(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧電基板には、前記弾性波の伝搬方向に対して垂直方向に複数の前記櫛形電極が形成されるとともに、前記各櫛形電極と前記反射部の前記第3面との間に、前記各櫛形電極に対応する複数の前記反応場が形成される
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の被測定物特性測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
<第1実施形態の構成>
図1Aは、第1実施形態の弾性表面波を備えた被測定物特性測定装置の平面構成図、
図1Bは、
図1Aに示す弾性表面波素子のIB-IB線断面図である。
【0019】
被測定物特性測定装置10は、例えば液体状の被測定物の物理的特性を測定するものであり、弾性表面波素子12と、発振器14、分配器16、スイッチ17及び弾性波検出器18から構成される測定部20と、パソコン等で構成される処理部22とを備える。
【0020】
弾性表面波素子12は、圧電基板24と、圧電基板24上に形成され弾性波を励振させる櫛形電極26と、櫛形電極26と弾性波の伝搬方向(矢印X方向)における圧電基板24の端部28との間に形成される溝部(反射部)30と、櫛形電極26と溝部30との間に形成され被測定物が付加される反応場32と、溝部30と端部28との間に形成されるバルク波が伝搬するバルク波伝搬部34とを備える。
【0021】
弾性波(elastic wave)は、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)、バルク波等の各種の波を含む。なお、弾性表面波は、圧電基板の表面に沿って伝搬する波であり、バルク波は、圧電基板の内部を伝搬する波である。また、被測定物が液体の場合、弾性表面波は、すべり弾性表面波(SH-SAW:Shear horizontal Surface Acoustic Wave)である。本実施形態では、弾性表面波の例としてすべり弾性表面波を用いて説明する。本実施形態では、すべり弾性表面波は、圧電基板24の表層部分(第1面)を伝搬し、一部が溝部(反射部)30の反射面(第4面)36で反射され、残りが
図1Bにおける溝部30の底面(第3面)と圧電基板24の下面との間を通過する。また、バルク波は、圧電基板24の全体に伝搬し、一部が溝部30の反射面36で反射され、残りが
図1Bにおける溝部30の底面と圧電基板24の下面との間を通過し、バルク波伝搬部34を伝搬した後、圧電基板24の端部(第2面)28で反射される。
【0022】
圧電基板24は、弾性表面波を伝搬させることができるものであれば、特に限定されないが、36°回転Y板X伝搬LiTaO
3(タンタル酸リチウム単結晶)であることが好ましい。
【0023】
櫛形電極26は、極性の異なる複数対の電極指27a、27bを弾性表面波の波長λの間隔で伝搬方向にN対が配列して構成される(例えば、
図1Aでは4対)。櫛形電極26は、発振器14で生成された高周波発振信号(例えば、中心周波数が250MHz)に基づいて弾性表面波を励振させ、反応場32に伝搬させる。櫛形電極26は、反応場32を伝搬して溝部30の反射面36により反射され、反応場32を介して戻ってきたすべり弾性表面波を受信する。また、櫛形電極26は、反応場32からバルク波伝搬部34に伝搬して圧電基板24の端部28により反射され、バルク波伝搬部34及び反応場32を介して戻ってきたバルク波を受信する。櫛形電極26は、被測定物が付着することで測定精度が低下することを回避するため、樹脂又はガラス等の封止部材38により密閉される。
【0024】
溝部30は、弾性表面波の伝搬方向と直交する方向(矢印Y方向)に配置されている。溝部30は、弾性表面波の伝搬方向と直交する方向に圧電基板24の端から端まで形成されている。溝部30は、弾性表面波が伝搬する圧電基板24の表面に略垂直な反射面36を有している。このように溝部30は、凸多角形に形成されている。反射面36は、すべり弾性表面波を櫛形電極26に向けて反射する。溝部30の圧電基板24の表面からの深さd(
図1B参照)は、被測定物特性測定装置10の設計者により次式の関係を満たす値が選択される。
λ/2≦d≦H/2
λ:弾性表面波の波長
H:圧電基板24の厚さ
【0025】
反応場32には、圧電基板24上に蒸着された金属膜40が形成される。金属膜40は、電気的に短絡された短絡伝搬路を構成する。金属膜40の材料は、特に限られないが、反応場32に滴下される被測定物に対して化学的に安定している金とすることが好ましい。
【0026】
バルク波伝搬部34は、バルク波が伝搬される領域であり、溝部30の反射面36から圧電基板24の端部28までの距離L2は、被測定物特性測定装置10の設計者により次式の関係を満たす値が選択される。
L2≧N×λ/2
λ:弾性表面波の波長
N:電極指27a、27bの対の数
【0027】
