(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、六角ナット以外のナットを用いる場合、現状としてこのナットを回転させるための汎用的な工具は存在しない。そこで、この種のナットは手作業で回すことにより支持部材に着脱させていた。しかし、一般的に、アンカーのネジ部は長く、また施工するナットの数は多いため、ナットを効率よく着脱できないという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、種々のナットをネジ部に効率よく着脱することが可能な回転工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る回転工具は、ネジ部に螺合されているナットをネジ部に対して回転させる回転工具であって、ネジ部を
挿通させる孔部を有し、ネジ部周りに回転する基部と、基部に設けられ、
孔部から回転径方向に離れた位置で回転軸方向に突出しており、
孔部にネジ部を
挿通させた状態でナットの側面に接触し、ナットの回転軸を中心とした回転力が付与されたときにナットの側面を回転周方向に押圧する突起部と、外部の動力源から供給される回転力を基部に伝達する動力伝達部と、を備え
、孔部の内壁には、周方向に沿って登り傾斜と下り傾斜とを有しており六角ナットを係合可能な山形部が形成されている。
【0008】
この発明によれば、インパクトドライバ等の動力源から動力伝達部が基部を介して突起部に回転力を伝達し、このとき突起部がナットの側面を押圧することにより、ナットがネジ部に対して回転する。よって、外部の動力源を用いてナットを容易に回転させることが可能となる。また、対象のナットは六角ナットに限られず、例えば楕円や六角形等、側面を有するものであれば種々のナットを回転させることが可能となる。従って、種々のナットをネジ部に効率よく着脱することができる。
また、この発明に係る回転工具は、ネジ部が貫通する孔部を有するため、ネジ部を安定して係合させることが可能となり、ナットを安定した状態で回転させることが可能となる。従って、ナットの着脱作業を容易に行うことが可能となり、作業性をより向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係る回転工具において、突起部は、回転軸に関して対称に、少なくとも2個設けられることが好ましい。この発明によれば、2個の突起部をナットに引っ掛けた状態で回転力を伝達するため、回転力を安定した状態でナットに伝達することが可能となる。よって、ナットのネジ部への着脱作業を効率よく行うことができ、作業性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る回転工具において、動力伝達部は、動力源を着脱可能なコネクタ部であることが好ましい。この発明によれば、動力伝達部及び突起部を介して外部の動力源の回転力を確実にナットに伝達させることができる。
【0013】
また、本発明に係る回転工具において、基部から回転軸の軸線方向に延びて形成され、
孔部に
挿通させたネジ部を挿入させる中空部を有するソケット部を備え、コネクタ部は、ソケット部に設けられるようにしてもよい。この発明によれば、ソケット部をネジ部に被せた状態で回転工具を利用できる。また、コネクタ部がソケット部に設けられるため、外部の動力源をコネクタ部に接続させた状態で、回転工具全体をナット及びネジ部から着脱することが可能となる。すなわち、回転工具をインパクトドライバ等の動力源と一体として用いることが可能となる。よって、ナットの回転を効率よく行うことが可能となり、作業性をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、種々のナットをネジ部に効率よく着脱することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、同一要素又は同一相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る回転工具を利用する対象のアンカー100を用いた施工作業の一例を説明する図であり、壁パネルK(
図2の(b)部参照)の下部の取り付け構造を示す。具体的には、壁パネルKを支持する支持部材110をスラブコンクリート床等の躯体120に固定する構造を示す。壁パネルKは、例えばALCパネルである。支持部材110は、
