(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0024】
(実施の形態1)
図1(a),(b)に示すように、本発明の実施の形態1に係るレーザ照射システム10Aは、車両12に搭載された照射機11と、無人中継機である照射用中継機21およびファイバ保持用中継機22と、照射機11および無人中継機の間に接続される光ファイバ30とを備えている。後述するように、無人中継機と照射機11とは、互いに通信可能に構成されており、照射機11からの制御指令により飛行制御される。
【0025】
[照射機の構成例]
照射機11は、地上等に静止する目標物40に対してレーザビームを照射することが可能であれば、その構成は特に限定されないが、本実施の形態では、レーザビームとして高出力レーザを発することができるとともに、この高出力レーザとは別に、目標物40に対する照射用中継機21の照準を合わせるために、高出力レーザよりも低出力のガイドレーザを発することができるよう構成されている。
【0026】
具体的には、本実施の形態における照射機11は、
図2に示すように、高出力レーザ照射部101、ガイドレーザ照射部102、通信部103、センサ部104、入力部105、表示部106、および制御部107を備えている。高出力レーザ照射部101が前記高出力レーザを発するレーザ光源であり、ガイドレーザ照射部102が前記ガイドレーザを発するレーザ光源である。
【0027】
なお、
図1(a),(b)では、図中「GL」の点線がガイドレーザを指し、
図1(b)では、図中「HL」の細線領域が、目標物40の上方から照射される高出力レーザを指す(便宜上、「上方照射高出力レーザHL」と称する)。また、後述するように、照射機11の表示部106には、目標物40とともにガイドレーザが照射されるポイント(ガイドレーザ照射点)も「LP」として図示している。
【0028】
高出力レーザ照射部101としては、具体的には、例えば、Ybファイバレーザ、Nd:YAGレーザ等の固体レーザが挙げられるが特に限定されない。高出力レーザ照射部101としては、目標物40に対してレーザビームを照射する目的、目標物40の種類、照射機11に要求される条件等に応じて適切な種類のレーザ照射部が選択される。また、ガイドレーザ照射部102としては、具体的には、例えば、公知のHe−Neレーザ、半導体レーザ等が挙げられるが特に限定されない。
【0029】
通信部103は、少なくとも無人中継機との間で通信を行うことができれば、その具体的な構成は特に限定されず、公知の無線通信装置を好適に用いることができる。センサ部104は、照射機11による高出力レーザまたはガイドレーザの照射に有用な各種センサあるいは計測装置で構成されている。代表的には、車両12に搭載された照射機11の位置情報を取得するためのGPS受信機等が挙げられるが、特に限定されない。
【0030】
入力部105および表示部106は、照射機11の操作、並びに、照射機11による無人中継機の飛行制御を行うために、種々の情報を入力したり表示したりするものである。したがって、入力部105および表示部106は、まとめて1つの「操作部」として構成されてもよい。入力部105および表示部106の具体的な構成は特に限定されず、公知の入力装置、表示装置、入出力兼用装置(例えばタッチパネル表示装置)等を挙げることができる。
【0031】
制御部107は、照射機11の動作制御を行うとともに、照射機11および無人中継機を含めたレーザ照射システム10A全体の制御も行うように構成されている。したがって、無人中継機は、照射機11の制御部107で生成した制御指令にしたがって飛行制御されることになる。制御部107の具体的な構成は特に限定されず、公知のマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ、あるいはパーソナルコンピュータ等を好適に用いることができる。
【0032】
また
図2には示さないが、照射機11は、高出力レーザ照射部101、ガイドレーザ照射部102、通信部103、センサ部104、入力部105、表示部106、および制御部107以外の構成を含んでいてもよいし、一部の構成が無くてもよい。例えば、照射機11は、独立した記憶部(記憶装置)を備えていてもよいし、レーザビームではない可視光または赤外光等を照射する光源を備えていてもよい。また、照射機11が、例えば車両12から操作可能となっていれば、入力部105および表示部106は備えていなくてもよいし、ガイドレーザの照射が不要であれば、高出力レーザ照射部101のみを備えていてもよい。
【0033】
本実施の形態では、照射機11は、車両12に搭載されている。したがって、本実施の形態に係る照射機11は車載型のレーザビーム照射装置ということができる。これにより、レーザ照射システム10Aの運用性が向上するため、幅広い地域において目標物40に対するレーザビームの照射が可能となる。
【0034】
照射機11が搭載される車両12の具体的な構成は特に限定されず、一般的な自動車(装輪車両)であればよいが、車輪の代わりに無限軌道を備える装軌車両であってもよい。また、照射機11は、車両12に一体化された状態で搭載されてもよいが、他の車両12に移し変えたり、車両12から降ろして地上あるいは建造物等に設置したりできるように構成されてもよい。また、照射機11の操作設備(入力部105および表示部106等)は、車両12から独立して設けられてもよいし、車両12の運転席の操作設備に一体化されてもよい。
【0035】
[無人中継機の構成例]
本実施の形態に係るレーザ照射システム10Aで用いられる無人中継機は、無人で飛行する飛行体(無人航空機,UAV)であり、飛行に関しては、高度を維持する機能、ホバリングができる機能、およびピッチングおよびローリングを制御できる機能を有している。本実施の形態では、無人中継機として、前記の通り、照射用中継機21およびファイバ保持用中継機22の2種類を備えている。これら無人中継機は、照射機11との間で通信を行うことにより飛行制御され、照射機11から発せられたレーザビームを目標物40まで中継する。
【0036】