測定部20を構成する発振器14は、高周波発振信号を生成する。分配器16は、高周波発振信号を櫛形電極26に供給するとともに、弾性波検出器18に供給する。弾性波検出器18は、分配器16で分配された高周波発振信号と、櫛形電極26により受信された弾性表面波に基づく信号との振幅比、位相差及び伝搬遅延差を検出し、検出した振幅比、位相差及び伝搬遅延差に基づく信号を処理部22に出力する。処理部22は、弾性波検出器18から供給される信号に基づき、被測定物の物理的特性を求める。また、処理部22は、所定のタイミングで、スイッチ17の端子1と端子3との接続、または端子2と端子3との接続を切り替える。なお、物理的特性とは、例えば、被測定物の粘度、密度等である。処理部22は、例えば、反応場32に何も滴下されていない状態のとき、供給された信号の周波数変化、位相変化を求める。反応場32にまず何も滴下しない場合、被測定物は空気である。次に、反応場32に被測定物が滴下されている状態のとき、供給された信号の周波数変化、位相変化を求める。処理部22は、この2つの測定データの算出することで、滴下された被測定物の粘度や密度等を算出する。
【0028】
<第1実施形態による測定処理>
第1実施形態に係る被測定物特性測定装置10は、基本的には以上のように構成される。次に、被測定物特性測定装置10を用いた被測定物の物理的特性の測定処理について、
図1A、
図1B、及び
図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態におけるすべり弾性表面波信号及びバルク波信号の伝搬を説明する図である。
図6は、
図1Bと同様に、
図1Aに示す弾性表面波素子のIB-IB線断面の一部を示している。
図6において、曲線s111は、すべり弾性表面波信号を表し、曲線s112及びs113は、バルク波信号を表している。
【0029】
先ず、測定者は、被測定物を弾性表面波素子12の反応場32に滴下する。この場合、櫛形電極26は、封止部材38によって密閉されているため、櫛形電極26に被測定物が付着することで測定精度が低下する事態を回避することができる。なお、被測定物としては、液体状のものであれば、例えば、純液、混合液のいずれであってもよく、メタノール、エタノール等のアルコールの物理的特性を測定する場合に特に有効である。また、被測定物に抗原、抗体、バクテリア等が含まれる状態においても、物理的特性を測定できることは言うまでもない。
【0030】
次に、発振器14でバースト的に生成された高周波発振信号は、分配器16で分配され、櫛形電極26及び弾性波検出器18に同一信号が供給される。櫛形電極26では、供給された高周波発振信号に基づいて弾性波が励振される。弾性波は、被測定物の滴下された反応場32に沿って矢印X方向に伝搬される。
【0031】
この場合、反応場32を伝搬する弾性波のうち、すべり弾性表面波s111は、圧電基板24の表層部分を伝搬し、一部が溝部30の反射面36(反射面36A(
図6))によって反射された後、再度、反応場32を伝搬し、櫛形電極26で受信される。
【0032】
また、反応場32を伝搬する弾性波のうち、バルク波(s112、s113)は、圧電基板24の全体に伝搬し、
図6に示すように一部(s113)が溝部30の底面と圧電基板24の下面との間を通過してバルク波伝搬部34を伝搬し、圧電基板24の端部28に到達する。次いで、このバルク波s113は、端部28によって反射された後、再度、バルク波伝搬部34及び反応場32を伝搬し、櫛形電極26で受信される。
【0033】
ここで、すべり弾性表面波を高精度に検出するため、溝部30の深さdは以下のように被測定物特性測定装置10の設計者が選択する。すべり弾性表面波は、圧電基板24の表層部分に沿って伝搬する波である。このため、溝部30の深さdを、次式(1)の関係を満たす値
λ/2≦d (1)
λ:弾性波の波長
に選択することにより、弾性表面波素子12は、50%以上のすべり弾性表面波を溝部30の反射面36で反射させ、櫛形電極26で受信することができる。
【0034】
一方、バルク波は、圧電基板24の全体に伝搬する波である。このため、溝部30の深さdが圧電基板24の厚さHの半分以下となるように、次式(2)の関係を満たす値
d≦H/2 (2)
に選択することにより、弾性表面波素子12は、溝部30の反射面36によるバルク波の反射を50%以下に抑え、残りのバルク波を溝部30の底面と圧電基板24の下面との間からバルク伝搬部34に伝搬させることができる。
【0035】
従って、設計者は、溝部30の反射面36によって反射されるすべり弾性表面波を高精度に検出するために、(1)、(2)式から、溝部の深さdを、次式(3)の関係を満たす値
λ/2≦d≦H/2 (3)
に選択する。
【0036】
また、溝部30の反射面36によって反射されるすべり弾性表面波と、バルク波伝搬部34を伝搬し、圧電基板24の端部28によって反射されたバルク波とを時間的に分離して検出するため、設計者は、バルク波伝搬部34の距離L2を以下のように設定する。すなわち、櫛形電極26を構成する極性の異なる複数対の電極指27a、27bの間隔は、弾性波の波長λであり、電極指27a、27bの対の数をNとすると、櫛形電極26の幅は、(N×λ)である(ただし、Nは1以上の整数)。すべり弾性表面波とバルク波とを確実に分離するために、設計者は、すべり弾性表面波が溝部30の反射面36で反射されて櫛形電極26に戻るまでの時間t1と、バルク波が圧電基板24の端部28で反射されて櫛形電極26に戻るまでの時間t2との時間差(t2−t1)を、次式(4)の関係を満たす値
t2−t1≧N×λ/v (4)
v:弾性波の伝搬速度
に選択する。この時間差(t2−t1)は、バルク波が距離L2の伝搬部36を往復するのに要する時間であるから、次式(5)
t2−t1=2×L2/v (5)
である。
【0037】
