特許第5956857号(P5956857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956857
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】位置補正機能付き制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 3/12 20060101AFI20160714BHJP
【FI】
   G05D3/12 304
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-152613(P2012-152613)
(22)【出願日】2012年7月6日
(65)【公開番号】特開2014-16719(P2014-16719A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 伸二
【審査官】 稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特公平07−022873(JP,B2)
【文献】 特開昭55−034716(JP,A)
【文献】 特公平02−030522(JP,B2)
【文献】 特開2002−157018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転位置を検出する第1位置検出器と、前記モータの駆動対象の位置を直接検出する第2位置検出器と、前記第1位置検出器が出力する位置に基づきモータ速度を算出するモータ速度算出部とを備え、前記駆動対象の位置決めを行う位置制御装置であって、
前記第1位置検出器の検出値(P1)と前記第2位置検出器の検出値(P2)との差(ΔP)を算出する位置差分算出部と、
モータが一定速度の時に、前記位置差分算出部が算出した差(ΔP)を補正値(ΔP(P1))として前記第1位置検出器の検出値(P1)と対応付けて記憶し、常に前記補正値(ΔP(P1))を出力する補正値記憶部と、
前記第1位置検出器の検出値(P1)と前記補正値記憶部から出力された補正値(ΔP(P1))の差を演算し、演算結果を前記モータ速度算出部に出力する位置情報補正部と、
を含むことを特徴とするフルクローズドループの位置制御装置。
【請求項2】
モータの回転位置を検出する第1位置検出器と、前記モータの駆動対象の位置を直接検出する第2位置検出器と、前記第1位置検出器が出力する位置に基づきモータ速度を算出するモータ速度算出部とを備え、前記駆動対象の位置決めを行う位置制御装置であって、
前記第1位置検出器の検出値(P1)と前記第2位置検出器の検出値(P2)との差(ΔP)を算出する位置差分算出部と、
モータが一定速度の時に、前記位置差分算出部が算出した差(ΔP)を補正値(ΔP(P1))として前記第1位置検出器の検出値(P1)と対応付けて記憶し、常に前記補正値(ΔP(P1))を出力する補正値記憶部と、
モータ加速度を算出する加速度算出部と、
前記補正値(ΔP(P1))に、前記モータ加速度に応じた係数(k)を乗算して、修正補正値(kΔP(P1))を算出する係数乗算部と、
前記第1位置検出器の検出値(P1)と前記係数乗算部から出力された修正補正値(kΔP(P1))の差を演算し、演算結果を前記モータ速度算出部に出力する位置情報補正部と、
を含むことを特徴とするフルクローズドループの位置制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の位置制御装置であって、前記加速度算出部は、前記モータ速度算出部の算出値に基づきモータの加速度を算出する、位置制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の位置制御装置であって、前記モータ速度算出部の算出値に基づき、モータが一定速度である時に前記補正値記憶部に、前記位置差分算出部が算出した差(ΔP)と第1位置検出器の検出値(P1)を記憶させる記憶指令部を有する、位置制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等の送り軸の位置を制御する位置制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の位置制御装置について、図3を参照して説明する。従来の位置制御装置においては、図示しないNCプログラム読み込み部およびNCプログラム解釈部により読み込まれて解釈されたNCプログラム1に基づいて、関数発生部2が制御対象である軸の移動情報(目標位置、速度等)を算出し、算出された位置指令を軸制御部3に送出する。軸制御部3は、図4に示すように、位置ループ演算部31と速度ループ演算部32と出力部33と第1入力部34と第2入力部35とモータ速度算出部36とから構成され、モータ速度算出部36は、第1入力部34から得られたモータ検出器側の位置P1を微分することによりモータの回転速度を算出する。そして、位置検出値P2とモータ回転速度に基づいて、位置ループ演算部31及び速度ループ演算部32にて、それぞれ位置ループ演算及び速度ループ演算を行って、その結果を電流指令値として出力部33を介して出力する。パワーアンプ4では出力部33を介して受け取った電流指令値(PWM指令)より、公知の技術によりPWM処理を行い、サーボモータ5に印加すべき各相電圧を発生する。