(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記3つのボルト挿通孔は、前記四つの隅部それぞれに形成された第1ボルト挿通孔と、前記隅部に隣接する二つの辺部それぞれの前記第1ボルト挿通孔よりも中央部寄りの位置に形成された第2ボルト挿通孔であることを特徴とする請求項1に記載の柱脚金物。
前記柱脚金物の裏面側で、前記第2ボルト挿通孔から水平方向外側に、表面から裏面までの高さより低い段差凹部が形成されたことを特徴とする請求項2に記載の柱脚金物。
前記四角形状の、一つの辺部の長さ方向の2箇所の位置に形成された前記第2ボルト挿通孔の2つの中心を通る直線と、前記一つの辺部に直角方向に隣接する辺部の長さ方向の2箇所の位置に形成された前記第2ボルト挿通孔の2つの中心を通る直線との交点の位置から、前記四角形状の中央部寄りにずれた位置に前記第1ボルト挿通孔の中心位置が配置された
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の柱脚金物。
前記柱脚金物は基礎コンクリートの上方に設けられ、前記3つのボルト挿通孔のそれぞれに、前記基礎コンクリート中から上方に突出したアンカーボルトが挿通されたことを特徴とする請求項5に記載の柱脚構造。
【背景技術】
【0002】
図9及び
図10は、第1の従来の柱脚金物6、及びそれを用いた第1の従来の柱脚構造2について説明するために参照する図である。
【0003】
図9に示すように、第1の従来の柱脚構造2は、その表面に鉄骨柱4(柱部材)の下端面が溶接により接合される、平板状の柱脚金物6を備えていた。この柱脚金物6は、基礎コンクリート3の上方にモルタル8を介して設けられていた。
【0004】
そして、基礎コンクリート3中からモルタル8を貫いて上方に突出するアンカーボルト10の上端部が、柱脚金物6のボルト挿通孔6a,6b(
図10参照)に挿通して、アンカーボルト10に形成されたオネジ部にナット部材12のメネジ部がねじ締結されることにより、鉄骨柱4は、柱脚金物6を介して基礎コンクリート3上に立設して固定されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
基礎コンクリート3上には被覆コンクリート11が形成されていた。この被覆コンクリート11は、アンカーボルト10上端部の高さ上端位置よりも高い位置に上面を有しており、鉄骨柱4の下端部、柱脚金物6、モルタル8、アンカーボルト10の上端部、ナット部材12等の各部材をその内部に埋設するようになっていた。
【0006】
図10に示すように、柱脚金物6は、金属製の正方形状の表裏両面と厚さを有する板状に形成されており、その厚さ方向(図中紙面に対して垂直方向)に貫通するボルト挿通孔6aと6bが計12個形成されていた。これらのボルト挿通孔6a,6bは、それぞれの孔径が略同一に形成されており、それぞれに1本のアンカーボルト10を緩く挿通させていた。
【0007】
そして、柱脚金物6のボルト挿通孔6aは、柱脚金物6の正方形状の四つの隅部それぞれに1つずつ形成されていた。すなわち、柱脚金物6のボルト挿通孔6aは、
図10中左右方向に伸びて、柱脚金物6の同図中上下方向の中心位置を通る仮想線Xから、同図中上下方向に長さL1だけ離れた位置にあり、かつ、同図中上下方向に伸び、柱脚金物6の同図中左右方向の中心位置を通る仮想線Yから、同図中左右方向に長さL1だけ離れた位置にある、4つの位置のそれぞれに中心位置が配置されていた。
【0008】
柱脚金物6のボルト挿通孔6bは、柱脚金物6の正方形状の四つの辺部それぞれの両端部のボルト挿通孔6a,6a間の長さ方向の均等の位置に配置されるように、すなわち、ボルト挿通孔6a,6aの中心同士を繋ぐ線分を三等分した2つの位置に、それぞれの中心位置が配置されていた。
【0009】
ボルト挿通孔6bは、例えば
