(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記照射条件は、前記所定パターンにおけるスポットの配列、前記所定パターンのサイズ、前記所定パターンの向き、前記所定パターンにおけるスポットのサイズ、及び、前記所定パターンにおけるスポットの間隔のうち、1つ以上の条件を含むことを特徴とする請求項1に記載のレーザ治療装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明に係るレーザ治療装置の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態において、上記特許文献に記載された技術を任意に援用することが可能である。
【0010】
方向を定義しておく。装置光学系から患者に向かう方向を前方向とし、その逆方向を後方向とする。また、前方向に直交する水平方向を左右方向とする。更に、前後方向と左右方向の双方に直交する方向を上下方向とする。
【0011】
[構成]
この実施形態に係るレーザ治療装置1の構成の一例を
図1に示す。レーザ治療装置1は、被検眼Eの眼底Efに対してレーザ治療を施すために使用される。レーザ治療装置1は、光源ユニット2と、スリットランプ3と、光ファイバ4と、処理ユニット5と、操作ユニット6とを有する。なお、スリットランプ3に代えて、手術用顕微鏡や、倒像鏡や、眼内挿入タイプの観察装置などを用いてもよい。
【0012】
光源ユニット2とスリットランプ3は、光ファイバ4を介して光学的に接続されている。光ファイバ4は、1つ以上の導光路を有する。光源ユニット2と処理ユニット5は、信号を伝送可能に接続されている。スリットランプ3と処理ユニット5は、信号を伝送可能に接続されている。操作ユニット6と処理ユニット5は、信号を伝送可能に接続されている。信号の伝送形態は有線でも無線でもよい。
【0013】
処理ユニット5は、ハードウェアとソフトウェアとの協働によって動作するコンピュータである。処理ユニット5が実行する処理については後述する。操作ユニット6は、各種のハードウェアキー及び/又はソフトウェアキー(GUI)を含んで構成される。ハードウェアキーの例として、スリットランプ3に設けられたボタン・ハンドル・ノブや、スリットランプ3に接続されたコンピュータ(処理ユニット5等)に設けられたキーボード・ポインティングデバイス(マウス・トラックボール等)や、別途に設けられたフットスイッチ・操作パネルなどがある。ソフトウェアキーは、たとえばスリットランプ3や上記コンピュータに設けられた表示デバイスに表示される。
【0014】
(光源ユニット2)
光源ユニット2は、眼底Efに照射される光を発生する。光源ユニット2は、照準光源2aと、治療光源2bと、ガルバノミラー2cと、遮光板2dとを有する。なお、
図1に示す部材以外の部材を光源ユニット2に設けることができる。たとえば、光ファイバ4の直前位置に、光源ユニット2により発生された光を光ファイバ4の端面に入射させる光学素子(レンズ等)を設けることができる。
【0015】
(照準光源2a)
照準光源2aは、レーザ治療を施す部位に照準を合わせるための照準光LAを発生する。照準光源2aとしては任意の光源が用いられる。たとえば、眼底Efを目視観察しつつ照準を合わせる構成が適用される場合、術者眼E
0により認識可能な可視光を発する光源(レーザ光源、発光ダイオード等)が照準光源2aとして用いられる。また、眼底Efの撮影画像を観察しつつ照準を合わせる構成が適用される場合、撮影画像を取得するための撮像素子が感度を有する波長帯の光を発する光源(レーザ光源、発光ダイオード等)が照準光源2aとして用いられる。照準光LAは、ガルバノミラー2cに導かれる。照準光源2aの動作は、処理ユニット5により制御される。
【0016】
(治療光源2b)
治療光源2bは、治療用のレーザ光(治療光LT)を発する。治療光LTは、その用途に応じて可視レーザ光でも不可視レーザ光でもよい。また、治療光源2bは、異なる波長のレーザ光を発する単一のレーザ光源又は複数のレーザ光源であってよい。治療光LTは、ガルバノミラー2cに導かれる。治療光源2bの動作は、処理ユニット5により制御される。
【0017】
(ガルバノミラー2c)
ガルバノミラー2cは、反射面を有するミラーと、ミラーの向き(反射面の向き)を変更するアクチュエータとを含んで構成される。照準光LAと治療光LTは、ガルバノミラー2cの反射面の同じ位置に到達するようになっている。なお、照準光LAと治療光LTをまとめて「照射光」と呼ぶことがある。ガルバノミラー2c(の反射面)の向きは、少なくとも、照射光を光ファイバ4に向けて反射させる向き(照射用向き)と、照射光を遮光板2dに向けて反射させる向き(停止用向き)とに変更される。ガルバノミラー2cの動作は、処理ユニット5により制御される。
【0018】
(遮光板2d)
ガルバノミラー2cが停止用向きに配置されている場合、照射光は遮光板2dに到達する。遮光板2dは、たとえば照射光を吸収する材質及び/又は形態からなる部材であり、遮光作用を有する。
【0019】
この実施形態では、照準光源2aと治療光源2bは、それぞれ連続的に光を発生する。そして、ガルバノミラー2cを照射用向きに配置させることで、照射光を被検眼Eに照射させる。また、ガルバノミラー2cを停止用向きに配置させることで、被検眼Eに対する照射光の照射を停止させる。
【0020】
(スリットランプ3)
スリットランプ3は、被検眼Eの前眼部及び眼底Efの観察に用いられる装置である。より詳しく説明すると、スリットランプ3は、被検眼Eをスリット光で照明し、この照射野を拡大観察するための眼科装置である。なお、「観察」には、肉眼での観察と、撮像素子による撮影画像の観察の一方又は双方が含まれる。この実施形態では肉眼観察を行う場合について説明するが、撮影画像を観察する場合には、従来のスリットランプと同様の画像撮影用の光学系(撮影系)が設けられる。
【0021】
スリットランプ3は、照明部3aと、観察部3bと、接眼部3cと、レーザ照射部3dとを有する。照明部3aには、
図2に示す照明系10が格納されている。観察部3bと接眼部3cには、観察系30が格納されている。レーザ照射部3dには、レーザ照射系50が格納されている。
【0022】
図示は省略するが、スリットランプ3には、従来と同様に、レバー、ハンドル、ボタン、ノブ等の操作部材が設けられている。これら操作部材は、機能的に操作ユニット6に含まれる。なお、
