(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の骨補填材の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
まず、本発明の骨補填材の製造方法を説明するのに先立って、本発明の骨補填材の製造方法を用いて製造された骨補填材について説明する。
【0025】
なお、以下では、骨補填材が、セラミックス多孔質顆粒と、このセラミックス多孔質顆粒よりも粒径が小さいセラミックス多孔質粒子とを含む焼結体で構成される場合を一例に説明する。すなわち、セラミックス多孔質顆粒(セラミックス顆粒)と、セラミックス多孔質粒子(セラミックス粒子)とがともに多孔質体で構成される場合を一例に説明する。
【0026】
<骨補填材>
図1は、本発明の骨補填材の製造方法を用いて製造された骨補填材の一例を示す光学顕微鏡写真である。
【0027】
図1に示す骨補填材は、全体形状が円柱状をなす中実体であり、セラミックス多孔質顆粒同士が、このセラミックス多孔質顆粒よりも粒径が小さいセラミックス多孔質粒子により結合された焼結体で構成される。
【0028】
かかる構成の骨補填材において、セラミックス多孔質顆粒は、その形状を維持した状態で互いに接合しており、セラミックス多孔質顆粒同士の接合強度が崩壊時に、セラミックス多孔質顆粒の形状を保持する程度となっている。
【0029】
換言すれば、骨補填材は、セラミックス多孔質顆粒の形状を維持した状態で、セラミックス多孔質顆粒が互いに接合しているものであり、その崩壊時における圧縮強度は、人の指による圧迫や、ネジ穴へのネジの螺入により生じる押圧力により容易に崩壊し得るように、セラミックス多孔質顆粒の形状を保持し得る大きさ程度となっている。
【0030】
また、その圧縮強度は、具体的には、特に限定されないが、好ましくは0.2〜2.7kgf程度に設定され、より好ましくは1.0〜1.8kgf程度に設定される。骨補填材は、寸法や形状は問わず、上記範囲の負荷を加えた際に崩壊するものであるのが好ましい。
【0031】
骨補填材をかかる構成のものとすることで、骨補填材の保存時や輸送時に、骨補填材が崩壊してしまうのを確実に防止するとともに、術時は適度な押圧力で容易に崩壊することができる。
【0032】
これに対し、この骨補填材を固定用のネジを骨に螺入して固定する際の補助部材(固定素子)として用いる場合、予め作製したネジ穴中に、骨補填材を入れておき、このネジ穴にネジを螺入(挿入)することにより、押圧力が生じ、これに起因して骨補填材がセラミックス多孔質顆粒の形状に崩壊する。その結果、ネジ穴とネジとの間にセラミックス多孔質顆粒が介在することとなるため、ネジの固定力(アンカー力)が増大する。
【0033】
なお、このような円柱状をなす骨補填材において、その長さ、および、底面の直径の各寸法は、補填すべきネジ穴等の大きさや、症例に応じて適宜決定されるが、概ね、以下に示すような範囲内に設定される。
【0034】
すなわち、長さは、好ましくは5〜50mm程度、より好ましくは10〜30mm程度に設定される。また、底面の直径は、好ましくは1〜15mm程度、より好ましくは3〜8mm程度に設定される。このような大きさ(サイズ)の骨補填材であっても、押圧力で容易に崩壊し、崩壊時には顆粒自体の形状を保持する程度の強度で結合している焼結体として機能する。なお、骨補填材の形状は円柱状に限らず、直方体形状や立方体形状等であってもよい。
【0035】
セラミックス多孔質顆粒(以下、単に「顆粒」と言うこともある。)は、骨補填材の主材料として含まれ、骨補填材の崩壊時には、その形状を維持するものである。
【0036】
この顆粒の粒径は、顆粒状をなす骨補填材の範疇に属する程度の大きさであればよく、通常、好ましくは100μm以上、より好ましくは100〜1400μm程度である。粒子の粒径をかかる範囲内に設定することにより、骨補填材が崩壊した際に、この顆粒に、顆粒状をなす骨補填材としての機能を確実に発揮させることができる。
【0037】
また、このような顆粒は、特に限定されないが、優れた生体親和性を備えているリン酸カルシウム系化合物で構成されるのが好ましい。
【0038】
