(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
本実施形態のゴルフクラブヘッドは、重量体着脱機構を有する。この機構は、R&A(Royal and Ancient Golf Club of Saint Andrews;全英ゴルフ協会)が定めるゴルフ規則を満たしている。即ち、この重量体着脱機構は、R&Aが定める、「付属規則II クラブのデザイン」の「1 クラブ」における「1b 調整性」で規定される要件を満たしている。この「1b 調整性」が規定する要件は、下記の(i)、(ii)及び(iii)である。
(i)容易に調整できるものでないこと。
(ii)調整可能部分はすべてしっかりと固定され、ラウンド中に緩むことの合理的な可能性がないこと。
(iii)調整後のすべての形状が規則に適合すること。
【0018】
図1は、第一実施形態のヘッド4を備えたゴルフクラブ2を示す。このゴルフクラブ2は、ヘッド4、シャフト6及びグリップ8を備えている。ヘッド4は、シャフト6の一端部に取り付けられている。グリップ8は、シャフト6の他端部に取り付けられている。ヘッド4は、クラウン7とソール9とを有する。ヘッド4は中空である。
【0019】
このヘッド4は、ウッド型ヘッドである。このヘッド4は例示であり、このヘッド4に代えて、ユーティリティ型ヘッド、ハイブリッド型ヘッド、アイアン型ヘッド及びパター型ヘッドが用いられうる。シャフト6は管状体である。シャフト6として、スチールシャフト及びいわゆるカーボンシャフトが例示される。
【0020】
ヘッド4は、いわゆるフェアウェイウッドである。フェアウェイウッドのリアルロフト角は、通常、12.5度以上29.0度以下である。フェアウェイウッドのヘッド体積は、通常、120cc以上220cc以下である。本発明においては、ヘッドの番手及びタイプは限定されない。ただし、ヘッド最大厚みThが比較的小さいヘッドが好ましい。この理由の詳細は後述される。
【0021】
ヘッド最大厚みThが比較的小さい他のヘッドとして、ユーティリティ型ヘッド又はハイブリッド型ヘッドが挙げられる。これらのタイプのヘッドでは、リアルロフト角は、通常、14.0度以上32.0度以下であり、ヘッド体積は、通常、100cc以上130cc以下である。
【0022】
図2は、ヘッド4のソール9側から見たゴルフクラブ2の斜視図である。ヘッド4は、ヘッド本体h1と、重量体着脱機構M1とを有する。
図3は、重量体着脱機構M1の分解斜視図である。重量体着脱機構M1は、ソケット10及び重量体12を備えている。更に重量体着脱機構M1は、底面形成部13を有している。ヘッド本体h1は、凹部14を備えている。凹部14は、開口部の一例である。凹部14は、外側に開口している。凹部14の形状は、ソケット10の形状(外形)に対応している。凹部14の内径は、ソケット10の外径と略等しい。凹部14の数は、重量体着脱機構M1の数と同じである。本実施形態では、2つの凹部14が設けられている。凹部14の数は、1であってもよいし、2であってもよいし、3以上であってもよい。
【0023】
底面形成部13は無くてもよい。また、凹部14の底部に貫通孔が設けられていても良い。また、凹部14に代えて、貫通孔が設けられても良い。
【0024】
図3が示すように、ソケット10は、介在部11と孔16とを有している。介在部11は、ソケット10の上部を構成している。介在部11は、ソケット10における最もソール面側の部分を構成している。介在部11は、孔16の開口面f1から、上側(ソール面側)に向かって延在している。介在部11は、円筒状である。介在部11の内面11aは円周面である。介在部11の外面11bは円周面である。
【0025】
ソケット10は、凹部14の内部に固定されている。この固定は、例えば、接着剤により達成される。重量体12は、ソケット10に着脱可能に取り付けられている。したがって、重量体12は、ヘッド4に対して着脱可能である。
【0026】
本実施形態では、重量体着脱機構M1が複数設けられている。ヘッド4では、2つの重量体着脱機構M1が設けられている。重量体着脱機構M1の数は限定されない。重量体着脱機構M1の位置は限定されない。
【0027】
図4は、ソケット10の斜視図である。
図4は、底面側から見た斜視図である。
図5は、上から順に、ソケット10の平面図、ソケット10の断面図及びソケット10の底面図である。
図5の断面図は、
図5の平面図のA−A線に沿った断面図である。
図6は、
図5の底面図の拡大図である。
【0028】
孔16は、第1孔部18と第2孔部20と、段差面22とを有する。ソケット10の側面24は、円筒面である。孔16は、ソケット10を貫通している。孔16は、ソケット10を貫通していなくてもよい。第1孔部18の内面は、その全体が滑らかに連続している。第2孔部20の内面は、その全体が滑らかに連続している。
【0029】
第1孔部18の断面形状(
図5の最も上側に記載された平面図における第1孔部18の形状)は、重量体12の係合部32の断面形状に略等しい。本実施形態では、第1孔部18の断面形状及び係合部32の断面形状は、略正方形である。これらの略正方形は、正方形の4つの角に丸みが付与された形状である。第2孔部20の挿入方向長さL1は、重量体12の係合部32の挿入方向長さL11に略等しいか、又は、長さL11よりも短いのが好ましい。
【0030】
なお、本願において、挿入方向とは、重量体12の挿入方向である。本実施形態では、この挿入方向は、重量体12の軸方向に一致している。本実施形態では、この挿入方向は、ソケット10の軸方向に一致している。
【0031】
好ましくは、ソケット10の材質は、ポリマーである。このポリマーは、比較的硬い。このポリマーは、重量体12を着脱する際に弾性変形しうる。この着脱のしくみについては、後述される。孔16の第2孔部20の構造についても、後述される。
【0032】
図7は、上から順に、重量体12の平面図、側面図及び底面図である。
図7に示されるように、重量体12は、頭部28、首部30及び係合部32を有する。首部30の形状は円柱である。頭部28の上端面の中央に、非円形孔34が形成されている。本実施形態では、非円形孔34の形状は、四角形である。この頭部28の外周面に複数の切欠36が形成されている。頭部28の外径D3は首部の外径D4より大きい。