図1に示す構成では、操作ユニット6からの信号を受けた処理ユニット5がスリットランプ3を制御するようになっているが、このような電気的な駆動力を用いて動作する機構だけでなく、操作者が印加した駆動力を用いて動作する機構を適用することもできる。
【0023】
(スリットランプ3の光学系)
図2を参照してスリットランプ3の光学系について説明する。なお、
図2には、眼底Efのレーザ治療に用いられるコンタクトレンズCLが示されている。スリットランプ3は、照明系10と、観察系30と、レーザ照射系50とを有する。
【0024】
(照明系10)
照明系10は、被検眼Eを観察するための照明光を出力する。照明部3aは、照明系10の光軸(照明光軸)10aの向きを左右方向及び上下方向に変更可能に構成されている。それにより、被検眼Eの照明方向を任意に変更することができる。
【0025】
照明系10は、光源11と、集光レンズ12と、フィルタ13、14及び15と、スリット絞り16と、結像レンズ17、18及び19と、偏向部材20とを有する。
【0026】
光源11は照明光を出力する。なお、照明系10に複数の光源を設けてもよい。たとえば、定常光を出力する光源(ハロゲンランプ、LED等)と、フラッシュ光を出力する光源(キセノンランプ、LED等)の双方を光源11として設けることができる。また、角膜観察用の光源と眼底観察用の光源とを別々に設けてもよい。集光レンズ12は、光源11から出力された光を集めるレンズ(系)である。光源11の動作は、処理ユニット5により制御される。
【0027】
フィルタ13〜15は、それぞれ、照明光の特定の成分を除去又は弱める作用を持つ光学素子である。フィルタ13〜15としては、たとえば、ブルーフィルタ、無赤色フィルタ、減光フィルタ、防熱フィルタ、角膜蛍光フィルタ、色温度変換フィルタ、演色性変換フィルタ、紫外線カットフィルタ、赤外線カットフィルタなどがある。各フィルタ13〜15は、照明光の光路に対して挿脱可能とされている。フィルタ13〜15の挿脱は、処理ユニット5により制御される。
【0028】
スリット絞り16は、スリット光(細隙光)を生成するためのスリットを形成する。スリット絞り16は、一対のスリット刃を有する。これらスリット刃の間隔を変更することによりスリット幅が変更される。なお、スリット絞り16以外の絞り部材を照明系10に設けることができる。この絞り部材の例として、照明光の光量を変更するための照明絞りや、照明野のサイズを変更するための照明野絞りなどがある。また、これら絞り部材以外の部材を用いて照明光の光量や照射野のサイズを変更することが可能である。このような部材の例として後述の液晶シャッタがある。スリット絞り16、照明絞り、照明野絞り、及び液晶シャッタのそれぞれの動作は、処理ユニット5により制御される。
【0029】
結像レンズ17、18及び19は、照明光の像を形成するためのレンズ系である。偏向部材20は、結像レンズ17、18及び19を経由した照明光を偏向して被検眼Eに照射させる。偏向部材20としては、たとえば反射ミラー又は反射プリズムが用いられる。
【0030】
上記以外の部材を照明系10に設けることができる。たとえば、偏向部材20の後段に、拡散板を挿脱可能に設けることができる。拡散板は、照明光を拡散することにより、照明野の明るさを一様にする。また、照明光による照明野の背景領域を照明する背景光源を設けることができる。
【0031】
(観察系30)
観察系30は、被検眼Eによる照明光の反射光を術者眼E
0に案内する光学系である。観察系30は、左右両眼での観察を可能とする左右一対の光学系を有する。左右の光学系は実質的に同一の構成を有するので、
図2には一方の光学系のみが示されている。
【0032】
観察部3bは、観察系30の光軸(観察光軸)30aの向きを左右方向及び上下方向に変更可能に構成されている。それにより、被検眼Eの観察方向を任意に変更することができる。
【0033】
観察系30は、対物レンズ31と、変倍レンズ32及び33と、保護フィルタ34と、結像レンズ35と、偏向部36と、視野絞り37と、接眼レンズ38とを有する。
【0034】
対物レンズ31は、被検眼Eに対峙する位置に配置される。変倍レンズ32及び33は、変倍光学系(ズームレンズ系)を構成する。各変倍レンズ32及び33は、観察光軸30aに沿って移動可能とされている。変倍光学系の他の例として、観察系30の光路に対して選択的に挿入可能な複数の変倍レンズ群を設けることができる。これら変倍レンズ群は、それぞれ異なる倍率を付与するように構成されている。観察系30の光路に配置された変倍レンズ群が変倍レンズ32及び33として用いられる。このような変倍光学系により、被検眼Eの肉眼観察像や撮影画像の倍率(画角)を変更できる。倍率の変更は、たとえば、操作ユニット6に含まれる観察倍率操作ノブを操作することにより行われる。また、処理ユニット5が、操作ユニット6に含まれるスイッチ等による操作に基づいて、倍率を制御するようにしてもよい。
【0035】
保護フィルタ34は、被検眼Eに照射される治療光LTを遮蔽するフィルタである。それにより、術者眼E
0をレーザ光から保護することができる。保護フィルタ34は、たとえば、レーザ治療(又はレーザ出力)の開始トリガに対応して光路に挿入される。通常の観察時には、保護フィルタ34は光路から退避される。保護フィルタ34の挿脱は、処理ユニット5により制御される。また、見かけ上の色味の変化を減少させる多層膜構造のフィルタを用いることも可能である。その場合、このフィルタを常に光路に配置させておくことができる。
【0036】
結像レンズ35は、被検眼Eの像を結ばせるレンズ(系)である。偏向部36は、光の進行方向を術者の眼幅に合わせるように平行移動させる光学部材であり、プリズム36a及び36bを含んで構成される。接眼レンズ37は偏向部36と一体的に移動する。偏向部36と接眼レンズ37は接眼部3cに格納されている。観察系30における他の部材は、観察部3bに格納されている。
【0037】
(レーザ照射系50)
レーザ照射系50は、光源ユニット2から光ファイバ4を介してスリットランプ3に伝送された照射光を被検眼Eに導く光学系である。
【0038】
レーザ照射系50は、コリメータレンズ51と、ガルバノスキャナ52と、ミラー53と、リレーレンズ54及び55と、ミラー56と、コリメータレンズ57と、偏向部材58とを有する。
【0039】