図1に示すように、長手方向に延びて形成され水平面と鉛直面とを有する断面L形のレール部材である。支持部材110には、長手方向にピッチPごとに孔部111が設けられる。この孔部111は、アンカー100のネジ部102を挿入するためのものである。支持部材110と躯体120とは、一端が躯体120に埋設され他端にネジ部102が形成されるアンカー100によって連結される。なお、支持部材110と躯体120との間の空間S1には、モルタル及びシーリングが詰められる。これにより、防水性及び断熱性を確保する。また、ピッチPの値としては、例えば50mmとすることができる。
【0017】
ネジ部102には、複数のナットが螺合する。具体的には、
図2及び
図3に示すように、躯体120に固定するための六角ナットであるナット104、支持部材110の下部を支持する六角ナットであるナット103、支持部材110の上部に配設されるナット101、の3つのナットがネジ部102に螺合する。支持部材110とアンカー100とは、ネジ部102を孔部111に貫通させた状態で、支持部材110の上下をナット101及びナット103に挟持することにより、固定させる。なお、ナット104と躯体120との間にはワッシャ105が、ナット103と支持部材110との間にはワッシャ106が、それぞれ設けられる。
【0018】
以下では、壁パネルKの取り付け時における施工作業について簡潔に説明する。まず、躯体120にアンカー100の埋設部107(
図3参照)を埋設する。このとき、躯体120からはネジ部102が上部に突出した状態となる。このネジ部102に対し、ワッシャ105、ナット104、ナット103及びワッシャ106を挿入又は螺合させる。ここで、ワッシャ105及びナット104をネジ部102の下端に位置させると共に、ナット103を適宜回転軸Aに対して回転させ、ネジ部102に対するナット103の位置を決めることで、支持部材110の下部の位置を調整する。そして、孔部111から上部に突出したネジ部102にナット101を螺合させる。これにより、ナット101は、支持部材110を挟んでナット103と反対側の位置にくる。次に、
図2の(b)部に示すように、壁パネルKを支持部材110の水平面上にナット101を介して載置させる。そして、壁パネルKの側面をイナズマプレートやボルトセット等を用いて固定することにより、壁パネルKと支持部材110とが固定される。その後、空間S1に適宜モルタル及びシーリングを詰めて、壁パネルKの施工作業は完了する。
【0019】
この壁パネルKの施工において、支持部材110の上にナット101を配設することにより、壁パネルKと支持部材110との間に空間S2が形成される。すなわち、壁パネルKを支持部材110上に載置する際、ナット101がスペーサとして機能する。このように、スペーサとしてナット101を壁パネルKと支持部材110との間に介在させることにより、壁パネルKを支持部材110上で安定させることができ壁パネルKのひび割れ等を防止できる。また、ナット101は、壁パネルKの自重を支える機能も有するため、ナット101と壁パネルK及び支持部材110との接触面の面積は広いことが好ましい。このため、ナット101としては、六角ナットに限られず、例えば
図3に示すような一辺の長さがLの正方形状のナット101が用いられる。なお、ナット101の中央部にはネジ部102を螺合させるための孔部101aが設けられる。
【0020】
ところで、ナット101のような六角ナット以外のナットを用いる場合、ナットを回転させる汎用的な工具は存在しない。よって、ナットをネジ部に対して回転させる作業は手作業で行っていた。しかし、一般的に、ネジ部は長く、また施工するナットの数が多い上、従来の六角ナットとは異なり回転をスムーズに行うことができない場合があるため、ナットの回転時に手を痛めたりする等、施工作業に労力を要するという問題があった。
【0021】
そこで、本実施形態では、ナット101をネジ部102に効率よく着脱可能な回転工具について説明する。以下では、第1〜第3実施形態に係る回転工具について説明する。なお、説明の便宜のため、
図3に示すように、埋設部107に対してネジ部102が設けられる方向を上方向、その反対方向を下方向として説明する。
【0022】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る回転工具1について
図4〜
図7を用いて説明する。回転工具1は、例えば支持部材110へのアンカー100の打設時に用いる工具である。
図4は回転工具1の斜視図、
図5は回転工具1の底面図、
図6は回転工具1を用いてナット101を回転させる状態の底面図、
図7は回転工具1を用いてナット101を回転させる状態の斜視図、をそれぞれ示す。
【0023】
回転工具1は、
図4に示すように、略直方体状に形成される平板部材2と、平板部材2に螺合される2個のネジ3と、平板部材2の上面であって平面視略中央部に形成される動力伝達部4と、を備えて構成されている。
