(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トレイの位置を前記光ピックアップの位置に対して正常な位置に復帰させるときに前記駆動モータに印加される駆動電圧は、通常時において前記トレイを搬送するときに前記駆動モータに印加される駆動電圧よりも高電圧であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ディスク装置。
前記光ピックアップが基準位置に到達したときに、前記光ピックアップのラックと前記駆動力伝達歯車機構とを歯飛びさせた状態で前記トレイを収納位置に搬送することで、前記トレイの位置を前記光ピックアップの位置に対して正常な位置に復帰させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光ディスク装置。
前記光ピックアップが基準位置に到達したときに、前記光ピックアップのラックと前記駆動力伝達歯車機構とを噛合させた状態で前記トレイを収納位置に搬送し、その後、前記光ピックアップを基準位置に戻すことで、前記トレイの位置を前記光ピックアップの位置に対して正常な位置に復帰させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光ディスク装置。
前記トレイが挿脱位置にあるときに、前記トレイの搬送動作指示がなされてから前記光ピックアップが移動するまでの時間に基づいて、前記トレイが前記収納位置に到達する前に、前記光ピックアップのラックの係合部と前記メインシャーシの係合部との係合が外れて前記光ピックアップのラックと前記駆動力伝達歯車機構とが噛合したと判定することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光ディスク装置。
前記光ピックアップが基準位置に到達したときに、前記トレイが収納位置に到達しているか否かに基づいて、前記トレイが前記収納位置に到達する前に、前記光ピックアップのラックの係合部と前記メインシャーシの係合部との係合が外れて前記光ピックアップのラックと前記駆動力伝達歯車機構とが噛合したと判定することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光ディスク装置。
【背景技術】
【0002】
ディスクを再生するためのディスク再生装置が広く普及している。ディスク再生装置は、メインシャーシと、光ディスクが載置されるトレイと、光ピックアップ及びターンテーブルが搭載されたトラバースシャーシ、トラバースシャーシを上下に揺動させるカムスライダ、駆動モータ、駆動モータの駆動力を光ピックアップのラック、トレイのラック、カムスライダのラックに伝達するギアを有する。
【0003】
トレイを閉鎖する際の動作について以下説明する。トレイが挿脱位置にあるときに、駆動モータからの駆動力がギアを介してトレイのラックに伝達されると、トレイは収納位置に向かって移動する。その後駆動モータの駆動力はカムスライダのラックにも伝達され、トラバースシャーシを上昇させる。
【0004】
なお、トレイが挿脱位置にあるとき及びトレイが移動中であるときは、光ピックアップのラックの係合部とメインシャーシの係合部が係合して光ピックアップのラックとギアが噛合しない。これによってトレイが収納位置に到達する前に駆動モータの駆動力が光ピックアップのラックに伝達されることはなく、光ピックアップの移動が制限されている。
【0005】
一方、トレイが収納位置に到達し、トラバースシャーシが最も高い位置に到達すると、ターンテーブルに光ディスクがチャッキングされる。また、同時に光ピックアップのラックの係合部とメインシャーシの係合部の係合が外れ(光ピックアップのロックが解除され)、光ピックアップのラックと光ピックアップのラックに駆動モータの駆動力を伝達するギアが噛合する。
【0006】
これによって駆動モータの駆動力が光ピックアップのラックに伝達される。トレイには光ディスクの情報記録面を露出させるための開口が形成されており、光ピックアップはトレイの開口内を光ディスクの径方向に移動することでトレイに干渉することなく所定の位置まで移動可能である。すなわち、通常状態において光ピックアップはトレイが収納位置に至った後(より詳細には、トレイが収納位置に至り、トラバースシャーシが上昇した後)に、光ディスクの径方向に移動するものである。
【0007】
しかしながらトレイが挿脱位置にあるときや移動中であるとき(すなわち光ディスクのチャッキングが解除されているとき)であっても、振動、衝撃等の外力に起因して光ピックアップのラックの係合部とメインシャーシの係合部の係合が外れてしまうことがある。この場合、トレイが収納位置に到達していないにも関わらず、駆動モータの駆動力が光ピックアップに伝達され、トレイの移動と共に、光ピックアップが移動することになる。