リン酸カルシウム系化合物としては、例えば、ハイドロキシアパタイト(HAP)、フッ素アパタイト、炭酸アパタイト等のアパタイト類、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム(TCP)、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのリン酸カルシウム系化合物のなかでもCa/P比が1.0〜2.0のものが好ましく、1.5〜2.0のものがより好ましく用いられる。
【0039】
また、顆粒は、多孔質体であれば、いかなる構成のものであってもよいが、リン酸カルシウム系化合物で構成される一次粒子の造粒体からなる球状二次粒子の集合体で構成されているのが好ましい。これにより、より均一な気孔を備える多孔質体とすることができる。
【0040】
このような顆粒は、骨補填材の主材料として用いられるため、顆粒状(不定形状)をなすものが好ましく用いられるが、その他、立方体、直方体、球状、円柱およびスティック状等の形状であってもよい。
【0041】
セラミックス多孔質粒子(以下、単に「粒子」と言うこともある。)は、セラミックス多孔質顆粒よりも粒径が小さく、骨補填材の崩壊前に、顆粒同士の間に介在してこれらを接合するためのものである。
【0042】
このような粒子を含む構成とすることで、骨補填材の製造方法の焼結工程において、顆粒と比較して容易に焼結するため、粒子が焼結する際に顆粒同士の接合に寄与することとなる。
【0043】
この粒子の粒径は、顆粒よりも小さければよく、例えば、好ましくは1〜40μm程度、より好ましくは10〜30μm程度に設定される。粒子の粒径をかかる範囲内に設定することにより、顆粒同士が結合するのを補助する補助効果、すなわち、バインダー効果を確実に発揮させることができる。
【0044】
また、このような粒子は、顆粒と同様に好ましくはリン酸カルシウム系化合物で構成され、リン酸カルシウム系化合物の具体例としては、例えば、顆粒で挙げたのと同様のものを用いることができる。
【0045】
さらに、粒子は、いかなる構成のものであってもよいが、リン酸カルシウム系化合物で構成される一次粒子の造粒体からなる球状二次粒子、またはこの球状二次粒子を粉砕した粉砕二次粒子で構成されているのが好ましい。これにより、骨補填材において、より確実に粒子同士を連結することができる。
【0046】
また、粒子の形状は、特に限定されないが、顆粒と同様に、顆粒状(その表面に凹凸を備える不定形状)をなすものが好ましく用いられる。
【0047】
なお、骨補填材において、顆粒と粒子との混合比は、重量比で1:0.1〜1:1程度であるのが好ましく、1:0.3〜1:0.7程度であるのがより好ましい。粒子の割合が前記下限より少なくなると、粒子を添加することにより得られるバインダー効果が十分に発揮されないおそれがあり、また、上記上限を超えると顆粒の焼結強度が強くなり、崩壊時に顆粒の形状を維持できなくなるおそれがある。
【0048】
なお、上述した「圧縮強度」は、具体的には、長さ15〜30mm、底面の直径2〜9mmの骨補填材(サンプル)を用意して平坦な台に置き、プッシュプルゲージ装置(今田製作所製、「508018」)を用いて、圧縮破壊することにより求めることができる。
【0049】
以上のような骨補填材は、次のような骨補填材の製造方法(本発明の骨補填材の製造方法)により製造することができる。
【0050】
なお、以下に示す骨補填材の製造方法では、セラミックス多孔質顆粒とセラミックス多孔質粒子との双方が、リン酸カルシウム系化合物で構成される場合を一例に説明する。
【0051】
この骨補填材の製造方法は、セラミックス多孔質粒子と水溶性高分子化合物とを含有するスラリーと、セラミックス多孔質顆粒とを混合して混合スラリーを得る混合工程と、この混合スラリーを焼結して骨補填材を得る焼結工程とを有している。
以下、これらの工程について、順次説明する。
【0052】
[A]まず、セラミックス多孔質粒子と水溶性高分子化合物とを含有するスラリーと、セラミックス多孔質顆粒とを混合して混合スラリーを得る(混合工程)。
【0053】
なお、本工程[A]では、形成すべき骨補填材の形状に対応した中空部を有する型中において、前記混合スラリーを得る場合について説明する。
【0054】
