断酸素によってワークを切断するガス切断装置であって、
燃料ガス、支援酸素及び切断酸素を噴射してワークを切断する切断トーチと、
前記切断トーチへ供給する燃料ガス、支援酸素及び切断酸素の各流量を、異なる流量に調整するバルブユニットを複数有する流量調整手段と、
切断条件に応じて、前記複数のバルブユニットの内から切断条件に適したバルブユニットの組み合わせを選択し、前記切断トーチへ燃料ガス、支援酸素及び切断酸素を供給するバルブユニットを駆動する制御手段と、を備え、
前記流量調整手段は、燃料ガス、支援酸素及び切断酸素の各流量が着火用流量に調整された少なくとも一つの着火用バルブユニットと、異なる切断条件の流量にそれぞれ調整された複数の流量変更用バルブユニットとを有し、
前記制御手段は、切断条件の切換え時に、前記着火用バルブユニットを必ず選択し、且つ、前記複数の流量変更用バルブユニットのいずれかを選択するように構成されていることを特徴とするガス切断装置。
【請求項2】
前記複数のバルブユニットは、燃料ガス、支援酸素及び切断酸素用の各開閉弁と、前記開閉弁と直列に下流側に配置された各手動弁とを有する請求項1に記載のガス切断装置。
【請求項3】
前記開閉弁は、それぞれ電磁開閉弁である請求項2に記載のガス切断装置。
【請求項4】
前記切断条件は、ワークの切断面に対する切断トーチのトーチ角度又はワークの実切断長さを所定範囲で区切って設定されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス切断装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス切断装置を備え、
前記切断トーチをロボットのハンドに保持し、
前記制御手段は、前記ワークの切断部分に沿って切断トーチを移動させながら、切断トーチのトーチ角度又はワークの実切断長さの変化に応じた切断条件の流量変更用バルブユニットに自動的に切換えて切断するように構成されていることを特徴とするガス切断ロボット。
【請求項6】
燃料ガスと支援酸素による予熱炎によってワークを予熱し、切断酸素によってワークを切断するガス切断方法であって、
切断トーチに供給する燃料ガス、支援酸素及び切断酸素の各流量を調整する複数のバルブユニットを、少なくとも一つの着火用流量に調整された着火用バルブユニットと、異なる切断条件の流量にそれぞれ調整された複数の流量変更用バルブユニットとに設定し、
切断条件の切換え時に、前記着火用バルブユニットによる燃料ガス、支援酸素及び切断酸素の切断トーチへの供給を必ず保ちながら、前記ワークの切断条件に適した組み合わせとなるように前記複数の流量変更用バルブユニットのいずれかを選択するように切換えてガス切断を行うことを特徴とするガス切断方法。
【請求項7】
前記切断トーチをワークの切断部分に沿ってロボットで移動させながら、前記切断トーチのトーチ角度又はワークの実切断長さの変化に応じた切断条件の流量変更用バルブユニットに自動的に切換えて切断するようにした請求項6に記載のガス切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと支援酸素による予熱炎によってワークを予熱し、切断酸素によってワークを切断するガス切断装置とそれを備えたガス切断ロボット及びガス切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板や鋼管等の被切断物(この明細書及び特許請求の範囲の書類中においては、これらを総称して「ワーク」という)の切断、穴開け等、種々の分野でアセチレンガス、プロパンガス等(以下、これらを総称して「燃料ガス」という)を用いたガス切断が利用されている。このガス切断は、図5に示すように、切断トーチ100の先端から噴出させる燃料ガス101と支援酸素102とによる高温の予熱炎103によってワーク105を発火温度まで加熱して溶融させ、その予熱炎103の中心部から切断酸素104を噴射することによって溶融金属を吹き飛ばしてワーク105を切断する。
【0003】
一方、このようなガス切断で切断するワークは、切断形態、厚み等が多種多様である。例えば、図6に示すように、板材110の上面に対して角度β(例えば、60°)で管体111を斜めに貫通させて溶接で固定するような場合、板材110に設ける貫通穴112と管体111との溶接位置において、開先角度をほぼ同じにすることで溶接歪の影響を抑えるようにしたい。
【0004】