【0008】
その場合、光ピックアップが先に所定の位置に到達するので、トレイが収納位置に到達する前にトレイの移動が終了されてしまうという問題があった。
【0009】
ところで特許文献1の光ディスク装置は、ターンテーブルに対して光ピックアップが離反しないように光ピックアップを当止するストッパー(ロック解除防止手段)を備えている。これによって光ディスクのチャッキングが解除された状態で、振動や衝撃等の外力によって光ピックアップのロックが外れるのを防いでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、光ディスク装置がロック解除防止手段を備えることとすると部品点数が増え、コストが上昇する。また、ロック解除防止手段を備えない光ディスク装置においては依然として光ピックアップのロックが解除されるという問題は解決されない。
【0012】
本発明は上述した問題点に鑑み、光ディスクのチャッキングが解除された状態で、光ピックアップのロックが解除されても使用可能な光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の光ディスク装置は、係合部を有するメインシャーシと、光ディスクが載置され、挿脱位置と収納位置の間を摺動するトレイと、前記メインシャーシに取り付けられ、ターンテーブルと前記ターンテーブルに接近・離反可能に設けられた光ピックアップとを有するトラバースシャーシと、前記トレイの摺動動作に連動して前記トラバースシャーシを上下に揺動させるカムスライダと、駆動モータの駆動力を前記トレイのラック、前記カムスライダのラック及び前記光ピックアップのラックに伝達する駆動力伝達歯車機構と、を備え、前記光ピックアップは、前記トレイが収納位置に到達し、前記カムスライダによって前記トラバースシャーシが上昇したときに、前記光ピックアップのラックが有する係合部と前記メインシャーシの係合部との係合が外れて前記光ピックアップのラックと前記駆動力伝達歯車機構とが噛合することで前記駆動モータの駆動力が伝達されて前記光ディスクの径方向に移動するものであって、前記トレイが前記収納位置に到達する前に、前記光ピックアップのラックの係合部と前記メインシャーシの係合部との係合が外れて前記光ピックアップのラックと前記駆動力伝達歯車機構とが噛合したときに、前記トレイの位置を前記光ピックアップの位置に対して正常な位置に復帰させることを特徴とする。
【0014】
衝撃、振動等の外力により、トレイが収納位置に到達していないにも関わらず、光ピックアップのラックの係合部とメインシャーシの係合部との係合が外れて光ピックアップのラックと駆動力電圧歯車機構とが噛合すると、トレイの摺動動作に伴って光ピックアップが移動する(光ディスクの径方向に移動する)。すると光ピックアップが基準位置(詳細は後述)に到達したときに、トレイは未だに収納位置に到達していないという事態が発生する。
【0015】
ところが上記構成によれば、トレイの位置を光ピックアップの位置に対して正常な位置(すなわち光ピックアップが基準位置に到達しているときにおいては収納位置)に復帰させるので、修理等を要することなく継続して光ディスク装置を使用することができる。
【0016】
また上記構成の光ディスク装置において、前記駆動モータの駆動力によって前記トレイの位置を前記光ピックアップの位置に対して正常な位置に復帰させることが望ましい。
【0017】
この構成によれば、追加部品を必要とすることなく駆動モータによってトレイの位置を光ピックアップの位置に対して正常な位置に復帰させることができるのでコストが上昇しない。
【0018】
また上記構成の光ディスク装置において、前記トレイの位置を前記光ピックアップの位置に対して正常な位置に復帰させるときに前記駆動モータに印加される駆動電圧は、通常時において前記トレイを搬送するときに前記駆動モータに印加される駆動電圧よりも高電圧であることが望ましい。
【0019】
この構成によれば、異常時(トレイが収納位置に到達する前に、光ピックアップのラックの係合部とメインシャーシの係合部との係合が外れて光ピックアップのラックと駆動力伝達歯車機構とが噛合した時)において、トレイの位置を正常な位置に復帰させるために通常時よりも高い駆動電圧が駆動モータに印加されるので駆動モータの駆動力が強くなる。従って、トレイの位置を正常な位置に復帰させやすくなる。
【0020】
