(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956908
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】用水路補修用止水壁部材及び用水路補修用仮締切工法
(51)【国際特許分類】
E02D 19/04 20060101AFI20160714BHJP
B63B 35/00 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
E02D19/04
B63B35/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-239836(P2012-239836)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-88721(P2014-88721A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】591197633
【氏名又は名称】明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084102
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】関根 繁明
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭52−17320(JP,B2)
【文献】
特開昭61−286417(JP,A)
【文献】
特開平6−257163(JP,A)
【文献】
特開2003−129454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 19/00〜 25/00
E01D 1/00〜 24/00
E02D 29/00〜 37/00
E02B 17/00
E02B 5/02
B63B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舷側に適宜間隔で杭装着筒部を縦設した適宜長さの細長船体の船底全長に、底堰板部を下方へ突設し、前記底堰板部の下縁と対応する下縁を備えると共に、前記細長船体の船首及び船尾にそれぞれ水密に枢結し、先縁にシール板を突設した可動堰板部を設けてなることを特徴とする用水路補修用止水壁部材。
【請求項2】
底堰板部を、船底に設けた装着板部と前記装着板部に着脱可能に設けた底堰板体で構成し、可動堰板部を、船首及び船尾に設けた可動装着板部と先縁にシール板を突設した可動堰板体で構成した請求項1記載の用水路補修用止水壁部材。
【請求項3】
舷側に適宜間隔で杭装着筒部を縦設した適宜長さの細長船体の船底全長に、底堰板部を下方へ突設し、前記底堰板部の下縁と対応する下縁を備えると共に、前記細長船体の船首及び船尾にそれぞれ水密に枢結し、先縁にシール板を突設した可動堰板部を設けてなる用水路補修用止水壁部材を使用し、補修対象用水路に細長船体を浮かべて補修対象擁壁に対向して添わせ、当該位置で杭装着筒部を通して水路底に杭打ちを行って、細長船体単体又は所定間隔で複数船体縦列させて水路内に錨止し、単体船体の船首及び船尾、或いは縦列船体全体の船首及び船尾の可動堰板部の先端シール材を擁壁に当接させ、縦列船体間の可動堰板部を重ね合わせて補修対象擁壁を水路内において区切り、当該状態で船体に重量を付加して喫水を深くし、底堰板部及び可動堰板部の下端を水路底に所定深さまで食い込ませた後、当該区切範囲の水を排出してなることを特徴とする用水路補修用仮締切工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土底の用水路擁壁の補修工事を行う際に仮締切に使用する用水路補修用止水壁及び用水路補修用仮締切工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
矢板鋼板を両岸に打ち込んで擁壁とし、矢板鋼板の上端に笠木コンクリートを打設して形成した構造の用水路は、灌漑用水路として使用されている。これらの用水路は特に経年変化によって矢板鋼板部分が腐食して補修が必要となる。
【0003】
灌漑用水路の擁壁補修は、農作物の灌漑を考慮すると、補修すべき水路を全面的に止水して行うことができない場合がある。その対策として補修区間を区切って順次補修を行うために、所定区間を止水し、止水区間に別にバイパス水路を構築したり、バイパス管を配置すると、そのための隣接用地が必要となる。
