(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸着手段により搬送ベルトに吸着させた記録紙を、該記録紙の前記搬送ベルトによる搬送方向と直交する主走査方向に間隔をおいた複数の紙押さえローラにより前記搬送ベルトに押さえつけて、画像形成手段に搬送する画像形成装置において、
前記記録紙が薄手の記録紙や規定の度合い以上のカールが存在する記録紙に該当するときに、該薄手の記録紙や規定の度合い以上のカールが存在する記録紙の前記搬送ベルトに対する吸着強度が、前記主走査方向における両端部が中央部に比べて高く、該中央部の前記搬送ベルトから浮いた部分を前記紙押さえローラが押さえつけた前記記録紙が該紙押さえローラの隣の紙押さえローラを越えて前記両端部側に移動する分布となるように制御する制御手段を備えている、
ことを特徴とする画像形成装置。
前記吸着手段は、前記搬送ベルトの前記記録紙を吸着する吸着面に負圧を発生させる負圧発生手段を、少なくとも前記主走査方向に前記搬送ベルトを複数に分割した各分割領域に対応して有しており、前記制御手段は、前記各負圧発生手段がそれぞれ発生する負圧の強さの調整により前記吸着強度を制御することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、吸湿した記録紙や薄手のコシが弱い記録紙の場合は、発生したカールが大きいため、上述した紙押さえローラでは充分にカールを伸ばすことができず、記録紙にしわが入ってしまうことがある。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、記録紙のカールをより効果的に伸ばして搬送ベルトにより吸着搬送することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した本発明の画像形成装置は、
吸着手段により搬送ベルトに吸着させた記録紙を、該記録紙の前記搬送ベルトによる搬送方向と直交する主走査方向に間隔をおいた複数の紙押さえローラにより前記搬送ベルトに押さえつけて、画像形成手段に搬送する画像形成装置において、
前記記録紙が
薄手の記録紙や規定の度合い以上のカールが存在する記録紙に該当するときに、該
薄手の記録紙や規定の度合い以上のカールが存在する記録紙の前記搬送ベルトに対する吸着強度が、前記主走査方向における両端部が中央部に比べて
高く、該中央部の前記搬送ベルトから浮いた部分を前記紙押さえローラが押さえつけた前記記録紙が該紙押さえローラの隣の紙押さえローラを越えて前記両端部側に移動する分布となるように制御する制御手段を備えている、
ことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載した本発明の画像形成装置は、請求項1に記載した本発明の画像形成装置において、前記吸着手段が、前記搬送ベルトの前記記録紙を吸着する吸着面に負圧を発生させる負圧発生手段を、少なくとも前記主走査方向に前記搬送ベルトを複数に分割した各分割領域に対応して有しており、前記制御手段が、前記各負圧発生手段がそれぞれ発生する負圧の強さの調整により前記吸着強度を制御することを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項3に記載した本発明の画像形成装置は、請求項1又は2に記載した本発明の画像形成装置において、前記記録紙に画像を形成させる印刷ジョブで指定された前記記録紙の種類が前記
薄手の記録紙であるか否かを判別する判別手段をさらに備えており、該判別手段
が該当すると判定した
前記薄手の記録紙が、画像を形成させる記録紙として指定された前記印刷ジョブの実行時に、前記制御手段が前記分布となるように前記吸着強度を制御することを特徴とする。
【0011】
なお、第1の変形例として、請求項1、2又は3に記載した本発明の画像形成装置において、前記搬送方向における前記画像形成部の上流側において前記記録紙の種類を検出する種類検出センサをさらに備えており、該種類検出センサが前記
薄手の記録紙であることを検出した前記記録紙の前記搬送ベルトによる搬送時に、前記制御手段が前記分布となるように前記吸着強度を制御するようにしてもよい。
【0012】
さらに、第2の変形例として、請求項1、2又は3に記載した本発明の画像形成装置や、上述した第1の変形例の画像形成装置において、前記記録紙の種類を設定する種類設定手段をさらに備えており、該種類設定手段による前記
薄手の記録紙の設定時に、前記制御手段が前記分布となるように前記吸着強度を制御するようにしてもよい。
【0013】
また、上記目的を達成するために、
本発明の第3の変形例に係る画像形成装置は、