従って、受信した弾性波からバルク波を時間的に分離し、すべり弾性表面波を高精度に検出するために、設計者は、(4)、(5)式から、伝搬部36の距離L2を、次式(6)の関係を満たす値
L2≧N×λ/2 (6)
に選択する。
【0038】
櫛形電極26により受信されたすべり弾性表面波及びバルク波は、すべり弾性表面波信号及びバルク波信号に変換された後、弾性波検出器18に供給される。
図2は、第1実施形態の弾性表面波素子12の櫛形電極26によるすべり弾性表面波信号及びバルク波信号の受信時間と信号レベルとの関係説明図である。
図2において、横軸は時間を表し、縦軸は信号レベルを表している。弾性波検出器18は、分配器16から供給された高周波発振信号と、受信した信号との振幅比、位相差及び伝搬遅延差を検出し、当該検出された振幅比、位相差及び伝搬遅延差に基づく信号を処理部22に出力する。処理部22は、弾性波検出器18から供給されたこれらの信号のうち、すべり弾性表面波信号に対して所定時間遅延しているバルク波信号を分離し、すべり弾性表面波信号に係る信号に基づき、被測定物の物理的特性を求める。
図2において、時間t1を中心に分離されている信号s101がすべり弾性表面波信号であり、このすべり弾性表面波信号より遅延した時間t2を中心に分離されている信号s102がバルク波信号である。
【0039】
このように、第1実施形態の弾性表面波素子12を備えた被測定物特性測定装置10は、反応場32を伝搬し、溝部(反射部)30の反射面36によって反射された後、櫛形電極26に入力するすべり弾性表面波と、反応場32から溝部30の下部を通過してバルク波伝搬部34を伝搬し、圧電基板24の端部28によって反射された後、櫛形電極26に入力するバルク波との間に所定の時間差が生じるように構成されている。従って、処理部22は、弾性波検出器18より供給された信号から、すべり弾性表面波に基づく信号に対して所定時間遅延して供給されるバルク波に基づく信号を分離することができる。この結果、処理部22は、すべり弾性表面波に係る信号に基づいて、反応場32に滴下された被測定物の物理的性を高精度に求めることができる。
【0040】
また、弾性表面波素子12は、すべり弾性表面波を溝部30の反射面36で反射させて往復させる一方、バルク波を圧電基板24の端部28で反射させて往復させ、単一の櫛形電極26ですべり弾性表面波及びバルク波を検出する構成としている。従って、被測定物の物理的特性を高精度に求めることのできる小型で安価な弾性表面波素子12を備えた被測定物特性測定装置10を得ることができる。
【0041】
図3は、第1実施形態の弾性表面波素子12に形成される溝部30の変形例の部分拡大断面図である。
図3は、
図1Bと同様に、
図1Aに示す弾性表面波素子のIB-IB線断面の一部を示している。溝部30には、圧電基板24の表面から突出しない範囲で、樹脂42、例えば、エポキシ樹脂が充填される。なお、
図3において、溝部30の深さは(3)式を満たす深さである。
【0042】
このように構成することにより、溝部30の反射面36によるすべり弾性表面波に対する音響(特性)インピーダンスの変化を抑制することができる。すなわち、溝部30に樹脂42を充填しない場合、溝部30に空気層があるときと、溝部30に液体状の被測定物が滴下されたときとでは、反射面36の音響(特性)インピーダンスが大きく異なる。従って、溝部30に被測定物が滴下されてしまうと、櫛形電極26により検出される信号レベルも大きく変化し、測定誤差が大きくなることが懸念される。これに対して、溝部30の一部に樹脂42を充填した場合、被測定物の一部が溝部30に滴下されるような事態が生じても、反射面36の音響(特性)インピーダンスの変化が小さいため、被測定物の滴下状態によって櫛形電極26により検出される信号レベルが異なってしまう事態を回避することができる。この結果、被測定物の物理的特性を安定した状態で高精度に求めることができる。
【0043】
なお、圧電基板24の表面から樹脂42が突出しないように樹脂42を溝部30に充填することにより、溝部30内の樹脂42上に被測定物が滴下された場合であっても、溝部30の反射面36により反射されるすべり弾性表面波に対する影響が少ないため、被測定物の物理的特性を高精度に求めることができる。
【0044】
<第2実施形態の構成>
図4は、第2実施形態の弾性表面波素子44を備えた被測定物特性測定装置46の平面構成図である。なお、弾性表面波素子44を構成する材料は、第1実施形態の弾性表面波素子12と同様である。
【0045】
被測定物特性測定装置46は、弾性表面波素子44と、発振器48、分配器50、弾性波検出器52、スイッチ53a及びスイッチ53bから構成される測定部54と、処理部56とを備える。なお、スイッチ53a及びスイッチ53bの端子1と端子3との接続、または端子2と端子3との接続の切替は、処理部56が行う。
【0046】
弾性表面波素子44は、圧電基板58上(第1面)に形成される2つの櫛形電極60a、60bと、櫛形電極60a、60bと圧電基板58の端部(第2面)62との間に形成される溝部(反射部)64と、各櫛形電極60a、60bと溝部64との間に、各櫛形電極60a、60bに対応して形成される反応場66a、66bと、溝部64と端部62との間に形成されるバルク波伝搬部68とを備える。
【0047】
2つの櫛形電極60a、60bは、溝部64の長手方向(矢印Y方向)に併設して形成され、櫛形電極26(
図1A、
