(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956902
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/79 20110101AFI20160714BHJP
H01R 12/88 20110101ALI20160714BHJP
【FI】
H01R12/79
H01R12/88
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-232519(P2012-232519)
(22)【出願日】2012年10月22日
(65)【公開番号】特開2014-86193(P2014-86193A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(72)【発明者】
【氏名】芦部 健太
【審査官】
山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−210655(JP,A)
【文献】
特開2009−266508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/79
H01R 12/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載基板の表面上に搭載されると共にシート状の接続対象物の接続端部が挿入されるコネクタにおいて、
前記接続対象物の接続端部を挿入するための挿入部が形成されたハウジングと、
それぞれ前記接続対象物の挿入方向に延びると共に前記接続対象物の挿入方向に対して交差する方向に沿って配列されるように前記ハウジングに保持された複数のコンタクトと
を備え、前記接続対象物の挿入側で前記搭載基板の表面上に半田実装されるすべての前記コンタクトが、前記接続対象物の挿入側の端部に、前記搭載基板の表面上に実装される平面状の被実装面を有すると共に、前記接続対象物の接続端部を前記挿入部に誘導するための、前記被実装面に対して90度よりも小さい所定の角度で傾斜する傾斜面を有し、
前記ハウジングは、前記コンタクトの前記傾斜面に滑らかに連続すると共に前記挿入部の入口に接続される傾斜部を有することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
搭載基板の表面上に搭載されると共にシート状の接続対象物の接続端部が挿入されるコネクタにおいて、
前記接続対象物の接続端部を挿入するための挿入部が形成されたハウジングと、
それぞれ前記接続対象物の挿入方向に延びると共に前記接続対象物の挿入方向に対して交差する方向に沿って配列されるように前記ハウジングに保持された複数のコンタクトと
を備え、前記接続対象物の挿入側で前記搭載基板の表面上に半田実装されるすべての前記コンタクトが、前記接続対象物の挿入側の端部に、前記搭載基板の表面上に実装される平面状の被実装面を有すると共に、前記接続対象物の接続端部を前記挿入部に誘導するための、前記被実装面に対して90度よりも小さい所定の角度で傾斜する傾斜面を有し、
前記接続対象物の挿入側における前記傾斜面の先端部が、前記被実装面から高さ0.1mmの範囲内で、前記被実装面に対して前記所定の角度よりも大きな傾斜角を有するように切り欠かれた切り欠き部を有することを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記被実装面に対して前記所定の角度で接続される請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記傾斜面は、前記コンタクトの前記被実装面を前記搭載基板の表面上に半田実装したときに前記傾斜面の中間部から前記搭載基板の表面にわたって形成される半田フィレットの表面と滑らかに接続される請求項1〜3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタに係り、特に、FPC(フレキシブルプリント回路)およびFFC(フレキシブルフラットケーブル)等のシート状の接続対象物の接続を行うコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタとして、例えば、特許文献1には、
図9に示されるようなコネクタ81が開示されている。コネクタ81は、搭載基板82上に固定され、ハウジング83の凹状の挿入部84にシート状の接続対象物85の接続端部が挿入した状態で、アクチュエータ86を回転させることにより、接続対象物85に形成されている複数の接続端子とコネクタ81の複数のコンタクト87とがそれぞれ電気的に接続されると共に接続対象物85がコネクタ81に保持される。