【0033】
重量体12は、露出部E1を有する。本実施形態では、頭部28が露出部E1である。露出部E1は、単独では、重量体12の抜け止めに貢献しない。換言すれば、露出部E1単独では、抜け止めは達成されない。係合ポジションEPでは、露出部E1と係合部32とで、
図5に示す開口面f1及び段差面22が挟まれることにより、重量体12の挿入方向における移動が規制されている。
【0034】
露出部E1は、重量体12のうち最も外側(ソール面側)に位置する。装着状態において、露出部E1は外部に露出している。
【0035】
係合部32の断面は非円形である。本実施形態では、この断面は略正方形である。係合部32は孔16の第1孔部18を通り抜けることが可能である。この係合部32は、四角柱である。寸法c1は首部30の外径D4と同じにされている。寸法d1は、首部30の外径D4より大きくされている。係合部32の下端面に凹部が形成されてもよい。この凹部により形成される空間(後述される空間r1)の体積によって、重量体12の質量が調整されうる。寸法c1及び寸法d1については、後述される。
【0036】
係合部32は、突出部としての角部32aを備えている。角部32aは、上記挿入方向に対して垂直な方向(以下、軸垂直方向ともいう)に突出している。
【0037】
係合部32は、係合面33を有する。係合部32と首部30との断面形状の差に起因して、係合面33が形成されている。
【0038】
好ましくは、この重量体12の比重は、ソケット10の比重よりも大きい。耐久性及び比重の観点から、この重量体12の材質として、金属が好ましい。この金属として、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、タングステン合金、タングステンニッケル合金(W−Ni合金)等が例示される。チタン合金の一例は、6−4Ti(Ti−6Al−4V)である。ステンレス鋼の一例は、SUS304である。
【0039】
重量体の製造方法として、鍛造、鋳造、焼結、NC加工等が挙げられる。アルミニウム合金、6−4チタン及びSUS304の場合、鋳造後NC加工されるのが好ましい。W−Ni合金の場合、焼結又は鋳造の後、NC加工されるのが好ましい。NCとは、「Numerical Control」の略である。
【0040】
図8は、重量体着脱機構M1の非係合ポジションNPと係合ポジションEPとを示す図である。この
図8は、ソケット10に重量体12が挿入された状態の底面図である。この
図8では、底面形成部13は装着されていない。
【0041】
ソケット10と重量体12との相対関係として、非係合ポジションNPと係合ポジションEPとが採られうる。非係合ポジションNPでは、重量体12をソケット10から引き抜くことができる。これに対して係合ポジションEPでは、重量体12をソケット10から引き抜くことができない。重量体12をソケット10に挿入した時点では、ソケット10と重量体12との相対関係は、非係合ポジションNPである。相対角度θの回転によって、非係合ポジションNPから係合ポジションEPへと移行する。相対角度θの逆回転によって、係合ポジションEPから非係合ポジションNPへと戻る。この重量体着脱機構M1では、角度θの回転を与えるだけで、重量体12の着脱が可能である。重量体着脱機構M1は、着脱の容易性に優れる。
【0042】
本願では、重量体12が係合ポジションEPにある状態が、装着状態とも称される。装着状態において、露出部E1(頭部28)は、外部に露出している(
図2参照)。また、介在部11の端面11c(
図2及び
図3参照)は、外部に露出している。ただしこの介在部11の端面11cは、凹部14の外側に突出していない。
【0043】
本実施形態では、角度θが45°である。角度θは45°に限定されず、例えば、30°、60°等が例示される。
【0044】
この重量体着脱機構M1では、専用の工具が用いられうる。
図9は、この専用工具の一例としての、工具60を示す斜視図である。この工具60は、重量体12の着脱に使用される。この工具60は、柄62,軸64及び先端部66を備えている。柄62は、柄本体68と、把持部70とを有する。把持部70は、柄本体68から、工具60の回転軸に垂直に交差する方向に延びる。この把持部70は、把持部本体70aと、蓋体70bとを備えている。
【0045】
把持部本体70aに、軸64の後端部が固定されている。軸64の先端部66の断面は、重量体12の非円形孔34の形状に対応している。本実施形態では、先端部66の断面は四角形である。先端部66の側面にはピン72が突出している。ピン72は、先端部66に設けられている。図示されないが、先端部66には、弾性体(コイルばね)が内蔵されている。この弾性体の付勢力により、ピン72は、突出する向きに付勢されている。
【0046】
重量体12を着脱する際には、蓋体70bは、閉められている。把持部本体70aの内部には、重量体収容部(図示されず)が設けられている。好ましくは、この重量体収容部は、複数の重量体12を収容しうる。蓋体70bを開けることで、重量体12を取り出すことができる。
【0047】
図10は、重量体12の着脱方法の一例を説明するための図である。
図10(a)は重量体12が装着される前の状態である。
図10(b)は重量体12が挿入された直後の状態である。
図10(c)は重量体12が回転され、ソケット10に固定された状態である。
図10(a)、
図10(b)及び
図10(c)のそれぞれにおいて、右端に示されるのは、ソケット10の底面側から見た図である。
【0048】
重量体12の装着では、工具60の先端部66が、重量体12の非円形孔34に差し込まれる。この差し込みにより、ピン72は、退行しつつ、非円形孔34を押圧する。この押圧力により、重量体12は、先端部66から脱落しにくい。
図10(a)及び
図10(b)が示すように、工具60の軸64に保持された重量体12は、孔16に挿入される。
【0049】
図10(b)が示すように、重量体12の係合部32は、孔16の第1孔部18を通過して、第2孔部20に至る。この