無人中継機のうち照射用中継機21は、レーザビームを目標物40に照射するために用いられ、画像を取得し送信する機能、および、レーザビームを目標物40に導光する機能を有している。一方、ファイバ保持用中継機22は、光ファイバ30を保持するために用いられるが、後述するように、照射用中継機21と同様に画像を取得し送信する機能を有してもよい。
【0037】
まず、照射用中継機21は、
図1(b)に示すように、目標物40に対して前記レーザビームを直接照射する無人中継機であって、
図3(a)に示すように、本体部210、操舵部220、通信部230、およびレーザヘッド240を備えており、さらに
図5(a)に示すように、操舵部220、通信部230およびレーザヘッド240に加えて、本体部210内に推進部211、カメラ部212、制御部213、および高精度センサ部214を備えている。
【0038】
また、ファイバ保持用中継機22は、照射機11から照射されたレーザビームを照射用中継機21に中継するために、照射機11から延伸される光ファイバ30を保持する無人中継機であって、
図4(a),(b)に示すように、本体部210、操舵部220、通信部230、およびファイバ保持部251または252を備えており、ファイバ保持用中継機22は、
図5(b)に示すように、操舵部220および通信部230に加えて、本体部210内に推進部211、カメラ部212、制御部213、およびセンサ部215を備えている。
【0039】
無人中継機は、照射用中継機21およびファイバ保持用中継機22のいずれも、前述したようにUAVであれば特に限定されず、公知の各種UAVを好適に用いることができる。本実施の形態では、例えば、
図3(a)または
図4(a),(b)に模式的に示すような、ダクトファン型UAVを用いている。このダクトファン型UAVでは、本体部210の上方に通信部230が設けられ、本体部210の下方に操舵部220が設けられる構成となっている。
【0040】
照射用中継機21またはファイバ保持用中継機22の通信部230は、照射機11の通信部103との間で通信を可能とするとともに、自機以外の無人中継機(例えば照射用中継機21を自機とすればファイバ保持用中継機22)の通信部230との間でも通信を可能とするものである。これら無人中継機の通信部230の具体的な構成は特に限定されず、照射機11の通信部103と同様に、公知の無線通信装置が好適に用いられる。
【0041】
照射用中継機21またはファイバ保持用中継機22の操舵部220は、制御部213により動作することにより、自機の飛行方向または姿勢等を制御する。操舵部220は、本実施の形態のようなダクトファン型UAVでは、本体部210の下方に複数設けられる操舵翼となっているが、その具体的な構成はこれに限定されず、公知の他の構成であってもよい。
【0042】
照射用中継機21またはファイバ保持用中継機22の本体部210内には、推進部211が設けられている。この推進部211は、無人中継機を飛行させるための動力手段であり、制御部213により制御される。推進部211は、本実施の形態のようなダクトファン型UAVであれば、モータまたは小型エンジンにより回転するプロペラとなっている。なお、推進部211の具体的な構成は、動力源により回転するプロペラに限定されず、UAVで使用可能な他の推進装置も好適に用いることができる。
【0043】
カメラ部212は、本体部210の下方に取り付けられ、制御部213の制御により、操舵部220の間から地上画像を撮影する。撮影された画像は、通信部230を介して照射機11に送信され、照射機11の表示部106で表示される(
図1(a),(b)の表示部106参照)。また、カメラ部212で撮影された画像は、制御部213による飛行制御にも利用可能である。なお、カメラ部212の具体的な構成は特に限定されず、公知のデジタルカメラ等を好適に用いることができる。また、カメラ部212は、可視画像を撮影する構成であってもよいし、赤外画像を撮影する構成であってもよいし、両方の画像を撮影する構成であってもよい。
【0044】
照射用中継機21の高精度センサ部214およびファイバ保持用中継機22のセンサ部215は、いずれも、照射機11および目標物40に対する自機の位置を確認する位置確認器として機能する。ここで、
図1(a),(b)に示す例では、無人中継機として、1機の照射用中継機21と2機のファイバ保持用中継機22とを備えている。このように、無人中継機が複数存在する場合には、高精度センサ部214またはセンサ部215等の位置確認器は、他の無人中継機に対する自機の位置も確認できるように構成されている。
【0045】
高精度センサ部214およびセンサ部215の具体的な構成は特に限定されず、無人中継機の飛行制御、姿勢制御、あるいは相対位置制御等に必要な各種の計測値を計測できる複数のセンサから構成されていればよい。本実施の形態では、例えば、GPS受信機、慣性センサ、高度計等を挙げることができる。なお、以下の説明では、説明の便宜上、無人中継機の飛行制御、姿勢制御、相対位置制御等の制御をまとめて「動作制御」と称する。
【0046】
ここで、照射用中継機21は、目標物40に対して高出力レーザおよびガイドレーザを照射するために、比較的高精度な動作制御が必要となる。一方、ファイバ保持用中継機22は、基本的に光ファイバ30を保持して飛行していればよいので、他の無人中継機に衝突したり、付近に存在する物体に衝突したりしない限り、動作制御は相対的に低精度でよい。それゆえ、照射用中継機21が備える高精度センサ部214は、ファイバ保持用中継機22が備えるセンサ部215よりも高精度なセンサ類で構成されている。
【0047】
また、照射用中継機21では、比較的高精度な動作制御を行う上で、高精度センサ部214からの計測値に加え、カメラ部212で撮影された画像情報を用いることもできる。これにより、目標物40に対する飛行位置等をより高精度に把握できるとともに、他の無人中継機(ファイバ保持用中継機22)との間の相対位置を高精度に確認することができる。言い換えれば、照射用中継機21においては、高精度センサ部214とともにカメラ部212も位置確認器として用いることができる。
【0048】
