(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956947
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】内燃機関用点火コイル
(51)【国際特許分類】
H01F 38/12 20060101AFI20160714BHJP
F02P 15/00 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
H01F38/12 K
H01F38/12 L
F02P15/00 303E
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-52303(P2013-52303)
(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-179459(P2014-179459A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2014年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109093
【氏名又は名称】ダイヤモンド電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山根 伸也
(72)【発明者】
【氏名】西村 雅之
(72)【発明者】
【氏名】山田 修司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高井良 拓也
(72)【発明者】
【氏名】島川 英明
【審査官】
池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−117487(JP,A)
【文献】
特開2003−158023(JP,A)
【文献】
特開平05−175058(JP,A)
【文献】
特開2010−255539(JP,A)
【文献】
特開2011−082206(JP,A)
【文献】
特開2008−041831(JP,A)
【文献】
特開2010−182842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/12
F02P 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心鉄芯及び外周鉄芯からなる鉄芯と、1次ボビンに1次巻線を巻き回した1次コイルと、2次ボビンに2次巻線を巻き回した2次コイルと、当該1次コイルへ点火信号を供給するイグナイタと、当該鉄芯及び当該1次コイル及び当該2次コイルを収容するケースと、エンジンブロックに形成された取り付け部と固定する当該ケースに形成された取付けフランジと、を備える内燃機関用の点火コイルにおいて、
前記イグナイタは、前記ケース内のうち、前記取付けフランジと前記外周鉄芯との間に収容されることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項2】
前記イグナイタは、前記取付けフランジ内部に埋没されるように前記ケース内に配置されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項3】
前記ケースには、前記1次コイル、前記2次コイル、及び、前記イグナイタを外部と電気的に接続するコネクタを備え、
当該コネクタと前記イグナイタとを電気的に接続するためのイグナイタ端子が前記ケース内周面に沿って配置されること特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項4】
前記イグナイタ端子は、前記ケース内周面に埋没して配置することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項5】
前記取付けフランジは、前記エンジンブロックとネジ又はボルトで固定するための金属製の取付けブッシュを備え、
当該取付けブッシュは、前記イグナイタと面接触することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項6】
前記取付けブッシュは、前記イグナイタからの熱伝達を行う接触部を形成することを特徴とする請求項5に記載の内燃機関用の点火コイル。
【請求項7】
前記取付けブッシュと前記イグナイタは、熱伝導性を有した介在物によって接触することを特徴とする請求項5に記載の内燃機関用の点火コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の点火プラグに高電圧を供給する点火コイルであって、特に点火プラグの直上に配置され内燃機関のブロックに取付け固定される点火コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関用点火コイルは各気筒に設けられる点火プラグに対して個別に設けられ、エンジンブロックに取付けボルトで固定される形式のものが知られている。特に近時の高エネルギーあるいは燃費効率を目的として、一つの点火プラグに一つの点火コイルを配置し、各気筒ごとに独立して点火エネルギーや点火タイミングを制御する技術が一般化している。また同様に従来点火プラグを収容するエンジンのプラグホールに1次コイルと2次コイルおよび鉄芯等を収容する所謂スティック型点火コイルが主流であったが、近時の内燃機関高出力要求により各銅線や鉄芯の大型化が避けられず、当該点火コイルの各コイル鉄芯はプラグホール外へ配置され、ケースに収容後点火プラグ直上のエンジンブロックにボルト固定されるタイプのものに移行してきている。
【0003】
このような点火コイルの一例として特開2004−241621号公報(特許文献1)に開示される点火コイルが提案されている。特許文献1の点火コイルの断面図を
図4に、直列4気筒エンジンに装着された点火コイルの上面図を
