【文献】
ダイワフィッシングタックルカタログ2012,日本,グローブライド株式会社,2012年 2月 1日,p.28-30
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記釣糸案内体は、前記クラッチ機構がOFFからONになったとき、釣糸に当て付いて釣糸を前記幅狭の釣糸案内部に位置させる規制部を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に係る魚釣用リールについて説明する。
図1から
図4は、本発明に係る魚釣用リールの一実施形態を示す図であり、
図1は、釣糸案内体部分を露出させた平面図、
図2は、
図1に示す魚釣用リールの平面図、
図3は、クラッチ機構の動力伝達部分の構成を示す側面図(クラッチON状態)、そして、
図4は、クラッチ機構の動力伝達部分の構成を示す側面図(クラッチOFF状態)である。なお、以下において、前後方向、左右方向、及び上下方向は、
図1および
図3で示す方向で定義する。
【0014】
本実施形態に係る魚釣用リールは、船釣り用に適した形態となっており、左右のフレーム2a,2bを左右カバー3a,3bで覆った左右側板1A,1Bを備えたリール本体1を有している。前記リール本体1には、左右側板間に位置し、図示しない釣竿に装着されるリール脚1Cが一体形成されている。また、前記左右のフレーム2a,2b間には、スプール軸5が軸受を介して回転可能に支持されており、スプール軸5には、釣糸が巻回されるスプール5Aが一体的に固定されている。さらに、前記左右のフレーム2a,2b間のスプール前方の上方には、表示装置100が設けられており、内部に設置された制御部90(
図8参照)の表示制御によって、液晶表示部100aには、釣糸の繰り出し量、時間情報等、各種の情報が表示されるようになっている。
【0015】
本実施形態では、前記スプール5Aを回転駆動するハンドル8を右側板1B側に設置しており、右フレーム2bと右カバー3bとの間の空間には、ハンドル8の回転駆動力をスプール軸5に伝達する公知の動力伝達機構10が配設されている。また、右フレーム2bと右カバー3bとの間には、スプール軸5を動力伝達状態と動力遮断状態に切り換える公知のクラッチ機構20が配設されており、このクラッチ機構20は、スプール5Aの後方側の左右側板間に配設されたクラッチ切り換え操作部材(以下、操作部材と称する)21を押し下げ操作することで、クラッチON状態(動力伝達状態であり釣糸巻き取り状態)からOFF状態(動力遮断状態であり釣糸放出状態)に切り換えるようになっている。
【0016】
前記左右の側板1A,1B間には、スプール5Aの釣糸繰出し方向側に、レベルワインド装置50が配設されている。このレベルワインド装置50は、前記ハンドル8を回転操作することで、釣糸を挿通する釣糸案内体60が左右に往復移動するよう構成されており、釣糸の巻き取り操作に伴って、スプール5Aに対して釣糸を均等に巻回する機能を有する。
【0017】
前記駆動力伝達機構10は、ハンドル8が固定されたハンドル軸8aにドラグ機構と関連して回転可能に装着された駆動歯車11と、この駆動歯車11に噛合するピニオン12とを備えている。前記ピニオン12は、スプール軸5と同軸上に設置されており、ピニオン軸(スプール軸であっても良い)12aに沿って軸方向に移動可能となっている。また、ピニオン12の外周には、円周溝12bが形成されており、この円周溝12bに、後述するクラッチ機構20のヨーク22が係合して、ピニオン12を軸方向に移動させるようになっている。すなわち、ピニオン12が軸方向に移動することで、スプール軸5との間で継脱がなされ、動力伝達状態(クラッチON状態)/動力遮断状態(クラッチOFF状態)に切り換えられるようになっている。
【0018】
前記クラッチ機構20は、右フレーム2bに対して回動可能に支持され、振り分けバネ23によって、
図3に示す動力伝達状態(クラッチON状態)と、
図4に示す動力遮断状態(クラッチOFF状態)に振り分け保持されるクラッチプレート25を備えている。このクラッチプレート25は、右フレーム2bに上下方向に形成された連結孔2dを介して前記操作部材21と連結されており、クラッチプレート25に形成された長孔25aに、右フレーム2bに突出するように設けられたピン2eが挿入されて、その回動駆動が案内されるようになっている。