図1B参照)と同様に樹脂又はガラス等の封止部材70a、70bにより密閉される。なお、櫛形電極60a及び60bは、各々、
図1A、
図1Bの櫛形電極26に相当し、各々が極性の異なる複数対の電極指27a及び27bに相当する複数対の電極指を有している。
【0048】
溝部64は、2つの櫛形電極60a、60bと弾性表面波の伝搬方向(矢印X方向)における圧電基板58の端部62との間に形成され、反射面36に対応する反射面(第4面)72が形成される。また、溝部64の断面は、例えば
図1Bと同様であり、溝部の深さはdである。溝部30の深さは(3)式を満たす深さである。
【0049】
反応場66a、66bは、各櫛形電極60a、60bと溝部64との間に、各櫛形電極60a、60bに対応して形成される。各反応場66a、66bには、圧電基板58上に蒸着された金属膜74a、74bが形成される。
溝部64と端部62との間には、バルク波伝搬部34(
図1A、
図1B参照)と同様のバルク波伝搬部68が形成される。
【0050】
測定部54を構成する発振器48は、高周波発振信号を生成する。分配器50は、高周波発振信号を各櫛形電極60a、60bに供給するとともに、弾性波検出器52に供給する。弾性波検出器52は、分配器50で分配された高周波発振信号と、各櫛形電極60a、60bで受信した弾性表面波に基づく信号との振幅比、位相差及び伝搬遅延差を検出し、検出した振幅比、位相差及び伝搬遅延差に基づく信号を処理部56に出力する。処理部56は、弾性波検出器52から供給された信号に基づき、各反応場66a、66bに滴下された被測定物の物理的特性を求める。
このように、本実施形態の被測定物特性測定装置46は、第1組(櫛形電極60a、反応場66a)と、第2組(櫛形電極60b、反応場66b)とが、伝搬方向がX方向に平行になるように、並列して配置されている。
【0051】
<第2実施形態による測定処理>
このように構成される第2実施形態に係る測定装置46では、第1実施形態に係る測定装置10と同様にして、各反応場66a、66bに滴下された被測定物の物理的特性を測定することができる。
【0052】
すなわち、発振器48で生成された高周波発振信号は、分配器50で分配され、弾性表面波素子44の各櫛形電極60a、60b及び測定部54の弾性波検出器52に供給される。
【0053】
櫛形電極60aでは、供給された高周波発振信号に基づいて弾性波が励振され、すべり弾性表面波が被測定物の滴下された反応場66aに沿って矢印X方向に伝搬した後、反射面72に到達する。次いで、すべり弾性表面波は、反射面72によって反射され、再度、反応場66aを伝搬し、櫛形電極60aで受信される。櫛形電極60bにより励振されたすべり弾性表面波についても同様である。
【0054】
また、櫛形電極60aにより励振されたバルク波は、反応場66aからバルク波伝搬部68を伝搬し、端部62に到達する。次いで、バルク波は、端部62によって反射され、再度、バルク波伝搬部68及び反応場66aを伝搬し、櫛形電極60aで受信される。櫛形電極60bにより励振されたバルク波についても同様である。
【0055】
各櫛形電極60a、60bにより受信されたすべり弾性表面波及びバルク波は、すべり弾性表面波信号及びバルク波信号に変換された後、弾性波検出器52に供給される。弾性波検出器52は、分配器50から供給された高周波発振信号と、受信した信号との振幅比、位相差及び伝搬遅延差を検出し、当該検出された振幅比、位相差に基づく信号を処理部56に出力する。処理部56は、弾性波検出器52から供給された信号のうち、すべり弾性表面波に係る信号に対して所定時間遅延しているバルク波に係る信号を分離し、得られたすべり弾性表面波に係る信号に基づき、反応場66a、66bに滴下された各被測定物の物理的特性を求める。
【0056】
このように構成される第2実施形態に係る被測定物特性測定装置46では、第1実施形態に係る被測定物特性測定装置10と同様にして、弾性表面波に係る信号からバルク波に係る信号を分離し、すべり弾性表面波に係る信号に基づき、各反応場66a、66bに滴下された各被測定物の物理的特性を求めることができる。すなわち、被測定物特性測定装置46では、同一又は異なる複数の被測定物の物理的特性を同時に高精度に求めることができる。
【0057】
また、第2実施形態の弾性表面波素子44を含む被測定物特性測定装置46では、各反応場66a、66bに滴下された各被測定物の物理的特性を同時に求めることができる。さらに、一方の反応場66aにのみ被測定物を滴下させ、各櫛形電極60a、60bが検出したすべり弾性表面波信号を処理することにより、弾性表面波素子44の環境条件の変化、例えば、温度変化の影響を補償して被測定物の物理的特性を高精度に求めることもできる。
【0058】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態の弾性表面波素子76を備えた被測定物特性測定装置78の平面構成図である。なお、第2実施形態と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、弾性表面波素子76を構成する材料は、第1実施形態の弾性表面波素子12と同様である。また、溝部64の断面は、例えば
図1Bと同様であり、溝部の深さはdである。溝部30の深さは(3)式を満たす深さである。
【0059】
弾性表面波素子76は、
図5に示すように、第2実施形態の弾性表面波素子44(