吸着手段により搬送ベルトに吸着させた記録紙を、該記録紙の前記搬送ベルトによる搬送方向と直交する主走査方向に間隔をおいた複数の紙押さえローラにより前記搬送ベルトに押さえつけて、画像形成手段に搬送する画像形成装置において、
前記吸着手段は、前記記録紙の前記搬送ベルトに対する吸着強度が、前記主走査方向における両端部が中央部に比べて高い分布となるように、吸着強度が互いに異なる複数の部材によって構成されている、
ことを特徴とする。
【0014】
なお、
第4の変形例として、
請求項1、2又は3に記載した本発明の画像形成装置や、上述した第1
乃至第3の変形例の画像形成装置において、前記所定条件を、前記記録紙の単位面積当たりの坪量が所定の閾値を下回ることであることとしてもよい。
【0015】
上述した
第4の変形例では、
請求項1、2又は3に記載した本発明の画像形成装置や、上述した第1
乃至第3の変形例の画像形成装置において、単位面積当たりの坪量が所定の閾値以下である記録紙の搬送ベルトによる吸着搬送時に、主走査方向における中央部が両端部に比べて高い分布となる吸着強度で記録紙が搬送ベルトに吸着される。
【0016】
このため、薄手でコシが弱くカールしやすい記録紙の搬送時に、搬送ベルトから浮いた記録紙部分を個々の紙押さえローラ間に分散して小さく寄せ集め、紙押さえローラの通過後の記録紙にしわが発生しにくいようにし、カールした記録紙をより効果的に伸ばして搬送ベルトにより吸着搬送させることができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載した本発明の画像形成装置と、
上述した本発明の第3の変形例に係る画像形成装置によれば、カールした状態のため搬送ベルトから浮いた記録紙部分を、複数の紙押さえローラにより搬送ベルトに押さえつけると、主走査方向の両側に記録紙を押し広げようとする力が作用する。
【0018】
ここで、主走査方向における中央寄りの記録紙部分では、カールした状態で搬送ベルトに接触している記録紙部分が搬送ベルトに強く吸着されない。このため、搬送ベルトから浮いた記録紙部分が紙押さえローラにより押さえつけられると、搬送ベルトに接触している部分を含めて記録紙が主走査方向の両端側に移動する。
【0019】
したがって、主走査方向における中央寄りで搬送ベルトから浮いた記録紙部分は、紙押さえローラの通過中に、主走査方向における左右両側寄りの搬送ベルトに接触して強く吸着されている部分間において、複数組の隣り合う2つの紙押さえローラ間に分散して寄せ集められる。
【0020】
このため、個々の紙押さえローラ間に寄せ集められる記録紙部分はそれぞれ小さく、そのため、紙押さえローラの通過後の記録紙にしわが発生しにくくなり、その結果、カールした記録紙が平坦に伸ばされる。よって、記録紙のカールをより効果的に伸ばして搬送ベルトにより吸着搬送することができる。
【0021】
また、請求項2に記載した本発明の画像形成装置によれば、請求項1に記載した本発明の画像形成装置において、搬送ベルトの吸着面における主走査方向の各分割領域毎に対応する負圧発生手段がそれぞれ発生する負圧の強さの制御手段による調整で、搬送ベルトに対する記録紙の吸着強度を主走査方向における両端部が中央部に比べて高い分布となるように、容易に制御することができる。
【0022】
なお、搬送ベルトに対する記録紙の吸着強度を主走査方向における両端部が中央部に比べて高い分布となるように制御するか否かは、請求項3に記載した本発明の画像形成装置のように、印刷ジョブで指定された記録紙の種類に基づいて決定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0025】
図1は本発明の一実施形態に係るライン型インクジェットプリンタの概略構成を示す説明図である。
図1に示すように、本実施形態のライン型インクジェットプリンタ(以下、「インクジェットプリンタ」と略記する。請求項中の画像形成装置に相当)1は、筐体100の内外に、制御ユニット10と、給紙部101と、プリンタ部102(請求項中のが造形西部に相当)と、ディスプレイ103と、ベルトプラテン機構部104と、記録紙循環搬送路部105と、排紙部106とを設けて構成されている。
【0026】
給紙部101は、筐体100の側面に配設されたサイド給紙台21と、筐体100内の左下方部位に配設された複数の給紙台22,23とを備えている。サイド給紙台21はいわゆる手差しトレイであり、搬送可能な任意のスペックの記録紙Sをセットすることができる。一方、複数の給紙台22,23はいわゆる給紙カセットであり、それぞれにサイズ(A4、A3、B4、B5等)や向き(縦、横)、紙質の異なる記録紙S(例えば、坪量が大きい厚手の記録紙、坪量が小さい薄手の記録紙等)をセットすることができる。