コリメータレンズ51は、光ファイバ4から出力された照射光を平行光束にする。ガルバノスキャナ52は、照射光を2次元的に偏向する。ガルバノスキャナ52は、たとえば、照射光を左右方向に偏向するためのガルバノミラーと、照明光を上下方向に偏向するためのガルバノミラーとを含む。これらガルバノミラーは、反射面の偏向可能方向が互いに直交している。これらガルバノミラーの向きをそれぞれ独立に変更することで、照射光の2次元的な偏向が実現される。ガルバノスキャナ52の動作は、処理ユニット5により制御される。
【0040】
ミラー53は、ガルバノスキャナ52を経由した照射光を反射して、その進行方向を変える。リレーレンズ54及び55は、ミラー53により反射された照射光をリレーする。ミラー56は、リレーレンズ54及び55を経由した照射光を反射して、その進行方向を変える。コリメータレンズ57は、リレーレンズ54及び55を経由した照射光を平行光束にする。偏向部材58は、対物レンズ31の後方に配置され、コリメータレンズ57を経由した照射光を偏向して被検眼Eに照射させる。
【0041】
[照射光のパターン]
照射光のパターンについて説明する。照射光のパターンには様々な条件(照射条件)がある。照射光の投影像をスポットと呼ぶ。照射条件としては、複数のスポットの配列(配列条件)、配列のサイズ(配列サイズ条件)、配列の向き(配列方向条件)、各スポットのサイズ(スポットサイズ条件)、スポットの間隔(スポット間隔条件)などがある。その他、スポットの個数(スポット数条件)なども考えられるが、他の条件(の組み合わせ)と実質的に同一視することができる。
【0042】
配列条件は、複数のスポットがどのように配列されているかを示す条件である。配列条件には、たとえば上記特許文献に記載されているように、様々なものがある。その具体例として、円状配列(
図3A)、楕円状配列(
図3B)、矩形状配列(
図3C)、弧状配列(
図3D)、直線状配列(
図3E)、円板状配列(
図3F)、楕円板状配列(
図3G)、矩形板状配列(
図3H)、扇形板状配列(
図3I)、幅の有る円状配列(円環状配列(
図3J))、幅の有る弧状配列(円環状配列の一部:部分円環状配列(
図3K))、幅の有る直線状配列(帯状配列(
図3L))などがある。また、ユーザが任意に配列を設定できるように構成することも可能である。また、複数の配列を組み合わせて使用することも可能である(たとえば特許文献1の
図6(h))。配列条件は、ガルバノスキャナ52の制御に用いられる。
【0043】
配列サイズ条件は、或る配列において、その配列をどのようなサイズで投影するかを示す条件である。たとえば、円状配列において、そのサイズ(たとえば径)を示すパラメータが配列サイズ条件である。配列サイズ条件については、これを任意に設定できるように構成してもよいし、これの選択肢(たとえば大、中、小)を設けるように構成してもよい。配列サイズ条件は、ガルバノスキャナ52の制御に用いられる。
【0044】
配列方向条件は、或る配列において、その配列をどのような向きで投影するかを示す条件である。たとえば、弧状配列の向きを示すパラメータが配列方向条件である。配列方向条件については、これを任意に設定できるように構成してもよいし、これの選択肢(たとえば上向き、下向き、左向き、右向き)を設けるように構成してもよい。配列方向条件は、ガルバノスキャナ52の制御に用いられる。
【0045】
スポットサイズ条件は、各スポットをどの程度のサイズで投影するかを示す条件である。たとえば、円状配列において、各スポットの投影サイズ(径、面積、周囲長等)を変更することで、異なるパターンの円状配列を適用することができる。スポットサイズ条件については、これを任意に設定できるように構成してもよいし、これの選択肢(たとえば大、中、小)を設けるように構成してもよい。なお、或る配列において、全てのスポットサイズが同じである必要はない。その場合、或る配列を複数の部分に分け、各部分についてスポットサイズを個別に設定するように構成することができる。
【0046】
スポットサイズを変更するための構成について説明する。光ファイバ4が単一の導光路からなる場合、スポットサイズを変更するための光学部材がレーザ照射系50に設けられる。この光学部材は、たとえば変倍レンズ(系)である。処理ユニット5は、レーザ照射系50の光軸(照射光軸)50aに沿って変倍レンズを移動させることにより、設定されたスポットサイズを実現する。
【0047】
光ファイバ4が2つ以上の導光路を有する場合、これら導光路の径をそれぞれ異ならせることができる。この場合、2つ以上の導光路を択一的に使用することで、被検眼Eに照射される光のスポットサイズが変更される。処理ユニット5は、目的のスポットサイズに対応する導光路に照射光が入射される向きに、光源ユニット2のガルバノミラー2cを配置させる。
【0048】
光ファイバ4は、パターンを保持しつつ光を伝送することが可能なイメージングファイバ(画像伝送ファイバ)であってもよい。この場合、光ファイバ4の前段又は後段の任意の位置に、スポットサイズを変更するための光学部材(変倍レンズ等)が設けられる。この光学部材の制御は、光ファイバ4が単一の導光路からなる場合と同様である。
【0049】
スポット間隔条件は、隣接するスポットをどの程度の間隔(ピッチ)で投影するかを示す条件である。スポット間隔条件については、これを任意に設定できるように構成してもよいし、これの選択肢(たとえば疎、密)を設けるように構成してもよい。なお、或る配列において、全てのスポット間隔が同じである必要はない。その場合、或る配列を複数の部分に分け、各部分についてスポット間隔を個別に設定するように構成することができる。スポット間隔条件は、ガルバノスキャナ52の制御に用いられる。
【0050】
照射条件には、照射光のパターン以外の事項に関するものも含まれる。たとえば、複数種別の照射光を選択的に使用可能な場合、照射光の種別を照射条件に含めることができる。照射条件の種別の具体例として、レーザ光の種別(波長、用途等)がある。このような照射光種別条件は、照準光源2a及び/又は治療光源2bの制御に用いられる。
【0051】
また、照射条件は、照射光の強度に関する条件を含んでいてもよい。この照射強度条件の例として、照準光源2aや治療光源2bによる照射光の出力強度を示す出力強度条件がある。出力強度条件は、照準光源2a及び/又は治療光源2bの制御に用いられる。また、出力強度条件は、治療光源2bから出力される治療光(レーザ光)のエネルギーを示すパラメータを含んでいてもよい。