図10(b)は、非係合ポジションNPを示す。この非係合ポジションNPでは、重量体12は孔16から引き抜かれうる。
【0050】
次に、角度θ(+θ)の相対回転がなされる。具体的には、工具60を用いて、重量体12を、ソケット10に対して、角度θ(+θ)だけ回転させる。この回転により、非係合ポジションNPから係合ポジションEPへの移行が達成される。
図10(c)は、係合ポジションEPを示す。係合ポジションEPにあるとき、重量体12はソケット10に固定される。係合ポジションEPにあるとき、重量体12が打撃によって外れることはない。
【0051】
重量体12を取り外すときは、角度θの逆回転がなされる。換言すれば、角度−θの回転がなされる。この回転により、係合ポジションEPから非係合ポジションNPへの移行が達成される。非係合ポジションNPにある重量体12は、容易に取り外されうる。
【0052】
係合ポジションEPでは、重量体12を孔16から引き抜くことはできない。なぜなら、係合ポジションEPにおいては、孔16の段差面22と重量体12の係合面33との係合により、重量体12の引き抜きが阻害されるからである。係合ポジションEPでは、重量体12の非円形孔34から、工具60が容易に引き抜かれうる。
【0053】
図5、
図8等が示すように、孔16の第2孔部20は、非係合ポジションNPでの係合部32に対応した面(非係合対応面)80と、係合ポジションEPでの係合部32に対応した面(係合対応面)82と、抵抗面84とを有する。抵抗面84は、非係合ポジションNPと係合ポジションEPとの間の相対回転の途中において、係合部32(の角部32a)によって押圧される。この押圧により、係合部32と第2孔部20との間に摩擦力が生じる。この押圧により、抵抗面84は弾性変形する。第2孔部20の材質が比較的硬いポリマーとされることで、摩擦力が大きくされる。この大きな摩擦力は、強い回転抵抗を生む。この回転抵抗により、非係合ポジションNPと係合ポジションEPとの相互移行には、強いトルクが必要となる。よって、この相互移行には、工具60が必要とされる。工具60を用いずに、素手によって相互移行を達成することはできない。打撃時の強い衝撃によっても、係合ポジションEPにある重量体12は外れない。
【0054】
このように、重量体着脱機構M1では、角度θの相対回転を行うだけで、重量体の着脱が可能である。
【0055】
着脱機構M1の数N1は限定されない。ヘッド重心位置の調整自由度の観点からは、数N1は、2以上が好ましい。
【0056】
[介在部]
上記装着状態において、介在部11は、露出部E1とヘッド本体h1との間の少なくとも一部に介在している。本実施形態では、介在部11が円筒状である。本実施形態では、介在部11は、露出部E1の周囲の全体に亘って存在する。よって、介在部11に起因する効果が高められている。なお介在部11は、露出部E1の周囲の一部のみに配置されていてもよい。
【0057】
上記装着状態において、介在部11は、重量体12に係合していない。上記装着状態において、介在部11は、露出部E1に係合していない。介在部11は重量体12に接触している場合であっても、介在部11に重量体12を係止する効果は無い。介在部11は、重量体12の固定を担っていない。
【0058】
打球による衝撃に起因して、重量体12は振動しうる。この振動の振幅は、露出部E1(頭部28)において大きくなりやすい。なぜなら、露出部E1は、介在部11とは係合しておらず、比較的動きやすい状態にあるからである。介在部11は、この露出部E1の振動を効果的に吸収しうる。振動しやすい部分(露出部E1)の振動が抑制されることで、衝撃吸収性が向上しうる。この衝撃吸収性は、打球フィーリングの向上に寄与しうる。介在部11により、打球フィーリングが向上しうる。介在部11は、重量体12の固定を担っていないため、変形しやすい。よって、介在部11により、振動吸収性が効果的に向上しうる。
【0059】
図11は、変形例の重量体120の断面図である。
図12は、重量体120が装着状態にあるときの、重量体着脱機構M2の断面図である。重量体着脱機構M2の原理は、重量体着脱機構M1と同じである。
【0060】
重量体着脱機構M2は、ソケット100及び重量体120を備えている。ヘッド本体h1は、凹部140を備えている。凹部140の形状は、ソケット100の形状(外形)に対応している。凹部140の内径は、ソケット100の外径と略等しい。ソケット100の外面は、凹部140の内面に接着されている。ソケット100の外周面100aは、凹部140の内周面140aに接着されている。
【0061】
図12が示すように、ソケット100は、介在部110を有している。介在部110は、ソケット100の上部を構成している。介在部110は、ソケット100における最もソール面側の部分を構成している。介在部110は、円筒状である。
【0062】
図11が示すように、重量体120は、頭部280、首部300及び係合部320を有する。首部300の形状は円柱である。頭部280の上端面の中央に、非円形孔340が形成されている。前述した非円形孔34と同様に、非円形孔340の断面形状(
図11のA−A線に沿った断面の形状)は、略四角形である。
【0063】
重量体120は、露出部E1を有する。本実施形態では、頭部280が露出部E1である。
【0064】
露出部E1は、重量体120のうち最も外側(ソール面側)に位置する。装着状態において、露出部E1は外部に露出している(
図12参照)。
【0065】
露出部E1(頭部280)とヘッド本体h1との隙間距離X1は、介在部の厚みB2と同一か、又は、厚みB2よりも大きい。即ち、X1≧B2である。なお、介在部の厚みB2は、ソケット100が単独で静置された自然状態において測定される。差(X1−B2)が小さければ、異物が入り込みにくい。この観点から、差(X1−B2)は、0.3mm以下が好ましく、0.2mm以下がより好ましい。一方、差(X1−B2)が過小であると、重量体の着脱の作業性が低下しうる。この観点から、差(X1−B2)は、0.05mm以上が好ましく、0.075mm以上がより好ましい。
【0066】