図5に示す。特許文献1における点火コイルの構成を次の通り説明すると、プラグホールの直上に配置されるケース50は上面を開口し、当該ケース50の側面にはバッテリーへ接続されるとともに外部の制御装置からの信号を送受信するコネクタ60が配置され、当該コネクタ60の配置されている側面の対抗する側面に点火コイル100をエンジンブロック110に取り付けるための取付けフランジ52が形成されている。
【0004】
また、前記ケース50内には中心鉄芯30の外周に配置された1次ボビン10と、当該1次ボビン10に巻回される1次巻線12と、この外周に配置される2次ボビン20と、当該2次ボビン20に巻回される2次巻線22と、前記中心鉄芯30と組み合わせて閉磁路を形成する外周鉄芯32とが組み合されたコイル体が収容され、前記コネクタ60とコイル体との隙間にはスイッチング素子を主体に構成されるイグナイタ40が配置されており、当該コイル体とイグナイタ40はケース50内に注入されるモールド樹脂70に埋没し、当該モールド樹脂70の熱硬化によりケース50と一体化されている。
【0005】
上記における特徴的な構成として、イグナイタ40の配置位置は前記コネクタ60からの信号線の引き回しの都合上コネクタ60に近接して設けることになっている。すなわち、バッテリーや外部からの信号線に接続され、かつ点火コイル100内の1次巻線12や2次巻線22にも接続経路を有するイグナイタ40は、この入出力経路の都合上最短距離を確保できるコネクタ60とコイル体との間に配置することが好都合であるため、従来ではこのような構成を選択していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−241621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の点火コイルにおいては次のような課題が生じている。すなわち、近時の自動車設計上の課題として、一層の小型化と軽量化が望まれており、これに従いエンジン本体あるいは周辺機器についても同様に小型軽量化が望まれている。特に点火コイルはエンジンのシリンダヘッドに搭載されることになり、前述したスティックコイルからプラグホール外配置の点火コイルへの切り替えにともない、プラグホール外の点火コイル構成体が大型化している。
【0008】
この大型化によりエンジンに搭載できない、あるいは搭載できても組み立て性や整備性に影響する点火コイルとなり、要求される高出力を満足しつつ、かつエンジン搭載性に優れた点火コイルの設計が困難なものとなっている。点火コイルのエンジンへの搭載性向上は主に点火コイルの長さ方向の小型化が理想的であるが、電磁気の特性上コイル体の寸法は変更困難であり、従来は
図5に示すように点火プラグの電極を軸としてシリンダヘッドへ回転させて搭載している。このためにコネクタへ挿抜される端子の抜き差し時に当該端子がエンジンブロックに干渉し作業性の悪化を招くとともに、点火コイル搭載性の自由度が失われている。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、高出力を維持し、かつエンジンへの搭載性に優れた点火コイルを提供することを目標とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明では次のような内燃機関用点火コイルの構成とする。即ち、中心鉄芯及び外周鉄芯からなる鉄芯と、1次ボビンに1次巻線を巻き回した1次コイルと、2次ボビンに2次巻線を巻き回した2次コイルと、当該1次コイルへ点火信号を供給するイグナイタと、当該鉄芯及び当該1次コイル及び当該2次コイルを収容するケースと、エンジンブロックに形成された取り付け部と固定する当該ケースに形成された取付けフランジと
を備え、
前記イグナイタは、
前記ケース内のうち、前記取付けフランジと前記外周鉄芯との間に収容されることとする。
【0011】
上記構成においては、前記イグナイタは、前記取付けフランジ内部に埋没されるように前記ケース内に配置してもよい。また、前記ケースには、前記1次コイル、前記2次コイル、及び、前記イグナイタを外部と電気的に接続するコネクタを備え、当該コネクタと前記イグナイタとを電気的に接続するためのイグナイタ端子が前記ケース内周面に沿って配置する構成としてもよいし、前記イグナイタ端子は、前記ケース内周面に埋没して配置させてもよい。
【0012】
また、前記取付けフランジは、前記エンジンブロックとネジ又はボルトで固定するための金属製の取付けブッシュを備え、当該取付けブッシュは、前記イグナイタと面接触させてもよい。さらに、前記取付けブッシュは、前記イグナイタからの熱伝達を行う接触部を形成してもよいし、前記取付けブッシュと前記イグナイタは、熱伝導性を有した介在物によって接触させてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成の点火コイルによって、コイル体構造物を従来のままの寸法として電磁気特性を維持したうえで点火コイル全体の長さ寸法を短くできるのでエンジンブロックへの取付け時に回転方向の位置決めに自由度ができ、併せてコネクタに接続される端子の取り外しも容易に行える。
【0014】
またイグナイタを取付けフランジ近傍に配置することによってイグナイタに発生する熱を取付けボルトに伝達することで点火コイルの熱的な影響を低減でき、点火コイルの信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施例とする点火コイルの断面図を示す。
【
図3】実施例1の直列4気筒エンジンに装着された点火コイルの上面図を示す。
【
図5】特許文献1の直列4気筒エンジンに装着された点火コイルの上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を示す実施例を
図1乃至
図3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明の第1の実施例とする点火コイルの断面図を
図1に、点火コイルの上面断面図を
図2に、直列4気筒エンジンに装着された点火コイルの上面図を
図3にそれぞれ示す。
【0018】
図1及び