図4参照)における反応場66bの金属膜74bの一部が剥離され、圧電基板58が露出した剥離部80を有する以外、弾性表面波素子44と同一の構成である。圧電基板58が露出する反応場66bは、反応場66aとは異なる振幅・位相特性を有する電気的な開放状態である。
【0060】
反応場66aが電気的に短絡されている場合の出力信号は、力学的相互作用のみを受けている。また、反応場66bが電気的に開放されている場合の出力信号は、物理的相互作用(電気的相互作用及び力学的相互作用)を受けている。従って、2つの反応場66bと反応場66aに基づく出力信号から力学的相互作用を相殺し、電気的相互作用を抽出することにより、被測定物の比誘電率や導電率を求めることができる(例えば、羽藤逸文他2名、「SAW発振器一体型SAWセンサシステムの開発」、信学技報、電子情報通信学会、2003年2月 参照)。
このように構成される第3実施形態に係る被測定物特性測定装置78では、各反応場66a、66bに同一の被測定物が滴下され、次いで、各櫛形電極60a、60bにより弾性波が励振される。処理部56は、電気的に短絡されている反応場66aから得られたすべり弾性表面波に係る信号と、電気的に開放されている反応場66bから得られたすべり弾性表面波に係る信号とに基づき、被測定物の誘電率や導電率等の物理的特性を高精度に求めることができる。
【0061】
なお、第1〜第3実施形態では、溝部(反射部)(30、64)が溝である例を説明したが、これに限られない。
図7は、弾性表面波素子12’を備えた被測定物特性測定装置のIB-IB線断面図である。なお、
図7は、第1実施形態に係る
図1Aの断面図を示しているが、第2実施形態(
図4)、第3実施形態(
図5)にも同様に適用できる。
図7に示すように、弾性表面波素子12’は、圧電基板24の表面(第1面)の法線方向に表面と異なる位置に配置された第3面36C’が形成されている。この第3面は、バルク波伝搬部34の上面と連続している。そして、第4面である反射面36A’は、第1面の端部と第3面の端部とを結んで形成されている。すなわち、本発明に係る被測定物特性測定装置(10、46、及び78)では、反射面36(36A、36’、及び72)のみ有し、反射面36(36A、36’、及び72)に平行に設けられている面36B(
図6参照)を有していなくてもよい。このように構成することで、第1〜第3実施形態と同様に、すべり弾性表面波s111が反射面36A’により反射し、バルク波s113が端部28により反射するので、すべり弾性表面波s111とバルク波s113とを分離することができる。従って、被測定物の物理的特性を高精度に求めることのできる小型で安価な弾性表面波素子12’を備えた被測定物特性測定装置10を得ることができる。
【0062】
<第4実施形態>
図8は、第1実施形態における溝部30の深さdが0.06[mm]の場合の実測値の一例を示す図である。
図9は、第1実施形態における溝部30の深さdが0.01[mm]の場合の実測値の一例を示す図である。
図8及び
図9において、横軸は時間を表し、縦軸は信号レベルを表している。
図8及び
図9において、曲線s401及びs411は、バルク波の時間対信号レベルの特性であり、曲線s402及びs412は、すべり弾性表面波の時間対信号レベルの特性である。
図1Bまたは
図6に示すように、第1実施形態において溝部30の底面(第3面)は、圧電基板24の下面と略平行に形成されている。
図8に示すように溝部30の深さdが0.06[mm]の場合、時刻約2[μs]〜約3[μs]の間、バルク波s401とすべり弾性表面波s402とのレベル差は、約60[dB]である。次に、
図9に示すように溝部30の深さdが0.01[mm]の場合、時刻約2[μs]〜約3[μs]の間、バルク波s411とすべり弾性表面波s412とのレベル差は、約70[dB]である。
このように、溝部30の深さdが所定の深さより深い場合、バルク波の信号レベルが大きくなる。この要因は、
図6で説明したように、溝部30の反射面36Aにバルク波が反射して、櫛形電極26に戻ってくる信号レベルが大きくなるためである。このため、反射面36Aが上述した関係式(3)を満たす場合、バルク波s401とすべり弾性表面波s402とのレベル差を大きくできる。
【0063】
しかしながら、
図9に示すように溝部30の深さdが0.01[mm]であっても、時刻約3[μs]過ぎから、バルク波s401の信号レベルが上昇している。ここで、時刻約3[μs]過ぎから、バルク波s401の信号レベルが上昇する理由を説明する。
図10は、溝部30における端部による反射を説明する図である。
図6と同じ箇所は、同じ符号を用いて説明を省略する。
図10において、点401は溝部30における反射面(第4面)36Aの端部を表している。また、曲線s421はバルク波を表し、矢印s422と矢印s423は、端部401により、新たに発生したバルク波を表している。また符号36Bは、反射面36Aと対向してバルク波伝搬部34に接して設けられている面を表し、符号36Cは、溝部30の底面(第3面)を表している。
図10に示すように、溝部30の底面36Cと圧電基板24の下面との間を通過し端部(第2面)28で反射するバルク波s113以外に、溝部30の反射面36Aで反射するバルク波s112、s421がある。反射面36Aの端部401で反射するバルク波s421は、単に端部401で反射するだけではなく、矢印s422及び矢印s423のように、新たなバルク波を発生させる。このように新たに発生したバルク波s422及びs423が、遅れて櫛形電極26に到達するため、