一方、ファイバ保持用中継機22でも、照射用中継機21と同様に、カメラ部212を位置確認器として用いることができるが、カメラ部212は無くてもよい。具体的には、前述したように、ファイバ保持用中継機22の制御は、照射用中継機21に比べて相対的に低精度の動作制御でよいので、ファイバ保持用中継機22のセンサ部215は、照射用中継機21の高精度センサ部214よりも安価なセンサ類を用いて構成することができるので、ファイバ保持用中継機22の動作制御にカメラ部212の撮影画像を用いる必然性は低くなる。それゆえ、地上の画像を撮影する必然性がないのであれば、ファイバ保持用中継機22は、カメラ部212を備えていなくてもよい。
【0049】
制御部213は、通信部230で受信される飛行制御指令(照射機11から送信)と、前述した位置確認器(高精度センサ部214またはセンサ部215、必要に応じてカメラ部212)から入力される計測情報と、に基づいて、推進部211および操舵部220を制御して、無人中継機を所望の方向に向かって所望の距離を移動させたり、無人中継機の姿勢を制御したりする。また、カメラ部212を動作させて地上を撮影し、得られた地上の画像情報を、通信部230を介して照射機11に送信する。制御部213の具体的な構成は特に限定されず、公知のマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ等を備える制御基板等が好適に用いられる。
【0050】
照射用中継機21が供えるレーザヘッド240は、
図3(b)に示すように、側方の光ファイバコネクタ243を介して光ファイバ30に接続され、下方にレーザビーム出射部244を有するレーザヘッド本体241から構成されている。このレーザヘッド本体241は、レーザヘッド固定アーム242により本体部210の側方に固定されている。照射機11から発せられたレーザビームは、ファイバ保持用中継機22により保持される光ファイバ30を介してレーザヘッド本体241に達し、レーザビーム出射部244から下方に向けて照射される。
【0051】
したがって、照射用中継機21からのレーザビームの照射の開始および停止は、照射機11によるレーザビームの発射の開始および停止に連動するので、照射用中継機21には、レーザビームの照射を切り替えるようなスイッチング手段は必要ない。それゆえ、
図5(a)のブロック図では、レーザヘッド240に対しては、制御部213から制御指令を示す矢印が延びておらず、レーザヘッド240を示すブロックのみを独立させて図示している。
【0052】
なお、レーザヘッド240を構成するレーザヘッド本体241の具体的な構成は特に限定されず、高出力レーザの照射に対応する公知のレーザ用光学部材(光学ヘッド)を好適に用いることができる。また、レーザヘッド固定アーム242の具体的構成も特に限定されず、飛行する照射用中継機21の側方に、レーザヘッド本体241を良好に固定することが可能な公知のアーム部材であればよい。光ファイバコネクタ243も同様に公知の光学コネクタを好適に用いることができる。
【0053】
ファイバ保持用中継機22の基本的な構成は、レーザヘッド240を備えていない以外は、前述したように照射用中継機21と同様である。ただし、ファイバ保持用中継機22の側面には、
図4(a),(b)に示すようなファイバ保持部251または252が設けられている。これらファイバ保持部251または252は、飛行しているファイバ保持用中継機22が、光ファイバ30を破損させることなく安定して保持できるものであれば、その具体的な構成は特に限定されない。
【0054】
図4(a)に示すファイバ保持用中継機22では、光ファイバ30は、円筒状ファイバ保持部251により保持されている。この円筒状ファイバ保持部251は、光ファイバ30が有する曲率に対応するように、緩やかな曲率を有する円筒状部材であり、この円筒状部材の内部に光ファイバ30を通すことによって、ファイバ保持用中継機22が飛行中であっても、光ファイバ30を破損させることなく良好に保持することができる。なお、円筒状ファイバ保持部251の両端の開口部では、光ファイバ30との接触時に過度の摩擦が生じることを防ぐために、縁部を面取りして丸めておくことが好ましい。
【0055】
また、
図4(b)に示すファイバ保持用中継機22では、光ファイバ30は、複数の円環状ファイバ保持部252により保持されている。これら複数の円環状ファイバ保持部252は、円筒状ファイバ保持部251と同様に、光ファイバ30の曲率に対応するような位置関係で本体部210の周囲に固定されている。これにより、それぞれの円環状ファイバ保持部252に光ファイバ30を通すことで、ファイバ保持用中継機22が飛行中であっても、光ファイバ30を破損させることなく良好に保持することができる。
【0056】
ここで、照射機11と無人中継機との間に接続される光ファイバ30は、照射機11が照射するレーザビーム(高出力レーザおよびガイドレーザ)を良好に伝搬させることが可能であれば、その具体的な構成は特に限定されない。本実施の形態では、産業用の光ファイバを好適に用いることができる。したがって、円筒状ファイバ保持部251および円環状ファイバ保持部252のより具体的な構成は特に限定されず、用いられる光ファイバ30の種類、ファイバ保持用中継機22の使用条件等に応じて、公知の好適な構成を選択することができる。
【0057】
例えば、ファイバ保持部251または252の材質は特に限定されず、光ファイバ30を保護する分野等で使用可能な公知の樹脂材料で構成されていればよい。また、これらの内径、肉厚、長さ、個数(円環状ファイバ保持部252の場合)等といった条件も特に限定されず、飛行中のファイバ保持用中継機22が、光ファイバ30を良好に保持できるような範囲の内径、肉厚、長さ、個数等であればよい。
【0058】
[レーザ照射システムの動作例]
次に、前記構成のレーザ照射システム10Aによって、目標物40に対してレーザビームを照射する動作の一例について、
図1(a),(b)に加えて、
図6および
図7に示すフローチャートに基づいて具体的に説明する。なお、
図6および
図7は、照射機11、照射用中継機21およびファイバ保持用中継機22の制御フローを2図に分けて記載したもので、