【0004】
このため水路内において用水路の水流を阻害することなく補修すべき擁壁範囲を区切って、当該範囲を止水壁で囲繞し、止水壁内を排水して補修工事を行なわなければならない。止水壁の例としては、土嚢を積み上げて止水壁を構築することが知られているが、作業能率が悪い。
【0005】
作業性を考慮して特許文献1(特開平11−36318号公報)には、矢板鋼板で仮締切用の止水壁を構築する手法が開示されている。また特許文献2(特開2002−30669号公報)にはボックス型の仮締切用枠体を使用し、前記枠体を連続させると共に枠体内に土砂を投入して止水壁とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−36318号公報。
【特許文献2】特開2002−30669号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
矢板鋼板を打設して止水壁を構築するには、矢板鋼板の打ち込み引抜に作業機械を必要とし、且つ灌漑用水路のような小規模水路では、必ずしも効率的な締切工法とはいえない。
【0008】
また仮締切用枠体を使用して止水壁を構築したとしても、締切に使用する土砂がそのまま用水路内に残ると、水路床が浅くなってしまうので浚渫作業が必要となる。
【0009】
そこで本発明は、新規な止水壁部材及び当該止水壁部材を使用した仮締切工法を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(請求項1)に係る用水路補修用止水壁部材は、舷側に適宜間隔で杭装着筒部を縦設した適宜長さの細長船体の船底全長に、底堰板部を下方へ突設し、前記底堰板部の下縁と対応する下縁を備えると共に、前記細長船体の船首及び船尾にそれぞれ水密に枢結し、先縁にシール板を突設した可動堰板部を設けてなることを特徴とするものである。
【0011】
また本発明(請求項3)に係る用水路補修用仮締切工法は、前記用水路補修用止水壁部材を使用するもので、補修対象用水路に細長船体を浮かべて補修対象擁壁に対向して添わせ、当該位置で杭装着筒部を通して水路底に杭打ちを行って、細長船体単体又は所定間隔で複数船体縦列させて水路内に錨止し、単体船体の船首及び船尾、或いは縦列船体全体の船首及び船尾の可動堰板部の先端シール材を擁壁に当接させ、縦列船体間の可動堰板部を重ね合わせて補修対象擁壁を水路内において区切り、当該状態で船体に重量を付加して喫水を深くし、底堰板部及び可動堰板部の下端を水路底に所定深さまで食い込ませた後、当該区切範囲の水を排出してなることを特徴とするものである。
【0012】
従って止水壁部材は用水路に浮かべて移動させて所定位置に錨止し、船体に土嚢を投入し、或いは注水して沈下させて底堰板部及び可動堰板部の下端を水路床に食い込ませることで、底堰板部及び可動堰板部と共に船体自体が止水壁を構成することになり、仮締切を実現し、仮締切された範囲で露出した矢板鋼板の擁壁を適宜な工法で補修するもので、当該箇所の擁壁補修を終えると、船体を浮上させて、次の補修区間に移動して仮締切をなすものである。
【0013】
また請求項2記載に係る用水路補修用止水壁部材は、特に底堰板部を、船底に設けた装着板部と前記装着板部に着脱可能に設けた底堰板体で構成し、可動堰板部を、船首及び船尾に設けた可動装着板部と先縁にシール板を突設した可動堰板体で構成したもので、底堰板体及び可動堰板体の装着位置の選択や高さの相違するものを選択的に装着することで、用水路の水流深さに対応できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記のとおりで、細長船体自体をそのまま喫水を深く下げることで仮締切の止水壁として使用するもので、止水壁構築部材の設置作業及び解体作業並びに次補修区間への部材の移動運搬作業を容易に行うことができ、補修工事の作業能率を著しく高めるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】本発明工法の作業手順の説明図(構築前・運搬時)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に示した用水路補修用止水壁部材は、細長船体1に、杭装着筒部2と、底堰板部3と、可動堰板部4を設けたものである。
【0017】
細長船体1は、細幅で全長5〜20m程度の鋼船で、杭装着筒部2は、細長船体1の舷側に適宜間隔で縦設したものである。
【0018】