図9に示したように時刻約3[μs]過ぎから、バルク波s401の信号レベルが上昇している。
このため、本実施形態では、溝部の端部で新たに発生するバルク波を抑えることで、さらにバルク波とすべり弾性表面波との分離を良くする。
【0064】
図11は、本実施形態に係る溝部30aの形状を説明する図である。
図11において、弾性表面波が伝搬する方向をX方向、弾性表面波が伝搬する方向に対して垂直な方向をY方向、圧電基板24の厚み方向をZ方向とする。なお、
図11は、第1実施形態の
図1Aに示した被測定物特性測定装置10に本実施形態の溝部30aを適用した例の図であるが、第2及び第3実施形態の被測定物特性測定装置46及び78にも適用可能である。またHは圧電基板24のZ方向の厚みである。
図11に示すように、溝部(反射部)30aは、Z方向に深さdの側面(第4面)36Aa及び側面36Baと、例えば直径wの半円の曲面(第3面)36Caとを有している。この側面36Aaの深さdは、第1実施形態と同様に、λ/2以上かつH/2以下である。また、第1〜第3実施形態と同様に、側面36Baは。側面36Aaと略平行して形成されていてもよい。
曲面36CaのZ方向の深さd’は、例えばw/2である。従って、溝部30aの深さの合計は、最大d+d’である。
このように、弾性表面波素子12aにおける溝部30aの底面36Caは、第1〜第3実施形態の底面36C(
図6参照)のように圧電基板24の下面と略平行な形状ではなく、曲面を有している。このため、底面36Caは、Z方向の位置毎にX方向の位置が異なる。Z方向の位置毎にX方向の位置が異なるとは、具体的には、底面36Caの各座標をXZ平面で表した場合、位置1=(x
1、z
1)、位置2=(x
2、z
2)、・・・のように、位置毎に少なくともX方向かZ方向の座標が異なることである。なお、溝部30aは、凸多角形により略半円に形成されるようにしてもよい。
なお、第4実施形態では、側面36Aaが、第1実施形態の反射面36に相当する。
【0065】
図12は、
図11に示した溝部30aを備える場合の実測値の一例を示す図である。
図12において、横軸は時間を表し、縦軸は信号レベルを表している。また、曲線s451は、バルク波の時間対信号レベルの特性であり、曲線s452は、すべり弾性表面波の時間対信号レベルの特性である。
図12は、
図11において溝部30aの深さd+d’が0.06[mm]である場合の実測値である。
図12に示すように溝部30aを有する場合、時刻約2[μs]〜約3[μs]の間、バルク波s451とすべり弾性表面波s452とのレベル差は、
図9と同様に約70[dB]である。
図9では、時刻約3[μs]過ぎから、バルク波s401の信号レベルが上昇していたが、本実施形態では、
図12に示すように時刻約3[μs]過ぎてもバルク波s451のレベルが上昇しない。このように、
図12に示した測定値は、同じ深さ0.06[mm]である
図8、及び側面36A及び36Bを有して深さが0.01[mm]の
図9のどちらと比較しても、バルク波の信号レベルが低減されている。
【0066】
ここで、本実施形態の溝部30aを被測定物特性測定装置に適用した場合に、バルク波による信号レベルを減少できる理由を説明する。
図10で説明したように、バルク波が反射する面に端部があると、この端部により新たなバルク波が発生する。
図11のように、溝部30aの側面36Aaと連続する底面36Caを、曲面により形成した場合、側面36Aaと底面36Caとの接続部等に端部が形成されない。このため、
図11に示した溝部30aのように形成すれば、端部による新たなバルク波が発生しない。
図11の場合、側面36Aaに加えて底面36Caでもバルク波が反射する。しかしながら、底面36Caが曲面のため、この面で反射し、櫛形電極26(
図1A、
図1B参照)が受信するバルク波のタイミングが、例えばZ方向の深さの位置毎に異なる。すなわち、櫛形電極26が受信するバルク波が分散する。この結果、本実施形態によれば、
図12に示したように、時刻約3[μs]過ぎてもバルク波による信号レベルを減少できる。
【0067】
以上のように、本実施形態による弾性表面波素子12aが有する溝部30aは、第1〜第3実施形態で説明した溝部30と同様にXY平面に対して垂直な側面36Aaを有し、さらに底面として曲面36Caを有している。この構成により、本実施形態の被測定物特性測定装置における弾性表面波素子12aは、第1〜第3実施形態と比べて、さらにすべり弾性表面波とバルク波との分離を向上できる。この結果、被測定物の物理的特性を高精度に求めることのできる小型で安価な弾性表面波素子12aを備えた被測定物特性測定装置10を得ることができる。
【0068】
次に、他の溝部の形状例を説明する。
図13及び
図14は、本実施形態に係る溝部の他の例である。なお、
図13及び
図14は、XZ平面における弾性表面波素子の断面図の一部である。また、圧電基板のZ方向の厚みはHである。
図13に示すように、弾性表面波素子12bの溝部(反射部)30bは、Z方向に深さdの側面36Ab及び側面36Bbと、側面36Abに対してなす角θ1を有して一端(端部411)が接している平面である斜面36Cb1、及び側面36Bbに対してなす角θ1を有して一端が接している平面である斜面36Cb2を有している。斜面36Cb1の他端(端部412)は、斜面36Cb2の他端と接している。また、側面36Abの深さdは、第1実施形態と同様に、λ/2以上かつH/2以下である。また、溝部30bのZ方向における深さは、最大d+d’である。