図10中上下方向に伸びる2つの辺部においては、仮想線Yから図中左右方向に長さL1だけ離れた位置にあり、かつ、仮想線Xから図中上下方向それぞれの長さL2だけ離れた位置に、それぞれの中心位置が配置されていた。長さL2は、長さL1の三分の一の長さである。
図10中左右方向に伸びる2つの辺部においてもボルト挿通孔6bは、同様の長さ位置に配置されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記第1の従来の柱脚構造2の鉄骨柱4に対して、例えば地震等により、
図9に示すような、鉄骨柱4と柱脚金物6との接合部の回転中心Oの周りに反時計回り方向に、鉄骨柱4を回転させようとする大きな曲げモーメントMを発生させる荷重が加わった場合には、この曲げモーメントMは、柱脚金物6の同図中右端部を浮き上がらせるように作用する。
【0012】
これに対して、柱脚金物6における
図9中上記回転中心Oより右側部分を固定するアンカーボルト10には、そのオネジ部と上記ナット部材12のメネジ部とのねじ締結により、上記のような曲げモーメントMによる柱脚金物6の同図中右端部が浮き上がるのを防ぐための反力として、同図中上記回転中心Oから図中右方向の長さL1,L2の位置に引張荷重P1,P2が生じる。
【0013】
上記反力として生じる引張荷重P1,P2は、アンカーボルト10が
図9に示す上記回転中心Oから図中右方向の長さL1,L2が大きくなるほど大きくなり、また、アンカーボルト10の外径寸法が大きくなるほど大きくなる。
【0014】
しかしながら、上記第1の従来の柱脚構造2においては、上記回転中心Oから
図9中右方向に長さL2だけ離れた位置のボルト挿通孔6bに挿通して固定されたアンカーボルト10に生じる引張荷重P2は、回転中心Oから長さL1だけ離れた位置のボルト挿通孔6a,6bに挿通して固定されたアンカーボルト10に生じる引張荷重P1に比べて、かなり小さい値の引張荷重となってしまう。
【0015】
したがって、上記曲げモーメントMに対抗してアンカーボルト10に生じる引張荷重(曲げモーメントMに対する曲げ耐力と相関する)は、上記のようなかなり小さい値の引張荷重P2しか発生できないアンカーボルト10が存在するため、全体としての引張荷重、すなわち曲げモーメントMに対する柱脚構造2の曲げ耐力はその分小さくなってしまうという問題があった。
【0016】
また、曲げモーメントMに対抗してアンカーボルト10に生じる引張荷重P1,P2を増大させるために、大きな外径寸法を有するアンカーボルト10を採用した場合には、対応するナット部材12も大きくなるばかりでなく、柱脚金物6の厚さも大きくする必要があるため、柱脚金物6の大型化や重量化、高額化を招いてしまうという問題があった。
【0017】
また、
図11及び
図12は、前記第1の従来の柱脚金物6や柱脚構造2とは別の、第2の従来の柱脚金物22や柱脚構造20について説明するために参照する図である。
以下、前記第1の従来の柱脚金物6や柱脚構造2と同様の部分には同じ符号を付して説明し、前記第1の従来の柱脚金物6や柱脚構造2と同様の構成についての重複する説明は、一部を除き省略するものとする。
【0018】
第2の従来の柱脚構造20は、
図11に示すように、前記第1の従来の柱脚構造2における柱脚金物6の代わりに、別の柱脚金物22を有している点において、前記第1の従来の柱脚構造2とは異なるものである。
【0019】
図12に示すように、柱脚金物22は、金属製の正方形状の表裏両面と厚さを有する板状に形成されており、その厚さ方向(図中紙面に対して垂直方向)に貫通するボルト挿通孔22aと22bが計12個形成されていた。これらのボルト挿通孔22a,22bは、それぞれの孔径が略同一に形成されており、それぞれには1本のアンカーボルト10を緩く挿通させていた。
【0020】
そして、柱脚金物22のボルト挿通孔22aは、柱脚金物22の正方形状の四つの隅部それぞれにおいて、各辺に対して互いに斜め方向に隣り合った位置に2つずつ形成されていた。