【0027】
そして、サイド給紙台21又は複数の給紙台22,23上に積層された未印刷の記録紙Sのうち各最上層の記録紙Sが、各給紙ローラ24によって1枚ずつ給紙された後にローラ等の駆動機構による給紙搬送路KRに沿って搬送され、給紙された記録紙Sの先頭部分が記録紙循環搬送路部105中に設けられたレジストローラ対51に導かれて、このレジストローラ対51で記録紙Sの先頭位置が揃うようにタイミング合わせが行われている。
【0028】
プリンタ部102は、給紙部101の下流側で且つ記録紙循環搬送路部105の上流側に固定設置されており、筐体100内の略中央部位に位置している。
【0029】
このプリンタ部102では、複数色のインクと対応して複数のライン型インクジェットヘッド(以下、「インクジェットヘッド」と略記する。)31が上流側から下流側に向かってC(シアン)用,K(ブラック)用,M(マゼンタ)用,Y(イエロー)用の順に配置されている。各色のインクジェットヘッド31は、ヘッドホルダ32に取り付けられて、ベルトプラテン機構部104による記録紙Sの搬送方向X(副走査方向)に等間隔をおいて配置されている。
【0030】
なお、本実施形態では、4色(CKMY)のインクに対応して4つのインクジェットヘッド31を設置した例で説明するが、例えば文字だけを印刷する場合には1色(K)用だけで良いので、インクジェットヘッド31は少なくとも一以上設置すれば良いものである。
【0031】
ここで、各色毎に設けた複数のインクジェットヘッド31は全て同じ構造に形成されている。詳細な図示を省略するが、一のインクジェットヘッド31は、複数のノズルを
図1の紙面と垂直な主走査方向Y(
図2参照)に沿って配列させたヘッドブロックが、主走査方向Yに沿った一のライン上に沿って複数個配置され、且つ、主走査方向Yと直交する副走査方向(搬送方向Xと同方向)に計2ラインに分けて配置されていると共に、隣り合うラインでは各ヘッドブロックが一部重なりあうように互い違いに千鳥状に配置されている。
【0032】
各インクジェットヘッド31は、同一画素にノズル(図示せず)から吐出するドットを最大5ドットまで変化させることができるマルチドロップのインクジェット方式で印刷画像の印刷を行う。各画素の各色のインクジェットヘッドからのインク液滴の吐出ドット数を規定する印刷用多値データは、クライアント端末14から入力される印刷ジョブの印刷データに基づいて、制御ユニット10の後述するCPU90によって生成される。
【0033】
ベルトプラテン機構部104は、プリンタ部102と対向して複数のインクジェットヘッド31の下方に配設されている。
【0034】
このベルトプラテン機構部104では、給紙部101で給紙された未印刷の記録紙S又は後述する循環搬送路JRによって搬送された片面が印刷済みの記録紙Sを搭載しながら搬送するために多数の吸着孔を形成した帯状のベルトプラテン41が、モータ45により回転駆動される駆動プーリ42と従動プーリ43との間に掛け渡されている。
【0035】
駆動プーリ42と従動プーリ43との間には、記録紙Sをベルトプラテン41上にエア吸着する負圧を発生させるためのサクションファンユニット44が設けられている。
【0036】
ベルトプラテン41(請求項中の搬送ベルトに相当)は、多数の吸着孔を有している。ベルトプラテン41の記録紙Sの吸着面41a(
図2参照)は、各吸着孔を介してサクションファンユニット44(請求項中の吸着手段に相当)に連通している。そして、各吸着孔には、サクションファンユニット44が発生させる吸着力により負圧が供給される。したがって、ベルトプラテン41に配置された記録紙Sには、吸着孔に生じる負圧によるベルトプラテン41側への吸着力が作用する。
【0037】
図2の拡大平面図に示すように、サクションファンユニット44は、図中の上下方向に延在する主走査方向Yに3列(搬送方向Xの上流側から下流側を見て、主走査方向Yの向かって左側、中央、右側)、図中の左右方向に延在する搬送方向Xに2列(上流側、下流側)の、計6個のサクションファン44a〜44f(請求項中の負圧発生手段に相当)を有している。
【0038】
即ち、主走査方向Yの左側の各領域a1(搬送方向Xの上流側),b1(搬送方向Xの下流側)には、サクションファン44a,44bが配置されている。また、主走査方向Yの中央の各領域b1(搬送方向Xの上流側),b2(搬送方向Xの下流側)には、サクションファン44c,44dが配置されている。さらに、主走査方向Yの右側の各領域c1(搬送方向Xの上流側),c2(搬送方向Xの下流側)には、サクションファン44e,44fが配置されている。