なお、
図13に示した例では、側面36Abと側面36Bbとの深さが同じ場合を説明したが、深さは異なっていてもよい。ただし、この場合であっても、側面36Abの深さdは、λ/2以上かつH/2以下であればよい。同様に、側面36Abと斜面36Cb1とのなす角θ1と、側面36Bbと斜面36Cb2とのなす角θ1とは、同じであっても異なっていてもよい。このように溝部30bは、凸多角形に形成されている。
【0069】
図14に示すように、弾性表面波素子12cの溝部(反射部)30cは、Z方向に深さdの側面36Ac、Z方向に深さd+d’の側面36Bcと、側面36Abに対してなす角θ2を有して一端(端部421)が接している平面である斜面36Cc1、及び斜面36Cc1の他端と一端(端部422)が接し圧電基板24の下面と平行な底面36Cc2を有している。底面36Cc2の他端は、側面36Bcの下端と接している。この側面36Acの深さdは、第1実施形態と同様に、λ/2以上かつH/2以下である。また、溝部30cのZ方向における深さは、最大d+d’である。
なお、
図14に示した例では、溝部30cが底面36Cc2を有している例を説明したが、底面36Cc2を有していなくてもよい。この場合、斜面36Cc1の他端は、側面36Bcの下端と接していてもよい。このように溝部30cは、凸多角形に形成されている。
【0070】
次に、
図13及び
図14のような形状の溝部におけるバルク波の伝搬について説明する。
図13に示したように、溝部30bは、端部411及び端部412を有している。このため、これらの端部により新たなバルク波が生じる。同様に、
図14に示したように、溝部30cは、端部421及び端部422を有している。このため、これらの端部により新たなバルク波が生じる。
しかしながら、本実施形態の溝部30bは、第1〜第3実施形態(例えば
図6)と異なり、深さdの側面36Abに連続する斜面36Cb1を有している。同様に、本実施形態の溝部30cは、深さdの側面36Acに連続する斜面36Cc1を有している。
このため、バルク波は、上述した端部(411及び412、または421及び422)で反射するのみではなく、斜面36Cb1または36Cc1の各位置で反射する。斜面36Cb1または36Cc1は、
図11に示した底面36Caと同様に、斜面のXZ平面の各位置が異なる。
従って、本実施形態では、端部411、412、421、及び422で発生した新たなバルク波に加え、各位置で反射したバルク波を、各々、異なる時刻に櫛形電極24が受信する。この結果、底面36Caが曲面の場合と同様に、櫛形電極24が受信するバルク波が時間方向に分散する。従って、
図13または
図14の溝部30bまたは30cを備える弾性表面波素子12bまたは12cによれば、バルク波による信号レベルを減少できる。
【0071】
以上のように、本実施形態では、第1〜第3実施形態の溝部(30または64)が有する深さdの側面(36Aa、36Ab、または36Ac)に加えて、曲面の底面36Caまたは斜面(36Cb1、または36Cc1)を有している。この構成により、第1〜第3実施形態と同様に、櫛形電極24は、側面(36Aa、36Ab、または36Ac)により反射したすべり弾性表面波に基づく信号を受信する。また、櫛形電極24は、側面(36Aa、36Ab、または36Ac)、底面36Caまたは斜面(36Cb1、または36Cc1)、及び端部28により反射したバルク波に基づく信号を受信する。上記のうち、底面36Caまたは斜面(36Cb1、または36Cc1)、及び端部28により反射したバルク波は、分散されて受信される。これにより、
図13のように側面36Abと斜面36Cb1との間に端部411等があっても、バルク波を分散できるので、新たに発生するバルク波の影響を低減できる。
従って、本実施形態によれば、第1〜第3実施形態より、さらにバルク波を低減できるので、バルク波とすべり弾性表面波と分離できる。この結果、本実施形態では、このようにしてバルク波から分離されたすべり弾性表面波を用いることで、被測定物の物理的特性を高精度に求めることができる。
【0072】
<第5実施形態>
図15は、本実施形態の弾性表面波素子12aを備えた被測定物特性測定装置10aの平面構成図である。
図16は、
図15に示す弾性表面波素子12aのIB-IB線断面図である。また、
図16において、二点鎖線で囲んだ図は、反射部500を含む部分の拡大図である。
被測定物特性測定装置10aは、被測定物の物理的特性を測定するものであり、弾性表面波素子12aと、発振器14a、分配器16a、スイッチ17a及び弾性波検出器18aから構成される測定部20aと、パソコン等で構成される処理部22とを備える。測定部20aは、第1実施形態の測定部20と同様の機能を有している。
【0073】
弾性表面波素子12aは、圧電基板24と、圧電基板24上に形成され弾性波を励振させる櫛形電極26と、櫛形電極26と弾性波の伝搬方向(矢印X方向)における圧電基板24の端部28との間に形成される反射部500と、櫛形電極26と反射部501〜503との間に形成され被測定物が付加される反応場32と、反射部501〜503と端部28との間に形成されるバルク波が伝搬するバルク波伝搬部34とを備える。反射部500は、反射部501〜503を備える。第1実施形態と異なるのは、弾性表面波素子12aが、反射部501〜503を備えている点である。