前述した重量体12と重量体120との間に、相違点がある。第一の相違点は、係合部320の上記長さL11である。係合部32と比較して、係合部320は、長さL11が短い。係合部32と比較して、係合部320は偏平である。この結果、重量体12と比較して、重量体120の全長Lwは短い。この重量体120の全長Lwは、上記挿入方向に沿った長さである。第二の相違点は、非円形孔340の内面に凹部340aが設けられていることである。この凹部340aは、工具60のピン72が突出するための空間を提供している。工具60の軸64が非円形孔340に挿入されると、凹部340aにおいてピン72が突出する。この突出により、ピン72が凹部340aと係合する。この係合により、軸64が非円形孔340から抜けにくくなる。よって、重量体120の着脱作業が円滑とされうる。
【0067】
図11が示すように、係合部320の内部に空間r1が設けられている。空間r1の体積を調整することで、重量体120の外形を変えることなく、重量体の重量W1を変化させることができる。また、重量体120の材質を変えることによっても、重量体120の外形を変えることなく、重量体の重量W1を変化させることができる。よって、重量W1が相違し且つ外形が同一である複数の重量体120を用意することが可能となる。よって、同一のソケット100に、重量W1が異なる重量体120を装着することができる。
【0068】
外観性の観点から、介在部110の端面110cは、重量体120の端面120cよりも外側に突出しないのが好ましい。
【0069】
図12において、重量体120は装着状態にある。この装着状態において、介在部110は、重量体120よりも外側(
図12における上側)に突出していない。この非突出により、外観性が向上しうる。この非突出により、ソール面における接地抵抗が抑制されうる。
【0070】
装着状態において、全長S1は深さHL以下(S1≦HL)である。介在部110は、凹部140の外側に突出していない。
図12が示すように、介在部110の端面110cは、凹部140の開口縁140bよりも挿入方向内側(
図12における下側)に位置する。この非突出により、外観性が向上しうる。この非突出により、ソール面における接地抵抗が抑制されうる。
【0071】
装着状態において、重量体120は、凹部140の外側に突出していない。
図12が示すように、重量体120の端面120cは、凹部140の開口縁140bよりも挿入方向内側(
図12における下側)に位置する。この非突出により、外観性が向上しうる。この非突出により、ソール面における接地抵抗が抑制され、重量体120が脱落しにくくなる。この非突出により、異物の付着が抑制されうる。
【0072】
図12の実施形態では、深さHL及び全長S1が抑制されつつ、凹部140とソケット100との接着面積が確保されている。よって、ソケット100の固着強度が高い。また、深さHLが抑制されているので、ヘッドの設計自由度が向上する。フェアウェイウッド、ユーティリティ型ヘッド、ハイブリッド型ヘッド等では、ヘッド最大厚みThが小さい。本実施形態は、深さHL及び全長S1が小さいため、ヘッド最大厚みThが小さいヘッドにも好ましく適用することができる。
【0073】
ドライバーと異なり、フェアウェイウッド、ユーティリティ型ヘッド、ハイブリッド型ヘッド等では、接地したボールを打球することが多い。よって、砂、土、芝等の異物が付着しやすい。
図12の実施形態では、介在部110の存在により、露出部E1と凹部140との間の隙間が少ない。よって、この隙間への異物の入り込みが抑制されている。
【0074】
図12において符号B1で示されるのは、介在部110の挿入方向長さである。長さB1が過小である場合、露出部E1(頭部280)とヘッド本体h1との間に隙間が生じやすい。この隙間には、泥、土、バンカーの砂、芝等の異物が入り込みうる。この異物は外観性を低下させる。また、長さB1が過小である場合、音鳴りが生じることがある。この音鳴りは、重量体120とヘッド本体h1との接触に起因する。更に、長さB1が過小である場合、ソケット100と凹部140との接着面積が少なくなる。これらの観点から、長さB1は、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、1.5mm以上が更に好ましい。長さB1が過大である場合、凹部140の深さHLが大きくなる。過大な深さHLは、ヘッドの設計自由度を低下させる。ヘッド高さが小さいヘッド(いわゆるシャローヘッド)では、深さHLに制約がある。また、長さB1が過大であると、介在部110が地面に接触しやすい。これらの観点から、長さB1は、5mm以下が好ましく、4.5mm以下がより好ましく、4mm以下がより好ましい。
【0075】
図12において符号B2で示されるのは、介在部110の厚みである。厚みB2が過小であると、成形性が低下する。また、厚みB2が過小であると、重量体を挿入する際に介在部110が変形しやすい。この変形により、重量体の挿入が円滑とならない場合がある。これらの観点から、厚みB2は0.4mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、0.6mm以上がより好ましい。ソケット100の重量が過大となると、重量体及びヘッドの設計自由度が制約されうる。この観点から、厚みB2は、1mm以下が好ましく、0.9mm以下がより好ましく、0.8mm以下がより好ましい。
【0076】
図12において符号B3で示されるのは、ソケット100の外径である。本実施形態では、ソケット100の外径は、介在部110の外径に略等しい。介在部の外径B3が過小であると、重量体の設計及び製造が困難となることがある。また介在部の外径B3が過小であると、ソケット100と凹部140との接着面積が減少する。これらの観点から、外径B3は、13mm以上が好ましく、13.5mm以上がより好ましく、14mm以上がより好ましい。凹部140の内径が過大である場合、ヘッドの設計自由度が制約される。また外径B3が過大である場合、ソケット100の成形性が低下することがある。これらの観点から、外径B3は、17mm以下が好ましく、16.5mm以下がより好ましく、16mm以下がより好ましい。