【0052】
照射強度条件の他の例として、照射光の光量を減光部材によって調整するための条件(減光条件)がある。減光部材としては減光フィルタがある。より具体的には、1つの減光フィルタを光路に挿脱する構成や、透過率が異なる複数の減光フィルタを選択的に光路に配置可能な構成などがある。
【0053】
[制御系]
レーザ治療装置1の制御系について、
図4を参照しながら説明する。レーザ治療装置1の制御系は、処理ユニット5に設けられた制御部101を中心に構成される。なお、
図4には、この実施形態で特に注目する構成部位のみが記載されており、それ以外の構成部位は省略されている。
【0054】
(制御部101)
制御部101は、レーザ治療装置1の各部を制御する。たとえば、制御部101は、光源ユニット2の制御、表示ユニット7の制御、照明系10の制御、観察系30の制御、レーザ照射系50の制御などを行う。
【0055】
光源ユニット2の制御として、制御部101は、照準光源2aの制御、治療光源2bの制御、ガルバノミラー2cの制御などを行う。照準光源2a及び治療光源2bの制御は、照射光の出力のオン/オフ、照射光の出力強度(出力光量)の制御などを含む。また、1つ以上の治療光源2bにより複数種別の治療光LTを出力可能な構成が適用される場合、制御部101は、治療光LTを選択的に出力させるように治療光源2bを制御する。ガルバノミラー2cの制御は、ガルバノミラー2cの反射面の向きを変更する制御を含む。
【0056】
表示ユニット7は、制御部101の制御を受けて各種の情報を表示する。表示ユニット7は、LCD等のフラットパネルディスプレイ、CRTディスプレイなどの任意の表示デバイスを含んで構成される。表示ユニット7は、たとえばスリットランプ3又は処理ユニット5(コンピュータ)に設けられる。
【0057】
照明系10の制御として、制御部101は、光源11の制御、フィルタ13〜15の制御、スリット絞り16の制御、その他の絞り部材の制御などを行う。光源11の制御は、照明光の出力のオン・オフ、照明光の出力強度(出力光量)の制御などを含む。
【0058】
フィルタ13〜15の制御は、照明光軸10aに対してフィルタ13〜15をそれぞれ独立に挿脱する制御を含む。フィルタ13〜15の制御は、フィルタ駆動部13Aを制御することにより行われる。フィルタ駆動部13Aは、ソレノイドやパルスモータ等のアクチュエータと、このアクチュエータにより発生された駆動力をフィルタ13〜15に伝達する機構とを含む。
【0059】
スリット絞り16の制御は、一対のスリット刃の間隔を変更する制御や、一対のスリット刃を一体的に移動させる制御などを含む。前者の制御は、スリット幅の変更制御に相当する。後者の制御は、スリット幅を一定に保った状態で照明光(スリット光)の照射位置を変更する制御に相当する。その他の絞り部材には、前述のように、照明光の光量を変更するための照明絞りや、照明野のサイズを変更するための照明野絞りがある。スリット絞り16、照明絞り、照明野絞りの制御は、絞り駆動部16Aを制御することによりそれぞれ独立に行われる。絞り駆動部16Aは、パルスモータ等のアクチュエータと、このアクチュエータにより発生された駆動力を絞り部材に伝達する機構とを含む。
【0060】
観察系30の制御として、制御部101は、変倍レンズ32、33の制御、保護フィルタ34の制御などを行う。変倍レンズ32、33の制御は、変倍駆動部32Aを制御してこれらを観察光軸30aに沿って移動させる制御、或いは、異なる倍率の変倍レンズ群を観察系30の光路に配置させる制御である。それにより、観察倍率(画角)が変更される。変倍駆動部32Aは、パルスモータ等のアクチュエータと、このアクチュエータにより発生された駆動力を変倍レンズ32、33に伝達する機構とを含む。保護フィルタ34の制御は、保護フィルタ駆動部34Aを制御して、保護フィルタ34を観察光軸30aに対して挿脱するものである。
【0061】
レーザ照射系50の制御として、制御部101は、ガルバノスキャナ52の制御などを行う。ガルバノスキャナ52は、前述のように、照射光を左右方向に偏向するためのガルバノミラー(第1のガルバノミラー)と、照明光を上下方向に偏向するためのガルバノミラー(第2のガルバノミラー)とを含む。制御部101は、第1のガルバノミラーの反射面の向きと、第2のガルバノミラーの反射面の向きとを、それぞれ独立に変更する。それにより、光源ユニット2から光ファイバ4を介して入射された照射光を2次元的に偏向することができる。
【0062】
制御部101は、記憶部102に記憶されたデータの読み出し処理や、記憶部102に対するデータの書き込み処理を行う。
【0063】
制御部101は、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ等を含んで構成される。このハードディスクドライブには、制御プログラムが予め記憶されている。制御部101の動作は、この制御プログラムと上記ハードウェアとが協働することによって実現される。また、制御部101は、外部装置と通信するための通信デバイスを含んでいてもよい。制御部101は「制御部」に含まれる。
【0064】
(記憶部102)
記憶部102は各種のデータやコンピュータプログラムを記憶する。記憶部102は、たとえばRAM、ROM、ハードディスクドライブ等の記憶装置を含んで構成される。記憶部102は「制御部」に含まれる。
【0065】
記憶部102には対応情報102aが予め記憶されている。対応情報102aにおいては、光源ユニット2により生成される照射光の照射条件と、照明系10による眼底Efの照明範囲とが対応付けられている。前述のように、この実施形態では所定パターンの照射光が眼底Efに照射され、照射光の照射条件には、所定パターンを形成する複数のスポットの配列を示す配列条件、所定パターンのサイズを示す配列サイズ条件、所定パターンの向きを示す配列方向条件、各スポットのサイズを示すスポットサイズ条件、スポットの間隔を示すスポット間隔条件などがある。一方、照明系10による照明範囲は、前述の絞り部材(スリット絞り16、照明絞り、照明野絞り)などによって変更される。対応情報102aは、上記照射条件のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせと、照明系10による照明範囲とを対応付けている。
【0066】
対応情報102aの具体例を説明する。