【0024】
平板部材2は、ネジ部102を挿通させる孔部2aを有し、ネジ部102周りに回転する基部として機能する。平板部材2は、
図5に示すように、略中央部に孔部2aを有する。孔部2aの形状は、例えば上下に貫通する円形である。孔部2aの径は、ネジ部102の径よりも大きくなっている。具体的には、孔部2aの径は、ネジ部102の径より若干大きい程度となっており、孔部2aの内径とネジ部102の外径との差は例えば1mm程度である。
【0025】
また、平板部材2は、ネジ3を螺合させるための2個の孔部2cを有する。それぞれの孔部2cは、上下に貫通して形成される。2個の孔部2cは、回転軸Aに関して対称であって、平板部材2の同一対角線上に設けられる。
図5及び
図6に示すように、2個の孔部2c間の距離はL1となっており、ナット101の一辺の長さLと孔部2c間の距離L1との関係はL<L1≦√2Lとなっている。
【0026】
ネジ3は、
図4に示すように、上下に延びて形成される螺合部3aと、ワッシャ3bとを備えて構成されている。ネジ3の螺合部3aは、平板部材2から下方に突出して突起部として機能する。また、ネジ3は、その螺合部3aを孔部2cの上部から挿入して回転させることにより平板部材2に固定される。また、ワッシャ3bは、ネジ3の平板部材2への固定時に、平板部材2の上面に接触させるために設けられる。
【0027】
動力伝達部4は、例えば上下に貫通する孔部4aを備えた六角柱状に形成される。動力伝達部4としては、例えば六角ナットを平板部材2の上面に溶接させたものを用いることができる。動力伝達部4は、例えばインパクトドライバ等の動力源を着脱可能となっている。すなわち、動力伝達部4は、コネクタ部として機能する。また、動力伝達部4は、装着した動力源から回転力を受け、これにより回転工具1は回転軸A周りに回転する。具体的には、例えばインパクトドライバの六角柱凹状に形成される市販のインターフェースを動力伝達部4に嵌合させてインパクトドライバを作動させることにより、回転工具1が回転軸Aに対して回転する。なお、動力伝達部4の形状は、六角柱状でなくてもよく、外部の動力源から回転力を受けネジ3にその回転力を伝達できる形状であれば、適宜異なる形状としてもよい。また、例えば動力伝達部4及び平板部材2に着脱機構を設けて、動力伝達部4を平板部材2に対して着脱自在としてもよい。
【0028】
孔部4aは、孔部2aの上部に、孔部2aに連通して形成される。孔部4aの径は、ネジ部102の径より若干大きい程度となっており、孔部4aの内径とネジ部102の外径との差は例えば1mm程度である。よって、孔部4aには、ネジ部102を螺合させずに挿入できるようになっている。また、動力伝達部4として例えば六角ナットを用いた場合、
図4に示すように孔部4aの内周部にはネジ溝が形成される。しかし、孔部4aの内周部にネジ溝を形成しなくてもよく、孔部4aの形状はネジ部102を挿入可能であればいかなる形状であってもよい。
【0029】
以上のように構成される回転工具1を用いて、ナット101をネジ部102に対して回転させる手法について説明する。まず、ナット101をネジ部102の上端に螺合させる。そして、
図7に示すように、ネジ部102を平板部材2の孔部2a及び動力伝達部4の孔部4aに挿入した状態で回転工具1をナット101の上に設置する。すると、ナット101の一辺の長さLと孔部2c間の距離L1との関係がL<L1≦√2Lとなっているため、
図6及び
図7に示すように、2個の螺合部3aは、ナット101を挟み込むように、ナット101の側面101sに接触する。この状態で、動力伝達部4に上部から動力源を装着してその動力源を作動させると、回転力Fが動力伝達部4に供給され、動力伝達部4が回転力Fを平板部材2に伝達し、螺合部3aがナット101の側面101sを押圧することにより、回転工具1と共にナット101が回転軸A周りに回転する。このとき、平板部材の孔部2a及び動力伝達部4の孔部4aの径はネジ部102の径より若干大きいため、孔部2a及び孔部4aはネジ部102上を滑るようになっている。こうして、外部の動力源の回転力Fを用いてナット101をネジ部102に対して回転させることができる。
【0030】