【0077】
図12において符号S1で示されるのは、ソケット100の挿入方向全長である。ヘッド本体h1との接着面積を増やす観点から、全長S1は、5mm以上が好ましく、6mm以上がより好ましい。全長S1が過大である場合、上記深さHLが過大となる。この場合、ヘッド本体h1の重心位置が高くなりやすい。また、全長S1が過大である場合、ソケット100の重量が過大となり、ヘッドの重心位置設計が制約されうる。これらの観点から、全長S1は、13mm以下が好ましく、12mm以下がより好ましい。
【0078】
図12の断面図には、クラウン7の一部が図示されている。このクラウン7は、ヘッド本体h1の一部である。図面のスペースを節約するため、
図12では、クラウン7とソール9との距離が実際よりも近い。
【0079】
図12において符号T1で示されるのは、クラウン7の内面7aとソケット100の底面100dとの最短距離である。ヘッド重心を下げる観点から、最短距離T1は、5mm以上が好ましい。上記全長S1及び上記全長Lwを大きくして重量体の体積を確保する観点から、最短距離T1は、15mm以下が好ましく、12mm以下がより好ましい。
【0080】
図1において両矢印Thで示されるのは、ヘッド最大厚みである。このヘッド最大厚みThは、基準状態において測定される。この基準状態とは、所定のライ角及びフェース角でヘッドが水平面hに載置された状態である。この基準状態において、クラウン外面と水平面hとの最大距離が、ヘッド最大厚みThである。この厚みThは、上記水平面hに対して垂直な方向に沿って測定される。ヘッド重量及びヘッド体積を適正とする観点から、ヘッド最大厚みThは35mm以上が好ましい。ヘッド重量及びヘッド体積を適正とする観点から、ヘッド最大厚みThは70mm以下が好ましく、55mm以下がより好ましく、45mm以下がより好ましい。
【0081】
上述の通り、本実施形態では、異物の付着が抑制されうる。重量体着脱機構が接地しやすい位置にあるとき、異物が付着しやすいため、異物付着の抑制効果が顕著に発揮される。この観点から、上記基準状態において、上記装着状態にある重量体120と上記水平面hとの最短距離Ds(図示されず)は、15mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、5mm以下がより好ましい。
【0082】
重量調整の効果を高める観点から、重量体の重量W1は、1g以上が好ましく、1.5g以上がより好ましく、2g以上がより好ましい。重量W1が過大である場合、重量体に大きな遠心力が作用する。この大きな遠心力は、ソケットへの負荷を増大させる。この観点から、重量体の重量W1は、15g以下が好ましく、14g以下がより好ましく、13g以下がより好ましい。
【0083】
[ソケットの硬度Hs]
重量体12の固定を確実とし、打撃時の音鳴りを抑制する観点から、ソケット10の硬度Hsは、D40以上が好ましく、D42以上がより好ましく、D45以上が更に好ましい。重量体12による摩耗を抑制する観点から、硬度Hsは、D80以下が好ましく、D78以下がより好ましく、D76以下がより好ましい。
【0084】
硬度Hsは、「ASTM−D 2240−68」の規定に準拠して、自動ゴム硬度測定装置(高分子計器社の商品名「P1」)に取り付けられたショアD型硬度計によって測定される。測定サンプルの形状は、一辺の長さが3mmの立方体とされる。測定は、23℃の温度下でなされる。可能であれば、測定サンプルは、ソケット10から切り出される。切り出しが困難である場合、ソケット10の樹脂組成物と同一の樹脂組成物からなる測定サンプルが用いられる。
【0085】
ゴルフクラブ2によってボールが打撃されると、ゴルフクラブ2を介して、ゴルファーの手に打撃振動が伝えられる。この打撃振動の振動エネルギーは、ソケット100に収容された重量体120の運動エネルギーに変換される。このソケット100及び重量体120は、シャフト6の振動エネルギーを重量体120の運動エネルギーに変換することで、打撃振動を緩和しうる。更に、介在部110により、重量体120の露出部E1の振動が吸収されるため、振動吸収性が効果的に向上している。
【0086】
[ポリマー]
硬度の観点から、ソケットの材質としては、ポリマーが好ましい。このポリマーとして、熱硬化性ポリマー及び熱可塑性ポリマーが例示される。熱硬化性ポリマーとして、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、熱硬化性ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド及び熱硬化性エラストマーが例示される。熱可塑性ポリマーとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド及び熱可塑性エラストマーが例示される。
【0087】
熱可塑性エラストマーとして、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリスチレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー及び熱可塑性ポリウレタンエラストマーが例示される。
【0088】
耐久性の観点からは、ウレタン系ポリマー及びポリアミドが好ましく、ウレタン系ポリマーがより好ましい。ウレタン系ポリマーとして、ポリウレタン及び熱可塑性ポリウレタンエラストマーが例示される。ウレタン系ポリマーは、熱可塑性であってもよく、熱硬化性であってもよい。成形性の観点からは、熱可塑性のウレタン系ポリマーが好ましく、熱可塑性ポリウレタンエラストマーがより好ましい。
【0089】
成形性の観点からは、熱可塑性ポリマーが好ましい。硬度及び耐久性の観点から、この熱可塑性ポリマーの中では、ポリアミド及び熱可塑性ポリウレタンエラストマーが好ましく、熱可塑性ポリウレタンエラストマーがより好ましい。
【0090】
ポリアミドとして、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12及びナイロン66が例示される。
【0091】