【0021】
すなわち、柱脚金物22のボルト挿通孔22aは、
図12中左右方向に伸びて、柱脚金物22の同図中上下方向の中心位置を通る仮想線Xから、同図中上下方向に長さL1,L3だけ離れた位置にあり、かつ、同図中上下方向に伸び、柱脚金物22の同図中左右方向の中心位置を通る仮想線Yから、同図中左右方向に長さL3,L1だけ離れた2つの位置に、それぞれの中心位置が配置されていた。
【0022】
柱脚金物22のボルト挿通孔22bは、柱脚金物22の正方形状の四つの辺部それぞれの長さ方向中央部の位置の内側の近傍にその中心位置が配置されていた。すなわち、柱脚金物22のボルト挿通孔22bは、例えば
図12中上下方向に伸びる辺部においては、仮想線Yから図中左右方向に長さL1だけ離れた位置で、かつ、仮想線X上の各位置に、それぞれの中心位置が配置されていた。
【0023】
このような第2の従来の柱脚構造20においても、前記第1の従来の柱脚構造2と同様の問題があった。
【0024】
すなわち、上記第2の従来の柱脚構造20の鉄骨柱4に対して、例えば地震等により、
図11に示すような、鉄骨柱4と柱脚金物22との接合部の回転中心Oの周りに反時計回り方向に、鉄骨柱4を回転させようとする大きな曲げモーメントMを発生させる荷重が加わった場合には、柱脚金物22における同図中右側部分を固定するアンカーボルト10には、上記曲げモーメントMによる柱脚金物22の図中右側部分の浮き上がりを防ぐための反力としてそれぞれ引張荷重P1,P3が生じる。
【0025】
しかしながら、上記第2の従来の柱脚構造20においては、
図11中左右方向において、図中回転中心Oと同じ位置のように見える、その中心位置が配置されたボルト挿通孔22bに挿通されたアンカーボルト10には、上記曲げモーメントMに対抗する引張荷重は発生しない。
【0026】
このため、上記第2の従来の柱脚構造20においては、曲げモーメントMの作用する方向によって、そのような引張荷重を生じないアンカーボルト10が存在するため、全体としての引張荷重、すなわち上記曲げモーメントMに対する柱脚構造20全体としての曲げ耐力がその分小さくなってしまうという問題があった。
【0027】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、柱脚構造全体の曲げ耐力を向上させることができると共に、柱脚金物の大型化や重量化、高額化を防止することができる柱脚金物及びそれを用いた柱脚構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記課題を解決するために、本発明による柱脚金物は、
四角形状の表裏両面と厚さを有する板状に形成され、その表面に柱部材の下端部が接合される柱脚金物であって、
前記四角形状の四つの隅部それぞれに3つのボルト挿通孔が形成され、
前記3つのボルト挿通孔は、互いの中心同士を繋ぐ線分により構成される三角形の重心が前記柱部材の角部に相当する位置に来るようにそれぞれの中心位置が配置されたことを特徴とするものである。
【0029】
また、本発明による柱脚金物は、
前記3つのボルト挿通孔は、前記四つの隅部それぞれに形成された第1ボルト挿通孔と、前記隅部に隣接する二つの辺部それぞれの前記第1ボルト挿通孔よりも中央部寄りの位置に形成された第2ボルト挿通孔であることを特徴とするものである。
【0030】
また、本発明による柱脚金物は、
前記柱脚金物の裏面側で、前記第2ボルト挿通孔から水平方向外側に、表面から裏面までの高さより低い段差凹部が形成されたことを特徴とするものである。
【0031】
また、本発明による柱脚金物は、
前記四角形状の、一つの辺部の長さ方向の2箇所の位置に形成された前記第2ボルト挿通孔の2つの中心を通る直線と、前記一つの辺部に直角方向に隣接する辺部の長さ方向の2箇所の位置に形成された前記第2ボルト挿通孔の2つの中心を通る直線との交点の位置から、前記四角形状の中央部寄りにずれた位置に前記第1ボルト挿通孔の中心位置が配置されたことを特徴とするものである。