図5に示す対応情報102aは、配列条件と照明範囲とが対応付けられたテーブル情報である。配列条件としては、前述の円状配列、楕円状配列、矩形状配列、弧状配列、直線状配列、円板状配列、楕円板状配列、矩形板状配列、扇形板状配列、円環状配列、部分円環状配列、帯状配列が列挙されている。なお、各照明範囲は、たとえば、対応する配列条件(及びパターンのサイズ)を含むように設定される。また、各照明範囲のパラメータとしては、絞り部材の開口サイズ(たとえばスリット幅、スリット長など)を示す情報が用いられる。このパラメータの例として、スリット絞り16のスリット刃の位置情報、スリット幅の値、スリット長の値、照明野絞りのF値などがある。
【0067】
複数のスポットが円状に配列された円状配列と、この円状配列の内部にもスポットが設けられた円板状配列及び円環状配列には、予め設定された照明範囲A1がそれぞれ対応付けられている。複数のスポットが楕円状に配列された楕円状配列と、この楕円状配列の内部にもスポットが設けられた楕円板状配列には、予め設定された照明範囲A2がそれぞれ対応付けられている。複数のスポットが矩形状の配列された矩形状配列と、この矩形状配列の内部にもスポットが設けられた矩形板状配列には、予め設定された照明範囲A3がそれぞれ対応付けられている。複数のスポットが弧状に配列された弧状配列には、予め設定された照明範囲A4が対応付けられている。複数のスポットが直線状に配列された直線状配列には、予め設定された照明範囲A5が対応付けられている。扇形に区画された2次元領域に複数のスポットが配列された扇形板状配列には、予め設定された照明範囲A6が対応付けられている。円環状配列の一部からなる2次元領域に複数のスポットが配列された部分円環状配列には、予め設定された照明範囲A7が対応付けられている。直線状配列をその短手方向に拡大した2次元領域に複数のスポットが配列された帯状配列には、予め設定された照明範囲A8が対応付けられている。各照明範囲A1〜A8は、たとえば、対応する配列条件の形状及び/又はサイズに応じて予め設定される。なお、配列条件のサイズ(照射光のパターンのサイズ)は、任意に設定されたデフォルト値(基準サイズ)であってよい。
【0068】
配列サイズ条件を考慮した対応情報102aについて説明する。配列サイズ条件は、たとえば、照射光の各パターンの基準サイズに対する比として設定される。具体例として、
図5の対応情報102aについて説明したように基準サイズが予め設定されている場合、この基準サイズに対するパターンのサイズの比を示す値と、照明範囲を示すパラメータとが対応付けられた対応情報102aが作成される。なお、スポットサイズ条件やスポット間隔条件の変更に応じてパターン全体のサイズ(つまり配列サイズ条件)が変化する場合、上記と同様にして、スポットサイズ条件やスポット間隔条件を考慮した対応情報102aが作成される。
【0069】
配列方向条件を考慮した対応情報102aについて説明する。配列サイズ条件を考慮した対応情報102aは、回転対称性を有する配列パターンについては設定する必要はない。たとえば、円形状配列や円板状配列は任意の回転について対称性を有するので、配列方向条件の項目に円形状配列を含める必要はない。一方、楕円状配列や楕円板状配列は、180度の回転に対してのみ対称性を有する。よって、配列方向条件の変化、つまり回転角度の様々な値に対して、異なる照明範囲が対応付けられた対応情報102aを作成することができる。他の配列についても同様である。
【0070】
(操作ユニット6、表示ユニット7)
操作ユニット6は、前述のように、各種のハードウェアキー及び/又はソフトウェアキーを含んで構成される。また、表示ユニット7は、各種の情報を表示する。以下に説明するように、操作ユニット6(及び表示ユニット7)は、「照射条件設定部」及び「操作部」の一例として機能する。
【0071】
操作ユニット6は、照射光の照射条件の設定に用いられる。照射条件の設定操作は、たとえば、所定のハードウェアキー又はソフトウェアキーを用いて行われる。前者の具体例として、配列条件、配列サイズ条件、配列方向条件、スポットサイズ条件、スポット間隔条件、スポット数条件、照射光種別条件、照射強度条件(出力強度条件、減光条件)など、任意の照射条件を設定するためのハードウェアキーが操作ユニット6に予め設けられる。ユーザは所望の照射条件に対応するハードウェアキーを操作することで、照射条件の設定を行う。後者の具体例として、上記のような照射条件を設定するための設定画面が、制御部101によって表示ユニット7に表示される。ユーザは、表示された設定画面に設けられたGUIを操作ユニット6によって操作することにより、照射条件の設定を行う。
【0072】
また、操作ユニット6は、眼底Efに対する照射光の照射位置を移動するために用いられる。照射位置の移動操作についても、所定のハードウェアキー又はソフトウェアキーを用いて行われる。なお、照射位置の移動は、たとえば、制御部101がガルバノスキャナ52を制御することにより、又はスリットランプ3の光学系を移動制御することにより行われる。なお、後者の場合、光学系を移動させるための移動機構(光学系移動機構)がスリットランプ3に設けられる。この光学系移動機構は、電動制御されるものであり、アクチュエータと、このアクチュエータにより発生された駆動力を伝達する機構とを含んで構成される。また、ユーザにより行われた操作を駆動力としてスリットランプ3の光学系を移動させることにより、光学系を移動させるように構成することも可能である。
【0073】
図4では、操作ユニット6と表示ユニット7とを別々に表しているが、これらを一体的に構成することも可能である。その具体例として、タッチパネル式のLCDを用いることができる。
【0074】
(データ処理部110)
データ処理部110は各種のデータ処理を行う。データ処理部110には、照明範囲特定部111が設けられている。
【0075】
(照明範囲特定部111)
照明範囲特定部111は、操作ユニット6(及び表示ユニット7)により設定された照射条件に対応する照明範囲を特定する。照明範囲特定部111は「制御部」に含まれる。照明範囲特定部111が実行する処理の具体例を以下に説明する。
【0076】
配列条件、配列サイズ条件、配列方向条件、スポットサイズ条件、スポット間隔条件、スポット数条件、照射光種別条件、照射強度条件(出力強度条件、減光条件)等の照射条件が設定された場合、照明範囲特定部111は、設定された照射条件に対応する照明範囲を対応情報102aに基づいて特定する。この特定処理は、たとえば