図6および
図7の間では、照射機11のフローがAのノード同士およびDのノード同士でつながっており、照射用中継機21のフローがBのノード同士でつながっており、ファイバ保持用中継機22がCのノード同士でつながっている。
【0059】
まず、レーザビームの照射の対象となる目標物40が確認できれば、操作者の操作によって照射機11の制御部107が制御を開始し、照射機11から照射用中継機21およびファイバ保持用中継機22に対して飛行開始指令が送信される(ステップS111)。照射用中継機21およびファイバ保持用中継機22は、飛行開始指令に従って飛行を開始する(ステップS211およびステップS311)。
【0060】
次に、照射機11は、目標物40の位置情報を照射用中継機21に送信する(ステップS112)。照射用中継機21は目標物40の位置情報を受信し(ステップS212)、目標物40のおよその位置(目標物40の近傍の位置)まで移動を完了する(ステップS213)。なお、この状態では照射用中継機21は、ホバリング状態にある。
【0061】
ここで照射用中継機21は、カメラ部212で撮影された画像情報を照射機11に継続的に送信しているので、移動完了後、照射機11は、カメラ部212からの画像に目標物40が含まれている(カメラ部212で目標物40が撮影できる位置に照射用中継機21が移動している)ことを確認する(ステップS113)。この確認は、照射機11の操作者が行えばよいが、制御部107による画像処理で自動的に行ってもよい。
【0062】
また、飛行を開始したファイバ保持用中継機22は、センサ部215により先行する無人中継機に対する相対位置情報を取得し(ステップS312)、制御部213の動作制御により、先行する無人中継機との適当な位置関係を維持するように追従運動を行う(ステップS313)。
【0063】
図1(a),(b)の例では、ファイバ保持用中継機22は2機含まれるので、まず照射用中継機21が飛行を開始した後(ステップS211)、1機目のファイバ保持用中継機22が飛行を開始する(ステップS311)。そして1機目のファイバ保持用中継機22は、先行する照射用中継機21に対する相対位置情報を取得して(ステップS312)、照射用中継機21との間に予め設定した範囲内の間隔を維持するように、追従移動を行う(ステップS313)。また、1機目のファイバ保持用中継機22が飛行を開始した後(ステップS311)、2機目のファイバ保持用中継機22が飛行を開始する(ステップS311)。そして2機目のファイバ保持用中継機22は、先行する1機目のファイバ保持用中継機22に対する相対位置情報を取得して(ステップS312)、1機目のファイバ保持用中継機22との間に予め設定した範囲内の間隔を維持するように、追従移動を行う(ステップS313)。
【0064】
このように3機の無人中継機が飛行を開始した後、照射用中継機21が目標物40付近に到達した状態が、
図1(a)に示す状態に対応する。その後(ステップS113の後)、照射機11は、照射用中継機21にホバリング指令を送信し(ステップS114)、照射用中継機21は、ホバリング指令に基づいてホバリング状態を維持する(ステップS214)。
【0065】
次に、照射機11は、ガイドレーザ照射部102からガイドレーザの照射を開始する(ステップS115)。例えば、
図1(a)の表示部106では、照射用中継機21のカメラ部212の画面中に目標物40が映し出されており、この状態でガイドレーザGLが発せられると、目標物40から離れた位置にガイドレーザGLが照射されていることが表示部106の照射点LPの表示により確認できる。そこで、照射機11は、カメラ部212の画像内(表示部106の画面内)の目標物40にガイドレーザGLが一致するように、照射用中継機21に対して照準指令を送信する(ステップS116)。照射用中継機21は、この照準指令に基づいて姿勢制御を開始する(ステップS215)。
【0066】
照射用中継機21の制御部213は照準指令に応じて、高精度センサ部214およびカメラ部212(位置確認器)から取得した情報に基づいて、自機の姿勢を制御する。なお、照射用中継機21に対しては、照射機11の入力部105から操作者が制御指令を直接入力してもよい。この状態では、照射用中継機21は、地上に向かってガイドレーザGLを照射しながら、目標物40に対してガイドレーザGLが照射されるように、位置および姿勢を微調整する。
【0067】
目標物40に対してガイドレーザGLが照射されれば、
図1(b)の表示部106に示すように、ガイドレーザGLの照射点LPと目標物40とが画面上で実質的に一致する。これにより、照射用中継機21は高出力レーザ(レーザビーム)の照準を目標物40に合わせたことになる。このとき、照射機11は、目標物40からのガイドレーザGLの照射点LPまでの距離が許容範囲に入ったことを確認し(ステップS117)、高出力レーザ照射部101から高出力レーザ(レーザビーム)の照射を開始する(ステップS118)。これにより、
図1(b)に示すように、照射用中継機21のレーザヘッド240から目標物40に対して上方から高出力レーザが照射される(図中、上方照射高出力レーザHL)。その後、予め設定される所定の条件下で高出力レーザの照射が完了すれば(高出力レーザ照射部101の停止)、ガイドレーザの照射も完了し(ガイドレーザ照射部102の停止)、照射用中継機21は、姿勢制御を終了する(ステップS216)。
【0068】
なお、レーザビームの照射に関して予め設定される所定の条件とは、レーザビームの照射の目的に応じた種々の条件を挙げることができる。例えば、目標物40を破壊する(あるいは形状変化させる)目的であれば、所定の条件としてレーザビームの照射エネルギー量を予め設定してもよいし、カメラ部212により破壊または形状変化を操作者が確認する条件であってもよい。また、目標物40に対して所定時間レーザビームを照射する目的であれば、所定の条件としてレーザビームの照射時間を設定すればよい。また、目標物40を破壊したり形状変化させたりする目的の場合には、照射用中継機21の姿勢制御を終了する前に、目標物40の破壊あるいは形状変化を確認するステップを含めてもよい。