【0003】
しかし、挿入部84の下部にハウジング83の底板部分が位置し、この底板部分の上に挿入部84が形成されているため、接続対象物85をコネクタ81の挿入部84に挿入させるためには、接続対象物85の接続端部を挿入部84の高さとなるように搭載基板82の表面から所定高さだけ浮かした状態で挿入部84に向かって移動させなくてはならず、接続対象物85の挿入作業を円滑に行うことが困難であった。仮に、接続対象物85を搭載基板82の表面に沿わせてコネクタ81に挿入しようとすると、接続対象物85の接続端部がハウジング83の底板部分に突き当たって、挿入が阻止されてしまう。
特に、多芯数になるほど、シート状の接続対象物85の横幅が大きくなり、接続対象物85に撓みが発生しやすくなるので、接続対象物85の挿入作業は難しく、手間のかかるものであった。
【0004】
これに対して、特許文献2に開示されたコネクタ88では、
図10(A)に示されるように、接続対象物89が挿入される挿入部90の入口付近の下部において、複数のコンタクト91のそれぞれが搭載基板92の半田パッド93上に半田実装される。このため、挿入部90の下部がハウジング94の底板部分で占められることはないが、コンタクト91は、挿入部90の入口の下部に搭載基板92の表面に対してほぼ直交する垂直端部95を有するので、
図9に示したコネクタ81と同様に、接続対象物89の接続端部を挿入部90の高さとなるように搭載基板92の表面から所定高さだけ浮かした状態で接続対象物89を移動させる必要があった。仮に、接続対象物89を搭載基板92の表面に沿わせてコネクタ88に挿入しようとすると、接続対象物89の接続端部がコンタクト91の垂直端部95に突き当たり、挿入が阻止されてしまう。
【0005】
また、コネクタ88には、
図10(B)に示されるように、挿入部90の入口の両側端部において、ハウジング94に、それぞれ接続対象物89の挿入をガイドする傾斜部96が形成されている。
しかしながら、接続対象物89の接続端部の両側端をそれぞれ対応する傾斜部96上に位置させて接続対象物89を挿入しなければならず、仮に、接続対象物89をコネクタ88に対して斜め方向から挿入したために、接続対象物89の接続端部の両側端のうち一方のみがハウジング94の傾斜部96上に位置した状態で接続対象物89を挿入した場合には、他方の側端側において、接続対象物89の接続端部がコンタクト91の垂直端部95に突き当たり、接続対象物89を挿入部90に正常に挿入することができなくなる。
【0006】
また、ハウジング94は、一般に電気絶縁性を有する樹脂材料を成形することで作製されるが、製造技術上、先端が鋭く尖った形状を形成することは困難であり、
図10(A)および(B)に示されるように、傾斜部96の先端に搭載基板92の表面に直交する小さな垂直端部97が形成されている。このため、接続対象物89を搭載基板92の表面に沿わせてコネクタ88に挿入しようとすると、接続対象物89の接続端部の両側端がハウジング94の垂直端部97に突き当たることとなる。
【0007】
なお、それぞれのコンタクト91を搭載基板92の対応する半田パッド93上に半田付けすると、通常、半田フィレットが形成されて、半田パッド93の表面からコンタクト91にかけて半田フィレットの表面による斜面部が形成されるが、この斜面部によりそれぞれのコンタクト91の垂直端部95が覆われる保証はなく、複数のコンタクト91のうち1つでも垂直端部95が露出すると、この垂直端部95に突き当たるために、接続対象物89を円滑に挿入することができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−122894号公報
【特許文献2】特開2011−181210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、従来のコネクタでは、シート状の接続対象物を円滑に挿入することが困難である、という問題があった。