また上記構成の光ディスク装置において、前記光ピックアップが基準位置に到達したときに、前記光ピックアップのラックと前記駆動力伝達歯車機構とを歯飛びさせた状態で前記トレイを収納位置に搬送することで、前記トレイの位置を前記光ピックアップの位置に対して正常な位置に復帰させることが望ましい。
【0021】
この構成によれば、光ピックアップが基準位置(特に、基準位置がターンテーブルから遠いストロークエンドである場合)に到達したときに、トレイが収納位置に到達していない場合であっても、光ピックアップのラックと駆動力伝達歯車機構を歯飛びさせることで、光ピックアップの位置を変化させずに、トレイが正常な位置(すなわち収納位置)に搬送される。これによって、トレイの位置を光ピックアップの位置に対して正常な位置にすることができる。
【0022】
また上記構成の光ディスク装置において、前記光ピックアップが基準位置に到達したときに、前記光ピックアップのラックと前記駆動力伝達歯車機構とを噛合させた状態で前記トレイを収納位置に搬送し、その後、前記光ピックアップを基準位置に戻すことで、前記トレイの位置を前記光ピックアップの位置に対して正常な位置に復帰させることが望ましい。
【0023】
この構成によれば、光ピックアップが基準位置(特に、基準位置が両ストロークエンドの間の任意の位置である場合)に到達したときに、トレイが収納位置に到達していない場合であっても、光ピックアップのラックと駆動力伝達歯車機構を噛合させた状態で、光ピックアップの位置を変化させつつ、トレイを正常な位置(すなわち収納位置)に搬送し、その後、光ピックアップが基準位置に戻る。これによって、トレイの位置を光ピックアップの位置に対して正常な位置にすることができる。
【0024】
また上記構成の光ディスク装置において、前記トレイが挿脱位置にあるときに、前記トレイの搬送動作指示がなされてから前記光ピックアップが移動するまでの時間に基づいて、前記トレイが前記収納位置に到達する前に、前記光ピックアップのラックの係合部と前記メインシャーシの係合部との係合が外れて前記光ピックアップのラックと前記駆動力伝達歯車機構とが噛合したと判定することが望ましい。
【0025】
この構成によれば、光ピックアップのラックと駆動力伝達歯車機構が、正常な状態(トレイが収納位置に到達した状態)で噛合しているのか、異常な状態(トレイが収納位置に到達していない状態)で噛合しているのかを容易に判定することができる。
【0026】
また上記構成の光ディスク装置において、前記光ピックアップが基準位置に到達したときに、前記トレイが収納位置に到達しているか否かに基づいて、前記トレイが前記収納位置に到達する前に、前記光ピックアップのラックの係合部と前記メインシャーシの係合部との係合が外れて前記光ピックアップのラックと前記駆動力伝達歯車機構とが噛合したと判定することが望ましい。
【0027】
この構成によれば、光ピックアップのラックと駆動力伝達歯車機構が、正常な状態(トレイが収納位置に到達した状態)で噛合しているのか、異常な状態(トレイが収納位置に到達していない状態)で噛合しているのかを容易に判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
以下に本発明の光ディスク装置について図面を参照して説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために本発明の光ディスク装置の一例を示すものであって、本発明をこの光ディスク装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の装置にも等しく適応し得るものである。
【0030】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態の光ディスク装置のディスクローダの構成を示す上面図である。
図2は本実施形態の光ディスク装置のディスクローダの構成を示す背面図である。
図3は光ディスク装置のディスクローダの構成を示す正面図である。
図1〜
図3はトレイ4が挿脱位置にあるときのディスクローダ1を示している。なお、以下の説明において、「前後」はトレイ3の搬送方向において挿脱位置側を「前」、収納位置側を「後」とする。また、「上下」はトラバースシャーシ4の昇降方向において、トレイ3(トレイ3に載置された光ディスク)に接近する方向を「上」、トレイ3(トレイ3に載置された光ディスク)から離反する方向を「下」とする。また、「左右」は
図1の紙面に対して左手側を「左」、右手側を「右」とする。
【0031】
図1〜
図3に示すように、ディスクローダ1は、メインシャーシ2、光ディスクが載置され、メインシャーシ2に対して光ディスクの挿脱位置と光ディスクの収納位置の間を摺動するトレイ(ディスクトレイ)3、メインシャーシ1に対して上下摺動可能に取り付けられるトラバースシャーシ4、トラバースシャーシ4を上下に摺動させるカムスライダ5を備える。