図5に示すような対応情報102aにおいて、設定された照射条件に対応付けられた照明範囲を検索することによって実行される。たとえば、配列条件として「円形状配列」が設定された場合、
図5に示す対応情報102aにおいて「円形状配列」に対応付けられている照明範囲「A1」が特定される。
【0077】
なお、配列条件として、複数の項目(配列)が選択設定される場合がある。ここで、複数の配列のうちの1つの配列の内部に他の配列が含まれる場合と、そうでない場合とがある。複数の配列の組み合わせからなる配列条件が設定された場合、照明範囲特定部111は、これら配列の包含関係を判定する。他の配列を含む1の配列が特定された場合、照明範囲特定部111は、この1の配列に対応する照明範囲を、対応情報102aに基づいて特定する。
【0078】
一方、このような1の配列が特定されなかった場合、照明範囲特定部111は、当該組み合わせ配列条件に含まれる2つ以上の配列を特定する。ここで特定される2つ以上の配列は、たとえば、当該組み合わせ配列条件が示すパターンにおいて外縁(輪郭)をなす配列である。そして、照明範囲特定部111は、特定された2つ以上の配列のそれぞれに対応する照明範囲を対応情報102aに基づいて特定し、これら照明範囲を少なくとも包含するように新たな照明範囲を決定する。この新たな照明範囲が、照明範囲特定部111による特定結果として用いられる。
【0079】
照射光の照射位置が移動された場合、照明範囲特定部111は、操作ユニット6を用いた照射位置の移動操作に対応する照明範囲を求める。この処理についてより具体的に説明する。照射位置の移動操作は、照射光(特に照準光)が照射されているときに行われる。照射位置の移動が制御部101を介して行われるよう構成される場合、制御部101は、ガルバノスキャナ52や光学系移動機構に対する制御内容を照明範囲特定部111に送る。照明範囲特定部111は、この制御内容(つまり照射位置の移動内容)に基づいて照明範囲の移動方向及び移動量を特定する。
【0080】
一方、ユーザの操作を駆動力として照射位置を移動させる構成が適用される場合、ユーザの操作内容又は光学系の移動内容を検出する検出部が、照明範囲特定部111に設けられる。検出部は、たとえば、操作内容を検出するエンコーダや、光学系の位置を検出する位置センサを含んで構成される。照明範囲特定部111は、検出部による検出結果に基づいて照明範囲の移動方向及び移動量を特定する。
【0081】
照明範囲特定部111は、上記のようにして得られた照明範囲の特定結果を制御部101に送る。制御部101は、この照明範囲の特定結果に基づいて絞り部材(スリット絞り16等)などを制御することにより、照明系10による眼底Efの照明範囲を変更する。
【0082】
[動作]
レーザ治療装置1の動作について説明する。レーザ治療装置1の動作の一例を
図6に示す。コンタクトレンズCLは被検眼Eに当接されているものとする。
【0083】
(S1:眼底を照明する)
ユーザが所定の操作を行ったことに対応し、制御部101は、照明系10の光源11を点灯させる。このとき、スリット絞り16等の絞り部材は、所定の初期状態になっている。それにより、被検眼Eの眼底Efが照明光によって照明される。
【0084】
(S2:照射条件を設定する)
ユーザは、照準光LA及び/又は治療光LTの照射条件を設定する。この設定操作は、操作ユニット6等の照射条件設定部を用いて行われる。照射条件の設定内容を示す信号は、制御部101を介して照明範囲特定部111に送られる。
【0085】
(S3:照明範囲を特定する)
照明範囲特定部111は、ステップ2で設定された照射条件に対応する照明範囲を、対応情報102aに基づいて特定する。この処理の例については前述した。照明範囲特定部111は、特定された照明範囲を示す信号を制御部101に送る。
【0086】
(S4:照明範囲を変更する)
制御部101は、ステップ3で特定された照明範囲に基づいて絞り駆動部16Aを制御することにより、照明系10による眼底Efの照明範囲を変更する。この照明範囲の変更は、たとえば、スリット絞り16のスリット幅を変更することによる、照明範囲の拡大又は縮小である。
【0087】
(S5:所定パターンの照準光を照射する)
ユーザが所定の操作を行ったことに対応し、制御部101は、照準光源2a、ガルバノミラー2c、ガルバノスキャナ52等を制御することにより、所定パターンの照準光LAを眼底Efに照射させる。なお、照準光の照射を開始するタイミングは、ステップ2以降の任意のタイミングでよい。また、照準光LAのパターンは、たとえばステップ2で設定された照射条件(配列条件等)に基づくものである。
【0088】
(S6:ユーザが照準合わせを行う)
ユーザは、照明系10による照明範囲内の眼底組織を観察して治療部位(傷病部位)を把握し、その治療部位に照準光LAが照射されるように照準光LAの照射位置を移動させる。この操作は、操作ユニット6等の操作部を用いて行われる。
【0089】
なお、前述したように、ステップ4で変更された後における眼底Efの照明範囲は、ステップ5で眼底Efに照射される照準光LAの照射位置(投影パターン)を含んでいる。よって、ユーザ(術者)は、少なくとも照準光LAの照射位置を観察することができ、当該照射位置が治療部位に合致している否か判断することができる。当該照射位置が治療部位に一致している場合には照準合わせを行う必要は無いが、そのようなケースは稀である。したがって、実際には、上記のように照準合わせが行われる。
【0090】
(S7:照明範囲を移動する)
ステップ6における照準合わせの操作内容、つまり照準光LAの照射位置の移動内容は、前述のように、制御部101によって認識される。制御部101は、照準光LAの照射位置の移動操作に対応して絞り駆動部16Aを制御することにより、照明系10による眼底Efの照明範囲を変更する。この照明範囲の変更は、たとえば、スリット幅を維持した状態でスリット絞り16の一対のスリット刃を移動させることによる照明範囲の移動、つまり照射位置に対する照明範囲の追従である。また、この照明範囲の変更は、移動後の照準光LAの照射位置を含む新たな照明範囲への移行であってもよい。また、この照明範囲の変更は、移動前の照準光LAの照射位置と、移動後の照準光LAの照射位置の双方を含むように、照明範囲を拡大するものであってもよい。
【0091】
(S8:照準合わせ完了?)