【0039】
そして、
図1に示すベルトプラテン機構部104では、帯状のベルトプラテン41上に記録紙Sを搭載したときに、この記録紙Sを各サクションファン44a〜44fによりベルトプラテン41に形成した多数の吸着孔を介してエアー吸着して、記録紙Sをベルトプラテン41上に固定した状態でベルトプラテン41の回転より記録紙Sを副走査方向に搬送する。搬送中の記録紙Sは、その通過経路上の上方に配置されたプリンタ部102の複数のインクジェットヘッド31により印刷画像がフルカラー印刷される。
【0040】
記録紙循環搬送路部105は、給紙部101で給紙された記録紙Sに対してプリンタ部102で片面印刷又は両面印刷するために記録紙Sをプリンタ部102を経由して循環させる循環搬送路JRを有し、この循環搬送路JR中にサイド給紙台21側からの未印刷の記録紙Sを搬送する給紙搬送路KRと、排紙台71側に印刷済みの記録紙Sを搬送する排紙搬送路HRとが分岐して設置されている。
【0041】
また、上記した循環搬送路JRは、プリンタ部102により記録紙Sの片面(表面)に印刷された印刷済みの記録紙Sをそのまま排紙する方向に搬送する通常搬送路CRと、片面(表面)が印刷された記録紙Sを通常搬送路CRの途中から電磁弁などを用いた第1,第2搬送路切替えレバー52,53により搬送方向を切り換えてスイッチバックを行って両面(表面及び裏面)を印刷するためのスイッチバック搬送路SRとで環状に設置されている。
【0042】
そして、循環搬送路JRにより、両面印刷したい記録紙Sがプリンタ部102を経由して循環可能になっている。なお、給紙搬送路KRやスイッチバック搬送路SRから循環搬送路JRに搬送された記録紙Sは、レジストローラ対51を通過しベルトプラテン41に移送される際に、紙押さえローラ54によりベルトプラテン41に押さえつけられてカール状態が補正される。
【0043】
紙押さえローラ54は、
図2に示すように、主走査方向Yに等間隔をおいて複数設けられており、全ての紙押さえローラ54が同一の回転軸54aによって連動して回転駆動される。紙押さえローラ54によって押さえつけられた記録紙Sは、プリンタ部102に給紙されて画像形成される。プリンタ部102を通過する際に記録紙Sは、サクションファンユニット44が発生する負圧でベルトプラテン41に吸着される領域を通過する。
【0044】
記録紙Sがベルトプラテン41に吸着される領域は、主走査方向Yの左側のサクションファン44a,44bによる負圧で吸着される領域a1,a2と、主走査方向Yの中央のサクションファン44c,44dによる負圧で吸着される領域b1,b2と、主走査方向Yの右側のサクションファン44e,44fによる負圧で吸着される領域c1,c2とに分かれている。これらの領域a1,a2,b1,b2,c1,c2は、請求項中の分割領域に相当している。
【0045】
ここで、カール状態の記録紙Sが紙押さえローラ54により伸ばされる状態の変遷を説明する。なお、ここでは、レジストローラ対51を通過した直後の記録紙Sが、主走査方向Yにおいて繰り返し波打ってカールしているものとする。
【0046】
まず、各サクションファン44a〜44fがベルトプラテン41の各領域a1〜c2にそれぞれ発生する負圧を均等とした通常の吸着パターンについて、
図3の説明図を参照して説明する。
【0047】
図3(a)に示すように、レジストローラ対51を通過した直後(
図2の断面A−A箇所)の記録紙Sには、主走査方向Yの全体に亘って各サクションファン44a〜44fからベルトプラテン41への吸着力がかかる。
【0048】
この状態で記録紙Sが紙押さえローラ54,54,…に差しかかると(
図2の断面B−B箇所)、
図3(b)に示すように、記録紙S中のカールによりベルトプラテン41から浮いた部分が各紙押さえローラ54により押さえつけられる。
【0049】
ベルトプラテン41から浮いた記録紙S部分が紙押さえローラ54により押さえつけられると、その記録紙S部分には、浮いた記録紙S部分を主走査方向Yの両側に押し広げようとする力が作用する。
【0050】
しかし、主走査方向Yの全体に亘って各サクションファン44a〜44fから記録紙Sにベルトプラテン41への吸着力が加わっていると、カールした状態でベルトプラテン41に接触している記録紙S部分がベルトプラテン41に強く吸着され、主走査方向Yに移動しにくくなる。
【0051】
そのため、ベルトプラテン41から浮いた記録紙S部分が、紙押さえローラ54の通過中に(
図2の断面B′−B′箇所)、例えば
図3(c)に示すように、平坦に伸ばされず隣り合う2つの紙押さえローラ54,54間に寄せ集められる。