【0032】
メインシャーシ2は図示しない光ディスク装置本体に固定されている。メインシャーシ2の上方には左右方向(トレイ3の搬送方向に垂直な方向)に渡って略長板状のクランパホルダ21が架設されており、その略中央には略円板状クランパ6が回転可能に設けられている。メインシャーシ2はさらにその前部に、後述する光ピックアップラック(OPUラック)12の係合部121に係合する係合部22を有する。
【0033】
トレイ3はディスクが載置される載置部31と、トレイ3の長さ方向に延びるラックギアであるトレイラック32と、トレイ3の裏面(下面)に形成されるガイド溝33を有する。載置部31は小径(直径8cm)の光ディスク及び大径(12cm)の光ディスクを載置可能に形成されている。トレイ3には矩形状の開口34が形成されている。
【0034】
トレイラック32はトレイ3の右側端部に形成される。トレイラック32が後述するギア8に噛合することでギア8の回転力(すなわち駆動モータ7の駆動力)がトレイ3に伝達され、これによってトレイ3が摺動する。なお、トレイラック32はトレイ3が収納位置にあるときにおいて、ギア8と噛合わないように形成される。これにより、トレイ3が収納位置に到達した後、光ピックアップ9を光ディスクの径方向に移動させることができる(詳細は後述)。
【0035】
ガイド溝33はトレイ3の裏面に2つ形成される。いずれのガイド溝33にもカムスライダ5が有するスライダボス51が係合される。本実施形態において一方のガイド溝33は長尺に形成され、他方のガイド溝33は開口34を形成するのに伴って短尺に形成される。
【0036】
スライダボス51はトレイ3が搬送されることでガイド溝33の異なる部分に係合するように形成されている。より詳細には、ガイド溝33はトレイ3の搬送方向に平行に形成される直線溝部331と、トレイ3の搬送方向に対して斜めに形成される斜行溝部332と、トレイの搬送方向に対して垂直に形成される直交溝部333を有する(但し、上述した理由により、本実施形態において直線溝部331を有するのは一方のガイド溝33のみである)。
【0037】
そしてトレイ3が挿脱位置から収納位置に搬送されるに従って、スライダボス51は直線溝部331、斜行溝部332、直交溝部333の順に係合する。スライダボス51が直線溝部331に係合している間においては、トレイ3の搬送中の振動等が軽減される。
【0038】
トラバースシャーシ4は駆動モータ7、駆動モータ7の駆動力をトレイラック32と後述するスライダラック52と後述するOPUラック12に伝達する複数のギア(駆動力伝達歯車機構)8、光ディスクの情報記録面にレーザ光を照射し、情報の記録・再生を行う光ピックアップ9、光ディスクの情報記録面の中央を支持するターンテーブル10、光ピックアップ9を摺動可能に支持する2本のガイドシャフト11、ギア8に噛合することでギア8の回転力(すなわち駆動モータ7の駆動力)を光ピックアップ9に伝達するOPUラック12を有する。
【0039】
トラバースシャーシ4は後述するカムスライダ5のカム溝53に係合する昇降ボス41を有する。
【0040】
駆動モータ7には複数のギア8が取り付けられており、駆動モータ7の駆動力を減速して、トレイラック32、スライダラック52、OPUラック12に伝達する。なお、説明の便宜上、複数のギア8の内、トレイラック32、スライダラック52、OPUラック12に噛合うギアをそれぞれ第1のギア81、第2のギア82、第3のギア83ということもある。駆動モータ7及びギア8はいずれもトラバースシャーシ4の右側に設けられている。
【0041】
なお、本実施形態では各ラックに噛合するギア8として、第1のギア81、第2のギア82、第3のギア83を備えることとしているが、単一のギアが複数のラックに噛合することとしてもよい。すなわち、後述するように本実施形態のディスクローダー1においては、複数のラックが同時にギアに噛合することはないので単一のギアで複数のラックに駆動モータ7の駆動力を伝達することとすれば部品点数を削減することができる。本実施形態では特に第1のギア81と第2のギア82を単一のギアとしてもよい。
【0042】
光ピックアップ9は各種光学部品を備える。光ピックアップ9はOPUラック12を介して第3のギア83の回転力(駆動モータ7の駆動力)が伝達される。そして、光ピックアップ9はガイドシャフト11を摺動して光ディスクの径方向に移動することでターンテーブル10に接近し、或いはターンテーブル10から離反する。
【0043】