【0032】
また、上記課題を解決するために、本発明による柱脚構造は、
四角形状の表裏両面と厚さを有する板状に形成され、その表面に柱部材の下端部が接合される柱脚金物を備えた柱脚構造であって、
前記柱脚金物は、
前記四角形状の四つの隅部それぞれに3つのボルト挿通孔が形成され、
前記3つのボルト挿通孔は、互いの中心同士を繋ぐ線分により構成される三角形の重心が前記柱部材の角部に相当する位置に来るようにそれぞれの中心位置が配置されたことを特徴とするものである。
【0033】
また、本発明による柱脚構造は、
前記柱脚金物は基礎コンクリートの上方に設けられ、前記3つのボルト挿通孔のそれぞれに、前記基礎コンクリート中から上方に突出したアンカーボルトが挿通されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0034】
このような本発明の柱脚金物によれば、
四角形状の表裏両面と厚さを有する板状に形成され、その表面に柱部材の下端部が接合される柱脚金物であって、
前記四角形状の四つの隅部それぞれに3つのボルト挿通孔が形成され、
前記3つのボルト挿通孔は、互いの中心同士を繋ぐ線分により構成される三角形の重心が前記柱部材の角部に相当する位置に来るようにそれぞれの中心位置が配置されたことにより、
柱脚構造全体の曲げ耐力を向上させることができると共に、柱脚金物の大型化や重量化、高額化を防止することができる。
【0035】
また、本発明の柱脚構造によれば、
四角形状の表裏両面と厚さを有する板状に形成され、その表面に柱部材の下端部が接合される柱脚金物を備えた柱脚構造であって、
前記柱脚金物は、
前記四角形状の四つの隅部それぞれに3つのボルト挿通孔が形成され、
前記3つのボルト挿通孔は、互いの中心同士を繋ぐ線分により構成される三角形の重心が前記柱部材の角部に相当する位置に来るようにそれぞれの中心位置が配置されたことにより、
柱脚構造全体の曲げ耐力を向上させることができると共に、柱脚金物の大型化や重量化、高額化を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る柱脚金物及びそれを用いた柱脚構造を実施するための形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
【0038】
図1から
図8は、本発明の一実施の形態に係る柱脚金物42及びそれを用いた柱脚構造40について説明するために参照する図である。
【0039】
本実施の形態に係る柱脚構造40は、
図1に示すように、平板状の柱脚金物42を備えて構成されており、この柱脚金物42は、基礎コンクリート3の上方にモルタル8を介して設けられている。また、柱脚金物42は、同図中上下方向に長さを有する角筒状に形成された鉄骨柱4(柱部材)の下端面が、その上面42c(表面)に溶接により接合されている。
【0040】
そして、基礎コンクリート3中から上記モルタル8を貫通してその上方に突出するアンカーボルト10の上端部が、柱脚金物42に形成されたボルト挿通孔42a,42bに挿通している。
【0041】
柱脚金物42の上方に突出した、アンカーボルト10の上端部に形成されたオネジ部が、座金48の不図示の貫通孔を挿通して、ナット部材12のメネジ部とねじ締結することにより、鉄骨柱4は柱脚金物42とモルタル8を介して基礎コンクリート3の上に立設して固定されている。
【0042】
そして、基礎コンクリート3上には被覆コンクリート11が形成されている。この被覆コンクリート11は、アンカーボルト10上端部の高さ上端位置よりも高い位置に上面を有しており、鉄骨柱4の下端部、柱脚金物42、モルタル8、アンカーボルト10の上端部、ナット部材12等の各部材をその内部に埋設するようになっている。
【0043】