照準合わせが完了するまで、ステップ6及びステップ7が反復される(S8:No、S6、S7)。
【0092】
(S9:ユーザが治療開始操作を行う)
照準合わせが完了したら(S8:Yes)、ユーザは、操作ユニット6を用いて所定の治療開始操作を行う。
【0093】
(S10:所定パターンの治療光を照射する)
治療開始操作がなされると、制御部101は、被検眼Eに対する照準光LAの照射を停止させるとともに、治療光源2b、ガルバノミラー2c、ガルバノスキャナ52等を制御することにより、所定パターンの治療光LTを眼底Efに照射させる。
【0094】
なお、治療光LTのパターンは、照準光LAのパターンと同じであってもよいし、異なっていてもよい。後者の例として、照準光LAのパターンの一部からなるパターンの治療光LTを照射することができる。また、スポットサイズやスポット間隔を違えることも可能である。以上で、この動作例の説明を終える。
【0095】
[効果]
レーザ治療装置1の効果について説明する。
【0096】
レーザ治療装置1は、照明系10と、観察系30と、照射系(光源ユニット2及びレーザ照射系50)と、照明範囲変更部(スリット絞り16等の絞り部材)と、照射条件設定部(操作ユニット6等)と、制御部101とを有する。照明系10は、被検眼Eの眼底Efを照明する。観察系30は、照明系10により照明された眼底Efを観察するために用いられる。照射系は、所定パターンの照準光LA、及び、この所定パターンに基づくパターンのレーザ光からなる治療光LTを、眼底Efに照射する。なお、前述のように、値旅行LTのパターンは照準光LAのパターンと同じであっても異なってもよい。照明範囲変更部は、照明系10による眼底Efの照明範囲を変更する。照射条件設定部は、照射系による照準光LA及び/又は治療光LTの照射条件を設定するために用いられる。制御部101は、照射条件設定部により設定された照射条件に基づき照明範囲変更部を制御することで、照明系10による眼底Efの照明範囲を変更する。
【0097】
このようなレーザ治療装置1によれば、照準光LAや治療光LTの照射条件に応じて眼底Efの照明範囲を自動で変更することが可能である。それにより、照明範囲を調整する操作の手間を省くことができ、レーザ治療装置の操作の容易化を図ることが可能となる。
【0098】
照射光(照準光LA、治療光LT)の照射条件は、次に列挙する条件のうちの1つ以上を含んでいてもよい:照射光のパターンにおけるスポットの配列;照射光のパターンのサイズ;照射光のパターンの向き;照射光のパターンにおけるスポットのサイズ;照射光のパターンにおけるスポットの間隔。それにより、様々な照射条件について、照明範囲の自動での変更を行うことができる。
【0099】
照射条件設定部は、眼底Efに対する照準光LAの照射位置を移動するための操作部(操作ユニット6等)を含んでいてもよい。その場合、制御部101は、操作部を用いた照射位置の移動操作に対応して照明範囲の変更を行うことができる。この構成によれば、照準光LAの照射位置の移動に伴う照明範囲の変更操作を省くことができるので、レーザ治療装置の操作の更なる容易化を図ることができる。
【0100】
[変形例]
以上において説明した実施形態は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。以下、変形例について説明する。なお、上記の実施形態に含まれる任意の構成や、以下の変形例に含まれる任意の構成を、適宜に組み合わせることが可能である。
【0101】
(変形例1)
上記の実施形態では、照明範囲変更部として、スリット絞り16等の絞り部材を用いる場合について説明した。この変形例では、液晶シャッタを照明範囲変更部として使用する場合について説明する。
【0102】
この変形例に係るレーザ治療装置の構成例を
図7に示す。この変形例に係るレーザ治療装置は、上記実施形態に液晶シャッタ16Bを付加した構成を有する。液晶シャッタ16Bは、たとえば液晶素子板と偏光板とを重ね合わせた構成を有し、液晶素子板に対する電気的な制御を受けて、シャッタの開閉動作、透光領域の変更動作、光透過率の変更動作などを行うデバイスである。液晶シャッタのそれぞれの動作は、制御部101により制御される。
【0103】
液晶シャッタ16Bを制御することで、眼底Efに対する照明のオン/オフの切り替え、照明範囲の変更、照明光の明るさの変更などを行うことができる。特に、この変形例では、制御部101が、照射条件設定部(操作ユニット6等)により設定された照射条件に基づき液晶シャッタ16Bを制御することで、照明系10による眼底Efの照明範囲を変更することが可能である。それにより、照準光LAや治療光LTの照射条件に応じて眼底Efの照明範囲を自動で変更することが可能となるので、照明範囲を調整する操作の手間を省略し、レーザ治療装置の操作の容易化を図ることができる。
【0104】
(変形例2)
上記の実施形態や変形例1では、光源11から出力された照明光を加工することで、眼底Efの照明範囲を変更している。この実施形態では、光源自体を制御することで眼底Efの照射範囲を変更する構成について説明する。
【0105】
この変形例に係るレーザ治療装置の構成例を
図8に示す。この変形例に係るレーザ治療装置は、上記実施形態の光源11を面光源11Aに置換したものである。面光源11は、平面状又は曲面状の発光面から照明光を発生する。面光源11Aは、たとえば有機EL光源のように1つの面が発光する光源でもよいし、複数の光源(LED等)を2次元的に配列してなる光源ユニットであってもよい。
【0106】
制御部101は、面光源11Aを制御することにより発光領域を変更する。たとえば面光源11Aが有機EL光源である場合、バックライトを構成する複数の発光素子を選択的に点灯させることにより、光源11Aの発光領域を変更することができる。また、面光源11Aが上記光源ユニットである場合、これを構成する複数の光源を選択的に点灯させることにより、光源11Aの発光領域を変更することができる。