好ましい熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ハードセグメントとしてのポリウレタン成分と、ソフトセグメントとしてのポリエステル成分又はポリエーテル成分とを含む。即ち、好ましい熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)として、ポリエステル系TPUと、ポリエーテル系TPUとが挙げられる。ポリウレタン成分の硬化剤としては、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートが例示される。
【0092】
脂環式ジイソシアネートとしては、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びトランス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)が例示される。
【0093】
芳香族ジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトルエンジイソシアネート(TDI)が例示される。脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が例示される。
【0094】
市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)として、BASFジャパン社の商品名「エラストラン」が例示される。
【0095】
ポリエステル系TPUの具体例として、「エラストランC70A」、「エラストランC80A」、「エラストランC85A」、「エラストランC90A」、「エラストランC95A」、「エラストランC64D」等が挙げられる。
【0096】
ポリエーテル系TPUの具体例として、「エラストラン1164D」、「エラストラン1198A」、「エラストラン1180A」、「エラストラン1188A」、「エラストラン1190A」、「エラストラン1195A」、「エラストラン1174D」、「エラストラン1154D」、「エラストランET385」等が挙げられる。
【0097】
なお、上記各ポリマーをマトリックスとする繊維強化樹脂が用いられても良い。
【0098】
[寸法c1]
図7において両矢印c1で示されるのは、係合部32の対向面間距離である。この寸法c1は、係合部32の断面に存在する角の丸みを解消して得られる正方形の辺の長さに等しい。
【0099】
[寸法d1]
図7において両矢印d1で示されるのは、係合部32の最長断面寸法である。本実施形態では、寸法d1は、係合部32の断面(略正方形)の対角線の長さである。この寸法d1は、係合部32の最長横断線Lm(
図7参照)の長さである。
図7において符号p1で示されるのは、最長横断線Lmの両端点である。これらの点p1は、係合部32の断面における頂点である。
【0100】
[寸法F1]
図6において破線両矢印F1で示されるのは、互いに対向する抵抗面84同士の対向面間距離である。この寸法F1は、上記相対回転において弾性変形が最大となる位置で、測定される。この寸法F1は、上記相対回転において必要とされるトルクの最大値と相関する。
【0101】
[寸法K1]
図6において両矢印K1で示されるのは、孔16の第1孔部18の開口幅である。この寸法K1は、第1孔部18の断面に存在する角の丸みを解消して得られる正方形の辺の長さに等しい。
【0102】
[寸法G1]
図6において両矢印G1で示されるのは、係合ポジションEPにおいて上記最長横断線Lmの両端点p1が接する位置における、第2孔部20の横断長さである。
【0103】
[寸法H1]
図6において一点鎖線両矢印H1で示されるのは、第2孔部20の最短横断線Lhの長さである。この最短横断線Lhの両端点p2は、係合対応面82と非係合対応面80との境界点である。
【0104】
[F1/d1]
重量体12の着脱時におけるソケット内面の削れを抑制する観点から、比(F1/d1)は、0.935以上が好ましく、0.940以上がより好ましく、0.945以上が更に好ましい。重量体12の固定を確実とし、打撃時の音鳴りを抑制する観点から、比(F1/d1)は、0.965以下が好ましく、0.960以下がより好ましく、0.955以下が更に好ましい。
【0105】
上記相対回転の途中において、抵抗面84の変形量が最大となる。この最大変形量が大きいほど、比(F1/d1)は小さい。
【0106】
[G1/d1]
重量体12の着脱時におけるソケット内面の削れを抑制する観点から、比(G1/d1)は、0.987以上が好ましく、0.989以上がより好ましく、0.991以上が更に好ましい。重量体12の固定を確実とし、打撃時の音鳴りを抑制する観点から、比(G1/d1)は、0.996以下が好ましく、0.995以下がより好ましく、0.994以下が更に好ましい。
【0107】
[K1−c1]
差(K1−c1)が過度に小さい場合、重量体12の引き抜きの際に引っかかりが生じやすい。よって、着脱の円滑性が阻害されうる。非係合ポジションNPにおける重量体12の引き抜きを容易とする観点から、差(K1−c1)は、0.3mm以上が好ましく、0.35mm以上がより好ましく、0.4mm以上が更に好ましい。
【0108】
上記実施形態では、第2孔部20の内面の一部は、第1孔部18の内面と面一とされており、この面一部分が、非係合対応面80とされている。このような孔16の設計では、この差(K1−c1)が過大である場合に、寸法F1及び/又は寸法G1が大きくなりやすい。この場合、重量体12の保持力が低下する。この観点から、差(K1−c1)は、0.6mm以下が好ましく、0.55mm以下がより好ましく、0.5mm以下が更に好ましい。
【0109】
[H1/d1]
比(H1/d1)が小さすぎる場合、寸法G1及び/又は寸法F1も小さくなりやすい。この場合、第2孔部20の内面の削れが生じやすい。この観点から、比(H1/d1)は、0.785以上が好ましく、0.810以上がより好ましく、0.840以上が更に好ましい。
【0110】