OPUラック12は係合部121を有する。係合部121はトレイ3が収納位置にあるとき以外(すなわちトレイ3が挿脱位置又は搬送中であるとき)に上述したメインシャーシ2の係合部22に係合する。係合部22と係合部121が係合しているときは、OPUラック12と第3のギア83が噛合しておらず、駆動モータ7の駆動力が光ピックアップ9に伝達されない。
【0044】
一方、係合部22と係合部121の係合が外れる(言い換えれば、トレイ3が収納位置に到達する)と、OPUラック12と第3のギア83が噛合し、駆動モータ7の駆動力が光ピックアップ9に伝達される。
【0045】
カムスライダ5はスライダボス51とスライダラック52とカム溝53を有する。スライダボス51は上述したようにトレイ3のガイド溝33に係合する。スライダラック52は第2のギア82に噛合するラックである。
【0046】
カム溝53にはトラバースシャーシ4の昇降ボス41が係合される。昇降ボス41はカムスライダ5がスライドすることでカム溝53の異なる部分に係合するように形成されている。
【0047】
より詳細には、カム溝53は、トレイ3に最も近い位置でトレイ3の搬送方向に垂直な方向に沿って形成される上溝部531、トレイ3に最も遠い位置でトレイ3の搬送方向に垂直な方向に沿って形成される下溝部533、トレイ3の搬送方向に垂直な方向に対して斜めに形成され、上溝部531と下溝部533を連結する斜溝部532を有する。
【0048】
そしてカムスライダ5がスライドするに従って、昇降ボス41は下溝部533、斜溝部532、上溝部531の順に係合する。つまり昇降ボス41はカムスライダ5がスライドするに従って上昇し、これに伴ってトラバースシャーシ4が上昇する。
【0049】
次に、本実施形態の光ディスク装置において、光ディスクをトレイ3に載置してから、光ピックアップ9が光ディスクの情報記録面にレーザ光を照射するまでの一連の動作について説明する。
【0050】
トレイ3が挿脱位置であるときにおいて、トレイラック32と第1のギア81のみが噛合しており、スライダラック52と第2のギア82、及び、OPUラック12と第3のギア83は噛合していない。また、昇降ボス41はカム溝53の下溝部533に係合している(
図3参照)。また、係合部22は係合部121に係合している(
図4参照)。また、スライダボス51はガイド溝33の直線溝部331に係合している。
【0051】
ユーザにより載置部31に光ディスクが載置され、トレイ開閉釦(
図7参照)が押下されると駆動モータ7が駆動する。上述したように、トレイ3が挿脱位置にあるときに駆動モータ7の駆動力は第1のギア81及びトレイラック32を介してトレイ3のみに伝達される。これによってトレイ3は収納位置に向かって摺動し始める。
【0052】
トレイ3が収納位置に向かって摺動すると、スライダボス51は順次、ガイド溝33の斜行溝部332、直交溝部333に係合する。スライダボス51が直交溝部33に係合すると、カムスライダ5が第2のギア82に向かってスライドする。そして、トレイ3が収納位置に到達すると、スライダラック52と第2のギア82が噛合する。なお、トレイ3が収納位置に到達すると、トレイラック32と第1のギア81の噛合が外れる。
【0053】
トレイ3が収納位置に到達すると、駆動モータ7の駆動力は第2のギア82及びスライダラック52を介してカムスライダ5に伝達される。これによってカムスライダ5がメインシャーシ2の右側壁2aに向かってスライドする。当該スライド動作に伴って、昇降ボス41は順次、カム溝53の斜溝部532、上溝部531に係合し、トラバースシャーシ4が上昇する(トレイ3に接近する)。
【0054】
昇降ボス41が上溝部531に係合し、カムスライダ5がスライドするとスライダラック52と第2のギア82の噛合が外れ(
図5参照)、カムスライダ5のスライド動作が終了する。そしてカムスライダ5のスライド動作が終了すると係合部22と係合部121の係合が外れ、OPUラック12が第3のギア83に噛合する(
図6参照、なお
図6はディスクローダー1を上面側からみたときの光ピックアップラック12と第3のギア83の噛合い状態を示す拡大模式図である。)。
【0055】
これによって駆動モータ7の駆動力は第3のギア83及びOPUラック12を介して光ピックアップ9に伝達される。光ピックアップ9は駆動モータ7の駆動力によって、ガイドシャフト11上を光ディスクの径方向に摺動する。そして光ピックアップ9が基準位置に到達すると駆動モータ7が停止し、光ピックアップ9から光ディスクの情報記録面に向かってレーザ光が射出される。
【0056】