【0019】
前記クラッチプレート25の表面には、公知のように、前記ピニオン12の円周溝12aに係合したヨーク22と係合可能な一対のカム面26が形成されている。前記ヨーク22の先端側は、右フレーム2bに突設された支持ピン27によって保持されており、ヨークは、各支持ピンに配設されたバネ部材(図示せず)によって常時、クラッチプレート25側に付勢された状態となっている。なお、
図3は、
図1(
図2)に示すヨーク22がバネ部材によってクラッチプレート25側に付勢された状態を示しており、このとき、ピニオン12はスプール軸の端部に形成されている係合部に嵌合してクラッチON状態となっている。
【0020】
前記クラッチプレート25は、操作部材21が、
図3の矢印に示すように押下げ操作されると反時計回り方向に回動され、前記カム面、及びヨークを介して、ピニオン12をスプール軸の端部に形成されている係合部から離脱させ、
図4に示すように、クラッチOFF状態に切り換える。なお、この状態は、前記振り分けバネ23によって保持される。
【0021】
前記クラッチプレート25には、クラッチをOFF状態からON状態にする自動復帰機構30が設けられている。この自動復帰機構30は、クラッチプレートに一体的に設けられるキック部材31と、前記ハンドル軸8aに回り止め固定されるラチェット32とを備えており、前記キック部材31は、クラッチONからクラッチOFFに切り換えると、
図4に示すように、ラチェット32の回転軌跡内に侵入するように配置、構成されている。このため、クラッチOFF状態において、前記ハンドル8を巻き取り操作すると、ラチェット32の回転により、キック部材31はキックされ、自動的にクラッチプレート25をクラッチON状態の位置に復帰させて、振り分けバネ23のバネ力で保持される。なお、クラッチの復帰は、前記操作部材21を押し上げ操作しても行うことが可能である。
【0022】
前記スプール5Aの前方側の左右側板間には、前記レベルワインド装置50が配置されており、このレベルワインド装置50は、スプール5Aに巻回された釣糸を挿通させ、前記左右側板間で往復移動する釣糸案内体60を備えている。この釣糸案内体60は、釣糸巻き取り状態(クラッチON状態)では、左右に往復駆動され、釣糸放出状態(クラッチOFF状態)では、変位機構80によって、スプール5Aに巻回されている釣糸の巻回量に応じて前方に変位(回動)するよう構成されている。
【0023】
以下、レベルワインド装置50の構成、及び変位機構80の構成について、
図5から
図12を併せて参照しながら説明する。なお、これらの図において、
図5は、釣糸案内体を変位させる変位機構部分の構造を示す断面図、
図6は、
図1に示す魚釣用リールのA−A線に沿った断面図であり、釣糸案内体が釣糸巻き取り状態(クラッチON状態)にあるときを示す図、
図7は、
図1に示す魚釣用リールのA−A線に沿った断面図であり、釣糸案内体が釣糸放出状態(クラッチOFF状態)にあるときを示す図、
図8は、釣糸案内体の駆動系を説明するブロック図、
図9は、釣糸案内体を拡大して示す斜視図(クラッチON状態)、
図10は、
図9に示す釣糸案内体の正面図、
図11は、釣糸案内体を拡大して示す斜視図(クラッチOFF状態)、そして、
図12は、
図11に示す釣糸案内体の正面図である。
【0024】
前記レベルワインド装置50は、スプール5Aに巻回された釣糸Sを挿通させる釣糸案内体60を備えており、この釣糸案内体60は、軸受52(
図5参照)を介して左右側板間に回転可能に支持され、前記駆動力伝達機構10を介して回転可能に駆動される螺軸(ウォームシャフト)51によって、左右往復駆動されるよう構成されている。すなわち、前記螺軸51の右フレーム側には、前記ハンドル軸8aに装着された駆動歯車11と隣接して配設されてハンドル軸8aと一体的に回転する連結ギア(図示せず)と噛合する入力ギア53が設けられており、前記螺軸51は、連結ギア及び入力ギア53を介してハンドル8の回転駆動と同期して回転駆動されるようになっている。
【0025】