【0052】
すると、紙押さえローラ54の通過後(
図2の断面C−C箇所)に、
図3(d)に示すように、記録紙Sにしわが発生してしまう。このようなしわがある記録紙Sがプリンタ部102に給紙されると、ジャム等の不具合を引き起こす原因になりかねない。
【0053】
特に、主走査方向Yにおける中央のベルトプラテン41から浮いた記録紙S部分は、左右両側のベルトプラテン41から浮いた記録紙S部分が移動し近づこうとする力が作用するので、左右両側のベルトプラテン41から浮いた記録紙S部分よりも平坦に伸ばされにくい。そのため、主走査方向Yにおける中央の記録紙S部分にはより一層しわが発生しやすい。
【0054】
また、このような状況は、特に、コシが弱い薄手の記録紙Sや、吸湿により大きくカールした記録紙S等に発生しやすい。
【0055】
そこで、主走査方向Yにおける左右の各サクションファン44a,44b,44e,44fを停止して、主走査方向Yにおける左右両側の記録紙S部分を主走査方向Yに移動させやすくすることが考えられる。
【0056】
以下、そのようにした中央優先の吸着パターンについて、
図4の説明図を参照して説明する。
【0057】
この場合には、
図4(a)に示すように、レジストローラ対51を通過した直後(
図2の断面A−A箇所)の記録紙Sには、主走査方向Yの中央のサクションファン44c,44dのみから、ベルトプラテン41への吸着力がかかる。この吸着力により、記録紙Sのベルトプラテン41による高速搬送が確保される。
【0058】
この状態で記録紙Sが紙押さえローラ54,54,…に差しかかると(
図2の断面B−B箇所)、
図4(b)に示すように、記録紙S中のベルトプラテン41から浮いた部分が各紙押さえローラ54により押さえつけられて、浮いた記録紙S部分を主走査方向Yの両側に押し広げようとする力が作用する。
【0059】
ここで、主走査方向Yにおける左右両側寄りの記録紙S部分では、カールした状態でベルトプラテン41に接触している記録紙S部分がベルトプラテン41に吸着されていない。このため、ベルトプラテン41から浮いた記録紙S部分が紙押さえローラ54により押さえつけられると、その記録紙S部分が主走査方向Yの両端側に移動し平坦に伸ばされる。
【0060】
一方、主走査方向Yにおける中央寄りの記録紙S部分では、カールした状態でベルトプラテン41に接触している記録紙S部分がベルトプラテン41に強く吸着されるので、ベルトプラテン41から浮いた記録紙S部分が紙押さえローラ54により押さえつけられても、その記録紙S部分は主走査方向Yに移動しにくい。
【0061】
そのため、主走査方向Yにおける中央寄りの記録紙S部分では、通常の吸着パターンの場合と同様に、ベルトプラテン41から浮いた記録紙S部分が、紙押さえローラ54の通過中に(
図2の断面B′−B′箇所)、例えば
図4(c)に示すように、平坦に伸ばされず隣り合う2つの紙押さえローラ54,54間に寄せ集められる。
【0062】
すると、紙押さえローラ54の通過後(
図2の断面C−C箇所)に、
図4(d)に示すように、記録紙Sにしわが発生してしまう。
【0063】
特に、ベルトプラテン41から浮いた記録紙S部分が、主走査方向Yにおける中央寄り部分に存在する限られた数の隣り合う2つの紙押さえローラ54,54間に集中して寄せ集められるので、紙押さえローラ54の通過後に発生するしわは大きくなる。
【0064】
そこで、中央優先の吸着パターンとは反対に、主走査方向Yにおける中央の各サクションファン44c,44dを停止して、主走査方向Yにおける中央の記録紙S部分を主走査方向Yに移動させやすくすることが考えてみる。
【0065】
以下、そのようにした左右両側優先の吸着パターンについて、
図5の説明図を参照して説明する。
【0066】
この場合には、
図5(a)に示すように、レジストローラ対51を通過した直後(
図2の断面A−A箇所)の記録紙Sには、主走査方向Yの左右両側のサクションファン44a,44b,44e,44fのみから、ベルトプラテン41への吸着力がかかる。この吸着力により、記録紙Sのベルトプラテン41による高速搬送が確保される。
【0067】
この状態で記録紙Sが紙押さえローラ54,54,…に差しかかると(
図2の断面B−B箇所)、
図5(b)に示すように、記録紙S中のベルトプラテン41から浮いた部分が各紙押さえローラ54により押さえつけられて、浮いた記録紙S部分を主走査方向Yの両側に押し広げようとする力が作用する。
【0068】
ここで、主走査方向Yにおける左右両側寄りの記録紙S部分では、カールした状態でベルトプラテン41に接触している記録紙S部分がベルトプラテン41に強く吸着される。このため、ベルトプラテン41から浮いた記録紙S部分が紙押さえローラ54により押さえつけられても、その記録紙S部分は主走査方向Yに移動しにくい。