本実施形態において、光ピックアップ9の基準位置とは、光ピックアップ9の位置制御を行うための基準となる位置であり、光ピックアップ9は光ディスクが挿入されたとき(トレイ3が収納位置に到達したとき)に、駆動モータ7の駆動力によって当該基準位置まで移動される。
【0057】
本実施形態において基準位置は、ターンテーブル10から最も離反した位置(ターンテーブル10から遠いストロークエンド)として説明するがこれに限られるものではない。ターンテーブル10に最も近い位置(ターンテーブル10に近いストロークエンド)であってもよいし、両ストロークエンド間の任意の位置であってもよい。
【0058】
上述したように本実施形態では単一の駆動モータ7の駆動力をギア及びラックを介してトレイ3、カムスライダ5、光ピックアップ9に伝達しているが、夫々に駆動力が伝達されるタイミングは重複しない。すなわち、任意のタイミングにおいて駆動モータ7の駆動力が伝達されているのは1の部位(トレイ3又はカムスライダ5又は光ピックアップ9)である。
【0059】
しかしながら、衝撃や振動等の外力により、トレイ3が収納位置に到達する前に、係合部12と係合部122の係合が外れることが想定される。その場合、第1のギア81とトレイラック32が噛合すると同時に、第3のギア83とOPUラック12が噛合するので、駆動モータ7の駆動力がトレイ3及び光ピックアップ9に伝達されることになる。
【0060】
この状態でトレイ3を収納位置に向かって摺動すると、光ピックアップ9も径方向に移動する。そして光ピックアップ9が基準位置に到達することによって駆動モータ7の駆動が停止したり、トレイ3が光ピックアップ9に干渉して収納位置まで摺動することができなくなったりするという問題が発生する。
【0061】
そこで本実施形態では駆動モータ7の駆動力がトレイ3及び光ピックアップ9に同時に伝達された場合であっても、トレイ3の位置を光ピックアップ9の位置に対して正常な位置に復帰させる。
図7は本実施形態の光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【0062】
図6に示すように本実施形態の光ディスク装置は、制御部13、センサ14、駆動モータ7、トレイ開閉手段15を備える。駆動モータ7は
図1及び
図2に示す駆動モータ7と同一であるため説明を省略する。
【0063】
制御部13は駆動モータ7の駆動を含め、光ディスク装置全体を総括的に制御する制御手段である。制御部13はCPUとROMとRAM(いずれも不図示)とを含んでいる。ROMには制御部13が実行するプログラム、プログラムの実行に必要なパラメータやデータが記憶されている。CPUはROMに記憶されている各種プログラムを実行する。RAMは各種処理の過程で得られるデータや各種処理の結果得られるデータを一時的に格納する。これらCPU、RAM、ROM等は、バスを介して接続されている。なお、CPU、ROM及びRAMはこれらの一部または全部を1チップに集積化しても構わない。
【0064】
センサ14は光ピックアップ9の位置を検出する位置検出手段である。トレイ開閉手段15は制御部13に対してトレイ3の搬送動作指示を入力する操作手段である。トレイ開閉手段15としては、例えば光ディスク装置本体に取り付けられたトレイ開閉釦や、遠隔操作手段(リモコン)等を使用することができる。
【0065】
制御部13は搬送動作指示が入力されると、トレイ3を収納位置から挿脱位置に搬送し、或いは、挿脱位置から搬送位置に搬送するよう駆動モータ7を制御する。
【0066】
図8は本実施形態の光ディスク装置の制御部が行う処理の一例を示すフローチャートである。より詳細には、上述したように、駆動モータ7の駆動力がトレイ3及び光ピックアップ9に同時に伝達された場合に制御部13が行う処理を示すフローチャートである。
【0067】
トレイ3が挿脱位置にあるときにおいて、制御部13はトレイ開閉手段15を介してトレイ3の閉鎖が指示されたか否かを判定する(ステップS01)。トレイ閉鎖指示がなされたとき(ステップS01のY)ステップS02に進み、トレイ閉鎖指示がなされていないとき(ステップS01のN)はステップS01に戻る。
【0068】
ステップS02において制御部13は駆動モータ7を駆動する。本ステップにおける制御部13による駆動モータ7の駆動は後述する通常モードによる駆動である。
【0069】
ステップS03において制御部13は光ピックアップ9が移動したか否かを判定する。光ピックアップ9が移動したか否かはセンサ14により検知される光ピックアップ9の位置情報に基づいて判定される。光ピックアップ9が移動したとき(ステップS03のY)はステップS05に進み、光ピックアップ9が移動していないとき(ステップS03のN)はステップS04に進む。
【0070】