図2に示すように、柱脚金物42は、金属製の正方形状の表裏両面と厚さを有する板状に形成されており、その正方形状の四つの隅部のそれぞれには角面42hが形成されている。
【0044】
柱脚金物42は、その厚さ方向(図中紙面に対して垂直方向)を貫通するボルト挿通孔42a(第1ボルト挿通孔)とボルト挿通孔42b(第2ボルト挿通孔)が、その四つの隅部それぞれに3個ずつ計12個形成されている。これらのボルト挿通孔42a,42bは、それぞれの孔径が略同一に形成されており、それぞれに1本のアンカーボルト10を緩く挿通させている。
【0045】
そして、ボルト挿通孔42aは、柱脚金物42の正方形状の四つの隅部それぞれの近傍に1つずつ形成されている。
【0046】
また、ボルト挿通孔42bは、柱脚金物42の正方形状の四つの辺部それぞれにおける両端部において、隅部のボルト挿通孔42aよりは中央寄りの位置に、その中心位置が配置されている。
【0047】
すなわち、
図4に示すように、ボルト挿通孔42aは、同図中左右方向に伸びて柱脚金物42の同図中上下方向の中心位置を通る仮想線X(図中横の中心線)から、同図中上下方向に長さL1よりも短い長さL5だけ離れた位置にあり、かつ、同図中上下方向に伸びて柱脚金物42の同図中左右方向の中心位置を通る仮想線Y(図中縦の中心線)から、同図中左右方向に長さL1よりも短い長さL5だけ離れた位置にある、4つの位置(四隅の)のそれぞれに中心位置が配置されている。
【0048】
そして、例えば
図4中右側のボルト挿通孔42bは、柱脚金物42の同図中上下方向に伸びる辺部において、仮想線Yから図中右方向に長さL1だけ離れた位置にあり、かつ、仮想線Xから図中上下方向に長さL4だけ離れた位置にその中心位置が配置されている。
【0049】
また、ボルト挿通孔42bのそれぞれは、その中心位置が、上記四つの辺部それぞれにおいて、仮想線X及び仮想線Yから略同じ長さ位置に配置されている。
【0050】
図4に示すように、柱脚金物42の隅部に形成されたボルト挿通孔42aと、このボルト挿通孔42aの両側に配置されている2つのボルト挿通孔42bは、水平面上において互いの中心位置同士を繋ぐ線分により三角形が構成され、この三角形の重心Gが、鉄骨柱4の角部4aに相当する位置に来るように、それぞれの中心位置が配置されている。
【0051】
これらのボルト挿通孔42aと2つのボルト挿通孔42bを挿通する3本のアンカーボルト10も同様に、水平面上において互いの中心位置同士を繋ぐ線分により三角形が構成され、この三角形の重心G1が、鉄骨柱4の角部4aに相当する位置に来るように、それぞれの中心位置が配置される。
【0052】
このため、ボルト挿通孔42aと2つのボルト挿通孔42bを挿通する3本のアンカーボルト10の上記重心G1は、ボルト挿通孔42aと2つのボルト挿通孔42bの上記重心Gと同一位置或いは同様の位置に配置される。
【0053】
柱脚金物42は、地震等により鉄骨柱4に発生する力をアンカーボルト10を介して基礎コンクリート3に伝達するようになっている。そして、
図5に示す柱脚金物42の厚さtは、所定の曲げ応力に耐えられるような厚さに設定されている。
【0054】
ここで、地震等により柱脚構造40に曲げモーメントMが加えられた場合において、
図5に示すように、ボルト挿通孔42aと2つのボルト挿通孔42bを挿通する3本のアンカーボルト10に生じる引張荷重の合力をTとすると、柱脚金物42における、3本のアンカーボルト10の上記三角形の重心G1に上記引張荷重Tが作用する。
【0055】
このとき、柱脚金物42の鉄骨柱4の角部4aの高さ下端位置には曲げモーメントM1が生じる。この曲げモーメントM1は、上記引張荷重Tや、3本のアンカーボルト10の上記重心G1から鉄骨柱4の角部4aの高さ下端位置までの距離Lに比例するようになっている。
【0056】
柱脚金物42の厚さtは、柱脚金物42に加えられる上記曲げモーメントM1を考慮して設定されている。
【0057】