【0069】
また、照射用中継機21がホバリングから姿勢制御を行っている間(ステップS213〜ステップS216)は、2機のファイバ保持用中継機22は追従運動を継続することになる(ステップS312およびステップS313)。それゆえ、1機目または2機目のファイバ保持用中継機22は、照射用中継機21または1機目のファイバ保持用中継機22との間で適当な距離を確保できるように、ホバリングしたり短距離の飛行を行ったりする。
【0070】
その後、照射機11は、他にレーザビームを照射すべき目標物40が存在するか否かを判定する(ステップS119)。存在していれば(ステップS119でYES)、目標物40の位置情報を照射用中継機21に送信するステップ(ステップS112)に戻るが、存在していなければ(ステップS119でNO)、照射機11は飛行終了指令を照射用中継機21および2機のファイバ保持用中継機22に送信する(ステップS120)。照射用中継機21およびファイバ保持用中継機22は、飛行終了指令を受信すれば、照射機11の位置(車両12の位置)まで帰還して飛行を終了し(ステップS217およびステップS314)、これにより一連の制御が終了する。
【0071】
このように本実施の形態によれば、UAVである無人中継機を目標物40に対してレーザビーム(上方照射高出力レーザHL)を照射可能な位置まで移動させて、照射機11は、無人中継機を介して目標物40との間に光ファイバを張り渡してから、目標物40にレーザビームを発する。これにより、光ファイバ30を介して無人中継機から目標物40に対してレーザビームを照射することになる。それゆえ、無人中継機には、目標物40への照準のために高度な情報処理を行う必要がなくなり、無人中継機の構成および飛行制御を簡素化することができる。
【0072】
[レーザ照射システムの用途]
本実施の形態に係るレーザ照射システム10Aは、静止している目標物40にレーザビームを照射できる用途に広く好適に用いることができるが、代表的な用途としては、(1)地上に存在する異物等の除去、(2)大型構造物等において人間の作業が困難な場所(高所または狭所等)における接合作業、除去作業(あるいはメンテナンス作業)、(3)人間が入り込めない事故現場または災害現場等におけるがれき等の除去、等が挙げられる。下記の説明では、レーザ照射システム10Aを(1)地上に存在する異物の除去に適用した場合を例に挙げる。
【0073】
例えば、異物等としてIED(Improvised Explosive Device)が地上に存在する環境であれば、IEDを目標物40としてレーザビームを照射することによって当該目標物40(IED)を除去することができる。具体的には、IEDは、通常、火薬等の急激な化学反応を生ずる物質(反応性物質)を外装で被覆した構成を有しているので、IEDに高出力レーザ(レーザビーム)を照射することで外装を除去し、内部の反応性物質を高出力レーザにより反応させて無力化することにより除去することができる。
【0074】
それゆえ、レーザビームの照射装置および照射装置の操作者は、反応性物質を反応させた影響を受けないように、IEDから十分に離れた位置(安全性が確保できる距離)を保った上で、遠方からレーザビームをIEDに照射する必要がある。
【0075】
ここで、
図8(a)に示すように、車両12に搭載された照射機11から、地上の目標物40(IED等)に対して高出力レーザを直接照射すると、この高出力レーザは、目標物40から見て斜め上方から直進して入射する。このように照射される高出力レーザを、便宜上「斜め照射高出力レーザSL」とすれば、この斜め照射高出力レーザSLは、上方照射高出力レーザHLに比べて目標物40に与えるエネルギー量が少なくなる。
【0076】
まず、斜め照射高出力レーザSLは、目標物40だけでなくその周囲の地上表面も余分に照射するため、照射機11から発せられる高出力レーザのエネルギーの一部しか目標物40に与えられないことになる。また、斜め上方から照射される斜め照射高出力レーザSLのエネルギー密度は、略上方から照射される上方照射高出力レーザHLに比べて明らかに小さくなる。そのため、全出力のうち目標物40に照射される一部の出力だけで、当該目標物40を無力化しなければならず、高出力レーザ照射部101をより高出力化する必要性が生じる。
【0077】
これに対して本実施の形態に係るレーザ照射システム10Aでは、
図8(a)に示す照射用中継機21が、光ファイバ30を介して目標物40の上方から上方照射高出力レーザHLを照射することができる。これにより、照射機11からの高出力レーザを効率的に照射することができるので、斜め上方から照射する場合と比較して無駄なエネルギーを消費することがなく、高エネルギー効率化を図ることができる。しかも、高出力レーザ照射部101の過剰な高出力化を回避することができるので、高出力レーザ照射部101として、相対的に低出力かつ小型のレーザ光源を用いることができる。
【0078】
しかも、照射機11から発せられる高出力レーザは光ファイバ30を介してレーザヘッド240に達し、目標物40の上方から上方照射高出力レーザHLとして照射される。そのため、照射機11から直接照射される斜め照射高出力レーザSLと比較して、大気による散乱または減衰の影響が小さくなる。それゆえ、照射機11から発せられる高出力レーザのエネルギー効率をより一層向上することができる。
【0079】
次に、例えば、入り組んだ地形等において目標物40を処理する場合には、当該目標物40を照射機11の操作者が直接目視で確認できない場合がある。例えば、
図8(b)に模式的に示すように、照射機11と目標物40との間に障害物50が存在していると、照射機11の操作者(車両12に乗車)の視線VCは、障害物50に遮られることになる。また、障害物50の影に隠れた目標物40に対して、照射機11から直接斜め照射高出力レーザSLを照射しようとしても、レーザビームの直進性のために障害物50に遮られてしまい、目標物40を処理することができない。
【0080】
これに対して本実施の形態に係るレーザ照射システム10Aでは、