【0069】
一方、主走査方向Yにおける中央寄りの記録紙S部分では、カールした状態でベルトプラテン41に接触している記録紙S部分がベルトプラテン41に強く吸着されない。このため、ベルトプラテン41から浮いた記録紙S部分が紙押さえローラ54により押さえつけられると、ベルトプラテン41に接触している部分を含めて記録紙Sが主走査方向Yの両端側に移動する。
【0070】
したがって、主走査方向Yにおける中央寄りでベルトプラテン41から浮いた記録紙S部分は、紙押さえローラ54の通過中に(
図2の断面B′−B′箇所)、例えば
図5(c)に示すように、主走査方向Yにおける左右両側寄りのベルトプラテン41に接触して強く吸着されている部分間において、多数組の隣り合う2つの紙押さえローラ54,54間に分散して寄せ集められる。
【0071】
このため、個々の紙押さえローラ54,54間に寄せ集められる記録紙S部分はそれぞれ小さく、そのため、紙押さえローラ54の通過後(
図2の断面C−C箇所)に、
図5(d)に示すように、記録紙Sにしわが発生しにくくなり、その結果、カールした記録紙Sが平坦に伸ばされる。
【0072】
そこで、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、薄手の記録紙Sを印刷に使用する際には、
図5を参照して上述したような吸着パターンとなるように、サクションファンユニット44の各サクションファン44a〜44fを薄手用パターンで駆動させるようにしている。
【0073】
なお、各サクションファン44a〜44fの薄手用パターンによる駆動内容は、例えば、
図6のグラフに示すように、主走査方向Yにおける記録紙Sの左右両端部分が中央部分よりも相対的に吸着力が高くなるような分布を実現する内容とする。
【0074】
このとき、記録紙Sの左右両端部分の各領域a1,a2,c1,c2(
図2参照)の吸着力F′は、
図3を参照して上述した通常の吸着パターンにおける各領域a1,a2,b1,b2,c1,c2(
図2参照)の吸着力F以下とする。特に、印刷に使用する記録紙Sが薄手であるほど、吸着力F′の値は小さい方が望ましい。
【0075】
そして、薄手用パターンのときには、
図2に示すベルトプラテン41の吸着面41a上の左右両側の領域a1,a2,c1,c2に発生する吸着力が、中央の領域b1,b2に発生する吸着力よりも高くなるように、各領域a1,a2,b1,b2,c1,c2に対応する各サクションファン44a〜44fをそれぞれ駆動する。
【0076】
各サクションファン44a〜44fの具体的な駆動パターン(薄手用パターン)としては、例えば、
図7(a)〜(c)に示すように、左右両側の領域a1,a2,c1,c2に対応するサクションファン44a,44b,44e,44fと、中央の領域b1,b2に対応するサクションファン44c,44dとを、「強」と「弱」の組み合わせ、「強」と「微弱」の組み合わせ、「弱」と「微弱」の組み合わせで駆動するパターンがある。
【0077】
なお、「強」、「弱」、「微弱」は、各サクションファン44a〜44fのファンモータの駆動Dutyで定義することができる。例えば、「強」はDuty=61〜100%、「弱」はDuty=21〜60%、「微弱」はDuty=0〜20%とすることができる。
【0078】
また、厚手用パターンのときには、各サクションファン44a〜44fのファンモータを同じDutyで駆動すればよい。
【0079】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、厚手の記録紙S(薄手でない通常の厚さの記録紙も含む)を印刷に使用する際には、
図3を参照して上述したような吸着パターンとなるように、サクションファンユニット44の各サクションファン44a〜44fを厚手用パターンで駆動させるようにしている。
【0080】
ところで、ベルトプラテン41により搬送されてプリンタ部102の下方を通過した印刷済みの記録紙Sは、記録紙S上のインクが乾燥できる時間を確保するために循環搬送路JR中の通常搬送路CRを搬送される。そのために、通常搬送路CRは、プリンタ部102の上方に廻り込むように屈曲されている。そして、排紙対象となる印刷済みの記録紙Sは、通常搬送路CRから排紙搬送路HRを経て排紙部106の排紙台71に向かうように搬送される。
【0081】