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、シート状の接続対象物を容易に且つ円滑に挿入することができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係るコネクタは、搭載基板の表面上に搭載されると共にシート状の接続対象物の接続端部が挿入されるコネクタにおいて、接続対象物の接続端部を挿入するための挿入部が形成されたハウジングと、それぞれ接続対象物の挿入方向に延びると共に接続対象物の挿入方向に対して交差する方向に沿って配列されるようにハウジングに保持された複数のコンタクトとを備え、接続対象物の挿入側で搭載基板の表面上に半田実装されるすべてのコンタクトが、接続対象物の挿入側の端部に、前記搭載基板の表面上に実装される平面状の被実装面を有すると共に、接続対象物の接続端部を挿入部に誘導するための、前記被実装面に対して90度よりも小さい所定の角度で傾斜する傾斜面を有
し、ハウジングは、コンタクトの傾斜面に滑らかに連続すると共に挿入部の入口に接続される傾斜部を有するものである。
【0011】
第2の発明に係るコネクタは、搭載基板の表面上に搭載されると共にシート状の接続対象物の接続端部が挿入されるコネクタにおいて、接続対象物の接続端部を挿入するための挿入部が形成されたハウジングと、それぞれ接続対象物の挿入方向に延びると共に接続対象物の挿入方向に対して交差する方向に沿って配列されるようにハウジングに保持された複数のコンタクトとを備え、接続対象物の挿入側で搭載基板の表面上に半田実装されるすべてのコンタクトが、接続対象物の挿入側の端部に、搭載基板の表面上に実装される平面状の被実装面を有すると共に、接続対象物の接続端部を挿入部に誘導するための、被実装面に対して90度よりも小さい所定の角度で傾斜する傾斜面を有し、接続対象物の挿入側における傾斜面の先端部は、被実装面から高さ0.1mmの範囲内で、被実装面に対して前記所定の角度よりも大きな傾斜角を有するように切り欠かれた切り欠き部を有
するものである。
第1の発明において、傾斜面は、被実装面に対して前記所定の角度で接続されていてもよい。
また、傾斜面は、コンタクトの被実装面を搭載基板の表面上に半田実装したときに傾斜面の中間部から搭載基板の表面にわたって形成される半田フィレットの表面と滑らかに接続されることが好ましい
。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、接続対象物の挿入側で搭載基板の表面上に半田実装されるすべてのコンタクトが、接続対象物の挿入側の端部に、接続対象物の接続端部を挿入部に誘導するための傾斜面を有するので、シート状の接続対象物を搭載基板の表面に沿わせて移動させることで、接続対象物を容易に且つ円滑に挿入部に挿入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るコネクタを示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図、(D)は斜視図である。
【
図3】実施の形態1のコネクタに用いられた第1のコンタクトを示し、(A)は側面図、(B)は斜視図である。
【
図4】実施の形態1のコネクタに用いられた第1のコンタクトの前端部を示す部分拡大図である。
【
図5】実施の形態1に係るコネクタが実装基板上に実装された状態を示す断面図である。
【
図6】実装基板上に実装された実施の形態1のコネクタにおける第1のコンタクトの前端部を示す部分拡大断面図である。
【
図7】実施の形態1のコネクタに接続対象物を挿入する動作を段階的に示す断面図である。
【
図8】実装基板上に実装された実施の形態2のコネクタにおける第1のコンタクトの前端部を示す部分拡大断面図である。
【
図10】従来の他のコネクタを示し、(A)は断面図、(B)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1
以下、この発明の実施の形態1を添付図面に基づいて説明する。
図1に、実施の形態1に係るコネクタ1の構成を示す。このコネクタ1は、FPC(フレキシブルプリント回路)およびFFC(フレキシブルフラットケーブル)等のシート状の接続対象物の接続を行う小型のコネクタであり、ハウジング2と、ハウジング2に回転操作可能に取り付けられたアクチュエータ3と、ハウジング2に固定された複数のコンタクト4を備えている。
【0015】
ハウジング2は、前方に向かって開口された前方開口部21と、後方に向かって開口された後方開口部22を有している。後方開口部22は、上方にも開放されており、アクチュエータ3は、後方開口部22の上方を開放する開位置と後方開口部22の上方を覆う閉位置との間で回転するように、ハウジング2に取り付けられている。
図1では、アクチュエータ3が開位置に位置する状態、すなわち、ハウジング2の後方開口部22の上方を開放した状態が示されている。