[A−1]まず、セラミックス多孔質顆粒と、セラミックス多孔質粒子とをそれぞれ用意する。
【0055】
これら顆粒および粒子は、本実施形態では、それぞれ、二次粒子の集合体および二次粒子で構成され、これらがともにハイドロキシアパタイト(HAP)で構成される場合、例えば、次のようにして製造される。
【0056】
すなわち、まず、水酸化カルシウム、酸化カルシウムのようなカルシウムを含むカルシウム源(カルシウム系化合物)を含有する第1の液体に、リン酸を含有する第2の液体を滴下することで、カルシウム源とリン酸とを反応させることにより、ハイドロキシアパタイトの一次粒子を得る(第1の工程)。
【0057】
次に、このハイドロキシアパタイトの一次粒子と、その凝集体とを含有するスラリーを乾燥することにより、これら一次粒子および凝集体を造粒させて、ハイドロキシアパタイトの二次粒子で構成される粉体(乾燥粉体)を得る(第2の工程)。かかる第1の工程および第2の工程を経ることで、まずセラミックス多孔質粒子が製造される。得られたセラミックス多孔質粒子を目的の大きさの粒径のものとするために分級してもよい。
【0058】
次に、このハイドロキシアパタイトの二次粒子と、後述する水溶性高分子化合物とを含有するスラリーを調製し、このスラリーを乾燥することにより、二次粒子の集合体を得る。更に、得られた二次粒子の集合体を粉砕した後、仮焼きする(第3の工程)。かかる第1の工程〜第3の工程を経ることで、セラミックス多孔質顆粒が製造される。
【0059】
なお、上記のようにして得られたセラミックス多孔質顆粒およびセラミックス多孔質粒子を、目的とする大きさの粒径のものとするために、それぞれ、第3の工程および第2の工程の後に、得られた顆粒および粒子を分級するようにしてもよい。
【0060】
ここで、本発明の骨補填材の製造方法では、第3の工程において、セラミックス多孔質顆粒を得る際に、二次粒子の集合体(スラリーの乾燥体)を粉砕したものを仮焼きしているが、その仮焼き時の温度が、200℃以上、800℃未満に設定される。すなわち、後工程[A−3]において混合スラリーを得るのに先立って、セラミックス多孔質顆粒を仮焼きする構成とし、この仮焼きの際の温度を200℃以上、800℃未満に設定する。仮焼き温度が200℃より低温であると、得られる焼結体(骨補填材)において顆粒と粒子との結合力が強くなり、その結果、容易に崩壊させることが困難となる。また、800℃以上であると、焼結体(骨補填材)において顆粒と粒子との結合力が弱くなり、その結果、移動時等に容易に崩壊してしまうという問題が生じる。
【0061】
なお、この仮焼き時の温度は、200℃以上、800℃未満であればよいが、300℃以上、750℃以下であるのが好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
【0062】
さらに、顆粒を得るために用いられる二次粒子は、第3の工程に先立って、仮焼きされているのが好ましく、この仮焼き時の温度が、好ましくは200℃以上、800℃未満に設定され、より好ましくは300℃以上、750℃以下に設定される。このように、二次粒子の状態で仮焼きすることで、セラミックス多孔質顆粒を構成する二次粒子をより確実に仮焼きすることができるため、押圧力の付与時には崩壊し、かつ移動時には崩壊しないものにより確実にすることができる。顆粒を得るために用いられる二次粒子は、仮焼きされていなくてもよい。
【0063】
また、この第3の工程に先立つ仮焼き時の温度は、二次粒子の集合体(スラリーの乾燥体)を粉砕したものの仮焼き時の温度との温度差が小さいのが好ましく、具体的には、この温度差が0℃以上、1000℃以下であるのが好ましく、0℃以上、300℃以下であるのがより好ましく、0℃以上、100℃以下であるのが更に好ましい。また、第3の工程に先立つ仮焼き時の温度は、二次粒子の集合体を粉砕したものの仮焼き時の温度よりも低いことが好ましい。これにより、焼結体(骨補填材)の表面に形成される凹凸を小さくすることができる。そのため、骨補填材をネジ穴(骨欠損部)に挿入する際に、ネジ穴に凹凸が引っ掛かることなく挿入することができ、挿入時の操作性が向上する。また、大きな凹凸は、挿入時に、自家骨と干渉して、骨補填材の欠けの原因となり、ネジ穴以外の領域に脱落するおそれがあるが、凹凸が小さくなることで、かかる問題点も解消される。