非係合ポジションNPから係合ポジションEPへの移行においてトルクが強すぎる場合、重量体12の過回転が生じうる。この過回転により、係合ポジションEPへの移行を意図しているにも関わらず、係合ポジションEPを通過して非係合ポジションNPに至ってしまうことがある。寸法H1が小さくされることで、重量体12の過回転が抑制される。過回転を抑制する観点から、比(H1/d1)は、0.915以下が好ましく、0.890以下がより好ましく、0.870以下が更に好ましい。
【0111】
40℃の環境下において、着脱時に必要な最大トルク(N・m)がT40とされる。25℃の環境下において、着脱時に必要な最大トルク(N・m)がT25とされる。5℃の環境下において、着脱時に必要な最大トルク(N・m)がT5とされる。気温に関わらず円滑な着脱を可能とする観点から、比(T40/T5)は、0.30以上が好ましく、0.35以上がより好ましく、0.40以上が更に好ましく、0.41以上が更に好ましい。
【0112】
気温に関わらず円滑な着脱を可能とする観点から、比(T25/T5)は、0.57以上が好ましく、0.60以上がより好ましく、0.61以上が更に好ましい。前述の通り、比(T40/T5)と同様、比(T25/T5)は1以下となると考えられる。
【0113】
低温における円滑な着脱を可能とする観点から、T5は、6.3(N・m)以下が好ましく、6.0(N・m)以下がより好ましく、5.5(N・m)以下が更に好ましく、5.0(N・m)以下が更に好ましい。
【0114】
高温における固定を確実とする観点から、T40は、1.0(N・m)以上が好ましく、1.5(N・m)以上がより好ましく、1.8(N・m)以上がより好ましい。
【実施例】
【0115】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0116】
[ヘッド本体の作製]
マレージング鋼を用いて、中空のヘッド本体を作製した。このヘッド本体は、フェース部材とボディ部材とを溶接することにより得た。フェース部材は、圧延材をプレス加工することによって得られた。ボディ部材は、ロストワックス精密鋳造によって得られた。ボディ素材の材質として、カーペンター社製の商品名「CUSTOM450」が用いられたこのヘッド本体に、凹部が設けられた。それぞれのソケットに対応する凹部が形成された。凹部の内径は、ソケットの外径B3と実質的に同一とされた。凹部は、ソールの後方に設けられた。凹部は、1箇所のみ設けられた。このヘッドは、フェアウエイウッドとされた。このヘッドは、リアルロフト角が15度とされ、ヘッド体積が150ccとされ、ヘッド最大厚みThが35.5mmとされた。後述される各テストに対応するように、凹部の寸法が調整された。
【0117】
[ソケットの作製]
図12に示される形状のソケットが作製された。このソケットは、射出成形により得た。ソケットの材質として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが用いられた。この熱可塑性ポリウレタンエラストマーとして、「エラストラン1164D」、「エラストラン1198A」、「エラストラン1174D」及び「エラストラン1154D」からなる群から選択される1種又は2種以上が用いられた。ソケットの硬度Hsを調整するため、必要に応じて、これらのエラストマーがブレンドされた。成形条件は、冷却時間が50秒とされ、圧力が22%とされた。
【0118】
[重量体の作製]
重量体の材質として、タングステンニッケル合金(W−Ni合金)が用いられた。このW−Ni合金を粉末焼結により成形して、重量体を得た。
【0119】
なお、ヘッド本体の凹部とソケットとの接着には、住友スリーエム社製の商品名「DP460」が用いられた。
【0120】
[テスト1]
テスト1は、後述されるテスト2及びテスト3の結果を含む総合評価である。表1には、8行8列のマトリックスにより、64種類のソケットサンプルの評価結果が示されている。例えば、このマトリックスのうち、最も左側且つ最も上側に位置するソケットサンプルは、介在部の厚みB2が0.2mmであり、ソケットの外径B3が10mmであり、その評価が「1」である。
【0121】
これら64種類のソケットでは、全長S1は一定とされた。
【0122】
64種類のソケットのそれぞれについて、評価がなされた。この評価は1点から5点までの5段階評価とされた。点数が多いほど評価が高い。この評価では、次の点が総合的に評価された。
(1a)重量体の設計及び製造の容易性。
(1b)ソケットと凹部との接着面積(ソケットの表面積)
(1c)ヘッドの設計自由度
(1d)ソケットの成形性
これら64種のソケットサンプルの評価が、表1に示される。
【0123】
[テスト2]
テスト2の仕様及び評価結果が下記の表2に示される。ソケットのサンプル2−1から2−8が作製された。これらのサンプルでは、介在部の厚みB2が変更された。介在部の厚みB2を変更するために、外径B3も変更された。各サンプルについて、評価がなされた。この評価は1点から5点までの5段階評価とされた。点数が多いほど評価が高い。評価項目は次の通りとされた。
(2a)ソケットの重量
(2b)介在部の成形性
(2c)介在部の耐久性
これら3種の評価点の合計が、「総合点」として表2に示される。
【0124】
なお、評価項目(2a)については、ソケットが軽いほど評価が高い。ソケットが軽いほど、重量体及びヘッドにおける重量設定の自由度が高まり、重心位置の設計が容易となる。評価項目(2b)については、介在部が薄いほど成形性が低下した。
【0125】
[テスト3]
テスト3の仕様及び評価結果が下記の表3に示される。ソケットのサンプル3−1から3−8が作製された。これらのサンプルでは、ソケットの外径B3が変更された。介在部の厚みB2は一定とされた。各サンプルについて、評価がなされた。これらの評価は1点から5点までの5段階評価とされた。点数が多いほど評価が高い。評価項目は次の通りとされた。
(3a)ソケットの重量
(3b)ソケットの成形性
(3c)ソケットとヘッド本体との接着面積(ソケットの外面の面積)
(3d)ヘッド本体h1の凹部の成形性
(3e)重量体の重量W1の設計自由度
これら5種の評価点の合計が、「総合点」として表3に示される。