アクチュエータ3を閉位置に回転してハウジング2の後方開口部22の上方をアクチュエータ3で覆うと、ハウジング2とアクチュエータ3は、併せて、薄型のほぼ直方体形状の外形を有する。
【0016】
ハウジング2の内部には、それぞれ前方開口部21から後方開口部22まで貫通する、互いに平行な複数のスリットが形成され、これら複数のスリットにそれぞれ対応するコンタクト4が圧入され固定されている。複数のコンタクト4は、それぞれハウジング2の前方開口部21から後方開口部22へ向かう前後方向に延び、この前後方向に直交するハウジング2の幅方向に配列されている。
また、複数のコンタクト4は、前端部がハウジング2の前方開口部21から露出するように、配列ピッチP1で配列された複数の第1のコンタクト41と、それぞれ後端部がハウジング2の後方開口部22から露出するように、第1のコンタクト41の配列ピッチP1と同じピッチP1で配列された複数の第2のコンタクト42とを含んでおり、第1のコンタクト41と第2のコンタクト42が交互に配列ピッチP2=P1/2で配置されている。
【0017】
図2に示されるように、第1のコンタクト41の前端部43は、ハウジング2の前方開口部21の下部から前方へ突出しており、この前端部43の下端に平面状の被実装面44が形成されている。
一方、第2のコンタクト42の後端部45は、ハウジング2の後方開口部22の下部から後方へ突出しており、この後端部45の下端に平面状の被実装面46が形成されている。
【0018】
第1のコンタクト41は、導電性を有する金属製の平板部材から形成され、
図3(A)および(B)に示されるように、ハウジング2の対応するスリット内に圧入されることで固定されるハウジング固定部47と、ハウジング固定部47から前端部43にまで延びる伸張部48を有している。さらに、第1のコンタクト41は、伸張部48とほぼ平行に伸びる上腕部49および下腕部50を有し、上腕部49の中間部分が連結部51を介して伸張部48に接続されると共に、下腕部50の付け根部分が伸張部48に接続されている。上腕部49および下腕部50の先端には、それぞれ互いに対向するように接点部52および53が形成されている。
【0019】
さらに、
図4に示されるように、第1のコンタクト41の前端部43には、被実装面44に対して所定の角度Cで傾斜しながら、第1のコンタクト41の前方を向いた傾斜面54が形成されている。この傾斜面54は、コネクタ1に接続対象物を挿入する際に、接続対象物の接続端部をハウジング2内に誘導するためのものである。
また、傾斜面54の先端部に、被実装面44から高さH1の範囲で切り欠かれた切り欠き部55が形成されている。切り欠き部55は、傾斜面54の所定の角度Cよりも大きな傾斜角を有するように切り欠かれており、切り欠き部55の高さH1は、被実装面44を搭載基板の半田パッド上に半田実装したときに形成される半田フィレットの中に切り欠き部55が十分に埋没されるように、0.1mm以内に設定されている。このような切り欠き部55を有することにより、傾斜面54の先端部にバリを発生させることなく、金属板のプレス型抜き加工で第1のコンタクト41を作製することができる。
なお、第1のコンタクト41は、例えば、厚さ0.08mm、前端部43の高さH2=0.25mm程度のサイズに形成される。
【0020】
図2に示される第2のコンタクト42も、第1のコンタクト41と同様に、導電性を有する金属製の平板部材から形成され、上腕部の先端に形成された接点部56と下腕部の先端に形成された接点部57を有しているが、第2のコンタクト42の前端部は第1のコンタクト41の前端部よりも後方、すなわち、後方開口部22側に引っ込んでおり、第1のコンタクト41のような傾斜面54および切り欠き部55は形成されていない。
【0021】
このような第1のコンタクト41および第2のコンタクト42がハウジング2内に保持される。ハウジング2の内部には、
図2に示されるように、前方開口部21に連なった奥には、接続対象物の接続端部を挿入するための凹状の挿入部23が形成されており、第1のコンタクト41の接点部52と第2のコンタクト42の接点部56が挿入部23の天井部から挿入部23内に突出し、第1のコンタクト41の接点部53と第2のコンタクト42の接点部57が挿入部23の底部から挿入部23内に突出するように配置されている。
【0022】
そして、アクチュエータ3を、後方開口部22の上方を開放する開位置から後方開口部22の上方を覆う閉位置へ回転させると、アクチュエータ3に形成されているカム部31の作用により、第1のコンタクト41の上腕部49および第2のコンタクト42の上腕部が応力を受け、これら上腕部の先端に形成された接点部52および56がそれぞれ対向する下腕部の接点部53および57に接近するように構成されている。