【0064】
これに対して、粒子とする二次粒子は、仮焼きされているものであっても、仮焼きされていないものであってもよいが、仮焼きされているのが好ましい。また、その仮焼きの温度は、好ましくは200℃以上、800℃未満に設定され、より好ましくは300℃以上、750℃以下に設定される。これにより、顆粒同士を結合するバインダーとしての機能が適切に発揮され、得られる骨補填材の圧縮強度をより確実に前述した範囲内に設定することができる。
【0065】
[A−2]次いで、粒子と水溶性高分子化合物とを含有するスラリーを調製する。
このスラリーは、例えば、この粒子を、水溶性高分子化合物を含有する液状材料中に分散させることにより得ることができる。
【0066】
水溶性高分子化合物は、スラリー中において粒子を分散させるための分散剤として機能するとともに、混合スラリーを加熱することによりゲル化し、この混合スラリーを乾燥(加熱)することにより得られる乾燥体においてバインダーとして機能するものである。
【0067】
このような水溶性高分子化合物としては、例えば、メチルセルロース等のセルロース誘導体、カードラン等の多糖類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の合成重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、セルロース誘導体が好ましい。これにより、混合スラリーの加熱によるゲル化をより確実に行うことができる。
【0068】
なお、液状材料は、水溶性高分子化合物が溶解または分散する溶液または分散液のいずれであってもよい。すなわち、溶液、コロイド溶液、エマルジョンおよび懸濁液のいずれであってもよい。また、水溶性高分子化合物を溶解または分散させるための溶媒または分散媒としては、特に限定されず、例えば、水、あるいはエタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール等が挙げられる。
【0069】
また、スラリーにおける、粒子と、水溶性高分子化合物を含む液状材料(液性成分)との混合重量比は、1:1〜10:1の範囲とすることが好ましく、1.5:1〜3.0:1の範囲とすることがより好ましい。かかる範囲内に混合重量比を設定することにより、スラリーを優れた流動性を有するものとすることができるため、次工程[A−3]において、セラミックス多孔質顆粒同士の間にスラリーを確実に浸入させることができるようになる。また、スラリー中において、粒子をより均一に分散させることができる。その結果、得られる骨補填材を、顆粒同士が粒子により、より均一に接合されたものとすることができる。
【0070】
[A−3]次いで、セラミックス多孔質顆粒を、前記型の中空部に収納した後、この中空部に、スラリーを供給することにより混合スラリーを得る。
【0071】
なお、この中空部への顆粒の収納は、例えば、顆粒をタッピング等することにより行われ、これにより、中空部に対して高充填率で充填することができる。
【0072】
また、スラリーと顆粒との重量比は、特に限定されないが、0.1:1〜10:1の範囲とするのが好ましく、0.5:1〜5:1の範囲とするのがより好ましい。重量比をかかる範囲内に設定することにより、顆粒同士の間にスラリーをより均一に浸入させることができる。
【0073】
[B]次に、混合スラリーを焼結して骨補填材(焼結体)を得る(焼結工程)。
なお、本工程[B]では、混合スラリーを、乾燥させて得られた乾燥体を、さらに焼結することで焼結体を得る場合について説明する。
【0074】
[B−1]まず、前記[A−3]において、前記型の中空部中に収納された混合スラリーを乾燥させることで乾燥体(成形体)を得る(乾燥工程)。
【0075】
この混合スラリーの乾燥は、通常、混合スラリーを加熱することにより行われ、混合スラリーの加熱により、混合スラリーは、水溶性高分子化合物の作用によりゲル化した後、乾燥することで乾燥体となる。
【0076】
この加熱の際の温度は、例えば、好ましくは50℃以上、120℃以下に、より好ましくは70℃以上、100℃以下に設定される。加熱温度を前記下限未満となると水溶性高分子化合物の種類等によっては、ゲル化が不十分となるおそれがあり、前記上限を超えると水分等が沸騰することに起因して乾燥体に形成された気孔が不均一となるおそれがある。