また、
図15及び
図16において、弾性波の伝搬方向をX方向、弾性表面波の伝搬方向と直交する方向をY方向とする。
【0074】
反射部501〜503は、Y方向に圧電基板24の端から端まで形成されている。反射部501〜503は、弾性波が伝搬する圧電基板24の表面に略垂直な高さh(
図16参照)の壁を有している。反射部501〜503の壁の高さhは、弾性表面波の波長λに応じたものである。
反射部501は、X方向に、反応場32から距離L11離れて形成されている。また、反射部501のX方向の幅は、L12である。反射部501は、X方向に面511(第3面)を有し、圧電基板24の表面から高さhの反射面521(第4面)を有している。
反射部502は、X方向に、反射部501から距離L13離れて形成されている。また、反射部502のX方向の幅は、L14である。反射部502は、X方向に面512(第3面)を有し、圧電基板24の表面から高さhの反射面522(第4面)を有している。
反射部503は、X方向に、反射部502から距離L15離れて形成されている。また、反射部503のX方向の幅は、L16である。反射部503は、X方向に面513(第3面)を有し、圧電基板24の表面から高さhの反射面523(第4面)を有している。
弾性表面波は、圧電基板24の表層部分を伝搬し、反射部501〜503の各面521〜523によって反射された後、再度、反応場32を伝搬し、櫛形電極26で受信される。
【0075】
なお、距離L11、L13及びL15は、同じであっても異なっていてもよい。幅L12、L14及びL16は、同じであっても異なっていてもよい。また、反射部501〜503の反射面521〜522の高さhは、同じであっても異なっていてもよい。
なお、
図15及び
図16では、弾性表面波素子12aが反射部を3つ備える例を示したが、反射部の数は、1つ以上であればよい。
【0076】
次に、被測定物特性測定装置10aによる処理の一例を説明する。
処理部22は、スイッチ17aを端子1と端子3とが接続されるように切り替える。これにより、分配器16aは、スイッチ17aを介して、高周波発振信号を櫛形電極26に供給する。
櫛形電極26は、供給された高周波発振信号に基づいて弾性波が励振される。弾性波は、被測定物の滴下された反応場32に沿って矢印X方向に伝搬される。
反応場32を伝搬する弾性波のうち、弾性表面波であるすべり弾性表面波は、圧電基板24の表層部分を伝搬し、反射部501〜503の反射面521〜523によって反射された後、再度、反応場32を伝搬し、櫛形電極26で受信される。また、バルク波は、圧電基板24の内部のバルク波伝搬部34及び反応場32を伝搬し、圧電基板24の端部28に達する。次いで、このバルク波は、端部28によって反射された後、再度、バルク波伝搬部34及び反応場32を伝搬し、櫛形電極26で受信される。
処理部22は、スイッチ17aを端子2と端子3とが接続されるように切り替える。
櫛形電極26により受信された弾性表面波及びバルク波は、弾性表面波信号及びバルク波信号に変換された後、弾性波検出器18aに供給される。
【0077】
なお、弾性波検出器18aは、例えば、反射部501〜503のうち、3つのうちの中心に位置されている反射部502の反射による弾性表面波信号を用いて検出する。反射部が2つ以上の場合、弾性波検出器18aは、反射部501〜503において中心に配置されている反射部の反射による弾性表面波信号を用いて検出するようにしてもよい。反射部の数が偶数の場合、例えば反射部が4つの場合(第1反射部〜第4反射部)、弾性波検出器18aは、4つの反射部のうち中心に配置されている第2反射部または第3反射部による弾性表面波信号を用いて検出するようにしてもよい。
【0078】
以上のように、本実施形態の被測定物特性測定装置10aにおいて、弾性表面波は、反応場32を伝搬し、反射部500の反射面(521〜523)により反射されて櫛形電極26で受信されるのに対して、バルク波は、反応場からバルク波伝搬部34に伝搬し、圧電基板24の端部28で反射された後、弾性表面波よりも所定時間だけ遅延して櫛形電極26で受信される。そのため、この遅延時間を利用して弾性波に基づく信号からバルク波に基づく信号を分離し、弾性表面波による信号を抽出することができる。従って、弾性表面波による信号に基づき、被測定物の物理的特性を高精度に求めることができる。
【0079】
なお、本実施形態では、櫛形電極26、反応場32が1つの例を説明したが、第2及び第3実施形態のように複数であってもよい。この場合であっても、例えば、
図4の溝部64、
図5の溝部64の代わりに反射部500を適用してもよい。
また、
図16では、反射部501〜503の面511〜513の形状は、圧電基板24と略平面な形状の例を示したが、これに限られない。反射部501〜503の面511〜513の形状は、他の形状、例えば半円、斜面等であってもよい。
【0080】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更することが可能である。
【0081】
例えば、第2実施形態の弾性表面波素子44及び第3実施形態の弾性表面波素子76に形成される溝部64は、
図3に示す場合と同様に、樹脂42で覆うことにより、溝部64に被測定物の一部が滴下された場合であっても、被測定物の物理的特性を高精度に求めることができる。