底堰板部3は、細長船体1の船底全長で下方へ突設したもので、船底に設けた装着板部31と、前記装着板部31に着脱可能に設けた底堰板体32で構成したものである。尚底堰板体32は高さの相違するものを複数用意しておき、補修対象の用水路01の水量(水位)に対応して選択的に使用する。
【0019】
可動堰板部4は、前記細長船体1の船首及び船尾に、用水路01の擁壁02の補修作業を行うことができる空間を確保できるに十分な長さ(前後長)を備えて、基部を回動可能に設けたもので、可動装着板部41と可動堰板体42で構成してなる。可動装着板部41は、細長船体1の船首及び船尾に水密に枢結して回動可能としたものである。
【0020】
可動堰板体42は、前記可動装着板部41に着脱可能に設けたもので、先縁にゴム質体で形成したシール板43を突設し、装着時に船体底堰板部3の前後端部を覆う小シール板44を付設してなるものである。尚可動堰板体42は、前記底堰板体32と同様には高さの相違するものを複数用意しておき、底堰板体32と対応して選択的に装着するものである。また前記のシール板43及び小シール板44は、後述する底堰板体32及び可動堰板体42の下縁が水路底03に食い込む深さ分を、下縁から間隔を空けて設けておく。
【0021】
次に前記用水路補修用止水壁部材を使用して用水路補修用仮締切を行う本発明工法について説明する。
【0022】
実施形態として示す用水路補修用仮締切工法は、細長船体1を二艘使用する例を示すが、本発明工法は一艘でもまた多数艘でも使用できるものである。
【0023】
使用する細長船体1a,1bには、予め用水路01の水位に合わせて所定の底堰板体32及び可動堰板体42を装着しておく。この細長船体1a,1bを縦列して用水路01に浮かべ、補修対象の擁壁02と補修工事の空間が確保できる分の距離をとって対向して添わせる(
図3)。
【0024】
次に当該位置で杭装着筒部2を通して杭5を水路底03に打ち込み、細長船体1a,1bを所定間隔で複数船体縦列させて用水路01内で錨止する(
図4)。更に可動堰板部4を回動して所定位置とするもので、具体的には先方細長船体1aの船首の可動堰板部4と、後方細長船体1bの船尾の可動堰板部4は、それぞれ擁壁02に先端のシール板43が当接するようにし、前後細長船体1a,1bの間の可動堰板部4は、互いに重ね合わせて細長船体1a,1bと各可動堰板部4で、補修対象擁壁02を用水路01内において区切るように配置する(
図7)。
【0025】
そして前記の区切られた作業空間04となる範囲の用水05をポンプで汲み上げて、細長船体1a,1b内に注水する(
図5)。細長船体1a,1bは、その注水量に応じて沈下するので、注水された細長船体1a,1bの重みで底堰板体32及び可動堰板体42の下縁が水路底03に食い込むまで注水する。
【0026】
細長船体1a,1bが所定位置(底堰板体32及び可動堰板体42で作業空間04が他の部分から遮断される位置)まで沈下したら、作業空間04となる範囲の用水05の全てを用水路01の水流側に排出する(
図6)。そうすると作業空間04は、細長船体1a,1b、底堰板体32及び可動堰板体42が止水壁となって仮締切が実現し、露出した矢板鋼板の擁壁02の補修作業が可能となる。
【0027】
当該区間の擁壁02の補修作業が終了すると、細長船体1a,1bの船体内の用水05を作業空間04に排出し、更に作業空間04を満水にすると、細長船体1a,1bが浮上し、底堰板体32及び可動堰板体42が水路底03から引き抜かれる。更に杭5を引き抜いて細長船体1a,1bの移動を可能として、次の補修工事区間に移動させ、補修工事を続行するものである。
【0028】
このように用水路01に浮かべた細長船体1自体を止水壁として仮締切を実現して、順次用水路の補修工事を行うようにしたものである。
【0029】
尚前記実施形態は、底堰板部3及び可動堰板部4を、装着板部31と底堰板体32並びに可動装着板部41と可動堰板体42で構成し、複数の底堰板体32並びに可動堰板体42から用水路01の水位に合わせて選択装着する例を示したが、底堰板体32並びに可動堰板体42を上下位置調整自在に装着するようにしても良いし、また所定範囲の水位で使用するように着脱構造の底堰板体32並びに可動堰板体42を採用しなくとも良い。
【符号の説明】
【0030】
1(1a,1b) 細長船体
2 杭装着筒部
3 底堰板部
31 装着板部
32 底堰板体
4 可動堰板部
41 可動装着板部
42 可動堰板体
43 シール板
44 小シール板
5 杭
01 用水路
02 擁壁
03 水路底
04 作業空間
05 用水