図8(b)に示す照射用中継機21が、カメラ部212により地上を撮影し、得られた画像データを照射機11に送信するので、照射機11の操作者は、ホバリングしている照射用中継機21から撮影された目標物40の画像を逐次確認することができる。それゆえ、視認性が良好でない環境において、直接目視で確認できない目標物40が存在しても、適切に処理することができる。
【0081】
さらに、入り組んだ地形だけでなく建造物の多い市街地等であっても、照射機11の操作者が目標物40を確認できない場合がある。本実施の形態に係るレーザ照射システム10Aでは、高出力のレーザビームを光ファイバ30で導光しているために、照射機11から発せられたレーザビームは、ほぼ全てが照射用中継機21のレーザヘッド240に達する。それゆえ、高出力レーザが周囲に影響を及ぼすおそれを有効に抑制できるので、市街地等での使用が可能となる。
【0082】
しかも、高出力レーザが光ファイバ30でレーザヘッド240まで導光されるということは、目標物40に対する照準は、照射用中継機21と目標物40との間のみで考慮すればよいことになる。それゆえ、操作上では、UAVに照射機11を搭載したように見なせることができるため、レーザビームの照準合わせも含めて、レーザ照射システム10Aの操作の簡素化を図ることができる。
【0083】
[変形例]
前述した構成のレーザ照射システム10Aは、
図1(a),(b)または
図8(a),(b)に示すように、無人中継機として、1機の照射用中継機21と2機のファイバ保持用中継機22とを備えている構成であるが、本発明はこれに限定されず、例えば、
図9(a)に示すレーザ照射システム10A−1のように、無人中継機が1機の照射用中継機21のみであってもよい。つまり、使用環境によっては、照射機11から照射用中継機21に至るまで延伸される光ファイバ30を保持する上で、ファイバ保持用中継機22を必要としない状況があり得る。このような場合には、ファイバ保持用中継機22は使用しなくてもよい。
【0084】
また、レーザ照射システム10Aが備えるファイバ保持用中継機22は、
図1(a),(b)または
図8(a),(b)に示す例のように、2機に限らず、1機でもよいし3機以上であってもよい。さらに、照射機11から複数本の光ファイバ30を延伸させることができるのであれば、照射用中継機21が2機以上用いられてよい。
【0085】
また、照射機11と目標物40との距離が長かったり高低差が大きかったりするために、光ファイバ30の長さが不十分となる場合には、例えば、
図9(b)に示すレーザ照射システム10A−2のように、複数本の光ファイバ30をファイバコネクタ31で接続(カップリング)して用いてもよい。このとき用いられるファイバコネクタ31の具体的な構成は特に限定されず、産業用光ファイバの分野で公知のファイバコネクタを用いればよい。
【0086】
また、照射機11は、照射用中継機21から目標物40に対して適切にレーザビームを照射することができるのであれば、ガイドレーザを発する機能を有さなくてもよい。ただし、照射機11からガイドレーザを発することができれば、
図1(a),(b)に示す表示部106の画面のように、照射用中継機21のカメラ部212で撮影した画像に、目標物40だけでなくガイドレーザGLの照射点LPも表示することができるので、高出力レーザ(レーザビーム)の光路を画像上で明確に示すことができる。
【0087】
また、本実施の形態では、
図6および
図7のフローチャートに示すように、照射機11においては、目標物40のおよその位置が予め判明している場合を例に挙げたが、例えば、目標物40の位置が不明な場合には、照射用中継機21を探査用のUAVとして用いて、レーザビームの照射前に先行して飛行させてもよい。このとき、照射用中継機21のレーザヘッド240から光ファイバ30を外して飛行させてもよい。照射用中継機21はカメラ部212を備えているので、探査のために先行して飛行させ、カメラ部212により地上を撮影すれば、照射機11の操作者は、未知の目標物40を探査することができる。
【0088】
また、
図6および
図7のフローチャートでは、照射用中継機21およびファイバ保持用中継機22は、照射機11から送信される指令に基づいて飛行を開始または終了するが、本発明はこれに限定されず、無人中継機は、操作者の操作等によって飛行を開始または終了してもよいし、無人中継機の飛行のみを制御する制御器を別途用いてもよい。
【0089】
(実施の形態2)
図10(a),(b)に示すように、本実施の形態2に係るレーザ照射システム10Bは、前記実施の形態1に係るレーザ照射システム10Aとほぼ同様の構成を有しているが、無人中継機である照射用中継機21およびファイバ保持用中継機22以外に探査機23を備えている点が異なっている。この探査機23は、目標物40の位置情報を取得して照射機11に通信するよう構成されるUAVである。
【0090】
[探査機の構成例]
本実施の形態で用いられる探査機23は、
図11(a)に示すように、基本的には、照射用中継機21またはファイバ保持用中継機22と同様の外観構成を有しており、
図11(b)に示すように、ファイバ保持用中継機22と同様の制御構成を有している。具体的には、探査機23は、本体部210、操舵部220、および通信部230を備えており、本体部210内には、推進部211、カメラ部212、制御部213、およびセンサ部216等が設けられている。
【0091】
探査機23が備える本体部210、操舵部220、通信部230、推進部211、カメラ部212、制御部213、およびセンサ部216等の構成は、前記実施の形態1において照射用中継機21またはファイバ保持用中継機22に関して説明した各構成と同様であるので、その具体的な説明は省略する。
【0092】
ただし、センサ部216については、ファイバ保持用中継機22のセンサ部215よりも安価なセンサ類で構成することができる。ファイバ保持用中継機22は、光ファイバ30を保持するために、照射用中継機21ほどではないにせよ、ある程度の精度で姿勢制御を行う必要がある。一方、探査機23は、カメラ部212による撮影に差し支えない程度の姿勢制御であればよい。それゆえ、探査機23のセンサ部216としては、ファイバ保持用中継機22のセンサ部215で用いられるセンサ類よりも相対的に低い水準のセンサ類で済むため、安価なセンサ類で構成することができる。