ステップS04において制御部13は、現時点がトレイ閉鎖指示がなされてから所定時間以内であるか(トレイ閉鎖指示がなされた時間から現時点まで時間が所定時間以内であるか)否かを判定する。本実施形態において所定時間とは、光ピックアップ9がトレイ動作に基づいて移動したものであるか、トレイ動作に基づかずに移動したものであるかを判定可能な時間である。
【0071】
すなわち、光ピックアップ9がトレイ動作に基づいて移動する場合、トレイ3が収納位置に到達してから移動を開始するため、トレイ閉鎖指示がなされてから光ピックアップ9が移動するまでにはある程度の時間を要する。これに対して、例えばトレイ3が挿脱位置にあるときに係合部22と係合部121の係合が外れ、OPUラック12と第3のギア83が噛合しているときには、トレイ閉鎖指示がなされると、光ピックアップ9はトレイ3と共に移動を開始する(トレイ動作に基づかずに移動する)。すなわち、後者の場合にはトレイ動作指示がなされてから光ピックアップ9が移動するまでの時間が前者に比べて短い。
【0072】
そこで本実施形態では例えば所定時間を0.3秒とし、現時点がトレイ閉鎖指示がなされてから所定時間以内でなければ(ステップS04のN)、係合部22と係合部121の係合が外れていない正常な状態であると判定してステップS07に進む。一方、現時点がトレイ閉鎖指示がなされてから所定時間以内であれば(ステップS04のY)係合部22と係合部121の係合が外れていない正常な状態であるか否かを判定することができないのでステップS03に戻る。
【0073】
なお、所定時間は0.3秒に限られるものではない。光ピックアップ9がトレイ動作に基づいて移動したものであるか、トレイ動作に基づかずに移動したものであるかを判定可能な時間であれば任意の時間を設定することができる。
【0074】
ステップS05において制御部13は現時点がトレイ閉鎖指示がなされてから所定時間以内であるか否かを判定する。本ステップにおける所定時間はステップS04における所定時間と同一の時間である。
【0075】
現時点がトレイ閉鎖指示がなされてから所定時間以内でなければ(ステップS05のN)、光ピックアップ9がトレイ動作に基づいて移動したものと判定してステップS07に進む。一方、現時点がトレイ閉鎖指示がなされてから所定時間以内であれば(ステップS05のY)、光ピックアップ9がトレイ動作に基づかずに移動したものと判定してステップS06に進む。
【0076】
ステップS06において制御部13は駆動モータ7を強制復帰モードで駆動する。また、ステップS07において制御部13は駆動モータ7を通常モードで駆動する。本実施形態において通常モードとは、正常状態においてトレイ3の閉鎖指示がなされてから光ピックアップ9が基準位置に移動するまでの一連の動作を行うことができる駆動電圧を駆動モータ7に印加するモードである。
【0077】
一方、強制復帰モードとは、光ピックアップ9がトレイ動作に基づかずに移動した場合に、トレイ3の位置を光ピックアップ9に対して正常な位置に復帰させるために、通常モードに比べて高い駆動電圧を駆動モータ7に印加するモードである。
【0078】
上述したように、トレイ3の閉鎖動作と光ピックアップ9の移動動作が略同時に開始されると、光ピックアップ9が先に基準位置に到達して駆動モータ7の駆動が停止することにより、トレイ3を収納位置まで搬送することができなくなる。
【0079】
この状態において、駆動モータ7の駆動力はトレイ3と光ピックアップ9の双方に伝達されているため、トレイ3の位置を光ピックアップ9の位置(基準位置)に対して正常な位置(収納位置)に搬送する(復帰させる)ためには、OPUラック12と第3のギア83を歯飛びさせつつ、駆動モータ7の駆動力をトレイ3に伝達する必要がある。
【0080】
OPUラック12と第3のギア83を歯飛びさせるためには駆動モータ7を通常モード(例えば2Vの駆動電圧を印加するモード)よりも高い駆動電圧を印加するモード(例えば3.5V〜5Vの駆動電圧を印加するモード)で駆動する必要がある。そこで本実施形態ではOPUラック12と第3のギア83を歯飛びさせるために駆動モータ7を強制復帰モードで駆動することで、トレイ3の位置を光ピックアップ9の位置に対して正常な位置に復帰させることとしている。
【0081】
なお、光ピックアップ9の基準位置がターンテーブル10から遠いストロークエンドではない場合において、OPUラック12と第3のギア83を歯飛びさせることができない(すなわち、光ピックアップ9が基準位置から移動してしまう)ときは、トレイ3を収納位置に搬送した後で、光ピックアップ9を基準位置まで戻すこととすればよい。
【0082】