本実施の形態に係る柱脚構造40は、柱脚金物42の、ボルト挿通孔42aと2つのボルト挿通孔42bを挿通する3本のアンカーボルト10の水平面上における上記重心G1が、鉄骨柱4の角部4aに相当する位置に配置されているため、アンカーボルト10の上記重心G1から鉄骨柱4の角部4aの高さ下端位置までの距離Lを略零に近づくように著しく短くすることができる。
【0058】
そして、アンカーボルト10の上記重心G1から鉄骨柱4の角部4aの高さ下端位置までの距離Lを著しく短くすることにより、上記曲げモーメントM1を著しく小さくすることができるので、柱脚金物42の厚さtを薄くすることが可能となる。
【0059】
このため、本実施の形態に係る柱脚構造40は、柱脚金物42の厚さtを薄くすることができることにより、柱脚金物42の大型化や重量化、高額化を防止することができる。
【0060】
柱脚金物42は、
図3に示すように、その底面42d(裏面)の四つの隅部それぞれにおいて、その底面42dから同図中紙面の奥側に向かって凹んだ凹平面42gを有する段差凹部42eが2つずつ形成されており、柱脚金物42のこの段差凹部42eの領域は、その底面42dから上面42cまでの高さより、高さが低く形成されている。
【0061】
段差凹部42eの凹平面42gと底面42dとの段差部には境界段差面42fが形成され、この境界段差面42fは、その長さ中央部がボルト挿通孔42bの内周面に接して、その長さ両端部が柱脚金物42の側面に開口するまで伸びるように形成されている。
【0062】
このため、段差凹部42eは、ボルト挿通孔42bより外側に向かって伸びて、柱脚金物42の側面に開口するような略三角形状に形成されている。
【0063】
本実施の形態に係る柱脚構造40は、柱脚金物42に段差凹部42eや境界段差面42fが形成されているために、地震等により曲げモーメントMと同時に鉄骨柱4の水平断面に作用するせん断力により、柱脚金物42に対して水平力F(
図6参照)が加えられても、柱脚金物42が水平方向にずれることを防止できる。
【0064】
すなわち、
図6に示すように、柱脚金物42の底面42dと基礎コンクリート3の間に充填されたモルタル8は、段差凹部42eの凹平面42gと境界段差面42fに密着すると共に、ボルト挿通孔42bを挿通するアンカーボルト10の外周面の一部にも密着するように、段差凹部42eの凹平面42gと基礎コンクリート3との間に充填されている。
【0065】
このため、地震等により鉄骨柱4にせん断力が作用して、
図6に示すように、柱脚金物42に対して図中左方向に向かう水平力Fが加えられた場合には、この水平力Fは、柱脚金物42の境界段差面42fがモルタル8を介して、水平力Fの方向の下流側で水平力Fに対応する何本かのアンカーボルト10それぞれを押すように動作することにより、その何本かのアンカーボルト10に伝えられる。
【0066】
そして、何本かのアンカーボルト10が、水平力Fに対して抵抗力を発揮するため、柱脚金物42が基礎コンクリート3に対して水平方向にずれることを防止することができる。
【0067】
さらに、柱脚金物42に加えられる水平力Fをアンカーボルト10が受けてその抵抗力を発揮するため、水平力Fを直接モルタル8だけで受けて、そのモルタル8が割れてしまうことを防止することができる。
【0068】
また、柱脚金物42の段差凹部42eは、
図3,6に示すように、ボルト挿通孔42bより外側に向かって開口するような形状に形成されているため、柱脚金物42と基礎コンクリート3の間にモルタル8を容易に充填することができる。
【0069】
図1,8に示すように、本実施の形態に係る柱脚構造40においては、1つのボルト挿通孔42a及び2つのボルト挿通孔42bに挿通する3本のアンカーボルト10は、基礎コンクリート3中のそれぞれの下端部が1枚の定着板44に固定されている。
【0070】
定着板44は、
図8に示すように、L字形の板状に形成されている。この定着板44は、