この電圧の印加によりサーボモータ5には駆動トルクが発生し、カップリング6を中継してウオーム8、円板状歯車9、軸10、円テーブル12から成る駆動負荷系を所望の位置、速度にて駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平2−30522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の位置制御装置では、部品加工や機械組立て精度により、ウオーム8や円板状歯車9に形状上の中心線と回転の中心線とのずれ、いわゆる振れがある。ウオーム8や円板状歯車9の回転速度が位置ループの制御応答周波数より十分に低い場合は、前記の振れは、位置ループの中で補正され、振れに起因する誤差は発生しない。しかし、位置ループの制御応答は数Hzと比較的低く、ウオーム8や円板状歯車9の回転速度が位置ループの制御応答周波数より高くなると、位置ループが振れに応答できなくなる。これにより、いわゆる動的な位置決め誤差が発生するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、機械組立て精度を補正し、動的な高い位置決め精度を実現できるフルクローズドループの位置制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するために、本発明の位置制御装置は、モータの回転位置と駆動対象の位置の差をモータの回転位置に対応付けて記憶し、検出されたモータの回転位置に対して前記の差に基づき補正を行うことで、ウオームや円板状歯車等の回転体の振れに起因する誤差を排除する。
【0007】
具体的には、本発明に係る位置制御装置は、モータの回転位置を検出する第1位置検出器と、モータの駆動対象の位置を直接検出する第2位置検出器と、第1位置検出器が出力する位置に基づきモータ速度を算出するモータ速度算出部とを備え、駆動対象の位置決めを行う位置制御装置である。さらに、当該位置制御装置は、第1位置検出器の検出値(P1)と第2位置検出器の検出値(P2)との差(ΔP)を算出する位置差分算出部と、モータが一定速度の時に、位置差分算出部が算出した差(ΔP)を補正値(ΔP(P1))として第1位置検出器の検出値(P1)と対応付けて記憶し、常に補正値(ΔP(P1))を出力する補正値記憶部と、第1位置検出器の検出値(P1)と補正値記憶部から出力された補正値(ΔP(P1))の差を演算し、演算結果を前記モータ速度算出部に出力する位置情報補正部と、を含む。
【0008】
補正値記憶部に記憶される、検出値(P1)に対応付けられた補正値(ΔP(P1))は、モータの回転位置が検出値(P1)であるときの振れに起因する誤差を表す。補正値(ΔP(P1))に基づき検出値(P1)を補正することにより、振れによる影響を抑制することができる。つまり、機械組立て精度によりウオームに振れがあっても、モータ検出器である第1位置検出器と、直接位置検出器である第2位置検出器の差から、この振れや、モータ検出器の誤差が自動的に測定でき、モータ検出器である第1位置検出器の値を補正して速度検出を行うため、動的な高い位置決め精度を実現できる。
【0009】
本発明に係る他の位置制御装置は、上述の差すなわち補正値(ΔP(P1))をモータ加速度に基づき更に修正してモータの回転位置に対して補正を行うものである。
【0010】
具体的には、この位置制御装置は、モータの回転位置を検出する第1位置検出器と、モータの駆動対象の位置を直接検出する第2位置検出器と、第1位置検出器が出力する位置に基づきモータ速度を算出するモータ速度算出部とを備え、駆動対象の位置決めを行う。さらに、第1位置検出器の検出値(P1)と第2位置検出器の検出値(P2)との差(ΔP)を算出する位置差分算出部と、モータが一定速度の時に、位置差分算出部が算出した差(ΔP)を補正値(ΔP(P1))として第1位置検出器の検出値(P1)と対応付けて記憶し、常に補正値(ΔP(P1))を出力する補正値記憶部と、モータ加速度を算出する加速度算出部と、補正値に、モータ加速度に応じた係数(k)を乗算して、修正補正値(kΔP(P1))を算出する係数乗算部と、第1位置検出器の検出値(P1)と係数乗算部から出力された修正補正値(kΔP(P1))の差を演算し、演算結果を前記モータ速度算出部に出力する位置情報補正部と、を含む。
【0011】
モータ加速度に応じて補正値を修正することで、ウオーム等のたわみによる誤差も小さくすることができる。よって、機械組立て精度によりウオーム8に振れがあっても、モータ検出器である第1位置検出器と、直接位置検出器である第2位置検出器の差から、この振れや、モータ検出器の誤差が自動的に測定でき、モータ検出器である第1位置検出器の値を加減速トルクによる駆動系の撓み分を修正し補正して速度検出を行うため、動的な高い位置決め精度を実現できる。
【0012】
加速度算出部は、モータ速度算出部の算出値に基づきモータの加速度を算出するものとできる。
【0013】
また、位置制御装置は、モータ速度算出部の算出値に基づき、モータが一定速度である時に補正値記憶部に、位置差分算出部が算出した差(ΔP)と第1位置検出器の検出値(P1)を記憶させる記憶指令部を有するものとできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、振れに起因する誤差、すなわち偏芯誤差を表す差(ΔP)に基づき、モータの回転位置を補正することにより、前記の誤差を小さくすることができる。また、モータ加速度に応じて前記の差(ΔP)を修正することにより、駆動系のたわみ分を補正でき、更に高精度な位置決めを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るフルクローズドループの位置制御装置の軸制御部の一例を示す構成ブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係るフルクローズドループの位置制御装置の軸制御部の一例を示す構成ブロック図である。