【0093】
探査機23による目標物40の探査方法(目標物40に関する情報の取得方法)は特に限定されないが、例えば、予め決められた飛行経路(所定経路)を飛行して、操作者が目標物40の候補を確認し、その候補に関する種々の情報をデータベース化し、再び所定経路を飛行して、操作者(および照射機11の制御部107による自動判定等)により再度確認する方法を挙げることができる。
【0094】
具体的には、まず、探査機23が最初に所定経路を飛行するときには、探査機23は、カメラ部212で画像(可視画像または赤外画像)を撮影し、照射機11に送信する。照射機11の表示部106では、カメラ部212からの画像とミリ波等の電波の形状とを重ね合わせて表示する。操作者は、表示部106の表示を確認し、目標物40の可能性がある候補を選別する。次に、操作者は、入力部105の操作により、目標物40の候補のそれぞれについて、所定経路上の位置情報(GPS情報)、当該位置の路面形状、候補となる物体の種類等の情報(候補情報)をデータベース化し、制御部107の記憶部に記憶させる。
【0095】
次に、探査機23が2回目またはそれ以降に飛行するときには、探査機23は、初回と同様にカメラ部212で画像を撮影して照射機11に送信する。照射機11では、初回と同様に表示部106で画像を表示するが、操作者は、探査機23からの画像と、データベース化されている取得済みの候補情報とを比較(または照合)する。
【0096】
この比較の結果、任意の候補が、目標物40である可能性が高いと確認されれば、その候補まで探査機23を飛行させ、操作者はその候補について再度確認する。このように、目標物40の候補についての確認を複数回重ねて行うことにより、データベースの精度の向上を図る。また、比較結果、目標物40の候補として選別されたものが、全て目標物40として疑う必要のないものであることが明らかとなれば、操作者は、探査済みの領域は、目標物40が存在しない「不在領域」として判断することができる。
【0097】
探査機23による探査方法が前記のような構成であれば、初回(1回目)の探査および可能性の高い候補については、操作者により詳細な確認が必要となるものの、2回目以降の探査およびデータベースとの比較(または照合)、並びに「不在領域」の判断については、少なくとも一部の作業を照射機11の制御部107により自動化することが可能となる。それゆえ、人手による作業と照射機11の制御による作業とを組み合わせて探査を行うことで、目標物40の発見確率を向上させることが可能となり、また、探査に関する処理速度の向上も図ることが可能となる。
【0098】
[レーザ照射システムの動作例]
次に、探査機23を含むレーザ照射システム10Bによって、目標物40に対してレーザビームを照射する動作の一例について、
図10(a),(b)に加えて、
図12ないし
図14に示すフローチャートに基づいて具体的に説明する。
【0099】
なお、
図12ないし
図14は、照射機11、照射用中継機21、ファイバ保持用中継機22および探査機23の制御フローを3図に分けて記載したもので、
図12および
図13の間では、照射機11のフローがAのノード同士でつながっており、照射用中継機21のフローがCのノード同士でつながっており、ファイバ保持用中継機22がDのノード同士でつながっている。また、
図12および
図14の間では、探査機23のフローがBのノード同士でつながっており、照射機11のフローがIのノード同士でつながっている。また、
図13および
図14の間では、照射機11のフローがEのノード同士およびHのノード同士でつながっており、照射用中継機21のフローがFのノード同士でつながっており、ファイバ保持用中継機22がGのノード同士でつながっている。
【0100】
まず、操作者の操作により照射機11の制御部107が制御を開始するので、照射機11から照射用中継機21、ファイバ保持用中継機22、および探査機23に対して飛行開始指令が送信される(ステップS411)。照射用中継機21、ファイバ保持用中継機22、および探査機23は、飛行開始指令に従って飛行を開始する(ステップS511、ステップS611およびステップS711)。
【0101】
次に、照射機11は、探査指令を探査機23に送信する(ステップS412)。探査機23は、探査指令を受信して前述した所定経路を飛行して探査を行う(ステップS512)。なお、この所定経路は、前述した探査方法であれば、一定の飛行経路として固定されていればよいが、必要に応じて、照射機11の操作者が変更できるようになっていてもよいし、予め決定される飛行経路ではなく、操作者が照射機11を操作することで自由な飛行経路を飛行できるようになっていてもよい。探査機23は、前述したように、所定経路を飛行している間、カメラ部212で地上の画像を撮影するので、操作者は、撮影された画像を表示部106で目視し、前述したように目標物40の有無を確認すればよい。
【0102】
次に、
図10(a)に示すように、探査機23のカメラ部212が目標物40を撮影できれば、探査機23は、カメラ部212およびセンサ部216により目標物40の位置情報を取得し(ステップS513)、この位置情報を照射機11に送信する(ステップS514)。照射機11は、目標物40の位置情報を受信すると(ステップS413)、目標物40の位置情報を照射用中継機21に送信する(ステップS414)。
【0103】
照射用中継機21は目標物40の位置情報を受信し(ステップS612)、目標物40のおよその位置(目標物40の近傍の位置)まで移動を完了し(ステップS613)、ホバリング状態となる。照射機11は、照射用中継機21のカメラ部212からの画像に目標物40が含まれていることを確認する(ステップS415)。また、ファイバ保持用中継機22は、センサ部215により先行する無人中継機(照射用中継機21または他のファイバ保持用中継機22)に対する相対位置情報を取得し(ステップS712)、制御部213の動作制御により、先行する無人中継機との適当な位置関係を維持するように追従運動を行う(ステップS713)。