そのため、図7(a) 〜(e) に示すように、板材110の貫通穴112の上面113と管体111の外面との開先角度がほぼ同じとなるように、貫通穴112をガス切断する時に、板材110の上面に対する切断トーチ100(図5)の切断角度を変化させる必要がある。この例では、図6に示すA位置からE位置において、図7(a) 〜(e) に示すように、A位置では30°、B位置では40°、C位置では58°、D位置では78°、E位置では90°、と変化する。
【0005】
そうすると、図8に示すように、板材110の上面113に対して切断トーチ100のトーチ角度をθ1〜θ4へと傾けると、板材110の実切断長さLが変化する。この例では、図示する最短が実切断長さL1、最長が実切断長さL4となる。そのため、その実切断長さLの変化に応じて予熱炎103の強さを調整する必要が生じる。しかも、気温差や湿度等の状況変化によっても予熱炎103の強さを調整する必要が生じる。
【0006】
一方、このような予熱炎の調整作業は、燃料ガスの量や支援酸素の量を微妙に変化させることで適した予熱炎にできるため、熟練作業者であれば、経験によって適した状態に調整することができる。しかし、近年、熟練作業者が減少し、最適な状態に予熱炎を調整することが難しくなっている。
【0007】
この種の先行技術として、例えば、切断トーチのそれぞれに、予熱酸素および予熱ガスの流量を調節するコントロールバルブを備えた流量調整装置を設置し、切断トーチ毎に条件の異なる被切断材の切断を同時に行うことができるようにしたものがある。この先行技術では、それぞれの切断トーチに設置された流量調整装置の開量を調整して、予熱、切断、種火の3段階に切り換えられるようにもしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−80764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1では、一つの切断トーチに一つのコントロールバルブが設置された構成であるため、予熱炎の強さを切換・調整する際や切断トーチの切換え時に失火する恐れがある。
【0010】
また、一つの切断トーチに一つのコントロールバルブが設置された構成の場合、例えば、切断途中に予熱炎の強さを切換・調整する時に一時的に予熱炎が大きく変化し、切断面に刻み(ノッチ)が生じる場合がある。この場合、切断後に切断面の修正作業が必要となり、作業効率が悪化する。
【0011】
そこで、本発明は、失火の恐れなく、状況に応じて予熱炎の強さを容易に切換・調整できるガス切断装置とそれを備えたガス切断ロボット、及びガス切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のガス切断装置は、燃料ガスと支援酸素による予熱炎によってワークを予熱し、切断酸素によってワークを切断するガス切断装置であって、燃料ガス、支援酸素及び切断酸素を噴射してワークを切断する切断トーチと、前記切断トーチへ供給する燃料ガス、支援酸素及び切断酸素の各流量を、異なる流量に調整するバルブユニットを複数有する流量調整手段と、切断条件に応じて、前記複数のバルブユニットの内から切断条件に適したバルブユニットの組み合わせを選択し、前記切断トーチへ燃料ガス、支援酸素及び切断酸素を供給するバルブユニットを駆動する制御手段と、を備え、前記流量調整手段は、燃料ガス、支援酸素及び切断酸素の各流量が着火用流量に調整された少なくとも一つの着火用バルブユニットと、異なる切断条件の流量にそれぞれ調整された複数の流量変更用バルブユニットとを有し、前記制御手段は、全ての切断条件において前記着火用バルブユニットを必ず選択するように構成されている。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「切断条件」は、「切断長さ」、「切断トーチ角度」、「被切断材の材質」などによって設定した条件をいう。
【0013】
この構成により、全ての切断条件において、着火用バルブユニットは必ず選択・駆動されるので、切断条件によって流量変更用バルブユニットの組み合わせを変更したとしても、いずれの組み合わせでも常に着火用バルブユニットから着火用流量の燃料ガス、支援酸素及び切断酸素が供給されているので、切断条件に応じて予熱炎の強さを切換・調整する際に、失火することがないように構成することが可能となる。
【0014】
また、前記複数のバルブユニットは、燃料ガス、支援酸素及び切断酸素用の各開閉弁と、前記開閉弁と直列に下流側に配置された各手動弁とを有していてもよい。