また、ハウジング2には、第1のコンタクト41の傾斜面54に滑らかに連続すると共に挿入部23の入口に接続される傾斜部24が形成されている。
【0023】
このような構成を有する実施の形態1のコネクタ1を搭載基板61の表面上に搭載した状態を
図5に示す。
搭載基板61の表面には、コネクタ1の複数の第1のコンタクト41の前端部43にそれぞれ対応した複数の半田パッド62と、複数の第2のコンタクト42の後端部45にそれぞれ対応した複数の半田パッド63とが配列形成されており、それぞれの第1のコンタクト41の被実装面44が対応する半田パッド62に半田付けされると共に、それぞれの第2のコンタクト42の被実装面46が対応する半田パッド63に半田付けされ、これにより、コネクタ1が搭載基板61の表面上に実装される。
【0024】
複数の第1のコンタクト41の被実装面44と複数の第2のコンタクト42の被実装面46は、例えば、リフロー方式により同時に対応する半田パッド62および63に半田実装されるが、このとき、
図6に示されるように、実装に用いられる半田64に、第1のコンタクト41の傾斜面54の中間部から搭載基板61の半田パッド62の表面にわたって半田フィレット65が形成される。第1のコンタクト41の被実装面44から0.1mm以内の高さH1の範囲で切り欠かれた切り欠き部55は、半田64の中に埋没し、第1のコンタクト41の傾斜面54は、半田フィレット65の表面と滑らかに接続し、さらに、半田フィレット65の表面が搭載基板61の表面に滑らかに接続する。
【0025】
このような半田フィレット65が、すべての第1のコンタクト41の実装部にそれぞれ形成され、半田フィレット65、第1のコンタクト41の傾斜面54およびハウジング2の傾斜部24によって、搭載基板61の表面からハウジング2の挿入部23の入口に至る、接続対象物のための誘導路が形成される。
【0026】
次に、コネクタ1に接続対象物を接続する動作について説明する。
まず、
図7(A)に示されるように、アクチュエータ3を後方開口部22の上方を開放する開位置に位置させた状態で、FPCおよびFFC等のシート状の接続対象物71の接続端部72を搭載基板61の表面に沿わせつつ、ハウジング2の前方開口部21へ向けて移動させる。
ハウジング2の前方開口部21の下部には、複数の第1のコンタクト41の前端部43が接続対象物71の移動方向に対向するように突出しているが、上述したように、搭載基板61の表面に半田フィレット65の表面が滑らかに接続されると共に、半田フィレット65の表面に第1のコンタクト41の前端部43の傾斜面54が滑らかに接続されている。
【0027】
このため、接続対象物71の接続端部72は、ハウジング2の前方開口部21の下部に至ると、
図7(B)に示されるように、搭載基板61の表面から複数の半田パッド62上の複数の半田フィレット65の表面およびこれら複数の半田フィレット65の表面にそれぞれ接続された複数の第1のコンタクト41の傾斜面54に誘導されて、第1のコンタクト41の傾斜面54の上部にまで滑らかに持ち上げられる。
さらに、複数の第1のコンタクト41の傾斜面54には、ハウジング2の傾斜部24が滑らかに連続しているので、接続対象物71の移動を進めると、接続対象物71の接続端部72は、第1のコンタクト41の傾斜面54の上部からハウジング2の傾斜部24を介して挿入部23の入口に入り、
図7(C)に示されるように、挿入部23の奥部にまで挿入されることとなる。
【0028】
ここで、アクチュエータ3を、後方開口部22の上方を開放する開位置から後方開口部22の上方を覆う閉位置へ回転させることにより、アクチュエータ3のカム部31の作用で、第1のコンタクト41の接点部52および53の間隔並びに第2のコンタクト42の接点部56および57の間隔が狭まり、これらの接点部がそれぞれ接続対象物71の対応する接続端子に電気的に接続されると共に、接続対象物71がコネクタ1に保持される。
このように、接続対象物71の挿入側で搭載基板61の半田パッド62に半田実装されるすべての第1のコンタクト41が、接続対象物71の挿入側の前端部43に傾斜面54を有し、この傾斜面54の下半部に半田フィレット65の表面が滑らかに接続されると共に傾斜面54の上部にハウジング2の傾斜部24が滑らかに連続しているので、接続対象物71の接続端部72を搭載基板61の表面に沿わせてハウジング2の前方開口部21へ向けて移動させるだけで、極めて容易に且つ円滑に接続対象物71をコネクタ1の挿入部23に挿入して、電気的な接続を行わせることが可能となる。