前記螺軸51は、左右側板間に回動可能に保持される管状体(筒体)55内に収容された状態となっており、前記管状体55の外面には、軸方向に延出する長孔55aが形成され、前記螺軸51の表面に形成された螺旋溝51aを軸方向に沿って部分的に露出させている。また、前記釣糸Sを挿通させる釣糸案内体60は、釣糸挿通部60Aと保持部60Bを一体的に備えており、前記保持部60Bが前記管状体55を囲繞するように、配置、形成されている。
【0026】
前記保持部60Bは、その内部に、前記長孔55aを介して螺旋溝51aと係合する摺動子61を保持している。この摺動子61は、袋ナット62によって、前記保持部60Bに対して固定される。また、前記釣糸案内体60は、螺軸51の回転によって、螺旋溝51aと摺動子61との係合関係によって、軸方向に沿って移動しつつ、管状体55の回りを回転しないように、回り止めされている。本実施形態の構成では、前記管状体55の外周に、軸方向に沿って延出する回り止め部55bを形成しており、回り止め部55bに対して、保持部60Bの係合部64を係合させることで、回り止めを果たしている。具体的には、回り止め部55bは、管状体55の外周に、軸方向に延出する突起(
図6,
図7に示すように、180°間隔で一対設けられている)として構成されており、係合部64は、そのような突起に入り込む凹部として構成されている。
【0027】
上記のように、螺軸51を収容する管状体55に回り止め部55bを一体形成することで、従来のように、釣糸案内体60を回り止めするガイド軸を配設する必要がなくなり、レベルワインド装置の構造を簡素化することが可能となる。
【0028】
また、本実施形態の釣糸案内体60は、左右側板間で往復駆動されることに加え、前後方向に回動可能に構成されている。この場合、本実施形態の釣糸案内体60は、変位機構80によって前後方向に回動駆動されるようになっている。
【0029】
ここで、変位機構80の構成について具体的に説明する。
変位機構80は、前記右フレーム2bに装着された駆動モータ(駆動部)81と、前記右フレーム2bに装着され、前記螺軸51が支持される部分に回動可能に保持される回動プレート82とを備えている。前記回動プレート82は、
図5に示すように、前記螺軸51を回転可能に支持する軸受52の外輪と右フレーム2bとの間で回動可能に保持されており、前記管状体55は、右フレーム2bの内面側において、回動プレート82と回り止め固定されている。すなわち、回動プレート82には、径方向に突出する凸部82aが形成されており(本実施形態では、180°間隔で一対形成されている)、この凸部82aに、管状体55の端部に形成された凹部55cが嵌合することで、両者は、右フレーム2bの内面側で固定された状態(一体回動可能な状態)となっている。
【0030】
前記回動プレート82には、右フレーム2bの外面側に沿うようにして、円弧状の連結片82bが形成されており、この連結片82bには、前記駆動モータ81の出力軸81aに固定された出力ギア81bと噛合する伝達ギア82cが形成されている。
【0031】
これにより、回動プレート82は、駆動モータ81が駆動されることで、出力ギア81b及び伝達ギア82cの噛合関係を介して、所定の範囲、回動駆動され、前記回動プレート82に一体的に固定された管状体55と共に、前記釣糸案内体60は、スプールの前方において前後方向(本実施形態では、前方がクラッチOFF側、後方がクラッチON側とされる)に回動駆動されるようになっている。
【0032】
なお、駆動モータ81は、
図8に示すように、スプールの釣糸巻回量に基づいて駆動モータの回転駆動を制御するプログラムを格納した制御部90からの駆動信号に基づいて駆動される。この場合、本実施形態では、前記制御部90には、スプール5Aに巻回されている釣糸の巻回量(放出量)を検出する糸長計測装置92(
図1、
図2参照)からの巻回量信号(スプールの回転情報信号)が入力されて、クラッチOFF状態になったとき、釣糸の巻回量(釣糸放出量)に基づいて駆動モータ81の駆動が制御されるようになっている。この糸長計測装置92は、例えば、公知のように、スプール軸と共に回転駆動される磁石92aと、この磁石92aの磁界を検知する磁気センサ92bとを備えた構成となっており、磁気センサ92bからの検知信号が制御部90に入力されることで、制御部90は、駆動モータ81の駆動を制御する。
【0033】