【0015】
このように構成すれば、燃料ガス等の流量は各手動弁の開度を予め調整しておくことにより調整が可能となる。しかも、各手動弁の開度を調整することでガス切断施工中においても調整が可能であり、燃料ガス流量等の微調整が可能となる。
【0016】
また、前記開閉弁は、それぞれ電磁開閉弁であってもよい。
【0017】
このように構成すれば、自動機等において、電磁開閉弁を切換えることによって、燃料ガス等の流量を各手動弁で予め調整した流量に切換えることができ、ガス切断の自動化を促進することが可能となる。
【0018】
また、前記切断条件は、ワークの切断面に対する切断トーチのトーチ角度又はワークの実切断長さを所定範囲で区切って設定されていてもよい。
【0019】
このように構成すれば、ガス切断において燃料ガス等の流量調整が必要となる重量な要因であるワークの実切断長さ、又はトーチ角度によって変わるワークの実切断長さに応じて設定された切断条件から、バルブユニットの組み合わせを容易に選択・駆動して燃料ガス等の流量を調整することが可能となる。
【0020】
一方、本発明のガス切断ロボットは、前記いずれかのガス切断装置を備え、前記切断トーチをロボットのハンドに保持し、前記制御手段は、前記ワークの切断部分に沿って切断トーチを移動させながら、切断トーチのトーチ角度又はワークの実切断長さの変化に応じた切断条件の流量変更用バルブユニットに自動的に切換えて切断するように構成されている。
【0021】
この構成により、切断長さが変化するワークの切断部分に沿って切断トーチを移動させ、その切断トーチのトーチ角度又ワークの実切断長さの変化情報に応じて流量変更用バルブユニットを自動的に切換えながらガス切断を行うことができる。
【0022】
一方、本発明のガス切断方法は、燃料ガスと支援酸素による予熱炎によってワークを予熱し、切断酸素によってワークを切断するガス切断方法であって、切断トーチに供給する燃料ガス、支援酸素及び切断酸素の各流量を調整する複数のバルブユニットを、少なくとも一つの着火用流量に調整された着火用バルブユニットと、異なる切断条件の流量にそれぞれ調整された複数の流量変更用バルブユニットとに設定し、前記着火用バルブユニットによる燃料ガス、支援酸素及び切断酸素の切断トーチへの供給を保ちながら、前記ワークの切断条件に適した組み合わせとなるように前記流量変更用バルブユニットを切換えてガス切断を行う。
【0023】
この構成により、着火用流量に設定された少なくとも一つの着火用バルブユニットから燃料ガス等を常に供給しながら、予め異なる切断条件の流量にそれぞれ調整した複数の流量変更用バルブユニットを切換えながらガス切断を行うので、流量変更用バルブユニットを切換えるときには常に着火用バルブユニットから供給される燃料ガス等で予熱炎を保ちながら各切断条件に応じた強さの予熱炎に切換えることが可能となる。つまり、流量変更用バルブユニットの切換え時に失火することなく切換えることができる。
【0024】
また、前記切断トーチをワークの切断部分に沿ってロボットで移動させながら、前記切断トーチのトーチ角度又はワークの実切断長さの変化に応じた切断条件の流量変更用バルブユニットに自動的に切換えて切断するようにしてもよい。
【0025】
このように構成すれば、切断長さが変化するワークの切断部分を、ロボットで流量変更しながら自動的にガス切断を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、切断条件に応じたバルブユニットの組み合わせを選択・駆動するときに、常に着火用のバルブユニットによって所定の強さの予熱炎が保たれるので、切断条件の変更時も常に予熱炎を安定して保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係るガス切断装置を備えたガス切断設備の全体構成図である。
図2図1に示すガス切断装置の構成を示す概念図である。
図3図2に示すガス切断装置によるワークの切断部分を示す斜視図である。
図4】(a) 〜(h) は、図3に示すワークの切断部分における切断角度の変化を示す断面図である。
図5】ガス切断する切断トーチの断面図である。
図6】ガス切断時におけるワークの切断部分を示す斜視図である。
図7】(a) 〜(d) は、図6に示すワークの切断部分における切断角度の変化を示す断面図である。