一方、排紙対象とならない印刷済みの記録紙Sは、通常搬送路CRから循環搬送路JR中のスイッチバック搬送路SRに搬送される。このとき、記録紙Sは、通常搬送路CR中で排紙部106に向かう手前を第1搬送路切替えレバー52で切り替えて記録紙Sの搬送方向を変更し、排紙部106の排紙台71の裏面に形成した記録紙ガイド枠72内に向かう。そして、この記録紙ガイド枠72内で記録紙Sの先頭位置を反転させた後に第2搬送路切替えレバー53で切り替えて記録紙Sの搬送方向を変更し、再度レジストローラ対51に向かって、プリンタ部102及びベルトプラテン機構部104に搬送される。
【0082】
記録紙循環搬送路部105内には、光反射型(又は光透過型)の記録紙検出用光センサ55が設置されている。この記録紙検出用光センサ55は、給紙搬送路KR中のレジストローラ対51とベルトプラテン41との間に設置され、記録紙Sの種類(サイズ、薄手/厚手)を検出するセンサとして機能する。
【0083】
なお、薄手の記録紙Sは、記録紙Sの単位面積当たりの坪量(単位g/m
2 )を用いて、厚手の記録紙S(通常の厚さの記録紙Sを含む)と区別することができる。目安として、52g/m
2 以下の記録紙Sを薄手の記録紙Sと定義することができる。また、坪量に比例する代替パラメータとして、「純曲げこわさ」(単位μN・m
2 /m)を用いて、薄手の記録紙Sを厚手の記録紙Sと区別してもよい。目安として、75μN・m
2 /m以下の記録紙Sを薄手の記録紙Sと定義することができる。
【0084】
本実施形態では、坪量が53g/m
2 である記録紙Sの厚さを閾値とし、記録紙Sの厚さがこの閾値を上回っているか否かによって、厚手の記録紙Sか薄手の記録紙Sかを区別する。
【0085】
排紙部106は、筐体100に対して斜めに傾斜して設置された排紙台71を備えている。
【0086】
この排紙台71は、記録紙循環搬送路部105内に設けた通常搬送路CR及び排紙搬送路HRによって搬送された印刷済みの記録紙Sを収納する機能と、この排紙台71の裏面に形成した記録紙ガイド枠72で片面(表面)が印刷された記録紙Sに対して裏面を印刷するためにスイッチバックして記録紙Sの先頭位置を反転させる機能とを備えている。
【0087】
図8は、
図1の制御ユニット10の電気的構成を示すブロック図である。制御ユニット10には、外部インタフェース部11を介して、クライアント端末14からの印刷ジョブを受け取る。この印刷ジョブは、印刷画像のポストスクリプトデータと属性データとを含んでいる。制御ユニット10は、受け取った印刷ジョブのポストスクリプトデータにより印刷画像のラスタデータを生成する。インクジェットプリンタ1は、印刷ジョブの属性データにおいて指定された条件で、印刷画像の記録紙Sへの印刷をプリンタ部102において実行する。属性データには、印刷に使用する記録紙Sの種類が含まれている。
【0088】
プリンタ部102の各色のインクジェットヘッド31が印刷画像の各画素に対応してそれぞれ吐出するインク液滴のドット数を規定する印刷用多値データは、クライアント端末14から入力される印刷ジョブのポストスクリプトデータに基づいて、制御ユニット10のCPU90によって生成される。
【0089】
また、制御ユニット10のCPU90には、ディスプレイ103が接続されている。このディスプレイ103は、
図1に示すように、インクジェットプリンタ1の上部に配置されている。このディスプレイ103は、インクジェットプリンタ1の各種動作に関連する入力デバイスと情報出力デバイスとして利用することができる。
【0090】
上述した制御ユニット10は、
図8に示すように、CPU90を備える。このCPU90は、ROM91に格納されているプログラム及び設定情報に基づいて、ディスプレイ103から入力設定される内容に応じて、インクジェットプリンタ1の各部の動作を制御する。
【0091】
なお、制御ユニット10にはRAM92が設けられており、RAM92にはフレームメモリ領域が設けられている。このフレームメモリ領域には、クライアント端末14から制御ユニット10に入力された印刷ジョブのポストスクリプトデータからCPU90が生成する、印刷画像のラスタデータが、プリンタ部102に出力されるまでの間、一時的に記憶される。
【0092】
次に、
図8に示す制御ユニット10のCPU90がROM91に記憶されたプログラムを実行することにより行う、特にサクションファンユニット44の各サクションファン44a〜44fの駆動制御処理の手順について、
図9のフローチャートを参照して説明する。
【0093】
図9に示すように、CPU90は、まず、クライアント端末14から印刷ジョブが入力されたか否かを確認する(ステップS1)。入力されていない場合は(ステップS1でNO)、入力されるまで待機し、入力された場合は(ステップS1でYES)、入力された印刷ジョブの属性データから、印刷に使用する記録紙Sが薄手であるか否かを特定する(ステップS3)。