本実施形態によれば、トレイの位置を光ピックアップの位置に対して正常な位置(すなわち光ピックアップが基準位置に到達しているときにおいては収納位置)に復帰させるので、修理等を要することなく継続して光ディスク装置を使用することができる。
【0083】
また、追加部品を必要とすることなく駆動モータによってトレイの位置を光ピックアップの位置に対して正常な位置に復帰させることができるのでコストが上昇しない。
【0084】
また、異常時(トレイが収納位置に到達する前に、光ピックアップのラックの係合部とメインシャーシの係合部との係合が外れて光ピックアップのラックと駆動力伝達歯車機構とが噛合した時)において、トレイの位置を正常な位置に復帰させるために通常時よりも高い駆動電圧が駆動モータに印加されるので駆動モータの駆動力が強くなる。従って、トレイの位置を正常な位置に復帰させやすくなる。
【0085】
また、光ピックアップが基準位置(特に、基準位置がターンテーブルから遠いストロークエンドである場合)に到達したときに、トレイが収納位置に到達していない場合であっても、光ピックアップのラックと駆動力伝達歯車機構を歯飛びさせることで、光ピックアップの位置を変化させずに、トレイが正常な位置(すなわち収納位置)に搬送される。これによって、トレイの位置を光ピックアップの位置に対して正常な位置にすることができる。
【0086】
また、光ピックアップが基準位置(特に、基準位置が両ストロークエンドの間の任意の位置である場合)に到達したときに、トレイが収納位置に到達していない場合であっても、光ピックアップのラックと駆動力伝達歯車機構を噛合させた状態で、光ピックアップの位置を変化させつつ、トレイを正常な位置(すなわち収納位置)に搬送し、その後、光ピックアップが基準位置に戻る。これによって、トレイの位置を光ピックアップの位置に対して正常な位置にすることができる。
【0087】
また、トレイの搬送動作指示がなされてから光ピックアップが移動するまでの時間に基づいて、光ピックアップのラックと駆動力伝達歯車機構が、正常な状態(トレイが収納位置に到達した状態)で噛合しているのか、異常な状態(トレイが収納位置に到達していない状態)で噛合しているのかを容易に判定することができる。
【0088】
[第2実施形態]
図9は本実施形態の光ディスク装置の制御部が行う処理の一例を示すフローチャートである。上記第1実施形態では、トレイ3と光ピックアップ9が同時に移動している状態を検知して、同時に移動しているときに異常状態であると判定し、駆動モータ7を強制復帰モードで駆動することとした。これに対して本実施形態では、光ピックアップ9が基準位置に到達したときのトレイ3の位置が正常な位置であるか否かを判定して、正常な位置でないときに常状態であると判定し、駆動モータ7を強制復帰モードで駆動するものである。
【0089】
本実施形態において光ディスク装置はトレイ3の位置を検知するセンサを備えることとする。以下説明の便宜上、光ピックアップ9の位置を検知するセンサ(第1実施形態におけるセンサ14)を第1のセンサ14aとし、トレイ3の位置を検知するセンサを第2のセンサ14bとする。なお、本実施形態においてステップS11及びS12は第1実施形態のステップS01及びS02と夫々同様であるため説明を省略する。
【0090】
ステップS13において制御部13は光ピックアップ9の位置が基準位置であるか否かを判定する。光ピックアップ9の位置は第1のセンサ14aにより検知され、制御部13が当該位置情報を取得する。光ピックアップ9の位置が基準位置でなければ(ステップS13のN)ステップS12に戻り、光ピックアップ9の位置が基準位置であれば(ステップS13のY)ステップS14に進む。
【0091】
ステップS14において制御部13はトレイ3の位置が収納位置であるか否かを判定する。トレイ3の位置は第2のセンサ14bにより検知され、制御部13が当該位置情報を取得する。トレイ3の位置が収納位置でなければ(ステップS14のN)ステップS15に進み、駆動モータ7を強制復帰モードで駆動する。一方、トレイ3の位置が収納位置であれば(ステップS14のY)ステップS16に進み、駆動モータ7を通常モードで駆動する。
【0092】
本実施形態によれば第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0093】
また、光ピックアップが基準位置に到達したときに、トレイが収納位置に到達しているか否かに基づいて、光ピックアップのラックと駆動力伝達歯車機構が、正常な状態(トレイが収納位置に到達した状態)で噛合しているのか、異常な状態(トレイが収納位置に到達していない状態)で噛合しているのかを容易に判定することができる。