図8】切断トーチの角度をワークの切断長さの関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、ガス切断装置の主要構成を模式的に示して説明する。
【0029】
図1に示すように、ガス切断装置10を備えたガス切断設備1としては、多関節のガス切断ロボット2による自動ガス切断が可能なように構成されている。ガス切断ロボット2のハンド3の先端に切断トーチ11が設けられ、この切断トーチ11によってワーク(管体)5に穴を開ける状態を示している。このガス切断ロボット2は、制御装置12と配線13で接続され、制御装置12からの信号で制御されている。
【0030】
そして、上記切断トーチ11には、燃料ガス用配管15、支援酸素用配管16、及び切断酸素用配管17が、流量調整手段20を介して接続されている。この実施形態では、上記燃料ガス用配管15を二点鎖線、支援酸素用配管16を一点鎖線、切断酸素用配管17を実線で示している。また、この実施形態では、盤状の流量調整手段20を示している。この流量調整手段20には、後述するように複数のバルブユニット21〜25が設けられている。流量調整手段20は、上記制御装置12と配線14で接続されており、制御装置12からの信号でバルブユニット21〜25が制御されるようになっている。
【0031】
図2に示すように、上記流量調整手段20には、「条件0」と、「切断条件1」から「切断条件4」までの、5つの条件に調整されたバルブユニット21〜25が設けられている。この実施形態では、各バルブユニット21〜25に電磁開閉弁26〜30と手動弁31〜35とが設けられている。電磁開閉弁26〜30は、制御装置12からの信号が配線14を介して入力され、「開放」又は「閉鎖」のいずれかに切換えられる。手動弁31〜35は、電磁開閉弁26〜30の下流側に設けられており、開放した電磁開閉弁26〜30から切断トーチ11に供給される燃料ガス、支援酸素及び切断酸素の各流量を個々に調整できるようになっている。従って、これらの手動弁31〜35で調整された流量の燃料ガス、支援酸素及び切断酸素が切断トーチ11に供給される。
【0032】
そして、この実施形態では、図示する左端に設けられた「条件0」のバルブユニット21が、燃料ガス、支援酸素及び切断酸素の各流量が着火用流量に設定された着火用バルブユニット21となっている。
【0033】
また、その横に設けられたバルブユニット22〜25が、燃料ガス、支援酸素及び切断酸素の各流量が異なる流量に調整された「切断条件1」から「切断条件4」の各流量変更用バルブユニット22〜25となっている。この実施形態では、「切断条件1」から「切断条件4」へと徐々に予熱炎(図8)が強くなるように流量が調整されている。
【0034】
このように構成された流量調整手段20を備えたガス切断装置10によれば、切断作業中は上記「条件0」の着火用バルブユニット21は常に開放して、着火用流量の燃料ガス、支援酸素及び切断酸素が切断トーチ11に供給されるとともに、この着火用バルブユニット21から供給される燃料ガス、支援酸素及び切断酸素に加え、上記「切断条件1」〜「切断条件4」のいずれかにおいて調整された燃料ガス、支援酸素及び切断酸素が切断トーチ11に供給される。例えば、「条件0の流量+切断条件1の流量」、「条件0の流量+切断条件2の流量」、「条件0の流量+切断条件3の流量」、「条件0の流量+切断条件4の流量」のいずれかが切断トーチ11に供給される。
【0035】
従って、このように条件0の着火用流量を保ちながら他の切断条件1〜4の流量を加えて所定の予熱炎とすることで、切断条件1〜4の切換え時にも着火用流量の燃料ガス、支援酸素及び切断酸素によって予熱炎を失火させることなく、必要流量の予熱炎への切換えをスムーズに行うことができる。
【0036】
次に、図3(a),(b) を例に、上記ガス切断装置10による切断例を説明する。図3(a) に示すように、例えば、大径管体50に対して角度α(例えば、60°)で小径管体51を斜めに接続する場合、小径管体51の端面は、図3(b) に示すような曲面が連続するような切断面52とする必要がある。
【0037】
このような例の場合、図4(a) 〜(b) に示すように、大径管体50と溶接する小径管体51の開先角度を同様の角度とするには、ガス切断する切断角度を変化させるように切断トーチ11のトーチ角度θ(図8)を傾けて切断する必要がある。この例では、上記図3(b) に示すA〜Hの8個所における切断角度を示している。例えば、A位置では105°、B位置では101°、C位置では90°、D位置では101°、E位置では105°、F位置では53°、G位置では30°、H位置では53°、と変化させる。そのため、この例における切断長さは、90°が最も短く、30°が最も長くなり、その間においても変化する。