また、本実施形態では、前記制御部90には、前記クラッチ機構20のON/OFFを検知するクラッチON/OFF検出装置94(
図3、
図4参照)からのクラッチON/OFF信号が入力され、クラッチ機構20がONからOFFにされたとき、及び、OFFからONにされたとき駆動モータ81の駆動を制御するようにしている。このクラッチON/OFF検出装置94は、例えば、公知のように、クラッチプレートに装着された磁石94aと、この磁石94aの磁界を検知する磁気センサ94bとを備えており、クラッチ機構が切り換えられて磁気センサ94bからの検知信号が制御部90に入力されることで、制御部90は、駆動モータ81の駆動を制御する。
【0034】
すなわち、本実施形態の釣糸案内体60は、クラッチ機構20と連動して回動駆動されるとともに、クラッチOFF時における釣糸放出状態では、スプール5Aに対する釣糸巻回量に応じて回動駆動される(釣糸案内体60の幅広の開口部68の位置が変わるように変位される)ようになっている。なお、上記した糸長計測装置92やクラッチON/OFF検出装置94は、磁気センサ以外に、超音波センサ、光センサ、機械的なセンサ等によって構成することが可能である。
【0035】
前記釣糸案内体60の釣糸挿通部60Aは、スプール5Aからの釣糸を挿通させる部分であり、SUS、チタン等の釣糸抵抗が少ない材料によるフレーム体60Fとして構成されており、
図9から
図12に示すように、前記保持部60Bと共に一体形成されている。具体的には、左右方向に幅狭(細溝状)となった釣糸案内部67と、その釣糸案内部67の上方側で、略対称となるように左右方向に拡がる幅広の開口部68とを備えている。この場合、開口部68は、
図12に示すように、釣糸放出状態となったときの正面視(挿通される釣糸Sに沿って前方から見た正面視)で、左右方向に拡がる略楕円形状となるように形成されており、幅狭の釣糸案内部67に対して相対的に幅広となるように形成されている。また、開口部68の両サイド壁は、その略中央の下部に形成される釣糸案内部67に向けて傾斜して釣糸Sを案内する傾斜案内面68aとなっている。
【0036】
前記開口部68を有するフレーム体60Fは、釣糸放出状態で側面視した際、前後方向に対して傾斜した状態(後方側に向けて次第に立ち上がる形状)となっており、開口部68を規定する上壁68bは、釣糸放出状態では、前後方向に沿った状態となって(
図7及び
図11参照)、可能な限り広い開口を確保できるようになっている。したがって、開口部68を規定する前後方向に沿った上壁68bの後端縁69は、釣糸放出状態から釣糸巻き取り状態に回動した際、開口部68内に挿通されている釣糸Sに対して、上側から当接できる位置関係となっており、釣糸Sを規制する規制部としての機能を有する(以下、後端縁を規制部69と称する)。
【0037】
なお、規制部69は、フレーム体60Fとして一体形成される部分であり、釣糸案内体60が釣糸放出状態(クラッチOFF)から釣糸巻き取り状態(クラッチON)に回動した状態で正面視した際(
図10に示すように、釣糸Sに沿って前方から見た際)、前記釣糸案内部67の上下長さLの範囲内となるような配置関係となっていれば良い。すなわち、このような配置関係となっていれば、釣糸案内体60が、釣糸放出状態から釣糸巻き取り状態に回動すると、開口部68のいずれかの部分に位置する釣糸Sは、規制部69によって押し付けられ、傾斜案内面68aに沿って確実に釣糸案内部67に案内することが可能となる。また、このような位置関係となっていれば、釣糸巻き取り状態で、釣糸Sを確実に釣糸案内部67から離脱しないようにすることができる。
【0038】
前記左右方向に幅狭となった釣糸案内部67は、上下方向に延出しており、そこに入り込んだ釣糸Sの左右方向のブレを防止して、スプール5Aに対して、安定して釣糸を平行巻きする機能(糸巻状態を向上する機能)を有する。
【0039】
なお、上記した構成において、釣糸案内部67を規定する両壁67aは、
図6及び
図7に示すように、前記摺動子61を固定する袋ナット62の上方を覆うように伸びていることが好ましく、このような構成により、釣糸案内部67に入り込んでいる釣糸が、前記袋ナット62の部分で絡むことを効果的に防止することが可能となる。また、釣糸案内部67の底面67cは、