【0077】
[B−3]次いで、前記型の中空部中から乾燥体を取り出した後に、乾燥体(成形体)を焼結することにより焼結体(骨補填材)を得る。
【0078】
この乾燥体の焼結により、粒子が溶融状態となり、かかる粒子により、顆粒同士が接合される。その結果、セラミックス多孔質顆粒が、その形状を維持した状態で互いに接合し、かつセラミックス多孔質顆粒同士の接合強度が崩壊時に、セラミックス多孔質顆粒の形状を保持する程度となっている焼結体が得られることとなる。
【0079】
この焼結の際の焼結温度は、例えば、好ましくは800℃以上、1200℃以下に、より好ましくは900℃以上、1200℃以下に設定される。焼結温度を前記下限未満となると粒子の含有率等によっては、焼結強度が弱すぎて崩れやすくなるため、骨補填材としての取り扱いが難しくなるおそれがある。また、前記上限値を超えると、焼結強度が強すぎて手術時に骨欠損部に骨補填材を埋入して、押圧力を付与した際に、顆粒状に崩れなくなるおそれがある。その結果、顆粒状に崩れなかった骨補填材に起因して、ネジ穴が突き抜けてしまうおそれがある。
【0080】
なお、かかる温度範囲で焼結する場合、その焼結時間は、通常、2〜10時間程度に設定される。
【0081】
以上のようにして骨補填材を得ることで、骨補填材の保存時や輸送時に、骨補填材が崩壊してしまうのを確実に防止することができる。
【0082】
これに対し、この骨補填材を固定用のネジを骨に螺入して固定する際の補助部材として用いる場合、予め作製したネジ穴中に、骨補填材を入れておき、このネジ穴にネジを螺入(挿入)することにより、押圧力が生じ、これに起因して骨補填材がセラミックス多孔質顆粒の形状に崩壊する。その結果、ネジ穴とネジとの間にセラミックス多孔質顆粒が介在することとなるため、ネジの固定力(アンカー力)が増大する。
【0083】
なお、本工程[B−3]に先立って、乾燥体を脱脂する脱脂工程を施すようにしてもよい。
【0084】
この脱脂工程は、例えば、300〜900℃に、成形体を加熱することにより行うことができる。これにより、成形体から水溶性高分子化合物をより確実に除去することができる。
【0085】
なお、脱脂工程と焼結工程とを、一括して行う場合には、焼結温度に達するまで、徐々に昇温するようにすればよい。例えば、室温から約10〜100℃/時の昇温速度で約600℃まで昇温し、次いで、約50〜200℃/時の昇温速度で焼結温度まで昇温し、この温度で保持することで行うことができる。
【0086】
以上、本発明の骨補填材の製造方法について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0087】
例えば、本発明の骨補填材の製造方法では、任意の目的で、工程[A]の前工程、工程[A]と[B]との間に存在する中間工程、または工程[B]の後工程を追加するようにしてもよい。
【0088】
また、前記実施形態では、骨補填材が、全体形状が円柱状をなす中実体である場合について説明したが、骨補填材は、かかる場合に限定されず、その全体形状が円筒状をなす中空体であってもよい。中空体とすることで、固定用のネジを挿入しやすくなる。また中空部にガイドワイヤを挿通することで、骨補填材を適用する部位が深部であっても、容易に骨補填材を適用部位まで誘導できる。
【0089】
中空部の直径は、好ましくは0.3〜8mm程度、より好ましくは1〜5mm程度に設定され、骨補填材は中空部を有することで肉薄なものとなる。しかしながら、本発明の骨補填材の製造方法を用いて製造された骨補填材の圧縮強度(接合強度)は、前述のとおり、好ましくは0.2〜2.7kgf程度に設定され、単位面積当たりの強度が優れた範囲に設定されている。そのため、たとえ肉薄な構成としたとしても、骨補填材の保存時や輸送時に、骨補填材が崩壊してしまうのを確実に防止することができ、特に好ましい。
【0090】
また、前記実施形態では、セラミックス顆粒と、セラミックス粒子とがともに多孔質体で構成される場合について説明したが、ともに多孔質体で構成される必要はなく、何れか一方が緻密体であってもよいし、双方ともに緻密体であってもよい。