図2において、点火コイル100の外形を形成するケース50は、絶縁性を有した樹脂からなる鉛直方向上面に開口を形成した箱型に成形されている。また、当該ケース50の側面には当該点火コイル100をエンジンブロック110に取り付けるための略三角柱状の取付けフランジ52が形成され、当該取付けフランジ52には金属製の取付けブッシュ52aがインサート成形によって配設されている。さらに、当該取付けフランジ52は鉛直方向から前記取付けブッシュ52aをボルトで貫通されることによって当該エンジンブロック110と面接触して固定されている。
【0019】
また、前記点火コイル100は、珪素鋼板を30枚程度積層して形成したI字型の中心鉄芯30とロの字型の外周鉄芯32を組み合わせて閉磁路構造とする鉄芯と、当該中心鉄芯30の外周に樹脂で成形した1次ボビン10の外周に1次巻線12を100ターン程度巻き回した1次コイルと、当該1次コイルの外周に樹脂で成形した2次ボビン20の外周に2次巻線22を8000〜15000ターン程度巻き回した2次コイルと、からなるコイル部を前記ケース50内に収容して構成されている。さらに、当該中心鉄芯30と当該外周鉄芯32の接続面の一方には当該1次コイルに発生した磁束と反対方向の磁束を磁路中に発生させるためのマグネット34を備えている。
【0020】
また、前記ケース50の外側底面には、エンジン上部に形成されたプラグホール内に向かって突出する高圧タワー54を形成し、当該高圧タワー54は前記2次コイルから出力される2次電圧を点火プラグまで供給している。さらに、前記ケース50の側面にはコネクタ60が装着され、当該コネクタ60は前記取付けフランジ52と対向する前記ケース50側面に配置される。
【0021】
また、前記コネクタ60は前記ケース50との装着部分から外部端子と接続する先端方向に向かって前記ケース50の開口面側へ傾斜させた構造をしている。
【0022】
また、前記取付けフランジ52と同一面側の前記ケース50内には前記1次コイルへの点火信号を供給するスイッチング素子から構成されるイグナイタ40が収容されている。さらに、当該イグナイタ40は前記ケース50内から前記取付けフランジ52側へ埋没して配置されている。
【0023】
また、前記イグナイタ40は前記取付けブッシュ52aに形成された接触部52bと面接触している。さらに、前記イグナイタ40は前記コネクタ60の端子と電気的接続を行うためのイグナイタ端子42が設けられ、前記ケース50内の側面に沿って配置されている。
【0024】
また、前記コイル部及び前記イグナイタ40は前記コネクタ60を介してそれぞれバッテリー又はECUと電気的に接続されている。さらに、前記コネクタ60には前記ケース50内側面の前記コネクタ60配置側で前記1次コイルの高圧側、並びに、前記1次及び2次コイルの低圧側と前記コネクタ60を接続する端子が配置され電気的に接続されている。
【0025】
また、前記1次コイルと前記イグナイタ40は前記ケース50内側面の前記取付けフランジ52形成側で端子によって電気的に接続されている。さらに、前記ケース50内には前記コイル部及び前記イグナイタ40の電気的絶縁及び物理的固定を実現するためのモールド樹脂70が充填され、前記ケース50のコイル部収容部を前記プラグホール外に配置して設置される。
【0026】
上記構成により、前記取付けフランジ52と同一面側の前記ケース50内に前記イグナイタ40を収容すると共に、前記イグナイタ40は前記ケース50内から前記取付けフランジ52側へ埋没して配置することで、コイル体構造物を従来のままの寸法として電磁気特性を維持したうえで前記点火コイル100全体の長さ寸法を短くできるので前記エンジンブロック110への取付け時に回転方向の位置決めに自由度ができ、併せて前記コネクタ60に接続される端子の取り外しも容易に行える。
【0027】
即ち、前記点火コイル100は
図3に示すように4気筒エンジンのシリンダー120毎の前記エンジンブロック110に配置される際に、前記点火プラグの電極を固定して前記中心鉄30の軸の向きを同方向にして配置することができることから、前記エンジンブロック110に前記コネクタ60に接続される端子の取り外し時の干渉を考慮した加工を施す必要がなくなる。
【0028】
また、前記イグナイタ40は前記取付けブッシュ52aに形成された前記接触部52bと面接触することで、前記イグナイタ40に発生する熱を取付けボルトに伝達し、前記点火コイル100の熱的な影響を低減でき、前記点火コイル100の信頼性が向上する。
【0029】
上記実施例1の変形例として、前記イグナイタ40は前記取付けフランジ52と同一面の前記ケース50内に配置される構成であれば、前記取付けフランジ52と前記コネクタ60の配置がそれぞれ対向する前記ケース50側面に配置する以外の構成としてもよい。また、前記イグナイタ40は前記ケース50内から前記取付けフランジ52側へ埋没して配置したが、前記ケース50の開口面を前記取付けフランジ52側へ延長した収容部に前記イグナイタ40を配置する構成としてもよい。さらに、前記イグナイタ端子42は前記ケース50内周面に埋没して配置してもよい。
【0030】
また、前記イグナイタ40は前記取付けブッシュ52aと直接接触させて前記イグナイタ40に発生する熱を取付けボルトに伝達し、前記点火コイル100の熱的な影響を低減する構成としてもよい。さらに、前記イグナイタ40と面接触する前記前記接触部52bの形状は設計事情によってより効率的に放熱を行うことができる構造等に変更してもよい。
【0031】
また、前記取付けブッシュ52aと前記イグナイタ40の間に、例えば、ポリエチレンやナイロン樹脂等の高い熱伝導性を有した介在物を配置して前記イグナイタ40に発生する熱を取付けボルトに伝達する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10:1次ボビン
12:1次巻線
20:2次ボビン
22:2次巻線
30:中心鉄芯
32:外周鉄芯
34:マグネット
40:イグナイタ
42:イグナイタ端子
50:ケース
52:取付けフランジ
52a:取付けブッシュ
52b:接触部
54:高圧タワー
60:コネクタ
70:モールド樹脂
100:点火コイル