以上のように、第1実施形態によれば、ネジ部102に螺合されているナット101をネジ部102に対して回転させる回転工具1であって、ネジ部102を係合する孔部2aを有し、ネジ部102周りに回転する平板部材2と、平板部材2に設けられ、孔部2aから回転径方向に離れた位置で回転軸方向に突出しており、孔部2aにネジ部102を係合した状態でナット101の側面101sに接触し、ナット101の回転軸Aを中心とした回転力Fが付与されたときにナット101の側面101sを回転周方向に押圧する螺合部3aと、外部の動力源から供給される回転力Fを平板部材2に伝達する動力伝達部4とを備える。よって、ネジ部102を孔部2aに挿入させた(係合させた)状態で動力伝達部4に回転力Fを付与すると、突起部として機能する螺合部3aがナット101の側面101sを押圧するため、当該回転力Fを利用してナット101をネジ部102に対して回転させることができる。よって、手を痛めることがなく且つナット101の着脱作業を効率よく行うことができる。また、対象のナットは六角ナットに限られず、例えば正方形状のナット101又は楕円や六角形等、側面を有するものであればよいため、種々のナットを回転させることができるという効果も得られる。なお、ネジ部102を孔部2aに係合させた状態で回転力Fと反対方向の回転力を付与すると、ナット101をネジ部102から外すことができる。
【0031】
また、第1実施形態に係る回転工具1によれば、突起部として機能する螺合部3aは、回転軸Aに関して対称に2個設けられる。よって、2個の螺合部3aをナット101に引っ掛けた状態で回転力を伝達することが可能となるため、回転力を安定した状態で付与することができる。従って、種々のナットをネジ部102へ着脱させることが容易となり、作業性を向上させ施工時の労力を軽減させることができる。
【0032】
また、第1実施形態に係る回転工具1によれば、ネジ部102を挿通させる孔部2aが係合部として機能する。よって、ネジ部102を安定して係合させることが可能となり、更にナット101を安定した状態で回転させることが可能となる。従って、ナット101の着脱作業をより容易に行うことが可能となり、作業性をより向上させることができる。
【0033】
また、第1実施形態に係る回転工具1によれば、動力伝達部4は、外部の動力源を着脱可能なコネクタ部として機能する。よって、動力伝達部4を介してインパクトドライバ等の回転力を確実にナット101に伝達させることが可能となる。従って、ナット101の着脱作業を容易に行い、作業性をより向上させることができる。
【0034】
また、第1実施形態に係る回転工具1によれば動力伝達部4は、基部に固定された六角ナットである。よって、六角柱状の凹部等、既存の六角ナットを回すためのインターフェースをコネクタ部に嵌め込むだけで、インパクトドライバ等を容易に動力伝達部4に接続させることができる。
【0035】
また、第1実施形態に係る回転工具1によれば、ネジ3は、平板部材2に対して着脱自在となっている。よって、例えばネジ3が破損したような場合に、新たなネジ3に交換することができる。
【0036】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態について
図8を用いて説明する。
図8は、第2実施形態に係る回転工具21の斜視図である。第2実施形態において、回転工具21は、略直方体状に形成され、上下に開口する孔部22aを有する平板部材22と、平板部材22から下方に突出して形成される4個の突起部23と、平板部材22の上面から上方に延びて形成される略円筒状のソケット部25と、ソケット部25の上端部に設けられる動力伝達部26とを備えて構成されている。
【0037】
平板部材22は、第1実施形態の平板部材2と同様、ネジ部102を係合する孔部22aを有し、ネジ部102周りに回転する基部として機能する。孔部22aの内壁には、周方向に沿って登り傾斜と下り傾斜とを有する山形部が例えば12個形成されている。よって、孔部22aの内壁にはナット103やナット104等の六角ナットを係合できるようになっており、第2実施形態の回転工具21は、ナット103及びナット104もネジ部102に対して回転できるようになっている。
【0038】
突起部23は、回転軸Aに関して対称に4個設けられる。突起部23は、平板部材22の下面から下方に突出して形成される。突起部23は、例えば円柱状に形成される。また、平板部材22の同一対角線上に位置する2個の突起部23の間の距離は、第1実施形態の孔部2a間の距離と同様、L1となっている。そして、ナット101の一辺の長さLと平板部材22の同一対角線上に位置する2個の突起部23の間の距離L1との関係は、L<L1≦√2Lとなっている。
【0039】
ソケット部25は、回転軸Aの軸線方向に延びる円筒状に形成される。ソケット部25は、その下端部が例えば平板部材22の上面に溶接されている。ソケット部25の中空部は孔部22aに連通しており、ソケット部25の中空部の径は、ネジ部102の径よりも大きくなっている。よって、ソケット部25の中空部及び孔部22aには、ネジ部102を挿入できるようになっている。