【実施例】
【0091】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.骨補填材の製造
(実施例1)
<1>
まず、Ca/P比1.67の一次粒子(平均粒径:100nm)の造粒体からなる二次粒子(平均粒径:10μm)を用意した。この二次粒子を、まずセラミックス多孔質粒子やスラリー用の二次粒子として用いることとした。
【0092】
<2>顆粒の準備
次に、メチルセルロースの1%水溶液2500gをミキサーで泡立て、これに平均粒径10μmの二次粒子800gを加えて混合した。この混合物を85℃で200時間乾燥させた。この乾燥体を粉砕機で粉砕し750℃で仮焼きした。これを500〜1200μmに粒度を整え、多孔質ハイドロキシアパタイト顆粒(セラミックス多孔質顆粒)を得た。
【0093】
<3>
メチルセルロースの1%水溶液(液性成分)15重量部と二次粒子(セラミックス多孔質粒子)10重量部を混合してスラリーを調製した。これにより、メチルセルロース粉体を含む液性成分/セラミックス多孔質粒子の混合重量比が1.5のスラリーとした。
【0094】
<4>
次に、長さ25.0mmの円柱状の型を用意し、前記<2>の多孔質ハイドロキシアパタイト顆粒を、タッピング法を用いて充填した。
【0095】
<5>
上記の型にスラリーを隙間なく充填し、90℃の乾燥機で乾燥させて成形体(乾燥体)を得た。
【0096】
<6>
成形体を1200℃で2時間焼成することで、ハイドロキシアパタイトで構成される焼結体からなる骨補填材を得た。
【0097】
(実施例2〜4)
前記工程<2>において、前記セラミックス多孔質顆粒を仮焼きする際の温度を表1のように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、骨補填材を得た。
【0098】
(実施例5)
前記工程<1>において用いる二次粒子を、仮焼きしないものから、大気中において、450℃で3時間の条件で仮焼きしたものに変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、骨補填材を得た。
【0099】
(実施例6、7)
前記工程<1>において、前記二次粒子を仮焼きする際の温度を表1のように変更したこと以外は、前記実施例5と同様にして、骨補填材を得た。
【0100】
(実施例8、9)
前記工程<3>において、スラリー中でのセラミックス多孔質粒子と液性成分との混合重量比を表1のように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、骨補填材を得た。
【0101】
(比較例1、2)
前記工程<2>において、前記セラミックス多孔質顆粒を仮焼きする際の温度を表1のように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、骨補填材を得た。
【0102】
2.骨補填材の圧縮強度の評価
各実施例および各比較例の骨補填材(焼結体)について、圧縮強度を圧縮試験機(今田製作所製、「プッシュプルゲージ」)を用いて測定した。
【0103】
なお、各実施例および各比較例の骨補填材(焼結体)について、それぞれ、10個ずつ圧縮強度の測定を行い、その平均値を求めた。
その結果を、表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1から明らかなように、混合スラリーを得るのに先立って、セラミックス多孔質顆粒を、200℃以上、800℃未満の温度で仮焼きすることで、得られる骨補填材(焼結体)の圧縮強度を0.2〜2.7kgfの範囲に設定することができる。その結果、骨補填材を、骨補填材の保存時や輸送時には、崩壊してしまうのが的確に抑制され、これに対して、押圧力が付与された際には、容易に崩壊するものとすることができた。
【0106】
これに対して、比較例1、2の骨補填材では、得られる骨補填材(焼結体)の圧縮強度を0.2〜2.7kgfの範囲に設定することができず、輸送時に容易に崩壊したり、押圧力を付与しても容易に崩壊させることができないものとなった。
【0107】
また、比較例2の骨補填材は、各実施例(特に実施例7)の骨補填材に比べて、表面の凹凸が大きいことが視認できた。