【0029】
複数の第1のコンタクト41のそれぞれが、傾斜面54を有すると共に、傾斜面54に半田フィレット65の表面が滑らかに接続されているので、多芯数を有するために接続対象物71の横幅が大きくなっても、接続対象物71は撓むことなく円滑にコネクタ1の挿入部23に挿入され、また、接続対象物71をコネクタ1に対して斜め方向から挿入したとしても、接続対象物71の接続端部72が複数の第1のコンタクト41の傾斜面54および半田フィレット65により誘導されるので、接続対象物71は、円滑にコネクタ1の挿入部23に挿入されることとなる。
【0030】
なお、第1のコンタクト41の傾斜面54にハウジング2の傾斜部24が滑らかに連続していたが、第1のコンタクト41の傾斜面54によって接続対象物71の接続端部72が十分に挿入部23の入口にまで誘導される場合には、ハウジング2に傾斜部24を形成する必要はない。
【0031】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、金属板のプレス型抜き加工で第1のコンタクト41を作製する際にバリの発生を防止するため、第1のコンタクト41の傾斜面54の先端部に、0.1mm以内の高さH1の範囲で切り欠かれた切り欠き部55が形成されていたが、バリが発生しないように第1のコンタクト41を作製することができれば、切り欠き部55を有していなくてもよい。
例えば、
図8に示されるように、第1のコンタクト41Aの前端部43Aの傾斜面54Aが、前端部43Aの下端に形成された平面状の被実装面44Aに対して所定の角度Cで接続されるように形成される。
【0032】
このようにしても、第1のコンタクト41Aの被実装面44Aを半田パッド62に半田実装したときに、実装に用いられる半田64に、傾斜面54Aの中間部から搭載基板61の半田パッド62の表面にわたって半田フィレット65が形成され、傾斜面54Aに滑らかに接続される。このため、実施の形態1と同様に、接続対象物71の接続端部72を搭載基板61の表面に沿わせて移動させるだけで、極めて容易に且つ円滑に接続対象物71をコネクタの挿入部に挿入することができる。
【0033】
この実施の形態2においては、第1のコンタクト41Aの傾斜面54Aと被実装面44Aとが所定の角度Cで接続されるので、仮に、傾斜面54Aの中間部から搭載基板61の半田パッド62の表面にわたって半田フィレット65が形成されなくても、接続対象物71の接続端部72を搭載基板61の表面に沿わせて移動させるだけで、円滑に接続対象物71をコネクタの挿入部に挿入することが可能となる。
【0034】
なお、接続対象物71として、シート状のフレキシブルなFPCおよびFFC等を用いたが、これに限るものではなく、シート状のリジッドな接続対象物に対しても、同様にして、接続対象物の接続端部を搭載基板の表面に沿わせて移動させるだけで、容易に且つ円滑に接続対象物をコネクタの挿入部に挿入することができる。
また、この発明は、
図1に示したようなアクチュエータ3を利用して接続対象物を保持する、いわゆる、ZIF(zero insertion force)タイプのコネクタおよびLIF(low insertion force)タイプのコネクタの他、アクチュエータを用いないNON−ZIFタイプのコネクタ等、接続対象物の接続端部を挿入部に挿入する形式の各種のコネクタに適用することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 コネクタ、2 ハウジング、3 アクチュエータ、4 コンタクト、21 前方開口部、22 後方開口部、23 挿入部、24 傾斜部、31 カム部、41,41A 第1のコンタクト、42 第2のコンタクト、43,43A 前端部、44,44A 被実装面、45 後端部、46 被実装面、ハウジング固定部、48 伸張部、49 上腕部、50 下腕部、51 連結部、52,53,56,57 接点部、54,54A 傾斜面、55 切り欠き部、61 搭載基板、62,63 半田パッド、64 半田、65 半田フィレット、71 接続対象物、72 接続端部、81,88 コネクタ、82,92 搭載基板、83,94 ハウジング、84,90 挿入部、85,89 接続対象物、86 アクチュエータ、87,91 コンタクト、93 半田パッド、95 垂直端部、96 傾斜部、97 垂直端部、P1 第1のコンタクト間および第2のコンタクト間の配列ピッチ、P2 第1のコンタクトと第2のコンタクトの間の配列ピッチ、C 所定の角度、H1 切り欠き部の高さ、H2 前端部の高さ。