【0040】
動力伝達部26は、第1実施形態の動力伝達部4と同様、インパクトドライバ等の動力源を着脱可能な形状となっている。すなわち、動力伝達部26は、コネクタ部として機能する。動力伝達部26は、装着した動力源から回転力を受け、これにより回転工具21を回転軸A周りに回転する。具体的には、例えばインパクトドライバの円柱凹状に形成されるインターフェースを動力伝達部26に嵌合させてインパクトドライバを作動させることにより、回転工具21が回転軸A周りに回転する。なお、動力伝達部26は、ソケット部25と一体成形されていてもよいし、又はソケット部25に対して着脱可能であってもよい。
【0041】
以上のように構成される回転工具21を用いて、ナット101をネジ部102に対して回転させる手法について簡潔に説明する。まず、ナット101をネジ部102の上端に螺合させる。そして、ネジ部102に、平板部材22及びソケット部25を被せる。すると、ナット101の一辺の長さLと同一対角線上に位置する2個の突起部23間の距離L1との関係がL<L1≦√2となっているため、各突起部23は、ナット101を挟み込むように、ナット101の側面101sに接触する。この状態で、動力伝達部26に動力源を取り付けて動力源を作動させると、回転軸A周りに回転力Fが動力伝達部26を介して平板部材22に伝達されて、4個の突起部23がナット101の側面101sを押圧し、回転工具21と共にナット101が回転軸A周りに回転する。こうして、ナット101をネジ部102に対して回転させることができる。
【0042】
また、回転工具21を用いて、ナット103をネジ部102に対して回転させる手法について説明する。まず、ナット103をネジ部102の上端に螺合させる。そして、ネジ部102にソケット部25を被せると共に、ナット103に孔部22aを係合させる。この状態で、動力伝達部26に外部の動力源を取り付けてその動力源を作動させると、回転軸A周りに回転力が動力伝達部26を介して平板部材22に伝達されて、ナット103が平板部材22と共に回転する。こうして、ナット103をネジ部102に対して回転させることができる。なお、同様の手法を用いて、ナット104をネジ部102に対して回転させることもできる。
【0043】
以上、第2実施形態の回転工具21は、第1実施形態の回転工具1と同様の作用効果を奏する。また、第2実施形態では、平板部材22から回転軸Aの軸線方向に延びて形成され、孔部22aに係合したネジ部102を挿入させる中空部を有するソケット部25を備え、動力伝達部26は、ソケット部25に設けられる。よって、ソケット部25をネジ部102に被せた状態で利用でき、また、動力伝達部26がソケット部25に設けられるため、動力源を動力伝達部26に取り付けた状態で回転工具21全体をナット101及びネジ部102から着脱することが可能となる。すなわち、回転工具21をインパクトドライバ等と一体として用いることが可能となる。従って、回転工具21を用いたナット101の回転をより効率よく行うことができる。
【0044】
また、第2実施形態の回転工具21では、六角ナットと係合する孔部22aを備えた平板部材22と動力伝達部26とを有する。よって、この孔部22aを六角ナットに係合させて動力伝達部26から平板部材22に回転力を伝達することにより、六角ナットをネジ部102に対して回転させることもできる。従って、支持部材110の取り付け等の施工作業を、回転工具21を用いてより一層効率よく行うことが可能となる。なお、孔部22aの形状は、上記のような山形部に限られず、回転させるナットの形状に合わせて適宜変更させてもよい。このように孔部22aの形状を変更させることにより、種々のナットを、孔部22aに係合させネジ部102に対して回転させることができる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図9を参照しながら説明する。第3実施形態が第1実施形態と異なる点は、平板部材2の代わりに長孔32cを有する平板部材32を用いた点のみであり、その他の構成は第1実施形態の回転工具1と同じである。
【0046】
第3実施形態の回転工具31は、ネジ部102周りに回転する基部として機能する平板部材32と、螺合部3aを有するネジ3と、孔部4aを有する動力伝達部4とを備えて構成されている。平板部材32は、孔部2a同様の孔部を略中央部に有する。また、平板部材32は、2個のネジ3を螺合させるための長孔32cを有する。長孔32cは、回転軸Aに関して対称に2個設けられ、平板部材32の同一対角線上に設けられる。長孔32cは、回転軸Aに対して直交する方向(回転径方向)に延びるように形成されている。また、長孔32cの内周部が螺合部3aと螺合し、長孔32cの任意の位置にネジ3を固定できるようになっている。このようにして、突起部として機能する螺合部3aの回転軸Aに対する距離を変更することができる。