図6に示す釣糸巻き取り状態において、前方に向けて次第に下方向に傾斜する傾斜面となっていることが好ましい。すなわち、このような底面形状にすることにより、スプールから傾斜した状態で繰り出される釣糸との摩擦抵抗の低減が図れるようになる。
【0040】
次に、上述したように構成される魚釣用リールの作用、及び効果について説明する。
図3及び
図6に示すクラッチON状態において、スプール5Aの後方側に位置する操作部材21を押し下げ操作すると、前記クラッチ機構20を構成するクラッチプレート25は、反時計回りに回動され、振り分けバネ23によって、
図4に示す状態に保持される。このとき、クラッチプレート25の表面に形成されたカム面がヨークを軸方向にシフトさせ、ピニオン12をスプール軸5から離脱させる(クラッチOFF状態)。
【0041】
また、クラッチ機構20がOFFにされると、クラッチON/OFF検出装置94がこれを検知し、制御部90は、このクラッチOFF信号が入力されることで、駆動モータ81を回転駆動する。この駆動モータ81の駆動により、前記出力ギア81bと伝達ギア82cの噛合関係を介して回動プレート82は回転駆動され、回動プレート82に一体的に固定された管状体55と共に、前記釣糸案内体60は、スプールの前方において前方に回動駆動される(
図7参照)。なお、釣糸案内体の60の回動量については、釣糸案内部67に入り込んでいる釣糸Sが、規制部69による規制が外れて開口部68に移動する程度であれば良い。すなわち、クラッチ機構20がOFFになったとき、スプール5Aに対する釣糸の巻回量が多いため、規制部69の規制が外れることで、釣糸は、直ちに開口部68に移動することができる。
【0042】
この状態で、スプール5Aはフリー回転可能状態となっており、釣糸Sは放出される。この場合、釣糸案内体60は、スプール5Aの前方において、
図7、及び
図11、
図12に示す状態に回動されており、その開口部68は、左右方向に幅広状に形成されていることから、釣糸放出初期時において、その内面から接触抵抗を受けることが少なくなり、仕掛けの落下速度を低下させることはない。すなわち、釣糸案内体60は、クラッチ機構と連動してOFF状態になったとき、釣糸の状態を幅狭の釣糸案内部67から幅広の開口部68に移動させるため、釣糸を放出する際に、釣糸案内体60からの放出抵抗を軽減することが可能となる。
【0043】
また、このクラッチOFF状態で釣糸が放出されると、糸長計測装置92から、スプール5Aに対する釣糸の放出量(巻回量)の信号が制御部90に入力される。制御部90では、予めプログラム化された釣糸の放出量情報を基に、放出中の釣糸が、釣糸案内体60の開口部68から釣糸案内部67に入り込むことがないように、駆動モータ81を回転駆動する。具体的には、釣糸が放出されると、スプール5Aに対する釣糸の巻径が次第に少なくなり、放出される釣糸は、
図7の矢印D方向にシフトして、幅狭の釣糸案内部67に入り込み易くなるが、前記糸長計測装置92からの信号によって、所定の釣糸繰り出し量(釣糸の巻径)に達したと判断した時、釣糸案内体60を更に前方に回動駆動することにより、釣糸が幅狭の釣糸案内部67に入り込むことを防止し、釣糸案内体60からの糸抵抗を抑制(増加しないように)している。すなわち、糸長計測装置92からの信号(釣糸繰り出し量)に基づいて駆動モータ81を駆動することで、スプール5Aに巻回される釣糸の径の変化に応じて釣糸案内体60を最適な位置に自動的に設定するため、釣糸放出に伴って糸抵抗が増加するようなことがない。
【0044】
そして、クラッチ機構20をON復帰させるべく、ハンドル8を巻き取り操作すると、前記自動復帰機構30によって、クラッチプレート25は、
図3に示す位置に自動復帰する。このクラッチプレート25のON状態の復帰に伴って、クラッチON/OFF検出装置94がこれを検知し、制御部90は、このクラッチON信号が入力されたことで、駆動モータ81を逆向きに回転駆動する。この駆動モータ81の逆転駆動により、前記出力ギア81bと伝達ギア82cの噛合関係を介して回動プレート82は回転駆動され、回動プレート82に一体的に固定された管状体55と共に、前記釣糸案内体60は、スプールの前方において後方に回動駆動され、
図6に示す初期位置に自動で復帰される。