【0104】
次に、照射機11は、照射用中継機21にホバリング指令を送信し(ステップS416)、照射用中継機21は、ホバリング指令に基づいてホバリング状態を維持する(ステップS614)。そして、照射機11は、ガイドレーザ照射部102からガイドレーザの照射を開始し(ステップS417)、カメラ部212の画像内(表示部106の画面内)の目標物40にガイドレーザGLの照射点LPが一致するように、照射用中継機21に対して照準指令を送信する(ステップS418)。照射用中継機21は、この照準指令に基づいて姿勢制御を開始する(ステップS615)。
【0105】
照射用中継機21の制御部213は照準指令に応じて、高精度センサ部214およびカメラ部212(位置確認器)から取得した情報に基づいて、自機の姿勢を制御する。なお、照射用中継機21に対しては、照射機11の入力部105から操作者が制御指令を直接入力してもよい。この状態では、照射用中継機21は、地上に向かってガイドレーザGLを照射しながら、目標物40に対してガイドレーザGLが照射されるように、位置および姿勢を微調整する。
【0106】
目標物40に対してガイドレーザGLが照射されれば、
図10(b)の表示部106に示すように、ガイドレーザGLの照射点LPと目標物40とが画面上で実質的に一致し、照射用中継機21は高出力レーザの照準合わせが完了する。そこで、照射機11は、目標物40からのガイドレーザGLの照射点LPまでの距離が許容範囲に入ったことを確認し(ステップS419)、高出力レーザ照射部101から高出力レーザ(レーザビーム)の照射を開始する(ステップS420)。
【0107】
これにより、
図10(b)に示すように、照射用中継機21のレーザヘッド240から目標物40に対して上方照射高出力レーザHLが照射される。その後、予め設定される所定の条件下で高出力レーザの照射が完了し、ガイドレーザの照射も完了すれば、照射用中継機21は、姿勢制御を終了する(ステップS616)。なお、前記実施の形態1で説明したように、レーザビームの照射の目的が、例えば、目標物40を破壊したり形状変化させたりする場合には、照射用中継機21の姿勢制御を終了する前に、目標物40の破壊あるいは形状変化を確認するステップを含めてもよい。
【0108】
また、照射用中継機21がホバリングから姿勢制御を行っている間(ステップS613〜ステップS616)は、ファイバ保持用中継機22は追従運動を継続することになる(ステップS712およびステップS713)。
【0109】
その後、照射機11は、他にレーザビームを照射すべき目標物40が存在するか否かを判定する(ステップS421)。存在していれば(ステップS421でYES)、目標物40の位置情報を照射用中継機21に送信するステップ(ステップS414)に戻るが、存在していなければ(ステップS422でNO)、他にレーザビームを照射すべき目標物40を探査するか否かを判定する(ステップS422)。探査するのであれば(ステップS422でYES)、探査指令を探査機23に送信するステップ(ステップS412)に戻る。
【0110】
ここで、探査機23が、所定経路の探査を完了している場合には、照射機11は、複数の目標物40の位置情報を全て保有していることになるので、再確認のために探査機23を探査飛行させる。一方、所定経路の探査を完了していない場合には、所定経路の飛行と目標物40の候補の探査(位置情報の取得)とを繰り返すように、探査機23を探査飛行させる。
【0111】
一方、目標物40を探査しないのであれば(ステップS422でNO)、照射機11は飛行終了指令を照射用中継機21、ファイバ保持用中継機22および探査機23に送信する(ステップS423)。照射用中継機21、ファイバ保持用中継機22、および探査機23は、飛行終了指令を受信すれば、照射機11の位置(車両12の位置)まで帰還して飛行を終了し(ステップS617、ステップS714、およびステップS515)、これにより一連の制御が終了する。
【0112】
このように本実施の形態によれば、照射機11は、UAVである探査機23から取得した目標物40の位置情報に基づいて、同じくUAVである無人中継機(照射用中継機21およびファイバ保持用中継機22)を飛行制御し、目標物40まで光ファイバ30を延伸させてから、目標物40にレーザビームを発する。これにより、目標物40の位置が予め分からない場合、あるいは、探査したい地域に目標物40があるか否か分からない場合であっても、目標物40を見つけ出して処理することができる。
【0113】
また、探査機23としては、実質的に無人中継機である照射用中継機21およびファイバ保持用中継機22と同様の構成のUAVを用いることができるので、探査機23は、簡素な構成を有し、簡素な飛行制御を実現できるものとなる。それゆえ、簡素な構成で、目標物40に対してレーザビームを適切に照射することができる。
【0114】
さらに、探査機23を複数回飛行させて探査結果を比較することにより、目標物40(またはその候補)を認識する精度を向上させることができることに加え、探査飛行の間に新たな目標物40(またはその候補)が設置された(あるいは発生した)場合であっても、適切に認識することができる。加えて、複数回の探査結果により、探査飛行した領域に目標物40として疑われるものが存在しなければ、探査済みの領域を「不在領域」として判定することができる。しかも、新たな目標物40(またはその候補)の設置判定あるいは「不在領域」の判定は、照射機11の制御部107により自動化することが可能となる。
【0115】
ここで、
図12ないし
図14のフローチャートでは、前記実施の形態1における
図6および
図7のフローチャートと同様に、照射用中継機21、ファイバ保持用中継機22、および探査機23は、照射機11から送信される指令に基づいて飛行を開始または終了するが、本発明はこれに限定されず、無人中継機および探査機は、操作者の操作等によって飛行を開始または終了してもよいし、無人中継機および探査機の飛行のみを制御する制御器を別途用いてもよい。
【0116】
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。