図1に示すように、その厚さ方向に貫通する貫通孔44aにアンカーボルト10が緩く挿通され、その上面側及び下面側においてナット部材46がアンカーボルト10にネジ結合することにより、定着板44が基礎コンクリート3中のアンカーボルト10の下端部に一体的に固定されている。
【0071】
このように本実施の形態に係る柱脚構造40においては、3本のアンカーボルト10に1枚の定着板44を取り付けることによって、3本のアンカーボルト10をまとめて基礎コンクリート3中に定着させることができると共に、その取り付け作業を容易に行なうことができる。
【0072】
このような本実施の形態に係る柱脚構造40は、例えば地震等により柱脚構造40の鉄骨柱4に対して、
図7に示すような、柱脚金物42との接合部の回転中心Oの周りに反時計回り方向に、大きな曲げモーメントMを発生させる荷重が加わった場合には、柱脚金物42における図中右側部分を固定するアンカーボルト10は、上記曲げモーメントMによる柱脚金物42の図中右側部分の浮き上がりを防ぐための反力としてそれぞれ引張荷重P5,P4を生じる。
【0073】
ここで、前記従来の柱脚構造2における、
図9中鉄骨柱4の回転中心Oから長さL2だけ離れた位置にある、ボルト挿通孔6bに挿通して固定されたアンカーボルト10には引張荷重P2が生じたが、本実施の形態に係る柱脚構造40における、
図7中鉄骨柱4の回転中心Oから図中右方に長さL4だけ離れた位置にある、ボルト挿通孔42bに挿通して固定されたアンカーボルト10に生じる引張荷重P4は、上記長さL4がL2より長いので、前記従来の柱脚構造2の引張荷重P2よりもかなり大きなものとなる。
【0074】
したがって、上記曲げモーメントMに対する柱脚構造40の曲げ耐力は、前記従来の柱脚構造2,20に比べて、全体としてかなり大きなものにすることができる。
【0075】
また、本実施の形態に係る柱脚構造40は、
図2,4に示すように、柱脚金物42のボルト挿通孔42aが、柱脚金物42の、1つの辺部の長さ方向の2箇所の位置に形成されたボルト挿通孔42bの2つの中心位置を通る直線と、上記1つの辺部に直角方向に隣接する辺部の長さ方向の2箇所の位置に形成されたボルト挿通孔42bの2つの中心位置を通る直線との交点の位置(
図4中仮想線X,Yから長さL1だけ離れた位置)から、鉄骨柱4の角部4a寄り(柱脚金物42の中央部寄り)にずれた位置に、その中心位置が配置されている。
【0076】
このように柱脚金物42の四隅に配置されている4つのボルト挿通孔42aそれぞれの中心位置を、上記交点よりも鉄骨柱4の角部4a寄りにずれた位置に配置することにより、上記交点にボルト挿通孔42aを配置した場合よりも柱脚金物42の剛性が高いものになるため、その剛性の増加分を考慮して、柱脚金物42の厚さを薄くすることができる。
【0077】
また、本実施の形態に係る柱脚構造40においては、
図8中左右方向に伸びる主鉄筋14を配筋する場合には、
図2中柱脚金物42の上下方向に伸びる各辺において、ボルト挿通孔42b,42bに挿通するアンカーボルト10,10の間に所定長さの間隔が形成されている。
【0078】
このため、その間隔に
図8中左右方向に伸びる主鉄筋14を3本まとめて挿し通すことができると共に、これら3本の主鉄筋14それぞれの間には1本もアンカーボルト10が挟まれていないため、主鉄筋14の配筋作業がアンカーボルト10に邪魔されることがないので、その配筋作業を容易に行うことができる。
【0079】
また、
図8中上下方向に伸びる主鉄筋14(図示せず)を配筋する場合にも、同様の理由により、その配筋作業を容易に行うことができる。
【0080】
さらに、
図8中柱脚金物42の上下方向に伸びる各辺において、ボルト挿通孔42aに挿通するアンカーボルト10と、ボルト挿通孔42bに挿通するアンカーボルト10の間に所定長さの間隔が、同図中上方と下方のそれぞれに形成されており、これらの間隔には
図8中左右方向に伸びる主鉄筋14を1本ずつ挿し通すことができる。
【0081】