【0094】
記録紙Sが薄手である場合は(ステップS3でYES)、CPU90は、サクションファンユニット44の各サクションファン44a〜44fを薄手用パターンで駆動し(ステップS5)、印刷ジョブの終了後に(ステップS9でYES)、一連の処理を終了して、以後、
図9の手順を繰り返し実行する。
【0095】
また、記録紙Sが薄手でない場合は(ステップS3でNO)、CPU90は、サクションファンユニット44の各サクションファン44a〜44fを厚手用パターンで駆動し(ステップS7)、印刷ジョブの終了後に(ステップS9でYES)、一連の処理を終了して、以後、
図9の手順を繰り返し実行する。
【0096】
以上の説明からも明らかなように、本実施形態では、
図9のフローチャートにおけるステップS3が、請求項中の判別手段に対応する処理となっている。また、本実施形態では、
図9中のステップS5が、請求項中の制御手段に対応する処理となっている。
【0097】
このように本実施形態のインクジェットプリンタ1では、薄手の記録紙Sを印刷に使用する印刷ジョブの発生時に、各領域a1,a2,b1,b2,c1,c2に対応する各サクションファン44a〜44fを薄手用の駆動パターンでそれぞれ駆動する構成とした。
【0098】
このため、ベルトプラテン41の吸着面41a上の左右両側の領域a1,a2,c1,c2に発生する吸着力が、中央の領域b1,b2に発生する吸着力よりも高くなる。よって、主走査方向Yにおける中央のベルトプラテン41から浮いた記録紙S部分を、主走査方向Yにおける左右両端間の個々の紙押さえローラ54,54間に分散させて、記録紙Sにしわを発生させにくくすることができる。
【0099】
なお、本実施形態では、印刷ジョブの属性データから、印刷に使用する記録紙Sが薄手であるか否かを特定するものとしたが、記録紙検出用光センサ55が検出する記録紙Sの厚さにより、印刷に使用する記録紙Sが薄手であるか否かを特定する構成としてもよい。その場合には、
図10のフローチャートに示すように、
図9のステップS1で入力を確認した印刷ジョブによる印刷を開始した後(ステップS2)、記録紙検出用光センサ55の検出結果により、印刷に使用する記録紙Sが薄手であるか否かを特定すればよい(ステップS3)。
【0100】
また、上述した実施形態では、記録紙Sが薄手である場合に、主走査方向Yにおける両端部が中央部に比べてベルトプラテン41に対する吸着強度が強くなる分布とする場合について説明した。しかし、上記のような吸着強度分布とする条件は、例えば、規定の度合い以上のカールが記録紙Sに存在することを検出した場合
等、記録紙Sの厚さ以外のファクタに関するものであってもよい。
【0101】
さらに、上述した実施形態では、サクションファンユニット44によりベルトプラテン41の吸着面41aに負圧を発生させて記録紙Sを吸着する場合を例に取って説明した
が、本発明の参考例では、負圧以外によってベルトプラテン41の吸着面41aに記録紙Sを吸着する場合にも、
上記のような吸着強度分布を採用する。
【0102】
即ち、公知の方法によりベルトプラテン41の吸着面41aに発生させた静電気により記録紙Sを吸着する構成とする場合や、吸着性を有する材料によりベルトプラテン41の吸着面41aを構成する場合にも、本発明
の参考例として、上記のような吸着強度分布を採用することができる。
【0103】
例えば、吸着性を有する材料によりベルトプラテン41の吸着面41aを構成する場合は、
図11(a)に示すように、ベルトプラテン41の主走査方向Yにおける中央部分と左右両側部分とを、摩擦度や粘着度が異なる材質で構成し、あるいは、中央部分と左右両側部分の吸着面41aに摩擦度や粘着度が異なる表面加工を施す。
【0104】
これにより、吸着面41a上の左右両側の領域a,cに発生する記録紙Sの吸着力を、中央の領域bに発生する記録紙Sの吸着力よりも高くすることができる。このような構成によっても、
図11(b)に示すように、ベルトプラテン41の吸着面41aにおいて、主走査方向Yにおける記録紙Sの左右両端部分が中央部分よりも相対的に吸着力が高くなるような分布を実現し、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
また、上述した実施形態では、ライン型インクジェットプリンタを例に取って説明したが、本発明は、搬送ベルト(ベルトプラテン)に吸着させた状態で搬送される記録紙に画像を形成する画像形成装置であれば、いわゆるマルチパス方式のインクジェットプリンタや電子写真方式等、種々の画像形成方式に適用可能である。