【0038】
そして、このような例の小径管体51を切断する場合、上記各位置における切断長さにより、例えば、A位置からE位置までは大きく角度が変化しないため、「条件0+切断条件1」の組み合わせで切断する。そして、F位置では「条件0+切断条件3」の組み合わせで切断し、G位置では「条件0+切断条件4」の組み合わせで切断する。そして、H位置では「条件0+切断条件3」の組み合わせに戻して切断する。
【0039】
このように、ワーク5の切断面に対する切断トーチ11のトーチ角度(例えば、図8に示すθ1〜θ4)を傾けることによって変化する切断角度により、実切断長さLが変化するため、切断トーチ11のトーチ角度θ、又は実切断長さLの変化を所定範囲で区切り、その範囲を「条件0」と「切断条件1〜4」の組み合わせで切断するようにしている。この実施形態では、切断条件が4つであるため、ワーク5の上面に対して直角の角度から例えば70°の範囲までを「切断条件1」、70°〜55°までを「切断条件2」、55°〜45°までを「切断条件3」、45°以下を「切断条件4」として、その角度範囲毎に切断条件を変化させる場合を説明している。
【0040】
以上のように、上記ガス切断装置10によれば、着火用流量に設定した着火用バルブユニット21から燃料ガス、支援酸素及び切断酸素を常に供給しながら、異なる切断条件の流量にそれぞれ調整された複数の流量変更用バルブユニット22〜25からの燃料ガス、支援酸素及び切断酸素を加えるようにしているため、予熱炎の切換え時は常に着火用バルブユニット21から供給される燃料ガス、支援酸素及び切断酸素によって予熱炎が保たれるので、失火することなく予熱炎(図8に示す103)を切断に適した燃料ガス、支援酸素及び切断酸素とすることが可能となる。
【0041】
また、この流量変更用バルブユニット22〜25の切換えを電磁開閉弁26〜30で行えるようにすることで、ガス切断する被切断材の切断情報(切断角度、実切断長さ等)を予め制御装置12に記憶させておくことで、自動的に予熱炎(図8に示す103)を変化させてガス切断することもできる。
【0042】
従って、熟練作業者が各切断条件1〜4における燃料ガス、支援酸素及び切断酸素の流量を設定しておけば、熟練ではない作業者や自動機によって熟練作業者と同等のガス切断作業を行うことが可能となる。
【0043】
なお、上記実施形態では、切断条件を4条件とした例を示したが、ワーク5の切断条件は作業内容等に応じて決定すればよく、上記実施形態に限定されるものではない。
【0044】
また、上記実施形態では、条件0の着火用流量に加えて切断条件1〜4のいずれかの流量を加える例を説明したが、条件0の流量を常に切断トーチ11へ供給していれば、切断条件1〜4の複数の流量を加えるような組み合わせでもよく、上記実施形態に限定されるものではない。
【0045】
さらに、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係るガス切断装置は、切断部分の実切断長さが変化するような場合に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 ガス切断設備
2 ガス切断ロボット
3 ハンド
5 ワーク(管体)
10 ガス切断装置
11 切断トーチ
12 制御装置
13 配線
14 配線
15 燃料ガス用配管
16 支援酸素用配管
17 切断酸素用配管
20 流量調整手段
21 着火用バルブユニット(条件0)
22 流量変更用バルブユニット(切断条件1)
23 流量変更用バルブユニット(切断条件2)
24 流量変更用バルブユニット(切断条件3)
25 流量変更用バルブユニット(切断条件4)
26 電磁開閉弁(条件0)
27 電磁開閉弁(切断条件1)
28 電磁開閉弁(切断条件2)
29 電磁開閉弁(切断条件3)
30 電磁開閉弁(切断条件4)
31 手動弁(条件0)
32 手動弁(切断条件1)
33 手動弁(切断条件2)
34 手動弁(切断条件3)
35 手動弁(切断条件4)
50 大径管体
51 小径管体
52 切断面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8