図3】従来のフルクローズドループの位置制御装置の一例を示す構成ブロック図である。
図4】従来のフルクローズドループの位置制御装置の軸制御部の一例を示す構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係る位置検出装置について、図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る位置検出装置は、図3に示した従来のものと同様の構成からなるが、軸制御部3内部の構成、及び動作が従来のものと異なる。
【0017】
図1は、本実施形態のフルクローズドループの位置制御装置の軸制御部を示す構成ブロック図である。位置ループ演算部31と、速度ループ演算部32と、出力部33と、第1入力部34と、第2入力部35と、モータ速度算出部36と、記憶指令部37と、補正値記憶部38と、第1〜第4の差分器20〜23とから構成されている。ここで、従来と同様の構成をとるものには同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0018】
差分器23は、サーボモータ5側の位置検出器7の検出値P1から、直接位置検出器11の検出値P2を減算する。よって、差分器23は、二つの位置検出値P1,P2の差ΔPを算出する位置差分算出部として機能する。記憶指令部37は、モータ速度算出部36が算出するモータ速度V1の変化分である加速度がない時、つまりモータが一定速度で回転している時に、書込み指令を補正値記憶部38へ送る。記憶指令部37により書込み指令がなされた時には、補正値記憶部38は、そのときの位置検出器の検出値P1と差分器23が出力する値ΔPを取得し、これらを対応付けて記憶する。対応付けられた検出値P1と差ΔPは、回転位置と、その回転位置における振れに起因する誤差を表す。補正値記憶部38は、第1入力部34から入力される回転位置(P1)に対応付けられた差ΔPを、回転位置の検出値の補正値ΔP(P1)として常に差分器22に出力する。差分器22は、第1入力部34からの検出値P1と補正値ΔP(P1)の差分を算出し、これをモータ速度算出部36に送出する。したがって、差分器22は、検出値P1つまり位置情報を、補正値ΔP(P1)に基づき補正する位置情報補正部として機能する。
【0019】
図2は、本発明のフルクローズドループの位置制御装置の軸制御部の他の一例を示す構成ブロック図である。位置ループ演算部31と、速度ループ演算部32と、出力部33と、第1入力部34と、第2入力部35と、モータ速度算出部36と、記憶指令部37と、補正値記憶部38と、第1〜第4の差分器20〜23とから構成されている。ここで、従来と同様の構成をとるものには同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0020】
差分器23は、サーボモータ5側の位置検出器7の検出値P1から、直接位置検出器11の検出値P2を減算する。よって、差分器23は、二つの位置検出値P1,P2の差ΔPを算出する位置差分算出部として機能する。記憶指令部37は、モータ速度算出部36が算出するモータ速度V1の変化分である加速度がない時、つまりモータが一定速度で回転している時に、書込み指令を補正値記憶部38へ送る。記憶指令部37により書込み指令がなされた時には、補正値記憶部38は、そのときの位置検出器の検出値P1と差分器23が出力する値ΔPを取得し、これらを対応付けて記憶する。対応付けられた検出値P1と差ΔPは、回転位置と、その回転位置における振れに起因する誤差を表す。補正値記憶部38は、第1入力部34から入力される回転位置(P1)に対応付けられた差ΔPを、回転位置の検出値の補正値ΔP(P1)として常に後述の係数乗算部40に出力する。
【0021】
さらに、この軸制御部3には、加速度算出部39が備えられ、この加速度算出部39は、モータ速度算出部36が算出するモータ速度を微分演算し、モータ加速度を算出する。係数乗算部40は、補正値ΔP(P1)に、モータ加速度に応じた係数kを乗算して、修正補正値kΔP(P1)を差分器22に出力する。通常、この係数は1から3程度であり、モータ加速度と駆動系の機械剛性の関係によって決まるが、実際に機械を動かし現合するのがよい。この係数を乗算する理由は、位置を補正するために発生するモータ加速トルクにより、ウオーム8等が撓むことにより、位置の補正分がモータ加速トルクに比例し減少するのを補うためである。差分器22は、第1入力部34からの検出値P1と修正補正値kΔP(P1)の差分を算出し、これをモータ速度算出部36に送出する。したがって、差分器22は、検出値P1つまり位置情報を、修正補正値kΔP(P1)に基づき補正する位置情報補正部として機能する。
【符号の説明】
【0022】
1 NCプログラム、2 関数発生部、3 軸制御部、4 パワーアンプ、5 サーボモータ、6 カップリング、7 位置検出器、8 ウオーム、9 円板状歯車、10 軸、11 直接位置検出器、12 円テーブル、20,21 差分器、22 差分器(位置情報補正部)、23 差分器(位置差分算出部)、31 位置ループ演算、32 速度ループ演算、33 出力部、34 第1入力部、35 第2入力部、36 モータ速度算出部、37 記憶指令部、38 補正値記憶部、39 加速度算出部、40 係数乗算部。
図1
図2
図3
図4