【0045】
このとき、開口部68のいずれかの部分に位置している釣糸Sは、回動する規制部69が当て付いて押し付けられ、開口部68の傾斜案内面68aに沿って確実に中央に位置する釣糸案内部67に案内される。また、
図9及び
図10に示すように、釣糸巻き取り状態では、釣糸Sは、規制部69によって釣糸案内部67から離脱することはない。
【0046】
以上のように、釣糸案内体60は、クラッチON/OFF検出装置94及び駆動モータ81を介して、クラッチ機構20と連動して、切り換え動作が成されるため、釣糸放出時では、釣糸は直ちに開口部68に移動し、釣糸巻き取り時では、直ちに釣糸が釣糸案内部67に移動するようになり、これにより、釣糸放出初期時の糸抵抗の軽減が図れるとともに、安定した巻き取りを実現することができる。
【0047】
そして、ハンドル8を巻き取り操作することで、上記したレベルワインド装置50の螺軸51は、ハンドル軸8aに設けられた連結ギア、及びこれに噛合する入力ギア53を介して回転駆動される。前記螺軸51が回転駆動されることで、釣糸案内体60は、螺軸51の外周面に形成された螺旋溝51aと係合する摺動子61を介して、管状体55に沿って左右往復動される。この場合、管状体55の外周には、軸方向に沿って延出する回り止め部55bが形成されているため、釣糸案内体60は、軸回りに回転することなく、左右に往復駆動される。これにより、釣糸Sは、左右方向に幅狭となった釣糸案内部67によって、スプール5Aに対して、安定して平行巻きされ、さらには、規制部69の位置によって、釣糸案内部67から離脱することもないため、常時、安定した平行巻き状態が確保される。
なお、スプール5Aに対する釣糸Sの巻回量が少ない場合、例えば、釣糸を多量に放出した状態では、釣糸案内部67に位置する釣糸Sは、規制部69に接触していなくても良い。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0049】
上記した実施形態では、船釣りに適した形態の魚釣用リールを例示したが、キャスティングに適した形態として構成することも可能である。また、上記した釣糸案内体60の駆動部は、駆動モータで構成したが、ソレノイドによって構成しても良く、釣糸案内体60を変位させる変位機構については、糸長計測装置92やクラッチON/OFF検出装置94からの検知信号によって駆動モータを駆動する以外にも、手動操作によって任意に駆動モータを駆動して釣糸案内体60を変位するようにしても良い。例えば、
図2に示す表示装置100に設けられた操作ボタン102のいずれかを、釣糸案内体60の駆動操作ボタンとしておき、これを押圧操作することで、その回動位置を手動操作するようにしても良い。
【0050】
また、釣糸案内体60は、クラッチON/OFF検出装置94によって、クラッチ機構20と連動するようにしたが、クラッチ機構と連動させることなく、個別に移動するような構成であっても良い。例えば、クラッチOFF時において、釣糸の巻回量(糸長計測装置92からの検出信号)やスプール5Aの釣糸繰り出し方向の回転方向及び回転量(回転情報)に応じて釣糸案内体60を駆動するような構成であっても良い。なお、釣糸案内体60を、クラッチ機構20と連動させる場合、釣糸案内体とクラッチ機構は、機械的に連結されて連動駆動する構成であっても良い。
【0051】
また、上記した釣糸案内体60については、その形状を適宜、変形することが可能である。例えば、開口部68を略三角形状にしたり、略円形状、縦長形状にする等、適宜変形することが可能であり、規制部69については形成しない構成であっても良い。また、釣糸案内体60は、釣糸と接触する部分に、耐摩耗性を有すると共に、摺動抵抗の少ない部材(釣糸接触部材)を取着しておいても良い。このような釣糸接触部材を取着しておくことで、釣糸放出時や釣糸巻き取り時に釣糸が接触しても、切れることを防止でき、かつ接触抵抗を更に軽減することが可能となる。
【0052】
さらに、釣糸案内体60は、クラッチON状態で前方に回動させるような構成であっても良い。この場合、釣糸案内体60を回動するに際しては、管状体55の外周に、軸方向に延出する突起を設けて回り止めしたが、管状体55に形成される長孔55aのエッジ55eによって回り止めするようにしても良い。