【0107】
制御部101は、照射条件設定部により設定された照射条件に基づき面光源11A(照明範囲変更部)を制御することで、照射条件に応じた発光領域から照明光を出力させる。照射条件と発光領域との対応関係は、たとえば上記実施形態と同様の対応情報102aを予め作成しておくことによって得られる。
【0108】
このようにして面光源11Aの発光領域を変更することにより、照明系10による眼底Efの照明範囲が変更される。それにより、照準光LAや治療光LTの照射条件に応じて眼底Efの照明範囲を自動で変更することが可能となるので、照明範囲を調整する操作の手間を省略し、レーザ治療装置の操作の容易化を図ることができる。
【0109】
(変形例3)
上記の実施形態や変形例では、操作ユニット6等の照射条件設定部を用いて照射条件を設定している。この変形例では、照射条件を自動で設定可能な構成について説明する。
【0110】
この変形例に係るレーザ治療装置の構成例を
図9に示す。この変形例に係るレーザ治療装置は、観察系30に撮像素子39(撮影系)を有し、データ処理部110に照射位置特定部112を有する。
【0111】
撮像素子39は、たとえば、観察光軸30aから分岐した光路上に設けられる。この分岐は、ハーフミラー等のビームスプリッタにより実現される。撮像素子39は、照射光(照準光LA及び/又は治療光LT)の波長帯に感度を有する。よって、照射光を眼底Efに照射した状態で撮像素子39による撮影を行うと、その撮影画像には眼底Efに対する照射光の投影パターンが描出される。また、撮像素子39は、照明系10による照明光の波長帯に感度を有していてもよい。その場合、撮影画像には、眼底Efの形態と、照射光の投影パターンとが描出される。
【0112】
照射位置特定部112は、照射光が照射された状態の眼底Efを撮像素子39により撮影して得られた撮影画像を解析することで、眼底Efにおける照射光の照射位置を特定する。この処理の例を以下に説明する。なお、眼底Efの撮影時において、照明系10による照明の有無は任意である。
【0113】
まず、照射位置特定部112は、必要に応じて、撮影画像の画質(コントラスト等)を向上させるための画像処理を施す。
【0114】
眼底Efの撮影時に照明系10による照明がなされていない場合、撮影画像には、照射光の投影パターンに相当する画像領域(パターン領域)が描出されている。照射位置特定部112は、撮影画像の画素値に基づいて、撮影画像のフレーム(描画範囲)におけるパターン領域の位置を特定する。この位置情報は、たとえば、フレームに予め設定された2次元座標系で表現される。照射位置特定部112は、特定されたパターン領域に相当する眼底Efの部位を照明するように、照明系10(照明範囲変更部)を制御する。この処理は、たとえば、記憶部102に予め記憶された、照明系10による照明範囲とフレームにおける位置とが対応付けられた対応情報(図示せず)を参照することによって実行される。このような処理により、照射光が照射されている眼底Efの部位を照明系10で照明することができる。
【0115】
眼底Efの撮影時に照明系10による照明が行われている場合、撮影画像には、照射光の投影パターンと、眼底Efの形態とが描出されている。照射位置特定部112は、撮影画像の画素値に基づいて、照射光の投影パターンに相当するパターン領域と、眼底Efの形態が描出されている画像領域(つまり照明光が照射されている部位に相当する画像領域:照明領域)とを特定する。制御部101は、パターン領域と照明領域とが所定の位置関係になるように、照明系10(照明範囲変更部)を制御する。その具体例として、パターン領域が照明領域に含まれている場合には、照明範囲の変更を行う必要はない。一方、パターン領域の少なくとも一部が照明領域に含まれない場合、制御部101は、照明領域がパターン領域を含むように照明系10(照明範囲変更部)を制御する。このような処理により、照射光が照射されている眼底Efの部位を照明系10で照明することができる。
【0116】
データ処理部110は、撮影画像の画素値に基づいて、眼底Efの傷病部位に相当する画像領域(傷病領域)を特定することができる。この処理は、たとえば、傷病部位を撮影したときの特徴的な形態や画素値(輝度値等)に基づいて実行される。制御部101は、この傷病部位を照明するように照明系10(照明範囲変更部)を制御することができる。また、制御部101は、特定された傷病領域と、照射光に相当するパターン領域との位置関係に基づいて、ガルバノスキャナ52を制御することにより、傷病領域に照射光が照射されるように照射光の位置を変更することができる。
【0117】
この変形例に係るレーザ治療装置の効果について説明する。この変形例に係るレーザ治療装置は、照明系10と、撮影系(撮像素子39を含む)と、照射系(光源ユニット2、レーザ照射系50)と、照射位置特定部112と、制御部101とを有する。照明系10は、被検眼Eの眼底Efを照明する。また、照明系10は、眼底Efの照明範囲を変更する照明範囲変更部を含む。撮影系は、照明系10により照明された眼底Efを撮影する。照射系は、所定パターンの照準光LA、及び、所定パターンに基づくパターンのレーザ光からなる治療光LTを、眼底Efに照射する。照射位置特定部112は、照準光LA(又は治療光LT)が照射された状態の眼底Efを撮影系により撮影して得られた撮影画像を解析して、照準光LA(又は治療光LT)の照射位置を特定する。制御部101は、照射位置の特定結果に基づき照明範囲変更部を制御することにより、照明系10による眼底Efの照明範囲を変更する。
【0118】
このようなレーザ治療装置によれば、照準光LA(又は治療光LT)が照射された状態の眼底Efの撮影画像に基づいて眼底Efの照明範囲を自動で変更することが可能である。それにより、照明範囲を調整する操作の手間を省くことができ、レーザ治療装置の操作の容易化を図ることが可能となる。