【0126】
なお、評価(3d)について、ヘッド本体h1の凹部の内径が過大となると、湯流れが悪くなり、鋳造不良が生じやすいことが判明した。この鋳造不良は、主として、巣(鋳巣)の発生であった。また、曲面であるソールに円柱状の凹部を形成することは、その凹部の直径が大きくなるほど困難であった。
【0127】
[テスト4]
テスト4の仕様及び評価結果が下記の表4に示される。ソケットのサンプル4−1から4−8が作製された。これらのサンプルでは、介在部の挿入方向長さB1が変更された。このテスト4のヘッドでは、介在部の起点から凹部開口縁までの挿入方向距離Y1(
図12参照)が3.35mmとされ、重量体の端面から凹部開口縁までの挿入方向距離Y2(
図12参照)が0.5mmとされた。各サンプルについて、評価がなされた。これらの評価は1点から5点までの5段階評価とされた。点数が多いほど評価が高い。評価項目は次の通りとされた。
(4a)異物の付着
(4b)音鳴り
(4c)凹部の設計自由度
(4d)ソケットの重量
(4e)外観
(4f)ソケットと凹部との接着面積(ソケットの表面積)
これら6種の評価点の合計が、「総合点」として表4に示される。
【0128】
評価(4a)及び評価(4b)については、ゴルフクラブによって評価された。ヘッド本体の凹部にサンプルソケットを接着してヘッドを作製し、このソケットに重量体を装着し、このヘッドを用いてゴルフクラブを作製した。このゴルフクラブで、芝の上に置かれたボールを実際に打球して評価を行った。
【0129】
なお、評価(4d)について、長さB1が長いほど、凹部を深くする必要が生じるため、凹部の設計自由度が低下する。深い凹部は、ヘッド最大厚みThが小さいヘッドにおいて、設計上の障害となる。
【0130】
[テスト5]
テスト5の仕様及び評価結果が下記の表5に示される。ソケットのサンプル5−1から5−6が作製された。これらのサンプルでは、ソケットの挿入方向全長S1が変更された。各サンプルについて、評価がなされた。これらの評価は1点から5点までの5段階評価とされた。点数が多いほど評価が高い。評価項目は次の通りとされた。
(5a)ヘッド重心の高さ
(5b)ソケットの重量
(5c)ソケットとヘッド本体との接着面積(ソケットの外面の面積)
(5d)凹部の設計自由度
(5e)重量体の重量W1の設計自由度
これら5種の評価点の合計が、「総合点」として表5に示される。
【0131】
なお、評価(5a)について、全長S1が長いほど、凹部が深くなり、ヘッド重心が高くなりやすい。ヘッド重心を下げるためには、全長S1が短いのが好ましい。この観点から、全長S1が短いほど、項目(5a)の評価が高い。
【0132】
[テスト6]
テスト6の仕様及び評価結果が下記の表6に示される。ソケットのサンプル6−1から6−8が作製された。これらのサンプルでは、ソケットの硬度Hsが変更された。各サンプルについて、評価がなされた。これらの評価は1点から5点までの5段階評価とされた。点数が多いほど評価が高い。評価項目は次の通りとされた。
(6a)固定安定性
(6b)耐摩耗性
これら2種の評価点の合計が、「総合点」として表5に示される。
【0133】
なお、評価(6b)について、ソケットの硬度Hsが小さいほど、非係合ポジションNPと係合ポジションEPとの相互移行に伴う摩耗が抑制される。このため、ソケットの硬度Hsが小さいほど、項目(6b)の評価が高い。
【0134】
[テスト7]
テスト7の仕様及び評価結果が下記の表7に示される。ゴルフクラブのサンプル7−1から7−8が作製された。これらのサンプルでは、介在部の挿入方向長さB1が変更された。各サンプルについて、評価がなされた。これらの評価は1点から5点までの5段階評価とされた。点数が多いほど評価が高い。評価項目は、振動吸収性とされた。
【0135】
このテスト7においては、全てのサンプルに、同一の重量体が装着された。重量体の頭部と凹部との隙間距離X1(
図12参照)は、介在部の厚みB2と同じとされた。
【0136】
この振動吸収性は、ゴルフクラブによって評価された。この評価は、官能評価である。上記ヘッド本体の凹部にサンプルソケットを接着してヘッドを作製し、このソケットに重量体を装着し、このヘッドを用いてゴルフクラブを作製した。シャフトとして、ダンロップスポーツ株式会社製の商品名「Miyazaki Kusala」が用いられた。このゴルフクラブで、芝の上に置かれたボールを実際に打球して評価を行った。ハンデキャップが10以下である10名のゴルファーが打球を行い、振動吸収性を評価した。10名の評価点の平均点(小数点以下は四捨五入)が、表7に示される。
【0137】
[テスト8]
テスト8の仕様及び評価結果が下記の表8に示される。ゴルフクラブのサンプル8−1から8−8が作製された。これらのサンプルでは、介在部の厚みB2が変更された。各サンプルについて、評価がなされた。これらの評価は1点から5点までの5段階評価とされた。点数が多いほど評価が高い。評価項目は、振動吸収性とされた。
【0138】
このテスト8においては、重量体の頭部の直径を調整することにより、隙間距離X1と介在部の厚みB2とが同一とされた。頭部の重量の相違を空間r1の体積によって相殺し、重量体の重量W1を一定とした。頭部の直径を除き、外形が共通した重量体が用いられた。ソケットの外径B3は一定として、厚みB2を変化させた。
【0139】
この振動吸収性は、ゴルフクラブによって評価された。この評価は、官能評価である。上記ヘッド本体の凹部にサンプルソケットを接着してヘッドを作製し、このソケットに重量体を装着し、このヘッドを用いてゴルフクラブを作製した。テスト7と同じシャフトが用いられた。このゴルフクラブで、芝の上に置かれたボールを実際に打球して評価を行った。上述の10名のゴルファーが打球を行い、振動吸収性を評価した。10名の評価点の平均点(小数点以下は四捨五入)が、表8に示される。
【0140】
【表1】
【0141】
【表2】
【0142】
【表3】
【0143】
【表4】
【0144】
【表5】
【0145】
【表6】
【0146】
【表7】
【0147】
【表8】
【0148】
表1から表8に示されるように、本発明の優位性は明らかである。