【0047】
以上のように構成される回転工具31を用いてナット101をネジ部102に対して回転させる手法は、螺合部3aの回転軸Aに対する距離を変更可能である点のみが第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同様である。
【0048】
以上、第3実施形態の回転工具31は、第1実施形態の回転工具1と同様の作用効果を奏する。また、第3実施形態では、螺合部3aの回転軸Aに対する距離を適宜変更できる。従って、ナット101だけでなく、ナット101とは大きさや形状が異なるナットに対しても、その側面を螺合部3aで押圧可能となるため、大きさや形状が異なる様々なナットを回転させることができる。すなわち、例えばナット101より平面視の面積が大きいナットに対しては螺合部3aを回転軸Aから離れた位置で固定すればよいし、ナット101より平面視の面積が小さいナットに対しては螺合部3aを回転軸Aに近づけて固定すればよい。
【0049】
なお、第3実施形態では、長孔32cにより螺合部3aの回転軸Aに対する距離を変更させる例について説明したが、例えばスライド機構等、回転軸Aに交差する方向にネジ3の固定位置を移動可能な機構を用いれば、長孔32cを設けなくてもよい。
【0050】
以上、本実施形態は本発明に係る回転工具の実施形態を説明したものであり、本発明に係る回転工具は本実施形態に記載したものに限定されない。本発明に係る回転工具は、各請求項に記載した要旨を変更しないように本実施形態に係る回転工具を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0051】
例えば、本実施形態では、平面視正方形状の平板部材2,22,32を用いた例について説明した。しかし、平板部材2,22,32の代わりに、例えば
図10の(a)部に示すような任意の形状の平板部材42を用いることができ、基部として機能する平板部材の形状は特に限定されない。なお、この平板部材42はネジ部102を挿入するための孔部42aを有し、平板部材42を備えた回転工具41は、平板部材42から下方に突出する突起部43を備える。そして、孔部42aの下方からネジ部102を挿入し、突起部43を例えばナット101の側面101sに接触させ、突起部43にインパクトドライバ等から回転力を伝達することにより、ナット101をネジ部102に対して回転させることが可能となる。
【0052】
また、本実施形態では、ネジ部102を係合する係合部として、円形に開口する孔部2a,22aが設けられる例について説明した。しかし、係合部の形状は円形でなくても、ネジ部102を係合可能であればいかなる形状であってもよい。また、孔部2a,22aの代わりに、例えば
図10の(b)部に示すような切り欠き部52aを用いてもよい。なお、この切り欠き部52aを備えた回転工具51は、略長方形状の平板部材52と、平板部材52から下方に突出する突起部53とを有する。そして、切り欠き部52aにネジ部102を係合し、突起部53を例えばナット101の側面101sに当接させ、突起部53にインパクトドライバ等から回転力を伝達することにより、突起部53がナット101の側面101sを押圧し、ナット101をネジ部102に対して回転させることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態では、ナット101の側面101sに当接する螺合部3a又は突起部23が2個又は4個設けられる例について説明した。しかし、この突起部の数は、例えば
図10に示すように1個とする等、いくつであってもよい。なお、突起部の数を多くすると、回転工具をナットに装着したときに突起部とナットの側面との接触点が多くなるため、回転軸がぶれにくくなり、ナットを安定して回転させることができる。
【0054】
また、本実施形態に係る回転工具を用いて行う施工作業として、壁パネルKを支持する支持部材110をスラブコンクリート床等の躯体120に固定する作業について説明した。しかし、本実施形態に係る回転工具の適用対象は上記の施工作業に限られず、例えばアルミサッシ等の窓枠を支持する支持部材を躯体に固定させる作業にも適用可能である。更に、本実施形態に係る回転工具は、ナットをネジ部に対して回転させる工程を有する作業であれば、種々の作業に適用させることができる。