このため、
図8中柱脚金物42の上下方向に伸びる各辺において、ボルト挿通孔42b,42bに挿通するアンカーボルト10,10の間だけでなく、ボルト挿通孔42aに挿通するアンカーボルト10と、ボルト挿通孔42bに挿通するアンカーボルト10の間にも主鉄筋14を挿通することができる間隔を形成することにより、柱脚金物42の図中紙面奥側のアンカーボルト10間に主鉄筋14を多く配筋することができる。
【0082】
また、
図8中上下方向に伸びる主鉄筋14(図示せず)を配筋する場合にも、同様の理由により、柱脚金物42の図中紙面奥側のアンカーボルト10間に主鉄筋14を多く配筋することができる。
【0083】
したがって、以上に説明したように、本実施の形態に係る柱脚金物42及びそれを用いた柱脚構造40によれば、柱脚構造40全体の曲げ耐力を向上させることができると共に、柱脚金物42の大型化や重量化、高額化を防止することができる。
【0084】
なお、前記実施の形態に係る柱脚構造40においては、柱脚金物42が正方形状の場合について説明したが、縦横の長さが異なる、正方形状以外の四角形であっても構わない。
【0085】
また、前記実施の形態に係る柱脚構造40においては、柱脚金物42のボルト挿通孔42aは、柱脚金物42の、1つの辺部の長さ方向の2箇所の位置に形成されたボルト挿通孔42bの2つの中心位置を通る直線と、上記1つの辺部に直角方向に隣接する辺部の長さ方向の2箇所の位置に形成されたボルト挿通孔42bの2つの中心位置を通る直線との交点の位置から、鉄骨柱4の角部4a寄りにずれた位置に、その中心位置が配置されていたが、上記交点の位置にボルト挿通孔42aの中心位置が配置されていてもよい。
【0086】
また、前記実施の形態に係る柱脚金物42においては、その底面42dの四つの隅部それぞれに段差凹部42eが形成されるようになっていたが、底面42dのいずれの隅部にも段差凹部42eを設けない柱脚金物に本発明を適用してもよい。
【0087】
また、前記実施の形態に係る柱脚金物42においては、定着板44がL字形の板材で形成されていたが、ロの字状の1つの定着板を用いて、12本のアンカーボルト10すべてをその1つの定着板に固定するようにしてもよく、或いは、1つのアンカーボルト10にそれぞれ1つの定着板を固定してもよい。
【0088】
また、前記実施の形態に係る柱脚構造40においては、
図8に示すように、1辺における2つのボルト挿通孔42bに挿通するアンカーボルト10,10間に3本の主鉄筋14を配置した場合について説明したが、可能な場合であれば、そのようなアンカーボルト10,10間に4本以上の主鉄筋14を配置してもよい。
【0089】
また、可能な場合であれば、1辺におけるボルト挿通孔42aに挿通するアンカーボルト10と、ボルト挿通孔42bに挿通するアンカーボルト10の間に2本以上の主鉄筋14を配置してもよい。
【0090】
また、前記実施の形態に係る柱脚構造40においては、柱脚金物42の上面42cに溶接によりその下端面が接合される鉄骨柱4は、角筒状に形成されていたが、この形状に限定されず、例えば円筒状に形成されていてもよい。
【0091】
そして、鉄骨柱4の形状を円筒状に変更した場合には、柱脚構造40の水平断面において、鉄骨柱4の円形状の外周面の、ボルト挿通孔42aの中心位置から最短距離にある部分を、本発明における角部4aに相当するものとみなすことができる。
【0092】
また、前記実施の形態に係る柱脚構造40においては、基礎コンクリート3上に被覆コンクリート11が形成されていたが、基礎コンクリート3上に被覆コンクリート11を形成しない柱脚構造に本発明を適用してもよい。
【0093】
そして、被覆コンクリート11を形成しない場合には、アンカーボルト10とナット部材12のねじ締結が緩まないように、アンカーボルト10の上端部に形成されたオネジ部に、2つのナット部材12のメネジ部がねじ締結(ダブルナット止め)されていることが望ましい。